「・・・」

 午前4時25分。アスカの部屋の扉が、すっと音も無く開いた。そこからシンジが、ある一点を伺いながら足を踏み入れる。足音は無く、気配すら完全に殺していた。まるでスパイが、敵地に潜入する様な態度である。少なくとも奴隷の部屋に入る、主人の行動では無い。

 部屋の隅に置かれたベッドでは、アスカが眠っていた。肉体のみならず、精神的なストレスに曝され続けている為だろう。シンジが侵入して来た事に、全く気付いていない。僅かに口を開け、微かな寝息を立て続けている。

 シンジは手に、大振りなバッグをぶら下げていた。それを静かに床へ置き、中からハンカチと透明な液体の入った瓶を取り出す。瓶の蓋を開きハンカチを液体で湿らせた後、シンジはハンカチをアスカの鼻と口を覆う様に圧し充てた。

 
「・・・?んんーっ!?」

 突然口を覆われた異物感に気付いたアスカが、慌てて目を開く。それから驚きで目を丸く見開き、じたばたとアスカは暴れ出した。

 
「んんんーっ!ん、んんーっ!!」

 口を覆う布が湿っている事を、アスカは感じている。シンジが何かを自分に嗅がせようとしている事は、間違い無かった。息を止める事も考えたが、そんな真似が長く続く訳も無い。それに息を止めた所で、何の解決にもならないだろう。

 
「んむーっ、んんんーっ!!」

 身体をよじり腕や足を振り回して、何とかアスカはシンジの手と押し当てられた布を払い除けようとする。

 
「そんなに心配しなくてもいいのに」

 流石にシンジも、この抵抗が鬱陶しくなったのだろう。アスカの腹に腰を落とし、それぞれの足で両腕を踏み付ける。直接邪魔になる部位の動きを殺してから、シンジは殺意に彩られた視線を向ける少女に嘲りの言葉をかけた。

 
「アスカ殺すんだったら、こんな面倒な事しないよ」

 
「んんっ、んー!」

 恐らく、そう言う問題では無いとでも言いたいのだろう。シンジの身体を跳ね上げようと、身体を上下させながらアスカはくぐもった声を上げている。

 だがいかにアスカとは言え、この態勢からの逆転は難し過ぎた。何しろ上半身の動きが、完全に封じられているのだから。首を振る事くらいは出来るが、その程度の事ではシンジが押し当てている布を払い除ける事など出来ない。下半身を振って反動を利用しようとしても、腹にシンジが乗っているので勢いが削がれてしまう。

 
「寝る子は育つって言うけど、あんまり育って無いみたいだねぇ」

 アスカの反抗を排除したシンジは、寝間着越しにアスカの胸を掴んだ。握り潰す程の、力は込めていない。掌の中にアスカの胸を納め、胸全体をやわやわと揉んでいるだけだ。どちらかと言えば愛撫に近く、シンジがアスカに行うにしては珍しい真似である。

 
「んんーっ、んんんっ!」

 
「・・・折角手助けしてあげてるのに、ありがとうの一言も無いし」

 
「ぅむっうぅーっ、むうぅっ!!」

 恐らくアスカは、余計なお世話だとでも叫んでいるのだろう。そもそも、頼んでシンジに手助けして貰っている訳では無いのだ。あくまでもシンジが、所有者の意思を無視して勝手にやっている事である。増してや、自分を性欲処理の道具としか見ていないシンジに感謝をしなければならない理由などなかった。

 怒りと屈辱に、アスカの顔は真っ赤に染まっている。その視界に入る総てのものが、血の色に染まっている様にすら見えていた。

 
「っ・・・」

 だがその色が唐突に、しかも急速に薄らいで行く。いや、色だけでは無い。自分に跨ったシンジの姿や部屋の景色までもが、ぼやけ歪みながら闇へと溶け込み始めた。そして、自分の意識さえも。

 かくんっとアスカの首が後ろに倒れる。力を込めていた四肢も、次々と敷き布団の中へと沈んだ。薬がようやく効いたのだろう。再びアスカは、浅い寝息を発するだけの存在と化していた。

 
「・・・本当に、手間だけは取らせてくれるねぇ・・・無駄に」

 意識が失せた事を確認して、ぼやきながらシンジはアスカの寝間着を剥ぎ取って行く。Tシャツとスポーツブラとスパッツ。脱がせるコツを心得ているのだろう、その動きから僅かの手間取りも感じられない。

 たちまち、シンジの眼下には全裸のアスカが横たわる事となった。薄く口を開き、呼吸音に併せて胸が上下している。その肉体も完全に弛緩し、普段よりも深く敷き布団に埋まっている様に見えた。生きている事は間違い無いが、それ以上の状態では無い。

