ヘリがゆっくりと降下して来る。第3の適格者と、その他数名を乗せたヘリが。

 幾つかの話を、加持から聞いていた。まともに調整もしていない初号機に乗り、いきなり使徒を殲滅した事。適格者では無い人間をエントリープラグに乗せ、それでも尚シンクロしたまま使徒を撃退した事。

 そのシンクロ数値も、ロクに訓練を受けていない者としては異常に高い。正に適格者と呼ぶに相応しい活躍だと加持が評している。

 
「・・・ふんっ」

 ・・・冗談ではなかった。自分こそが一番なのだ。ぱっと出の、訓練も受けていない奴などにNo.1の座を明け渡す訳にはいかない。

 最も、だからと言ってサードチルドレンを潰す訳にもいかないのだが。使徒殲滅の手駒を、気に入らない言う理由で失う様な真似は許されないだろう。

 であれば、立場をはっきりさせるだけの事である。自分が一番だと言う事を、自分こそが使徒殲滅の切り札であり適格者軍団のエースであると言う事を。

 
「・・・どれ程のモンか、私をがっかりさせんじゃ無いわよ・・・サードチルドレン」

 その為には、その実力を見せて貰わねばならない。どうせ大した事など無いだろう。加持が聞いたのは、ただの噂である。加持が直接見た訳ではない。尾ひれ背びれに胸びれ迄付いている可能性も有るのだ。

 自ら見た上で、思い知らせてやる。誰が、最も優秀な存在なのかを見せつけてくれる。着陸姿勢に入ったヘリを目で追いながら、アスカは口元に皮肉っぽく歪んだ笑みを浮かべていた。自分よりも優れた者など居る筈が無い。そう、確信を抱きながら。

 ・・・しかし。自らを待ち受ける、予想もしていなかった運命を・・・未だ、彼女は知らない。








17:1 〜scene.1〜








 
「・・・」

 事前にミサトから聞いてはいたが、まさか此処までとは・・・シンジは精神の中で、深い溜め息を吐き出していた。

 何を勘違いしているのか知らないが、セカンドチルドレンは自分に妙なライバル意識を剥き出しにしている。その事自体は、まぁ別にどうでも良い事だった。ライバル視したければ、勝手にすれば良いのだ。シンジには相手にする気など微塵も無いのだから。

 ただ、それで一々突っかかって来られても鬱陶しいだけだ。気分は害されるし、良い事など何も無い。

 
「アンタねぇ、ヒトの話聞いてるの?」

 ファーストチルドレンの様に、無口にも程が有ると言うのも困るが・・・これはこれで困り果てるタイプだった。何しろ見てくれ以外で、褒める所が見当たらないのだから。頭が痛いのを通り越して、相手の頭を叩き割りたくなって来る。

 顔だけ見ていれば可愛い方かも知れない。だが、性根の方は最悪ラインをあっさりと突破してしまっている。

 天は二物を与えず。彼女を称する、最も的確な言葉だろう。神は彼女に、他者から好まれる外観を与えた。その代わり、他者から好まれる人格は与えなかった。そう言う事なのかも知れない。

 ミサト達と共に食堂へと歩を進めているのだが、その間シンジは口を開かなかった。面倒だと言うのも有るが、それ以上に口を開く気になれないと言った方が遙かに正しいだろう。

 アスカはシンジが反応を示さないのに焦れて、ミサトにもトウジにもケンスケにも噛みついている。まともな対応を示すのは、加持とか言う男に対してだけだった。

 
・・・どうして適格者って、まともな人がいないんだろう?自分がまともだと言う気はシンジにも無いが、それにしてもセカンドチルドレンのタチの悪さは半端では無かった。

 
「・・・」

 この状況を、どう打破すれば良い?そんな事を考えていたシンジの視野の隅で、動く者が有った。多分この空母の作業員だろう。甲板で見た人々と、同じ帽子と繋ぎを身に着けている。

 その作業員は、帽子に一度手をやってから近くのトイレに入って行った。まるで彼らに、何の興味も無いとでも言う様に。

 だが、シンジには判る。あれは何気ない仕草ではない。事前に取り決めて置いた、合図だと言う事が。自分に用事が有るから、来て欲しい。作業員はシンジに、そう態度で物語っていた。

 
「すいません。ボクちょっと、トイレに行ってきます」

 一体、どんな話が有るのか。シンジには皆目見当が付かない。だが、用が有る事だけは間違い無いだろう。作業員を追うのだとは気取られない様に、シンジは普段通りの物腰でミサトに断りを入れトイレへと入った。





 
「・・・やれやれ・・・」

 男子用トイレの個室にしゃがみ。レポート用紙の束に目を通しながら、シンジは溜め息を漏らしながら呟く。

 
「我と気が強い、エリート意識の塊・・・ね・・・」

 それはぱっと見ただけの、シンジの抱いたイメージとも一致する。改めて見せられた所で少しも嬉しくは無く、むしろうんざりさせられるだけだ。

 シンジの足下には、先程の作業服を着た者が跪いていた。ショートカットの、年の頃はシンジとほぼ同じ少女が。シンジのズボンとパンツを下ろし、其処に顔を寄せている。その少女の頭を時折撫でながら、シンジは1人ぼやいていた。

 
「・・・そー言うのが居ると、困るんだよなぁ。煩わしそうだし、何しろ精神衛生上良く無いよ」

 最大の問題は、やはり彼女がセカンドチルドレンだと言う事だろう。自分がサードチルドレンで有る限り、関わり合わない事など不可能である。

 
「・・・さて、どうしたモンかなぁ・・・ん?」

 そこまで考えた所で、シンジの脳裏に1つの案が浮かんだ。関わり合いたく無いからと言って、関わらない訳にも行かないだろう。何と言っても、彼女はセカンドチルドレンなのだから。エヴァに乗る限り、縁は築かれてしまうのだ。それが稀薄なモノか、濃厚なモノであるかは別にしても。

 
「よし、決めた。堕としちゃおう」

 であれば、彼女のの性根を変えてしまえばいい。精神衛生上良い、煩わしさを感じない性根にすれば良いだけの事である。シンジの出した結論は極めて単純で、恐ろしい程に判り易い。

 
「!?」

 その言葉に、がばっと少女が顔を上げた。シンジの一言に、余程驚いたのだろう。愕然とした表情のまま、シンジの顔を見つめている。

 
「あれ?マナ、もう要らないの?」

 
「いっいえ、そうでは無くて・・・堕とすって・・・?」

 マナと呼ばれた少女が、狼狽えながらシンジに問い直した。その意味が判らない訳ではない。彼女に、その意味が判らない訳が無いのだ。何故なら彼女は、既にシンジに堕とされた者なのだから。

 
「この娘。惣流・アスカ・ラングレー・・・だっけ?奴隷にしようかなって」

 奴隷。マナのシンジに対する立場とは、この1つの単語だけで容易に説明出来る。自分の身体と心の全てを捧げ、忠誠を誓い奉仕するだけのモノ。主人の望みのを果たす為であれば、どの様な事でも首を縦に振り肯定しなければならない道具。そして・・・主人の喜びを己の悦びとして受け入れる存在。

