THE REFLEX

作:柴レイ


 

第弐拾弐話 : Careless whisper

 

 

 

 

 

「カスミ・・・今日は行ってきますのキスはしてくれないのかい?」

「眠いからやだ・・・」

今日は学校がお休みだ。カスミはそれだけに朝の怠惰な一時を望んでいた。ここの所夜眠れない。だから妙に眠いし、身体を動かすのもおっくうだった。エヴァ零号機が使徒との戦いで第三新東京市を吹っ飛ばして以来、隣町へその住民の殆どは疎開していた。カスミの学校もそうだ。そしてクラス内の雰囲気はなんともいえない重苦しい感じに満ちていた。誰もが今後どうなるのだろうという不安に慄いている。いつのまにかカスミの心もささくれ立っていた。

「また暫くは帰れなくなると思う。だから・・・父さんにキスをしてくれないのか・・・」

カスミの家族は父との二人っきりだ。母は早くに亡くしていた。セカンドインパクト後の混乱の中、栄養不良から病に倒れ、それなのにろくに治療をうけてもらえぬまま帰らぬ人となった。祖父母や親戚は無い、それはセカンドインパクト時点で失われていた。

父はネルフの職員として努めていた。エヴァンゲリオンの整備及び警備等にあたっているという。そして使徒が攻めてくるようになって以来、家には殆ど帰ってきてくれなくなった。カスミはそれが寂しくてならなかった。毎晩一人で寝るときは泣いていた。父は人類の為に一生懸命働いているのだという事は理解していたし、それを誇りにも思っていた。だがまだ9歳の女の子のカスミにとっては、いて欲しい時に身近にいてもらえない父を強く恋焦がれると同じに憎んでもいたのだった。

それでもエヴァ初号機によって最後の使徒が倒された。そして父が久しぶりにカスミの元に帰ってきてくれた。暫くは一緒にいれるという父の言葉にカスミは無邪気にはしゃいだ。その晩の食事はとても美味しかった。それから一緒に風呂にも入り、そして布団にも抱き合って寝た。父は最近学校で嫌な思いをしてて夜は眠れないというカスミに色々な面白い話しをしてくれた。そして三日後・・・

「もう少しいられると思ってたんだけどね、召集の連絡が入った。明日朝にはネルフに戻らないといけない・・・ごめんな」

父は本当にすまなそうな顔をしていた。しかしそこでカスミのとった態度は頬をふくらませ。ふてくされた態度で横をむくだけだった。その晩は、食事中も口を聞こうともせず、風呂も別、布団にも一人で寝た。父は黙って隣の部屋で寝た。隣の部屋から聞える父のいびきを聞いてるとカスミは涙が込み上げてきた。そのまま朝方まで眠れなかった。

「せっかく今日は学校が休みなのに、どこかへ連れて行って欲しかったのに・・・」

カスミは眠さからくる不機嫌さを隠そうともせず、何度も何度も声をかけてくる父の方を向こうともせず、掛け布団を顔に被っていた。

父の溜息が聞える。やがて

「行ってくるよ・・・」

寂しそうな声で部屋から出て行った。家のドアが開き、そして閉まる音がする。そして暫くしてカスミは布団から飛び起きた。そして家の外に駆け出す。靴も履かずに裸足のままで。しかし既に父の姿はどこにも無かった。

 

 

そしてもう二度と父に会う事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カスミぃ・・・ここにいたんだ。探したよ」

カスミはその声を聞いてゆっくりと振り返った。彼女に声をかけて来たのは、大学のサークルで出会って以来親友として付き合ってきた、同い年のミツキだった。スポーツ万能で性格も明るく、男女とわず人気者だった彼女だが、物静かであまり人付き合いのいい方ではないカスミを何故か気にかけてくれていた。彼女の存在が無かったら、恐らくカスミは大学時代を一人ぼっちで過ごしていたことだろう。