 
「先ずは、今日の分を射ってっと・・・」

 持って来たバッグの外ポケットから、シンジは注射器を取り出した。プラスティックのカバーが針を被い、既に薬液が満たされている使い捨てタイプの注射器。

 アスカの元に座り込み、シンジはアスカの左腕を持ち上げ脇に走る静脈へと注射針を突き刺した。アスカの胸をシンジが求める大きさまで膨らませる為の、日課と化したホルモン剤の投与。もはやシンジにとっては、ありきたりで定型雑務にしか過ぎない作業である。何処に注射すれば良いかなど、今更迷う事は無かった。

 
「・・・さてと」

 薬液の投入を終え、空になった注射器をバッグへと戻す。それからシンジは、丸まった黒い塊をバッグから引っ張り出していた。それをばたばたと空中で振りながら広げて行く。

 
「空母でホザいてた事が本当かどうか、実証して貰おうかな」








17:1 〜scene.4_a〜








 それから、約3時間の後。身支度を整えたシンジは、食卓で1人朝食を食べていた。目玉焼きと、一緒に炒めたソーセージが3本に味噌汁。

 そこまでは朝食の食卓に並ぶありきたりの品々でしか無いが、主食だけは趣を異としていた。ご飯の上に納豆とオクラを載せ、更にその上に下ろした山芋がかけられている。スーパーでも入手出来る精力増強用の食材が、白いご飯を覆い隠していた。

 刻んだ海苔と山葵を載せ、そこに少し醤油を垂らして掻き混ぜる。一気に掻き込むんだ方が相応しい主食を、妙に行儀良くシンジは黙々と食べ始めた。時折TVのニュースに視線を投じるが、報じられる内容で表情を変化させる事は無い。

 一通り食事が終わったシンジは、数種類の錠剤を水で嚥下した。亜鉛やセレニウムと言った、精力増強を主としたサプリメントである。14歳の少年に普通は必要無いが、シンジはそれらの薬物を定期的に摂取していた。既にマナと言う奴隷を飼っている以上、精力は有るに越した事は無いのだ。奴隷に勘弁してくれと泣き言を言う主人など、存在価値が無いのだから。

 
「・・・こんな時間か・・・そろそろ、頃合いかな」

 TVで時刻を確認したシンジが、1人呟く。ズボンのポケットから小さなリモコンを取り出し、ボタンを押しダイヤルを廻した。まるで、TVのチャンネルを変える様に。

 
「ぃぎっ!あ、ぁがあっ!?」

 スイッチを入れると同時に、凄まじい悲鳴がアスカの部屋から響く。それに、ばたばたと布団の上で暴れる音が重なった。知らない者であれば、何事かと思う程の騒々しさである。その原因を生じせしめたシンジが、驚く訳も無いが。

 機能が正常に働いている事を意味する喧噪。これで、予定通り事が進められる。アスカのリアクションを耳だけで確認したシンジは、魂胆に見合わない爽やかで無邪気な笑顔を作り。扉を開き、布団の上で悶絶したままのアスカに朝の挨拶をする。

 
「おはよう、アスカ。今日も元気そうだねぇ」

 
「っ・・・ぐっ、あっ・・・!?」

 にこやかな顔をしているシンジに、早速アスカは怒りを爆発させようとした。しかし、とてもそんな事は出来ない。全身に残る痛みが、身体も精神も縛っている。殴りかかろうにも叫ぼうにも、麻痺した様に痺れる感覚が邪魔をしていた。

 
「っアンタ・・・な、何を・・・っ!」

 
「革の下着を着させてあげたんだよ」

 
「・・・革の、下着・・・?」

 顔を歪めながらのアスカの問いに、部屋の姿見を動かしながらシンジは応えた。鏡の角度を調整し、アスカに自分の姿を知らしめる為に。

 
「そう、こんな感じ。未だアスカには、ボリューム足んないかなって思ってたけど・・・どうかなぁ?私もぉ、十分に大人よとか言ってた人としては?」

 
「っ・・・なっ・・・何なのよ、この格好は・・・」

 シンジの皮肉を、意識せずにアスカは聞き流す。鏡に映った己の姿に、愕然とするだけで精一杯だった。それほどアスカは、自分の格好に衝撃を受けている。

 革の下着と、シンジは言っていた。しかしアスカの目には、とても下着には見えない。贔屓目に見ても、下着を着ている途中である。それも、安っぽいドラマに出て来る娼婦役の下着を。