 
「でっでもアレは・・・とても御主人様のお気に召す様な・・・」

 だがマナには、これだけは容易に受け入れられそうに無かった。今まで自分が寵愛を独占して来た主人が、他に奴隷を欲している。それは己の至らなさを、遠回しに指摘された事でも有るのだから。

 
「だからこそ、堕とす意味が有るんじゃないか」

 ある意味で、それは正論である。ただ普通は、それは双方の妥協によって成立させるべき事だろう。

 
「イヤでも顔を合わせる事になりそうだし、顔を合わせてもイヤにならない性根にしなくちゃ。気に召さないんなら、気に召す様にしないとね」

 だがシンジには、自らが折れる事など考えの中に無い。だからこそ、アスカを堕とすと言えるのだ。自分はそのままで、相手に一方的な変化を強要する。シンジはマナに、そう宣しているのである。

 
「それに、面白そうじゃない。気が強い女の子が堕ちる所って。結構、いい暇潰しになると思うよ」

 
「・・・判りました・・・」

 面白そう。そう言われてしまえば、マナに抗う言葉などない。主人の娯楽を奪う権利など、彼女には無いのだから。いかに好ましからざる事であろうが、首を縦に振る事が彼女の勤めである。

 
「・・・これからも御主人様に、一生懸命お仕え致しますから・・・」

 到らず飽きられた奴隷の末路など、1つしかない。捨てられる。たった、それだけだ。そうならない為には、マナはシンジに尽くし続けるしか無い。

 
「んむっ」

 他に方法など無く、それ以外の術をマナは知らなかった。マナは持てる知識と技術の総てを用い、再び口に含み直したシンジの肉塊への奉仕を再開する。

 
「心配しなくても良いよ。マナを捨てるって訳じゃないから」

 
「んんっ!?」

 マナの心理を察したシンジが、自分のモノを含み膨らんだマナの頬を軽く撫でた。それだけで、危うくマナは達してしまいそうになる。

 
「んぶっ・・・ぅっ、はむっ・・・んんっ」

 それではいけない、御主人様の御厚情に甘えるだけではいけない。舌を亀頭に這わせ茎を撫で、雁首をなぞり鈴口に舌先を割り入れ。更には吸い、頭を前後させてまで。口に突き立てられた主人の性器へと奉仕を続けていた。マナが待ち望む、時がもたらされる迄。

 そして、暫くの後。

 
「・・・っ!」

 シンジの身体が、ぶるっと震える。腰の辺りで何かが激しく爆発する様な感覚と共に、シンジは激しく精を放った。

 
「んむっ!?んんんっ・・・っ!!」

 シンジに呼応する様に、マナの身体もびくびくと痙攣する。元々閉じ気味だった腿をぴったりと合わせ、より深くシンジのモノをくわえ込もうと顔を埋めて行く。

 吐き出し続けている、白濁した溶岩はマナの喉内を激しく打ち据えている。それはマナからすれば、シンジに咽喉を愛撫されているのと同じ事だった。

 主人と共に果てる。それは奴隷にとって当然の事であり、マナも充分に心得ている事だった。最もマナは、別に意識して無理に果てたと言う訳では無い。自分の口の中に、御主人様が注ぎ込んで下さる。それが何よりも嬉しい。その歓びだけで、マナは容易に達する事が出来るのだから。

 マナの口の中で肉塊はどくどくと脈打ちながら、精を放ち続けている。それを、マナは喉を鳴らし飲み込んでいた。余す事無く、自分の中に注ぎ込んで欲しいから。その為に、自分はシンジに仕えているのだから。

 
「ちゅっ・・・んむぅっ・・・はぁ・・・ぁんっ」

 動きを止めた肉塊を吸い残った一滴までも飲み尽くしたマナが、ゆっくりと抜き取りながら立ち上がった。一歩だけ足を踏み出し、潤んだ目でシンジを見下ろしている。

 
「んっ・・・御主人、様・・・」

 便器に座っていた為、丁度マナの腹部がシンジの視野を埋めていた。かちゃかちゃと音を立てながら、マナはズボンのベルトを外す。もどかしそうにズボンとショーツをまとめて下ろし、指で自分の秘肉を拡げ懇願した。

 
「お願いします・・・ここにも、御主人様のモノを下さい・・・」

 溢れた愛液が、つうっと内股を伝う。身体には薄く汗が浮き、狭い個室の中をマナの塊の様な濃い匂気が満たしていた。

 
「もう、我慢出来ないんです・・・お願いします、御主人様ぁ・・・」

 
「・・・」

 マナの訴えを聞いて、シンジは少しだけ考え込む。はっきり言って、そこまでしている時間的猶予は無い。何しろシンジは、トイレだと言ってこの場に来たのだから。そうも時間は稼げないだろう。

 実はシンジも、その辺りを考えて先程は早々に放ってしまったのだ。その気になれば、奉仕を受けていた時間の倍程度なら楽に耐えられる。さっさとマナに飲ませて、ミサト達の元に戻った方が良い。そう考えていたからに、他ならなかった。

 
「・・・」

 だがここで終わらせては、マナに余計な不安を与える事になるかも知れない。それにセカンドチルドレン調査の為に、マナを潜入させて一週間。当然その間、マナは禁欲生活を送る羽目となっている。

 マナがシンジを呼んだ理由も、実はそれだけだった。調査報告書を渡す事を口実に、褒美が欲しかっただけなのだろう。それ程マナは、餓えていたとも言える。

 
「・・・マナ」

 ここは、折角飼っている奴隷の希望を叶えるべきだろう。少しくらい余計に時間を浪費する事など、忠誠の程を思えば大した問題ではない。そう決断を下し、シンジは薄い笑みの浮かんだ唇を開く。

 
「お願いの仕方って・・・ボク、ちゃんと教えたよね?」

 とは言え、物事にはけじめと言うモノが有った。勿論シンジには、何をどうして欲しいのかは判っている。シンジに限らず、見れば誰でも一目で判るだろう。

 しかしそれは、口に出して発せなばならない言葉だ。具体的に何をどうして欲しいのか、口に出す事が奴隷が主人にねだる時の常識だった。顔どころか耳までも真っ赤に上気させたマナに、シンジはねだる言葉を発する様に促す。

 
「はい・・・はしたなく涎を垂らす、あさましく淫らな奴隷のマナのお○んこに・・・御主人様のお○ンポをお恵み下さい・・・」

 
「良く言えました」

 口上に満足したシンジは、マナの腰を両手で掴み自分の方に寄せた。そのまま潤み切ったマナの陰裂に、猛り立ったままの陰茎を無造作に突き立てる。

 
「あうぅっ!」

 マナの口から、歓びの声が迸った。久しく味わっていなかった主人の肉塊が、自分の膣壁を擦り柔肉を抉っている。

 それ以上の悦びなど、有る筈が無い。他に求めるモノなど、何も有りはしない。幾度となく精神と身体を襲う悦楽の波に、マナは歓喜の声を上げ続けている。

 
「んんっ、あぁんっ!いいっいいです、っ凄・・・っくうぅっ!!」

 
「・・・マナ・・・声が大きいって・・・」

 自分の肉根を締め付ける感覚を貪りながら、シンジはマナに苦言を呈した。これでは、トイレの中でしている意味が無い。ただ、だからと言って止める気などシンジには欠片も無かった。次善策と言う事で、マナの口を掌で塞ぎシンジは律動を続けている。

