なっちゃんの傍に居られるのなら。
 嫌われてたって、構わない。
 ……それは、全くもって、そうなんやけどね……。
 できるなら、嫌われてないほうがいい。
 それも、全くもって、その通りなわけで。


 加藤はため息を1つついて、夕暮れの空を見上げた。
 片道の車の中で隣に居られただけ、よしとしよ。
 そう、考える。
 小隊のみんなでやってきたキャンプは楽しくつつがなく終了して、今は速水や滝川が、帰りの車の座席をくじ引きで決めていた。行きの座席は適当だったので、加藤は半ば強引に狩谷の隣を占拠していた。帰りだって、ちょちょいとイカサマでもすればいい。また、狩谷の隣になれる。…しかし。

 しつこすぎると、なっちゃん、怒りそうやしなァ。

「えっと、これで全員かな?」
 気が付くと、くじの入った袋を片手に速水が首を傾げていた。
 どうやらくじを配り終えたらしい。
 …あれ。
「あれ。速水くん、うち、まだ引いてないで」
「え?だって、加藤さんは…」
「何をやってるんだ、加藤」
 不思議そうに何かを言いかけた速水を、不機嫌そうな声が遮った。
「ほら、こっちだ。このトラック」
「なっちゃん?」
 イラついた顔の狩谷が、普段は物資輸送に使っているトラックを示す。
「………加藤さんは、狩谷くんと乗るって。狩谷くんが」
 わけがわからずトラックを見つめる加藤に、おずおずと速水。
「……………え」
 混乱し、息が漏れたような呟きしか出せない加藤を見ていた狩谷の表情が、じわじわと歪められた。
 イライラから、何かを察した表情へ。
 何かを察した表情から、完熟トマトのような赤ら顔へ。
 それが、ゆっくりと青ざめる。
 そして、永い永い時間をかけて、わざとらしいまでのポーカーフェイスを創りあげた狩谷は、吐き捨てるように呟いた。
「………すまない。君だって、四六時中僕なんかといたくは無いよな」
「え、違…うち、驚いて……」
 そして、狩谷はもう一言だけ、こう呟く。


「ただ、帰りも車に酔うんじゃないかと思ったから」


 なっちゃん。
 なっちゃん。
 なっちゃん、大好き。


 加藤は大きく息を吸い込み、告げるべき言葉を模索する。
 沈黙の降りた場で、速水が気まずそうにおろおろしているけれど。


 かんにんな、速水くん。
 さあ、考えよう。
 もちろん隣に座りたい、酔ったらよろしく、なっちゃん大好き。
 そんな気持ちが、伝わる言葉を。




 戻る