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ハンス・シュミット=イッセルシュテット

Paul Hans Ernst Schmidt-Isserstedt (1900-1973)

 ハンス・シュミット・イッセルシュテットは1900年5月5日、ベルリンに生まれ、1973年5月28日、ホルムで没した。長い名前は、「ハンス・シュミット」だけではあまりに平凡なことから、母方の姓イッセルシュテットを加えたものという。

 音楽好きの両親のもとで育ち、幼少からヴァイオリンを学ぶ。ベルリン大学等で作曲と音楽学を修め、『モーツァルトの少年時代のオペラの楽器法に対するイタリア人の影響について』という論文を執筆した。

 1923年、バルメン・エルバーフェルトを振り出しに、1928年ロストック、1931年ダルムシュタットと各地の歌劇場の指揮者を歴任。同時代音楽に熱心だったことからナチスに睨まれたりしたが、1935年にハンブルク国立歌劇場の首席指揮者に抜擢され、続いて1943年にベルリン・ドイツ歌劇場に移り、音楽総監督となった。

 終戦後、占領中のイギリス軍の依頼でハンブルクの放送局に交響楽団を設けることになり、各地のオーケストラや捕虜収容所から楽員を選抜、1945年11月1日に第1回の定期演奏会を行った。現在の北ドイツ放送交響楽団である。その後、1971年に名誉指揮者となるまで、このオーケストラの育成に心血を注いだ。

 また、1955〜1964年にストックホルム・フィルの首席指揮者を勤めたほか、各地のオーケストラに客演している。日本では、1964年に読売日響と大阪フィルの定期演奏会を指揮。

更に1970年のベートーヴェン生誕200年にあたって読売日響に招かれ、交響曲第9番とミサ・ソレムニスを指揮した。

 SP時代からポピュラー名曲や協奏曲を多く録音していたが、ステレオ期に入ってウィーン・フィルを指揮したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集(バックハウス、英DECCA)と交響曲全集(英DECCA)で一躍有名になった。特に後者は1960年代のウィーン・フィルの良さを最も素直に出したものとして、今なお評価が高い。

 最も愛したモーツァルトに散発的な録音しかないのは残念だが、バンベルク響との交響曲第31・35番(独ACANTA)、ロンドン響との交響曲第39・41番(米Mercury)、北ドイツ放送響他との歌劇「恋の花つくり」(蘭Philips)等が主なものである。

 得意にしたストラヴィンスキーやヘンツェ等の20世紀音楽が残っていないのも惜しまれる。珍品としてはラヴェル;ピアノ協奏曲(アース、独DGG)、ヴェルディ;歌劇「椿姫」ハイライト(シュターダー、ヘフリガー他、独DGG)等が面白いが。

 ブラームス演奏には、彼の剛直な面がよくあらわれている。ヌヴーとの伝説的なヴァイオリン協奏曲や、このセットに収められている交響曲第4番が代表的な名演であろう。後者は彼の死の1週間前、手兵北ドイツ放送響との最後の演奏会の記録である。

(斉諧生)

 

運命の歌 (詩:ヘルダーリン Friedrich Hölderlin

Schicksalslied 運命の歌
Ihr wandelt droben im Licht
Auf weichem Boden, selige Genien!
Glanzende Gotterlufte
Ruhren Euch leicht,
Wie die Finger der Kunstlerin
Heilige Saiten.

Schicksallos, wie der schlafende
Saugling, atmen die Himmlischen;
Keusch bewahrt
in bescheidener Knospe,
Bluhet ewig
Ihnen der Geist,
Und die seligen Augen
Blicken in stiller
Ewiger Klarheit.

Doch uns ist gegeben,
Auf keiner Statte zu ruhn;
Es schwinden, es fallen
Die leidenden Menschen
Blindlings von einer
Stunde zur andern,
Wie Wasser von Klippe
Zu Klippe geworfen,
Jahrlang ins Ungewisse hinab.

 


至福の精霊たちよ!
あなた方は天上の光の中
やわらかなところを行き交う
輝かしいそよ風が
聖なる弦をつまびく
女たちの指のように
あなた方に
ほのかに触れてゆく

天上の霊たちは
眠る赤子のように
運命を超えた世界で息づき
つつましやかなつぼみの中で
清らかに身を守られ
その心は永遠に花咲き
その至福のまなざしは
静かに澄んだ
永遠の明るさで輝いている

だがわたしたち人間には
どこにも安らぐ場所はない定めだ
悩み生きる人間は
過ぎゆき、落ちてゆく
岩から岩へと
水が落ちてゆくように
一時も休むことなく
行く末も知らず
落ちてゆく

(歌詞直訳:甲斐貴也)

「運命の歌」は、ヘルダーリンの書簡小説「ヒュペーリオン」で主人公ヒュペーリオンが歌う詩。親友アラバンダと心ならずも別れたヒュペーリオンは、自らを慰めるため若き日に作った「運命の歌」を歌う。「ヒュペーリオン」は河出書房新社刊の「ヘルダーリン全集」第2巻で手塚富雄の名訳が読める。