 
「みんな待ってるだろうから、マナには悪いけど手早く済ませちゃうよ」

 正当化する理屈は無理矢理作ったとは言え、時間が無い事は揺るぎない事実なのだ。心にも無い言い訳をしながら、シンジはマナの身体を幾度も激しく突き上げていた。





 
やっぱり来たのか。使徒来襲の報を聞き、シンジが抱いた第一の感想はそれだった。そうで無くては、自分がこの場に来なければならない理由が無い。そしてその事を、NERV司令である碇ゲンドウが指示したと言う事は・・・こうなる事を、碇ゲンドウが知っていたと言う事である。

 聞いた話によると、今回の使徒は完全に水中活動に特化した形状をしているらしい。だったらわざわざ第3新東京市に近づくのを待って、攻撃を仕掛ける必要など無いだろう。

 マナが言う通りだ。シンジは1人納得する。もしも弐号機が目当てなら、シンジ達が合流する前に攻撃を仕掛けていてもおかしくはない。父は何時使徒が弐号機を襲うか知っていて、それに間に合う様に自分たちをこの場に派遣したと見る方が自然だろう。

 
「これは、量産に向けたパブリックモデルなんだから」

 そんな事をシンジが考えているとは露ほども考えずに、アスカは得意になってシンジに弐号機を披露し自慢を続けていた。

 
それにしても・・・弐号機を見ながら、心の中だけでシンジは苦笑いを浮かべている。2人で弐号機を見に、輸送用のタンカーに移った後で使徒襲来の方を受けるとは・・・。

 幾ら何でも、これは出来過ぎだった。其処まで使徒が考えていたとは思えないが、2人が弐号機の側に来るまで待っていたのでは無いかと邪推出来てしまう。

 
「・・・絶対的な性能が、弐号機のプロトタイプとして作られた初号機とは違うのよ。まぁ適格者としての、才能や実力の差って奴よね。優秀な者には、優秀なモノが与えられるのが世の常だもん」

 自分はシンジよりも優秀なのだとアスカは言っているのだが、別にシンジは何とも思っていない。自分の事を言われたと気付かないフリをして、特に感慨も無くぼけっとシンジは弐号機を見続けていた。

 
「ふぅん、試作と量産かぁ・・・ガ○ダ○と○ムみたいなモンだね」

 
「・・・何よ、それ?ともかく、折角のチャンスなんだから。ほら、アンタもそれに着替えなさいよ」

 シンジが判り難い比喩で自説を否定したと気付かず、アスカはシンジに向けて真っ赤なプラグスーツを放り投げる。

 
「チャンス?どうするって言うのさ?」

 
「決まってるでしょ?私らで使徒をブッ潰してやるのよ」

 予定調和。シンジは対使徒戦を、そう結論付けている。だからアスカ程、気合いは入らない。意気込むアスカに手を振りながら、シンジはアスカの健闘を祈る事にした。

 
「ふぅん・・・頑張ってね」

 
「っあのねぇ!だったらプラグスーツをアンタに渡す訳無いでしょっ!アンタも弐号機に乗るの!!」

 だがそんな事を言われれば、誰でも腹を立てるだろう。案の定アスカも、怒りを顕わにしてシンジを怒鳴り飛ばす。

 
「アンタも・・・って、ボクも?」

 最もシンジは、そんな事に怯えはしなかった。きょとんとした表情で、シンジはアスカに真意を問い直す。

 
「私らでって言ったでしょ?アンタの噂は聞いてるから、サードチルドレンとしての実力って奴を見せて貰おうじゃない」

 
「・・・はいはい・・・」

 そう言われては仕方が無かった。いかにも嫌々と言う風に、シンジは着ていた服を脱ぎ始める。そのシンジの態度に、再びアスカの怒号が鳴り響いた。

 
「っあああアンタねぇ!こんな所で着替えんじゃないわよっ!あっちの影で、私に見えない所で着替えなさいよぉ!!」

 
「・・・注文が多いなぁ・・・」

 ぶつぶつと文句を呟きながら、シンジは脱ぎかけの服を抱え階段の方へと歩み去って行く。そんなシンジの背に、とどめとでも言う様にアスカが声を浴びせた。

 
「あ、一応言っとくけどね!覗くんじゃないわよっ!!覗きでもしたら、一捻りで殺すからねっ!!」





 
「まったく・・・天然だって噂も聞いてたけど、あそこ迄とはね・・・」

 先程のシンジの様に、アスカもぶつぶつとぼやきながら服を脱いで行く。と言っても、身に着けているのは黄色いワンピースとショーツくらいのモノなのだが。

 
「レディの前で脱ぎ出すなんて、一体何考えやがんのよ・・・っ!?」

 スカートの裾を持ち上げショーツに指をかけた瞬間、アスカの背筋がびくっと震えた。それから慌てて手を外し、鬼神の様な殺気を放ちながら勢い良く振り返る。

 
「・・・あれ?」

 だがそこには、鋼鉄製の壁が立ちはだかるだけだった。当たり前の事ながら、其処に人の姿は無い。

 
「?」

 緊張と疑問を隠そうともせずに、アスカは周囲を見回していた。先程感じたのは、確かに人の視線だった筈だ。その感覚が誤りや気のせいだったとは、どうしても思えない。

 しかし視野の何処にも、人の姿はおろか人影すら見えなかった。此処には隠れられそうな場所も無い。だとすれば、自分の方が間違っていたと結論付けする他には無いだろう。

 
「っかしいわねぇ・・・!?」

 かぶりを振り、アスカは再びプラグスーツを着用しようとする。その顔が、驚愕に固まった。

 目の前に、人が立っている。背の程は、アスカとほぼ同じ。国連太平洋艦隊々員の、作業服を着て目深に帽子を被っていた。

 
「っ何よアンタは!?」

 どこから現れたのか。勿論それが判る訳が無いが、そんな事は全く気にならなかった。それ以上に気になる、いや許せない事が有ったからだ。

 作業員の口元が、微妙なカーブを描いている。まるで笑っているかの様に。それが何よりも、アスカには気に入らなかった。驚かした事を喜んでいると言った感じの笑みではない。そこに含まれているのは、もっと底意地の感情だった。

 
「っぬわに笑ってやがんのよっ!?」

 頭に血を昇らせてアスカは、作業員の胸ぐらを掴んだ。加持に手ほどきを受けた事も有って、アスカは腕っぷしには過剰と言って良い程の自信を持っている。自分と同じ程度の体格の相手であれば、文字通り一捻りに出来る筈だった。

