地球の鼓動を感じた下北半島の旅
〜青森県・浅虫温泉&恐山の旅〜

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 打ち合わせが終わったのが、午後3時45分。そして、クライアントの営業車に乗せてもらって八戸駅に着いたのが、4時5分。密かに、、乗りたいと思っていた4時13分発の特急白鳥15号に、幸いにも乗ることが出来た。これなら、今夜の宿をとった浅虫温泉に5時頃に到着できる。思惑通りの好スタート。
 こうして、八戸日帰り出張にかこつけての、私の下北半島の旅が始まったのであった。
特急白鳥
 

旅の足掛かりは、浅虫温泉

 5時2分、浅虫温泉に降り立つと、目の前には陸奥湾の景色と鉄筋建ての温泉宿がぽつぽつ見える。ここが、浅虫温泉かぁ。
 実は、八戸への日帰り出張が決まると同時に、私の宿探しは始まった。しかし、八戸近辺には私をときめかせる温泉宿が見つからない。知り合いの温泉通の方々に、浅虫温泉に良い宿はないかと相談したら、浅虫なんかやめて十和田温泉郷の蔦温泉や猿倉温泉を勧められた。うむ、それらの温泉と宿は非常に魅力的だ。しかし、そこに行くには、八戸発3時10分のバスにのらなければ、公共交通を利用して行く術がなくなる。仕事の終了が未定にもかかわらず、そんな綱渡りのような予定は組めない。一応、仕事優先、、否、仕事最優先だし。。
 温泉通にとって、浅虫温泉は食指をそそらない温泉地となってしまったのだろう。しかし、今回の旅の起点としては交通至便。予約した宿も、駅から徒歩5分。まっ、これで良しとしよう。
 

海の幸と津軽三味線浅虫温泉・旅館小川

 予約した宿は、一人泊OKという旅館小川。4室しかない小さな宿だが、案内された部屋は、8畳くらいある洋間のリビングと10畳の本間、そして次の間4畳と、一人で泊まるにはとにかく広い。予約時に、広い部屋しか空いてないが良いかと聞かれたが、私的にはノープロブレム。狭いより遙かにグッド。但し、眺望は隣の温泉旅館と道、道を挟んで向かいにある駐車場とその先の東北本線の線路が見えるのみ。線路に近いので、二重ガラスの窓がダブルではめてあった。
 お風呂は、熱めの源泉の掛け流しだが、ここも眺望が無く狭く、タイル貼りで風情も何もない。この日の泊まり客は、すべてがビジネスユースの男性だったため、女湯はいつも貸し切りで使えた。宿のHPによると、片方は檜の浴槽のはず。途中、お風呂の入れ替えがあるのかと思いきや、結局朝までそのまんま。宿泊客にとって、宿泊に占めるお風呂のウエイトは高いのに。。お風呂上がりは、無料の豪華マッサージチェアで悦。これは、気に入った。
 夕食は、予想通り海の幸尽くし。どれも驚くほど新鮮で、ホヤなどは東京で食べる物とはまったく別物である。ホタテのお刺身も、肉厚でその身の締まり具合が違う。しかし、全体に塩分が濃いめだったのが難。

 夕食の後は、近くのホテルのロビーで津軽三味線のショーがあるというので聴きに行く。浅虫温泉の各旅館に泊まっている客が集まってきていた。そのほとんどの客が、リタイアされたご高齢の方ばかり。まっ、平日はこんなもんか。
 ショーはなかなか聴き応えがあった。津軽三味線はもちろんだが、青森ねぶたのお囃子にのせて吹く横笛の音には、心を揺さぶられた。人混みは嫌いだが、青森ねぶた、、ちょっと訪れてみたくなった。
 この夜、床にはいると、列車の音が頻繁に聞こえる。しかも、長く続く。東北本線は、貨物列車の運行がとても多いのだ。列車は、嫌いでは無い。音がするたびに起きあがり、列車を見に行くこと数回。貨物列車に加え、北斗星の最後尾も見ることが出来た(^^)v
 朝食は、小さな宿には不似合いと思える1階のバーにて。おっ、アルコール類は、なかなかなの品揃え。夕べ、一杯やればよかったと少々後悔。朝食は一般的なメニューだが、一つ一つはみんな美味しい。一風呂浴びた後の朝食は、やっぱり食が進む。
 オススメというわけではないが、トータルに見ればまあまあ。母と娘で運営しているだけあってアットホームな雰囲気はあるし、ハズレではなくて良かった。
 

一輌で走る大湊線

快速しもきた 浅虫温泉駅発9時24分の快速しもきたで、下北半島の下北駅へ。快速といっても、一輌である。野辺地を過ぎて大湊線に入ると、ディーゼルならではの電線のない見晴らしの良い景色が楽しめる。正真正銘のローカル線だ。
 野辺地を過ぎると、なんと桜の花が咲いていた。そして、次は陸奥湾ぎりぎりの海岸線の景色が続く。日本一の菜の花畑が広がるという横浜町あたりでは徐行運転。観光客を意識した運行は、なかなか好感触。しかし、発想を変えたら、涙ぐましい努力ともいえる。皆さん、もっと乗りに行ってあげて!!この時期、横浜町では観光ヘリも飛ぶと、昨日のローカルニュースで言っていたっけ。。
 横浜町あたりでは、車内でカメラを構えていた人も多かったが、外が寒いせいが、菜の花畑が広がる山側の窓が曇ってしまった。。本当に、5月?
 

