THE REFLEX

作:柴レイ


 

第壱話 : I saw her standing there

 

 

 

 

 

西暦2030年・・・旧東京市

かつて繁栄を極めた日本の中心都市は、二つのインパクトを経て、一度は完全に海中へと没したが、絶え間無い時の流れの中、再びその大地を地表に現していた。

しかし今その地表にあるものは、以前にそびえたっていた超高層ビル群、ハイウェイなのではなく、その亡骸の山でしかなかった。それの様子はまるで、そこの住民達の掃き溜めの呼称であった、夢の島・・・そう、そのものであった。そして生物の存在など微塵も感じられない。

その夢の島の上を一人の少女が踊るように歩いている。

楽しそうな歌声が辺りに聞こえてきた。

 

 

 You gone too far this time   今度は少しばっかり遠くに行き過ぎちゃったかな

 But I'm dancing on the valentine   でも私はヴァレンタインの日にこうして踊っている

 I tell you somebody's fooling around   聞いて、誰かが私のチャンスを盗んだまま

 With my chances on the dangerline   危険地帯をぶらつているのよ

 

   

そこまで歌った後、弾む様に踊り歩いていた少女の足がピタリと止まった。

前方を見つめる。やがて瓦礫の大地に微震が起こり、少女の前方50メートル程の地点がゆっくりと盛り上がり始めた。

「始まったのね」

盛り上がる瓦礫の山。それがある程度の高さになった後、バタバタと崩れ落ちた。そしてそこには不思議な物体が浮かび上がっていた。きれいな正八面体の物体が、鈍い光を放ちつつ空中に浮かび上がる。

少女は暫くその様を眺めていたが

「それじゃあ、わたしも急がなくっちゃ」

そう呟くと、そこから回れ右をして駆け出した。

長い一本の三つ編に結んだ黒髪を舞わせながら。

少女の後方では、正八面体の物体が空中を静かに漂っていた。

 

 

 

 

 

あなたは・・・・・・あの娘に私を重ねていたのよ・・・・・・

 

 

 

 

 

キンコンカンコン・・・・

授業のチャイムが鳴り渡る。しかし、第三新東京市第一中学校二年A組の教室の喧騒はまったくおさまる気配を見せなかった。

ドアが静かに開き、そばかすを残した頬の上にあまり似合っているといえない眼鏡をかけた女性が、一人の少女を連れて入ってきた。

それでも教室のざわめきはおさまらない。その時、その喧騒を静めるかのような声が飛んだ。

「起立っ!!」

ショートカットのいかにも真面目そうな顔立ちの少女の掛け声。

しかし彼女に従って立ちあがる者は片手で数えられるくらいしかいなかった。その代わりにあちこちから口笛が鳴る。

「ひゅー!!可愛い!!」

「ちょっと目つきがきつそうだなぁ」

「でもよぉ、口元のホクロがいい感じでてんじゃねえの」

それらの声に、先程の号令をかけた少女の顔がにわかに険しくなる。

「静かにしなさい、あなたたち!!鈴原先生がもう来てるのよ。真面目にしなさいよ!!」

しかしその叫びに対して、教室の後方から怒声が返った。

「うるせえんだよ!!サトミ!!」

その声に、サトミと呼ばれた少女はびくっと身体をふるわせた後、黙ってうつむいた。そして教室には急にそれまでとはうってかわって、どこかしらひんやりとした沈黙が流れた。

教室の前方にある教壇に立つ女性教師はずっと黙ったままであった。かつてはこの教室で、同じような喧騒を・・・・・・それこそ関西弁すら混じった騒ぎを一発で静める“委員長”であった筈の彼女が。そして今、かつての彼女の役割を努めている少女が、うつむき涙ぐんでいるのを、ただ見つめているだけであった。

しばし流れた気まずい沈黙を破ったのは、黙って立ち尽くす女性教師の後方から聞こえてくる、チョークが小気味良く黒板を走る音だった。さっきの口笛の的となっていた少女が、生徒達に背中をむけて自分の名前を書きこんでいたのだ。

 

桐山アヅサ

 

