
![]()
国連・子どもの権利委員会
2001.2.8.
子どもの権利条約 第29条1項
1 締約国は、子どもの教育が次のことを指向すべきことに同意する。
(a)
子どもの人格、才能、ならびに、精神的および身体的能力をその可能最大限度まで発達させること。
(b)
人権および基本的自由ならびに国際連合憲章にうたう原則に対する尊重を発達させること。
(c)
子どもの父母、子ども自身の文化的アイデンティティ、言語および価値、子どもの居住国および出身国の国民的価値観、ならびに自己の文明と異なる文明に対する尊重を発達させること。
(d)
理解、平和、寛容、および両性の平等に関する精神、ならびに、すべての人民、民族的、国民的、宗教的集団、および先住民の間の友好の精神に従い、自由な社会における責任ある生活のために子どもを準備させること。
(e)
自然環境に対する尊重を発達させること。
一般的注釈1(2001):教育の目的
(a)第29条1項の意義
1. 条約29条1項の重要性は広範囲にわたる。本条項に定められ、すべての締約国によって合意された教育の目的は、本条約の本質的な価値、すなわち、あらゆる子どもが生まれながらに有している人間としての尊厳および平等かつ不可侵の権利を促進し、援助し、かつ保護する。条約29条1項の5つの号に定められているこれらのすべての目的は、発達に関する子どもの特別のニーズおよび子どもの発達しつつある多様な能力を考慮するものであり、子どもの人間としての尊厳および子どもの権利の実現と直接に結びついている。これらの目的とは、人権に対する尊重の発達(29条1項(b))、アイデンティティおよび帰属(affiliation)に関する感覚の強化(29条1項(c))、子どもの社会化および他者との主体的交流(interaction)(29条1項(d))、および子どもの環境との主体的交流(29条1項(e))を含む子どもの可能性すべての全面的な発達(29条1項(a))である。
2. 29条1項は、28条において認められている教育に関する権利を、子どもの権利および子ども固有の尊厳を実現する質的内容によって補充するだけでない。本条項は、教育が子ども中心的なもの、子どもに役立つもの、および子どもをエンパワーするものである必要性を強調する。さらに、教育のプロセスが、29条1項に表明されているまさにその原則に基づく必要性を強調する(1)。あらゆる子どもが権利を有する教育は、子どもにライフ・スキルを提供し、すべての範囲の人権を享受する子どもの能力を強化し、かつ、人権に関する適切な価値を吹きこまれた文化を促進するよう設計(design)されたものである。子どものスキル、学習能力、その他の能力、人間としての尊厳、および自尊心と自信を発達させることにより、子どもをエンパワーすることが目的なのである。このような意味の「教育」は、正規の学校教育をはるかに超えて、その人格および才能と能力を発達させ、かつ、社会において十全かつ満足のいく生活を送ることを子ども個人および子ども集団に可能とする広い範囲にわたる生活経験と学習のプロセスを含むのである。
3. 子どもの教育に関する権利は、教育へのアクセス(28条)の問題であるばかりでなく、教育の内容に関する問題でもある。29条1項の価値にしっかり根付いた内容の教育は、あらゆる子どもにとって、グローバライゼーション、新しいテクノロジー、および関連する現象によって引き起こされる根本的な変化の時代に伴う困難(challenge)に対して、バランスの取れた、人権に役立つ対応を、その人生において達成する努力のために不可欠な道具である。このような困難には、とりわけ、グローバルなものとローカルなものの間の、個人と集団の間の、伝統的なものと現代的なものの間の、長期的な見通しと短期的な見通しの間の、競争と機会の平等の間の、知識の拡大とそれを吸収する能力の間の、および精神的なものと物質的なものの間の緊張関係が含まれる(2)。だが、第29条1項において具体化されている要素は、教育に関する実に重要な国内的および国際的なプログラムおよび政策において、大きく欠落しているか、あるいは、後知恵的な飾りとして提示されていることがあまりに多すぎると思われる。
