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フランツ・シューベルト Franz Peter Schubert ( 1797 - 1828 ) オーストリア
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「 鳩の便り 」 白鳥の歌より |
Die Taubenpost |
詩: ヨハン・ガブリエル・ザイドル(Johan Gabriel Seidl)
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私は1羽の伝書鳩を雇っている。 それは全く従順で信頼の置ける鳩だ。 行き先にたどり着かないこともないし、 通り過ぎてしまうことも決してない。 私はその鳩を毎日何千回と放ち、 偵察に行かせている。 鳩はいくつかの大好きな場所を通り、 私の恋人の家に向かっていく。 そこの窓から鳩はこっそりと中を覗き、 彼女のまなざしや足取りをうかがう。 私からの挨拶をじゃれながら彼女に伝え、 そして彼女の返事を持ち帰ってくる。 もう手紙を書く必要などないのだ、 涙すら鳩に預けられるのだから。 おお、鳩は涙も確実に届けてくれる、 全く熱心に私に仕えてくれるのだ。 昼も夜も、目覚めていても夢の中でも、 鳩にとっては同じことなのだ。 鳩はただ飛んで、飛んでいられるだけで 満ち足りているのだ! 鳩は疲れたり弱ったりしない、 空の道はいつも新鮮なのだ。 無理に誘い出したり、褒美を用意する必要はない、 この鳩はそれほど私に忠実なのだ。 だから私も忠実に鳩を胸に抱いてやるのだ、 素晴らしいお土産を確信しながら。 その鳩の名は?あこがれ!御存知だろうか。 忠実な気質を持った使者を。 |
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シューベルトの絶筆と言われている曲で、オーストリアの作家ザイドルの詩に1828
年10月に作曲されました。
出版商ハースリンガーによって編まれた「白鳥の歌」の最後に置かれた有名な作品
です。
私は最終節、特に最後の2行が大好きなのですが、シューベルトも「その鳩の名前
は(Sie heisst)」の後に一息入れて、ためらいがちに「あこがれ(Sehnsucht)」
という語を導き出しています。
そして「御存知だろうか(Kennt ihr sie?)」という問いかけが2度繰り返されま
すが、その2度目の問いかけがいつも胸をつかまれるように痛切に響いてきます。
シューベルトにとっての「あこがれ」はすでに病の進んでいた中での生への執着な
のでしょうか。それとも死へのあこがれなのでしょうか。
一見穏やかで平和な雰囲気に満ちている曲ですが、生死の間を行き来するシューベ
ルトの心の叫びが込められているように思わずにはいられません。
ビーダーマイアー時代の作家であるザイドルは他愛ない恋の話を歌っただけなのか
もしれませんが、シューベルトによって深い世界に昇華されました。
名演は沢山あり、F=ディースカウ&ムーア(DG:1972年)やプライ&ムーア
(PHILIPS:1971年)など、どれも素晴らしいのですが、シューベルトと同じ
オーストリア出身で心地よくなまって聞こえるヴォルフガング・ホルツマイア(BR)
の歌(PHILIPS:1994年)は、素朴で柔らかい声の感触がこの天衣無縫と形容
される曲の心を自然体でとらえていて名演だと思います。
イモージェン・クーパーのピアノが粒立ちのよい玉が転がるようなきらきら輝く音
を聞かせ、優しい慈しむような響きがシューベルトのはかなくも美しい世界を素晴ら
しく再現していて最高です。
( 2002.02.20 フランツ・ペーター )