 艶やかで真っ黒な革で出来たビスチェ。アスカが着させられたモノは、一言で言ってしまえばそれだけだ。胸とウェストを覆うチューブ状の下着である。中世の補正下着であるコルセットに、胸を覆う様に布が追加されているだけの事だ。

 一方下の方は、殆ど何も穿いていないのと同じだった。一応ショーツらしきモノは有るが、それが何の役に立つのかアスカには全く判らない。何故ならアスカの穿かされているショーツには、布地が一切無かったのだから。

 ウエストと腿の付け根辺りに巻かれたベルト。要は、ショーツの縁だけが有るだけだ。ビスチェと揃って同じ革製だが、良く言ってもこれは単なるベルトである。どうお世辞を使っても、下着などと呼べる代物ではない。

 レイほどでは無いが、アスカの肌もかなり白い方だった。だから奇妙な加工さえされていなければ、黒い革は相応に似合う筈である。そしてその加工が故に、この下着が似合ってると言われてもアスカは小指の先ほども喜ぶ気にはなれない。

 
「・・・アンタ・・・これを着させる為に、私に薬を嗅がせたのね・・・」

 
「そうだよ」

 怒りの刺を剥き出しにしたアスカの視線と口調をさらっと受け流しながら、何でも無い事の様にシンジは浅く頷く。

 「頼んだ所で、素直に着てくれるとは思って無かったしさ。起きてる時に無理矢理着せるのも面倒臭いし。それに、いきなり見た方が驚きが大きいでしょ?」

 
「・・・そんな事の為・・・だけ、に?」

 確かに驚いた。それはアスカも認める所だろう。ただどちらかと言えば、二の句が継げない程に呆れていると言うべきかも知れないが。

 
「アスカは、他にも何かして欲しかったの?これだけじゃ、物足りなかった?」

 
「・・・意味が違うわよ・・・根本的な所で・・・」

 そうは言っているが、どうせアスカを驚かせる事がシンジの目的ではあるまい。相変わらずの焦点がずれた会話を聞き流しながら、アスカは鏡に映った己の姿を見直していた。

 胸の殆どを黒革が覆っているが、わざわざ乳首の部分だけは開けてある。性の玩具だとでも主張する様に、銀色のピアスが付けられた乳首だけは露出させられていた。それからショーツ、いや数本のベルトもアスカの前後の肉穴を僅かばかりも覆い隠そうとはしていない。まともな神経を持つ者であれば、これを下着だとは認めようとはしないだろう。

 
「・・・?」

 ビスチェの表面は、お世辞にも滑らかだとは言えなかった。内側に何かが張り付けられているのだろう。ほぼ正方形の膨らみが、無数に浮かんでいた。胸は乳首を放射状に取り囲む様に、それから腰にも10以上は存在している。

 
「・・・この、表面の妙なデコボコは何なのよ?」

 アスカにも、見当は付いていた。これが、自分を叩き起こした激痛の発生源だと。ただ、その正体までは流石に判らない。未だ痛みの残る身体に顔を顰めながら、アスカはシンジに聞く。

 
「低周波発生装置」

 
「・・・何よ、それ?」

 シンジの説明を聞いても、アスカには簡潔過ぎて意味が判らなかった。胡散臭そうな目で、アスカはシンジを見て補足を求める。

 
「知らないの?簡易マッサージ機に使われてる奴だよ。低周波で刺激を与えて、揉まれたり叩かれたりした感覚を筋肉に疑似体験させるって言う・・・まぁ、実体験した方が早いか」

 そう言いながらシンジは、アスカに視線を投じたままリモコンのスイッチを押した。

 
「っ!?」

 かちんっとスイッチが入る音と同時に、びくっとアスカの身体が跳ね上がる。唐突に、胸を握る様に揉まれた感覚に曝された為に。

 
「なっ・・・あくぅっ、何なのよ・・・これぇ、はっああぁっ!」

 確かに自分の胸は揉まれている。だがアスカの胸には、シンジどころか誰の手も伸びてはいない。それどころか、胸自体には僅かな変形も確認出来なかった。にも関わらず、アスカは胸を揉まれていると感じている。

 
「はんっ、はっ・・・うっ、あはぁっ!」

 低周波の影響なのか、胸が細かく不規則に振動していた。身体の震えとは同調せずに、そこだけが別の生き物の様に。変化らしい変化と言えば、たったそれだけだ。たったそれだけの変化で、アスカは目に見えぬ手に弄ばれ。快感に苛まれ、意識を翻弄させられている。

