17:1 〜scene.4_b〜









 ただ。流石にアスカも、まさかこれ程早く後悔する事になるとは思ってもいなかった。

 
「・・・っ・・・」

 一緒に登校しようとマンションに寄った、特にヒカリが心配そうな視線をアスカに注いでいる。トウジもケンスケもレイも、やたらとアスカを気にしていた。気にもせずに平然としているのは、シンジだけである。

 
「・・・どうしたの?弐号機パイロット・・・顔色が変よ?」

 家を出てから、未だ僅か10分も経っていない。それでもアスカの様相は、一目で見て判る程おかしかった。血の気が失せ青ざめていたかと思うと、急に一変して真っ赤に染まり直す。足取りだけでは無く、身体の運びそのものが不自然でぎこちなかった。普段殆ど会話に参加しようとしないレイをして、思わず聞かずにはいられない態度である。

 
「っ・・・な、なな何でも無いわっ!アンタだって血色悪い顔してるんだから、他人を変だとか言わないでよっ!」

 
「・・・?」

 思ってもいないかった、強い調子でのアスカの反応にレイは首を傾げる事しか出来なかった。確かにレイも血色が良い方では無いが、アスカの異状はレイと比べモノにはならない。だからこそ心配して、レイはアスカに声をかけたのである。

 しかしその心配が、今のアスカには余計で鬱陶しかった。仮に聞かれた所で、答えられない理由にアスカは苦しんでいるのだから。どうしたの?と聞かれた所で、まさか胸に低周波治療器を貼られて揉まれていると答えられる訳が無いだろう。

 しかも今日のアスカは、ショーツを穿かせて貰っていない。これが、アスカの想像以上に精神力を消耗させていた。スカートがめくれ、ショーツを穿いていない所を見られてしまったら・・・そう考えると、周囲に余計な気を廻し過ぎてしまうのだ。

 アスカのスカートの丈は膝まで有る、ありきたりな普通の長さである。布地も、風で簡単に捲れ上がる様な軽い素材では無い。覗き込まれるかスカートを捲られれば話は別だが、アスカ相手にそれを成す者など誰もいないだろう。少なくともこの場に居る、トウジやケンスケにその覚悟は無い。

 だがそんな事は、アスカには全く関係が無かった。肯定的に、考える事など出来はしないのだ。もしバレたら、見られてしまったら。普段当たり前に穿いているモノが無い。たったそれだけの事が、恐ろしいまでに否定的な思考を煽っていた。

 学校に向かう道の途中。アスカの周りに居るのは、シンジやトウジやケンスケやレイだけではない。同じ制服を着た、名も知らぬ無数の生徒たちが存在するのだ。ヒカリも居てくれてはいるが、僅かばかりの助けにも救いにもならない。相手が誰であろうが、知られてしまえば終わりなのだから。

 アスカの変態趣味がバレるだけ。出がけに、シンジはアスカにそう嘯いた。その言葉が、アスカに重くのしかかる。見知らぬ誰かよりも、見知った誰かの方が注視する可能性が高い。それはつまり、気付かれる可能性も高い事を意味する・・・。

 アスカの頭の中に渦巻く事と言えば、たったそれだけだった。しかも今の時点でも、アスカの胸は低周波による愛撫が続けられているのだ。とても他の事を考える精神的余裕などない。話しかけらた所で、鬱陶しく思えるだけである。

 
「・・・何を苛立っているの?」

 だがそんなアスカの事情を、レイが承知している訳が無い。折角思いやって声をかけたと言うのに、一喝を浴びると言う優しさに泥を塗る真似で報われた。これだけが、レイにとっての事実である。

 
「・・・そう、カルシウムが足りないのね・・・」

 それならば新入りの事など、僅かばかりも気にかけてやる必要など無いだろう。言われっ放しで終わらねばならない、理由など何処にも無いのだから。レイは冷ややかな目でアスカを捉え直し、反撃の狼煙を上げ始めた。

 
「・・・飢えた肉食獣の様に、血が滴り落ちる生肉しか食べないから・・・」

 
「んな訳無いでしょっ!!」

 
「・・・嫌いでも、魚や野菜も食べた方が良いわ・・・きっと、ダイエットにもなる筈(くすくすくす)」

 
「っお黙り、優等生!!」

 要するにレイは、遠回しにアスカは太っているとでも言いたいのだろう。身体の線を確かめる様に、値踏みするかの如く視線を動かしているレイをアスカは一喝した。

 
「んな事をねぇ、美術のポーズ人形みたく出っ張りも何も無いアンタに言われる筋ぁ無いのよっ!!」

 確かにレイと比べれば、アスカの方が体重は多いに決まっている。だがそれは、アスカの身体の方がレイよりも発育が良い為だ。シンジに無理矢理育たされていると言う、秘すべき事実も裏には有るが。

 
「うん・・・アスカって好き嫌いが異常に多いからさぁ。ロクに料理も出来ない癖に、ボクが作ったモノに文句言いまくるし・・・」

 
「っぶわかシンジぃ!アンタまで、余計な事言ってんなぁっ!!」

 レイの口車に乗った様にぼやくシンジに、アスカは怒鳴り散らす。主犯が他人事の様にホザくなと言いたい所だが、そんな事を言える訳が無い。だからシンジに調子に乗るなとしか、表立って言う事など出来なかった。

