出会いの妙 

 

一枚の紙の上に落とされた水滴は、同一点から落とされたにもかかわらず

このようにそのどれもが異なったかたちを描きだします。

インクと紙の出会うところに、その生み出される軌跡の”妙”があります。

建築をつくることはこの現象に似ています。

『クライアント(お施主さん、建築主)』と『建築家』が出会うことで建築はその萌芽を得ます。

そして『施工者』と出会うことで三次元空間へと結実することができます。

その三者の出会いや関係の中で、様々な意味で建築は”揺られ”続けます。

まさに出会いの”妙”が建築のできばえを左右すると言えましょう。

アトリエ・Kではそのように、建築をあえて”弱い”存在であるととらえ、

三者の個性のぶつかり合いと協力のもとにつくりあげていくことが重要であると考えています。

 


 

■アトリエ・K 一級建築士事務所 は建築づくりをこんなふうに考えています。

 

   A.建築は一品生産品である 〜お互いの信頼が全て〜

     よく言われることですが、建築は“究極の”一品生産品であります。二十世紀の

     大量生産・大量消費時代にあっても、やはりそうでした。その意味するところは、

     建築とはあくまで人の手によって現場で創られていくものであるということでし

     ょう。(勿論、工場で生産されるプレファブ建築もありますがそれとてもこの宿

     命からは逃れられません)

     ここで重要なことは、人の手によって創られるということはそれに関わる多くの

     人々の気持ちが、良くも悪くもできあがる建築に現れてくるということです。

     言い換えますと、クライアント(建築主)、建築家、そして施工者の三者の間に

     わだかまりがあっては良いものはできにくいと言えましょう。建築とは三者の連

     携プレーにおいて完成されるものだと考えます。良い仕事をするために、まず何

     よりもお互いの揺るぎない信頼関係を築くことが重要であり、そこからプロジェ

     クトが始まるものだと考えています。

 

   B.クライアントと建築家の共同作業 〜パラメーターの発掘〜

     言うまでも無く建築という行為はクライアントの要求から始まります。何らかの

     要望を持つクライアントからの依頼があって初めて建築家はその人のために仕事

     をすることができます。

     一般に建築家の仕事とはクライアントの願望や要求事項をまとめて、建築へとデ

     ザインすることだと考えられています。しかし本当に大切なことはクライアント

     自身も気付いていないこと(潜在的な願望・要望)を発見し、また建築家自身の

     問題意識によって、プロジェクトに潜むキーワードを顕在化し建築へと投影して

     いくことだと考えます。クライアントと建築家が共通の価値観を持つために、対

     話を重ねることが重要です。クライアントと建築家の理想的な関係とはお互いに

     刺激しあうことで、初めには見えない新たなパラメーター(作用因子・特質)を

     共同作業の内に“発掘”していくことだと言えましょう。そのプロセスは苦しい

     事でもあり、同時にとても楽しいことでもあります。

     もちろん、機能性・安全性等に関する要求を満足させることは当然のことであり

     ます。

 

   C.プロセスを楽しむ 〜目的重視から過程重視へ〜

     いわゆる近代の合理主義はものごとのなりたちから、そのプロセスを極力排除し、

     無駄なく最短距離で答えに到達することをよしとしてきました。そして現在、社

     会のあらゆるシステムに無理が生じ、様々な問題が露呈されています。

     さて、建築の世界におきましても、少なからず同様なことが言えましょう。例え

     ば住宅の世界では商業至上主義の手により、多くの人が手っ取り早く完成品とし

     ての建物を手に入れたいという発想にとらわれ、いわゆる建売住宅や商品化住宅

     へと走っています。そこでは建築の質を吟味することよりも、マイホームという

    “イメージ”をすぐに手に入れたいと思われる人々の姿があります。その時、自分

     たち自身の家や暮らしということに対する考察のプロセスは欠落し、器を手に入

     れるという目的・結果のみが偏重されているのではないでしょうか。今日我々を

     取り巻く世界は、再度質的な転換を経ようとしています。次に来るのは確固とし

     たそれぞれの理念を持った人々の時代です。そこでは、理念の実現のためにあら

     ゆるプロセスを楽しむことが重要になるでしょう。建築においても、イヴェント

     として構想・設計・建設の過程、そしてそこから始まる暮らしそのものの質を楽

     しむ姿勢が重要になると考えています。

 

   D.なぜ「アトリエ」なのか 〜建築をつくる姿勢〜

     建築をつくる組織体には様々な様態と考え方があります。作品よりビジネス優先

     と割り切る事務所、一過性の奇抜なデザインで名をあげようと目論む事務所など

     様々です。そんな中で当社は“アトリエ”とうたっているように、密度の濃い建

     築をクラフト的につくることを主眼にしています。限られた時間とマンパワーの

     なかでの仕事でありますので、生み出す建築には限りがありますが、隅々まで目

     が届くように、クライアント・施工者とともに丁寧につくっていきたいと考えて

     います。アトリエの仕事は、建築家の生きる姿勢と、ビジネスとしての仕事の交

     わるところに、そしてまたクライアントと建築家、施工者の個性の交わるところ

     に成立します。

 

   E.社会的存在としての建築 〜次代を見据えて〜

     都市であれ、田園であれ、建築が大地に建てられていく限り、それ自体だけで存

     在することはあり得ず、多かれ少なかれ社会的な存在とならざるを得ません。建

     築家はそのことに対して多大な責任を負っていることを肝に銘じて構想するべき

     だと考えています。建てられる建築の形や色彩はもとより、建築計画そのものの

     在り方も吟味するべきでしょう。

     また、ゼロ・エミッション(廃棄物ゼロ)へと向かう次世紀の循環型社会を見据

     えても新たなパラメーターが見えてきます。あからさまな仕掛けを講じることが

     なくとも、「自然通風」や「日照利用」などのささやかな自然の力を確実に評価

     して設計することで、忘れ去られた肉体的・情緒的感性を揺さぶることや、地球

     環境へのやさしさの表現ができるのではないかと考えています。そしてひいては

     それが暮らしに彩りをそえることになるでしょう。

     世の中はますますスピードアップし、様々な概念が創出され続けています。そこ

     に暮らす、また訪れる人々の心と身体に働きかけ、刺激する建築を創りたいと考

     えています。


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