4. 29条1項は、教育が広範囲にわたる価値を指向すべきことに締約国が同意すると規定する。この同意は、世界の多くの地域において打ち建てられた宗教、国家、および文化の境界を乗り越える。29条1項に表明されているさまざまな価値のいくつかは、一見すると、ある特定の状況においては、互いに衝突するものと考えられるかもしれない。1項(d)の言及する理解、寛容およびすべての人民間の友好を促進する努力は、1項(c)にしたがって子ども自身の文化的アイデンティティ、言語および価値、子どもの居住国および出身国の国民的価値、ならびに、子ども自身の文明とは異なる文明に対する尊重を発達させるために設計された政策と自動的に適合するものではないかもしれない。しかし、この規定の重要さの一部は、教育に対するバランスの取れたアプローチの必要性および、対話と違いに対する尊重を通して多様な価値を調和させることに成功する教育の必要性を認めていることにまさに存在する。さらに、子どもは、人々の集団をお互いに歴史的に切り離してきた違いの多くを橋渡しする独自の役割を果たす能力を有している。
(b)29条1項の機能
5. 29条1項は教育が達成すべきまざまな価値を列挙するにとどまらない。条約の全体的構成のなかにおいて、29条1項は以下の内容をとりわけ強調する。
6. 第1に、29条1項は条約の諸規定の間の不可欠な相互的な結びつき強調する。29条1項は、他のさまざまな規定に依拠し、それらを強化し、統合し、補完するものであり、それらから分離して29条1項を適切に理解することはできない。差別の禁止(2条)、子どもの最善の利益(3条)、生命、生存および発達に関する権利(6条)、ならびに、意見を表明しそれを考慮される権利(12条)という条約の一般原則に加えて、少なくとも以下に列挙する他の多くの条項に言及することができる。親の権利および責任(5条および18条)、表現の自由(13条)、思想の自由(14条)、情報に関する権利(17条)、障害を持つ子どもの権利(23条)、健康教育に関する権利(24条)、教育に関する権利(28条)、および、少数グループに属する子どもの言語と文化に関する権利(30条)。
7. 子どもの権利は、文脈から切り離された孤立した価値ではなく、29条1項および条約の前文に部分的に記述されているより広い倫理的な枠組みの中に存在している。条約に対する批判の多くに対する回答は、この規定によって示される。例えば、この条項は、親に対する尊敬の重要性、より広い倫理的、道徳的、精神的、文化的または社会的枠組みの中において権利を理解する必要性とその重要性、および、子どもの権利のほとんどは外部から押し付けられたものではまったくなく、地方のコミュニティの価値の中に深く位置づいているという事実の重要性を強調する。
8. 第2に、この条項は、教育に関する権利が促進されるべきプロセスを重要視する。したがって、教育のプロセスにおいて伝達される価値は、他の権利の享受を促進する努力を危うくしてはならず、それを強化すべきである。このプロセスには、カリキュラムの内容だけでなく、教育の過程、教育方法、および、家庭、学校その他の場所のどこであろうともそこで教育の行われる環境が含まれる。校門を通りすぎたことによって子どもはその人間としての権利を失わない。したがって、例えば、子ども固有の尊厳を尊重し、かつ、12条1項にしたがって自由に自己の意見を表明すること、および、学校生活に参加することを子どもに可能とするように教育は提供されなければならない。28条2項に示されている懲戒に対する厳格な制限を尊重し、かつ、学校における非暴力を促進するように教育は提供されなければならない。本委員会はその最終所見において体罰の使用は、子ども固有の尊厳も、学校懲戒に対する厳格な制限も尊重しないことを繰り返し明らかにしてきた。29条1項に認められた価値に従うためには、学校が、その言葉の持つ完全な意味において子どもに役立つものであり、かつ、すべての側面において子どもの尊厳と一致すべきことが要求されることは明らかである。学校生活への子どもの参加、学校コミュニティと生徒自治会の形成、ピアー・エデュケーション、ピアー・カウンセリング、および学校懲戒手続への子どもの参加は、権利の実現を学び、かつ、経験するプロセスの一貫として促進されるべきである。
