本の紹介
私の友人たちが書いたり、関わったりした本の紹介です。
ここでは最近のものだけを紹介します。
これまでの一覧表の書名などをクリックすると紹介情報や著者からのメッセージが読めます。
<これまでの紹介分野別一覧>
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(最新のお薦め書籍です) |
■歴史のかげにグルメあり(黒岩比佐子 文春新書 800円)
黒岩さんの最新作です。
元祖食育の村井弦斎の評伝を著して以来、黒岩さんは食に関心を深めているようで、「食育のススメ」に続く食シリーズ第3弾です。
食は、文化や生活の基本ですから、そこを通してあらゆるものが見えてきます。
それもたぶん「本音」で見えてくるのが面白いところでしょう。
本書では、幕末のペリー来航から、明治維新、大津事件、日清・日露戦争、明治末期の大逆事件まで、明治の著名な人物とさまざまな事件を取り上げながら、食と歴史を絡ませた興味深い12の物語が語られています。
黒岩さんは、「午餐合や晩餐合のメニューからは、主催者がその料理や酒にこめた思いが伝わってきます。明治人のグルメ度の高さにも驚かずにはいられません。その一方で、捕虜収容所の食事や監欺の食事も、さまざまなことを物語っています。調べていくにつれて、これまで知っているつもりだった事件の別の意味に気づくことになり、たくさんの発見がありました。胸を躍らせながら、楽しく書くことができました」と書いてきました。
読んでみて、そのことがよくわかります。
こういうエピソードも一緒に歴史が学べたら、歴史好きの人は増えるでしょうし、きっと忘れないでしょう。
今まで全く私には存在感のなかったニコライ皇太子の表情が伝わってきましたし、本書に登場する人たちへの好感度も増しました。
明治天皇の人間的な側面も語られていて、とても好感をもてました。
私に一番面白かった話を一つだけ紹介させてもらいます。
幸徳秋水に関して書かれた「アナーキストの菜食論」の中に出てくる話です。
犬や猫が好きな堺利彦は、動物虐待防止会の会員になったことで、動物を殺してその肉を食べることへの感情が鋭敏になった。だが、次第に社会主義の思想から、肉食そのものに対する疑問が生じてきたのだった。堺によれば、世の競争論者は生物界の生存競争を見て、人間界の階級制度や貧富の格差を是認しているが、社会主義者は弱い者を踏み倒さず、自由競争の代わりに相互扶助で、安楽で競争のない世界をつくろうと望んでいるのだという。
そのため、社会主義研究会では、毎回のように肉食問題が持ち上がり、「人間と動物との境界線は何処に引く乎」「肉食を廃した所で、植物も矢張り生物では無い乎、(中略)然らば人間は結局何を食物とすべきである乎」などの質問が相次いだ。
なんだかほのぼのしてきます。
このまま進めば、日本の社会主義も新しい時代を開く役割を果たせたでしょうね。
私はかなり本気でそう考えました。
あまり賛成はしてもらえないかもしれませんね。
楽しい本ですので、グルメに興味のない人にもお薦めします。
コモンズ書店からアマゾンでの購入もできます。
■「働きがいのある会社‐日本におけるベスト25」
斎藤智文 労務行政 2500円(税込)
Great Place to Work(GPTW)はというのをご存知でしょうか。
従業員の働きがいの視点から、会社を評価し、会社をもっともっと魅力的にしていこうという活動です。
本部はアメリカにありますが、この数年世界中に広がりだしている活動です。
この活動を日本に紹介し、日本での活動を推進してきたのが、斎藤さんです。
斎藤さんはこれまで日本能率協会コンサルティングで、この活動に取り組んできましたが、
今度、同社からスピンアウトし、働きがいのある会社研究所を設立しました。
Great Place to Workの思想をさらに広げていきたいというのが斎藤さんの思いです。
その斎藤さんが、最近出版したのが本書です。
神戸大学大学院の金井教授は、「Great Place to Workの日本デビューに寄せて」という文章を本書に寄せています。
斎藤さんと出会ったのはもう20年近く前になるでしょうか。
当時、私はまだ企業に関わる仕事に大きな魅力を感じており、日本能率協会ともいろいろと接点がありました。
その後、私自身は企業の動きに失望し、まちづくりやNPOの世界にのめりこんでいましたが、
斎藤さんの名前は雑誌などで時々は意見していました。
一昨年でしょうか、次世代育成研究会で斎藤さんに久しぶりに会いました。
そしてGreat Place to Workに取り組んでいることを知りました。
25年前に東レで実現したかったことの一つです。
斎藤さんからは時々情報をもらっていましたが、斎藤さんも独立されたので、
