セカンドオケプレイメモ overs石田ちゃん/岩崎/横山/航/谷口/竹内/工藤/村田/山口



 /岩崎というひと


 ひょっこり泊まりに来た彼が、あまりにいつも通りなので

 それでかえって背筋が寒くなって
 必死に、何でもいいから、何かの会話の糸口になる言葉を選んだ。

 隊員の報告書から、岩崎が消えたのはその翌日の夜。

 真っ白な頭で、機械的に学校へ向かう。
 ホームルーム。
 告げられた事実は予想済みで、それだけでは何も動かない。
 傷ついた獅子章を握り締めて立ち尽くす。
 なぜか、いつも煩いほど飛び交うお昼提案がひとつも起こらない。
 亜美ちゃんも航も、しばし立ち尽くした後教室を出て行く――――

 誰かに肩をたたかれた。

 彩華姉さんが微笑んでる。
 一緒に食堂に向かって、ここで初めて今日お弁当を作っていなかったことに気が付いた。
 彩華姉さんは一言二言他愛の無い言葉をくれて、静かに去った。
 ちょっとだけ泣きそうになりながら、機械的に教室へ向かう。
 …変だな。もう50分なのに誰もいない。
 1時を10分近く回ったところで、やっと思い至った。
 そうだ、土曜日だ。
 明日は彼と、デートではなく遊びに行く約束をしてたんだ。
 チケットは、水族館をとる予定で。
 まめな彼がチケットを持ってきたら、彼の意向に乗るつもりで。


 こころが やっと うごきだす


 納得いかない納得いかない納得いかない。

 少なくとも死ぬ気じゃなかったはずだ。
 危険なことに首をつっこんでいる(しかもずっと昔から?)のは分かってた。
 でも彼なら大抵のことは上手くどうにかしそうなものなのに。

 いや

 そうではなくて

 分かっていたのなら、なんでその首を引っつかんで、止められなかったんだろう




 陽光まぶしい真昼の校庭で空先生を捕まえた。

「岩崎はすごい」

 その気になれば敵からも物資の調達ができるであろう彼を、賞賛する先生。
 息が苦しい。
 薄々頭のどこかで想像していたことを言葉という形にされて、息がつまった。

 ぼんやりと立つ航に、今度は恐る恐る話しかける。

「凄腕のスパイが死んだ」

 幻獣側の陣地へ、武器も持たずに乗り込んでいたスパイが死んだらしい。

 死に顔は、安らかだったらしい。




 引っつかんだ首を引きずり寄せて殴り倒して

 そしてどこにも行けないように抱きしめるには、全てが遅すぎると

 気付いてようやく、涙が流れた。

  >>>続く。
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