県、設置へ意見募集 子ども権利救済機関

 

 県は、「県子どもの権利救済機関検討委員会」(委員長・青木孝志国際学院埼玉短期大学教授)がまとめた「子どもの権利救済機関」設置のための提言案について、来月一日から三十日まで県民の意見を募集する。提言案は、子どもが体罰や虐待、いじめなどの人権侵害行為に遭った時、被害に遭った子どもの立場に立って問題解決を図る専門の第三者機関の設置を県に求めている。

 同機関は、子ども自身や周りの第三者からの苦情や相談を受けて人権侵害事案を調査・調整し、侵害行為を行った相手に是正勧告や意見表明を行う。その後も改善しない場合は権利侵害の事実を公表する。実効性のある機関にするため、条例に基づいて設置し、これらの権限を明確にする。

 提言案は、県こども家庭課ホームページ(http://www.pref.saitama.jp/A04/BM00/core.html)で掲載するほか、県地域創造センターなどで入手できる。意見は同課へ郵送(〒336−8501)かファクス(048・830・4784)、Eメール(a3320@pref.saitama.jp)で。同三十日必着。

 また、提言案の説明と検討委副委員長・吉田恒雄駿河台大学教授の講演が行われる公聴集会が、十一月十八日午前十時からさいたま市高砂の埼玉会館で開かれる。

 参加申し込み、問い合わせは同課(048・830・3343)へ。

「県子どもの権利救済機関」検討大詰め
公立学校の扱い不安 「協議」という防壁必要か

 【解説】いじめや体罰、虐待など権利侵害行為に遭っても自分の力では解決できず苦しんでいる子どもたちを救う「子どもの権利救済機関」の検討が大詰めを迎えた。行政から独立した第三者機関として権限を持って調査・解決に当たれる機関を条例で設置するもので、実現すれば「子ども行政」の大きな進展といえる。しかし、案の中では不安な要素も残した。公立学校の扱いだ。

 ■調査・勧告で協議

 救済機関を県条例で設置すると、児童福祉施設など県の施設は問題があれば救済機関の調査を受け入れ、勧告に対して改善結果を報告する義務が生じる。市町村や民間施設・個人などもそれに準じた努力が求められる。

 しかし、県教委は「教育委員会は行政から独立した組織」とし、公立学校への調査は教育委員会が行うと主張。委員の強い反対で「救済機関は教委と協議の上、同意を得て行う」と変更になったが、同意を得ないと調査できない内容となった。特に勧告を出す際の協議にはほとんどの委員が「おうかがいを立てるのはおかしい。救済機関の独立性が県民から疑われる」と反対する。

 ■都で弊害指摘も

 既に同様の制度を要綱で実施している神奈川県や東京都の例では、最も多い相談が「学校関係」だ。閉鎖性が指摘される学校にいかに入っていくかは、救済機関の課題の一つだ。また、救済機関が教委に依頼して学校の調査をする仕組みは都で実施しているが、早急な対応や事実関係確認ができない事例も出ている。

 県教委は「教育委員会が指示すれば学校は全力で解決する」とするが、実際には解決しきれないケースも多い。県西部でも三年前、男子中学生がいじめから不登校になり、卒業後半年で自殺した事件があった。その母親は「当時、学校や市教委教育相談室に相談したが、いじめと理解してもらえず苦しんだ。もし救済機関があったら、学校にいじめの認識を持たせることができたのではないか」と話している。制度が始まれば、実際はほとんどの問題を県教委の協力で解決していくことになるだろう。それはほかの施設でも同じで、あえて「協議」という防壁を公立学校に設ける必要はあるのか、再度検討が必要だろう。

(柏崎智子)

(2001年10月31日 『埼玉新聞』)