IWASAKI ABACUS SCHOOL

サンライズ 2000年12月号A研究論文


「脳の研究・利き脳」
 平成9年8月26日NHK総合テレビで、「あなたは右脳型?左脳型?」という放送があ
りました。両手の組み方・両腕の組み方により、脳の使い方の傾向があるというものでし
た。出演は、京都大学坂野登教授とタレントの酒井ゆきえさんでした。そこで面白い実験
が行われました。

実験@ 両手を組みます。
どちらの親指が上になるかによって、
どちらの脳で考え始めるか(入り口)がわかります。
◆左手親指が上の場合→右脳を使う
◆右手  〃       →左脳を使う

実験A 両腕を組みます。
どちらの腕が上にあるかによって、
物事の最終結論を考える脳(出口)がわかります。
◆左腕が上の場合→右脳を使う
◆右腕が上の場合→左脳を使う
     


 珠算の先生方は良くご存知だと思いますが、珠算式暗算は右脳(イメージ脳)でおこな
います。左脳には言語中枢があり、言語脳・論理脳といわれています。一般的な計算は
左脳で行います。《ただしまれに左利きの場合、2つの脳の役割が逆転する場合が数%
あると言われています。》

 私は単純ですから「珠算塾にきている生徒たちは、右脳を鍛えるイメージトレーニング
を行っているので右脳型が多いのではないか?」と考えました。
そして4つの型に分類して調査してみました。(サンプル数178)
A 右・右脳型←左親指が上・左腕が上
B 右・左脳型←左親指が上・右腕が上
C 左・右脳型←右親指が上・左腕が上
D 左・左脳型←右親指が上・右腕が上

A型 20.8%
B型 39.3%
C型 19.1%
D型 20.8%  という結果が出ました。A+B型で約6割になります。




 もう少し何か導き出せるのではないかと思い、
次に暗算検定3級生以上(×暗算で4桁の積をイメージするので)と読上暗算4桁以上で
きる生徒の%をだしてみました。

 【暗算検定3級生以上】
A型 21.9%
B型 50 %
C型 12.5%
D型 15.6%  という結果が出ました。A+B型で約7割強という結果が出ました。

3級以上を暗算ができるとみなすのは心苦しかったのですが、1級・段位以上とすると
サンプル数が非常に少なくなるので仕方ありませんでした。

 【読上暗算4桁以上できる生徒】
A型 25 %
B型 58.3%
C型  0 %
D型 16.7%  という結果が出ました。

結論・・・塾生を調査した結果、暗算力がある生徒は
                     右脳型が多いという傾向が出ました。

 そこで新潟県珠算協会の先生にご協力をお願いして、同様の調査をしていただきまし
た。
  @手・腕の組み方(性別)
  A珠算・暗算の級(段)
  B読上暗算が得意な人(4桁以上)
          以上の3点です。
     各教室の詳しい数値データは、省きますが以下のような結果が得られました。

  【暗算検定3級生以上】
A型 24.4%
B型 31.4%
C型 20.1%
D型 24.1%
  【暗算検定2級生以上】         
A型 21.7%                
B型 34.2%                
C型 20.5%
D型 23.6%
  【暗算検定1級生以上】
A型 30.8%
B型 30.8%
C型 21.2%
D型 17.3%
  【暗算検定段位生】
A型 30.4%
B型 39.1%
C型 21.7%
D型  8.7%

  【暗算検定段位生・女子】
A型 35.3%
B型 41.2%
C型 17.6%
D型  5.9%

●男子より女子のほうに右脳型が多い。
●暗算1級以上になると、右脳型の割合が高くなる。段位になるともっと顕著になる。
  男子には、偏った傾向は見られない。
  しかし女子段位生は、75%以上が右脳型であった。

【読上暗算4桁以上できる生徒】
A型 22.5 %
B型 39.4 %
C型 14.1 %
D型 23.9 %
●読上暗算4桁以上できる生徒は、右脳型が多い。女子に少し強い傾向がみられた。
A 右・右脳型←左親指が上・左腕が上
B 右・左脳型←左親指が上・右腕が上
C 左・右脳型←右親指が上・左腕が上
D 左・左脳型←右親指が上・右腕が上 



