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フランツ・シューベルト   Franz Peter Schubert ( 1797 - 1828 ) オーストリア

「 水の上で歌う 」   
      

Auf dem Wasser zu singen  
     

詩: シュトルベルク


波の上できらめく光につつまれて、ゆれながら小船はスワンのように滑っていく。
穏やかに光る波の喜びにのって、私の心も小船と同じように滑っていく。
大空から夕陽がさして、船のまわりの波の上で踊っているものだから。

西側の木立の頂きの上から、夕陽の光が私たちにやさしく手招きし、
東側の木立の枝の下では、夕陽の光の中で菖蒲が静かにそよぐ。
夕陽に包まれた、大空の喜びと木立の中の安らぎで、私の心は満たされる。

ああ、露にぬれて光る翼のような、ゆれる波の上で私は時が経つのを忘れる。
昨日も、今日も、そして明日もこの翼の上で、時は失われていくだろう。
ついには、もっと光る翼に乗って高みにまい上がり、私も過ぎ行く時の上から消
え去るのだ。




ご存知の曲です。ヴォーカル・オブリガード付きの「舟歌(バルカローレ)」と
いう評もあることだし。かすかにゆれる小船の中に横たわって、この幸せの中で
このまま自分が消え去ってしまいたい(死んでしまいたい)。シューベルトの音
楽の特徴の一つである幸せの中の悲しみ、死への憧れがよく表れた歌曲でしょ
う。そして、長調から短調へ、短調から長調への移ろいがそれを強調する。ショ
パンの「舟歌」と同様の雰囲気の曲と考えることも出来るでしょう。
結構歌いにくい曲ではないかと思います。大歌手でも苦しそうな歌いぶりの人が
います。驚いたのは、C.ルードヴィッヒで他の人よりうんとテンポがのろい
(通常3:20〜3:40分ぐらいが4:30分もかけて歌っている)。
男声ではフィッシャーディースカウ(ピアノはムーア、録音は2種ある)を選び
ます。とてもうまい。女声ではイムガルト=ゼーフリート(ピアノはエリック=
ウェルバ)、シュワルツコップ(ピアノはエドウィン=フィッシャー)、この二
人の昔の大歌手が速いテンポで変な雰囲気をつけないでストレートに素直に歌っ
ている。

( 1998.08.03 稲傘武雄 )


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