闇に蠢く
<サイケおやじの私的日活SM映画史>
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<3>昭和50年 「残酷・黒薔薇私刑」
| 元々映画が好きで、成人映画やピンク映画はもっと好きだった私は「生贄夫人」と「花と蛇」の二本によって完全にその泥沼に浸り込んでしまいました。 特に日活のロマンポルノが好きで、昭和五十年からほとんどの作品をリアルタイムで見ていくことになります。 おりしも世間は、といってもエロ映画好きの間だけでしょうが、例の「日活ロマンポルノ摘発事件」の裁判が佳境に入っていたこともあり、その中で発表される作品には製作者側の意地と映倫のプライド、そして警察のメンツが三つ巴の様相を呈しており、私には不思議な熱気が感じられました。 では、その中からいくつか……。 薔薇と鞭(昭和五十年三月) 監督:遠藤三郎 出演:二條朱美、山科ゆり、丘奈保美、井上博一 他 何故か予告篇を見た記憶が全く無く、タイトルだけで期待した作品でした。 ストーリーは写真家の妻にコンプレックスを持つ夫に彼女がM奴隷をプレゼントし、二人で辱めるというものだったと思います。 いちおう歪んだ恋の物語なんですが、SMでもロマンポルノでも無い中途半端な作品になったのは残念です。 女優さんはいずれも熱演なのですが、谷ナオミさんを見てしまった後では物足りません。ただし、二條朱美さんは良いです。彼女は確か三代目の団地妻を好演したちょっと熟女系の美人で、きりっとした面立ちと蕩けるような悶えのコントラストが魅力的でした。この作品は引退が近づいた頃のものですが、彼女にはもっとS役をやって欲しかったと思っているのは私だけでしょうか? 彼女の作品はあまりビデオ化されていないのが残念です。 実録おんな鑑別所・性地獄(昭和五十年三月) 監督:小原宏裕 音楽:ダウンタウン・ブギウギ・バンド 出演:梢ひとみ、ひろみ麻耶、芹明香 他 「薔薇と鞭」の併映作品で、はっきりとしたSM作品ではないのですが、前記作品よりよっぽどその傾向が強く、レズ、集団リンチ、例の「カンカン踊り」という名称の身体検査等々の場面が、<実録>とは大袈裟ですがそれなりに楽しめます。 美しいプロポーションでクールな梢ひとみ、肉感的で奔放なひろみ麻耶、したたかな芹明香と女優陣も好演です。ただし諸住暁氏の「二十一世紀女刑務所」のようなハードなところは無いので過度な期待は禁物です。 それにしても、あまり書きたくないし、犯罪を肯定するわけでもありませんが、ひろみ麻耶と芹明香は後に覚せい剤で逮捕され、自分が演じた役を現実世界で体験しなければならなくなるとは、人生は本当に残酷でせつないと思います。 あと、その他大勢で出演している女優さんは体の線の崩れた人がほとんど見当たらず、これは日活ロマンポルノ全体にいえることですが、特筆して良いことだと思います。 残酷・黒薔薇私刑(昭和五十年四月) 監督:藤井克彦 出演:谷ナオミ、東てる美、高橋明 他 ![]() 待望の谷ナオミさんSMシリーズの第三弾でした。 タイトルの「私刑」は「リンチ」と読ませます。(なお、現在発売されているビデオ等は「残酷・黒薔薇奴隷」と改題されているようです。) 舞台は戦時下の日本。 物語は旧家のお嬢様が女中とともに兄に会うために上京しますが、その兄は思想問題で追われており、二人は特高警察に捕らえられ、犯され、拷問されるのが前半、後半は将校クラブとして接収されたその旧家が舞台となり、国民の苦しみをよそに酒池肉林を繰り広げるという展開です。 傑作「生贄夫人」の後だけに比較は避けられないところですが、どうもこの作品には精彩がありません。それはおそらく、拷問やリンチというSMを成立させる要素を無理無く取り入れるために戦時下という舞台を設定したため、逆に猟奇味が失われたせいではないかと思います。 つまり、「日常の中の非日常」というSM愛好者が最もときめく要因が成り立たなくなっているということで、裏を返し深読みすれば、強烈な反戦映画としてとらえることも出来ますが……。 