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高性能ステレオ・カメラをオーダーメイドする…

【ドイツのRBT社が作った、ヤシカの一眼レフをベースにしたリムジン・カメラ】
カメラ雑誌にヘンテコなカメラが載っていました。1997年のことです。日本の京セラの一眼レフカメラを2二台つなぎ合わせた異様な形をしています。しかし、スペックを見ていたら欲しくなりました。何故ならステレオカメラのズームレンズ付きというのは、今だかってお目にかかったことがなかったからです。
また、28ミリから70ミリのズーム範囲で、ステレオ感がどこで一番強く出るのだろうかなどと試してもみたかったのです。これを作った会社はドイツのRBT社という数人の小さな会社でした。FAXで問い合わせてみると、リコーのボディーをつないだもの、コニカヘキサーをつないだものがあり、3種類の連結カメラが作れるとのことでした。
僕はヤシカの一眼レフ・ズーム付きが、価格的にもなんとかなるので、早速オーダーしたのです。もちろん代金は先払いでないと作ってくれませんので、振り込んだ証拠の残る郵便為替でドイツへ送金しました。
それから2ヶ月経っても3ヶ月経っても送って来ません。FAXで連絡してみると、小人数の会社なので時間がかかるのでとか、ヤシカのステレオカメラを作れる技術者は一人だけだと言うようなことが書いてありました。えらいものを注文してしまったなーと後悔しても始まりません。オーダーしてから5ヶ月が過ぎた頃、「発送した」とのFAXか届きました。一週間後、自宅に届いた小包には、カメラと取り扱い説明書(京セラの一眼レフの取り説が2冊とトキナーレンズの取り説が2冊のみで、RBTの取り説はありませんでした)と、RBT社のその他の商品カタログも同梱されていました。
早速フィルムを入れてテストします。フィルムを入れて裏ぶたを閉めたとたんにモーターが回りだし、フィルムを送っています。しかし、どうしたことかモーターが止まりません。フィルムはどんどん巻き取られて行きます。そしてすべて巻き取られてからモーターが止まりました。もう一度最初からやってみましたが、まったく同じです。"アッタマきた!!"ということで、FAXだけではおさまらず、時差を計算して深夜に電話したのですが、英語の話せないオバサンが電話に出てしまい、『だれも英語の話せる者がいない』とだけ言っております。しかたなく電話を切り、FAXの返事を待ったのです。数日後電話があり、『そのカメラを直しに行く…』と言っています。そんなばかな…。いくら高いカメラだと言っても、たかがカメラです。ドイツから飛行機に乗って直しに来るんですか…。
数日後FAXが届きましたのでよく読んでみると、このカメラを作ったEckhart Oehmichenという人が年に2回、日本を訪問しているので、会うようにと書かれていました。会ってから解ったのですが、その人の本業とはドイツ・フィルのチェロ奏者だったのです。そして宿泊を予定しているという日に、彼に電話でアポを取り、彼の泊まっているホテルへ向かったのです。
晩秋の東京を赤坂見付けで地下鉄を降り、ニューオオタニへ向かい、ロビーからOehmichen氏の部屋に電話をします。太った大男がニコニコしながら僕の方へ歩いて来ました。僕は目印に、彼が作ったステレオカメラを手に持って待っていると伝えてありました。彼は僕を自分の部屋に案内してくれて、簡単な挨拶の後、部屋のディスクの上にカメラを置いてバッグから工具とヘッドルーペを取り出し、それを付けてカメラをバラし始めたのです。
(海外に行くのに工具やヘッドルーペまで持って来るとは、ドイツ人にも僕以上の異常者がいるのだと安心しました…!。)
彼は外したネジをなくさないように、グラスの中にチャリンチャリンと音をさせて入れて行きます。最近の電気で動く一眼レフをバラすところを見るのはひさしぶりですが、なんとも複雑な基板や配線です。
そして何度もテストしていましたが、両手を少し広げて"ダメです"といったヂェスチャーをしました。僕は今すぐに直らなくても、最初に壊れていたのが解かった時より落ち着いていました。何故なら、今ここにいるのが作った本人なのですから…。Oehmichen氏は『ドイツへ持って帰らないと、ギアが無いので…』と言っております。僕は『OK、持って帰って完璧に治して下さい』とお願いして彼と別れたのでした。
【写真はヤシカ・ステレオ・カメラを修理中の設計者
E.Oehmichen氏】
(彼はRBT社社員であると同時にドイツ・フィルハーモニーのチェロ奏者として度々来日している。)
正月開け、RBT社から僕のヤシカ・ステレオ・カメラが戻って来ました。
今度は完璧に動作しています。テスト撮影をしましたが、思った通りの使い易さです。やはりズームの付いたステレオ・カメラで、TTLオート撮影ができるのは楽です。
ただし、元のカメラの性能なのでRBT社に文句は言えませんが、スプリット・プリズムが小さく、ファインダーも暗くピント合わせがしにくいカメラです。
このRBT社の作ったヤシカ・ステレオカメラは、36枚撮りフィルムで23mm×33mmの画面が2枚同時に撮れますが、フィルム給送がよく出来ていて、1コマ目と3コマ目の撮影からスタートして、次に1コマ送って撮影済みの1、3コマの間の2コマ目と4コマ目を撮影しますが、その次に1コマ送ったのでは撮影済みの2コマ目が1コマ目へ移動するために二重撮りになってしまいます。これを避けるためには、給送を1コマ→3コマ→1コマ→3コマと繰り返さなければなりません。どのようなギヤの仕組みでこのように動くのか、ここがこのカメラの不思議なところです。撮影されたフィルムを見ると、コマ間が全く無い状態で、36枚(18組)が撮れています。
レンズは先端から距離リング、ズームリング、絞りリングの3つがバーで連結されており、左右のファインダーが覗け、左のファインダー内には水準器(オプションで頼んだ)もビルトインされています。
使った感じは、全く一台のカメラ操作と同じであり、シャッターを切る毎に1枚巻き上げ、3枚巻き上げを繰り返します。しかし、2台の一眼レフをタンデムにしてあり、ズームレンズも付いていることから、ウエイトは一眼レフの2台分あります。しかし、最新のレンズで撮ったステレオ写真は実に素晴らしいものです。
オーダーメイドなので時間がかかりますが、最新のズームレンズやオートフォーカスのステレオ・カメラがどうしても欲しいという方は考えてみるのも楽しいのでは?と思います。自作ステレオ・カメラの名人は何と言ってもナオイ・カメラサービスの直井さんです。何でも引っ付けて山ほどステレオ・カメラを持っていますが、売っ
てはくれません。大変親切な方で、作り方は教えてくれますので自信のある方には、自作するのもお進めします。

【RBTの内部(右)とレンズ部分の拡大写真(左)】
RBT社アドレス
RBT−Raumbildtechnik GmbH Karlstraße 19 73773 Aichwald
Tel 0711/36 47 47 Fax 0711/36 39 56
Geschäftsführer:E,Oehmichen,T.Büchele,F.Allmendinger
Amtsgericht Esslingen HRB 2112