 
「こんな感じで、ね。電池の小型化と無線化が難しくて、やぁっと実践投入出来る様になったんだよ。無駄に戦自の技術の粋を結集したって、マナがボヤいてたなぁ・・・」

 
「っ・・・ほ、本当にっ・・・む、無駄っあぁっ!」

 強がってはみたが、アスカに余裕など全く無い。起こされた時の刺激と違って、アスカにも苦痛にならない程度に弱められた刺激が伝わっている為だ。快感と言う、ある意味では痛みよりも有り難くない刺激が。

 
「あっ、ぁうっ・・・ひ、あはぁっ!」

 「結構、手で揉むのと感覚は似てるでしょ?アスカのおっぱいを大きくするには、こー言うの使って1分1秒でも長く揉みまった方が良さそうだしさ。薬との相乗効果って奴に頼らなきゃ、何時まで経っても大きくなりそうに無いし」

 
「うぁっ、あ・・・あふぁっ!」

 止めろとか脱がせろと言った所で、シンジが素直に言う事を聞く訳が無い。だからアスカは何も請おうとはせず、歯を食いしばり胸を揉まれる感覚に抗おうとしている。力任せに揉まれている様な、快感に僅かばかりの痛みが混じる奇妙な刺激に。

 
「・・・でも。よくよく考えてみたら、アンバランスな格好だよねぇ。ここがコレじゃ、大人なんだか子供なんだか判りゃしない」

 座り込んだままのアスカに歩み寄ったシンジは、アスカの恥丘を爪先で突く様に押しながら苦笑いを浮かべた。

 
「そっ・・・それは、アンタが剃っちゃったんでしょうが!それを他人事みたく言ってないでよっ!!」

 元々、生えていなかった訳では無い。シンジが、一本残らず剃り落としてしまったのだ。最も、アスカの陰毛は濃い方では無かったのだが・・・有るのと無いのでは受け止め方が根本的に異なる。

 しかも、剃毛したのはシンジだ。普段通りとは言え、傍観者の様な態度にアスカは無理矢理沸き立てた怒りをぶつけている。

 
「そんなに毛が欲しいの?どうしてもって言うんなら増毛剤でも塗ってあげるけど・・・要らないんじゃない?」

 からかう様な口調と共に、シンジは足の指でアスカの秘所を愛撫した。割れ目に沿って指を滑らせ、小さな肉の芽を指の先で押す。

 
「ひぐぅっ!」

 
「バイブもチ○ポもくわえ慣れてるし・・・ほら、もう濡れちゃってるじゃない。見た目はともかく、もう充分に大人だよ・・・アスカのおま○こは」

 
「ひ、くっ・・・ぃ、あはぁっ!」

 シンジの言葉を、アスカには否定出来なかった。自分でも判っている。足先で嬲られながら、自分が濡らしてしまっている事を。否定したくても、否定出来ない絶対の根拠を弄られている為に。

 
「あっあぁっ!?はぁっ、っ・・・ああぁっ!!」

 足の指で肉の割れ目を開き、シンジは無遠慮に指先でその中をかき混ぜる。胸に受ける低周波の愛撫に湿り、滑りを零す秘肉の中を。

 
「あうぅっ・・・あ、ああんっ!」

 手やバイブレーターならば未だともかく、足で嬲られ感じるなど余りにも情けない。自分の陰部を蹂躙する、足をどかせようとして。せめてその動きを、止めさせようとして。シンジの足を、アスカは両手で掴む。

 
「ぁっ、うあぅっ!?やっ、あんんっ!」

 だが肝心な腕に、少しも力が籠もらない。シンジの足を止める事など、出来る訳が無かった。薬のせいか、それとも嬲られる事に身体が慣れてしまったのか。肉唇を弄ぶ動きに併せてアスカは喘ぎ、淫肉の奥から湧き出る愛液でシンジの足を汚して行く。

 
「ひっ、あっ・・・はっ、あはぁっ!」

 ばちばちと、頭の中で無数の火花が弾けている。その火花に染まるかの様に、頭の中が白く染まって行くのをアスカは感じていた。もう少し、もう少しで全てが純白に塗り潰される。その時自分は、絶頂に至ってしまう。

 
「ぁふっ・・・うっ、いああぁっ!」

 猫が飼い主に遊ばれる様に、足で嬲られながらイく。耐え難く、シンジだけでは無く自分すらも許せない事実である。

 
「いっいひぃっ、あっあはあぁっ!!」

 だが、止まらない。その感覚を受ける性器も、伝える神経も、果ては受け止める脳も。どの部位も、止まろうとも止めようとも考えてはいなかった。逆に意志を無視して、与えられる快感を勝手に貪っている。それどころか快感を増幅させ、意志を挫こうとすらしている様に感じられた。

