THE REFLEX

作:柴レイ


 

第拾伍話Making love out of nothing at all

 

 

 

 

 

桐山アヅサ14歳・・・ファーストチルドレン・・・

新生ネルフのR型エヴァンゲリオン初号機パイロット・・・

保護者霧島マナ・・・パイロット推薦者霧島マナ・・・

過去の経歴不明・・・現在調査中・・・

 

 

 

「桐山アヅサという名前は、マナの本名なんでしょ」

「はい。霧島さんが戦自で諜報部に配属されるまでの名前です」

「そりゃスパイが本名で活動する訳ないもんね。なるほど・・・でっ、桐山がマナの娘だという説は?」

「間違いないと思われますが・・・ただ・・・」

「ただ・・・何?」

「父親についてが不明のままです。マギで様々な方向からアクセスしてるんですが・・・」

「クローンっていうのは?」

「その可能性も考えましたが、それだと髪の色を始めとしてまったく同じになる筈です。アヅサの髪は柔らかい黒髪です。染めてはいません。それに対して霧島さんは固くて茶色がかってます。DNA解析によると、二人は共通点が極めて多いですが、まったく同じではないんです」

「つまり、やっぱり相方がいると」

「それに、エヴァ初号機のコアとシンクロしている事実があります。霧島さんのクローンでは無理な筈です。コアが血縁を認識しませんから。サトミちゃんが参号機とシンクロするのも、鈴・・・」

「何が言いたいのカスミ。もったいぶった言い方してないではっきり言いなさいよ」

「マギが示してもいない仮説を述べるのは無意味かと思いまして」

「そうね・・・ただカスミ、これだけは言っておくわ。これからあなたが二人の保護者になるんだから」

「はい、十分に監視します。そして間違いが起こらないように・・・」

「先ずは同居をやめさせなさい。桐山にはあのマンションを出てもらうわ。もうユウジはパイロットとしては十分だから一緒にいさせる意味が無いし。そうね・・・カスミは彼氏とかはいるの?」

「いえ、いません」

「じゃぁ、あなたがユウジの面倒をみてあげなさい。意味・・・わかるわね?」

「はい・・・」

「ユウジの深層心理から、魔女達を完全に取り除きなさい。その為だったら、私がある程度許可します」

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

父シンジの墓標の前で、アスカと別れた後たたずんでいたユウジ。

そんな彼の前に現れたアヅサ。ユウジに微笑みかけながらゆっくりと彼に近づく。そしてどちらからともなく二人は抱き合った。しかし直ぐにアヅサから離れた。そして正面の墓標を見つめ、そしてしゃがんで目を閉じ両手をあわせた。シンジとユイ両方に手をあわせた後、アヅサは立ちあがり、ユウジに無言のまま振り返った。

「髪・・・切ったんだね・・・びっくりしたよ」

「どうびっくりしたのかな?」

語りかけたユウジの目を見つめながら、アヅサが逆に問いかけた。

「やっぱりマナに似てるって・・・でも違う」

「違う?」

アヅサは首をかしげる。でもそれはユウジの次に言う事をわかっていて、その上でその言葉を催促するかのような仕草であった。その悪戯っぽいというか可愛いらしさにユウジが顔を赤くして、半分どもりながら

「アッアヅサはアヅサだ・・・マナじゃない。こっここにいるのは間違いなくアヅサだって」

「名前の前に形容詞が欲しいな」

「ファーストチルドレンの・・・」

「ちがぁう」

「白いワンピースが良く似合う・・・」

「そうじゃなくって」

アヅサは怒ったようにプイっと横を向いた。

「俺が大好きな・・・世界で一番好きなアヅサ」

するとアヅサは再びユウジの方を向いて、にこっと笑いかけた。そしてユウジの頭を不意になでて

「正解!!良く出来ました。あっ・・・」

ユウジをからかうような言葉と仕草をしたアヅサの手を、ユウジは乱暴に払いのけた。そして強く抱きしめる。顔をアヅサに近づけ、そしてそのすっと閉じた唇にくちづけした。眼を閉じる二人。そのまま固く抱き合ってキスを続けた。やがてユウジの右手がアヅサの胸元に伸びたが・・・

