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ウイリアム・ナイトリンガー William Neidlinger ( 1863 - 1924 ) アメリカ
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「 前庭にライラックが咲くとき 」 リンカーンの思い出により |
When Lilacs Last in the Dooryard Bloom'd from Memories of Lincoln |
詩: ホイットマン(Walt Whitman)
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戸口のそばの庭にこの頃ライラックが咲き そして夜、西の空へと偉大な星が落ちたとき 私は悲しむ。そして毎年めぐってくる春ごとに悲しみを新たにするだろう めぐってくる春は必ず3つのことを私にもたらす ライラックが咲き、西空に流星が沈み そして敬愛する彼をまた思い出させることを |
"When lilacs last in the dooryard bloom'd, And the great star early droop'd in the western sky in the night, I mourn'd, and yet shall mourn with ever-returning spring. Ever-returning spring trinity sure to me you bring, Lilac blooming perennial and drooping star in the west, And thought of him I love. " |
奴隷制のような社会的な不正義に対して怒りをぶつけていた詩人ホイットマンは、当時の大統領リンカーンを敬愛しており、その大統領が暗殺されたときに書かれたのがこの有名な詩”When Lilacs Last in the Dooryard Bloom'd”です。
恐らくホイットマンの作品の中では一番有名なものではないかと思いますし、ドイツからアメリカに亡命していたパウル・ヒンデミットがこの詩を取り上げて第二次大戦後、ルーズベルト大統領とアメリカの戦死者を追悼するための感動的なレクイエムを作り上げたのもご存知の通り。他にもアメリカの作曲家ロジャー・セッションズやイギリスのグスタフ・ホルストなどがこの詩で合唱曲を書いているようです。
今回は全く無名の人ではありますが、アメリカの19世紀の作曲家のこの詩に付けた独唱曲を取り上げてみます。
作曲者のウイリアム・ナイトリンガーはニューヨークの生まれ、教会のオルガニスト&作曲家として活躍した人のようで賛美歌の作品もあります。アメリカもキリスト教国として、前回紹介した「アメリカ・ザ・ビューティフル」の作曲者ワードのように、こんな役回りの教会音楽家がたくさんいる国でもあるのでしょうか。日本ではほとんど紹介されませんが興味深いところです。
この前の大統領選挙でもブッシュの再選にキリスト教右派勢力が強い影響力を及ぼしていたように、けっこう社会の隅々にキリスト教の力が及んでいるのがアメリカです。もちろん文学や音楽にも...
さて、彼の作品「リンカーンの思い出に」はホイットマンの「草の葉」のこのリンカーンを追悼する部分から、「打て、打ち鳴らせ、太鼓を」(これのみは実はリンカーン追悼の詩篇からではなく、その前に南北戦争の悲惨さと軍隊の非人間性を歌った「太鼓の響き(DRUM-TAPS)」の一節です)と、この「前庭にライラックが咲くとき」、そして「おお、船長!
船長!」の雰囲気の異なる3つの部分を繋げたもので、ここから歌になりそうな部分を摘み上げて作曲し、ひとつの作品にしています。この中間部の「前庭に」は両端の激しい部分に挟まれた静かな間奏曲として印象に残ります。実際はこの「前庭に」の詩だけでも200行を超える長大な詩なのですが、ナイトリンガーは有名なこの冒頭部分しか曲を付けていませんのでそこのみの訳をしてみました。
こんなレアな作品をどこで見つけてきたかといいますと、EMIにアメリカのバリトン、トーマス・ハンプソンが入れた「To the Soul(魂に)」というタイトルの、ウオルト・ホイットマンの詩による歌曲を集めたアンソロジーアルバムがあって、そこに有名無名取り混ぜてたくさんの曲が紹介されている中の一曲として入っていたものなのです。このアルバム、ホイットマンフリークのヴォーン=ウイリアムスやネッド・ローレムの作品はもちろんのこと、アイブズやクルト・ワイル、果てはハンプソンに捧げられたアメリカの現役指揮者マイケル・ティルソン=トーマス作曲の歌曲まで非常に多彩で面白い選曲です。
ホイットマンの詩とクラシック音楽の両方に関心のある方であればぜひ耳にされる価値のあるアルバムかと思います。(EMI(USA) 55028)
( 2004.11.19 藤井宏行 )