 そこでもっと別の角度から分析したくなりました。
保育園児はどうなのか(122人)・県内有数の進学高校の生徒はどうなのか(199人)
調査にご協力していただきました。

調査内容は、保育園児は@手・腕の組み方(性別)のみ
        高校生は  @手・腕の組み方(性別)とA珠算・暗算の級(段)にしました。
          残念ながらAの暗算取得級まで調査することは出来ませんでした。


保育園児について面白い結果が出たので
詳しく%を記述したいと思います。
 【保育園児全体】
A型30.3%B型25.4%C型18.9%D型25.4%
 【保育園児1.2歳児全体】
A型31.3%B型31.3%C型 6.3%D型31.3%
 【保育園児3歳児全体】
A型40 %B型25 %C型17.5%D型17.5%
 【保育園児4歳児全体】
A型18.5%B型25.9%C型18.5%D型37 %
 【保育園児5歳児全体】
A型28.2%B型23.1%C型25.6%D型23.1%

 女児で面白い数字が出たので%を記述します。
 【保育園児1.2歳児・女子】
A型16.7%B型50 %C型16.7%D型16.7%
 【保育園児3歳児・女子】
A型52.4%B型23.8%C型14.3%D型9.5%
 【保育園児4歳児・女子】
A型35.7%B型28.6%C型14.3%D型21.4%
 【保育園児5歳児・女子】
A型41.2%B型11.8%C型23.5%D型23.5%

○女児は極端に右脳型が多い。サンプル数は多くないのですが3歳児までは、70%以
上が、右脳型でありました。夢見る少女から5歳ぐらいなると現実派に転換していくので
しょうか。『三つ子の魂百までも』に通じることがあるのでしょうか。
A 右・右脳型←左親指が上・左腕が上
B 右・左脳型←左親指が上・右腕が上
C 左・右脳型←右親指が上・左腕が上
D 左・左脳型←右親指が上・右腕が上 


次に高校生について%を記述します。
  【高校生全体】
A型29.1%B型31.2%C型15.6%D型24.1%
  【高校生珠算2級生以上】
A型35.7%B型27.1%C型18.6%D型18.6%
○高校生については、珠算取得級で調査したので単純に結びつけてはいけないと思い
ますが、女子は珠算取得級が上がるにつれて右脳型の割合も比例しています。
珠算経験者が59.3%いたのは、特筆すべきことではないでしょうか。


 『調査の結果・感想』
  素人調査・分析なので、読上暗算4桁以上できるという区切り方が、妥当であったかど
うかよくわかりません。参考文献が非常に難解で、結論を導くまでにいきませんでした。
興味がある先生は、調査してみてください。特に読上暗算の高桁ができる・暗算段位生
が在籍している塾などで調べていただけたらなと思います。全国大会などで調査したら
面白いかもしれません。

  『その後』
 この研究の出発点である坂野登教授(元京大教授・現在親和女子大学教授)にお手紙
平成13年6月に送りました。

先生から、すぐに返事のメールがきて興味があるのでデータを送ってほしいということに
なりました。毎日のようにデータとにらめっこ。先生とのメールのやりとり。そして先生か
らの質問・アドバイス。そのやりとりの一部を掲載します。

2001/06/24
題名 「お手紙有り難うございました」

  岩崎昭夫様
 お手紙有り難うございました。サンライズ12月号Aを興味深く拝読いたしまし
た。特に暗算力がある生徒は右脳型が多いという結論であります。
そこでお願いとご質問ですが、珠算で段位があがる場合、殆ど全ての子どもたちががん
ばればできることなのか、それとも脱落してしまった子どもたちがいて、結果的に少数に
なっていくのか、小生経験がありませんので、その辺の事情をお知らせいただければう
れしいのですが。
 なぜかと申しますと、指組みは変化しにくいはずなので、AB型が増えるということは、
そのような人が結果的には残ったということではないかと思ったからです。
それからお願いは、協会あるいは保育園児、さらには進学校のデータの詳しい男
女別の人数を知りたく思います。全て統計学的に意味のあることか調べてみたく思い
ます。いずれにせよ貴重なデータを拝見いたし、感動しております。今後とも新しい
知見が得られましたら是非お知らせ下さい。添付ファイルでお送りいただくと便利か
と思います。

