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カロル・シマノフスキ Karol Szymanowski ( 1882 - 1937 ) ポーランド
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「 ハーフィズの愛の歌 」 |
Des Hafis Liebeslieder |
詩: ベートゲ(Hans Bethge)
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願い
私は朝日にきらめく湖となって |
Wünsche
Ich wollt,ich wär ein morgenklarer See |
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ただひとつの妙薬
そうだ、私は病気なんだ。分かっている、分かっているさ。ほっといてくれ! |
Die einzige Arzenei
Ja,ich bin krank,ich weiß,ich weiß,doch laßt mich! |
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燃えさかるチューリップ
いつの日か僕の墓には |
Die brennenden Tulpen
Einst aus meinem Grabe |
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踊り
さあ、踊れ、皆で、皆で、皆で、踊れ! |
Tanz
Heute tanzt alles,alles,alles tanzt! |
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恋に落ちた東風
この、不幸な私! |
Der verliebte Ostwind
Ich Unglückseliger! |
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さびしい春
春がやってきた。 |
Trauriger Frühling
Der Frühling ist erschienen. |
大地の歌の詩(李白・杜甫の詩の独訳)、そして日本の和歌の独訳でも著名なベートゲは、他にもアラビアやインドなどの詩をもとにオリエンタリズム溢れる訳詩集を作っています。
その中にひとつ、14世紀ペルシャの詩人、ハーフィスの詩に基づく作品がありますが、ここには気恥ずかしくなるくらい率直な愛する気持ちの吐露がみなぎっています。今のイランでも人気の高いこの詩人の作品は、古今東西変わらない人間に関する鋭い洞察に満ち溢れているということでしょうか?
この詩をスタニスワフ・バロンチがポーランド語訳したテキストに、ポーランド近代の作曲家カロル・シマノフスキがとても印象的な曲を付けたのがこの「ハーフィズの愛の歌」です。ポーランド語の詩の著作権が不明ですので、ここではベートゲの原詩のドイツ語詞を掲載させて頂きました。この歌はドイツ語でも歌われることがありますのでご了承ください。
シマノフスキという人は、ショパンの流れを汲むマズルカやノクターンを思い切り病的に強調した氷のように美しいピアノ曲を書いたり、はたまたオペラ「ロジェ王」では、古代ギリシャを舞台に怪しい新興宗教に洗脳されていく人々を不思議なオリエンタリズムで描写したりと、ベルクやツェムリンスキーの崩れ落ちそうな冷たいロマンティシズムにほんのりと民族音楽や異国趣味の味付けをした、何とも言いがたい魅惑的な音楽を書いた人です。
そんな人がこの呆れるほど耽美的なハーフィズの詩(多分他の訳詩のときのようにベートゲの手によって更にその味は濃厚になっているものと思われます)にメロディを付けているのですからこれほどハマっている音楽もそうはないでしょう。
妖しくも美しい「愛の歌」がここに出来上がりました。
不治の病でやせ細った青白い顔の美人が、息も絶え絶えにささやく愛の告白のようなその音楽は、なぜか逆説的に妙に艶めかしく、ピアノの煌きも美
しいけれどどこか不健康なエロスを漂わせています。
この手の近現代歌曲を多数録音しているドロシー・ドロウ(ソプラノ)、ルドルフ・ヤンセン(ピアノ)のコンビが緻密に演奏していて、そこから逆説的ににじみ出てくるエロスがなかなか素晴らしいですが(ETCETERA)、このCDでは歌唱はベートゲの原詩と思われるドイツ語で歌われています。
オリジナルになるポーランド語の歌唱では、ポーランドのMUZAレーベルにルコミスカのソプラノ、スリコフスキのピアノで録音がありますが入手は厳しいかも(シマノフスキ作品集のVol.6です。PNCD067)。
この歌曲集の姉妹編として、オーケストラ伴奏による「ハーフィズ愛の歌」という作品があります。曲は「踊り」と「恋に落ちた風」だけが一緒であとは別の詩から取られていますが、これも濃密な表情が一聴の価値あり。
対訳がないのが惜しいですが、Naxosにあるシマノフスキ・オーケストラ歌曲集が入手が容易でしょう。結構良い演奏だと思います。
( 2004.03.24 藤井宏行 )