9. 第3に、28条が教育制度を設立し、かつ、それへのアクセスを確保する締約国の義務に焦点を当てるのに対し、29条1項は、ある特定の質の教育に関する個人的および主観的権利を強調する。この条項は、条約が子どもの最善の利益のために行動することの重要性を強調していることに従い、子ども中心的教育というメッセージを強調している。すなわち、教育の中心的目標(Key
goal)は、あらゆる子どもが独自の性格、利益、能力および学習ニーズを有しているという事実を認めて、個々の子どもの人格および才能と能力を発達させることである(3)。したがって、カリキュラムは子どもの社会的、文化的、環境的、経済的文脈および子どもの現在と将来のニーズに直接関係していなければならず、かつ、子どもの発達しつつある能力を十全に考慮したものでなければならない。教育方法は多様な子どもの多様なニーズに合わせられるべきである。教育は、子どもが必須のライフ・スキルを学習し、かつ、一人の子どもも、その人生において立ちはだかることが予想される困難に直面する備えのないまま、学校を去ることがないように確保することを目的としなければならない。基本的なスキルには、識字能力および基本的計算能力だけでなく、バランスの取れた判断をする能力、非暴力的に紛争を解決する能力、健康的なライフスタイルをおくる能力、良い社的関係および責任を発展させる能力、批判的思考を発展させる能力、想像的な才能を発展させる能力、および、人生における自分の選択を追及するのに必要な道具を子どもに与えるその他の能力などのライフ・スキルも含まれる。
10. 条約2条に列挙されているいかなる根拠に基づく差別も、それが公然とまたは隠れて行なわれようと、子どもの人間としての尊厳を犯し、かつ、教育の機会から恩恵を受ける子どもの能力を危うくし、あるいは、それを破壊しうる。教育の機会への子どものアクセスを否定することは主に条約28条に関連する問題である。しかし、29条1項に含まれている諸原則に従わない多様な方法により、同様の効果がもたらされうる。極端な例を挙げれば、性差別は、性的平等の原則と一致しないカリキュラムなどの慣行、教育の機会から女子が得られる恩恵を制限する措置、および、女子の参加を妨害する安全ではないまたは女子に有害な環境により強化されうる。障害を持つ子どもに対する差別も、正規の教育制度および、家庭を含む多くの非正規の教育的状況に浸透している(4)。HIV・AIDSを持つ子どもは正規および非正規の双方の教育において強く差別されている(5)。このような差別的慣行のすべては、子どもの人格、才能、ならびに、精神的および身体的能力の可能最大限の発達を教育が指向すべきとする29条1項(a)の要求と真っ向から矛盾する。
11. 本委員会は、また、29条1項と、人種的偏見、人種差別、排外主義、および関連する不寛容に対する闘いとの間の関連を強調したい。人種的偏見および関連する現象は、人種的、民族的、宗教的、文化的、言語的およびその他の形態の違いに対する無知および根拠のない恐れ、または歪められた価値の教育またはその流布が存在するところではびこる。このような誤りのすべてを矯正するための信頼に足る永続的な手段は、差異に対する尊重を含む29条1項に示されている価値に関する理解と認識を促進し、かつ、差別と偏見のすべての側面に挑戦する教育を提供することである。教育は、人種的偏見および関連する現象の害悪に反対するすべてのキャンペーンにおいて最も高い優先順位を与えられるべきである。歴史的に存在してきた人種的偏見、とりわけ、ある特定のコミュニティにおいて標榜されている、または、標榜されてきた人種的偏見についての教育の重要性が強調されなければならない。人種的偏見に基づく行動は、「他者」によってのみなされてきたものではない。これゆえ、人権、子どもの権利および差別禁止原則を教えるときには、子ども自身のコミュニティに焦点を当てることが重要である。このような教育は、人種的偏見、民族的差別、排外主義、および関連する不寛容を予防し、廃絶することに効果的に寄与することができる。
12. 第4に、29条1項は、教育に対する全面的アプローチを強調する。このアプローチは、利用可能な教育の機会が、身体的、精神的(mental,