「どうしたの・・・ミツキ」

ミツキはどうしたもこうしたもないわよと、大げさなゼスチャーを作りつつ、口角泡を飛ばして言い寄ってきた。

「ユウイチ君を振ったんだって・・・どういうこと。あんなにあなたたち上手くやっていたのに」

「・・・・・・彼から聞いたの?」

「そうよ、さっきそこでね・・・一人で元気なさそうだったから、どうしたのって聞いてみたら・・・」

「それよりも、ミツキの方こそどうなのよ。タカユキ君とはあれから・・・」

「わっ・・・私の事はどうだっていいじゃない・・・それよりも」

「どうでもよくないわ・・・」

カスミの反撃に、ミツキはしどろもどろになってしまった。大学に通うようになり、ミツキという親友も出来た。それからある合コンで二人は、歳が少し上の他の大学の男二人と知り合い、グループ交際をするようになっていた。約一年半、四人で色々な楽しい事があった。ミツキとその彼タカユキはいい友だった。そしてユウイチはカスミをとても大切にしてくれた。男女の一線も超えた。父とのことで深い傷を秘めていたカスミを彼は暖かく包んでくれた。また彼らは古い車でツーリングする趣味を持ち、カスミもその時期に、フィアットからマセラッティというイタリア車を嗜好する事も覚えた。

「ん?・・・その封筒は何?」

ミツキは不意に、カスミが持っていた浅葱色の封筒に目をつけた。彼女にしたら話題をそらそうという思いもあったのだろう。実際ミツキにとって、カスミの心配をするほど自身が上手くいってるわけでもなかったから。

「これ?・・・就職の内定通知よ」

カスミはそんなミツキに淡々と言葉を返した。ミツキはへーと呟き。

「カスミはてっきりまだ院に残って勉強を続けるのかと思ってた。その内に、ユウイチ君と一緒になると・・・」

「そんな事を言った覚えは無いわ」

「そうだっけ・・・でっ、どこに決まったの?・・・・・・え!?」

ミツキは無造作にカスミの手に合った封筒を引っ手繰る。それに対してカスミは別段表情も変えなかった。むしろ表情を変えたのはミツキの方だった。

「ネルフ・・・なによこれ・・・」

「惣流アスカさんを新しい指導者に、再開される事が決まったのよ。そして新規オペレーターを募集してきた。私の所に案内が来たから」

相変わらず淡々と語るカスミに、ミツキは語気を強めて

「だってあなたはお父さんを・・・あっ・・・」

「そう父は旧ネルフの職員だったわ。だから私の所に案内が来たのね。それに私の成績は優秀だし・・・」

「そっそういうことじゃなくって・・・」

「え?」

「カスミはかつてのネルフを憎んでいたんじゃ」

「惣流さんは、新しいネルフは過去のネルフとは中身を一新するとテレビでも言ってたわ。散々法廷で過去を断罪してきた人が言うんだもん、それを信用出来る・・・」

「だからって、結局は軍事組織みたいなものなんでしょ。カスミはそいうのを忌み嫌っていたじゃない。戦略自衛隊もそう、国連組織もそう、そういった物に対して激しく憤っていた筈なのに。あの惣流さんが何奇麗事言ってたって、結局は・・・」

「ユウイチ君も同じ事言ってたわね」

「でしょ・・・」

「そして、やめてくれ、何をとち狂っているんだって・・・・・・いくな・・・カスミ。そういって抱きしめてきたわ。結婚してくれとも」

「カスミ・・・・・・」

カスミはそこで一拍置いて、そしてポツリと呟いた。そしてその口調と表情は、ミツキ達と付き合うようになってからは見せる事の無かった、他人を拒絶する冷たい物になっていた。

「だから振ったの」

ミツキは目をむいていた。唖然として声も出ない様子だった。そして思わず張り手がカスミの頬に飛んだ。そして目から涙を零しながら

「なんでよぉ〜カスミ。どうして・・・どうして」

そう泣きながら、ミツキはカスミの胸倉に両手を当ててきた。それをカスミは振り解く。そして一瞬ミツキにむかって悲しそうな表情を浮かべたが、直ぐに淡々としたものに戻して

「さようなら・・・・・・」

背中を向けて、ミツキの元から歩き去っていった。やがてカスミを呼ぶ声が聞える。それでももうカスミは振りかえることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヅサのサルベージ計画の要綱・・・これを霧島代理が」

「いいえ、これはこういう事態も過去の事例から想定されていて、伊吹博士が用意してくれたものなのよ」

「そうなんですか?・・・でもどうして代理はそれを早く」

「色々と検証する必要があったのよ。間違いがないかとかね。失敗は決して許されないし」

「そうですね・・・」

「かつてのケースでは、碇ユイさんの時は失敗した。碇シンジ君の時は成功した。今回はどうなるか・・・やってみなければわからないわ」

「私は霧島代理を信じています」

マナは、自分を真っ直ぐな瞳で見つめる、カスミの頬を右掌でそっと撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日からこちらに配属になった岸田カスミです。よろしくお願いします」