 小生はテレビにありましたように、現在は神戸親和女子大学に勤務しております
またご承知かも知れませんが、「しぐさでわかるあなたの利き脳」日本実業出版社で、も
う少しわかりやすいものを書いております。
                                    坂野 登
2001/06/28
題名 「おたずね」

 データが手にいればというお願いですが、新潟県珠算協会での調査には、
岩崎学園のように、珠算を習っている全体の生徒についての数値はないので
しょうか。もしあればそれが全体の数値となり、それとそれぞれ比較することができ
て好都合です。よろしくお願いいたします。

                                    坂野 登
■岩崎からデータの送信■

2001/06/29
  岩崎昭夫様
 早速のメール有り難うございました。3つの塾のデータでも結構ですので、それに
関係する全てのデータをお送りいただければ幸いです。またS高校とはどのような学
校なのかお知らせいただければと思います。小生のもっている高校生のデータと比べ
ますと、右脳型が多すぎるので普通科ではなく、特定の商業科などの高校ではないか
とふと思いましたから。なおいただいたデータは分析しましたところ、統計的には意
味のある結果とはまだでておりません。その理由として珠算能力の低い群でも右脳型
になっているので、それよりも相当右脳の傾向が強く出なければ統計的には意味のあ
る結果とはならないわけです。そのような理由からも、総人口が必要なわけです。よ
ろしくお願いいたします。

■岩崎からデータの送信■

2001/06/30 08:30
  岩崎 昭夫 様
 早速のデータ有り難うございました。数日内にお返事いたします。

                                      坂野 登
2001/06/30 18:41
   岩崎 昭夫 様
  再度の送信で恐れ入りますが、お送りいただいた塾別に以前お送りいただいた3
級以上、2級以上、1級以上、暗算段位、暗算得意別の資料をお送りいただけないで
しょうか。新潟県3級以上のデータに比べますと、お送りいただいた塾での右脳型
合計の割合は低く、従って全体では3級以上よりも右脳型は低い可能性があり、段位
が上がれば右脳型になるということが、統計的に検証される可能性が増してきました
ので、是非検討いたしたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

                                    坂野 登
■岩崎からデータの送信■  

2001/07/02 10:19
   岩崎昭夫様
 詳しいデータをお送りいただき有り難うございました。早速分析にかかり、現在の
所統計的に意味のある結果は以下の通りです。分析は全資料がそろっている7校で行
いました。意味のある結果は指腕ともに左上の右脳型と、ともに右上の左脳型で出て
きました。

  4級以下 右脳型=71,左脳型=90;1級以上 右脳型=13,左脳型=4
となり、1級以上は明らかに4級以下と逆の傾向にあり、右脳型が増えていることが
わかります。また同様に
  1級以上 右脳型=13,左脳型=4;それ以外の人 右脳型=145,左脳型
=105となり、同様の傾向が見られます。以上のことから1級以上の人は少なくと
もそれ以外の人と比べて、右脳型であるといえるようです。男女別、それ以外のクラ
ス別は現在の所、人数の関係や傾向がはっきりしないこともあり、統計的な結果はい
えないようです。まだ分析は進みますのでまたご連絡いたしたいと思います。なお指
単独では出なかったことから、珠算は入力だけでなく出力も右半球が関係していると
いうことになりそうです。

                                      坂野 登
2001/07/02 11:43
先ほどお送りした結果に新に出た結果を追加してお送りします。
坂野 登

追加分:
 暗算力3級以上、2級以上、あるいは暗算力得意の群で、右右群と左左群の間に男
女差が見られ、女子では左左群が多いのに男子では右右群が多いという、統計的に意
味のある結果になりました。暗算力が上級になると、男子の数が減少するのは暗算を
左半球で行っている傾向が強いためかも知れないということです。経験上のご示唆が
いただければ幸いです。