一度お会いしたいと思っていたら、本書を持ってオフィスに来てくれました。
いろいろと話してみて、斉藤さんの経営観は私のそれと極めて近いことがわかりました。
本書を読んで、ますますそう思いました。
本書は、経営に発想の転換を求めています。
ぜひ多くの企業人、あるいは組織人(行政やNPO)に読んでほしい本です。
Great Place to Work調査(働きがいのある会社)調査は、1998年以来、毎年アメリカで行われ、
その結果は「フォーチュン」に掲載され、話題を呼んでいます。
以前、従業員のモチベーションの高さでサウスウエスト航空が話題になりましたが、
それはこの調査の第1回目で、同社がベスト1になったからだそうです。
日本でも斎藤さんたちが中心になって3年前から始まり、結果は毎年、日経ビジネスで発表されています。
本書は日米の調査結果を踏まえながら、Great Place to Workの考え方とその実現策を理論的かつ具体的にまとめたものです。
事例も豊富ですし、なによりもこれまでの調査実績を踏まえての、
斎藤さんの経営論(Great Place to Workの理論的背景と言ってもいいですが)が示唆に富んでいます。
長くなるので、そのいくつかを箇条書きで紹介します。
・「働きがい」には会社全体を覆う「信頼」の文化が不可欠である。
・Work Harder時代から、Work Smarter時代を経て、今はWork Togetherの時代。
・従業員以外の何も新しい価値を生み出すことはできない。
・「組織における働きがい」と「仕事のやりがい」は別のもの。
どうですか、読みたくなりませんか。
日本企業の強みと弱みに関しても、たくさんの示唆を得ることができます。
私には共感するところが実にたくさんありました。
おそらくそれは、この調査が「従業員の生の声」をベースに組み立てられているからだろうと思います。
現場にこそ真実はある。
これは私の信条の一つです。
Great Place to Work活動は、来年からきっと本格的に拡がっていくでしょう。
いえ、そうしなければ、日本の企業は疲弊していくばかりです。
Great Place to Work活動が、日本の企業を変えていくことに期待したいです。
斎藤さんにがんばってもらわなければいけません。
私もまた久しぶりに、企業に関わろうかという気が出てきたような気がします。
コモンズ書店からアマゾンでの購入もできます。
企業を変えたいと思っている方はぜひお読みください。
動き方がきっとわかってきます。
■「新」平和主義の論理
(川本兼 明石書店 2008)
平和をライフワークにされてきた川本さんが、いよいよ実践に向けて動き出す段階に入りました。
本書は、その決意宣言書でもあります。
川本さんの著書に関しては、毎回、このコーナーで紹介してきました。
これまでに著書は次をご覧ください。
川本さんは、これまでは主に若者に向けて語りかけてきましたが、私のような世代のものが読んでも示唆に富むものでした。
残念ながら読者が多いとはいえない状況です。
今回は、読者のターゲットを変えました。
これまでの著作活動の、いわば集大成です。
川本さんは、高校の教師ですが、それとこの活動とは峻別して考えています。
ですからこれまでは執筆活動が中心でした。
しかし、その川本さんも間もなく定年です。
たぶん実践に向かうでしょう。
今の時代状況は、それを求めています。
いま動かなければ、また繰り返しです。
川本さんの新平和主義の特徴は次の3点です。
@「戦争そのもの」「戦争ができる国家」の否定
A「希望する平和」ではなく「獲得する平和」という平和観
B基本的人権としての平和権
これらは、このサイトや私のブログの根底にある、組織起点の発想から個人起点の発想へという世界像のパラダイムシフトと符号しています。
本書の内容の紹介は今回はやめます。
ぜひ読んでほしいからです。
それに代えて、はじめにで川本さんが書かれていることを少し長いですが、一部を省略させてもらいながら、引用させてもらいます。
ここ数年の間私は、主に若い読者を対象に本を書いてきました。
これからの日本や世界を担っていく若い読者に私と一緒に考えていって欲しいと考えたからです。
しかし、この本は、「戦争を知らない『元』子供たち」であるわが世代を対象に書きました。
その理由は、現在の日本の状況を見て、私たちの世代が本当にこのような国を作ろうと思ったかを問いたいからです。
「戦争を知らない『元』子供たち」たちは、戦争体験を通じて獲得した日本国民の戦後の「感覚」の真っ只中で育っています。
そして、「戦争を知らない『元』子供たち」は、学生運動などを通じてかつては戦後の日本を作ろうと考えました。
その私たちの世代が、本当にこのような国を作ろうと思っていたのか?