 だが。

 
「!?」

 抵抗する猶予などない。いきなり身体が宙を舞い、アスカは床に叩き付けられた。受け身すら取れず、身体を貫く痛みがアスカから言葉を奪う。

 作業員の動きは、恐ろしく素早かった。床に倒れたアスカを仰向けに転がし、腕を広げさせアスカの肘の裏に両膝を下ろしてアスカを跨いでいる。

 
「っ誰よ、アンタはっ!?」

 身体をよじり、どうにか振り解こうとアスカは藻掻いていた。だが上半身は全く思うままに動かない。下半身は動かせるが、それで何かが出来る訳では無かった。

 作業員が帽子に手をかけ、それを床に放り捨てる。それから笑みを浮かべながら、全く不釣り合いな言葉をアスカに投げ掛けた。

 
「霧島マナ。宜しくね」

 
「っどけぇっ!放しやがれぇ!!」

 宜しくね、と自己紹介をされても納得など出来る訳が無い。自分を組み伏しているのが、ぱっと見で同い年くらいの少女であれば尚更だ。屈辱で顔を真っ赤にしながら、アスカはマナと名乗った少女に喚き散らす。

 
「アスカぁ。ボク、女装趣味は無いんだけど・・・プラグスーツって、コレしか・・・無いの?」

 
「っ・・・シンジ!?」

 そこにシンジがひょこっと顔を出した。未だ密着させていない真紅のプラグスーツに身を包み、思い切り他人事の様な顔で。

 しかし、シンジに何の関係も無い事など有り得ない。もしもこの少女がNERVに害を成す組織の人間なのだとしたら、シンジも殺されるか身柄を拘束されているのが妥当だろう。少なくとも、ぼけっと自分を見下ろす事など出来る訳が無い。

 
「こここれって、どー言う事よっ!?」

 つまりシンジは共犯者だ。そう結論を下したアスカは、ありがちな言葉をシンジに向けて怒鳴りぶつける。だが、その声を無視して。ゆっくりとシンジはしゃがみ。アスカの胸へと手を運び、無造作にそれを揉みし抱き始めた。

 
「ッ!?」

 シンジが自分の胸を揉む。どう贔屓目に見ても虐められっ子にしか見えない、気弱な小動物の様なシンジが。流石にこの展開を、アスカは予想もしていなかった。いや、予想の外に有ったと言うべきだろう。

 はっきり言って、アスカはシンジをナメていた。もっと言ってしまえば、アスカはシンジを男として見ていなかったと言う事である。

 最も、アスカが自分をどう見ていたかなどシンジの知った事ではない。アスカのリアクションを無視して、シンジはワンピース越しにアスカの胸を揉み続けている。

 微妙に強弱を変えたりしてはいるが、シンジの顔に喜色は無い。むしろ逆に、何となく事務的な作業と言う感じすらする。

 
「・・・ふぅっ」

 短く息を吐き出しながら、シンジはアスカの胸から手を離す。そのシンジにマナが声をかけた。

 
「如何でした?御主人様?」

 
「・・・ご・・・ご主人、様・・・?」

 アスカの頭の中は、この時真っ白になっている。あまりにも意表を突かれ、ロクに頭が回っていなかった。

 その手の性癖の存在を、アスカも知らない訳ではない。だが、シンジが主でマナが従。アスカが抱くシンジのイメージからは、どうしてもその絵が浮かんで来なかった。

 
・・・逆なら未だ判るんだけど・・・などと悠長な事を言っている場合ではない。アスカの存在を無視して、2人が剣呑極まりない事を話しているのだから。

 
「もうちょっと大きい方が良いんだけどなぁ・・・それに、思ったより堅いし」

 
「これでは、挟めませんものね」

 不満そうな表情を浮かべるシンジに、マナは苦笑いを浮かべながら応じる。

 
「でも投薬と調教で、御主人様好みの奴隷に相応しい身体に改造出来ますから・・・今の段階では、気になさる事では無いのでは?」

 
「そうだね。造り替える事も、楽しみの1つなんだから」

 
・・・シンジ好みの奴隷・・・?改造と言う言葉も含め、アスカの身体を戦慄が支配していた。想像出来無かろうが考えが及ばなかろうが、そんな事はどうでも良い。マナが自分を組み伏し。シンジとマナが、自分を値踏みするかの様な相談を繰り返している。それが現実なのだから。

 
「・・・」

 シンジが目配せをし、マナが身体を僅かに動かす。自分を縛る力が失せ、アスカは身体の自由を取り戻していた。

 
・・・逃げるしかない、何としてでも。理由は判らないが、わざわざ拘束を解いてくれたのだ。好機を利用しない理由などないだろう。

 だがその前に・・・尻尾を巻いて逃げ出す前に、やらなければならない事が有る。

 
「っこのぉっ!!」

 加持も未だ触れた事の無い胸を、この愚か者は断りも無く触れ揉み。言うに事欠いてケチまで付けた。理由など、これだけ有れば充分である。このバカだけは、断じて許す訳にはいかない。屈辱を握り締めた鉄拳を、目にも止まらぬ勢いでシンジの顔に叩き込む。いや、アスカは叩き込んだつもりだった。

 だがシンジの動きは、アスカの動きよりも数段早い。アスカの拳を上腕で払い除け、その払い除けた腕を取り逆袈裟に落としアスカの肩を決める。

 
「くっ!?」

 再び頬が床に触れ、アスカは屈辱に震えた。どう見ても貧弱で気弱な小心者にしか見えないシンジに、あっさりと組み敷かれたのである。屈辱を感じない方が、どうかしているだろう。

 そんなアスカの耳に、シンジは今迄と全く変わらない口調で語りかけた。

 
「・・・ボクさ、マナから色々教えて貰ってるんだ。はっきり言うけど、アスカじゃボクに勝てないよ」

 
「っ・・・くっ!」

 
「まぁボクも、マナには全然かなわないんだけどね」

 それはアスカにも判る。押さえ込み方1つにも、技量の差が出るものなのだ。少なくともシンジは、マナ程にツボを心得ていない。姿勢が違う事を差し引いても、マナの時よりも込められた力を強く感じるのだから。技量よりも腕力に頼っている証拠である。

 
「マナ、アレ取ってくれる?」

 手を伸ばし、シンジはマナに向け手をひらひらと振った。その手にマナは、小振りな注射器を渡す。針のカバーが既に外された、透明な液体の入った注射器を。

 
「どうぞ、御主人様」

 
「ありがとう。アスカ、これを射つと・・・どうなると思う?」

 
「っ!?」

 突然眼前に注射器を出され、反射的にアスカの身体がびくっと震えた。シリンダを軽く押して薬液から空気を押しだしながら、シンジはその中身をアスカに説明する。

 
「自白剤を作ろうとして、戦自が偶然作っちゃったらしいんだけどね・・・コレを射たれると、脳内のある物質が一気に放出されるんだ」

 
「・・・ある物質?」

 
「モノアミンって言うんだけどね。これが受容体に取り込まれると、もの凄い快感を感じる様になるんだ。まぁ某薬品と同じだね」

 
「っ・・・ままままさかアンタ・・・!?」

 しれっとしたシンジ説明を聞いて、アスカの顔から一気に血の気が引いた。シンジが言う所の某薬品が何なのか、判ってしまった為だ。

 脳内のモノアミンを放出させる薬品。アスカの知る限りでは、たった一種類しか存在しない。とてつもない中毒性の強さや、あっさりと中毒患者を廃人に追い込む程の常軌を逸した効力を有する薬物。

