.弓引三昧 about YUMIHIKI

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Part 87

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弓を始めたその理由(わけ)は?(後編)


初心がここにあります。

 将来のことを何も考えないままに会社を辞めた私は、3ヶ月はひたすら休み、6月も終わろうかという頃、新しい職を探そうと職安へ行ってみた。不況で就職難真只中だったものだから、これといった職には巡り会えず、チラシなどを見ては、短期のアルバイトなどをして食い扶持(とは言っても家にいるのでお小遣い)を稼いでいた。
 職探しの時、提出書類として履歴書を書く。その時、あまりに自分が何も出来ないことに気付いて愕然とした。特別な教育は受けていないけれど、印刷会社にいたので少々印刷の知識はあるにしても、別の職では役に立たないし、ワープロ検定と運転免許の資格はあったものの、2級とペーパードライバーでは、技術と言うには心許ない。大学、せめて短大を出ていれば、少し門戸が広がったのかも知れないが、学校の勉強ができることと知識のあることは全くの別物だと思い、更には社会が学歴偏重に疑問を持ち始めていた時代だったので、何をしたいのか分からないまま、大学なんかで4年、あるいは2年も時間を無駄にするよりは、社会勉強を優先させて、大学の方は本当に勉強したいことが見つかってからにしよう、と決めたことが裏目に出ていたのだ(今はこれで間違いなかったと思っているが、その時は少し、後悔した)。
 しかし何よりショックだったのは、知識はあるにしても、私がやっていた仕事はあまりに古い技術だったが為に(私は写真植字(しかも手動)をやっていたが、現在はDTP(パソコン)なので)、あるところで即戦力にはならないと断られたことだった。
 すべてにやる気をなくしていた。何だか悪いことばかり身の上に降りかかってきたようで、今まで正しいと思って歩んでいた道が、すべて否定されたように感じた。
 そんな時だった。市の旬報に弓道教室の募集が載っていたのは。初めて、市内で弓道をやっていることを知った。何だか出来過ぎな程タイムリーで、けれど救われる緒(いとぐち)がそこにあるような気さえした。
(やってみよう)
 思い立ったが吉日だった。既に心の中では、「私に出来るかも知れない唯一のもの」と弓道は位置付けられていた。
(どうせ失業者だ。時間は有り余る程あるのだから)
 ──とことん前向きね、と友達に言われ続けた本来の自分が、社会人になっていつしか眠らされていたらしい本来の自分が、ようやく目を覚ましてくれたようだった。

 そうして私は、弓を始めた。

 そうして今、3年目を迎えた。
 教室中、自分自身も他人からも続くものとは思えず、一番に脱落するだろうと思われていたこの私が、教室後、続けられるか分からないからと道具を買うのを散々渋ったこの私が……はっきり言って、こんなにハマるとは思ってもみなかった。
 なぜ私は弓を始めたのか? それを今、つらつらと考えてみると、一つの答えに辿り着いた。それは、今現在私が期待して弓を引いている理由でもあった。
 ──では、私は何を楽しみに弓を引いているのか?
 それは、今より少しはましな自分になりたかったから。
 それは、10年後を楽しみにして、今を満喫したかったから。

(1999年10月7日・2003年2月1日 加筆修正)

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