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星野真弓
「大暗室」<1> (昭和11〜13年、「キング」連載)

恋人有明友乃助の不倶戴天の敵、大曽根竜次に誘拐された真弓は、地底の拷問室へ連れ込まれた。木製の台に縛りつけられた彼女の身体に向かって、天井から吊り下った巨大な鎌が、少しずつ降りてきた。このままでは胸の部分で真弓は二つに切り裂かれてしまう!真弓は手元にあった握り飯を掴み、それを自分を縛り付けている太い麻縄に無我夢中に塗りつけた。地中を走り回るネズミたちが食物の匂いにひかれて彼女の身体に集まってきた。そして米粒を食べようと、麻縄に噛りついたのだ。彼女の身体の半分以上が黒いネズミで埋めつくされたが、その間にも巨大な鎌は小刻みに彼女の胸に近づいてくるのだ。真弓は助かることができるのか?
【あらすじ】
有明男爵を殺し、その妻、京子を自分のものとした悪魔のような男は大曽根五郎といった。二十数年後、京子が産んだ二人の青年、友乃助(有明男爵の子)と竜次(大曽根五郎の子)は生涯のライバルとして東京で出会った。悪魔のような残虐な心をもった竜次は、星野家に伝わる莫大な埋蔵金を謀略をもって手に入れた。そして、竜次が次に狙ったのは、ライバル友乃助の恋人でもある、可憐な美女、星野真弓であった。(Page10へ続く)
【星野真弓の印象】
星野家のひとり娘。絵のように美しい十九才。しかし竜次に捕らえられてからは案外芯の太いところを見せる。もちろん竜次の狙いは真弓の肉体であるが、彼女は必死に抵抗して純潔を最後まで守ったことになっている(とても信じられないが・・・)。次々と責め苦を受ける真弓もなかなか良いが、老人に変装した竜次が初めて真弓に近づいたときの描写も艶っぽい。下の文からも真弓が竜次から強い性的刺激を受けたことは明らかである。
・・・・彼女は、老人に抱きしめられた刹那、あきらかに異性を感じた。若々しい体臭と、何かしらなまめかしいものさえ感じた。それは日頃の辻堂老人からはまったく感じることのできないものであった。
「あたし、気でも違うのじゃないかしら」
真弓はそんなことを考えているわが身が、空恐ろしくさえあった。電灯を消したまっ暗な部屋の中に、畸形な裸体の怪物どもが、みだらな笑い顔を並べて、ウジャウジャとひしめき合っているように感じられた。
ウトウトとしたかと思うと、文字には現わし得ないような奇怪な悪夢にうなされては、たちまち眼をさました。からだじゅうがネトネトと気味わるく汗ばんでいた・・・・
(江戸川乱歩「大暗室」より)
一方、真弓の恋人、友乃助は朝会うなり、つまらないことですが、と前置きしながら、「きのうは川で溺れかけた子を助けました」とぬけぬけと自慢話をする男である。やはり男は危険なくらいじゃなくては・・・。
(2000・10・22掲載)