spiritual)、および感情的側面の間の、知的、社会的および実践的内容の間の、そして、子ども期および生涯の間の適切なバランスを実現することを確保する。教育の全体的な目的は、自由な社会に十全かつ責任をもって参加する子どもの能力と機会を最大化することである。知識の蓄積に主要な焦点を置き、競争を促進し、子どもに過度な負担を与えるような種類の教授(teaching)はその才能と能力を可能最大限までに調和的に発達させることを深刻に妨げうる。教育は、子どもに役立つべきであり、それは、個々の子どもをはげまし、かつ、その意欲を高めるものである。学校は、人間的な雰囲気を促進し、かつ、その発達しつつある能力にしたがって子どもを発達させるべきである。
13. 第5に、29条1項は、平和、寛容および自然環境尊重のための教育を含む条約に込められた様々な特定の倫理的価値を、全面的かつ統合された方法により、促進し、かつ強化するように教育が設計され、かつ、提供される必要性を強調する。これは学際的なアプローチを要求する。29条1項の価値の促進と強化は、問題が他のところで存在するので必要であるばかりではなく、子ども自身のコミュニティに存在する問題に焦点を与えるものでなくてはならない。このような教育は、家庭においてもなされるべきであるが、学校およびコミュニティは重要な役割を果たさなければならない。例えば、自然環境に対する尊重を発達させるためには、教育は、環境と持続的な発展という問題を社会経済的、社会文化的、人口的側面と結び付けなければならない。同様に、自然環境に対する尊重は、家庭、学校、およびコミュニティにおいて子どもによって学習されるべきであり、国内的および国際的問題の双方を含むべきであり、地方的、地域的、または地球的環境プロジェクトに子どもを積極的に関与させるべきである。
14. 第6に、29条1項は、他のすべての人権を促進し、すべての人権が不可分一体のものであることの理解をすすめるにあたって、適切な教育の機会の果たす重要な役割を示している。自由な社会に十全かつ責任を持って子どもが参加する能力は、教育に対するアクセスをあからさまに否定することによってだけでなく、この条項において認められる価値に関する理解を促進しないことによっても害され、または、傷つけられる。
(c)人権教育
15. 29条1項は、1993年ウィーン世界人権会議において求められ、国際機関によって促進されている人権教育に関する多様なプログラムの礎石としても見なされうる。しかしながら、このような活動において子どもの権利を最重要視する(prominence)ことが要求されるにもかかわらず、子どもの権利はかならずしも最重要視されてきたわけではない。人権教育は人権条約の内容についての情報を提供すべきである。しかし、子どもは、家庭、学校またはコミュニティにおいて、現実に人権基準が実施されるのを見ることによって、人権について学習すべきである。人権教育は包括的かつ、生涯に渡るプロセスであるべきである。子どもの日常生活および日常経験において人権の価値を実現することから始められるべきである(6)。
16. 29条1項に具体化されている価値は平和な地域で暮らしている子どもにとって意味があるが、紛争または緊急状態のもとで暮らしている子どもにとってより重要である。ダカール行動要綱が示すように、紛争、自然災害、および政情不安の影響のもとにある教育制度においては、教育プログラムが相互理解、平和および寛容を促進し、かつ、暴力と紛争を回避することに貢献するように行なわれることが重要である(7)。国際人道法に関する教育は、29条1項を実効性あらしめようとする努力の重要でありながら、あまりに無視されることの多い内容を構成する。
(d)実施、監視、および審査
17. 本条項に示されている目的および価値は、きわめて一般的な言葉から始まり、その含意はきわめて広範囲に渡りうる。これゆえに、多くの締約国は、関連する諸原則を法律および行政規則に示すことを不必要であるばかりか、不適切であると推量しているようである。しかしこのような推量は正当化されない。国内法および政策において明確かつ正式に承認されなければ、関連する諸原則は、教育政策を純粋に指導するために用いられないし、用いられることはない。本委員会は、したがって、すべての締約国に、これらの諸原則を、すべてのレベルの教育政策および法律に正式に導入するため必要な措置を取ることを求める。