 そんなモノを注射されて、自分が意識を保てるか。いかに過大なエリート意識を持つアスカとは言え、全く自信は無い。アレは、そう言う次元を突き抜けた薬物なのだから。自制出来るなどと考えるのは、自惚れに過ぎない。アスカの顔が青ざめ、恐怖に震えたとしても仕方が無い事だった。

 
「ああ、これはアレとは違うよ」

 そんなアスカを見て、シンジはにこやかな笑みを浮かべる。

 
「アレはモノアミンの再取り込みを阻害するからイヤでも中毒になるんで、こっちは再取り込みを阻害はしないからね。抗体が出来難いから、よっぽど中毒性は低いよ・・・まぁそれは、射たれた本人の意識次第では有るけど。あんまり気持ち良くて、癖になっちゃうかも知れないなぁ・・・」

 
「っや・・・止め・・・!?」

 
「大丈夫だって。直ぐに薬なんか使わなくても、気持ち良い事が有るって判るから。これは、あくまでもはじめの一歩なんだからさ」

 アスカの願いは、あえなく無視された。無造作にシンジは、アスカのうなじの辺りに針を突き刺し。極めて事務的に、ピストンを押し薬液を注ぎ込んで行く。

 
「効き始める迄・・・そうだなぁ、静脈に打ったから直ぐだと思うよ」

 弐号機が浸かる液体の中に空になった注射器を放り捨て、シンジは再びアスカに囁きかけた。

 
「抵抗しようと思うだけ無駄だよ。最低でも8時間は効果が消えないし、その間は抵抗しようって言う感情が湧かないだろうから」

 
「っ・・・!?」

 冗談では無い。自分は、選ばれた者なのだ。それが、たかが薬程度で自由を奪われてたまるか。屈辱に脳が沸騰する感覚を味わいながら、アスカはシンジを睨み付けている。

 しかしそれさえも、実はシンジの予想していた事だった。モノアミンを脳内に放出させる為には、先ず薬液が脳に辿り着かねばならない。だからこそ、シンジはアスカを挑発しているのだ。頭に血を昇らせる為に。つまり、より多くの薬が脳に廻る様にする為に。

 そして、アスカに。彼女にとっては致命的な、シンジ達に取っては待ち望んだ変化が生じた。

 
「っ!?」

 びくんっとアスカの身体が震える。身体から一気に体重が消え失せ、視界がゆっくりとぼやけ始めた。

 
「・・・効き始めたみたいだね」

 
「ぁっ・・・あ?」

 例えて言うなら、それはアルコールを多量に摂取した時の酩酊感に似ているかも知れない。ただ、それも似ているだけだ。決定的に、異なる事が有る。

 
「ひっ!?」

 ぽんっとシンジが、アスカの肩を軽く叩く。たったそれだけの事で、全身に凄まじい量の電流が流れた様にアスカの身体が派手に仰け反った。

 脳細胞が、ばちばちと快感を騒ぎ立てる。自分で身体を慰め、達した時の様な激しい感覚を脳が訴え、アスカの身体と心を苛み続けていた。たかが、肩を叩かれた程度で。

 
「ぁ・・・んあぁっ!」

 アスカは身体をびくびくと痙攣させていた。半開きになった目の焦点は合わず、僅かに開いた口からは荒い息と喘ぎ声が吐き出されるだけで。ロクに言葉を発する事も出来ず、アスカは床に伏せていた。

 
「それじゃ、マナ。後は宜しくね」

 そんなアスカを残し、シンジはさっさと立ち上がる。手首に付いたスイッチを操作し、プラグスーツを密着させシンジは後をマナに託す事にした。

 
「ボクは弐号機で、表の使徒をやっつけて来るから。幾ら何でも、放って置いちゃ不味いだろうし」

 使徒は、直ぐ其処にまで来ているのだ。駆逐艦や巡洋艦が、既に何隻か沈められている。放置しては、自分たちの乗っている船まで沈められてしまうだろう。そうさせない為には、例え茶番で有ってもシンジが弐号機で出撃するしか無かった。

 
「はい。いってらっしゃいませ、御主人様」

 その程度の事はマナにも判る。ぐったりとしたアスカの身体を後ろから抱える様に持ち上げながら、マナは背を向けたシンジを見送っていた。

 
「私は御主人様がお戻りになる迄、この牝犬を躾させて頂きます」

 
「まぁ今回は、あんまり無理しなくても良いよ。折角の玩具を、あっさり壊しちゃったりしたら勿体ないしさ」

 それもマナには判り切った事である。もし壊すのだとしても、それはやはりシンジの成すべき事なのだから。その判り切った事を、わざわざシンジが口に出した理由は1つしかない。

 
「はい、御主人様。取り敢えずこの牝犬を、快楽に溺れさせようかと・・・勿論、差し出た真似は致しません」

 アスカに聞かせる為だ。他に理由などなかった。呆けて放心状態に近いアスカの表情を見る限りでは、理解出来るかどうかは判らない。だが彼女を待ち受ける命運を、事前に教えるのも一興だろう。

 
「うん、それで良いと思うよ」

 マナの方針を聞いて、シンジは満足そうに頷く。取り敢えずは、そんな所だろう。惜しむらくは、その娯楽に自分が参加出来ない事である。与えられた役割上シンジは使徒を撃退しなければならないのだから、それは当たり前の事なのだが。

 だがそのお陰で、久しぶりに面白い玩具が手に入る。使徒が第3新東京市に侵略を企ててくれなければ、増援として長駆ドイツからアスカが来る事など無かっただろう。

 
「じゃあアスカ。弐号機、借りるからね」

 自分は使徒を憎むべきなのだろうか。それとも使徒に感謝すべきなのだろうか。奇妙な疑問を脳裏に浮かべながら、シンジは再び弐号機へと歩を進めた。本来搭乗すべき、アスカをその場に残して。





 
「・・・アン、タ・・・くぅっ!?い・・・一体っんあっ!?な・・・んなのっ、よぉ!?」

 身体に全く力が入らなかった。マナの手が自分の胸を、後ろから揉んでいるのに払い除ける事が出来ない。好きな様に胸を揉み廻されるまま、アスカはマナに問う。

 
「御主人様の、忠実な奴隷よ。それが?」

 
「うぁっ!?っそ、そうじゃ・・・無くってえっ!?あ、アンタは・・・んくっ、何モンなのって聞いてるのよっ!?」

 
「あ、そう言う事ね。霧島マナ。戦略自衛隊に所属しているわ」

 
「ぁあっ!・・・戦略、自衛・・・隊?」

 その組織の名は、アスカも知っている。そこに所属する者が、サードチルドレンに接触した。その理由など、1つしかあるまい。

 
「NERVの情報を、サードチルドレンと称する子供から入手しろ・・・そう命令を受けて、御主人様に接近したの」

 
「・・・んむぅっ!?っはぁっ・・・うああっ!」

 予想通りだ。などと思う余裕はアスカには無かった。仰け反りマナの言葉を遮る様に、アスカはマナの愛撫に過敏な反応を示している。

 マナがしている事と言えば、後ろからワンピース越しにアスカの胸を揉む。たったそれだけの事だった。たかがそれだけの事で、アスカは幾度も身体を捩っている。マナが胸を握る力に変化を加える度に、身体を伝う不自然に強い快楽がアスカを翻弄していた。

