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宮崎雪江
「猟奇の果」<1> (昭和5年、「文藝倶楽部」連載)

岩渕紡績は労働争議に悩まされていた。ある日、労働者側の要求を完全にのまなければ愛娘の雪江を翌日の正午に殺す、という脅迫状が宮崎社長の元に届いた。事態を重く見た宮崎常右衛門は明智小五郎に警備を依頼した。翌日、雪江の部屋で娘の警備をしている宮崎に、恐怖におびえる雪江が近づいた。彼女が父に甘えるときにいつもそうするように、父の膝にその柔らかい身体をあずけた。そのとき父の顔に驚きと緊張の色が見られた。
さらに雪江は自分の頬を父の前に差し出した。いつものように頬へのキスを求めたのだった。・・・・しかし、顔が赤くなり粗い息遣いをみせ出た父は強い力で娘に抱きつき、彼女の紅い唇に自分の口唇を押しつけてきたのだ!雪江の悲鳴が部屋に響いた。
「お父さま!・・・・・・あぁ、こわい!」
【あらすじ】
(第一部 猟奇の果)
資産家の次男、青木愛之助は、偶然から彼の友人である品川四郎そっくりの男を発見する。恐るべきことにその男は次々と猟奇的犯罪を繰り返し、ついには愛之助の妻にまで魔の手を伸ばした。
(第二部 白蝙蝠)
青木愛之助と彼の妻は、他人そっくりに人間を改造することのできる大川博士と共に、白蝙蝠と呼ばれる犯罪組織に加わった。白蝙蝠は、日本の重要人物の瓜二つの人物を作り出し、本物と入れ替えることによって日本を支配しようとしていたのである。白蝙蝠の標的となったのは次の六人であった。
首相 大河原是之 内相 水野広忠
警視総監 赤松紋太郎 警保局長 糸崎安之助
岩渕紡績社長 宮崎常右衛門 しろうと探偵 明智小五郎
【作品の印象】
誰もが「失敗作」と認める作品。第一部は「自分とそっくりの人間がいたらどうなるのか?」というテーマが面白い。しかし乱歩はそっくりの人間が登場するトリックについてちゃんとした説明を考えていなかったらしく、第二部で破綻をきたした。たぶん第一部のラストで「これはジョーダンでした」で終わらせる予定だったのだろう。しかし、人間入れ替えという話がなければ、この父娘の近親相姦的シーンなどは表現できなかったに違いない。乱歩にとってこのトリックは捨てがたかったらしく、最後の作品である「超人ニコラ」で再び登場する(Page16へ続く)。
【宮崎雪江の印象】
宮崎氏の一粒種の妙齢19才の箱入り娘。母親が厳格なためか、父に異常になついており、19才にもなっても緊張すると頬へのキスを求めるという性格も変というか、楽しい・・・。すべての父が娘に対してもつ潜在的欲望を具現化してくれる。が、この後、彼女は哀れな最後を迎えるのは残念。
(2000・11・22掲載)