1972年に制作されたパニック映画である。
豪華客船の沈没に遭遇した人々の話であり、同種の作品の中でもトップクラスのできである。目的が脱出に限られており、余計な謎はない。その為、登場人物たちは共通で唯一の目的を持って行動している。見る側は誰を見ても同じ目的を持つために、感情移入がしやすいのである。
ただし、登場人物に設定された背景はしっかりと感じられ、状況をリアルに表現できている。脱出の過程で直面する事態に対して彼らはそれぞれに反応を示し、それが自然と内面を感じさせるうまさなのだ。
ラストに神父役のジーン=ハックマンが叫ぶ言葉を、ぜひとも聞いて感じてほしい。
誰もが知っているシリーズである。
以前のこのシリーズは好きではない。ボンドの有能さを、スマートに見せるためだけの映画にしか見えなかったからだ。 しかし、今作はダニエル=クレイブと演出の効果により魅力的作品に仕上がっている。
今までのボンドは、事象に対してのかか関わりが非常に薄い。今作との対比で一番そのことがわかるのは、ボンドの傷つき方である。以前はほとんど血は流さない上に、埃を軽く払えば元通りであった。今作はダニエルの演技と演出のために、痛さや汚れを感じるのである。
これは内面の描写についても同様である。ダニエルは表情を消しつつ目で表現しており、それが今までのボンドの軽さを消している。
今まで敬遠していた方も、今作を見てボンドの新しい魅力を感じて頂ければ幸いである。