■岩崎から送信■
2001/07/02 素人分析です。
坂野先生 わたしなりにもう少しデータを整理してみました。

>> =105となり、同様の傾向が見られます。以上のことから1級以上の人
>は少なくともそれ以外の人と比べて、右脳型であるといえるようです。

私の研究の出発点は,ここからでした。
自分の指導している生徒の型を調べたら、なぜか右脳型が読上暗算が得意とい
う結果がでました。

>> 単独では出なかったことから、珠算は入力だけでなく出力も右半球が関係
>しているということになりそうです。

これは、暗算力全国のトップの人のはなしですが、「計算0秒を目指してい
る」ということを講演会で聞きました。
つまり最初に1問計算する→答えを2秒ぐらいで書く(この時間に次の問題を
みて計算を完了させる)→→答えを2秒ぐらいで書く(この時間に次の問題を
みて計算を完了させる)
これを繰り返していれば、計算に時間をかけないということになります。

暗算は,脳波測定・血流測定などでもわかっていますが
右脳の後頭葉中心に行われます。

上記の人は,いろいろなイメージの仕方があるようです。
1つの問題を、2段にして計算する人。
平成10年10月20日タモリ氏の番組『笑っていいとも』に
出演した飯野信彦君・・・世界大会で優勝
その後3ヶ月間ぐらい準レギュラーのように出演していました。

飯野君の父上とお話する機会があり、信彦君の暗算のイメージのやりかたは
脳の中で2段で行っているということでした。

現在読上暗算で世界一の桁数の計算が出来る波多野優香さんは、
言語脳の左脳もイメージ脳として使いこなし脳全体でイメージしているという
話もきいたことがあります。

一般的には,暗算は珠をイメージして加減しますが、
上記の世界にはいると 98+15をいちいちイメージ珠の操作しないで
113という答えがでてくというはなしです。
(一般的には、98+10をやり108 そこに5をたして113
というイメージ計算を行います)

> 暗算力3級以上、2級以上、あるいは暗算力得意の群で、右右群と左左群
>の間に男女差が見られ、女子では左左群が多いのに男子では右右群が多いという、>
>統計的に意味のある結果になりました。暗算力が上級になると、男子の数が減少する>
のは暗算を左半球で行っている傾向が強いためかも知れないということです。経験上>>
のご示唆がいただければ幸いです。

男子の調査人数が少ないのでなんともいえません。

仮説として、
先生のご指摘の通り
暗算上級者の男子は,脳の全体を使って暗算をおこなっている。
生まれながらにして右脳の働きが女子に比べて良いので、
右脳に大きな作業をさせなくてすんでいる。

暗算上級者の女子は,上記の逆説になりますが
右脳を一生懸命働かさないとイメージしにくい。
『地図のわからない女たち』など本にありますが
女子右脳を働かせる何らかの因子を持っている人は,
暗算力が伸びる可能性が大きい。
因子を持っている子が少ないのではないでしょうか。

追伸 いろいろの比率を出してみました。
添付ファイルで送ります。




  参考資料
「ヒトはなぜ指を組むのか」 坂野登著 青木書店
「かくれた左利きと右脳」 坂野登著 青木書店


 1つの疑問にぶつかりました。『そろばんを学習すると、暗算ができるようになる?』生
の中には、ほんの数人でしたがそろばんの珠をイメージできない・しにくい人がいまし
た。

 私は、【利き脳】と何か関係があるのではないかと思いました。【利き脳】が影響し、イメ
ージしにくいという1つの仮説を立ててみました。もしこのままにしたらそれこそ羊頭狗肉
になってしまいます。私の指導力不足という一言で片付けるのは簡単です。しかし何か
良い指導法がないかと捜し求めていたら、前述のパソコンを使用したイメージ暗算にた
どり着くことができました。


日本海の夕日

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