恐山へのバスは、私専用

 下北駅に10時49分に到着すると、11時発の恐山行きバスが待機していた。乗り込むと、私一人。途中、誰も乗車してくることはなく、結局、私の貸し切りだった。
 バス内では、恐山についてのいろいろな説明テープが流れる。一杯飲んだら10年、二杯飲んだら20年、三杯飲んだら死ぬまで生きるといわれる湧き水「冷水」に差し掛かったとき、バスの運転手さんが「飲んでいきますか?」と。もちろん(^_^;)
 三途の川にかかる赤い太鼓橋を過ぎて、いよいよ恐山到着である。
 

地球の鼓動を感じた場所

恐山 恐山とは、正しくは恐山菩薩寺である。比叡山、高野山とともに、日本三大霊場に数えられるらしい。(あっ、これで私は三大霊場も制覇(^^)v) 入山料は500円。ついでに、出張カバンなどの荷物も預かってもらう。
 境内に入ると、立派な山門がある。そして、右手に昨年の春にできたばかりの真新しい宿坊。さらに直進すると、本堂である地蔵堂。恐山というと、イタコの口寄せが有名だが、イタコは大祭の時にしか、いないそうだ。
 境内には硫黄の香りが充満し、私の脳裏には箱根の黒玉子がよぎる。そう、左手に広がる荒涼とした風景は、箱根の大涌谷や塩原の新湯爆裂火口、北海道・川湯の硫黄山、那須の殺生石などを彷彿させるものがあったからだ。
 順路と書かれた案内看板に従い、山内を歩いてみた。まず、奥の院不動明王へ。ここへは誰も登ってこない。多くの観光客が歩く参拝順路に戻る。そこには、小石が積んであり、その中央には風車が挿してある。写真などでよく見る恐山の景色だ。そして、あちこちから蒸気が噴出している。地蔵尊や観音像が建つ中、おどろおどろしい雰囲気を演出するかのように、カラスもいる。しかし、私にはなぜか心が安らぐ心地よい場所のように感じた。
 さらに奥、慈覚大師座禅石へと向かう。座禅石にもたくさんの小石が積み上げてあった。そして、ふと足下に落ちいてる丸い石に目をやると、何か文字が書いてある。えっ、と思って他の石を見ると、そこにも文字。これが祈りなのか。。そして、耳を澄ませば、足下のその下から水音が聞こえる。気がつけば、水音はそこかしこで聞こえるのだ。よくよく見れば、そこここに水や湯が噴き出している。
 なんていう場所なんだ。黄色い水、青い水、黒い水、透き通った水、そしてコンコンと湯が噴き出し、その音がこだまする。周囲には誰もいないので、音だけがこだまするのみ。これが、地球の鼓動なんじゃないのか。。下北では、人は死ぬとお山に登るといわれているが、きっと、お山に登って地球に還るのではないかと。。。
 足下に落ちているお賽銭は、強い酸性の影響ですでに黒く溶け、原型をとどめていない。ここでは、人間が勝手に作ったお金など、きっと不必要なんだろう。強い酸性土壌が、何もかも溶かしていく。そして、消えてゆくんだ。。。。
 今回、友人に恐山に行くと言ったら、怖いといわれたが、そんな雰囲気はまったくない。浅虫温泉で、宿の人に恐山に行くと言ったら、30分もあれば見終えて時間をもてあますと言われたが、私は何時間でも居られそう。周囲の山々を水面に映す宇曽利山湖も、すこぶる美しさ。地獄と天国をかいま見るのではなく、時間を超越した心象風景に私は感じた。

