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フランツ・シューベルト Franz Peter Schubert ( 1797 - 1828 ) オーストリア
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「 ムラサキバナ(ハナダイコン) 」 |
Nachtviolen |
詩: マイアーホーファー(Johann Mayrhofer)
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ムラサキバナよ、ムラサキバナよ、 濃い色の、魂のこもった眼を持った花々よ、 君たちは幸せだ、 ビロードの青さの中に身をひそめていられるのだから。 緑の葉が喜んで、 君たちを明るく飾りたてようとしている。 しかし、君たちは固い表情で押し黙ったまま、 なま温かい春の風の流れに視線を浮かせている。 崇高な憂いを帯びた光で、 君たちは私の忠誠な心を射止めた。 そして今や、無言の夜に、 厳かな結びつきが次々と花開くのだ。 |
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シューベルトの友人で、共同生活もしたことのあるマイアホーファーの詩に1822年
に作曲された愛らしい歌曲です。西野茂雄氏によると、この花はアブラナ科の植物と
のことで、「ハナダイコン」というのが正式名称のようですが、夜に芳香を放つそう
でドイツ語(Nachtviolen:直訳すると「夜スミレ」)はそこから来ているのでしょ
う。
ビロードの青さを持ってひっそりと咲く美しい花を歌った、憂鬱症のマイアホー
ファーらしからぬ素直な詩に見えますし、私自身もそれ以上の意味は想像だにして
いなかったのですが、調べてみると、やっぱりマイアホーファーの厭世観が隠れてい
たのです。つまり、シューベルトが省略した行があって、そこでは「世界は蒼ざめ、
沈み行く」と歌われているのです。
シューベルトが省略した中には「そう、君たちは詩人の心をとらえたのだ」という
行があり(本来、第3節の1行目に入る)、これを省いたのは「詩人(Dichter)」
という語が鑑賞する人や演奏者にとって第三者的な印象を与えてしまうのではという
シューベルトなりの配慮だったのか、あるいは詩的でないと判断したのかもしれま
せん(シューベルトの文学的鑑識眼を証明する1つの事実ではないでしょうか)。
シューベルトはオリジナルの詩の厭世観を知りながら、あえて愛らしい花の小品に
仕上げました。彼の心遣いに後世の我々は感謝すると同時に、「レストランのメ
ニューにも曲を付けた」と言われてきた従来のシューベルト像の修正も求められるでしょ
う。
録音は、何種類もあるF=ディースカウをはじめ、アメリング、シュヴァルツコプ
フなど、いずれも甲乙つけがたい名唱です。
ハイペリオンの全集で歌っているフェリシティ・ロットがひそやかにおさえた美声
で素晴らしく、グレアム・ジョンソンのピアノも磨きぬかれ
た音を聞かせてくれま
す。
( 2002.01.06 フランツ・ペーター )