「やだ・・・ここじゃ・・・」

アヅサが口を離して、そしてユウジの右手を払いのけた。そして赤い顔のままできっとにらみ付ける。

「ごっごめん・・・あっ・・・」

「おかえしだよ・・・少女の唇を奪い、さらに胸までさわろうとした・・・・・・あれっ?」

アヅサはユウジの股間に右手を伸ばして、きゅっと盛りあがったものを摘んだのだった。するとユウジがうめいてそのまま半身に屈んだ。そして恥ずかしそうにアヅサから半歩後すざる。

「俺・・・ごめん・・・」

アヅサはそんな泣きそうな声を上げてるユウジを見つめて、やがて右手のやや湿った指先を口にもっていき

「・・・・・・」

ペロっと舐めた。そのまま潤んだ瞳でユウジを上目遣いに見つめる。その表情にユウジは呆然となっていた。

「これからデートしよ・・・許可は取ってるから・・・」

そんなアヅサの言葉に、ユウジは股間を押さえたまま、それでも首を大きく上下してうなづいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い独房の中、マナは膝を抱えて座っていた。もう入って数時間たつが誰も訪ねてこなかった。尋問を直ぐに始めると聞いていたが、それはもうずっと昔の事のように思えてくる。マナは眼をつむり、ぶつぶつと小さく呟いていた。

「行き詰まる組織に多く見られる傾向。ある目的に向かって一枚岩になった時が一番の正念場である。様々な矛盾と問題点を内包しながらも、その喧騒すらパワーとしてカリスマな主導者がそれらをひっくるめてひっぱる時、その組織は極めて安定した状態になる。それを力技でむりやり一つにして推進しようとすると、本来意識しないでいた、実は一番その組織・人間にとっての問題点が湧き出てきて、それに戸惑うともはや誰にも止められなくなる。カリスマな主導者は、本来組織の超越した場所にいるべきであり、それが身近に降りてくると、誰よりも多い自らの矛盾を曝け出して、その求心性を一気に失う。その時、その組織は自ずから崩壊する」

マナはそこまで呟くと、急に両手を上げて伸びをし大きく溜息をついた後、後方に倒れこんだ。

「アスカじゃ、カスミを使いこなせないわ。それにネルフでみんなの気持ちの中心にいたのは私じゃない」

マナが見上げる天井に、アヅサの姿が浮かんだ。

「アスカはそれに気がついていない。ネルフを再生させた、エヴァを再生させた人々の想いを。何故アヅサがエースパイロットになって、みんなの心を掴んだのか。何故政府国連がアヅサを恐れてるのか。そして何故かつて自分がエースパイロットになれなかったのか?それはアスカが組織に個を持ちこみ過ぎたからよ。その個が、人々の想いとリンクした時は、アスカは女神にもなれた。でもどこかでそれがずれてしまうと・・・」

小さい女の子の姿が眼に浮かぶ。無表情でなんの感情も感じられない透き通った瞳。そこには自分が写っていた。鏡よりも正確に自分の感情を映し出していた。

 

 

 

 

 

 サンプル品Aを引き取るのですか?まだ情操教育が十分でありませんが。

 構わないわ・・・この子は、私が育てます。

 碇ユウジを出し抜いてエヴァ初号機のパイロットに育てるという重要な課題もあるんですよ。

 私を誰だと思ってるの?あんなハリボテ女神様に負ける筈がないじゃない。

 いいじゃないか。霧島さんに任せよう。大丈夫だよ。

 ありがとうございます。それでは今日からこの子に人の名前をあげたいと思うんですが・・・

 それも霧島さんに任せよう。親なんだしな。

 そうですね・・・正に親子みたいなもんだし、私もお任せします。いい名前をこの子につけてやってください。

 桐山・・・桐山アヅサ。ねっ・・・あなたは今日から桐山アヅサという名前なのよ。

 き・り・や・ま・ア・ヅ・サ

 そう、あなたは、エヴァンゲリオン初号機操縦者第一候補、ファーストチルドレン桐山アヅサよ。

 はい・・・わたしは・・・ファーストチルドレン桐山アヅサ・・・

 

