アラバスターの正体 Back Index Next
『アラバスター』(3)


八ツ橋を切りつける次郎左衛門。右手に持っているのが妖刀『かごつるべ』。

 ロックや亜美ちゃんに比べるとどうも人気も印象も薄いタイトルロールのアラバスター氏。
 そのアラバスターにモデルはいるのだろうか?
 わたしは、歌舞伎の『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべ・さとのえいざめ)』こそが手塚がアラバスターの着想を得た作品だと推理した。

籠釣瓶(かごつるべ)のあらすじ
(1)佐野の豪商・次郎左衛門は、親の因果(父が母を切り殺した)で顔中に醜いあばたをもって生まれた。
(2)江戸に出た次郎左衛門は吉原一の美女・八ツ橋を見染める。
(3)八ッ橋の元へ通いつめた次郎左衛門は八ツ橋を身請けしようとするが、愛人や店の圧力を受けた八ツ橋が万座の中で次郎左衛門に縁切りを言い渡す。
 縁切りされた次郎左衛門の「おいらん、そりゃあんまり袖なからろうぜ」が名セリフ。
(4)次郎左衛門は数ヶ月後、吉原にのりこみ妖刀「かごつるべ」で八ツ橋に復讐する。

ついでに周囲の者を手当たりしだい切り殺す=吉原百人切り事件

 『籠釣瓶』は実際に吉原で起きた事件をもとに作られた作品であるが、身の程知らずの恋をする男を示す名前としても使われる。たとえば、太宰治の短編『ダス・ゲマイネ』では、太宰の友人で飲み屋の娘に恋する男を、仲間が「佐野次郎」というあだ名をつけてからかう場面がある。

 さて、われらがアラバスターと佐野の次郎左衛門とを並べてみると・・・

歌舞伎『籠釣瓶』 『アラバスター』(単行本版)
名前 佐野の次郎左衛門 ジェームズ・ブロック
容貌 顔面に醜いアバタ 黒人
行動 美女『八ツ橋』にふられて殺害 美女『スーザン・ロス』にふられて殺害
武器 妖刀『籠釣瓶』 謎の光線銃

 なんだ、あまり似てないじゃないか、とおっしゃらないように!
 初出版で比べなおすと・・・

歌舞伎『籠釣瓶』 『アラバスター』(少年チャンピオン版)
名前 佐野の次郎左衛門 佐野次郎
容貌 顔面に醜いアバタ 顔面に醜いアザ
父親は黒人
行動 美女『八ツ橋』にふられて殺害 美女『美室令子』にふられて殺害
武器 妖刀『籠釣瓶』 謎の光線銃

 ね。

 アラバスターの第1回はほとんど書き直され、アメリカの話に変えられちゃったのですよ。
その最大の理由は「病気で顔が醜い人が犯罪に走ることはヤバイ」ということでしょうね。


顔にみにくいアザのある佐野次郎に注目!
そして、事件はすべて日本国内で起きたのだ。

 なお、『籠釣瓶(かごつるべ)』とは『籠でできた釣瓶(井戸の桶)』、つまり『水がたまらない』という意味。人間を切り殺したところ、刀に血が一滴も残らなかったくらいすごい切れ味の刀、という意味。

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