防衛庁が防衛省になり、海外派遣が自衛隊の本来任務になってしまった国。
すべての学校で「君が代」を歌うことが強制されていても何ら問題にされない国。
「勝ち組」「負け組」という言葉が情け容赦なく使われるようになってしまった国。
貧富の差がこれほどに拡大してしまっているのに労働組合がただ傍観しているしかできない国。
「革新」という言葉が姿を消し、二大政党が大連立を組むための試みまでもが行われる国。
そして、何よりも、学生や若者が何事に対しても自らの意思を表明しなくなってしまっている国……。
戦争体験を通じて獲得した日本国民の戦後の「感覚」は、多くの点ですでに西欧型民主主義やソ連型社会主義(=社会主義型民主主義)の考え方を超えていた。
しかし、わが国民はそれを表す言葉(ロゴス)や論理(ロゴス)や普遍原理(ロゴス)を持ってはおらず、そこでわが国は、その日本国民の「感覚」とは異なる方向へと歩むことになってしまった。
したがって、「戦争を知らない『元』子供たち」は日本国民の戦後の「感覚」に「言葉(ロゴス)」を与えなければならず、そしてもしそのことが可能であれば、日本国民は本当の意味での国際貢献を行えるようになり、世界をリードすることになる。
「戦争を知らない『元』子供たち」は、子供の頃、「戦争を知っている大人たち」に「どうして反対しなかったのか」「どうして抵抗しなかったのか」と問いかけました。
そのことが大人たちをいらつかせ、そのいらつきから発せられる「戦争も知らないくせに…」という言葉に対して、「戦争を知らない子供たち」の歌が生まれたのですが、しかし、これからは私たちの世代が「どうして反対しなかったのか」「どうして抵抗しなかったのか」と問われかねません。
そこで私は、この本でわが世代に本当にこのような国を作ろうと思ったかを問い、そして「戦後日本の再構築」を呼びかけたいのです。
読まなければという気になったら、ぜひお読みください。
感想なども聞かせてもらえるとうれしいです。
川本さんにお願いして、一度、話を聴く会を開催したいと思っています。
関心のある方はご連絡ください。
5人集まったら開催する予定です。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「つくってみよう
まちの安全・安心マップ」
傘木宏夫 自治体研究社 1333円(税別)
傘木さんは、長野県の大町市に拠点を置く、NPO地域づくり工房の代表ですが、
地元でまちづくり活動に取り組みながら、全国的にもさまざまな活動をされています。
私が知り合ったのは、コムケア活動のおかげですが、
そこで傘木さんが企画したプロジェクトに関心を持ったのが最初です。
そのプロジェクトは残念ながら予想外の「事件」によって傘木さんの思うようには展開できなかったのですが、
その時の傘木さんの対応の姿勢がとても心に残ったのです。
プロジェクトは成功するに越したことはありませんが、
それ以上に大切なのはプロセスであり考え方だと思っている私には、とても印象に残りました。
その後、傘木さんが主催する会にゲストとして呼ばれたことがあります。
地域に立脚して、住民主役の姿勢で地域づくりに取り組んでいる傘木さんの誠実さを感じました。
しかも傘木さんはそうした活動と並行して、地域づくり関係の研究所などにも参加しながら、
現場に埋没することなく、その世界を広げ深めているのです。
いわゆる「土の人」でもあり「風の人」でもあるのです。
その傘木さんから、新著が送られてきました。
それが、この本です。
「安全・安心マップ」。まさにいま各地で求められているものです。
傘木さんの実際の体験を基本においた実践書ですから、とても読みやすく説得力があります。
協働が新しい段階に入ってきたのだと、私はこの本を読んで実感しました。
この本で紹介されているのは、子どもやお年寄りがむしろ主役になって地域づくりの取り組む事例ですが、そこでは行政主導の形式的な協働のまちづくりではなく、住民同士の協働の実践への展望が見えてきます。
地道な活動を重ねてきた傘木さんならではの、思想を背景にした実践書です。
