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桜井品子
「妖蟲」(昭和8〜9年、「キング」連載)

品子が、二階の居間へ帰るために、裏階段を上がって、そこにある大広間の前の廊下を歩いていた時、彼女はふと障子のはめこみガラスの向うに、異様な物の姿を認めて、思わず立ち止まった。品子は、いぶかしさの余り、障子をあけて、二足三足、その床の間の方へ近づいて行った。近づいて行ったかと思うと、彼女は電気にでも打たれたように、ハッと立ちすくんでしまった。飛び出すばかり見ひらかれた両眼が、釘づけになったように、その物体に注がれたまま動かなかった。
そこには、人間ほどの大きさの、歯ぎしりの出るほどいやらしい真っ赤なサソリが、品子を睨みつけるようにうずくまっていたのだ。忌まわしい黒い虹のように醜く湾曲した尻尾の先には、槍の穂先がドキドキと鋭く光っていた。
【あらすじ】
相川珠子(Page26)はついに、美女ばかりを狙う「妖虫殺人団」の生贄となった。さらに頼みの綱の私立探偵・三笠竜介も謎の人物によって重症を負い明日をも知れぬ命となってしまった。妖虫の次の目標は珠子の先輩にあたる桜井品子であった。珠子の兄・守は、家庭教師の殿村京子とともに品子を妖虫の魔の手から守ろうとしたが、彼らの努力をあざ笑うかのように、恐るべきトリックによって品子は奪い去られ、「午後三時に家族の眼の前で品子は赤い血を流すであろう」という不気味な予告がなされた。
いまやボロボロの名探偵・三笠竜介に起死回生の手はあるのか?
【品子の印象】
相川珠子に負けず劣らずの美女。富豪代議士・桜井栄之丞のひとり娘。相川珠子の同窓生で二年先輩(だから二十才)で、二人のコンビは「美貌の友」と呼ばれていた。珠子に匹敵する美貌に加えて、天才少女バイオリニストとしての天賦の才能までもつ(天はニ物を与える)。しかも、「珠子にはない成熟した女性美を持つ」。それなのにヌード・シーンがないのは解せない。この子もよく失神する。最後に品子の身代わりに殺される飼い猫の冥福を祈ろう。
(2001・1・28掲載)