闇に蠢く
<サイケおやじの私的日活SM映画史>
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<5>昭和51年 「濡れた壷」と「奴隷妻」
| 昭和五十一年といえば、いまだに忘れられないのが六月の「猪木対アリ」の異種格闘技戦でした。 NHKまでもが報道した最高につまらなくて、最高に緊張したガチガチのガチンコ試合だったと思います。 エロ映画の世界では元ゴールデン・ハーフ(ご存知ですか?)の高村ルナが主演した「修道女ルナの告白」が正月に公開され、続く「ルナの告白・私に群がった男たち」がそれぞれヒットし、バリバリのアイドルやメジャーな人がポルノ系作品に出演する嚆矢となりました。 逆に東てる美はどんどんメジャーな世界へ……。 飯島愛ような人は当時から存在していたのです。 それと前年十一月に「日活ポルノビデオ事件(注)」に無罪判決が出たせいか、ロマンポルノにも勢いのある充実した作品が沢山ありました。もちろんSM作品も……。 (注) 日活がラブホテル用に製作したポルノビデオが昭和四十六年に摘発された事件。昭和五十年に一審で無罪判決が出るがすぐに検事控訴、昭和五十三年に有罪判決。 宇能鴻一郎の濡れて立つ(昭和五十一年一月) 監督;加藤彰 原作:宇能鴻一郎 出演:東てる美、丘奈保美 他 ![]() この頃にはすっかりメジャーになった東てる美は浣腸を打たれたりすることは無くなりました。 「東てる美」主演なので取り上げましたが、ただのロマンポルノ作品なので、彼女のファンだけ見てください。 犯す!(昭和五十一年二月) 監督:長谷部安春 出演:八代夏子、岡本麗、二條朱美、谷ナオミ 他 ![]() SM作品では無いのですが、猟奇味を含んだハードボイルド作品なので紹介させていただきます。あえてジャンル分けすれば「倒錯アクションポルノ」というところでしょうか。 主演の八代夏子さんはこの作品以降「レイプの女王」と呼ばれたほど、犯され役のうまい人でした。 物語はナイフで脅されて犯された彼女が他の男では満足出来なくなり、強姦犯人と再会し自ら誘いをかけてのSEX、そしてその最中に男をナイフで刺し殺し、自分が絶頂に……、というものでした。 とにかく緊張感のある画面、どろどろした女の情念とクールな強姦魔の対比、そして何よりも八代夏子さんの演技! 特に強姦魔が残して行った胡桃を割れ目に突っ込んでのオナニー場面は強烈でした。 彼女は本当におしとやかな令嬢タイプなので、思わずこちらが犯してしまいたくなるほど感情移入が出来、さらに「やられ顔」が良く、また犯される時の大胆な演技がたまらない魅力です。 彼女はこの時二十歳位だったはずですが、なんと十八歳の時に結婚して離婚という過去があったとか……。活動期間が短かったので今では忘れられた存在ですが、熱心な隠れファンも多く(私一人でしょうか?)、一時は「花と蛇」の美津子役は……、と思っていた事もありました。 好き嫌いがあるかもしれませんが、機会があれば見ていただきたい作品です。なお谷ナオミさんはちょい役なので、あの場面の期待は禁物です。 濡れた壷(昭和五十一年三月) 監督:小沼勝 出演:谷ナオミ、藤ひろこ 他 ![]() 予告篇を見ていなかったのですが、小沼勝監督ということで大いに期待した作品でした。しかし内容は私には??? この作品は評論家筋では大変評判がよろしいようで、<視姦>をテーマにしたSMということになっておりますが、ストーリーも私には一度見ただけでは良く把握できず、久しぶりに映画館に居続けて二回見ることになりました。さらにその後もう一度見ております。 小沼監督の作品ですから映画そのものは粘っこい描写が多く、マネキンを愛撫する男、見つめられて悶える女、絡み合う視線がネチネチとしたSEXの場面等々全体的には耽美と倒錯の世界なんでしょうが……。どなたか見に行かれた方のご意見を伺いたい作品です。 ところで、この作品は私が初めて女性と見に行ったエロ映画でした。 この頃私は先輩から、ガールフレンドの一人がポルノ映画を見たがっているから連れて行って欲しいと頼まれ、ある女性を紹介されました。 こんなおいしい話があるでしょうか!? 私は理由とかその女性の素性とかを先輩にしつこく尋ねたのですが、ただ、彼女は育ちが良いから失礼の無い様にと、釘を刺されただけでした。 その夜、彼女から電話があり、待ち合せの場所や見に行く映画等の話をしましたが、その声の感じでは礼儀の正しい年上の人という雰囲気でした。 当時の成人映画を上映する劇場では大きめな所になるとアベック席とか、カップルシートとかいう名称の席があり、大抵は後ろの方の席で、鉄製の手摺で囲まれ、白いカバーが背もたれに掛けられて一般席から区別された一角となっていました。 その頃までには数え切れないほど成人映画を見ていた私ですが、その席に男女がいるのを見たのはほとんど記憶がありませんでした。 