 
「私はちゃんと、栄養のバランスってモンを考えた食生活を送ってるわよっ!他人の心配する前に、アンタは前だか後ろだか判らない自分のスタイルを心配しろってぇの!!」

 
「あ・・・アスカ、そんなにテンション上げなくても・・・」

 流石に周囲の目を気になりだしたのだろう。少しだけ引きながら、ヒカリが大声で喚き散らすアスカを諫めようとする。

 
「では・・・成る程、そう言う事なのね(にやり)」

 だがアスカだけでは無く、レイも矛を収めようとはしない。口元に歪んだ笑みを浮かべながら、蔑む様な視線をアスカに注ぐ。

 
「・・・何よ。なぁにを勝手に、妙な納得してんのよ・・・アンタは?」

 その視線も口調も態度も、アスカには全てが気に入らなかった。レイが未だ何か良からぬ事を考えているのが、容易に透かして見える為である。

 
「・・・あなたの苛立ちの、本当の理由が判ったの・・・」

 
「!?」

 この言葉に、アスカは心臓が飛び出す程の衝撃を受けていた。信じ難いが、逆に疑う根拠も無い。自分の挙動の怪しさは、アスカ自身が一番良く判っている。具体的内容はともかく、何かされていると勘ぐられてもおかしくはない。

 だが、レイの至った結論は微妙に異なっていた。

 
「・・・あの日、なのね(にやり)」

 


 レイの口にした結論に、アスカとヒカリの顔が一瞬で上気する。因みに、共に居るトウジやシンジやケンスケは何の反応も示さない。ただ程度の差こそ有れそれぞれの表情は僅かに強張っているので、あえて・・・と言うのは容易に知れる。

 
「赤木博士と葛城一尉が、以前そう話し合っていたのを思い出したの・・・そう、弐号機パイロットのは重いのね・・・」

 
「あっ・・・ああ、綾波さん!?ひひっひ、人前でそんな・・・!!」

 
「っぬわにバカ言い出してんのよ、アンタわぁ!?」

 狼狽と怒りが入り交じった、2人の少女の金切り声が朝の通学路に響き渡った。周囲を歩いていた人々が、思わず何事かと驚きの視線を向ける程の音量で。

 
「・・・赤木博士に、薬を処方して貰うと良いわ・・・痛みと共に、命の火も消えるかも知れないけど・・・それも又、一興・・・」

 
「っそんな解決策を推奨すんじゃないわよ!なぁに考えてんのよ、アンタは!?そんなに私に喧嘩売りたいの!?」

 
「・・・平和やのぉ・・・」

 女3バカトリオからゆっくりと離れながら、他人事の様にトウジは正直な感想を口にした。別にどうでも良いと明言する様な、軽く心の籠もっていない口調で。そんな無責任な意見に、シンジは肩をすくめながら同意を示す。

 
「全くだけど・・・けどそれって、良い事だと思うよ」

 
「・・・そりゃ、そうやけど・・・センセが言うと、えらい重く聞こえるで」

 
「・・・そうかな?」

 シンジがエヴァを操り戦っている所を、トウジは目の当たりにしている。かつて見た光景を思えば、確かにシンジの言う通りだった。死にもの狂いの形相でエヴァを操るシンジを、トウジは見てしまっている。シンジがあんな真似をしないで済むのなら、それに越した事は無いだろう。

 
「・・・あれは撮っても、売れないだろぉなぁ・・・」

 
「・・・あんなモノ、誰が買ってまで見たいって思うのさ・・・」

 
「いや、その手のフェチがいるかも知れないし。ほら、世の中って広いから」

 
「・・・どんなに広くたって、そんな人いないと思うよ・・・絶対」

 
「・・・それ以前に。撮っとるのバレたら・・・間違い無く、3人に殺されるで・・・」

 あえて顔を向けようとせず。トウジとケンスケは、少しだけ歩む速度を上げ3人の少女を置き去りにして行く。それは自らに矛先が向けられる事を恐れる、悲しい自己防衛本能の産物でしかない。

 
「・・・遊びは、危険なほど楽しい・・・前田慶次郎利益は、そう言っているわ・・・私は、それを実践しているだけ・・・」

 
「っ・・・このガキぃ・・・っだったら、アンタの死を以て私が教えてあげるわっ!遊びで、命を落とす奴もいるって事をねええぇっ!!」

 
「あっ、ああアスカ!?それに、綾波さんも!押さえて、お願いだから冷静になって!!耐え難きを耐え、忍び難きを忍んでよぉ!!」

 
「・・・まあいいや。放っておこうっと」

 女3バカトリオの騒乱に、複雑な笑みを投じた後に。シンジは騒ぎに背を向け、小走りに2人の少年の後を追った。





 
「・・・っ、どぉなってんのよ・・・この服は・・・!?」

 無理な姿勢で腕を背中に廻しながら、アスカは顔をしかめていた。シンジの着させた下着の、想像を遙かに上回る手強さに苛立ちを募らせながら。

 1時間目が終わった後の休み時間。当初の予定通り、アスカは女子トイレに逃げ込んでいる。ポケットに鋏やナイフやメスと言った、学校の理科準備室等から無断で借りて来た数種の刃物を忍ばせて。

 ズタズタに切り裂いてでも、このビスチェは脱ぎ捨てる。ベストとブラウスを脱ぎながら、アスカは己に誓っていた。

 裏に張り付けられた低周波発信装置とやらは、今もアスカの胸を揉み続けている。その刺激は、アスカの身体と思考を酔わせ始めていた。これがシンジの言う所の、調教の成果なのだろう。刺激を受け続ける事で、感覚が過敏になってしまっている。

 ただ個室に籠もっていると言う事も有って、通学の時の様に乱れはしない。誰かに見られると言う、精神的な緊張が全く無い為だ。少しも感じないと言う訳では無かったが、我慢出来る程度の感覚でしかない。