そう達筆で黒板に書き終わると、少女はくるりと振り返る。そして教室中を見渡した後、笑顔で声を発した。

「転校生の桐山アヅサです、よろしくぅ。・・・・・・こんなもんでいいかしら、鈴原先生?」

その少女・・・アヅサの声に、この教室の担任こと鈴原ヒカリはびっくりしたように、 「えっええ・・・」 と答えるだけであった。

教室中に、ほぉ〜という声があちこちから流れる。続いて 「よろしくぅアヅサちゃん!!」 と声が飛んだ。とたんに教室中に笑い声がおこった。ようやく気まずい雰囲気が解け、穏やかな空気が広がっていった。

 

背は150センチくらい、体型は中学二年生としてはまだ幼い感じであったが、それでも古風な感じのする制服がよく似合っていた。長い黒髪を後ろで一本の三つ編みにして腰のあたりまでたらし、顔は大きな瞳と、かわりに小さめながら形のよい赤い唇。その口元の左下のホクロと、高く通った鼻がとても印象的な、どこかしら日本人ばなれした美少女であった。

そして可愛い顔立ちをしながらも、どこかしら気の強そうな感じを与える雰囲気を醸し出していたが、そのイメージ通りの威勢のいい声で、アヅサは隣で自分を見つめているヒカリに、軽くあごを上げながら問いかけた。

「先生、わたしの席はどこですか?」

その問いかけに、ヒカリはまたしても驚いたような表情を浮かべたが、少し間をおいて自分で自分を落ちつかせた後、教室の後方の右隅の窓側、さっき一声で教室中を沈黙させた怒声が聞こえた方を見つめ

「桐山さんの席は、あの窓側の後から二番目の空いている席よ」

と答えた。

その席の後には、白い解禁シャツの胸元をはだけ、両足を机に上げて窓の外を見ている少年の姿があった。

アヅサは、ヒカリの言葉に 「は〜い」 と答え、席に向かって歩く前に、もう一度ヒカリにむかって問い掛けた。

「ところでさぁ〜先生。わたしの席の後にいる、シーラカンスは誰?」

その声に再び教室中に緊張が走る。もちろんヒカリもびっくりした表情で

「桐山さん。今のどういう意味?・・・シーラカンスって・・・」

そのヒカリの問いに、アヅサはニヤリと笑みを浮かべ、自分の席の後でそれでも窓の外を見つめている少年にむかって話す様に

「さっきの大声・・・一瞬の内に静まる教室・・・そしてふてぶてしい態度・・・ようするに番長ってとこでしょ。ばっかみたい、あんなつっぱった態度、今時はやんないわよ。古ぅ・・・まるでシーラカンスね」

教室中がざわめいた。場は再びいいようのない緊張感につつまれる。ヒカリはそれに耐えきれない様に声を荒げて

「何を言ってるの、桐山さん。彼はね、碇ユウジ君というのよ。この学校の生徒会長。それをシーラカンスだなんて」

それでもアヅサの表情は変わらない。たしなめる様に声をかけるヒカリの言葉を無視するように歩き出した。

自分の席に・・・碇ユウジと呼ばれた少年の前の席に向かって・・・

唖然とするまわりの視線を浴びながら、アヅサは淡々とした表情で席につくと、黙って窓の外の景色を見つめている少年に背中をむけたまま一人呟きだした。口元に笑みを浮かべながら。

「碇ユウジ、14才。この中学校の生徒会長兼番格。かつてはこの街を守った偉大なる両親をもつサラブレット。だけど父親を早くに無くし、母親とも現在絶交状態。小さい頃は第二東京市のスラムで好き勝手やってたところ、母親の強い説得に負けて、この街に一年前に引越しと。最初は暴力でこの学校を支配しようとしたみたいだけど、母親の『喧嘩しか能の無いバカね』の言葉を人づてに聞いて発奮。人知れず努力の上、学年一位と会長の座をゲット。誰にも文句言われない立場になったし、先生達からも特別扱い・・・はっ、今や王様気取りって訳ね」

まるで挑発するかのようなアヅサの物言いであったが、それでもユウジは依然として窓の外を見つめ続けていた。

「頭のいい番長ね・・・1980年代の学園漫画の主人公といったところかしら。まだそんなのがいたなんてね、シーラカンス君。学年一位って言うけど、あなたのお母さんは、あなたの歳ではドイツの大学を卒業していたわよ。それで現在は日本を背負っている存在。それにくらべてあなたは、ネルフの司令官だという母親の強力な後ろ盾の上で威張っているだけじゃない。『僕は小さい頃にお父さんを無くしたんだ。お母さんは優しくしてくれなかったの。だからぐれたんだよぉ〜』なんて泣き言を言っているんでしょ。まったく情けないシーラカンス君ね」

バキッ!

