「天神山」  桂枝雀


★あらすじ★ ヘンチキの源助という変わり者。オマル弁当にしびん酒で花見に出かける。
途中で、「花見に行くのか」といわれ、変わり者で通っているのに皆と同じの花見では面白くないと思い、一心寺に墓見に行く。

小糸と書いてある石塔の前で墓を相手に一人で酒盛りを始める。帰り際にしゃりこうべ(がい骨)が土の間から出ているのを見つけ、根付けか置物にしようと長屋に持って帰る。
その夜、きれいな女がたづねてくる。しゃりこうべの主の小糸で、昼間の手向けの酒がありがたかったといい、押しかけ女房になってしまう。

隣に住むどうらんの安兵衛。源助から幽霊の女房は金がかからなくて得だといわれ、同じように一心寺へ出かける。
そううまいこと若い女のがい骨には出くわさず、隣の安居の天神さんへ行き、女房が来ることを祈って帰り始めると狐を捕まえている男に出会う。
捕まった女狐を買い取り、いい嫁さんが来ることをお願いして逃がしてやる。

女狐は若い女に化けて安兵衛を追いかけ、これも押しかけ女房に。
男の子が産まれ3年の月日が経つ頃、近所に狐ということがバレてしまい、狐の女房は安兵衛の家を去ることになる。
寝ている子供を見て、障子に歌を書き残して去って行く。

「恋しくば たずね来てみよ 南なる 天神山の森の奥まで」


    

一心寺の墓


★見聞録★ 前半は「野ざらし」「骨つり」と同じ筋で、主人公はヘンチキの源助と幽霊の女房。後半は芝居の*「葛の葉」「保名」のパロディで主人公はどうらんの安兵衛と狐の女房いう組み合わせになっています。

変わり者の源助と安兵衛のおかしな言動で笑わせ、サゲの所は情緒ある歌で、余韻のある終わり方をしています。枝雀の工夫のあらわれでしょう。サゲの元の歌は、「恋しくば たずね来てみよ 和泉なる 信太(しのだ)の森のうらみ葛の葉」です。
所々でお囃子(枝雀のおかみさんが演じていたそうだ)を入れ、奥の深い、幅の広い噺にしています。

狐の女房と幽霊の女房の会話とか長屋の連中とのやりとりを入れたらもっと面白い噺になるのではと思ったりもしました。
安居の天神さん付近は今も、歌の「天神山の森」を偲ばせる静かで、昔の面影がちょっと残っています。「口縄坂」「愛染坂」「清水坂」など散策にもってこいの坂もあります。

*「葛の葉」は、「信太妻(しのだづま)伝説に登場する白狐。また、これに基づく作品の一つの浄瑠璃「蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)の通称。および女主人公。」
*「信太妻」は、「和泉の国信太の森の女狐が安倍保名と結婚し、晴明(陰陽道で名高い安倍晴明)を産むが、正体を見破られて姿を消したという伝説。また、その狐。説教、浄瑠璃、歌舞伎などに脚色された。
以上『三省堂大辞林』より
収録:平成10年4月
TBSテレビ「落語特選」


一心寺(天王寺区逢坂2丁目)
一心寺仁王門(黒門)

平成9年建立の現代的な青銅の仁王像
安居の天神さんへの石段。
安居天神(天王寺区逢坂1丁目 一心寺の前)

天王寺七名水の一つ安居の清水がある。
真田幸村戦死地の碑(安居天神境内)

大阪夏の陣で破れた真田幸村は境内の一本松の下で戦死したという。
天神坂(安居天神脇の坂)


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