 だからこそ今の内に、この刺激を止めねばならない。耐えられる段階で何とかしなければ、取り返しが付かない事になってしまう。より過敏になってしまう前に、こんなバカげた事は終わらせなければならなかった。

 しかし、低周波を止める事は出来ない。制御装置はシンジの手元に有るし、素肌に接触したままで発生装置だけを破壊する事は不可能だろう。先ず間違い無く、己の身体も傷付ける事になる。

 アスカが選んだのは、ビスチェを切り裂く事だった。快感と言う苦しみを与えてくれたモノに対して、存分に報いを与えたかった為だ。原形を留めぬ程に、ズタズタに切り裂いてくれる。アスカは、そう己に誓っていた。

 ・・・だが。

 
「くっ・・これ、全然隙間なんて無いじゃない・・・!」

 刃を入れる為にビスチェの端を持ち上げようとして、アスカは愕然とした。そもそも、持ち上げる事が出来ないのだ。胸の部分も、ウエストも。僅かに肉へ食い込み、ありとあらゆるモノの侵入を拒んでいる。

 試しに指先を引っかけて見たが、ビスチェ自体は持ち上がらずに指だけが虚しく宙を掻くだけだった。これでは、鋏を使う事など出来ない。

 低周波発信装置の上にナイフやメスを突き立てて見たが、筋の様な細いへこみは出来ても切り裂く事は叶わなかった。半ばヤケになって、ビスチェのそこかしこに刃を突き立てて見ても結果は同じである。アスカの身体は無論の事、表面に傷の1つ付きはしない。

 
「・・・ちっ」

 確かシンジは言っていた。戦自の技術の粋を、無駄に結集した・・・と。その言葉をアスカは、低周波を発生させる装置の事だと思っていたが・・・実際には、ビスチェそのものが技術の粋を結集させた代物だったのだ。

 シンジか、マナか。アスカの反抗を予測した上で、こう言う作りとしたのだろう。荒々しく手にした刃物を床に捨てながら、アスカも認めざるを得なかった。己の、考えの甘さを。

 
「・・・こー言う事だけは、手抜かりは無い、か・・・」

 有している刃物程度では切り裂けないとなると、残る方法は3つである。

 1つはレーザーメスやウォーターカッターやプログレッシブナイフと言った、より強力な切断道具を使う事。

 NERV本部に行けば幾らでも有るが、その場合中身には一切保証が出来ない。ビスチェだけでは無く、アスカの肉体をも切り裂く羽目となるだろう。深く考える迄も無く、却下せざるを得ない。

 
「・・・しゃーないか。忌々しいけど、普通に脱ぐしか無いわね・・・」

 次にアスカが試みたのは、第2の策である。着せたのと逆の手段を辿り、留め具を外して脱ぐ。再び着る事を連想させるので選びたくは無かったのだが、最も合理的な手法だろう。

 ただ問題も有る。この服を着させられた時、アスカには意識が無かった。どうやってシンジが着せたのか、アスカは全く知らないのだ。

 ビスチェはアスカの肌を、ぎりぎりと締め上げる様に密着している。だから、被ったとは思えない。その程度の手がかりを元に、アスカは一般的な服の常識に従ってビスチェを留めている要素を手探りで探し始めた。

 
「っ・・・着れたんだから、脱げない訳無いのに・・・ぅっ!?」

 ビスチェやコルセットの場合、一般的には背中側で繋ぐ様になっている。靴の様に紐で縛ったり、ブラジャーの様に金具を引っかける形式が多い。その常識に倣って、アスカはビスチェの表面に指を這わせて行く。胸を苛み続ける、快感に時折気を奪われながらも。

 
「・・・何処に有んのよ、コイツの繋ぎ目わぁ・・・!?」

 だが、肝心な繋ぎ目が無い。怪しい部位は何カ所か有ったのだが、どう触って確かめても留め具らしきモノが見つからない。紐もボタンもフックもファスナーも。それらしきモノは、存在しない様にしか思えなかった。

 
「っ・・・!」

 ビスチェから手を離し、がんっとアスカは便器を蹴り飛ばす。アスカも悟らざるを得なかった。自分1人では、手も足も出ないと言う事を。

 誰かに手助けをして貰えば、話は別かも知れない。しかし、一体誰に手助けをして貰えと言うのか。ヒカリ辺りならば、頼めば助けてくれるかも知れない。自分が受けている陵辱の証を、晒して良いと思えるのであれば。

 
「くっ・・・!」

 完全な手詰まりだった。どうにもならない。どうしようもない。たった1つ残された、最も選びたくなかった手を除いて。

 3つめの策。それは、着せた本人に脱ぎ方を問う事だった。相手が相手だけに、どうしても取りたくは無かったが・・・選り好みをする精神的余裕が、今のアスカに有る訳も無い。

 シンジが素直に頼みを聞くなどと、アスカも思ってはいなかった。何らかの代替条件くらいは提示してくるだろう。それでも他に手段が無い以上、やるしかなかった。

 本当に、自分がおかしくなってしまう前に。取り返しが付かなくなってしまう前に。その為になら、多少の代替条件くらいは呑まざるを得ないだろう。何を優先するか、問題はその一点に限られるのだから。

 
「・・・結局、アイツの思い通りになってんじゃない・・・私は・・・ッ!」

 苛立ちを壁に叩き付けながら、苦々しくアスカは言葉を吐き出す。そう考えてしまう自分を。そして、ここまで自分を追い込んだシンジが許せない為に。





 
「ほら、アスカ。もうすぐ終わっちゃうよ、休み時間が」

 2時間目の授業を終えた、休み時間。男子トイレの洋式便座に座ったシンジは、自分の股ぐらで頭を動かすアスカの後頭部を掌でぱんぱんと叩きながら声をかけた。まるでそれが、アスカのせいだとでも言う様に。