「安全・安心マップ」は、完成したマップが重要なのではありません。
マップづくりのプロセスがとても大きな意味を持っています。
私も数年前、自治会長を引き受けた時に、「安全・安心マップ」の取り組もうと思いました。
残念ながら、その時は実現できませんでしたが、この本があれば少し違った展開ができたかもしれません。
自治会や学校、あるいは老人会などで、
この本を参考に、各地の「安全・安心マップ」づくりが広がるといいなと思います。
子育て関係のNPOやグループでも、ぜひ取り組むといいのではないかと思います。
あんまり本の内容紹介にはなっていませんが、とても良い本です。
まちづくりや暮らしに関心のある人にお薦めします。
■「新・挑戦する独創企業」
浜銀総合研究所経営コンサルティング部編著 プレジデント社 1800円(税別)
昨年、この欄でもご紹介した、「挑戦する独創企業」の続編です。
浜銀総合研究所経営コンサルティング部は、「先見性と創造性と専門性を発揮し、幅広い情報の提供を通じて地域の将来の発展に貢献する」ことをミッションに、主に中小企業を対象に、現場に足を踏み入れての問題解決支援のコンサルティング活動に取り組んでいます。
そこで出会った元気な企業を、その独創性に主に着目して紹介してくれているのが本書です。
この本の編集の中心になっている浜銀総合研究所の寺本明輝さんのメッセージが、ますます冴えてきています。
寺本さんは、これまでの豊富な事例体験から、こういいます。
独創企業に見られる特徴的な企業文化を抽出していくと、改めて植物の生き方に似ていることに気づく。
厳しい環境変化の中にあって、風向き(外部環境)はなかなか変えられない。
しかし、根の張り方(組織能力)を変えることは十分可能なはずだ。
植物の生き方にも通じる、 独創企業の環境対応のマネジメントには、中小企業が存続・発展し続けるためのヒントが隠されている。
こう書かれている第1章「植物の生き方に学ぶ中小企業経営」は、とても示唆に富んでいます。
中小企業経営とありますが、大企業にとっても学ぶことは多いです。
つづいて、キラリと輝く独創企業19社の事例が、「経営理念とビジョン」「事業の仕組み」「組織とマネジメント」「技術と技能」「製品(商品)開発力」という5つの切り口で紹介されています。
いずれの事例も面白いですが、それぞれに、前著と同じように、寺本さんの解題的なコメントがついています。
たくさんの企業経営現場に触れ、多くの企業経営者に会っている寺本さんの心身から発せられているメッセージだけに、説得力もありますし、含蓄もあります。
どれだけ消化できるかは、むしろ読者の問題かもしれません。
寺本さんは、こうも書いています。
成熟化した社会において、質的向上はさまざまな局面で問われている。
しかしながら、企業経営の現場では、まだまだ売上高、生産高、シェアなど量の追求に躍起になっているのが現実だ。
その結果、価格競争による利益不足が差別化投資の不足を招くという悪循環に陥っている企業が少なくない。
量の追求に血眼になっている限り、価格競争という体力消耗戦から抜け出すことはできない。
経営資源の量で大企業に劣る中小企業が、体力消耗戦に挑んでも勝ち目がないのは明らかだ。
成熟経済の時代においては、独創化に成功した企業だけが存続・発展を許されるのである。
共感できます。
そしてこれは、単に大企業に対する中小企業の戦略ではなく、企業そのもののあり方へのメッセージだと思います。
企業経営に関わる皆さんに、ぜひ読んでいただきたい1冊です。
現場の知がふんだんに感じ取れるはずです。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「UD革命―思いやりの復権」
ばばこういち+安藤千賀 リベルタ出版 1800円
CSテレビの「よみがえれニッポン」の番組で、
6年以上にわたって、UD.ユニバーサルデザインに取り組んでいるのが、ばばさんと安藤さんです。
私もその番組には何回か出演しましたが、
お2人の関心は、デザインではなくて、思想としてのユニバーサルデザインなのです。