 快感は快感である。それ以上でも、それ以下でも無い。それがどんな形であれ、文句を唱える筋など無い。だから、下らない理性で邪魔をするな・・・と。

 
「けど、さ」

 アスカが絶頂に達する直前。そのタイミングを見計らい、シンジは足を引き抜いた。唐突に股間をまさぐる刺激が消え失せてしまえば、当然アスカの中で膨らんだ快感は急速に萎えて行く。

 
「ッ、っ・・・!?」

 アスカが望んだ筈の瞬間。それがもたらされたにも関わらず、アスカは喜ぶ気になどなれなかった。むしろ中途半端で終わった事が、苦痛にすら感じられる。身体の芯に火が残り、燻り続けている様にしか思えなかった。これなら未だ、果ててしまった方が楽かも知れない。

 
「・・・」

 何故止めるのだと表情で物語るアスカに、シンジは現実を告げる。アスカにとって、喜ばしいのか悲しいのか判らない現実を。

 
「もうそろそろ、洞木さん達が迎えに来てくれる時間なんだよね。何時までも悶えてないで、さっさと制服着てくれないかなぁ?ボクの足でオナニーをお楽しみの所、邪魔して悪いとは思うんだけど」

 
「!?」

 自分の数少ない、同性の友人の名を呼ばれた所でアスカは我に返った。ヒカリが来る。確かに、こんな事をしている場合ではない。

 
「っバカ言わないでよ!こっこんなん付けて、学校なんて行ける訳無いでしょ!?私、今日は学校休むからねっ!!」

 
「ふぅん・・・そんなにアスカは、家に籠もって1人オナニーに狂いたいの?さっきイけなかったから?」

 
「っ、違うわよっ!どぉしてアンタは、そっちにしか考えらんないのっ!?こんなん付けて、学校行けるって思う方がどうかしてるわよっ!!」

 当然と言えば当然の対応に、シンジは取り立てて驚く素振りは見せなかった。むしろシンジの態度からは、予想通りの返答を聞いたと言う冷めた感情すら伝わって来る。

 実際、シンジからすればアスカの理屈は聞く迄も無い事でしか無かった。余りにも予想通りだったので、逆に興ざめしてしまう程である。嘲りを含んだ目でアスカを見下しながら、シンジは当初から考えていた対応を実行に移した。

 
「そうなの?さっき、欲求不満そうな顔してたからてっきり・・・まぁ、別にどうでも良いか」

 
「勝手な納得してんなぁ!ちっとも、どうでも良かぁ無いわよっ!!」

 
「・・・そう言う意味じゃなくて。学校休むんだったら、この位にしなきゃね」

 
「あがっ!?ぁ・・・ぐっ、い゛ぎあっ!」

 シンジが手にしたリモコンのダイヤルを見ずに、一気に限界まで廻す。アスカを叩き起こした時と同じ、最強の状態に。とても、耐えようと思える様な強度では無い。激しく身体を仰け反らせ、アスカは目を剥き激痛と化した刺激に喚いている。

 
「ぐっ・・・あ゛っ、ぁがあっ!」

 其処には、快感の細片すら無かった。有るのはただ、身を裂かれ捻られ潰され刺される様な痛みだけだ。身体の重心が崩れ、両手を床に付きアスカは身体を支えようとする。

 
「ぎ、ぃあぁっ!はっ・・・っ!?」

 それさえも、今のアスカには叶わない事だった。極度の刺激が神経を麻痺させ、身体から自由が奪われている。たまに言う事を聞いても、力がまるで伴わない。大きな音と共に身体を床に倒れ込ませ、アスカはびくびくと身体を震わせ声にもならない苦悶を吐き出す事しか出来なかった。

 
「ついでに何かに縛り付けて、ふらふら出歩けないようにしなくちゃ。学校サボって遊び歩いてちゃ不味いだろうし、ボクがいない間みっちりやらないとね」

 そんなアスカを見下ろしながら、シンジはリモコンのスイッチを切る。アスカに話を聞く余裕を与える為だ。痛みが即座に失せる訳では無いので、アスカは床に伏し悶絶したままである。だが新たな苦痛が襲わない分、苛まれたままよりは意識を向けられるだろう。