 
「っ、ぅっ・・・アンタをイかせりゃ、本当に外してくれるんでしょうね・・・」

 シンジの嘲りに彩られた言葉に、アスカは不快極まりないと言った表情を向ける。拡げた口の殆どを塞ぐ様な巨大な肉塊をくわえたまま、嫌悪と憎悪が入り混じった視線でシンジを睨め付けていた。

 視線や言葉でシンジが堪えない事くらいは、もうアスカにも判っている。だが、それでもそうせずにはいられなかった。排泄器官でもある男性性器を口にする事は、それほどアスカには屈辱的な行為でしか無いのだ。

 それでもアスカには、そうする他に選択肢は無い。これこそが、シンジの提示した代替条件だった為だ。拒絶すれば、シンジに着させられたビスチェを脱ぐ事が叶わなくなる。自ら脱ぎ捨てる術の無いアスカには、呑むしか無い条件だった。

 実際問題として、今のアスカにはシンジと駆け引きを行う精神的余裕が無い。先程の授業中、ついにアスカは低周波の攻撃に屈してしまった。穏やかな波が刻を経て海岸線を浸食する様に、精神力と言う防壁が砕け散ってしまったのである。

 それでも未だ、声を押し殺す事くらいは出来た。自分が何処に居るのか、状況を把握する事も出来る。だが、次から次へと押し寄せる快感の波に抗う事が出来ない。良い様に翻弄され、たかが疑似感覚に弄ばれている現実を否定は出来なかった。

 これ以上悦楽に晒されて保つとは思えない。もう、耐えられる限界は間違い無く突破している。何としてでも、この刺激を止めなければならない。自分が、未だ正気でいる内に。

 しかし、脱げない事は先ほどの休み時間に証明されている。リモコンをシンジが手にしている以上、急場凌ぎに学校から抜け出すのも得策ではない。何しろ戦略自衛隊の技術の粋を無駄に結集したと、公言して憚らないビスチェである。シンジが持つリモコンの受信範囲は相当の広さだろうし、そもそも移動中に低周波を最強にされたら痛みにのたうつ他に出来る事は無いのだから。

 結局アスカには、シンジに泣きを入れるしかなかった。少しでも刺激が弱い方がマシだと思っていた、自分の間抜けさ加減を思い知りながら。痛いよりは、気持ちが良い方が耐えられると考えた自分の愚かさを味わいながら。

 
「勿論。だから喋って手を抜かないでよ、アスカ」

 
「んぐぅっ!?」

 後頭部を掴み、シンジはアスカの口に自分の分身を根本まで突き立てる。先端で喉の奥を突かれ、吐き気に思わず涙ぐむアスカにシンジは子供を諭す様な口調で話を続けた。

 
「さっきアスカは、そのルールを呑んだんでしょ?」

 シンジがアスカに提示した交換条件は、単純極まりないゲームである。口で自分のモノに奉仕し、射精に導き一滴も零さずに飲み干せ。それが出来たなら、脱がしてやる。アスカがビスチェを脱ぐ為に、ありきたりなフェラチオによる奉仕をシンジは要求しただけである。

 その提案に、アスカは正直に言えば拍子抜けしていた。どんな事をさせられるのか、本気で怯えていただけに尚更である。まるで自慢にはならないが、アスカが口を犯されたのは1度や2度ではない。有り難い事では無いが、シンジからすれば馴染みのプレイに過ぎない筈である。

 
「んう゛ぅっ・・・ぐっ、ぅむうっ!」

 ただアスカにとって、だから楽だと言う訳ではない。シンジはともかく、アスカに奉仕とは苦しみでしか無かった。最も・・・何度やらされようが、アスカには馴れる気も無いのだが。

 口を塞がれ、漂う臭気を絶とうとしてしまう為に呼吸はままならない。平然とシンジは喉の奥まで肉棒の先端を突き立てて来る為に、アスカは常にこみ上げる吐き気と戦うだけで精一杯になる。

 こんなモノを衝えて悦ぶ、マナの気がアスカには知れなかった。まして、自分の愚かしさに対する罰などと思える訳がない。そもそも、こんな目に遭わねばならない正統な理由など無いのだから。

 
「ボク今まで、アスカに嘘言った事って有ったっけ?ちゃんと飲めたら、外してあげるよ」

 確かにシンジは、アスカに嘘を言った事は無い・・・良くも、悪くも。嘘であって欲しい事も、平然とどれだけ実行して来たか。その犠牲となり続けて来たアスカにとって、逆にシンジの言葉に説得力を感じる事は出来た。感じる理由に、有り難みの欠片も無いが。

 
「んぶっ・・・ぅぐっ、んむぅっ!?」

 口の中を、シンジの肉棒が荒々しく前後する。雁首に内頬の肉が引っ張られ、喉の奥が突き破られる様な衝撃がアスカの後頭部を内側から盛んに叩いていた。

 
「だからアスカも、もうちょっと気を入れてやってくれない?もっと、舌とか使ってさぁ。割れ目に舌を入れたりして、単調にならない様にやってよ。そんなんじゃ、何時まで経っても出す気にならないんだけど・・・それとも脱ぎたいってのは、ボクのチ○ポしゃぶる為の口実だったの?」

