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にせアトム(宇宙ヒョウ)

ヒーローものの定番には、ヒーローそっくりのニセモノが現れ、混乱を引き起こすというのがある。
雑誌「少年」版のアトムでは『コバルト』と『ロボット宇宙艇』がそれにあたるが、もう一作、単行本ではカットされたとんでもないアトムのニセモノが登場するエピソードをご存知だろうか?
中期の作品『宇宙ヒョウ』はその短さや単調な展開からしばしば読者に無視される作品である。しかし、初出時には単行本版の倍近くの長さがあり、多くの見所をもった作品だったのだ。たとえば、ロボットのエネルギーを吸収する雪の秘密を探るためロボットだけによる国際会議が東京で開かれ、人間の苦難を救うのがロボットの役割だ、そのためには自分達の身を犠牲にしエネルギーを吸われようとも本望だという発言や、そのようなロボット達の心意気を聞いたお茶の水博士が感動するシーンがある。また、宇宙ヒョウが逃げ込むロボット博物館では、読者は20世紀から21世紀にかけてのロボット・デザインの変化をアトムと共に見学することができるのだ。
そして、初出版『宇宙ヒョウ』の何よりの特徴は、偽アトムである!
ロボット博物館において世界最高のロボットとして展示されていたアトムの模型に不定形生物である宇宙ヒョウが入り込む。十万馬力も空を飛ぶ力もない。しかし猫族だ。咬む、ひっかく、飛び回る、と縦横無限の活躍にさすがのアトムも一度は取り逃がしてしまう。
しかし、この偽アトム(宇宙ヒョウ)は闇雲に雪の中、ロボット達のエネルギーを吸いまくっているうちに、なんとギャング団の手下となり、ロボット国際会議場へ侵入するのである。宇宙人のペットがなぜギャング団に?という点がわかりにくく、これがカットされた理由の一つかと思われる。もう一つ、偽アトムがあまりにもワイルドなので読者のもつアトムのイメージを損なうことを危惧してカットされた可能性もある。なにしろ国際会議場へつくなり柱で爪を研ぎ始めるのだ(左の絵)。
偽アトムはまんまとアトムの尻にくらいつきエネルギーを吸い取ろうとした(右の絵)。もしかしたら偽アトムはアトムのお尻にあるエネルギー注入口からエネルギーを吸い取るという変態的行為をしているのかも。いずれにしてもアトムの尻がたいへん危険なことを宇宙ヒョウは知らされることになる。数秒後に偽アトムはアトムの尻マシンガンの餌食になってしまう。もとの不定形生物となった宇宙ヒョウは、アトムの機転によってパラフィンで固定されてしまうのだ。
さて、偽アトムは猫そっくりだが、そもそもアトムのシルエットが限りなく猫に近い。後に『アトムキャット』という作品もつくられることになるが、アトム=猫というイメージはこの頃から手塚の頭にあったのだろう。
それにしても・・・かわいいぞ、猫アトムは。
(2003/8/5掲載)