「よろしく、私はネルフの作戦部長を任されている霧島マナ。そしてこちらがエヴァR計画の技術顧問の伊吹マヤ博士」

「よろしくね、カスミさん。可愛いわねー本当に二十二歳なの?」

「え?」

「伊吹博士、博士も私が始めて見た頃、オペレーター時代は随分若作りでしたよ」

「そうかしらマナ・・・まっいいわ。それよりもカスミさん、お気をつけなさい。ネルフの魔女さんは両刀という噂があるからね」

「博士に言われたくありませんね」

「どうして?・・・私は両刀ではありませんよ」

「あっ・・・あのぉ・・・」

「冗談よ、岸田さん。それじゃあついて来て、色々管内を案内するし、最後に司令にも紹介するわ」

「はい!」

「いってらっしゃーい」

 

 

 

 

 

「ねえ、岸田さん。どうしてあなたのような子がネルフに入ってきたの?」

長いエレベーターの中で不意にマナがカスミに問い掛けてきた。カスミは緊張してたが、それでも

「世間は就職難です。そして私自身も何をしていけばいいのかと模索している所でした。そんな時に、ネルフからの呼びかけがあって、人類の未来の為に働く立派な所だと思い・・・そこで自分がどこまで貢献出来るのか・・・」

模範的な回答をしようとしたカスミを急にマナは睨みつけた。カスミはそれに驚いて言葉を詰まらせる。そんなカスミを見て、マナは

「ここに入ったら最後、まともに世間には戻れないのかもしれないのよ。それくらいのことは賢そうなあなたにはわかっていた筈。それを承知で来たのね」

やや脅しの入ったマナの言葉。それでもカスミは表情を強張らせながらもきっとした視線でマナを見つめた。そんなカスミの態度にマナは満足そうな笑みを浮かべ、いきなりカスミの唇に口付けした。唖然となるカスミ。先程の伊吹博士の言葉が蘇った。しかしマナはそれ以上はせず笑いながら

「契約よこれは・・・あなたと私のね。気に入ったわ・・・あなたを必ずここで一人前にしてみせるわ」

「霧島さん」

いつのまにかカスミはマナをぼーとした視線でみつめていた。

「こらっ・・・みっしーの分際でマナに色気づくのは可笑しいよぉ〜」

「えっ?」

エレベーターはいつのまにか止まっていて、扉が開いていた。そこでマナをとろーんとした視線で見ていたカスミのお尻をけっとばした少女がいた。

「あなたは・・・」

カスミは痛むお尻をさすりながら、その少女に語りかけた。どこかマナに面影が似ている、十歳をやっと超えたかどうかに見えるその少女に

「この子は・・・」

少女は悪戯っぽそうな顔で笑っているだけだ。その代わりにマナが紹介を始めてくれた。

「エヴァンゲリオンRプロトタイプ専属パイロット、ファーストチルドレン、桐山アヅサよ」

「よろしくね、みっしー」

「みっしーって何ですか?私は岸田カスミです」

「マナぁ〜面白くないよ。通じないし・・・」

「通じるわけないでしょ。それくらいにしておきなさい、アヅサ」

「はーい」

「それよりも丁度いいわ、アヅサ・・・私は司令との大事な用事があるから、代わりに岸田さんを案内してくれないかしら」

「いいよ・・・じゃあついておいで、カスミさん」

「えっええっ・・・」

マナはアヅサに声をかけるや、そのままその場から立ち去ってしまった。ポカーンとなるカスミをアヅサが引っ張っていった。その力が意外と華奢な少女にしては強いものだったので、カスミは戸惑いながらも引きずられていった。

 

 

 

 

 

「お早いお帰りで・・・」

「ええ、マナも聞いたんでしょ、シンジの事?」

「はい・・・・・・昨日」

「これで納得したのでしょうね、みなさんは。散々シンジを諸悪の根源として冒涜し続けて、これ以上も無いくらいに。そして報道一本・・・南米の奥地で死体らしきものが発見されましたと。これでお終い・・・・・・」