 それほど、アスカにとっては大切な事なのだ。これから、シンジがアスカに話す事は。

 
「因みにミサトさんは、暫くNERVに泊まりで帰って来ないそうだから。助けて貰おうなんて、考えるだけ無駄だよ」

 
「っ!?どっ・・・どぉ、して・・・!?」

 何でも無い事の様に言い放ったシンジの言葉に、アスカは心が止まる様な錯覚を覚えていた。それ程、この一言には驚かされている。

 
ミサトが帰って来ない?アスカは自分の頭が真っ白になって行くのを、確かに感じていた。それはつまり、ある1つの状況を意味するからだ。

 
「昨日、電話が有ったんだよ。理由は教えてくれなかったけど、また使徒でも見つかったのかも知れななぁ」

 
「・・・」

 ミサトがマンションに居ないのなら、何をされようが自分の醜態を見られる可能性は無い。それはアスカにとって最悪の事態を意味する。このマンションが、昼夜を問わず容赦も遠慮も無き陵辱の場と化すと言う事を。

 今迄シンジにアスカは、幾多の苦痛を味あわされて来た。前後の処女を奪われただけでは無い。一夜縄に縛られ床に転がっていた事も有るし、貞操帯に取り付けられた張り型で1日中膣壁と腸壁を抉り掻き回された事も有る。乳首に穴を穿たれピアスを通された上に、陰毛を剃られ電撃の責めに苛まれた事も有った。

 だがそれでも、ミサトが居る為に出来なかった事も多々有るだろう。実際シンジも、ミサトが居る前でアスカを直接姦したりはしていない。ピンクローターを仕込まれた事は有ったが、逆にその程度の事しかシンジには出来なかったとも言える。つまりミサトと共に居る限り、少なくともアスカには安寧の時が与えられていたのだ。

 
「ともかく、アスカは安心して1人で悶えまくれるよ。良かったね、遠慮も気兼ねもする必要無いんだから」

 ある意味でシンジが言っている事は正しい。確かに、遠慮も気兼ねもする必要はなくなるのだから。問題は、誰の意志でそれを行うか。この一点に尽きるのだが。

 
「・・・」

 それに、アスカには悶える余裕など無い。単に苦しみ、のたうち回るだけで精一杯だった。

 先ほど味わった苦痛を、耐え切る自信がアスカには無い。今迄の苦痛とは、余りにも質が違う。強いて言うなら電撃に似ているかも知れないが、あれは、せいぜい長くても数瞬の出来事でしかない。

 これは恐らく、多分シンジが止めない限り永遠に続く。薬から続いた睡眠が、一瞬で打ち破られる様な強烈な痛みが。そんなモノに、幾ら気を張ろうが何時間も耐えられる自信など有る筈も無い。先ず間違い無く、精神が焼き切れてしまうだろう。

 
「でも学校に行くって言うんなら、これじゃ幾らなんでも無茶だから・・・そうだなぁ、この位にしようか」

 
「はぅっ・・・あっ、っ・・・」

 シンジの指がダイヤルを廻すのに合わせ、アスカの胸に改めて刺激が伝わって来る。先程とは、全く異なった感覚が。胸全体に広がり、背筋を駆け抜けていく。

 未だ痛みが残滓と化している乳房を、やわやわと癒し揉みほぐす様な快感。それは身体の奥底で燻り続けていた性欲の残り火にガソリンを注ぐにも等しい感覚だった。

 
「っ、ぅあっ・・・はっ、ああっ・・・っ!」

 
「・・・だから、洞木さん達が来るんだって。どうするのさ、アスカ?何時までも悶えてないで、とっとと決めてよ」

 
「・・・くっ・・・うぅっ・・・っ」

 苦しみを味わいながら、壊れる道を選ぶか。それても、適度な快感に曝され続ける道を選ぶか。シンジの問いかけを翻訳すれば、そう言う事になる。

 この問いかけは、情けから生じた訳ではない。アスカが壊れるなら壊れるで、シンジは別に構わないからだ。シンジの目的は、アスカを性欲処理の奴隷にする事では無い。アスカを自分に従順な存在として躾る事がシンジの目的で、その手段として調教を行っているのである。

 仮にアスカが壊れてしまえば、少なくともシンジは二度とアスカを目にする事は無い。それはそれで、シンジには喜ばしい結末だった。自分に従い2人目の奴隷となるか、それとも滅び自分の眼前から失せるか。どちらをアスカが選んでも、シンジには失うモノなど何も無い。

 
「それで?決めたの、アスカ?」

 
「っ、い・・・行くわよ、学校に・・・」

 悪魔が配って伏せた、2枚のカード。その中からアスカが選んだのは、快感を味あわされる事だった。と言うよりも、とても家に残る気にはなれなかったと言うべきだろう。

 以前にアスカは、前後の穴を裂けるかと思う程太いバイブレーターで穿たれ、縄で縛り一晩中部屋に転がしておくと言う真似をされた事が有る。それを思えば、あの激痛で丸1日苛む事もやっておかしくはない。シンジの言っている事が、単なる脅しなどと思える訳がなかった。

