THE REFLEX

作:柴レイ


 

第九話We can work it out

 

 

 

 

 

「本日午後3時31分2秒“イスラフェル”に対し、エヴァ初号機および弐号機、攻撃開始。予想通り分裂した目標に対しフォワードの二機は先ず防御態勢を維持。エヴァ参号機の後方よりの援護射撃にて怯んだ目標に対して、二機のユニゾンによる同時攻撃。同日午後3時32分17秒、目標は完全に沈黙。これにて作戦4は無事終了に思われたが・・・」

薄暗い室内に、発令所オペレーター岸田カスミ二尉の流暢な説明が流れる。室内の正面のスクリーンには、撮影済みの先の戦闘シーンが映し出されていた。そしてカスミの説明を聞きながら正面のスクリーンを黙って見つめる四人の姿があった。

前の方の席に並んで座っている、初号機パイロット桐山アヅサと、弐号機パイロット碇ユウジ。

そして二人の後方で席に座らずに立っている作戦部長霧島マナ。

マナの横で席に座っている、ネルフ総司令惣流アスカ。

アヅサは顔を隣に座るユウジの肩に倒して眠そうな目をしていた。ユウジはそれに対して別に気にする風もなく、ただ一心に正面の映像を見つめていた。マナの爪を噛む音がする。アスカは一瞬俯いたが、直ぐにまた正面を睨みすえた。

そして本来この場にいて然るべき、参号機パイロット倉田サトミと、彼女の叔父でもあるネルフ副司令鈴原トウジの姿がなかった。

一拍おいて、再びカスミの説明が始まった。

「後方にて援護を努めていた参号機が、目標沈黙後、突如暴走。サードチルドレン及び発令所のコントロールを全て拒否した為、霧島三佐の指示にて初号機が鎮圧。参号機の活動を停止させた後、エントリープラグを強制射出。サードチルドレンを保護」

どこか淡々とした口調ながら、声に元気の無いカスミがそこまで喋った後、再び一拍おいて

「・・・・・・以上です」

説明を終えた。と同時にそこまで映し出していた映像も止まり。室内に明かりが灯った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『きゃあああああああ!!』

サトミの悲鳴が、ユウジに、そして他の皆の耳に届いた。突如咆哮を上げて暴走し始める参号機。唖然とする発令所の中で真っ先に言葉を発したのは、作戦部長のマナであった。

「参号機に活動停止の信号を送って、至急よ」

オペレーターのカスミはそれに慌てた口調で応答する。

「ダメです。参号機信号拒絶」

「アンビリカルケーブル、パージ!」

「はい!」

カスミは素早く、手前のキーボードを叩き、参号機に活動電源を供給するケーブルを参号機から切断する指示を送った。すると参号機の背中についていたケーブルが外され、そのショックで参号機がガクンと揺れ一瞬動きが止まった。が、即座に内部電源に移行されたのか再び暴走を再開した。

「内部電源の残量・・・」

「2分です!」

マナが最後まで言い終わらない内に、カスミが慌てて答えを返す。それを聞いた後マナは、正面の大スクリーンに写る、暴走中の参号機を睨みながら、即座に次の指示を飛ばした。

「アヅサ!!・・・抑えつけて!!」

 『了解!』

マナの叫びと同時だった。初号機が暴れまわる参号機の背後から覆い被さる。後方のバックアップの場所に位置していた参号機の背後を、いつのまにかフォワードの筈の初号機が取っていたのである。

一方ユウジの弐号機は、フォワードの位置のままで呆然と参号機を見ているだけであった。

「サトミ・・・」

初号機に組み敷かれる参号機の姿を見て、初めてユウジは言葉を発した。彼の耳にサトミの泣き声が飛びこんできた。いや、サトミはずっと泣き叫んでいた。しかしユウジは余りの出来事に心神喪失しててそのことに気づいていなかっただけであった。そして彼の耳には組み敷かれる参号機とリンクするかのように