 
「ぐむっ、むうぅっ!?っ・・・う゛っ、んんんっ!」

 冗談では無かった。歯を立て、噛み千切りたい位なのに。だが、それは出来ない。そんな事をすれば、何をやり返されるか想像は付く。

 それに、そもそもアスカにそんな余裕は無かった。シンジはアスカの頭を掴み、勝手に前後に揺り動かしている。唇から喉の奥底までを余す所無く使う、全てを往復させる長い挿入を行っていた。その行為に、利用されているアスカへの配慮は僅かも無い。極端な言い方をすれば、右手をアスカの口に置き換えた自慰と差異は無いだろう。

 とてもアスカに、シンジが言う様に舌を使う余裕など無かった。仮に使った所で、シンジの動きに巻き込まれ余計に悲惨な結末が待っているだけだが。

 
「ぶっ・・・ぐっ、えぇっ!」

 シンジの肉の味が唾液に混じり、アスカの口の中に広がっている。引くのと同時に唾液が周囲に飛び散り、独特の臭気がアスカの鼻腔を犯していた。

 
「げ、えっ・・・ぅぐっ、あ・・・ぐうぅっ!」

 胃の底から、強い酸を伴った液体が込み上げて来る。次々と襲う苦しさと吐き気に、思わずアスカの目に涙が滲んでいた。情けないとか、心情は関係無い。今のアスカには、そんな事を考える余裕など無いのだから。

 早く終われ。さっさと、薄汚い体液を吐き出せ。それ以外に、今のアスカが望み願う事などない。

 射精したら射精したで、精液を飲み込む時にもアスカは苦痛を味わう事になるのだが・・・そこまで考える余裕も無かった。苦しさだけで涙を滲ませ、ただ今の時が1分1秒でも早く過ぎ去る事だけを祈るだけである。

 
「・・・ふぅっ」

 まるでその願いを聞き入れたかの様に、シンジの責めが唐突に止まった。シンジは短く息を吐き出すのと共に、アスカの口からいきり立ったままの肉棒を引き抜いて行く。

 シンジが射精していない事は、アスカにも判っている。放った時の感覚も、精液独特の味も臭いもしないのだから。終わったのでは無い、あくまでもシンジが止めたのである。

 
「・・・?」

 苦しみからの解放。だと言うのにアスカは、呆然とシンジの行為を見る事しか出来なかった。こんな事は、今までに一度たりとも無い。アスカが止めてくれと懇願するのを無視し、好き放題に嬲り続ける事が常だったのだから。

 それにも関わらずシンジが、シンジの方から行為を止める。期待こそしたが、現実に起こる筈の無い事だった。だからこそアスカには、全く訳が判らない。ぽかんと、呆けた様な表情でシンジの顔を見上げる事しか出来ないでいた。

 そんなアスカの態度に気付いたシンジは、彼女の前にずいっと腕を突き出し腕時計を見せつける。その理由を、最も単純に説明する為に。

 
「生憎だけど、時間切れだね。授業始まっちゃうんだよ、ほら」

 
「・・・え?」

 確かにシンジの言う通り、時計は次の授業開始まで1分を切った時間を示していた。シンジと違ってアスカは、タイミングを図らねば男子トイレから離脱など出来ない。授業に遅れない様に教室に戻る為には、ある程度の時間はどうしても必要になる。

 
「・・・」

 だが、それは些末事でしかない。もっと根本的な次元で、アスカは何と言って良いのか判らなかった。授業に出たいから、時間切れ?それは以前に、屋上で自分を散々嬲った少年に相応しい言葉ではない。あの時は平然と、授業をサボってアスカを犯し続けたのだから。

 
「残念だったねぇ、アスカ。もう、ゲームはおしまいだよ」

 
「・・・」

 当惑するアスカを無視して、一方的に終了を宣告する。それはつまり、あのビスチェを脱げない事を意味していた。アスカの顔を一気に、絶望が塗り潰して行く。自分の行いが徒労と化した事を悟って。

 
「じゃ、そー言う事で」

 だがそんなアスカの心情など、シンジの知った事では無かった。決めたルール通りに、終わるべきは終わる。それだけの事でしかない。アスカの唾液に濡れた肉塊をハンカチで拭い、ズボンにしまい込みながらシンジはアスカに背を向ける。

 
「・・・」

 アスカには、未だに言葉を返す事が出来なかった。シンジへの奉仕を続けたいから、ではない。あの下着を着用させられたままで、教室に戻る事が余りにも苦痛だったからである。

 正直言ってアスカには、残された授業の時間を耐え切る自信など無かった。貯め込んだ精神力など、とっくに使い果たしてしまっている。果たして次の時間、声を押し殺す事だけでも出来るのか。その程度の事にすら、アスカには自信が無かった。

 
「・・・ちょっ、ちょっと待ってよ!」

 それにこのままシンジが立ち去るのを見送っても、アスカに得られるモノは何もない。ようやく我に返ったアスカは、慌ててシンジを呼び止めた。

 
「10分有れば楽勝だと思うけどなぁ・・・アスカには、随分と有利な条件だった筈だよ」

 
「だ、だって・・・」

 振り返ろうともしないシンジの理屈に、アスカには返す言葉も無い。引き留めるきっかけの言葉だけは口を突いて出たが、その後に続ける台詞をアスカは持ち合わせている訳では無かった。

 頼んでまで、シンジのモノを口にしたいとは思わない。かと言ってこのまま帰しても、アスカは単に屈辱混じりの無駄骨を折っただけになってしまう。奇妙で複雑な逡巡が、アスカから言葉を奪っていた。