大きな音がした。机が真っ二つに割れる音であった。教室中にそれ以外の音・声はない。

教室中が静まりかえっていた。前方に立ち尽くす教師こと鈴原ヒカリは、目に涙を浮かべながら震えていた。先程ユウジに怒鳴られてシュンとしていた、サトミと呼ばれた少女も恐る恐る後方を見つめていた。

しかしその大きな音に対しても、アヅサの表情に変化はない。笑顔を保ちながら、さらに嬉しそうな感じを加えつつ、後へ振り返った。

アヅサの視線の先には、前髪を彼の父親の少年時代同様に真ん中から分けてあったが、その下の表情は、繊細さを全面に出しおどおどした感じであった父親とは似ても似つかない鋭い視線を放つ少年がいた。

背格好は中学二年生の男子としては小柄な方で、アヅサより少し大きいくらいであったが、開襟シャツから覗かれる胸板は厚そうで、一見細身そうながら半袖シャツから延びている両腕は筋肉ががっちりとついていて、かなり鍛えられている感じに見えた。

不意に立ちあがり、形のいい左足で割れた机の側にある椅子を窓側に蹴飛ばした後、正面のアヅサをにらみつけた。そして低い静かなドスのかかった声をだす。

「言いたい事はそれだけか」

それでも、アヅサの表情はまるで脅えた様子は無く、ますます嬉しそうな笑みを浮かべ、真っ直ぐにユウジの目を見詰めながら

「やっと会えたわね・・・ユウジ君・・・」

と、先程までとはうってかわって優しげに語りかけた。その表情はとても愛らしい物であった。

これにはユウジも面食らった。今まで自分に向かってこういう態度にでた人物はいなかったから。

戸惑いを隠せないユウジ。まわりも同様だ。信じられない光景に、ただ黙って驚く事しかできなかった。ただ、サトミと呼ばれた少女だけは、無言ではあったが恨めしそうな視線をアヅサに送っていたが。

「なんなんだよ、おまえは?」

「おまえじゃないわよ。アヅサよ・・・ア・ヅ・サ!」

「そっそうかすまん・・・アヅサっていうんだな」

もはや、学園の主であった筈のユウジも形無しだった。そんな彼の様子を、どこかしら眩しげに見つめていたアヅサであったが、おもむろに右腕にはめた腕時計に目をやった後、不意に思い出した様に声を発した。

「そうだ。時間がないのよ、ユウジ君」

「時間が・・・って、なにがだよ?」

唐突なアヅサの声に、思わず問いかけるユウジ。彼女はそんな彼にむかって

「もう学校で好き勝手する時間が、あなたには無いって事」

そう言った彼女の声に合わせるかの様に、教室に据え付けられたスピーカーが鳴った。

 

 『碇ユウジ君・・・碇ユウジ君・・・至急校長室へ来てください・・・繰り返します・・・』

 

「なんなんだいったい?」

不信そうに呟くユウジ。その彼の呟きに答える様にアヅサが、今度は真剣そうな表情で

「じゃぁ、先行くね。ユウジ君」

とだけ話したかと思うと、教室を飛び出していった。

「おっおい・・・」

そのアヅサの後姿を、呆然として右手を差し出しながら声をかけるしかなかったユウジの耳に、繰り返しスピーカーが鳴っていた。

 

 『碇ユウジ君・・・碇ユウジ君・・・至急校長室へ来てください・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な室内。そこにけたたましい電話のベルが鳴った。

一人の女性が面どくさそうに受話器を取り、しばらく先方からの伝言に耳を傾けていた。

やがて 「わかったわ。これから向かうから」 とだけ声を発して、静かに受話器を置いた。そして暗闇の中、ベットから起きあがり、服を整える音が聞こえてくる。そんな彼女に声がかかった。

「なんの電話・・・マナ・・・」

「ついに現われたのよ、司令。あなたの予測通りに」

マナと呼ばれた女性は、どことなく嬉しそうに問いかけに答えた。ベットから離れて鏡台に向かい、そこで小さな明りを灯す。鏡に写ったマナの表情は緊張感を漂わせてはいたが、充実感も写し出していた。彼女の後方の薄暗い所から、また声がかかる。

