7月に生まれて
今から約1年前、すでに嫁いでいる姉経由でお見合い話が来た。
当時はバチ当たりにも、お見合いなんてもてない人がするものだと思っていた私は、気が進まなかったが、姉の「このまま結婚できなかったら、将来孤独死かもよ」の一言に怖じ気づき、会う決心をした。(当時私は既に三十路を超えていた)
なぜか私の書類はすでにあちらに渡っていて、乗り気とのこと。
しばらくして送られてきたお相手のプロフィールを見ると、国立大学の博士課程まで出られた、某研究所勤務の男性。確か3〜4歳年上だったと思う。
理系の男性は好みなので◎。
写真を見ると、私のストライクゾーンからはボールニ個分くらいはずれていたが、「男は性格」と言い聞かせて、当日にのぞんだ。
当日、待ち合わせの新宿のホテル。
見合いが初めてだった私は、約束の時間よりかなり早めにホテルに着き、ドキドキして待っていた。とりあえず落ち着こうとトイレに行き、ロビーに戻ると、そこにはソファーにうずもれるように座った男性のうしろ姿が・・・「もしや」と思い前に回って確認したら、やっぱり写真の男性。
「こんにちは。初めまして〜」と思いっきりの営業スマイルで挨拶したが、相手は私とろくに目も合わさず、いきなり「じゃ、上でお茶を・・・」とボソボソ言いながら、さっさと先に立って歩き出した。
なんだか、あまり感じが良くない。しかしどうでもいいけど姿勢が悪いなぁ。背も小さい。私と同じくらい??
どーりで、身上書に身長が書いてなかったはずだ・・・などと考えながら後ろをついて行った。
飲み物が運ばれて来ると、お相手もちょっとはリラックスしたようで、いろいろ話をし始めた。
趣味でやっている合唱や、エアロビクスの話。特に合唱は入れ込んでいるらしく、週に2回は集まって歌っていること、この夏は合宿にも行ったこと、年に数回演奏会があること・・・
そうそう、今度歌の伴奏をして欲しいなんてことも言われた。私が他の話に持っていっても、なぜか音楽の話題に戻ってくる。しかも一方的にぺらぺら・・・・
次第に話はやけに専門的になってきて、ちょこちょこと間違った知識も披露されていたが、本人は嬉々としてお話していらっしゃるので、あえて指摘しないでおいた。「結婚したら、毎日こんな話を聞かされるのかなぁ」と思うと、だんだん気分も萎えて来る。
話が噛み合わないまま何気なく窓の外を眺めると、東京ドームの白い屋根が目に入った。話題を変えるチャンス!
ヨン代「あそこに東京ドームが見えますね」
相手「えっどれですか?」
ヨン代「ほら、すぐそこの、白い楕円形の建物」
相手「あ〜、あれ東京ドームなんですか。私野球はまったく見ないので、全然知りません」
ヨン代「えっ、野球見ないんですか?」
相手「興味ないですよ、あんなの(笑)うちは家族の誰も見ませんよ」
「あんなぬぉ〜〜!?」
野球大好きな私は、野球を「あんなの」よばわりされて、ムカっときた。しかも、ずーっと東京に住んでる人なのに、東京ドームも知らないなんてなに者??どうも一般の人とは、ちょっと感覚がずれているような…
私がムっとしているのも気づかず、お相手はさっきから「暑い暑い」を連呼している。確かに暑い日ではあったが、あまりにもうるさい。
ヨン代「ところで、お誕生日何月ですか?」
相手「7月です」
ヨン代「じゃあ、夏には強いはずでしょ。」
相手「7月ですよ」
ヨン代「だからねぇ、さっきから暑い暑いって言ってますけど、夏生まれの人は暑さには強いって言いません?私なんて5月のせいか、暑さには弱・・・・」
相手「しち月じゃなくて、い・ち・が・つですっ!!!書いてあったでしょ?身上書に!(怒)」
「えっ・・・」余程、カンに障ったらしい。すごい剣幕だった。私も言いすぎたかも。

それにしても、なんでこんな事でそんなに怒るかなあ。ちょっと聞き間違えただけじゃない。これがよく言われる「フィーリングが合わない」ってやつか。
その後は当然のことながらまったく会話も弾まず、さっさと駅で別れた。
帰宅して、着替もせずに速攻断りの電話を入れたところ、既に相手も断ってきたとのこと。
すばやい! まさか帰る途中で電話したんじゃ・・・
断りの理由は
「もっとおしとやかな女性を想像してたら、全然違ってましたので・・・」だって。
私も頭に来て、
「人間的に、もっとバランスがとれた人がいいですっ・・・」と言ってやった。
なんだか妙な敗北感すら感じた私の初めてのお見合いは、こうして幕を閉じた。