キャプテンKenの謎(1) Back Index Next
『キャプテンKen』

燃え盛る星野農場での救出シーンは、後に手塚が自分でトレースし直しているので、
現行版では水上ケンの顔に違和感がある。

 『キャプテンKen』は、1960年12月から翌年8月にかけ、週間『少年サンデー』に連載されたSF異色作である。
 前作『0マン』ほどの人気を得ることが出来なかったが、その雄大な構想とロマンティックな展開は多くの読者をいまなお惹きつけやまない傑作だ。特に主人公のケンジとヒロインの水上ケンのもつ
倒錯したお色気が幼い読者に与えた衝撃は、今なお語り草になっているほどだ。

 この『キャプテンKEN』では、さらにいっそうその妖しさはきわだっています。母と息子がまったく同じ顔をしているというなまめかしさ、少女が本 当は少年なのか、この少年は本当は少女なのか、というあやしい倒錯をひそめたとまどい。同じ顔の少女に恋しつつ少年に反発しつつひかれるマモル少年、そし てその結末――というこのあやしさは類がないし、その上にこういっては何ですが、この作品の魅力のひとつは「ロボット馬」にありまして、アロー号というの がこれがまた妙になまめかしい馬で(笑)・・・
                     ・・・・『キャプテンKen』小学館文庫あとがき 中島梓(栗本薫)


 現在読むことのできる『単行本版・キャプテンKen』は連載版と大きな違いはない。
 ただし、
重要な部分がカットされているため、現在の本を読んだ読者はいくつかの疑問を抱くことであろう。
 
 というわけで、今回はカットされてウヤムヤにされた『キャプテンKen』三つの謎!
 
『キャプテンKen』は実はとんでもない話だった!
  謎1:なぜ宇宙服なしで火星に住めるのか?
  謎2:キャプテンKenの正体は最初は誰だったのか?
  謎3:キャプテンKenの父親は誰か?

謎1:なぜ宇宙服なしで火星に住めるのか?
 『キャプテンKen』の舞台は人類による開拓時代を迎えた未来の火星である。
 単行本版と異なり、連載版では舞台が火星であることは伏せられており、連載第3回で初めて明らかになる。
 さらに、その数回後、なぜ地球人が火星で宇宙服なしで過ごせるかの説明が入る。
 なんと、全員が出生直後に低酸素でも生きていけるように
サイボーグ手術を受けるのだ。分娩室は地球の環境と同じとし、生まれた子にただちに手術を開始するが、病弱な子はそのまま地球へ送り、成長してからサイボーグ手術を受ける。馬はこの手術に耐えられないのか、経済的に割が合わないため、火星ではロボット馬しか使われていない。
 しかし、単行本化でこのシーンはすべてカットされて、火星の過酷な生存条件は完全に『無視』された。


謎2:キャプテンKenの正体は最初は誰だったのか?

 開拓民の住むヘデスの町の日本人一家のもとへやってきた美少女『水上ケン』。しかし、彼女の火星到着と共に、水上ケンそっくりの謎の少年『キャプテンKen』の活躍が始まった!
 というわけで、『水上ケン』と『キャプテンKen』の関係が、ストーリー全体を包む大きな謎となる。
 いったい、キャプテンKenの正体は?

 手塚治虫によると、

 
最初は水上ケンとキャプテンKenは同一人物としていたが、読者からの手紙で「二人は同じ人物だろう」という指摘があまりにも多かった。
 それなら・・というわけで、設定を途中で変更しし、ついでに懸賞を出してキャプテンKenの正体を読者に当てさせたが、正解者は二人しかいなかった、


 という。
 これだけを読むと、『キャプテンKenは未来から母親を救いにやってきた少年』と『その母親とは水上ケンである』という二つの驚愕すべきトリックは、連載途中で生まれた、という印象を受ける。しかし、手塚の自作についての説明は眉唾ものが多い。

 そこで少年サンデー掲載版における『キャプテンKen』前半ストーリーと、正体当てクイズの経過を下の表にまとめた。
 この表から明らかなことは、
(1)第3回でキャプテンKenの目的が母親を守ることであるとされている。
(2)第4回でキャプテンKenの正体はびっくりする人物(たぶん、未来から来たという意味)と手塚が言っている。
(3)第8回で懸賞が開始されるが、その時にはキャプテンKenと水上ケンの関係が決まっていたようだ。

 また、次回に説明するが、手塚に『キャプテンKen』のアイデアをもたらしたSF小説があり、手塚は最初から未来から来た少年が母親を救うことで生じるタイムパラドックスを『キャプテンKen』のテーマとしていたことが知られている。

 以上から、『キャプテンKenは未来から母親を救いにやってきた少年』というテーマは初期から決まっていたといえる。
 問題は、『その母親とは水上ケンである』ということがいつ決まったかである。
 最初にあげた手塚の証言が真実とすると、
「キャプテンKenは未来から母親を救いにやってきた少年で、身を隠すため女装して水上ケンとして日常を送っていた。(母親はその後、登場する筈の他の女性である)」なのだ。

