| 3/朝は希望へと(次回から通常のプレイメモです:苦笑) | |
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空を飛ぶことやその手段は別格としても、竹内優斗には好きなものがたくさんある。 きりがないから、昨日遭遇したものだけあげてみよう。 空先生がこつこつとチョークで黒板を叩く音。 ストーブの上のヤカンから噴出す真っ白い蒸気。 学食のおばちゃんが作る料理。 雪を足でどけたら、下にこっそりと育っていた、透き通るような黄緑の芽。 その白い雪。 その白い雪を踏みしめて、明日へと生きる小隊の仲間たち。 その隊長。 今、僕の横で、穏やかな寝息を立てている。 早朝の空気はピンと張り詰め、これ以上なく冬を実感させた。 ちょっと散歩に、と未だ半分くらいしか顔をのぞかせていない太陽を見に外に出た竹内は、コートくらい着てくればよかったと自分の体を抱きしめた。 こんもりと積もる肉厚の白雪が、晴れているにも関わらず不思議なことに、ちらちらと舞い散る白雪が。朝が立てる小さな小さな音も吸い取って、竹内の耳に静寂だけを伝えた。 今日は晴天。幻獣も出ないな、と笑う竹内。 最近疲れ気味な隊長のために、笑う。 生意気で高慢・強情に見えてその実、石田隊長は心配性だ。 僕が守りたい、と思い想ってそう宣言し、爆発的に顔を赤らめる隊長、というたいそう可愛らしいものを拝んでしまったのは昨晩だった。 石田隊長は心配性だ。 数日前のどんよりと空が曇った日、難しい顔をしている彼女がぽつりと漏らした「上層部の不正」疑惑。このバラバラの部隊運営だけでもたいへんなのに、そんなことまで悩んでいちゃキリがなかろう、と親指を立ててLOGした自分に、彼女は更に不安そうな顔を向けて見せた。 頼りにされてないのかなァ、と頑張って調べていい線まで持って行き。それを告げるとまた不安顔。いったい何が不安だというのだろうか。 …竹内とて、男である。 隊長の家に上がりこみ、そういう―――所謂そういう展開を期待していなかったわけではない。 しかし結局は、終始理由は言わずにひたすら不安そうな彼女を宥めるので手一杯で。 いろいろ頑張ってはみたけれど、僕じゃ力になれないのかなァ。 のぼり始めた朝日を正面に、がっくりと肩を落とす竹内。 岩崎さん、貴方は知っていましたか。 隊長はいったい、何が不安なんでしょう。 思えば12月の始めに岩崎が謎の死を遂げた時からだ。 隊長がこんなにも―――――― 少しでも早く、戦争が終わればいいと思う。 あの人には、実は戦うことなんて少しも向いていない。 ねえ、言ったでしょう、一緒に復興事業、起しましょう。 朝はなんでもできそうな気分を運んでくる。 シンと動かない空気を、朝日が揺らす。 ふとその静寂が破られて、竹内は己の背を顧みた。 こつん、と、硬いものが当たる背を。 あなたの不安は、僕が拭えるものではなく、僕が居るゆえだったのだと。 そう思う時間だけは、辛うじて与えられた。 一人きりの朝日のさす部屋で、少女が寝返りをうった。 >>>続く。
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