「アスカは現地へ行ったのでしょ。アルカと呼ばれるかの地へ」

「何も無い所よ」

「もう帰ってこないかとも思いました」

「ふん・・・私がいなければこのネルフはどうなるのよ。マナだってまだここをその手にした訳じゃないでしょ」

「新生ネルフは惣流アスカ司令の物です」

「どうでもいいわ・・・それより、例のネオ・ゼーレのお馬鹿さん達とも会ってきたわ」

「それでは・・・」

「ええ、ようやく本来の計画が始動する。今度こそ人類を正しき道えと導く、人類補完計画よ」

「シンジがあんな事になって、アスカにとってそれは意味がどれくらいあるのかしら」

「さあね・・・とりあえず私はこれしかやることがないからやるだけよ。もう少し、あなたにも付き合ってもらうわ」

「ユウジ君を・・・」

「何?」

「見つけました。第二東京市のスラムでギャング紛いの事をやっているところを捕獲しました。アヅサの情操教育も順調ですし、倉田さんもきちんと優秀な成績で成長してます」

「・・・・・・それらは、マナに全て任すわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サルベージに重要なのは、アヅサの肉体を再生する為にその固体となるよりしろの存在よ。あの子の身体を構成していた主成分は、初号機のエントリープラグの残骸から回収したLCLに溶け込んでいる事が考えられる。ただあの戦闘後の回収だっただけに、本来必要とされる成分の5パーセントも得られなかった」

「そっそれじゃあ・・・」

「肉体の情報を記録するDNAは、ほんの数滴からでも微々たるものからでも解析できるわ。だから問題にしたいのは物理的な物。エヴァ初号機のプラグのみのテスト機にLCLを注入し、擬似的とはいえ初号機の状態を再現する、そこにこちらからアヅサの自我境界パルスを設定して、信号を送ってみる。それに反応があったら、そこによりしろを媒体にすることで、肉体再生への手助けを計る・・・・・・今はこれしかやりかたがないのよ。成功の可能性は・・・・・・その数値を示す事は無意味ね。とにかくやってみる以外に私達には選択肢はないのだから」

「そのよりしろが・・・」

「フォースチルドレン・・・ナギサ・・・・・・現在行方不明」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目を覚ましたの・・・」

ユウジが目覚めると、彼はナギサの膝の上で眠っていた。慌てて彼女から跳ね起きた。そして暫しぼーと考え事をしていたが、やがて

「そうだ、ナギサ。君は確か、アヅサに会ったような事を言ってたよな。その辺りの話を詳しく聞かせてくれないか」

ユウジは、本当はアヅサの事でいってもたってもいられない状態だったのだが、それでもまた喚いても恐らく希望する通りにはならないことを悟り、無理をして落ち着いた様子にして、丁寧にナギサに問い掛けてみた。

「うぐぅ・・・そんなにアヅサの事が気になるの?」

「そっ・・・・・・それはそうさ。俺はあいつを」

必死に冷静さを保とうとするユウジ。そんな彼をナギサはじっと観察するように眺めていたが、やがて一つ溜息をつき

「夢の中に出てきたんだよ・・・そこでユウジ君の事をボクに教えてくれたんだよ」

そう、ユウジにとって見も蓋も無い事を言う。ユウジの表情から徐々に血の気が抜け、脱力していく。

「そんな・・・なんだよそれ・・・」

「でも、マナは諦めてないみたいだけどね・・・」

「え!?」

ユウジは俯いてしまっていたが、再びナギサのその物言いに顔を上げた。

「成功するだなんてこれっぽっちも思ってないくせに、ただ傾いたネルフを支える、その為だけを目的に、詭弁を弄しているんだよ。まぁ・・・この世に絶対はないんだろうけどさ」

「マナが・・・」

「カスミもそれに踊らされて妙に元気を取り戻して張り切ってやってるよ。どうする?ユウジ君は一旦ネルフに戻る?・・・それともボクのそばにいる?」

ユウジは考え込んでしまった。

「どうしたのさ?」

「俺は・・・戻れない・・・戻る事は出来ない・・・」

ナギサは不審そうな顔を浮かべて

「ボクに会いた・・・って、惚れてしまったんだね。それでもう実はアヅサの事は半分諦めて・・・」

「そうじゃなくって!!」

「うぐぅ・・・どならないでよ・・・」

ユウジが気色ばんだので、ナギサは少し驚いて見せたが、やがてユウジが辛そうな顔をして

「戻ったら、俺は・・・銃殺刑物なんだ。とんでもないことをしてしまった・・・」

「え?」

「母さんを撃ち・・・そしてマナまでも撃とうとした・・・そして今は逃げ回っている・・・」

「なんでそんな事を?」

「母さんが、アヅサを殺したからだ・・・そしてそんな事になってしまったのも、そもそもマナが策略を張り巡らせたから・・・だから許せなかった・・・」

ユウジはそう言ったっきり黙ってしまった。ナギサもかける言葉も無いのか、そのまま声をかけられないでいた。

 