 

 

 

 

 銃声が耳をつんざく。鼓膜が破れそうな衝撃だ。頬に血飛沫が飛んだ。一部左目に飛び込む。痛い、目が焼けるようだ。しかしその目を閉じる訳にはいかない。目標が確実に生き絶えたのか、反撃する余地が完全に無くなったのかを確認するまではその目を閉じてはいけないのだ・・・

 目は開いていた。口もだらしなく開いたままだった。その口に目と鼻から血が流れこむ。間違いなく死んだ。もう自分に対してなんの言葉もかけてはこない。あの優しい笑顔も、そして驚愕に満ちたあの表情もそこには無い。ただの肉の塊となって目の前に転がるだけなのだ。

 

 もうこれで何人殺してきたんだろう

 最初はいつだったか

 そうあの時、ケイタに続いてムサシまでも失いそうになった

 それだけはいや

 それだったら死んだ方がましだ

 死ぬ?

 死ぬことを思えば怖いものはない

 そうだ、ムサシを失うくらいだったら

 

 だからムサシから銃を奪い、敵を撃ったんだ。なんの後悔もなかった。私はムサシを守ったんだ。これでまた二人で逃げる事が出来る。

 

 マナ、僕は人を殺すくらいなら死んだ方がましだよ。それにもう助からないんだし。だからマナだけは逃げて・・・ってそう言おうとしたのに。あの人もマナを捕まえに来たと言っただけじゃないか・・・

 

 何を言うの?そんな事信じられる訳ないじゃない

 ムサシ・・・どうしてそんな風に私を悲しい目で見るの

 私は間違ってないわ。みんなが私達に今まで何をしてきたかをもう忘れたの

 生きるのよ。生きのびるの。頭を使い、力を持って、他人を蹴落としてでも、他人の生を奪ってでも

 死んだらなんにもならない

 私は簡単に諦めたりしないわ

 死んで楽になる?・・・違う!

 死んだら何も残らないのよ。今まで必死に生きてきた事が全て残らないのよ

 

 マナ・・・僕はそんな君を見たくなかった・・・そんな顔をする君を見る前に死ねばよかった・・・今の君は・・・僕が・・・ケイタが好きだったマナじゃない・・・そんな悪魔のような顔をした・・・

 

バン!!

 

 

 

 

 

 深夜、ベットから飛び起きる。身体中から吹き出す汗で寝間着がびっしょりだった。息があらい。胸が激しく上下する。耳鳴りがする。

 ・・・誰かが大声を上げているのだ。誰?うるさいわね。

 部屋の小さな明かりをともした。鏡に誰かが写ってる。髪をかきむしり大きく口を開けて血走った目をした女の姿が。恐ろしい顔・・・まるで魔女ね・・・退治しなきゃ・・・これじゃあ寝れないじゃない。

 鏡にむかって、側にあった時計を投げつける。鏡が大きな音をたてて割れた。鏡に写る魔女がみにくく歪みバラバラになった。これでもう大丈夫・・・寝ることが出来る・・・

 誰??

 寝室のドアが開いた。思わず銃を握り締めてドアの前に銃口を向ける。

 ・・・・・・

 アヅサがいた。枕を抱いてシクシク泣いていた。足がぶるぶると震えている。

 アヅサ・・・どうしたの・・・おいで。

 銃を下ろして布団の中にしまう。そして優しく手招きをした。でもアヅサは動かない。

 おいで!

 だからもう一度呼んだ。両手を広げる。そこに飛びこんでおいでというつもりで。

 マナ・・・

 アヅサは泣きながらそう呟いて、とてとてと近づいて来た。ガラスを踏みしめる音がする。アヅサの口元が歪むが声には出さない。そして私の胸に飛び込んだ。

 可愛い子・・・流れる涙をそっとふいてあげた。大きな痣になっている左頬には、ばんそうこうが貼ってあった。唇の腫れはまだ治っていないようだ。泣きやまない。でも私を儚い力でぎゅっと抱きしめていた。

 

 

 

 

 