したがって当初はいささかの違和感がありましたが、そのうちに、私もその情熱に取り込まれてしまいました。
それに6年も継続して取り組んでいる姿勢は、それだけでも感心します。
この6年間の活動を踏まえた、いわば中間報告が本書です。
お2人のユニバーサルデザイン論がとても具体的に語られています。
思想としてのユニバーサルデザインですから、
プロダクトデザインの話よりももっと幅広い世界が語られています。
法テラス病院や診療所の話、行政やまちづくりの話などが、とてもわかりやすく紹介されています。
ねじれ国会はUD的などというメッセージもあります。
私が関わった美野里町(現小美玉市)の文化センターの話も出てきます。
社会派ジャーナリストのばばさんのシャープな目とフットワーク抜群の若い安藤さんの素直な目が、
とてもいいバランスで組み合わさっているように思います。
この番組に関わった人たちの、それぞれのユニバーサルデザイン論もありますが、
それぞれが勝手に書いているのが愉快です。
ユニバーサルデザインの本質の一つは「寛容さ」であり、
昨今のユニバーサルデザインの動きには多様性が欠落しているような気がしている私としては、
この部分にこそ、ばばさんのユニバーサルデザイン論の本質が見えるような気もしました。
しかし、ばばさんがメッセージしたいことは明確です。
最終章でばばさんはこう書いています。
経済力や軍事力が力の本質として存在する中で、
国際的なリーダーシップをとるために、私はユニバーサルデザインを国是にして掲げることを提唱したい。
「相手の立場で考え」「対話と参加」を大切にするユニバーサルデザインの思想は、
地球人にとって何よりも大事な地球益第一の運動につながる。
国是としてのユニバーサルデザインとは、
日本が環境保全を積極的に推進し、世界平和のために戦争を起こさぬ断固たる姿勢を貫くことである。
その意味で日本国憲法は、ユニバーサルデザインの思想そのものだと言えるだろう。
実例も多くて、読みやすい本ですので、夏休みの合間にでもぜひお読みください。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「戦争絶滅へ、人間復活へ」
むのたけじ 聞き手黒岩比佐子 岩波新書 2008
「食育のススメ」の黒岩比佐子さんの尽力で実現した、たぶん後世に残る1冊です。
黒岩さんからはむのたけじさんのお話を何回か聞いていました。
いつかきっと本になるだろうなと思っていたら、黒岩さんが聞き手になっての本になりました。
最高の聞き手とめぐり合えたむのさんの幸せと社会の幸運をとてもうれしく思います。
少し褒めすぎのように思えるかもしれませんが、本書を読んでもらえれば、きっと納得してもらえるでしょう。
93歳のむのさんの体験に裏付けられたメッセージはいずれも心に響きます。
そして確信を持った理想への姿勢が伝わってきて、元気づけられます。
私の目指す生き方とこれほどに重なっていたのかと、改めて驚きました。
もちろん私はまだ、その目指す生き方には程遠い生き方でしかありませんが、最近いささかめげていたので、大きな元気をもらった気分です。
日本は新憲法で完全に交戦権を奪われた。憲法9条は、軍国日本に対する死刑判決だとむのさんは言います。
国家への死刑判決。
アメリカにとっては、実に皮肉な話ですが、国家を否定された日本のその後の歩みは、まさにそれに符合しています。
そして、むのさんはこういいます。
「戦争を永久に放棄する」という文字通りに、憲法9条を実現するためには、私たち一人ひとりがどんな生き方をしなければいけないのか。それを考えるところから、人類の平和への道しるべが見えてくるのはないか。
私なりに解釈すれば、国家から自由になる生き方です。
さらにこうもいいます。
もう一度、一人、一つ、一個というところから始めよう、ということです。
結局、大事なのは、私を救えるのは私以外にないということです。私は私であり、私自身を大事にして自分に誇りを感じ、志をもって生きるということ。そうすると、他の人のこともよく考えることができる。自分を大事に思う人間でなければ、他人を大事にすることもできません。結局、人を変えるものはやはり自分で、他力によって人は変わりません。
