乱歩世界の美女たち Page 17 前へ 目次へ 次へ
大牟田瑠璃子
「白髪鬼」 (昭和6〜7年、「富士」連載)



ついに復讐のときは来た!わし(大牟田敏清)は成金紳士・里見重之に成りすまして、かつて愛した瑠璃子と偽りの結婚式をあげた。そして、いぶかる瑠璃子を、隠し財産を見せると告げて墓所の穴倉へ連れ込んだ。
わしの計画を悟った瑠璃子は、涙を流して許しを請うた。いや、言葉だけではない。恥しらずにも、彼結婚衣裳をかなぐり捨ててわしの眼の前にその美しい肌を見せびらかしたのである。闇の中に大きな桃色の花が開いたのだ。そしてそれがクネクネとあらゆる痴態を示して、うごめきだしたのだ。わしは歯をくいしばって、この美しき誘惑に抵抗した。

【あらすじ】
九州の地方都市に住む名家の当主・大牟田(おおむだ)は美しく若い妻、瑠璃子と幸せな日々を過ごしていた。しかし瑠璃子は情夫と共謀して大牟田の殺害を企て、彼を地獄谷へ突き落としたのだ。墓所の棺の中で蘇生した大牟田は、暗黒の世界に閉じ込められた恐怖のため一夜にして老人のごとく頭髪が真っ白になった。偶然墓所で見つけた中国海賊・朱凌渓の隠し財宝を利用して、成金紳士・里見重之として瑠璃子とその愛人の前に姿を現した。いまや非情な白髪鬼と化した大牟田は、恐るべき手段を用いて復讐を開始したのだ。

【作品の印象】
乱歩の翻案長編の第一作。マリー・コレリー女史原作、黒岩涙香訳の「白髪鬼」を現代語で乱歩風味をまぶして発表した作品(さらにその元作品もあります)。推理小説ではなく、原作つきなので、いつもの乱歩的破綻はみられない。前半のやま場は、密封された墓所の中での脱出劇。空腹に耐えかねた主人公が棺の中の
先祖の肉を食おうとするが、すっかり骨になっているのを発見してガックリする場面がゾーッとする笑いを誘う。後半の復讐劇に移っても乱歩の筆はさえわたり、最後まで冷静で強固な意志を貫く主人公の行動は読んでいても小気味良い。復讐談でありながら読後感も悪くはないが、「瓶詰め胎児」のエピソードはちょっと抵抗を感じるかもしれない。

【大牟田瑠璃子の印象】
18才のときに大牟田と結婚
、二年後から情夫をつくり、一年後に大牟田の死を迎えるから、22〜23才くらいだろうか。愛くるしい美女で、明るい笑い声が印象的である。その玉をころがすような笑い声から紹介され、瑠璃子の哀しい歌だけが大牟田の耳に届く場面で終わっている。乱歩作品の中では「声の美しさナンバーワン美女」であろう。考えてみればそんなに悪い女ではないような気もする。彼女の弱さを認めて再びやり直すという手もあったと思うが・・・。

ところで、ウェディング・ドレスでストリップというのもスゴイが、それが墓所の中というは、さすが乱歩と言わざるをえない。

(2000・11・27掲載)