店内に10人は入れないだろう。 どこもこんな店だ。 客は全員顔馴染み。
ビールを勝手に出すのは当り前、焼酎だって作っちゃう。 頼みもしない料理が適当に並ぶ。
 「ウチには客がいるぞ!」と近所に知らしめんばかりの音量でカラオケを始める。
そうなりゃ、うるさくて話なんかできやしない。
 最新式カラオケ機よりちと劣るものの、この良さが分るおじさん達にはたまらん店だ。
団員がよく行ってた店 Part3
END
緒 久 山
 池袋の場末に「人世横町」がある。
猫が小道を横切る薄暗い所に、間口狭い店
が建並ぶ飲屋街だ。
 身ぐるみ剥がされたサラリーマンやおかま
に追いかけられた人も多い。
 高層ビルに囲まれ、活気の有った頃の面影
はない。流しのアコーディオンがひびく寂れた
一角だ。

 初めて池袋を訪れた人が、この一角に足を踏
み入れることはまず無いだろう。
 「ママ、お会計ね」というと、メモ帳を見ながら電卓を
叩く。 本当に計算しているのかどうかは誰も知らない。
分っているのは、始めに「今日はお金ないよ」と言って
おくと安い。
 気分が悪そうなときは高くなるので早めに退散だ。

 平成13年をもって、『緒久山』は閉店した。
閉店後に紹介しても遅かろうが、紹介しても誰も行く
事はなかったろう。
 不滅のママは何時かきっとどこかで店を開くに違いない。

 人世横町での良き思い出、ママありがとう!