この設定は後に人気作「檻の中の妖精」で見事に再生されます。 また、製作者側の試行錯誤、もっとはっきり言わせていただければ、どうもSMというものを表面的にしかとらえていなかったのではないかと思います。 それは、全くこちらの想像力を刺激することの無いそのものズバリのタイトルにも表れており、いきなり「残酷」とか「私刑」は無いと思います。 それとあくまでも推測ですが、失礼ながらどうも藤井監督の演出もそのあたりに引きづられたのか、「生贄夫人」の小沼勝監督のヌメヌメした演出とは対照的に冷静すぎるのでは、と思います。 ただし藤井監督の名誉のために書き加えておきますが、やはりこの人無くしては日活ロマンポルノのブームは無かったはずで、前記した摘発事件で、監督デビュー作であり中川梨絵さん主演の「OL日記・牝猫の匂い」が摘発・起訴されても怯まずに撮り続けた姿勢は、エロ映画が好きな人ならばけっして忘れることは出来ないと思います。 ちなみにこの事件の時、中川梨絵さんや田中真理さんは警察に何回も呼び出され、「本当にやっているんじゃないか?」「前張りしている時にあそこの毛は剃っているのか?」「撮影中に濡れたり感じたりすることは無いのか?」「これまでの男関係は?」「あの場面の声をもう一度だしてみろ!」「あの時の足の広げ方をここでやって見せろ!」等々、とんでもないバカヤロウな質問でねちねちと取り調べられたそうです。 う〜ん、何やらここらあたりの展開で一篇のSM小説が書けるのでは……。 と、思わず力が入って脱線し、生意気な意見の羅列になってしまいましたが、やはり谷ナオミさんは妖艶だし、東てる美は可憐でセクシー! ちなみにこの頃から東てる美は「11PM」等の深夜テレビ番組や「プレイボーイ」とか「平凡パンチ」の他に芸能雑誌や一般週刊誌あたりのグラビアに少しずつ登場するようになり、仲間内の会話でも「俺、東てる美、すごい好きでさぁ」「えっ、お前も(俺だけの東てる美なんだぜっ)」というような、青春の一場面が甦ってまいります。 とにかく今では夢の顔合わせとしてこれは貴重! 一番良いのは、他の作品を見まくって、「もう谷ナオミさんの作品は無いの?」という状態の時に、「こんなん、ありましたけど……」と出されて見たら、これは感激すると思います。 したがって急いで見なくても良い作品だと、私は思います。 辛口、ご容赦……。 主婦の体験レポート・女の四畳半 監督:武田一成 出演:川崎あかね、宮下順子、絵沢萌子 他 早々の掟破りで大変申し訳無い気持ちですが、どうしても紹介したい、甘くせつなくほろ苦い人情ポルノの大傑作です。 「残酷・黒薔薇私刑」の併映作品ですが、当時のメモにはこちらの方が熱の入った書き込みがびっしりあるほど心に残ったのでした。 多くは書きません。機会があったらぜひ見てください。 DVD化熱望! ここまで書いてきて、今回は何やら自分の思い込みの激しさが出てしまい益々生意気な内容になって反省しております。 また、女優さんに対して「さん」付けの人と呼び捨ての人に区別してしまったことは、私の思い入れの大小とご理解願います。ただし、東てる美だけは、どうしても「東てる美」と呼び捨てたい! 何故でしょう? それはご想像にお任せ致します。 あと、作品を時系列的に紹介していながら、これは後で見たほうが良い等と、高飛車なことを書いてしまいました。 気になるものができたならば、それは本来時系列的に探求することが基本であると、私は考えます。 「花と蛇」を後追いで見なければならないことに気がついた時は本当に悔しい思いでしたから……。 したがって時間のある人は自分の気に入った作品に出会ったら、極力その最初のものから見ていくことをお勧めします。 私の文章もそのあたりを良く考えて、これは見てみたいと皆様に思っていただけるよう、書かせていただくつもりでおります。 第四回 「お柳情炎」、他へつづく |