 目を覚ます。今日も熟睡出来なかった。鈍い頭をかき、爪を噛みながら、リビングに出た。アヅサが台所で朝御飯を作っていた。私が教えたんだから、とても上手くなった。

 おはよう・・・アヅサ・・・

 マナ、おはよう。もう直ぐだからね。今日は味噌汁がいい味に出来たんだ。

 振りかえるアヅサ。その口調は軽快だが、表情は人形みたいになんの変化もなかった。

 あの日、研究所から引き取ってからずっとそうだ。言葉や仕草は、普通の女の子になったけど、まだ表情だけはほとんど変わらない。変わるのは、毎晩私の元に泣きながら近づいてくる時だけだ。

 これじゃあ世間には出せないわね。まだまだ先は長いようだ。

 

 

 

 

 

 今日ね、シンクロの数値が初めて二桁を越えたんで、みんなで万歳したのよ。

 そうですか、それはよかったですね。伊吹博士。

 私嬉しくなっちゃって、アヅサちゃんの両頬を両手のひらでつつんであげてね。よく頑張ってくれたわ、本当に、みんな喜んでるのよ、そしてアヅサちゃんを誇りに思ってるって言ったの。みんなも口々にアヅサちゃんの名前を呼んで誉めてあげてた。そしたらね・・・マナ!

 えっ?

 アヅサちゃんが笑ったの。笑ったのよ。初めて笑ったの。

 アヅサが笑った・・・

 そしてね、恥ずかしそうにこう言ったの。桐山アヅサがやってるのよ、これくらい当たり前じゃないって、マナそっくりの言い方でね。それでみんな大爆笑。はにかんだアヅサをみんなで抱きしめてたわ。

 そう・・・それじゃあ、今日は私がご馳走つくってあげるか。

 アスカには私から話しておくから、マナは今日は早くアヅサと帰りなさい。

 アヅサが笑ったのか・・・やっと人間らしく変わりつつあるのね。エヴァとのシンクロ率が向上して、みんなの喜びがあの子にいい影響を与えたのかしら。

 

 

 

 

 

 今日、クラスの男の子から手紙をもらったわ。

 そう、今時ラブレターとは、また古風な告白なのね。でっ・・・それでアヅサはどうしたの?

 受け取れないから、本人にその旨言って返した。

 ええ!?・・・そんなつれない態度してぇ〜その男の子も可愛そうに。

 興味ないもの・・・その男の子も好きになれそうもないから・・・

 も・・・ですか。アヅサは、そうやって何人の男の子を泣かせてきたの?誰か好きな男の子はいないの?

 碇ユウジ君。

 まだ会うのは先よ。アヅサが来年14歳になってから。それまでは他の男の子と仲良くしたっていいのに。

 碇ユウジ君以外興味ない。

 どうして?

 マナが昔言った。

 なんて?

 わたしはエヴァのパイロットだから、惣流司令の息子である碇ユウジ君と仲良くならないと、生きてネルフからでられないって・・・

 また表情が人形みたいになった。最近だいぶほぐれつつあったのに油断すると直ぐに戻ってしまう。

 これじゃぁユウジ君には会わせられないわね。まぁ〜彼もまだまだ全然ダメだけど。でもそれまでは、普通の女の子として成長して欲しいのに、これじゃぁ不味いわねぇ。

 もう一年しかない。どうしようか・・・ユウジ君好みの女の子にしておかないといけないのに。

 

 

 

 なぁに、ユウジ君。あんたどこからこんな美少女恋愛ゲームなんて手にいれてたのよ。

 いいじゃないか、マナ。たまの暇つぶしだよ。それに夜は外出禁止じゃないか。

 だからって・・・まぁ仕方ないか。倉田さんと仲良くしてると聞いてたから安心してたんだけどね。

 サトミとはそんなんじゃねぇよ。それとな、このゲームは単なるHなだけのゲームじゃないんだ。けっこう泣ける話しもあってさ。マナも今度やってみなよ。このダッフルコートの女の子とか・・・

 

 

 

 これだ!!