 『助けてぇ・・・ユウジぃ・・・』

サトミの声が聞こえてきた。その瞬間ユウジは思わず叫んでいた。

「やめろぉ!!アヅサ!!」

しかし初号機は参号機をうつぶせにしたまま、さらに頭部を抑えつけ、右手を逆向きに絞り上げ様としていた。

 『ユウジ・・・痛い・・・』

サトミの声が、先程よりも勢いが無くなっていた。ユウジは叫びながら初号機に向って走り出そうとしたが

「弐号機、活動停止。エントリープラグ射出」

マナの冷静な声とともに、弐号機の動きが止まり、背中の首筋からプラグが飛び出した。その急激なショックでユウジは気を失った。

「・・・・・・3・・・2・・・1・・・0!!参号機活動停止です」

カスミがカウントを告げ、そして参号機の暴走が終わった事を告げた。

「参号機のエントリープラグも強制射出。救護班現場に急いで。至急サードチルドレンを保護」

マナはテキパキと指示を次々に出していった。彼女の指示通りに発令所の面々が動き出す。そんなマナの後姿を、司令席からアスカは乾いた表情で見つめていた。

そして彼女の後方で立っていた筈の、副司令のトウジは呆然として正面の大スクリーンを凝視してたが、やがて画面に、救出されるサトミの憔悴しきった姿が映し出されるやいなや

「サトミぃぃ!!」

大声を上げてあたふたと発令所を飛び出していった。その狼狽振りに発令所の誰もが振りかえった。マナは驚くようにトウジのいた場所を眺めていたが、不意にその隣で自分を睨んでいる視線に気がついた。ざわめく発令所内で、唯一人、アスカだけが自分を冷めた目で睨み続けている事に。

しかし、マナは気にする風もなく、再び正面を振りかえると、前方に座るオペレーターの南テツヤにむかって

「ユウジ君はどぉ?」

と、問いかけた。すると南は振り返って。 「大丈夫です。もう意識は戻ってます」 と答えた。

「そぉ・・・」 マナは言いかけたが、南が 「ただ、サードチルドレンに精神汚染の心配が・・・」 と言うと、マナは表情を曇らせたが、しかし表情にぎこちない笑顔を作ると、今度はアヅサに向って

「お疲れ様、アヅサ。よくやってくれたわ。でっ疲れてるところ悪いんだけど、発令所にユウジ君を連れてきてくれるかしら。今のアクシデントについていくつか聞きたい事があるから」

そう語りかけた。すると正面の大スクリーンの一部に、アヅサの表情が四角いパネルの中に現われた。

 『了解。ユウジを連れて、至急発令所に向います』

とパネルの中のアヅサは幾分緊張した面持ちで、マナの指令に答えた。

「悪いわね。苦労かけて・・・」

どことなく疲れた表情を浮べてマナは、アヅサに向って微笑みかけた。その間アスカは、ずっとそんなマナの後姿を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カスミさん、サトミの様子はどうなんですか?」

明かりの点いた室内で、ユウジは席から身体を起こして後ろを振り返りつつ問いかけた。ユウジの肩に頭を預けていたアヅサが、そのまま長いすに頭からバタンと倒れた。

「あうう・・・痛い・・・」

あんまり痛くなさそうな声でアヅサがうめいたが、ユウジは気にした風もなく、カスミの言葉を待った。

「今は落ち着いてるわ。副司令がずっと側でみてくれてるし、先生も一晩寝れば大丈夫って」

「そうですか・・・」

その答えを聞いて、ユウジはホッとしたような表情を浮べた。そしてまたイスに崩れるように座った。誰の目にも、ユウジが精神肉体ともに疲労しきっているのがわかった。するとそれまで黙っていたアスカが席を立って、ユウジに向って話しかけた。