 

 

 

 

「アスカは生きているわ・・・そして最後の賭けにでようとしている・・・」

「え?」

不意に小さな女の子姿のレイが現れて、そう呟いた。

「それって?」

「そう、碇君と再会出来るか・・・それとも全ての人類をこんどこそ完全に無にするかの・・・」

「母さんが・・・」

レイの赤い瞳が厳しいものにみえた。そして重い口調で呟いた。

「フォースインパクトを起こすつもりよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐山アヅサのサルベージが今まさに始まろうとしていた。発令所内にも久々に緊張した空気が流れ出していた。岸田、上野、南の各オペレータ達の表情は真剣そのもので、マナも口を真一文字に結んで厳しい表情のまま、正面の大スクリーンに表示される初号機擬似エントリープラグと、その周りで羅列される数値を凝視していた。

「全探査針打ち込み完了。電磁波形ゼロ・マイナス3で固定されています」

「自我境界パルスの設定!!」

「完了です!!」

「了解・・・残念ながらナギサは発見されませんでしたが、今回はアヅサへ信号を届かせる事で再生への道筋を作る事を最優先します。ここで失敗したら全てお終い。みんな、しっかりね・・・頼むわよ!」

発令所内のあちこちから大きな「はい!」の声が飛んだ。もちろんカスミの真剣な声も混じっていた。

「桐山アヅサ第一次サルベージ計画スタート!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはどこ?

アスカ・・・久しぶりね・・・

ファースト・・・あんた・・・

お願い・・・もうこういうのはやめて・・・

うるさいわねー・・・あんたには関係ないじゃない!!

碇君だって・・・こういうのは望んではいない・・・

うるさい!!

あなたは、本当に碇君を愛しているの?

・・・・・・なんですって?

碇君を愛する・・・碇君にすがる事で自我を保とうとする自分自身を愛しているんじゃないの?

くっ・・・人形が偉そうな事言わないでよぉ

あなたの愛の形は歪んでいる・・・碇司令と同じ・・・だから不幸しか生み出さない・・・

私をあんな髭眼鏡といっしょにしないで!

でもやっていることは同じ・・・

んくっ・・・

あなたは、桐山アヅサに私を重ねた。そして私に出来なかった分をあの子に当り散らして

・・・・・・

アヅサがユウジ君と結ばれそうになるのを見て、あなたは私が碇君を取ろうとするかのように感じた

・・・・・・

私と碇君が一つになって、あなたは一人取り残される。それが許せなかっただけ

・・・・・・

一人ぼっちになる、ほって置かれる事が耐えられなかっただけ。碇君を愛したわけじゃない

・・・・・・

アヅサとマナにユウジ君を取られ、また一人ぼっちになるのが怖かった・・・・・・

黙れぇ!!うるさーい!!

落ち着いて・・・よく自分の足元を見て・・・・・・あっ

殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる・・・みんな殺してやる・・・私を一人にするやつらはみんなぶち殺してやるぅ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウジとナギサの前で、なにかぶつぶつと瞑想状態になっていたレイが急に突っ伏した。そして肩で激しく息をする。

「どうしたんだい、レイちゃん」

ユウジは思わず、レイに駆け寄った。一方ナギサは表情を固くして、どこか身体を震わせていた。

「ダメだったんだね・・・リリス・・・」

するとレイは辛そうな表情のまま、ナギサへと顔を上げ、そして悲しそうに呟いた。

「もう止められない・・・」

ユウジはそんな二人を呆然と眺めていたが、やがてふと思い立って・・・

「母さんが・・・」

そう声を絞り出した。するとレイは頷き、そしてユウジに向って語りかけた。

「ユウジ君・・・」

「リリス・・・」

ナギサが何か言おうとしたが、それをレイは目を閉じながら首を横にふって拒絶し、あらためてユウジに問いかけた。それはユウジにとって非情なものだった。

 

 

 

 

 

「今度こそ・・・アスカを仕留めてくれる・・・」

 

 

 

 

 

第弐拾参話に続く

 


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