血の池地獄


恐山は、湯治場でもあった

 景色はまったくもって見飽きないのだが、もう一つの目的を達成せねば、恐山まで来た意味がない。もう一つの目的とは、境内に湧く恐山温泉に入ること。歩いて山に登った時代は、温泉に入って身を清めた後に参拝したのだそうだが、今はやはり帰りが良いだろう。
恐山温泉 恐山の境内には、現在、リウマチや神経痛に効く「冷抜の湯」(男湯)、胃腸病に効く「古滝の湯」(女湯)、皮膚病に効く「花染の湯」(混浴)、目にいい「薬師の湯」(寺務所用)と、効能の異なる4つの霊泉がある。昔は、新滝の湯もあり、5霊泉だったそうな。。
 むつ市が提供している休憩所の係の人に聞けば、「冷抜の湯」はピリッとした刺激があり、「古滝の湯」はマイルドなので、通の男性は、男湯と女湯の札を掛け替えて入る人もいるのだとか。私が行った日は、「古滝の湯」(女湯)が床の張り替え工事のため入れず、通常は一般の人が入れない「薬師の湯」(寺務所用)が女湯になっていた。ひょっとして、ラッキーかも。。
 入浴客は私ひとり。湯治場の面影そのまのお風呂は、肌触りの良い青森ヒバ。源泉は熱く、水で薄めないと入れないが、薄めるための水だって青森ヒバ林でろ過された湧き水だ。あまり薄めてはもったいないので、浴槽の下から上へと、一生懸命湯もみしたのは、言うまでもない。。湯は、ほのかに硫黄が香り、黄緑色の細かい湯の花が舞い、その湯の柔らかさと言ったら、言葉では言い現せないほど。。あまりの気持ちよさに、気がつけばアッという間に1時間。
 この時、神奈川から来たというご婦人が二人入ってきた。いろいろと、下北半島の温泉談義をする。このご婦人たちは、恐山に温泉があるとは知らなかったそうな。私が来る前から知っていたというと、「若い方は、インターネットとかで調べるのよね〜」と言われた。いやいや、若くないって。
 気がつけば、すでに1時間半も入浴している。手のひらはシワシワで、たてがみのような髪の毛は、まるで洗髪したかのように、汗でびっしょり。でも、いつまでも入っていたい程、ほーんといいお湯。いつかまた、入りに来よう。そして、寺務所用の「薬師の湯」に入ったって自慢するんだ(^^)v
 預けた荷物を受け取りに行くと、「どこかで、行き倒れになったかと思った」と言われ、くだんのむつ市の休憩所に行くと、係の人が嬉しそうに寄ってきた。「温泉に入られたんですねー。お若い方は、ほとんど入られないんですよー」と。そっ、だから私は若くないのっ。
 この係の方は、幼い頃に皮膚病を患われ、この恐山温泉で治された経緯を持つ方だった。恐山のお坊さんに「冷抜の湯」に3日、「花染の湯」に3日入浴しないさと言われ、その通りにしたら、完治したのだとか。霊泉、恐るべしである。。
 そうそう、40程前の恐山には湯治宿もあり、下北の人たちは、お米と野菜を持って湯治に来ていたそうな。
 

帰りのバスも、またまた私専用

湧き水・冷水 恐山発3時30分のバスを待ちつつ出発前の一服をしていたら、「ゆっくり吸っていいよー」と、運転手さん。あらら、また私一人なの。午前の一番の便は誰も乗っていなかったらしいので、乗客がいるだけマシなのかも。
 私は、乗客一人なのをいいことに、「冷水」に再び立ち寄ってもらう。飲み干したペットボトルを洗い、水を汲む。このところ、私は旅先で湧き水を汲むのをモットーとしている。そして、それで米を研いで、ご飯を炊くのである。東京の水道水とはひと味違う味わい。私としては、贅沢だと思うのだが。。青森ヒバの原生林で濾過された水は、ことのほか柔らかい。ご飯を炊いてみたが、そのまま飲む方が柔らかさをひとしお感じる。恐山温泉の柔らかさも、この青森ヒバの原生林で濾過された水と関係あるのかもしれないなぁ。
 

乗り継ぎ割引で、一路東京

 下北駅発4時58分の各駅で、野辺地駅に着いたのは5時56分。横浜町あたりで菜の花の写真を撮ろうと思っていたら、沿線住民主体の各駅は、菜の花畑を横目に減速せず(T.T)
横浜町の菜の花 さらに、朝ご飯を食べただけで、飲み物以外口にしていないので、かなり空腹感が押し寄せてくる。。。しかし、野辺地駅ホームの駅そばと駅弁販売窓口は、営業していなかったので、ひたすら我慢である。通常、私の生活は二食である。平日は、昼と夜のみ。旅館に泊まって朝ご飯を食べた場合は、朝と夜の二食となる。普通なら平気なのに、やはり1時間半の入浴がこんなにも空腹にさせるのだろう。言いようのない空腹、ひもじい。。
 野辺地駅発6時9分のスーパー白鳥28号で八戸駅へ。15分間の乗り換え時間を利用して、駅弁を物色。フィルムが無くなったので写せなかったが、この時買った「八戸港 旅情編 大漁市場」という駅弁は、生ウニから炊きあげたウニご飯の上に、ウニ、スワイガニ、タラバガニ、イカ(以上加熱済み)と、生イクラが乗る贅沢版。美味しかったよ〜、二つ食べられるくらい。。
 そうそう、大湊線、東北本線、そして東北新幹線の切符を一気に購入したら、私の試算よりはるかに安い。おっ、そうか、これが乗り継ぎ割引なのね。実は、八戸までの往復は、出張のため会社持ち。しかし、東北新幹線のはやては、全席指定のため事前購入ができないの。よって、帰路の切符を一気に購入したため、思わぬ利益が生じてしまった。つまり、美味しくいただいたお弁当とビール代プラスアルファは、天の配剤ということか(^^)v
 東京駅に着いたのは、午後10時8分。出張を利用しての旅は、やっぱり美味しいね♪

【2004.5.25】

 
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