「もぉ、上がっていいわ。ユウジも桐山もね。お疲れ様」

ユウジは驚いていた。母親ではあるが、アスカからこんな風に優しく労いの言葉をもらったことがなかったから。

「そうね・・・聞きたい事はまだあるんだけど・・・」

そうマナが言いかけると、即座にアスカが

「必要ないでしょ。本当に必要なら、倉田を叩きおこせば済む事じゃない」

そうぶっきらぼうに否定した。その言葉に、マナは否定するでもなく首を振るだけだったが、ユウジは乱暴なその物言いに再び表情を堅くして、そして隣にいるアヅサに声をかけた。

「帰るぞアヅサ・・・・・・って。お前何をやってんだ?」

アヅサはしきりに両足をマッサージしていた。その表情は辛そうであった。

「どうしたんだ、足でも痺れたのか?それとも・・・」

と、ユウジが心配そうに声をかけようとしたが、アヅサが瞳をうるませて

「が、がお・・・」

と呟くや、彼女の頭をポカリと叩いた。

「痛い・・・どうして叩かれないといけないのかなぁ」

アヅサは愚痴ったが、ユウジは彼女の右手をひっぱりあげて立ちあがらせると、そのまま外に出ていこうとした。

「乱暴で優しくないユウジ・・・かなり好きじゃない」

「わかったわかった。家に帰ったら、マッサージでもなんでもしてやるから早く帰ろうぜ」

もうアヅサの冗談を軽く受け流す風で、それでもぐずぐず言う彼女を連れて、ユウジは外に出るドアを開いた。その瞬間、再びユウジはアスカの呟きを聞いた。

「今回はよくやったわ、ユウジ・・・よく頑張ってくれた・・・」

アスカは背中を向けていた。そして自分に語りかけたのか、それとも独り言なのかわからないくらいの小さな呟きだったが、それでもユウジはしっかりと聞きとめていた。そして彼の表情に自分自身気がつかないうちに嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。

その様子を見てアヅサも嬉しそうにしてユウジの右手に自分の左手を組ませ、そして二人は部屋を出ていった。カスミは、 「副司令の所に行ってサトミちゃんの様子を見て来ます」 と告げて、二人のチルドレンに続くように退出した。室内には、マナとアスカの二人が残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉田サトミはすやすやと眠っていた。その表情は穏やかなものだった。精神安定剤も効いて来てるのか、だいぶ落ちつた様子だった。

そんな彼女の脇で、トウジはイスに座ってずっと彼女の寝顔を見つめていた。不意に、夢を見てるのか、サトミの呟きがもれる

「・・・・・・さん・・・・・」

「サトミ、どおした?」

「・・・おとうさん・・・」

「・・・!?」

トウジの表情が強張る。そして、サトミの閉じられた瞳から一滴の涙があふれた。

「・・・おとうさん・・・」

「サトミぃ、許してくれ・・・わしはわしは・・・とっとと地獄に落ちたらええんや」

父親を呼ぶ寝言を繰り返すサトミの脇で、トウジは声を殺してすすり泣いていた。そんなトウジの後姿を、病室のドアを少し開けてカスミは見ていたが、やがて辛そうにその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫しの沈黙が二人でいるには広い映写室内に流れていた。映写の消えたスクリーンを立ったまま見つめているマナ。その彼女の背中をアスカは黙って睨みつけていたが、やがてアスカが業を煮やした様に喋り出した。

「あなたが、今回の作戦でユウジと桐山を無理に組ませようとした意図がわかったわ」

「・・・・・・」

「参号機の暴走、これも魔女さんには予想の内だったのね。いざとなれば、桐山一人で使徒は片付けられる。むしろいつ暴れるかしれない参号機を戦闘から放しておきたかった。おおかたマヤあたりからこうなる事を事前に聞かされてたのでしょう。あなたも桐山もまぁ〜落ちついた的確な対応だったわよ」

「・・・・・・」

「鈴原といい、ユウジといい、直ぐに狼狽しあたふたするのもみっともないけど、あそこまで冷静に処理されると頼りになるというより、この私まで担がれたような気がして、気分がかなり悪いわ」