 そんなアスカを見かねたのか、それとも他の魂胆でも思い浮かんだのか。シンジはアスカの方へと向き直り、勿体ぶった口調で話を始めた。

 
「・・・そりゃあ、アスカがどうしてもって言うんなら次の休み時間に付き合ってあげても良いけどさ。その代わりに、1個だけ条件を付け加えるよ」

 
「・・・どんな?」

 どうせロクでも無い条件だろう。それはアスカにも判っている。だが聞かねば、話は先に進まないし打開の可能性も探れない。胡散臭げな目でシンジを見上げながら、アスカはシンジの言う条件を聞く。

 
「えーっと・・・あった、コレ入れて次の授業受けてよ。そうしたら・・・次は、昼休みか。昼休みにも、アスカにチ○ポをしゃぶらせてあげる。それでどう?」

 シンジがズボンのポケットから取り出したのは、小振りな棒状のバイブレータだった。長さは8センチ程度、太さも直径2センチ弱。今までシンジが使って来たモノと比べると、信じられない程おとなしい代物である。これなら、生理用品と比べても大差は無い。期待していた訳では無いが、アスカが意外に思ったのは事実である。

 
「・・・アンタ・・・学校にも、そんなモン持って来てたの・・・?」

 だからと言って、素直にはいそうですかと言う気にはならなかった。喜んでバイブレーターを受け取るほど、アスカもスれてはいない。シンジが差し出した樹脂製の棒を見ながらも、躊躇いを隠す事が出来ずにいる。

 
「まぁ、別に無理強いはしないけどさ。これはあくまでも、代替条件でしかないから。アスカがイヤだって言うんなら、ボクもアスカの言う事を聞く理由が無くなる。それだけだよ」

 
「・・・判ったわよ。入れりゃいいんでしょ」

 そう言われてしまっては、アスカには従う他に無かった。仕方なくアスカは、バイブレーターをシンジから受け取る。

 
「この場で、ボクに見える様に入れてね。入れるのは、前でも後ろでもアスカの好きな穴で良いや」

 
「・・・」

 少し考えた後、アスカは前に入れる事を選んだ。どちらが良いか、では無くどちらが未だマシかと言う消極的な判断の上で。

 
「2穴責めが好きだって言うんなら、もう1本用意するよ?ちょっと大きいから持ち歩いて無いけど、何なら教室に取りに戻ろうか?」

 
「・・・1本で充分よ・・・」

 覚悟を決め、アスカは床に座り込んだまま両足を拡げスカートをまくり上げた。人差し指と中指で、秘裂を隠す様に合わさった襞状の肉を横へと押し広げる。

 
「・・・んっ」

 ぞくっと、アスカの背に何とも言えない感覚が走った。膣口が拡がった事で、内に溜まっていた愛液が零れ指に絡み床を濡らして行く。

 
「んむっ・・・あっ、うぅんっ」

 自分でも判った。と言うよりも、ひくつく自分の淫唇が嫌でもアスカに教えている。次々と溢れ出る愛液が雄弁に物語っていた。より強い刺激を欲し求め、アスカの手にしているバイブレーターを誘っている事を。

 シンジの視線が自分の秘所に突き刺さっているのを、アスカは確かに感じていた。視線による愛撫がアスカの股間を蹂躙し、もどかしく弱々しい感覚が腰骨を伝い背を駆け抜けて行く。

 もどかしい。アスカは、そう感じた愚かさを脳裏から振り払おうとする。学校のトイレで、しかもシンジが見ている前で。何をバカな事を考えている。もどかしいからと言って、まさかこんな所で自ら慰める訳には行かないだろう。

 
「・・・」

 我に返る為に、さっさとアスカは事務的に作業を進めようとした。自ら拡げた肉穴に、シンジに渡されたバイブレーターを割り入れて行く。

 
「はぁっ・・・ひぁ、あはぁっ!」

 濡れそぼったアスカの膣は、すんなりとバイブレーターを飲み込んだ。痛みは無い。ただ、その代わりに挿入を悦ぶ感覚がアスカを襲う。バイブレーターの大きさに見合った、控え目ながらも確実な快感が。

 
「・・・はぁっ」

 だが収まってみれば、どうと言う事は無かった。異物が挿入されている。されてはいるが、それだけの事に過ぎない。過去を思えば、気になっても気を奪われる程のモノでは無かった。

 
「ちゃんと入れたね?じゃあ、スタートっと」

 アスカが挿入を終えるのを見届けてから、シンジがリモコンのスイッチを見せつける様に押す。一体どんな衝撃が自分を襲うのかと、反射的にアスカは身構えていた。とんでもない刺激が、自分を襲うに違い無いと覚悟して。

 だが。

 
「ぅっ・・・え?」

 自分の身体を伝う振動に、アスカは拍子の抜けた表情を浮かべる事しか出来なかった。確かに振動はしている。しかしそれは、余りにも穏やかで小さな振動だった。今までにシンジが使ったバイブレーターとは、逆の意味で比較にならない。

 今までにシンジが使ったバイブレーターは、どれも太く長い上に強烈な振動を伴う代物ばかりだった。引き裂かれんばかりの痛みと臓腑の奥底を突き上げれられる感覚、それと痺れにも近いバイブレーションでアスカの身体を苛んでいる。

 にも関わらず、今回だけは違う。今まで使われたバイブレーターと比べれば、動いていないのと同じだ。それはシンジの責めに馴らされた事を意味するので、とても素直に喜べはしないが。少なくとも、この程度であれば耐えられる。アスカは、そんな確信に近いものを抱いてすらいた。