 少しでも刺激が弱い方に逃げる。それだけが、アスカが学校に行く事を選んだ理由ではない。むしろアスカが問題視したのは、家に残ると身動きが出来なくなると言うシンジの一言だった。

 動きを縛られては、何も出来ない。だが身動きさえ出来れば、ビスチェを脱ぐチャンスは有る。学校の女子トイレに逃げ込めば、幾らシンジでも侵入を企てる事は出来ないだろう。その時に切り裂いてでも、この忌まわしい責め具を脱ぎ捨てる。

 アスカは、その可能性に賭ける事にしたのだ。その間、胸を揉まれ続ける羽目にはなるが・・・好機を得る為には仕方が無いだろう。いっその事、先程味わった痛みを和らげる為のマッサージだとでも思えばいい。そう、アスカは自分に言い聞かせていた。





 とは言え、幾ら何でも今の格好で学校に行く事は出来ない。上はともかく下は何も身に付けていないのと同じなのだから。制服も未だ着ていないし、ブラジャーは無理でもショーツは穿かねばならない。

 頭痛と苦痛に苛まれながら、アスカはよろよろと歩を進めクローゼットの引き出しを引く。そしてアスカは、再び驚きと怒りの入り交じった目をシンジへと向けた。

 
「ししっシンジ!アンタ、私の下着をどうしたのよっ!?」

 
「え?」

 
「え?じゃないでしょ!?私のパンツやブラを、何処に隠したって聞いてんのっ!!」

 引き出しの中には、見事な迄に何も入っていなかった。ドイツから持って来た、お気に入りから普段着ける安物まで。1つ残らず、引き出しの中から綺麗さっぱり消え去っている。

 アスカがシンジを迷う事無く疑ったのは、今までを思えば当然の事だろう。少なくとも、アスカが信ずるに値するだけの事をシンジは全くしていないのだから。どうしたかはともかく、シンジが下着紛失に関与している事に疑問を挟む余地など無い。

 
「要るの?何で?」

 
「っアンタ、いい加減に・・・ぅぐっ、あぁっ!?」

 とぼけたシンジの問いかけに、アスカは一気に頭へ血を昇らせていた。それ以外に、理屈など必要ではない。考え無しに掴みかかろうとするが、その動きは身体を引き裂かれる様な痛みで封じられた。

 万力で、胸を潰される様な圧力。根本から、千切られる様な引力。力任せに殴られた後の様な痺れや、麻痺。様々な苦痛がアスカを襲っている。朝起きる時に感じたのと、全く同じ苦痛が。

 
「ぁっ・・・がっ、ああぁっ!!」

 とても立ってはいられなかった。腰はあっさりと砕け、へたり込んだアスカは胸を抱え込み、びくびくと身体を痙攣させながら悶絶している。今のアスカに、それ以外に出来る事など無かった。

 
「この暑い中、幾ら下着とは言え重ね着をするの?アスカって、そんなに酷い冷え性だったっけ?」

 スイッチを切る音に続けて、シンジが蹲ったままのアスカに疑問を投げ掛ける。

 
「っ・・・え?」

 この言葉は、完全にアスカの意表を突いていた。首だけ持ち上げ、アスカはシンジの方を向く。

 
「下着なら、もう着てるじゃない。2枚も3枚も、重ねたって仕方ないでしょ?」

 
「しっ、下着って・・・っパンツなんて、ただのヒモじゃない!?下着としてはなぁんの役にも立たないじゃないよぉ!?」

 確かに胸の方は、普通に下着を着ている時以上に隠れている。だがそれは、あくまでも上半身だけだ。下半身は3本のベルトが、どうでも良い所に巻かれているだけだ。肝心な部分は一切隠していない。何の役も果たしていないと言う、アスカの表現は決して言い過ぎなどではなかった。