 
「所詮子供だからと思って、簡単に堕とせるなんて浅はかな考えを持っていたんだけど・・・あっさりと逆手に取られて、今は御主人様に飼って頂いてるの」

 
「・・・え?」

 シンジがスパイを逆手に取った?マナの言葉が、どうしてもアスカには信じられない。先程のシンジの体術も、マナに手ほどきを受けたと自ら明言していたのだから。どうやればシンジが、スパイを意のままに出来るのか?手段も方法も、アスカには見当が付かなかった。

 
「騙して取り入ろうとしたんだから、例え殺されても文句は言えなかったわ。にも関わらず、御主人様は寛大にも私を許して下さったの・・・それどころか御主人様は、私の顔を立てる為に時々情報を流して下さるわ。だから私は、御主人様の望むモノ全てを提供するの・・・それが、御主人様の御厚意に報いる唯一つの道だから・・・」

 
「あっ・・・あのバカ・・・!」

 思わずアスカは、ぎりっと歯を鳴らす。逆手に取った所は、まぁ良い。しかし、それで情報をくれてやっては何の意味も無いではないか。

 仮に出鱈目な情報をシンジが流していたとしよう。だが所詮は14歳の子供のウソである。例えマナを騙せたとしても、その上層部までをも騙せるとは思えない。

 要するにシンジは、マナにスパイとしての任を全うさせている事になるのだ。NERV側に居る者で有れば、誰もが怒りを覚える真似だろう。

 
「・・・口の聞き方には、気を付けた方が良いわよ」

 だが怒りを覚えたのは、マナも同じ事だった。自らの主人をバカと詰られて、黙っている理由などない。アスカの両の乳首を摘み、そこへ無造作に爪を立てる。

 
「いぎっ!?」

 引き千切られる様な痛みが、アスカの中を駆け抜けた。仰け反る様に伸び上がった身体が、小刻みに痙攣を繰り返している。

 
「がっ!ぁ・・・うあぅっ!?」

 快楽を盛んに発していた胸から痛覚が届いた事に、アスカは巧く対応出来なかった。食い込んだマナの爪が、自分の乳首に突き立てられている。痛くて当たり前だ。苦痛に身を捩り、わめき声を上げてもおかしく無い。

 
「ひっ・・・くうぅっ!」

 だがアスカの身体は、全く別の感覚をも訴えている。痛覚では無い、別の何か。曖昧模糊とした、受け入れ難い感覚を。かと言って、抗う事も叶わない。今のアスカに出来る事は、ただひたすらに弄ばれるだけだった。

 顔を高揚させ、アスカは全身で喘いでいる。主人の見立ての正しさを証明する、新たな奴隷候補のリアクション。その反応は、マナに満足感を与えるに充分だった。最も、そんなアスカを褒め称える気などない。アスカの精神を揺さぶるべく、マナは新たな言葉の矢を放つ。

 
「私はあなたを、御主人様の命令だから躾るだけなんだから。抵抗したあなたが、舌を噛み切った事にしても良いのよ?」

 勿論これは、マナのハッタリである。主人が奴隷とすると明言した者を死なせては、マナも只では済まないのだから。実はマナは、アスカを死なせない為に細心の努力を払わねばならないのである。

 
「・・・ぁ・・・くっ・・・」

 しかしこの脅しは、アスカには余りにも有効的過ぎた。留まる事を知らない勢いで、アスカの中に恐怖が膨らんで行く。

 
「御主人様がお望みになる以上、私はどんな事でもやるわ。お優しい方だから、厳しいことをお望みにはならないけど・・・奴隷である以上、それに甘える事は許されないの。御主人様の命令に、異を唱える事もね」

 かと言って、アスカを優遇するつもりなどマナには欠片も無かった。徹底的に快楽に酔わせて、アスカを翻弄し正常な判断を行う能力を奪わねばならない。シンジから躾を託された以上、それはマナの義務である。妥協など、出来る筈が無かった。

 例え、それがどれ程造作の無い事で有ったとしても。





 初号機も弐号機も、構造上の変化は殆ど無い。だから、初号機が動かせれば弐号機は動かせる筈だった。たった1つの制約を除けば。

 
「やっぱり日本語じゃあダメか・・・」

 弐号機はドイツで建造・調整された。そのうえ、操る適格者は惣流・アスカ・ラングレーである。わざわざ日本語のみで動くようにする理由は無かった。むしろドイツ語で調整出来る様にした方が、現地スタッフには都合が良い筈だ。

 だが日本語も用意されていなければおかしい。そうでなければ、シンジがアスカと共に乗り込んだ所で、精神同調に雑音を撒き散らすだけの存在になってしまう。そんなモノを、わざわざ戦闘時に乗せようとは思わないだろう。

 
「えーっと・・・」

 思い切りカタカナになっているドイツ語を、シンジは口に出した。基本言語を日本語に変更する。そう言う意味の言葉を、たどたどしく。

 一拍置いて、モニターの文字が次々とドイツ語からシンジの見慣れた日本語へと切り替わって行く。どうやら弐号機のシステムは、シンジのドイツ語をドイツ語として認識してくれたらしい。

 
「・・・通じたみたいだね・・・それから、と」

 カメラのスイッチと、マイクのスイッチをシンジは切った。少なくとも即座に、アスカが弐号機に乗っていないとバレるのは不味いからだ。シンクロデータを調べれば結局はバレるが、それはMAGIで解析でもしなければ不可能な事である。

 そして解析を行う為には、データが第3新東京市に到着しなければならない。だったらそれ迄にデータを消去してしまえば良いのだ。

 幸いな事に、マナは非合法活動のエキスパートである。データの消去くらいなら、容易にやってのけるだろう。仮にそのデータを持ち帰って、戦略自衛隊に渡しても構いはしない。どうせデータの意味は判りはしないのだから。

 艦内の空気は、とてもNERVやエヴァに対して好意的な雰囲気を感じさせはしなかった。と言う事は逆に、犯人特定を難しくする要素で溢れているとも言えるのだ。どのみちNERV側の自分に疑惑の目が向けられる事は無い。そしてマナは、人員名簿外の潜入した人間である。怪しむ対象に入る可能性すら無かった。

 
「よし・・・行くか」

 思い切り飛び出した方が相応しいかも知れないが、それは同時にタンカーを破壊する事も意味する。折角の玩具を、たかが対使徒戦如きで失う気などシンジには無い。係留用のロープを外して、ゆっくりと弐号機は輸送用タンカーから離れて行く。