 
「一応事前に言っとくけどさ、ボクがスイッチ切るまで抜かない方が良いよ。困るのは、多分アスカだから」

 
「・・・どう言う意味よ?」

 もって廻ったシンジの物言いに、アスカは鋭い視線を向ける。シンジがこう言う物言いをする時は、だいたいロクな事が起きない。

 
「理由は、アスカのノートにでも書いておくよ」

 ただ、アスカが最も知りたい事をシンジは説明しようとはしなかった。再び背を向け、シンジは個室を辞して行く。

 
「じゃあ、お先に。精々、次の休み時間は頑張ってね。ボクだって、お預け喰らったみたいで気持ち悪いんだからさ。今度こそ、気持ち良くアスカの口にブチ撒けさせてよ」

 勝手な理屈を残し、手を振りながら個室から出て行くシンジを見送りながら。アスカは、改めて不吉な予感に囚われていた。

 
「・・・」

 具体的には、見当すら付かない。そもそもシンジが何を考えているかなど、アスカには全く判らないのだから。判らない思考を有する相手の行動を読む事など、絶対に無理である。

 だからアスカとしては、己の予感を信じる他に道は無い。予感に基づいた、対応を取る他に無かった。シンジが何を仕掛けているか判る迄、バイブレーターは抜けない・・・と。





 教壇に立っている老教師の話に、トウジは呆れを隠そうともしなかった。

 
「・・・まぁたセカンドインパクトの話かい・・・」

 今は一応、数学の授業の筈である。だが教師は、少しも本来の役割を果たそうとはしなかった。セカンドインパクト後の、争乱においての苦労話を延々と話し続けている。わずか10数年前の出来事。とは言え、聞く側の中学生からすれば既に歴史上の出来事の1つでしか無い。

 
「何ぼ何でも、もう聞き飽きたで。まぁ、真面目に授業せぇとは言わんが・・・そやけど、あの爺さんも、歳喰い過ぎて話した事忘れとんのと違うか?何度目や思うてんねん」

 それでも未だ、初めて聞いたのであれば多少は興味を引いただろう。問題は教師が、幾度も幾度も同じ事を繰り返し話している事に有る。聞き飽きた、と言う陳腐な言葉すら使う気になれない。相手が教師で無ければ、いい加減にしろと怒鳴り散らしている所だろう。

 
「・・・」

 今更改めて話を聞く気など無いトウジは、何気なく首を巡らし教室を見回した。起きている者はざっと数えても半分くらい。残った半分の生徒は、机に突っ伏し夢の世界を漂っている。

 起きている者でも、話を聞いているのは僅か数名しかいない。ヒカリは教師を無視して自習に勤しみ、レイはぼけっと窓の外を眺めていた。シンジは組んだ腕の上に顎を乗せて、眠そうな目で黒板を見つめ。ケンスケは机の下で、愛用のカメラのレンズをせっせと磨いている。

 
「・・・惣流だけは、相変わらず訳わからへんなぁ・・・」

 そんなトウジにも、アスカの行動だけは全く理解出来なかった。突っ伏して寝ているのは良いのだが、小刻みに身体を痙攣させているのが端から見ていても不気味だった。時折びくっと全身を震わせて、呻き声の様な小さな声が漏れている。他人事ながら、気になって当然だろう。

 
「・・・ああ、アレ?何かさぁ、未だ具合良くないみたいなんだよ・・・」

 
「未だって・・・言うたら悪いが、順応性低いのぉ・・・」

 困惑に彩られたシンジの小声が、トウジの耳に辛うじて聞こえる。その内容に、トウジは眉を潜めざるを得なかった。

 
「こっち来て、どんだけ経っとる思うとんねん。エリート天才美少女パイロット謳っとんのが、虚しゅう聞こえるわ・・・」

 アスカが日本に来てから、およそ1週間。しかし環境の変化で体調を崩したにしては、余りにも異状な期間が長すぎる。トウジの見解もしごく当然のものと言えるだろう。本当にエリートで天才ならば、環境適応能力も備えていて当然の事なのだから。

 
「それはあくまで、自称・・・だからねぇ。逆に、だから自分で言ってるって言い方も出来るし」

 
「・・・センセ、その理屈は鬼の様にキツいで・・・惣流に聞かれたら、張り飛ばされるん違うか?」

 頷きながらのシンジの意見に、トウジも思わず苦笑いを浮かべていた。要するに、誰も自称の様には思っていないと言っている様なモノだからだ。空母でアスカの鉄拳制裁を喰らっているトウジは、思わずシンジの身を案じていた。

 
「・・・っ」

 囁く様に小さいシンジとトウジの会話は、アスカの耳に届いている。普通だったら聞こえる訳が無い程の、小さな声が。実際、彼らの会話に反応を示している者は誰もいない。ただアスカだけが、2人の会話に苛立ちを募らせるだけだった。

 
「っ、んっ・・・は、ぁっ!」

 座って、初めて判った。椅子の板が挿入されたままのバイブレーターを押し、立っている時よりも遙かに強い振動を伝える事を。

 先ほどシンジの前で入れたバイブレーターは、全く固定されていない。アスカ自身の膣壁によって、くわえ込まれているだけだ。圧迫されている部分が少ない上に圧迫そのものも弱ければ、当然アスカに伝わる振動も大した事はない。

 それでアスカはタカをくくってしまった。大した事は無いペナルティだと、誤解してしまったのだ。だからこそ、余計にアスカは堪えている。シンジ相手に、油断をした自分の愚かさ加減を思い知る羽目となっていた。

