リジヤ・シムクーテさんは1942年、リトアニアの小さな村サモギチアに生まれました。第二次大戦中に両親とともに
リトアニアを脱出して子供時代をドイツの難民キャンプで過ごしたのです。1949年に彼女はオーストラリアにたどり着きました。でもリトアニアの言葉を必死に守り育てるためにシカゴにあるリトアニア言語研究所やリトアニアのビルニウス大学(Vilnius Univ.)で言語、文学、伝承物語、などを学びました。現在は、リトアニアの首都ヴィルニウスと南オーストラリアのアデリードとで交互に暮らしているようです。でも、リトアニアの風土に強い愛着を持っているように見えます。
私は彼女の詩に日本の俳句的な感性を感じますし、また極めて仏教的な世界観を感じるのです。リトアニアの文芸誌『文学と芸術』で、ある批評家が、彼女の詩を『曼荼羅』と呼び、またある批評家は『禅の精神がある』といっています。当を得た言葉だと思います。
ここに幾つかの彼女の詩を紹介しましょう。表題が詩の中に入り込んでいる手法は、私も時々使うものですが、彼女はここでそれを全てに用いています。 紹介 薬師川 虹一
翻訳:薬師川虹一
| 青い毛糸 が彼女の手の中で もつれている 彼女はその糸の 端まで手繰り 彼女の両手は 砂の仲に埋まった 目は雲の中に入り 髪の毛は砂丘の草となって伸びる 珊瑚の唇で 青い砂に触れる そして指は 空の中に消える |
THE BLUE WOOL |
| 松ノ木 はくすんだ緑の 衣装を纏って 崖のふちで 揺れている 一本 一本の 針の葉は歌を紡ぐ |
PINES dressed in salt-green sway on the edge of a cliff each needle threads into song |
| 光が シャッターの間で弾け しらけた陽光がどこからともなく うねうねと入ってくる きらめく風が 青ざめた掌に 短剣を刺し眠りを覚ます 海の絨緞が岩の上に広がり 鴎の叫びが窓を破る |
CRACKS
OFLIGHT between shutters bleached sun winds its way from nowhere wind sheen daggers a faded palm out of its sleep sea sheets unfolds over rocks sea gulls cry the windows out |
| 私は戻る やって来た所から 見捨てられ 透明な空の下で 再び見出される 泣くことを拒絶する 川のほとりを歩く 川は時を浪費する 風景を超えて伸び 剣が曙を切裂く 私は露に濡れた草を掻き分けて進む 風に太鼓を打たせよ 私の素足の存在よ 両手は 開き 握り 小石を拾いながら 石の川床を歩き 小石を流れに投げる |
I RETURN from where I came abandoned and found again under transparent sky I walk by the river that refuses to cry it stretches across time-wasted landscape where blades split the dawn I wade in dew grass let the wind drum my barefoot existence hands open clench I walk on riverbed stones pick up the pebbles throw them into a stream |
| 鳥が影を 横切りそして 天空から消える 遥か下で 悲鳴が生まれる 牙を剥いた海の 泡の中で |
BIRDS CROSS |
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君の声は
I KNEW YOUR VOICE
贈り物は
THE GIFT
夜が THE NIGHT
星の光が
STARLIGHT |
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NOW THAT WE ARE PARTING |
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