 そのままシンジは、暫く弐号機を海中に漂わせていた。タンカーの右後方には、護衛用のイージス鑑が位置している。それが、弐号機に近づくのを待っていた。

 手が届く距離になると同時に、イージス鑑の甲板に指をかけ力任せに引き寄せる。プールから上がる時に、プールサイドを掴むのと同じ事だ。船はきしみ極端に横へと傾げているが、そんな事はシンジの知った事では無い。そのまま反動を付け、弐号機を海面から引き上げた。

 空中で一回転してから、イージス鑑のブリッジに弐号機は降り立った。ブリッジを踏み潰し、喫水線のかなり上まで鑑を沈めて。

 
『ナイス、アスカ!シンジ君も乗ってるのね!?』

 ミサトの声がスピーカーから聞こえて来る。その声を無視して、シンジは弐号機を跳躍させ今度はミサト達が乗る空母の甲板に飛び降りた。

 空母が傾き、甲板上の艦載機がバラバラと海へと落ちていく。鋼板が敷き詰められた甲板が、激しく波打ち歪んでいた。

 
『うわっ!?アスカ、聞こえてるんでしょ!?返事くらいしなさいよ、アスカぁ!!』

 出来る訳が無い。この場にはいないのだから。皮肉っぽい笑みを浮かべながらシンジは、発光装置を点滅させミサトにモールス信号でメッセージを送る。嘘で塗り固めた、ミサトの考えを肯定も否定もしないメッセージを。

 聞こえている。こちらの声は聞こえていないのか?

 
『・・・え?』

 スピーカーから聞こえたミサトの声が、何とも間抜けなものにシンジには聞こえていた。





 
「うわぁ・・・もうぐちゃぐちゃになってるわ・・・」

 スカートから手を差し入れ、呆れた声を出しながらマナはアスカのショーツの上に指を這わせる。

 
「あっ・・・はぅっ、あんっ・・・あうっ!」

 アスカのショーツは、既に濡れていた。湿り気を帯びた、と言う甘い濡れ方ではない。水を被った様に、びっしょりと水分を含んでいる。

 
「薬のせいだって言っても・・・あなた、ちょっと感じ過ぎじゃない?」

 
「ん゛ああっ!?そ、そんな事ぉ・・・」

 
「じゃあこれは、まさか汗だとか?それとも、漏らしたって言うの?」

 その音がアスカの耳にも届く様に、指の腹で軽く股間を叩きながらマナはアスカに聞いた。

 
「ぅああっ!ああんっ!!」

 まともな返事など、マナも期待していない。ぴちゃぴちゃと湿った音は、アスカの喘ぎ声によって掻き消されてしまっている。

 
「・・・それにしても、良く感じちゃってるわねぇ・・・」

 薬を使っているにしても、この反応は余りにも過敏過ぎた。しかもアスカのリアクションに躊躇いが感じれられない。いかに薬を使っているとは言え、ここまでの反応は既知の快感でなければ示せない筈である。

 
「・・・もしかしたら、ドイツじゃヤりまくってたのかしら?」

 しかしマナが調査した限りでは、それらしい情報は得られなかった。最も、こんな事は情報を集め調べる事とは違う。このような機会が与えられた以上、直接確認すれば良いだけの事だ。

 
「あうぅっ!?」

 ショーツの上からマナは、アスカの割れ目を試しに指で開いて見た。アスカが処女か非処女か、是非とも知る必要がある。アスカがのたうつ様に悶えるのを無視して、マナは幾度か柔肉を開いたり閉じたりしてみた。

 
「・・・この堅さじゃ、突っ込んだ事が有るとは思えないけど・・・」

 その肉には、弾力が有り過ぎた。経験を踏み発達し、柔らかくなってはいない。殆どと言うか、今迄に何も銜え込んでいない事を証明している。

 
「あんっ・・・ああっ当たり、前でしょおっ!?」

 器用にも、アスカは喘ぎながらマナの疑問を否定した。だがそれは、マナに異なる結論を導かせるのに充分な告白でもある。にやにやと口元を歪め、マナは確信を込めてアスカの性癖を決め付けた。

 
「と言う事は・・・自分でしてた、って事ね」

 
「んくぅっ!?そ、そんんっなぁっ、事ぉ・・・っ!!」

 くすくすと笑いながら、アスカの耳元でマナが囁いた。余りにも、定番と言えば定番なリアクション。深く指に絡んだ、次から次へとショーツから浸み出す愛液の量が嘘だと雄弁に物語っている。

 
「こんなに濡らしてちゃ、説得力の欠片も無いわよ。こんな風に、オナニーばっかりしてたんでしょ?」

 ショーツの上から、割れ目に沿ってマナは指を滑らせていた。触れる力に抑揚を付け、上下に幾度も往復させて。それだけの事で、アスカの身体は激しくのたうっている。

 
「はんんっ、あっあああっ!!」

 ひときわ高い嬌声を発した後。一瞬だけアスカの身体がが伸び上がり、それから全身から力が抜け。くたっと後ろから抱えるマナにもたれ掛かった。

 
「・・・イっちゃったのね・・・」

 空いた手でアスカの顔を持ち上げながら、マナは再び笑みを浮かべる。潤みながらも、何処を見ているのか全く判らない目。中途半端に開き、口元に少しだけ見える唾液で濡れた唇。風邪を引いた様に、真っ赤に火照った顔。何処をどう見ても、アスカが自称していた呼称には縁遠い表情だった。

 
「未だ未だ、これからなんだけど・・・ん?」

 だが、だからこそ都合が良い事も有る。壁面に付いたモニターを指し示し、マナはアスカに話しかけた。

 
「あ、丁度良いわ。ほら、モニター見て」

 
「・・・ぁ?」

 マナに促される通り、アスカがモニターに視線を投げ掛ける。焦点の定まらない、ぼんやりとしか映像を捉えられない目で。その目が、ゆっくりと焦点を合わせて行った。そして映っているモノが何かを知り、アスカは愕然とする。

 
「!?」

 映っているのは自分の乗機である、弐号機だった。今は自分に薬を投与した、シンジが操っている汎用人型決戦兵器が。

 弐号機が映っている事など、別に驚く様な事ではない。問題は、弐号機の動きが自分の搭乗している時より数段良い事に有った。

 単純に動かすだけなら、自分でも似た様な事は出来る。だが今の弐号機の動きを、自分が弐号機に搭乗して出来る自信は全く無い。その位、動作が制御され具合が違う。たかが、単純な動作1つだけを見ても。
そんな真似を、アイツは・・・私用に調整された弐号機で行っている・・・?