それまで黙って言われるままだったマナが、アスカに背中を向けたままようやく言葉を返した。

「再生エヴァは、まだ不安定な部分がかなりあります。それも実戦をとうしてみないとわからない側面が・・・」

「あなたの可愛い桐山と初号機には絶対の信頼を置いているくせにね・・・」

アスカが嫌みったらしく言葉を吐きすてる。しかしマナは動せず

「第三使徒サキエルのコピーである初号機と、それの量産型である弐号機・参号機は比べられません」

マナの冷静な口振りにアスカは不快感を隠せなかった。もはや敵意の混じった語気で

「パイロットでもない、あなたが随分エヴァについて利いた風な口を叩くじゃない」

「パイロットでなかった分、冷静になれるという部分もあります。それにユウジ君やサトミちゃんには、かつての先輩パイロットみたいに、後で意味不明のまま暴走する機体とともにおかしくなって、やがて使い物にならなくなるという悲劇を繰り返したくはないんです。ですからゆっくりと育てて・・・」

「使い物にならなくなった先輩パイロットって誰の事かしら」

アスカが声に怒気を込めて立ちあがった。しかしマナはそれでも背中を向けたまま

「私にいたっては、戦自の出来そこないすらも操縦できなかった半端者ですよ。でもだからこそ、子供達には、たとえ今は辛くても、後でしっかりと地に足をすえていけるようにしたいんです」

アスカはそれを聞いて鼻で笑った。

「はんっ・・・随分と立派な事を言うのね。でも、それも魔女さんにとっては御得意の詭弁かしら」

「司令にだけは信じていてもらいたいのですけど、私のやりかたを」

「信じているわよ。マヤもいなくなった。鈴原もあの通りの腑抜け状態。今やネルフは霧島三佐なしでは立ち行かない状態になるまで、あなたに好き勝手にやらせてあげたじゃない。それでこれ以上どうしたいの?」

「当初の司令の計画通りに事は進んでいます。いささかも遅延は見うけられません」

「そうね、ただマナ=桐山ラインだけが我物顔で大手を振るっているけどね。まぁこれも私の怠慢だったわ。これからは少しマナにも楽をさせてあげる。ユウジと倉田もビシビシいくからね」

「心強いお言葉です。しかし司令、今回の戦闘の後処理について、そろそろ議会対策も練らないと・・・」

「もう慣れたわよ。議会?・・・あんなのデモンストレーションに過ぎないわ。問題無しよ」

「そうでしょうか・・・最近例の上院議員の反対運動が活発だと・・・」

アスカはマナの問いかけに、再び笑顔を取り戻して

「以前は、パイロットになりたいとバカシンジに頼み込んでいた軍事オタクが、いまや反戦活動のシンボルって皮肉な状態なだけじゃない。負け犬が何を吼え様が関係ないわ。馬鹿馬鹿しい。それよりも・・・」

再びアスカの言葉に緊張感が戻る、マナも背中を向けながらも身体を堅くした。

「ネルフにとって、私の計画にとって最大の障害は、案外直ぐ近くにあるのかもしれないわね」

「というと・・・司令に何か心当たりが?」

アスカの自信ありげな口調に、マナが問いかける。

「さあね、どうかしら。おいおいわかってくると思うわ。その時はこれまで通りに迅速な対応をお願いね」

そう言って、アスカはマナの背中をポンと叩いて、部屋から出ていった。

マナは一人になって、ふたたび爪を噛んでいた。そして席に腰を降ろした。やがて右腕をあげて指をパチンと鳴らす。すると再び、先程の戦闘シーンの映像が流れ出した。マナは暫くだまって映し出される映像を見ていたが、やがてポツリと呟いた。

