「崇徳院」  三遊亭小遊三


★あらすじ★ 熊五郎が大家から呼ばれ行くと、若旦那が具合が悪く寝込んでいるという。ある名医の見立てによると、気の病だという。
いろいろ聞いてみたが誰にも心の中を打ち明けないので、気心の知れた熊さんになら心の中を明かすかも知れないから、聞き出してくれと頼まれる。
若旦那の部屋に行き、やっと聞き出すと恋患いと言う。
相手は20日ほど前に清水さまにお参りに言った時、茶店で逢った水もたれるようなきれいな人。
別れ際に、「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の」と書いた紙を渡してくれた。
下の句が「割れても末に逢はんとぞ思ふ」の崇徳院の歌で、いずれ再会し夫婦になりたいという意だと言う。

熊五郎は大家からその女の人を探し出すように頼まれる。
探し出しせば借金を棒引き、今住んでいる三軒長屋をくれると約束だ。
早速探しに出るが、この辺に水がたれる女の人はいないかと聞いて回っているだけで見つからない。

女房から崇徳院の歌を大声を出して歩き、人のよく集まる、フロ屋とか床屋へ行くように言われ、また探し始める。
フロ屋を36軒、床屋を18軒回り、夕方に同じ床屋に入ってくる。
そこへ店(たな)のお嬢さんが恋患いをし、崇徳院の歌を手がかりに相手を四国に探しに旅立つという、頭(かしら)に出会う。
お互いの店に来いと、もみ合っているうちに、鏡を割ってしまう。

床屋 「どうしてくれるんだい、親方」

 「なに心配いらねえ、割れても末に買わんとぞ思う。」

        

               清水観音堂と清水坂の石段



★見聞録★ 平成4年のNHKテレビ「日本の話芸」で放送された一席です。人気番組「笑点」でおなじみの小遊三です。
おもしろ落語を威勢良く語る話ぶりは、今も変わりません。

なれそめの場の清水さまは、上野の清水観音堂です。
噺の中で、清水堂が高台で見晴らしがよく、弁天さまの池、向が岡、湯島天神神田明神聖天の森から待乳山などがいいながめだと描写するくだりがありますが、今も見えるのは弁天堂だけでしょうか。(弁天堂も見えないようです。)



           不忍池と弁天堂

小遊三は、「恋患い」は死語に近いと言います。
今なら歌の代わりに、携帯電話の番号を紙に書いて渡すか、自分の番号を教えるでしょう。
いずれにしてもこの落語のような奥ゆかしいことは、絶滅寸前、皆無に近い状態であることは確かなようです。
「瀬をはやみ・・・・」の歌の意 
「川の瀬の流れがはやいので、岩にせきとめられた滝川の水が二つに割れてしまっても、のちには一つになるように、今は逢うことができなくても、いつかは逢おうと思う。」
『NHK趣味悠々「ウキウキ!百人一首」』の佐々木 幸綱氏の解釈文
崇徳院は、第75代天皇、鳥羽天皇第一皇子。本当の父は鳥羽天皇の祖父の白河法皇だったとの説もある。
保元の乱に敗れ讃岐へ配流され、その地で崩御。

蜻蛉の滝(奈良県吉野)


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