 では、なぜ水上ケンが母親になったのだろうか?
 単行本版を見てもわかるように、いくら子供の読者でも、キャプテンKenの正体として最も疑わしいのは水上ケンに決まっている。
 手塚が言うように「読者の指摘があまりに多かったので・・・」という理由を素直に信じることはできない。
 もしかしたら、キャプテンKenとそっくりな
水上ケンを母親としたかった他の理由が手塚にはあったのではないだろうか?
 (その驚くべき理由は、次回で明らかに・・・)

ストーリー 懸賞
第1回 砂嵐の日、マモル少年は愛馬グローリィに乗って、その日到着するというケンという人物を迎えに港へ向かった。モロ族に襲われたマモルを救ったのはケンという少年(キャプテンKen)であった。しかし、そのケンはおたずね者であり、彼を追ってきた一団によりケンはマモルの前で処刑されようとする(この部分は単行本でカットされる)
第2回 ケンは愛馬アローによって救出される。散々なめにあったマモルが帰宅すると、水上ケンという美少女が到着していた。水上ケンは父親の友人であるマモルの父を頼ってヘデスの町へやってきたのだ。

マモルは水上ケンは男の子の変装ではないかと疑う。故障したロボット馬グローリィの修理に難渋してたマモルの前に再びキャプテンKenが現れた。
誰が考えても水上ケンが一番怪しい・・・。
第3回 ヘデスの町で水上ケンにからんだ不良のダブルは、キャプテンKenによって懲らしめられる。ダブルの父(デブン知事)はキャプテンKenの正体をさぐるように部下に命ずる。どうやらKenは地球からの旅客船マルス12号で到着したらしいが、乗客名簿のケンは女の子となっていた。デブン知事は水上ケンこそがキャプテンKenの正体だと考える。

Kenは夜空に浮かぶ二つの月を見ながら、独り言を言う。
「お母さん・・・。」
「おかあさんはね、ぼくがこんな所にいること知らないんでしょ。でも、ぼくは
ここでお母さんを見守っていますよ
後に懸賞で「今までのセリフの中にある重大なカギ」とは、このセリフに間違いない!つまり、母親を助けることは、第3回で既に決まっていた。

そこへ、デブン知事の下で働く少年(大助)がKenのもとに現れ、デブン知事に注意するように知らせる。そこへ登場する知事の殺し屋たち!
第4回 アロー号に乗って大助と共に逃亡に成功するKen。仲間になった大助にKenは「町外れにある星野農園にきてるお嬢さんに連絡してほしい」と頼む。このセリフは単行本でカット。

翌朝、水上ケンのもとへ大助から忠告の電話が来る。
学校へ向かうマモルと水上ケンの前にダブルたちが立ちふさがる。
キャプテンKenの正体が水上ケンだと父親から聞かされたダブルが、ケンを捕らえて父親の元へ連れて行くためだ。
(単行本版と異なる)
新年のご挨拶
「みなさん、あけましておめでとう。ことしも、キャプテン・ケンをはりきって書きます。どうぞご愛読ください。みなさんにも、この物語の舞台がどこか、おわかりになったでしょう。キャプテン・ケンの正体もいまにだんだんわかってきます。きっと、
びっくりするくらい意外な人物です。では、よいお正月をすごして下さい。 手塚治虫」
第5回 学校での普通の女の子として生活する水上ケン。ところが保安官を逆恨みしたダブルが暴れているというニュースが入ると、ケンは姿を消す。怪しんだマモルがケンを探すと、そこにはアロー号に乗ったキャプテンKenが!
第6回
Kenによって保安官は救われ、ダブルは逮捕された。
ダブルの父・デブン知事は、火星人から奪った隠し財宝の隠し場所へ向かう。そこを守るのは知事の用心棒ランプである。
第7回 デブン知事の後をつけて財宝の秘密を知ったキャプテンKenであったが、ランプの火星撃ちによって腕に重い傷を負ってしまう。 「第6号のキャプテンKenのページで、ぼくが、諸君に懸賞問題を出します。ぜひ読んで、どしどし応募してくださいね。手塚治虫」
第8回 傷ついたKenの命令で、アロー号が星野家へ向かった。さらに、デブン一味も星野家へ現れ、水上ケンを出せと迫る。外出から帰ったケンは銃による傷を負っていた! 「手塚先生のサイン入り色紙と手塚先生の新刊マンガ単行本があたる!
みんなで考えよう特別大懸賞

【問題】キャプテン・ケンの正体は、いったいなんでしょうか?