 ユウジ君が第三新東京市に連れて来てから、学校で他の生徒達と馴染めないでいるようだから心配して様子を見にきたんだけど、なんと彼はパソコンの恋愛シュミレーションゲームで夜とかの暇を持て余していた。

 確かに昼間はともかく夜は自由にさせていなかったから、勉強する以外に年頃の男の子になんの楽しみを与えていなかったものね。でもこれは使えるかもしれない。彼というより・・・むしろアヅサにとって朗報かも。

 

 

 

 ユウジ君はこのゲームの女の子達が好きなんだ・・・

 すくなくとも、倉田サトミちゃんよりはね。ちょっとやってみたけど、いかにも男の子のツボを押さえた様々なパターンの女の子がいっぱいよ。これを押さえておけば、ユウジ君の好みも解るかもね。

 ありがとう、マナ。今日からさっそくやってみる。

 ・・・・・・

 どうしたの?マナ・・・

 なんて冷めた可愛げのない表情なのよ。まるで普段命令を受けてる時と同じじゃない。

 でも考えてみたら、私にそんな事をいう資格はないのか。育て方をどこかで間違えてしまったみたいだし。こんな男の子に媚びた架空の女の子の真似をする事から、少しはマシになるのかもしれない。

 なんにしろ、なりふりかまっていられないんだから。これがダメなら次の手を考えるまでよ。

 

 

 

 

 

「アヅサ・・・」

そこまで過去の記憶を辿っていたマナはふとアヅサの名前を呼んでいた。

自らの名前を授けた少女。私の分身みたいな存在。過去のトラウマの捌け口として散々虐待した事もあったのに、それでも私についてきた少女。

「ごめんなさい・・・」

マナはいつのまにかそう呟いていた。頬を涙がつたっていた。そして胸の内から不安が湧き上がってきた。それはずっと以前から燻っていた事。

「アスカなんて、アヅサにとってはなんの脅威にもならないわ。ただ問題は・・・」

あの制御不能になって咆哮をあげる初号機。幸い内部電源が切れたので事無きを得たが。参号機にも起きた事でもあるし、弐号機にも起こり得るのかもしれない。それに対して、ネルフは何の対策もたてることが出来ないでいた。

「エヴァにはまだまだわからない事がある。R型は最善をきして再開発し、十分な準備を得た筈だったのに。伊吹博士・・・あなたは早く退場しすぎたのよ。アヅサが可愛いんだったら、もっと頑張るべきだったのに」

独房で一人、マナは忌々しそうに吐き捨てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウジとアヅサは、芦ノ湖を横断する遊覧船に乗っていた。夕方になっていたが、他に客はほとんどいなかった。二人は宿を取った後、様々な話しをしながら、湖畔を散策し、やがて目に入った遊覧船に乗りこんだのだった。

「アヅサはどうしてエヴァに乗っているの?」

夕陽で赤く染まる湖面を見ながら、ユウジはそう呟いた。そんな彼の左手に右手を絡ませて隣に立っていたアヅサは、その問いに最初答えなかった。

「俺はどうして乗っているんだろうな。最初は・・・母さんに対する意地だった気もするけど、今は・・・」

「今は?」

今度はアヅサがユウジの方を振りかえって、そう逆に訊ねてきた。

「アヅサやマナと一緒にいられるからかな。もし俺がパイロットをやめたら、もうアヅサと会えなくなるんだし」

アヅサはそんなユウジをじっと見つめていたが、やがてポツリと呟いた。

「わたしはエヴァに乗るために生まれた女の子だから。乗る理由なんて考えた事もなかったわ」

どこか寂しそうなアヅサの声。ユウジはアヅサに声をかけようと思ったが、上手くいい言葉を思いつかず、黙ったまま彼女を見つめていた。やがてアヅサは

「エヴァはわたしの全て・・・わたしの生きる理由・・・でもエヴァは・・・」

そこまで言って、アヅサはユウジに絡める腕に力を込めた。そしてあらためて呟いた。

 

 

 

「エヴァはわたしを嫌っているのかもしれない・・・」

 

 

 

 

 

第拾六話に続く

 


「アニメ・ゲームのコーナー」に戻ります。

TOPページに戻ります。