あぁ、私はついにあの席に座ることが出来るのだろうか?しかも育ちの良い美しい(と私は思い込んでいる)女性と……等々、その前夜はワクワクしてしまいました。 いよいよ当日、待ち合せの駅に少し早めに行きましたが、約束の時間を過ぎてもそれらしい人が現れません。 やっぱりなぁ、と思っていたら電話で聞き覚えのある声で話かけられました。声の主は私の近くに立っていた皮ジャンにサングラスの長髪の男でした。もう、おわかりでしょう、彼女は男に変装していたのです。男の欲望が渦巻く成人映画館へ行くのですから当然といえば当然なのですが、男も女も髪の毛が長かった当時でなければ成立しえないトリックでした。 その彼女はサングラスをとるとかなりの美形でスリムな体型の人でした。 で、二人で見に行ったのがこの作品でした(私にとっては三回目)。 座席は当然一般の席でした。私は上映中スクリーンに集中しているふりをして彼女の表情などを観察しておりました。もちろん下心とスケベ心でいっぱいでした。 そしてその日の三本立てを見終わった時には妙な緊張からすっかり疲れきっておりました。その後食事に行き、私自身があまりわかっていないこの作品について半可通な解説をし、彼女に感想を聞いたところ、「SMってメロドラマなんですね」という返事に思わず唸ってしまいました。単純にしてSM物語の本質をついた答えではないでしょうか? 皆様はどのようにお考えでしょうか? その後彼女とは四回、エロ映画を見に行きましたが、結局何もありませんでした。だらしのなさをお笑い下さい。 その後七月の初め、彼女から絵葉書をもらいました。そこには、今、新婚旅行でイタリアに来ている、フランス、スペインを回って……という文字が……。 その話を先輩にすると、彼女はある良家のお嬢様で結婚することは知っていた、そして彼女は同性愛者だ、という驚愕の話でした。 ゲッ、するとあの男装は! おそらく(団鬼六先生の小説的な)様々な事情でどうしても結婚しなければならなくなり、男と女の事を知るためにポルノ映画を見たかったのでは……等と勝手な想像を先輩に話しましたが答えは無く、真相は今もってわかりません。ただ、私には甘くせつない思い出が残りました。 本題から外れた情けないお話で申し訳ありませんでした。 禁断・制服の悶え(昭和五十一年三月) 監督:林功 出演:東てる美 他 上記作品の併映です。セーラー服と「東てる美」の両方が好きな人向けです。とりあえずのご紹介です。 奴隷妻(昭和五十一年六月) 監督:加藤彰 出演:谷ナオミ、高橋明 他 久々の傑作で日活SM映画が息を吹き返した作品だと思います。 内容は上流階級の人妻とその元運転手のかなわぬ恋の物語で、高橋明が谷ナオミさんをひたすらに慕い、虐め抜きます。こういう歪んだ恋愛があると濃密なSM空間が出現し、猟奇味も滲み出てくると私は思います。 名場面は沢山あるのですが、私が特に好きなのが、縛られて自由のきかない谷ナオミさんが尿意を堪えてトイレに向かいますが、ローブの長さが限られていますから目の前にあるトイレにどうしても行くことができません。 おしっこが漏れそうになり懸命に堪えながら抵抗する彼女はついに這いつくばってトイレの扉の所まで辿り着きますが、そこでついに……。 ロープを操る高橋明の嬉々とした表情と限界の苦しみに歪む谷ナオミさんの表情のコントラスト、そして漏らしてしまった直後の開放感と恥ずかしさが入り混じった彼女のせつない表情……。 さらにこの後、彼女は男に汚れた股間の始末をしてもらい、おしめ代わりに褌をされてしまいます。その時の谷ナオミさんの凄絶な表情はどうでしょう!? 私には震えがくるほど美しく見え感動致しました。 それと谷ナオミさんの裸体の上に乗せたステーキを男が食べる場面も強烈でした。肉の脂と彼女の肌がナイフによって切り裂かれ、滲み出す血と混ざり合ってなんとも妖しい雰囲気です。 実生活の私は妹の耳にガールフレンドがピアスの穴をあける場面でさえ直視出来なかったほどの気の弱さですが、こんな恐ろしい吸血場面で心がときめくとは、この世界の闇の深さを感じてしまいました。 あと、引き締まった加藤監督の演出と谷ナオミさんの肉体はとても素晴らしいです。 最初に見る作品としてこれはお勧めです。 江戸川乱歩猟奇館・屋根裏の散歩者(昭和五十一年六月) 監督:田中登 原作:江戸川乱歩 撮影:森勝 出演:宮下順子、渡辺とく子、中島葵、石橋蓮司 他 皆様ご存知の名作をロマンポルノ化したもので、「奴隷妻」の併映作品でした。 出演者はいずれも好演で、大正末期の雰囲気も良く出ているのですが、作品の性格上SEXをしなければならないので、犯人が屋根裏ばかりにも潜んでいられないため、私にとっては猟奇味が薄いのが残念でした。一度は見ておくべき作品だとは思いますが……。 それにしても宮下順子の声は良いです。 第六回 「夕顔夫人」、他へつづく |