18. 29条1項を効果的に促進するためには、様々な教育目的を導入するためのカリキュラムの根本的再編成、ならびに、教科書、その他の教材、教育技術、および学校施策の体系的な見直しが要求される。より深い変化を助長することなく、関連する目的および価値を既存のシステムに付け足すだけのアプローチは、明らかに不適切である。関連する価値を伝え、促進し、教え、かつ、可能な限りそれを体現することを期待されている者自身がその重要性を納得していなければ、関連する価値は、より広範なカリキュラムの中に効果的に統合されえず、したがって、カリキュラムと整合的なものとなりえない。したがって、29条1項に示された諸原則を促進する教員養成および教員研修の計画は、教師、教育行政関係者および子どもの教育に関係するその他の者にとって必須である。学校において用いられる教授方法が、子どもの権利に関する条約の精神および29条1項に規定された教育の目的を反映することも重要である。
19. さらに、学校環境それ自体も、29条1項(b)および(d)において求められている、理解、平和、寛容、および両性間の平等に関する精神、すべての人民、民族的、国民的、宗教的集団、および先住民の間の友好の精神、ならびに、自由を実現するものでなければならない。いじめまたはその他の暴力、および排除的な慣行をそのままにしている学校は、29条1項の要求を満たすものではない。「人権教育」という言葉はその含意を過度に単純化されて用いられることがあまりにも多い。正規の人権教育に加えて必要とされているのは、学校および大学だけでなく、より広いコミュニティにおいても人権に資する価値と政策を促進することである。
20. 一般的に言って、条約上の義務にしたがって締約国政府が取ることが要求されているさまざまな取り組みは、42条にしたがって条約本文を広く普及しているのでなければ、十分に地に足がついたものとはならない。条約の普及により、子どもの権利の促進者および擁護者としての役割を子どもが日常生活において果たすことが容易となる。締約国はこの目的を達成するために取られた措置を報告すべきである。国連人権高等弁務官事務所は、様々な言語に翻訳されている条約の包括的なデータベースを開発すべきである。
21. 広い意味でのメディアもまた、29条1項に示された価値と目的を促進することおよび、他の者によるそれらの目的を促進する努力を自らの活動により損なわないように確保することの双方において中心的な役割を果たす。政府は、17条(a)に従い、「マスメディアが子どもにとって社会的および文化的に有益な情報および出版物を普及することを助長する」ためにあらゆる適切な措置を取ることを条約によって義務付けられる(8)。
22. 本委員会は、締約国に、教育がダイナミックなプロセスであることにより大きな注意を払い、かつ、29条1項に関連する変化を測定するための措置を開発するよう求める。すべての子どもは良い質の教育を受ける権利を有している。この権利は、学習環境、教授学習過程と教材、および学習成果の質に焦点が当てられるべきことを要求する。本委員会は、現在学校に通いまたは通っていない子ども、教師、若者リーダー、親、教育行政関係者および視学官を含むプロセスにかかわっているすべての当事者の意見の検討に基づいて達成された進歩を評価する機会となりうる調査の重要性を指摘する。これに関連して、本委員会は、子ども、親および教師が教育に関する決定に意見を提出できることを確保しようとする全国的レベルでの監視の役割を強調する。
23. 本委員会は、29条1項に列挙された目的の実現を促進しそれを監視するための包括的な全国的行動計画を開発することを締約国に求める。このような計画が、子どもに関する全国的行動計画、全国的人権行動計画または全国的人権教育戦略というより大きな文脈の中において策定されている場合には、政府は、それにもかかわらず、29条1項において扱われている問題のすべてに、子どもの権利という視点から、計画が対応していることを確保しなければならない。本委員会は、国連および教育政策および人権教育にかかわるその他の国際機関が、29条1項の効果的実施を促進するようより良き調整を実現するよう要請する。
24. この条項に示された価値を促進するためのプログラムの設計と実施は、人権侵害が類型的に生じるほとんどすべての状況に対する政府による標準的な対応の一部となるべきである。例えば、18歳未満の者が関与する人種的偏見、人種差別、排外主義および関連する不寛容に関する主要な事件が起きている場合には、条約において一般的に示されている価値および、特に29条1項において示されている価値を促進するためになすべきことを政府がまったくしていないと合理的に推測されうる。条約に認められた権利を実現するにあたって積極的な影響を与えうるあらゆる教育技術に関する調査およびその採用を含む29条1項に基づく適切な追加的な措置が取られるべきである。