 
「残念だったわね、よがり狂ってる自称エリート天才美少女パイロットさん」

 自分の足下が崩れ落ちて行く感覚を、アスカは味わっていた。加持が言っていた事は冗談でも大袈裟でも無い。自分が見ている事、それが現実なのだから。

 
「世の中、上には上が居るのよ。あなた如きの能力が、御主人様に勝る訳なんて無いでしょ?所詮あなたなんて、御主人様を引き立てるだけの存在。刺身のツマって言うの?単なる数合わせの為だけに呼ばれた、その他大勢にしか過ぎないの」

 
「・・・ひっ!?」

 マナの指がショーツを押し、アスカの陰唇へとめり込んで行く。そんなに深く突き入れる気はマナにも無い。少し指を曲げ、膣口の辺りを擦る様に撫でるだけである。他愛の無い、これから玩具として遊ばれ奴隷として調教される事を思えば児戯にも等しい愛撫。だがそれだけで充分だった。これ以上は、主人となるシンジが成すべき事である。主人の娯楽を奪う権利など、マナに有る筈が無い。

 
「あうっ!?くうぅっ・・・うあっ、あふあぁっ!!」

 薬が効果を数十倍に高めて、アスカに快楽の味を教え続けている。がくがくとアスカの身体が震え、目を見開き口から涎が撒き散らされた。無数の火花が頭の中で激しく弾け、その1つ1つが弾ける度に思考能力が消え失せて行く。

 
「だ・か・ら。これからアレに乗る事になっても、せいぜい御主人様の足を引っ張らない様にしてね」

 
「うあぁっ!んむっ・・・あうっ!いっ・・・うっあああっ!!」

 少しだけ深くめり込んだマナの指に呼応し、アスカがひときわ大きな嬌声を上げる。それは自分のプライドを根こそぎ抉り取り、己の信じてきた道そのものを否定する言葉を聞こえない様にする為だったのかも知れなかった。





 
「お帰りなさいませ、御主人様。お疲れさまでした」

 使徒を殲滅し、弐号機は再び輸送船へと戻っている。弐号機から降り立つシンジに、深々とマナは頭を下げた。

 
「・・・ベトベト。エヴァ乗ると、コレがイヤなんだよなぁ」

 実際にシンジの身体からは、LCLが滴り落ちている。水よりも粘性の高い、血の臭気を漂わせる液体。この臭いにも感覚にも、どうしてもシンジは慣れる事が出来なかった。労われても、肩をすくめながら苦笑いで応じるだけである。

 
「清めさせて頂きます、御主人様」

 そう言うなりマナは、アスカの身体を放り捨て。シンジの頬に顔を寄せ、まとわり付くLCLを舌で舐め取り始めた。

 子犬が親の顔を舐める様な仕草なのだが、マナの顔には仕草に見合わぬ恍惚感が張り付いている。それも当然だった。これも又、マナからすれば主人に対する奉仕なのだから。

 単にLCLを拭うだけなら、シャワーを浴びタオルで拭いた方が早いだろう。しかしタオルを渡しては、何の意味も無い。自分の肉体を用いて主人に奉仕する事がマナの悦びである以上、汚れを拭い取るには他の手段など無かった。

 
「それも良いけど・・・」

 主人としては、奴隷の奉仕を受けるのは当然の事である。だが今のシンジには、他にマナにやって貰わねばならない事が有った。

 
「先に、お願いを聞いて欲しいんだけど」

 LCLを洗い流す事など、シャワーでも浴びれば良い。他の何にも代用出来ない、マナにしか出来ない事を先に行って欲しかった。それを頼む為に、少しマナの身体を押し退けながら話しかける。

 
「・・・はい?」

 
「戦闘データの消去をしてくれないかな。エントリープラグのレコーダーと、アンビリカルケーブルの先に付いてる管理用コンピューターから」

 
「搭乗者の記録・・・ですね」

 マナの目の、僅かばかりの変化が生じた。奴隷としてでは無く、諜報員としてマナはシンジの望みを聞いている。

 理由は簡単だった。シンジだけが弐号機に乗ったと知られては不味いのである。アスカも弐号機に乗っていた事にしなければならない。その事実が漏れるとしたら、2つの理由が考えられるだろう。1つはアスカの口から。もう1つは搭乗記録を調べられた時に。

 
「うん。出来る?」

 アスカの方は、シンジが何とかするだろう。ならば搭乗記録の方は、主人の為にも自分が消し去るべきだった。

 
「勿論です。御主人様から教えて頂きましたから」

 それに管理用コンピュータの使用方法は、シンジから教えられている。データの消去など容易に出来る事だった。

 
「そうそう。アスカはどうなったの?」

 
「・・・ベトベト、です」

 シンジの問いに、先程のシンジの口調を真似しながらマナが答える。くすくすと笑いながら、遠回しにアスカの事を蔑む様に。

 
「LCLに浸かったみたいに?」

 
「それ以上です。どうやら自分で慰め慣れているみたいですから・・・経験は無い様ですけど」

 
「・・・へぇ・・・自分で、ねぇ・・・」

 意外そうな表情で、シンジはアスカに視線を送った。アスカは快楽の波に弄ばれ続け、放心してぐったりと横たわっている。時折身体がびくっと動くのは、身体が先程の記憶を反芻している為だろう。

 
「ボクはアスカと一緒に、一旦空母に戻るよ。一応ミサトさんに、顔を見せておかないと」

 今この場でアスカを味わおうか。そんな考えを押し殺して、シンジは後の楽しみに取っておく事を選ぶ。

 対使徒戦は、一応終わった。そうなると建前上作戦指揮官であるミサトに、あれこれと話をしておく必要が有る。

 それはシンジだけでなく、共に弐号機に乗った事になっているアスカも同じ事だった。さっさと部屋に放り込んでも良いのだが、それではミサトも疑問を覚えるだろう。

 
「マナにご褒美あげるのも、ミサトさんへの報告が終わってからね」

 当然、そう言う事になる。それはマナにも充分に理解出来る事だった。シンジがミサトと接触する間に、マナは弐号機のデータを消去出来る。合理的だとも言えるだろう。

 だがそれは、同時に褒美として自分の身体を苛んで貰う時間が短くなると言う事も意味する。既に第3新東京市まで距離は殆ど無い。長く見積もっても、1日弱と言った所だろう。

 しかも新たに奴隷にするとシンジが明言した、アスカと言う邪魔者も居るのだ。当然、自分に割かれる時間は減る事になる。主人の決定は絶対だとは言え、正直マナは不満を覚えずにはいられなかった。

 
「大丈夫だよ」

 そんなマナの考えを知ってか、シンジがにこやかな笑みを浮かべる。

 
「戦闘のついでに、空母の甲板とスクリューを適当に壊したから。迎えが来ても飛行機は降りられないし、このまま航海しても・・・そうだなぁ、第3新東京市到着まで1週間くらい要るんじゃないのかな?」

 
「それじゃあ着く迄、ゆっくりとご褒美が頂ける・・・と言う事ですね?」

 シンジの説明を聞いて、マナの顔にも喜色が浮かんだ。
そこまで奴隷の私の事を考えて下さるなんて・・・と、感動すら覚えている。

 
「うん。アスカの方も、それなりに決着を付けないとね」

 
「・・・」

 マナに担がれたアスカには、2人の会話の意味が全く判っていない。朦朧としたままの頭で理解出来たのは、2人が何かを話していると言う程度の事でしかなかった。



つづく


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