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進藤礼子
「幽鬼の塔」 (昭和14年〜15年、「日の出」連載)

河津三郎を自宅に誘ったのは、全身黒づくめの18才ほどの病的なほど青白い顔をした美少女だった。少女の部屋はすべてが真っ赤に塗られていた。自分の喉もとにナイフをつきつけた少女は三郎に言った。「何もいわずにあなたが昨夜手に入れたバッグを私に渡してください。さもなければわたしはここで死にます」
そんな彼女を黒猫がじっと見つめていた。
【あらすじ】
28歳の素人探偵である河津三郎は、ある夜ボストンバックを大事そうに抱えた挙動不審の男の後をつけた。興味本位で彼のボストンバックをまんまとすりかえた河津がその中を覗くと、血染めの衣、古びた木の滑車、そして縄の束が入っていた。そして、バッグを失った男は、なんとその夜上野公園で大量の札束を火にくべた後に五重の塔で縊死をとげたのだ。ボストンバックの中身の秘密を探る河津に近づく美少女、富豪、画家の関係は?隠された忌まわしい過去が今明らかになる。
【作品の印象】
過去の不幸な出来事が尾を引きずる、というテーマで、「ゴースト・ストーリー」や横溝正史作品のような展開を見せるが、乱歩作品の醍醐味は感じられない。主人公がいかにヒマとはいえボストンバックすりかえという犯罪行為を行い、相手を自殺に追い込み、かつ少女の懇願にも聞く耳をもたずにひたすら謎を追及する姿がかえって異様な印象を受けた。乱歩のやる気のなさは、日中戦争が本格化した時期に書かれたということも関係するようだ。。
【進藤礼子の印象】
自殺狂言の後は礼子はひたすら河津を追い詰める役しか演じていない。黒い服(キャットスーツ?)を着て、ナイフ片手に木に登り、塀を越える姿はそれなりに魅力的だが、最後はいつのまにか消えてしまう。もったいないキャラである。
(2000・9・9掲載)