「15年ぶりね・・・」

「そうよ、間違いなく、15年ぶりに使徒が蘇ったのよ」

「これからが勝負よ、マナ」

「やっと始まったんですもんね」

「あの子は今日ユウジに会ったのかしら・・・」

「アヅサの事?」

「そうよ」

「私にぬかりはないわ。今日この日のタイミングぴったりに合わせたんだから」

そう自信満々に鏡を見て、茶色がかった髪をとかしながらマナは答えた。その彼女の答えに満足そうな笑みを浮かべながら、赤茶色の長髪の女性がベットから上半身を起こした。そしてマナに向かってさらに話しかける。

「桐山ね・・・あの子一人で大丈夫かしら・・・まだ初号機とのシンクロ率は、45パーセントなんでしょ」

「あら知らないの?シンジは初めて初号機に乗った時は43パーセントだったらしいじゃない。それでも初陣を飾ったんでしょ」

「ふん、私の初陣では70パーセントを出したわよ」

「それだって、シンジと二人で出したんじゃなかったっけ?」

マナの切り返しに、ベットの上の女性は驚いたような声をあげて

「なんでそこまで知ってんのよ!!その頃のあんたは戦自のベットでウンウン唸ってた筈よ」

「ふっふぅ〜ん、作戦部長霧島三佐に知らないことは無くってよ。それじゃあ先に第一発令所に行くから」

そう言って、勢いよく部屋のドアを開けて出ていったマナの後姿を、ベットに残された女性は静かに見送っていたが、やがて口元に笑みを浮かべると、クスクスと含み笑いをしながら、自らもベットから起きだし鏡に向かった。

鏡が彼女の表情を写し出した。赤茶色の前髪を左目が隠れる様にたらし、そして蒼く輝く瞳の右目をもつ彼女の表情を。そして彼女は、誰に聞かせるとも無く鏡に向かって呟いた。

 

 

 

 

 

シンジ・・・私を守ってね・・・

 

 

 

 

 

中央作戦司令室の司令塔第一発令所は、久々の活気にあふれていた。正面の大スクリーンには、正八面体の物体が第三新東京市に向かってゆっくりではあるが確実に近づいている様子が映し出されていた。あちこちから電算機の音と、各オペレータ達の状況を読み上げる声が響く。それらの報告を聞いていた作戦部長である霧島マナは、15年前の作戦部長と同じ特注の赤いジャケットを着込み両腕を組んでいたが、不意に正面にいるオペレーターの一人、南テツヤ二尉に声をかける。

「アヅサのスタンバイはできているの?」

その問いかけに、南は 「ファーストチルドレン、スタンバイOK。モニター開きます」 と答えた。

それと同時に、大スクリーンの一部に小さく正方形の別画面が現れ、そこにはかつての綾波レイが身につけていたのと同じプラグスーツを着用し、エントリープラグ内の席でうつむいていたアヅサの姿が映し出された。マナは、モニターに映るアヅサに向かって声をかけた。

「アヅサ、準備はいいかしら。頼んだわよ」

その声がかかった後、それまで下を向いていたアヅサが顔を上げる。その表情は自信に満ちあふれた物だった。

 『大丈夫よ、まかせて。今日のわたしはごっ機嫌なんだから』

その彼女の言葉に、さらに弾むような別の声が重なる。

「ファーストチルドレンのシンクロ率が50パーセントを超えています。新記録です、霧島三佐」

声の主は、南二尉の隣の席で、次ぎ次ぎと数値が動く正面のモニターを分厚い眼鏡越しに追いかけている、年齢は20代前半といったところか、セミロングの髪と幼さの残る顔が印象的な、女性オペレーター、岸田カスミ三尉であった。

カスミの報告に、マナとモニターに映るアヅサの表情に快心の笑みが浮かぶ。マナは組んでいた両腕を解き、今度はそれぞれ軽く折り曲げ腰にあてた。そして軽快な声で号令をかけた。

「エヴァンゲリオン“R”初号機、発進準備!!」

その号令に、発令所全体の緊張感はさらに高まりを見せ、全体で10数人はいようかという各オペレーター達の声が勢いよく飛び交い出す。そして、マナの正面に陣取るオペレーター達、南テツヤ二尉と岸田カスミ三尉に続いて、もう一人の通信専門のオペレーターこと、上野ナオキ二尉が、マナの方を振り返って言葉を発した。