25. 締約国は、また、既存の政策または慣行が29条1項と適合的でないとする申し立てに対応する審査手続を設立することを考慮すべきである。このような審査手続は、かならずしも、新しい法的、行政的または教育的機関の創設を必要としない。審査手続は国内人権機関または既存の行政機関にゆだねられうる。本委員会は、締約国が本条項に関して報告をなす場合に、全国的および地方的レベルにおいて存在する、条約と適合的ではないとして申し立てられた既存のアプローチを審査する純粋な可能性を特定するよう要求する。このような審査がどのように開始されうるのか、そして、報告期間中にこのような評価手続がどれくらい取られたのかについての情報が提供されるべきである。
26. 29条1項に関する締約国報告の審査により良く焦点を当てるため、また、44条における「報告は…要因および困難を指摘するものとする」という要請に従うため、本委員会は、締約国に、定期的報告において、その管轄する地域において、本条項に示されている価値を促進するためのより賢明な努力を必要とするもっとも高い優先順位が与えられるべきと締約国が判断することについての詳細な情報を提供すること、および、特定された問題に応えるために続く5年間に締約国が取ることを予定している行動プログラムを概説することを求める。
27. 本委員会は、条約45条においてその役割が強調されている国連機関およびその他の資格ある団体に29条1項に関連する本委員会の作業により積極的かつ体系的に寄与することを求める。
28. 29条1項との適合性を促進するための包括的な全国的行動計画を実施するためには、4条に従い、可能最大限に利用可能な人的および財政的手段を取ることが要求される。したがって、本委員会は、手段の制約は、締約国が、要求されている手段を、まったくあるいは不十分にしか取らないことを正当化するものではないと考える。このような文脈において、また、国際協力を促進しかつ助長する締約国の一般的な義務(条約4条および45条)および教育に関連する義務(28条3項)に照らして、本委員会は、開発協力を提供している締約国に、その計画が29条1項に含まれている諸原則を十全に考慮して設計されることを確保するよう求める。
注
(1)これに関連して、本委員会は、経済的、社会的および文化的権利に関する委員会による教育に関する権利に関する一般的意見13に留意する。一般的注釈13は、経済的、社会的および文化的権利に関する国際既約13条1項のもとにおける教育の目的を特に扱う。本委員会は、また、条約44条1項(b)に基づいて締約国により提出される定期的報告の形式と内容に関する一般的ガイドライン(CRC/C/58)のパラグラフ112ないし116に留意する。
(2)
国際連合教育科学文化機関「学習:なかにある宝」21世紀のための教育に関する国際委員会レポート」(1996年)16‐18頁。
(3) 国連教育科学文化機関、「特別のニーズのための教育に関するサマランカ宣言および行動要綱」(1994年)viii頁。
(4) 経済的的社会的および文化的権利に関する委員会による、障害を持つ者に関する一般的注釈5(1994年)参照。
(5)
HIV/AIDSともに世界で生きている子どもに関する一般的討論(1988)の後に子どもの権利委員会によって採択された勧告参照(A/55/41, para.
1536)。
(6) 人権教育に関する国連10年に関する国連総会決議49/184(1994年12月23日)参照。
(7)
「すべてのもののための教育:我々の集団的努力を実現するために」ダカールにおいて2000年4月26日から28日まで開催された世界教育フォーラムにおいて採択。
(8)本委員会は、子どもとメディアに関する一般的討議(1996年)に基づいて採択されたこの問題に関する勧告を想起する(A/53/41 para. 1396参照)。
(出典:CRC/GC/2001/1, CRC General comment 1, 17 April
2001.)