 
「ぅんっ、くっ・・・ぁ、あんっ!」

 今のアスカに、表情や態度を偽る余裕は無い。やむを得ずアスカは、両腕を枕にして机に突っ伏していた。上半身を倒す事でバイブレーターが更に奥へと押される事になるが、それは仕方が無い。

 
「っ、あぅっ・・・はっ、あっあぁっ!」

 平静を装う事など出来なかった。顔を上げていたら、間違いなくバレる。自分の顔が、悦びに歪んでいる事が。寝たフリでもして、顔を隠す事以外に誤魔化す手は無かった。例えそれが、直接の解決にはならないのだとしても。

 
「くうっ、ぅうんんっ!っはぁ・・・あ、あぁっ!」

 今迄にシンジに使われたバイブレーターと比べて、刺激そのものは弱い。実際、挿入している事で痛みは僅かも感じないのだから。

 だが、もしかしたら苦痛に顔を歪める程に強い刺激の方がマシだったのかも知れない。何故なら細いバイブレーターの発する刺激は、皮肉にもアスカには丁度良い快感を与える責めとなっていたのだから。

 
「あっ・・・はぁっ、んくぅっ!」

 じわじわと込み上げる快感に、アスカはぶるっと身体を震わせた。ビスチェから発せられる低周波による刺激と、バイブレーターの刺激がアスカの中で共鳴を起こしている。自分で胸を揉み、指で膣を掻き回す様な感覚となって。

 
「っ・・・んんっ!むぅっ、くっぅんっ!」

 机の上に開かれたノートには、シンジの伝言が書かれていた。アスカ自ら挿入した、バイブレーターの仕掛けが。ある意味ではシンジらしい、卑怯で抗う術の無い搦め手が。

 バイブレーターの外周には、圧力で動作する簡単なスイッチが組み込まれていた。圧力を受けている時はスイッチが入り、圧力が無くなればスイッチが切れる。もしリモコンのスイッチを入れた状態で圧力で入っているスイッチが切れれば、けたたましい電子音が鳴り響く・・・と。

 書かれていたのは、たったそれだけの事だ。だがアスカにも、それだけで意味は充分に通じる。抜けば電子音が鳴り響き、嫌でも衆目が集中するとシンジは言っているのだ。

 それがどの程度の音か、書いてはいなかった。シンジが自分を引っかける為の虚言と言う可能性も否定は出来ない。ただ、だからと言ってアスカは試す気にもなれなかった。シンジがわざわざ嘘を言うとは思えなかったし、己の破滅を呼び込む様な実験を捨て身で行う理由など何処にも無い。

 
「っ・・・」

 内腿に力を込め、アスカは柔肉でバイブレーターを締め付けようとする。なまじ太さが無いだけに、緩めればスイッチが切れるのではと不安を煽られてしまう為だ。けたたましく電子音が鳴り響く事で迎える、絶望の未来を想像する故である。

 
「あ、はぅっ・・・くぅっ、うぅんっ!」

 ただ、本当にそれだけなのか。聞かれても、アスカには断言するだけの自信は無い。もしかしたら、もっと刺激を強く受けたいが為にバイブレーターを締め付けているのではないのか。否定したいが、一言の元に切り捨てる事など出来ない。

 ショーツを穿く事を許されなかった為、アスカから溢れた愛液はスカートに吸収されている。湿ったスカートが肌に張り付き、体温が蒸発させていた。スカートの中に熱を帯び湿気った空気が籠もり、汗と混じり異様な臭気を布目から漏らし始めている。

 シンジに嗅ぎ馴らされた自分の性臭を、確かにアスカは嗅いでいた。薄いが、確かに存在している。教室で性具に弄ばれ、恥知らずにも自分が感じている証が。

 
「ひっ・・・くうぅっ!ぅあ、は・・・あぁんっ!」

 額に珠の様な汗が浮き、頬を伝い顎から落ちる。ブラウスにも汗が染み、素肌が透けて見えた。ベストを着ている為に、ビスチェが透ける事は無いが・・・だからと言って、問題が無い訳では無い。このままではいずれ知られるだろうし、今迄とは別な形でビスチェがアスカの身体を責め始めたのだ。

 汗を吸った為に、ビスチェとショーツ代わりのベルトはゆっくりと縮んでいた。当然中身のアスカの身体を締め上げながら。

 
「くっ・・・うぅっ、んんっ!はぁっ・・・んくぅっ!」

 点でも線でも無く、じわじわと上半身を満遍なく締め上げられる感覚。縄やワイヤーで縛られる事とは、伝わる痛みの質が余りにも違い過ぎた。

 故意に切り欠かれたビスチェから、周囲の肉ごと乳首が押し出されている。乳首の先端がブラウスに触れ、今迄とは異なる刺激がアスカを襲い始めていた。

 
「っ・・・ひっ、あっうぅっ!」

 組んだ両腕に顔を伏せていたアスカの身体が、大きく伸び上がった。がたっと音を立て椅子がずり下がり、机の上から筆記具が転がり落ちる。

 しかし。

 
「ぃっ・・・あ、はあっ・・・ああぁっ!」

 どれだけアスカが果てようが、幾多の機械に依る責めが終わる事を意味はしない。次なる絶頂へと、アスカを誘うだけの事だ。装置が止められない限り、いやシンジが止めない限り終わる事は無い。

 
「はふっ、あっあんっ!あぁっ・・・っ、うああっ!」

 今のアスカが願う事は、ただ1つ。

 
「・・・まぁ、何でもええから。早よ授業終わらんかな・・・次は、待ちに待った昼メシの時間なんやから」

 理由こそ異なるが、それは奇しくもトウジと同じ願いだった。

 



つづく

 


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