元気づけられます。
すべての出発点は、自分の生き方なのです。
現代の社会に対しても、むのさんは述べています。
私はこれまで93年も生きてきたけれども、日本の社会がこんなにもそわそわして落ち着きがなくなったのは、見たことがない。なにもかもが細切れに切れてしまって、バラバラになっている。だから、いまの若い世代の人、20代や30代の人たちがわが身を落ち着けることができず、非常にそわそわしているというのは、彼らが悪いのではなくて、社会の状況がそうさせているのだろうと思う。
この視点に立たない限り、昨今のさまざまな事件の本質は見えてこないと私も思います。
きりがないですね。
ここで引用させてもらったのは、ほんの一部です。
こういうメッセージがふんだんにちりばめられている本です。
聞き手の黒岩さんの発言にもたくさんの示唆を感じます。
単なる聞き手ではなく、引出し手であり、むのさんに異を唱えることも含めて、むのさんの発言と共振しているのが読んでいて気持ちがいいです。
現場に立脚している黒岩さんの現代への憤りも時に感じられますが、まあ、それは読んでのお楽しみです。
ぜひ多くの人に読んでほしいです。
近くの書店で購入して読んでください。
新書ですからすぐ読めますし、コーヒー2杯分で購入できます。
近くに書店がない場合は、アマゾンで申し込んでください。
次のところから簡単に申し込めます。
戦争絶滅へ、人間復活へ―93歳・ジャーナリストの発言
(岩波新書 新赤版 1140)
ぜひ読んでほしい1冊です。
そして生き方を少しでも変えてもらえるとうれしいです。
自分を大切にする生き方に、です。
私たちにできることは、ほんとうにたくさんあるのですから。
*黒岩さんが、日本近代文学館主催・夏の文学教室で、.「1905年、戒厳令下の東京」の講演をします。
会場は有楽町駅すぐのビックカメラ7階「よみうりホール」。詳しくは日本近代文学館のホームページをご覧ください。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「法則の法則―成功は「引き寄せ」られるか」
一条真也 三五館 2008年 1500円
一条さんから本書が贈られてきた時、「やっぱり」と思いました。
一条さんからは、この本の構想は聞いたことはなかったのですが、
何となく一条さんがいつか書くだろうなと思っていた書名の本だったからです。
しかし読んでみたら、私が予想していた内容を超えていました。
一条さんがこれまでずっとメッセージしてきたことが結論として書かれていたのです。
それは一条さんの「究極の成功法則」です。
ハートフル・ソサエティの基本原則と言ってもいいかもしれません。
一条さんは、メールでこう書いてきてくれました。
お送りした『法則の法則』ですが、自然科学・社会科学・人文科学の境界、
あるいは文系・理系の境界を超えた「リベラル・アーツ」の書を意識して書きました。
結論はおそらく意外に思われることでしょうが、わたしの本心そのままです。
『般若心経』『論語』『聖書』に、『国富論』『人口論』『資本論』・・・と、
古今東西の名著を「法則」というキーワードで読み解いた、
小生なりのグレートブック・ガイドともなっています。
佐藤さんのお好きなアダム・スミスの『道徳感情論』も出てきますよ。
本書は、「法則ってなんだろう?」という問いかけから始まります。
そして、「これから、私と一緒に「法則」をめぐる不思議な旅に出かけませんか」と誘います。
そして、旅の終わりには「あなたはすべての「法則」を貫く「法則の法則」について知ることでしょう」と約束してくれるのです。
その約束は少なくとも私には満足できるものでした。
もっともあまりにも素直すぎて、不満な人もいるかもしれません。
それを見越して、一条さんは自分で「結論はおそらく意外と思われるでしょう」と言っているのかもしれませんが、
私には極めて納得できる結論でした。
もう一条さんの世界にはまってしまっているからかもしれません。
しかし、それが本書の結論に、これほど「あっけらかん」と置かれるとは、思ってもいませんでした。