「国連軍より、入電。早くエヴァを出撃させて欲しい・・・とのことです」

その言葉に、マナはふんっ!と鼻を鳴らし、

「焦りなさんな、まだ司令と副司令がおいでになられてないんだから」

と、誰に聞かせるでもない様な口振りで呟いた。

そんなマナの後方にある司令席に電子音が鳴り出した。その音がなるやマナを始め、南、上野、岸田の三人のオペレーターもいっせいに後を振り返り、司令席を見上げる。

司令席に二人の人物が現れた。一人は赤茶色の髪を長く伸ばし、服装はマナと同じデザインのジャケットであるが、その色は黒を基調とし、ジャケットの内側は赤いタートルネックに白っぽいのだがどこかしら汚れた感じのクロスのペンダントを胸元にぶら下げていた。そしてすぐに司令席に座って右ひじをつき、手袋をした右手のひらを頬にあてたまま、左目は長い前髪に隠れていたので、右目だけで第一発令所内を見渡す、新生ネルフ司令官・・・かつてのセカンドチルドレン、惣流アスカの姿がそこにあった。

そして彼女の後には、白衣を着込みその内側が藍色系の上着、スカートは黒のミニ、髪は短めだが金髪に染ている。まるでかつての赤木リツコと同じ格好をした、彼女の後輩であり、今は副司令を兼任する、伊吹マヤ博士が立っていた。

司令、副司令の登場に、発令所全体に新しい緊張感が生まれる。マナを始めとする発令所内の全注目がアスカに注がれた。もちろん、モニターに映るアヅサの視線も。

アスカはそのアヅサの自信にあふれたまっすぐな瞳を見つめた後、視線をマナに移すと、頬から右手のひらを外し、厳しい表情で大スクリーンに映る正八面体の物体を睨みつつ、声を発した。

「直ちに発進。速やかに使徒を殲滅せよ」

その言葉にマナは、さらに威勢のいい言葉で続いた。

「エヴァンゲリオン“R”初号機、発進!!」

それと同時に、カタパルトから激しく上に向かって、“R”と呼称されてはいるが、その姿はかつての物と同じ形状のエヴァ初号機が発射された。

「いやぁっほー!!!」

激しいGを体全身に受けながらも、アヅサはそれを楽しむかの様な歓声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

碇ユウジは呆然と立ち尽くしていた。

彼は今、自分の身に降りかかった現実を理解する事に苦労していた。いきなり訳のわからない転校生の少女にあれこれ好き放題言われたと思ったら、今度は呼び出された校長室で衝撃の宣告を受けていた。

母親のアスカがいる組織、ネルフに赴き、セカンドチルドレンとしてエヴァ弐号機のパイロットになれと。そして使徒・・・そう今彼の目の前で大空に浮かんでいる、巨大で不可思議な物体と戦えと。

彼は信じられなかった。目の前に起こっている現実を受け入れるにはあまりに唐突であり、理解できる許容範囲の遥か外であったから。

 

 

 

彼の目の前でそれは起こった。

正八面体の物体が眩いばかりの光の束を発射し、前方にあった国連軍の戦闘機数機が、一瞬にして光の束の中で消えた。

そして地鳴りが起こり、続いて地面が割れ、紫色の巨大ロボットが出現した。ユウジはそのロボットには見覚えがある事を思い出した。まだとても幼かった子供の頃、母親の膝の上で見た本に載っていたのを。

巨大ロボットはライフルの様な物を構える、そして瞬時に発射した。確か?正八面体の物体も光の束を発射した筈だ。

しかし視界の前が真っ白になった後、しばらくしてようやくその視界が開けたと思ったらそこには、さっきまで空中に浮かんでいた筈の正八面体の物体が、全体に黒ずみ地表に落下していた。そしてそれを見下ろす、紫色の巨人の姿。

 

 

 

ただただそれを見上げるしか術のなかったユウジであったが、やがてうつむいた後、ぽつりと呟いた。

「これがエヴァ・・・俺に・・・これに乗れっていうのか・・・」

その時、ユウジにどこからか声がかかった。

「そうよ。あなたも乗るの」

びっくりしてユウジが声の聞こえた方を振り返ると、そこには紫色の巨人の足元付近に立ち自分を見つめている少女の姿があった。教室で自分を罵倒し、そして会えた事に心からの喜びの表情を浮かべた少女の姿が

ユウジは、呟いた。自分をまっすぐに見つめる少女の名前を

 

 

 

「桐山アヅサ・・・」

 

 

 

 

 

第弐話へ続く

 


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