逢いたいにはじまる文を外は雨
問われたら想定外と言えば良い
うたた寝の耳の後ろを蚊が通る
煙草には魔物が住んでいるらしい
優しさを詠むひらがなをちりばめる
口外はしないほどほど釣れる場所
老いたれば曖昧模糊で恙なし
すれ違うだけで高鳴る片思い
あなたしか消せぬ心の削除キー
濃く淡くやっぱり淡い紅で逢う
寄席はねて笑った顔のままで出る
少子化の子供御輿が重く行く
居酒屋の椅子は何でも知っている
赤い糸引いてあなたのいる町へ
減ってないほうがよろしい置き薬
萎みゆく脳を鍛えるキー叩き
稲妻が光る秋刀魚が焦げている
老眼鏡拭いて騙されたりしない
万歩計やっぱり短かった足
真っ白であなたに染めてもらいます
華のある人だ笑顔が美しい
余所見する夫へ手綱ゆるめない
おふくろの味がパックで売っている
しらふでは言えない話縄のれん
寂しさを隠し化粧が厚くなる
ネクタイを締め敵に会う顔作る
舌の根がすぐに忘れてしまう嘘
赤ちゃんの欠伸が笑い誘う通夜
コッペパン囓ると戻る負の記憶
熟しつつだんだん深くなる絆
明日の米研いで女は主婦を終え
忍びよるぼけを笑って迎え撃つ
歯科の椅子気合いを入れてから座る
ランジェリーせめても老いの身だしなみ
やせ我慢してる男の背が揺れる
ストレスが風にもあって窓を打つ
すれ違いざまに一瞥女の目
煩悩は生きてるしるしお芋買う
化ける気はさらさらないが化粧する
もめ事がちょっぴり絆深くする
髪切って風の視線を意識する
レジの前お財布持って譲り合い
初心者の夫パソコン拉致をする
帯を解く今日の疲れと共に解く
言い訳をしてる男の目が泳ぐ
身の丈に合った暮らしに変える歳
歳ふえて体重ふえて皺もふえ
こんな世は婆力を出して乗り越える
その後がとっても強い泣き黒子
リサイクル売り手買い手にあるドラマ
優しさの内に秘めてる不発弾
胃カメラがわたしの心まで覗く
母の好きだった口紅母を恋う