それが、私の「予想」を超えていたところです。
その「究極の成功法則」は2つありますが、ここで紹介するのは差し控えます。
本書を読んでいって、そこにたどり着くのが一番いいと思いますので。
そこに至るまでの「法則の旅」は面白いですし、いろんなヒントに出会えるはずです。
いくつかのキーワードを書いておきます。
「万有引力の法則」から「引き寄せの法則」へ
「求めよ、さらば与えられん」と「足るを知る、感謝のこころ」
黒魔術と白魔術
仏教と現代物理学
なんだか読みたくなりませんか。
最後に一条さんはこう書いています(一部省略)。
わたしにはいくつかの自分なりの「法則」のようなものがあります。
そうした「プチ法則」は、わたしが生きていく上で大切な支えとなっています。
結局、「法則」は人間が生きていくために役に立つものでなければならないと、私は考えます。
人間を幸せにするもの、人間を元気にするもの、人間を励ますもの、
そんな「プチ法則」たちをこれからも見つけていきたいと思います。
そして、みなさんにも、きっとそんな「プチ法則」があるはずです。
法則は「縛られるもの」ではなく、「創るもの」と考えると、なんだかわくわくしてきますね。
疲れている方は、ぜひ本書をお読みになって、元気になってください。
■「間違いだらけのメンタルヘルス」
久保田浩也 法研 1500円
最近、メンタルヘルスが大きな話題になっています。
この言葉に私が最初に出会ったのは30年前です。
当時、日本生産本部でこの問題に取り組んでいた久保田さんからお聞きしたのです。
久保田さんは、メンタルヘルス研究委員会を発足させ、企業に「メンタルヘルス診断」を広げようとしていました。
なぜ「身体」的な健康診断は企業や学校でやるのに、精神的な健康診断はしないのか。
久保田さんの主張は説得力がありました。
しかしなぜか広がりませんでした。
そして、メンタルヘルスの捉え方は全く違う方向に行ってしまいました。
久保田浩也さんは、メンタルヘルスをライフワークにされています。
いまはご自身のメンタルヘルス総合研究所をを拠点にして活動されています。
最近のメンタルヘルスは、本書で久保田さんが指摘しているように、「心の病気」をイメージさせるものになってしまっています。
私自身、いささかの違和感を持ちながらも、そういう意味で使うようになってしまっています。
反省しなければいけません。
しかし、元祖メンタルヘルスの久保田さんは違います。
本書の副題は「心が病気になる前に、打つ手はないのか」です。
久保田さんのメッセージは明確です。
病気にならないようにすることこそが、メンタルヘルス問題だろうということです。
全くその通りです。
問題の定義を間違えれば、問題を解くことはできません。
まさにいま、私たちはそうした間違いに陥っているように思います。
本書は、そうした状況を変えていくための啓発の書であり、実践提案の書です。
ぜひ多くの人に読んでほしいと思います。
久保田さんの長年の蓄積と世間の流れへの苛立ち?もあって、
本書はいささか欲張りすぎて、しかも「密度」が高いため、軽く読むのは難しいかもしれませんが、
さまざまな示唆と実践的なヒントが満載されています。
それに著者自身が自称しているように、久保田さんはかなりの「へそ曲がり」ですので、言葉だけで語る人たちを信用していません。
ですから、時に辛らつな言葉で「常識」を切り捨てることもありますので、
ムッとする人もいるかもしれませんが、 その主張はとても理に適っています。
前フリを長々と書いてしまい、肝心の内容の紹介ができませんでしたが、
企業や学校で、久保田さんが提案するようなスタイルでのメンタルヘルスが一般化し、心の体操が広がることを期待したいです。
いまの社会を変えていくためのヒントが、そこにあるように思います。
内容紹介の代わりに、本書から2つの文章を紹介させてもらいます。
心の問題を、心の病の問題と多くの人は勘違いしています。
心の問題は、健康な人を含めたすべての人の問題であり、
すべての企業・組織・集団の問題であり、
すべての学校、すべての家庭の問題です。