少女ケンと同一人物のような気もするし、別の人物のような気もする。さて、みなさんは、キャプテン・ケンの正体をどう考えますか。
【送り方】はがきに、きみの意見をはっきり書いてください。理由はいりません。ひとりで、何枚だしてもよろしい。
【しめきり】なし
【正解発表】正解者が出た時、本誌に名前だけを発表、答えは発表しません。
*****ヒント******
(1)キャプテン・ケンの今までの回を全部読めば、
はっきり答えのカギが書いてあります。
(2)このマンガに
今まで出てきた人物のだれかに、関係があります。
第9回 水上ケンを治療した医師をアローがKenのもとへ連れて行った。「お前の顔はあの娘にそっくり・・・まるでおんなじじゃないか」と医師曰く。
医師は、傷の手当てを受けた
Kenが星野農場の二階にある水上ケンの部屋の窓に忍び込むのを目撃する。「やっぱりあの二人は同じ人物じゃないかな」

翌日はダブルの裁判の日である。裁判所の外に到着したキャプテンKenはデブンの部下たちの仕掛けた罠で吊り上げられてしまう。そのとき落としたのは、
女の子のハンカチ!
第10回 キャプテンKenは大助の機転によって助けられる。
その頃、ダブルの裁判は電子頭脳によって無罪という判決が出た。しかし、キャプテンKenは、電子頭脳の中にデブンの部下が隠れて不正操作したことを明らかにする。

そこへ突然、モロ族が農場を襲ったという知らせが。
農場へ向かうマモルの前にキャプテンKenが「きみの家の、水上ケンさんを助けるの!」と叫ぶ。
みんなで考えよう特別大懸賞

【問題】キャプテン・ケンの正体は、いったいなんでしょうか?

*****ヒント******
(1)今までの回を全部読めば、
セリフの中に答えの重大なカギが書いてあります。
(2)このマンガに今まで出てきた人物のうちのだれかに、深い関係があります。
(3)
これは未来の物語です。そのことを頭に入れて考えて下さい

「今まで二千通以上の答えをもらっていましたが、まだ正解者がありません。ふるって応募してください」
第11回 燃える星野家の二階で、気絶した水上ケンをキャプテンKenが発見する。意識を戻したケンが、「あなた、あたしの兄弟?」と聞く。
焼け落ちる星野家からケンを救い出すKen。
第12回 マモルらの元へ到着する水上ケン。「わたしは一人っ子で兄弟はいない」発言。星野家の牧童が「キャプテンKenはロボットじゃないか?」と発言する。 特別大懸賞の掲示(三回目)
「今までに、
五千人以上の答えをもらいましたが、まだ正解者がありまえん。ふるって応募してください」
第13回 マモルにキャプテンKenは、「お父さんは科学者で、僕が生まれる時に戦争で殺された」と告白する。
第14回 知事室へ現れたキャプテンKenは、床のからくりで捕らわれてしまう。

一方、ランプはダブルに火星撃ちが出来るのは三人だけだ、と教えた。
「しめきりが迫る!早くだそう!
キャプテン・ケンの正体はなにか?

この懸賞は、3月14日でしめきります。
今までに、
三万通近くの解答がありましたが、正解者は、まだ三名だけです。
はずれた人の中にも、正解に近いものがたくさんあります。
もう一度ヒントをよく読んで、きみの意見を送ってください。

ヒント
(1)キャプテン・ケンのいままでの回を全部読めば、はっきり答えの鍵がかいてあります。
(2)このマンガに、今まで出てきた人物の誰かに関係があります」
第15回 捕らえられたキャプテンKenは人間の心を読み取る装置にかけられ、2252年に日本で生まれたケンジという12歳の少年であること、ケンジは水上ケンの未来の息子であった。(物語は2227年という設定)
(この重要、かつ感動的な部分は単行本でカットされた、現在の読者はラストのタイムマシンの登場まで、ケンの正体を知ることができない。そのため、デブン知事が水上ケンを誘拐してキャプテンKenを呼び出そうとした計画に説得力がなくなる)

囚人運搬ヘリに乗せられるキャプテンKen。窓から見えた水上ケンに向かって「おかあさん!」と叫ぶ(が、声は届かない)。
キャプテン・ケンの正体はなにか?

この懸賞は、3月14日で胃眼切りました。
全部で
四万通近くの解答がありましたが、今までに、わかった正解者は三名です。
いま、みなさんの答え全部をよく調べています。まだ、正解者が出るかもしれません。

***********
みなさん、お答えたくさんありがとう。とても、たくさんの人から来たので、僕はうれしくてたまりません。はうれた人の中にも正解に近い人がたくあんいました。
 これから、キャプテン・ケンはすごく面白くなりますから、うんと応援してね。(手塚治虫)
第16回 囚人の作業場でキャプテンKenはモロ族の娘パピリオンを助ける。 キャプテン・ケンの正体を当てた人!
キャプテン・ケンの正体は何か?の懸賞は3月14日で締め切りましたが、うまく当てた人が
四人も出ました。その名を次のページに発表します。この人たちには、手塚先生のサイン入り色紙と先生の新刊単行本をお送りします。

正解者氏名
●金沢市備中町 ・・・・
●金沢市備中町 ・・・・
●金沢市材木町 ・・・・
●富山市石坂  ・・・・

たぶん四人は友達だ。このうちの一人が後に虫プロに入社した。

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