 ただ、そんな理屈がシンジに通用する訳も無い。ばっさりとシンジは、単純な論法を以てアスカの意見を一蹴する。

 
「服の下に着るから、下着でしょ?何か違うかなぁ?」

 
「・・・」

 単語だけを見れば、シンジの理屈は間違ってはいない。ただアスカが問題にしている事とは、根本的な論点がずれた理屈でしかなかった。

 
「・・・つまりアンタ、私にパンツを穿くなって言いたいのね・・・」

 直接は言っていない。だが行動と発言を鑑みれば、そう言う事になる。ぎりぎりと歯を噛み締めながら、アスカはシンジに問う。

 
「今日は体育の授業は無いから、アスカが普通にしてたらバレやしないよ。まぁ風の悪戯でスカートがまくれ上がった場合は、運が悪かったと思って諦めて貰うしか無いけど」

 
「っ諦められる訳無いでしょ!」

 
「そりゃあそうだね。アスカの変態趣味がバレちゃうし」

 
「・・・っ」

 シンジの言う通りだった。ショーツを穿かずに学校へ行けとシンジに強要されたと言っても、普通は誰も信じる訳が無い。信じてくれと言う方が無理な相談だろう。

 アスカがこんな下着を着させられている、理由は有る。しかしそれが、シンジの命じた事だと言う証拠が無い。仮に100万言費やした所でアスカの行いが無かった事になる訳では無く、何故そんな命令を聞いているのだと言われれば絶句する他に無いのだから。

 誰に言われたのかなど、些末事でしかない。言われるがままに従った事実こそが、重要なのである。仮に他人に話した所で、素直に信じて貰える訳が無い。たかが14歳の、同い年の少年に隷属させられるべく調教中などとは。シンジが調教している事だけでは無く、アスカが調教されている事も。

 例え従わなければ、生命が危ういと言っても無駄である。説得力を、更に失うだけの事だ。それが事実であるか否かは、聞く者には関係ないのだから。従わなければシンジに殺されるなどと訴えた所で、誰も本気には受け止めないだろう。かえってアスカ自身の、人格を疑われるのがオチかも知れない。

 つまり周囲の結論は、こう決着する事となる。アスカは、自らの意志で今の格好をしている・・・と。

 
「最も・・・そうそう、そんな事は起こらないだろうけどね。漫画じゃないんだから・・・それとも。やっぱり今日、アスカは学校休みたい?」

 リモコンを見せながらのシンジの問いかけに、びくっとアスカの身体が震える。返事次第で即座に強度を上げると言う、あからさまな脅迫。あの凄まじい刺激に抗うだけの、度胸も覚悟もアスカには無い。

 
「・・・行くわよ・・・行きゃあいいんでしょっ!」

 白々しくも気遣う様な言葉を吐くシンジに、アスカは反射的に怒鳴り返していた。自棄と、シンジに対する意地で喚いただけである。

 
「それじゃ、早く制服着たら?そのまんまで行きたいんなら、別に止めやしないけど」

 
「うっさいわねぇ、今着る所じゃない!」

 シンジに促される迄も無かった。クローゼットの前に進んで、アスカは手早くブラウスとベストとスカートを身に着けて行く。

 
「・・・っ」

 素肌の上に制服を着るのは初めての経験だったが、ぱっと格好を見ただけでは自分が嬲られている事は判らない様だった。白いブラウスから黒い革のビスチェが透けるのでは無いかと思ったが、殆どの部分をベストが覆い隠してくれている。

 ただ、着衣の内側には些かの問題が有った。下着を付けていない為に、露出した素肌が擦れて僅かな痛みを感じるのである。スカートの裏地で尻が、ブラウスで乳首が。絶えず刺激を受ける事となり、それが気になって仕方が無かった。

 逆に股間の方は、布に圧される感じが一切無い為に心許ない事この上ない。恥毛が剃り落とされている事も手伝って、すぅすぅと股の間を空気が吹き抜ける様な感覚がひっきりなし伝わって来る。今まで有ったモノが2つとも無いと言う心細さが、不安を否応も無く煽っていた。

 そんな沸き上がる無数の不安を、学校に着く迄の辛抱だとねじ伏せ。ブラシを手に取り、苛立ちを込めながら髪を適当に梳かし始める。

 
「・・・」

 先程の決断が、果たして正しかったのか。鏡を見ながら、ふとアスカは考えた。ムキになって学校に行くと言った、自分の選択が正解だったのかどうかを。

 誤りだ。アスカの勘は、盛んに囁いていた。自分がシンジに乗せられたのか、それとも性格を読まれた上で誘導されてしまったのか。ともかく自分は、みすみすシンジの望む選択肢を選んでしまった。そう、内なる自分はアスカ自身を罵声と共に苛んでいた。

 これがシンジの手にはまってしまったのだとしたら。行き着く結論も、容易く知れる。自分は、自分の決断に後悔する羽目になるだろう。何で、あんな事を言ってしまったのか。勢いだけで応じてしまった、自分の愚かな選択を。

 それが、何時もたらされるのか。そこまではアスカにも、未だ見えない。今の時点で判っている事は、たった1つ。自分が後悔するのは、そう遠い話では無いと言う事だけだった。





つづく




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