「カスミ、サトミちゃんはどぉ?・・・目を覚ました?」

「いえ、ただ診てくれた先生によると精神汚染の心配はないそうです。明日には目を覚ますだろうと」

「そぉ・・・」

マナはカスミの答えを聞いて、ほっとしたように安堵の呟きを漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第七使徒との戦闘から一週間あまりが過ぎた。ユウジはこの日、久しぶりに学校へ登校すべく一人で歩いていた。そんな彼に背後から声がかかる。

「ユウジ・・・」

そのか細い声を聞いて、ユウジは直ぐに振りかえった。その視線の先には、俯いて立っているサトミの姿があった。どこかしら痩せた風に見えるサトミをユウジは暫く見つめていたが、

「いっしょに行こう。まだ時間に余裕あるから、少し話しながら行こうぜ」

そう優しい笑顔を浮べて話しかけた。サトミは涙ぐみながらそれでも笑顔で肯き、彼の元に駆けて行った。そして二人並んで学校への道をゆっくりと歩いて行った。

しかし二人の間に言葉はなかった。やがて二人の歩く前方に校舎の建物が見えてくる。同じように登校していく生徒達の姿も増えていったが、しかし誰一人して、ユウジとサトミに近づく者も、 「おはよう」 の声をかける者もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ネルフ施設内のかなり下の方、人気の無い暗い廊下をアヅサは一人で歩いていた。どことなくきょろきょろした風であったが、その歩みは真っ直ぐに入り組んだ通路を迷うことなく歩いていた。

しばらくすると、正面に行き止まりのドアが見えた。それでもアヅサは歩を進める。そしてドアの前に着くと、ポケットから一枚のカードを取り出して、ドアの右端にある、ちょうどカードを差し込むようにある溝にそのカードを持っていこうとしたが、不意にカチっという金属音と背中に冷たく固い物が当たるのを感じた。

「ふえー・・・誰ですか・・・なんか物騒な物をアヅサの背中に当ててるのは」

冗談っぽい口調で、アヅサは問いかけた。しかし表情は緊張していた。頬を一滴の汗が流れ落ちる。

「そういうスパイ行為も、マナから教わっていたの?」

その声を聞いて、アヅサは驚いて振りかえろうとした。しかし銃口が更に背中に押しつけられたのでかんねんして動きを止めた。そして、

「道に迷ってしまったんです。アヅサは少し頭の悪い女の子ですから」

と、今度はやや落ち着かない口振りで、動かずに答えた。すると、背中に感じていた銃口が離れた。アヅサは今度こそ、恐々と振りかえる。そして冷たい視線で自分に銃を向けている人物に声を発した。

「すみません。銃を降ろして頂けませんでしょうか。恐くて落ち着かないですぅ」

すると、銃を向けた人物は笑って、言葉を投げつけた。

「いいかげんに本性を現しなさいよ。天真爛漫でもやっぱり気に入らないわね。地を出したら・・・こんな時くらい」

アスカはそう言って、銃を降ろした。しかし視線は鋭いままであった。

「そぅ・・・そうですね・・・でも普段から自分を偽っているのは司令の方ではないですか」

アヅサは臆せずに、しかし普段とは違う落ちついた口振りでアスカの問いに答えた。

「ここは、自分を偽った者ばかりよ。心の中で何を企んでいるのかわからない連中ばかりよね」

「そんな風に組織がなったのは、長である司令の姿勢からではないのですか」

そのアヅサの言葉と自分を見つめる視線に、アスカは久しぶりになんともいえない嫌悪感を感じていた。

なんの嫌悪感か最初はわからなかったが、やがてアスカは思い出した。その嫌悪感をどういう時に感じていたのかを。

再びアスカはアヅサを睨みつける。それに対して、アヅサは飄々と見つめ返していた。やがてアスカは忌々しげに、吐き捨てた。それはアヅサに向けたと言うよりは、自然に自分の中から思わず吐き出された叫びのようなものであった。

 

 

 

 

 

「あんたなんて大嫌いっ・・・」

 

 

 

 

 

第拾話に続く

 


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