心の健康管理のモデルは身体の健康管理にあります。
私たちが必要としているのは、身体の健康でもありませんし、心の健康でもありません。
普通の人に必要なのは心と身体が一体となった、私たち一人ひとりの「人間の管理」です。
ちなみに、本書には誰でも簡単に習得できる、久保田さんが開発した「心の柔軟体操」の方法も掲載されています。
■愛する人を亡くした人へ
一条真也 現代書林 2007年 1100円
長いこと、机の上に置かれていた一条真也さんの「愛する人を亡くした人へ」を読みました。
昨年発売された本ですが、まさに愛する人を亡くした私には開くに開けずにいたため、紹介ができずにいました。
ブログの節子への挽歌でも書きましたが、「愛する人を亡くした人へ」と一括して語られることへの違和感もありました。
この種の本は、むしろその状況になってからではなく、その状況から一番遠い状況の時によんでおくのがいいように思います。
一度読んでおけば、万一そうなった時にもきっと読めるでしょう。
本書は、そういう本のようにも思います。
つまり愛する人がいる人は、あらかじめ読んでおいたほうがいいということです。
それに本書を読むと、人に対するやさしさが高まるのではないかと思います。
本書の帯に「現代人のための心の書」とありますが、理屈っぽい生き方の本よりも私にははいりやすいように思います。
本書の私の読後感は一部、ブログに書きましたが、ここでは私の心にすっと入ってきたことを一つだけ書いておきます。
第4章は「いのちー永遠につながっています」というタイトルです。
そこで「孝」の思想が語られています。
いのちは時間を超えてつながっている、
一条さんはこう書いています。
現在生きているわたしたちは、自らの生命の糸をたぐっていくと、
はるかな過去にも、はるかな未来にも、祖先も子孫も含め、みなと一緒に共に生きている。
わたしたちは個体としての生物ではなくひとつの生命として、過去も現在も未来も一緒に生きるわけです。
そして、こう考えれば、「死」へのまなざしは「生」へのまなざしへと一気に逆転する、というのです。
私にはとてもよくわかります。
表題のメッセージが強いですが、むしろ多くの人に気楽に読んでほしいと思います。
一条さんは、グリーフケアの文化を広げたいと思っています。
本書がそうした活動を加速させることを期待しています。
一条さんのホームページもぜひご覧ください。
■世界をつくった八大聖人−人類の教師たちのメッセージ
一条真也 PHP新書 700円
最近はあまり聞きませんが、私が子どもの頃は世界の四大聖人という言葉がよく使われていました。
その言葉を久しぶりに聞いたのは、たしか2年前、佐久間庸和さんからでした。
「四大聖人って誰が言い出したのでしょうね」という話でした。
そういえば、この捉え方は考えてみると実に奇妙な発想です。
まさに人類的視点がなければ、このように文化や宗教を超えた発想は出てこないはずです。
それまで全く思ってもいなかったのですが、
こうした発想の根底には、西欧近代とは全く別の視点がありますから、
だれが言い出したのかは興味ある話です。
そう思いましたが、いかにも古い言葉ですので、それ以来すっかり忘れてしまっていました。
しかし佐久間さんはそうではありませんでした。
一条真也は佐久間さんのペンネームですが、その疑問を発展させて本を書きました。
それがこの本です。
佐久間さんが取り上げた八大聖人は ブッダ、ムハンマド、イエス、モーセ、ソクラテス、孔子、老子、そして聖徳太子です。
その人たちを「人類の教師」と位置づけ、そのメッセージを読み解こうというのが本書です。
そのメッセージから、人類の未来の希望につながるヒントが読み取れると佐久間さんはいいます。
そしてそのヒントを具体的に語ってくれます。
その根底にあるのは、佐久間さん(一条さん)の一連の著作を通じて語られている、平成心学の理念です。
私にとって興味深かったのは、聖徳太子の話でした。
佐久間さんの太子論は初めて読むような気がしますが、佐久間さんは聖徳太子を龍だというのです。
龍となれば、当然、水が出てきますが、
人類の現状を水と火から読み解きながら、火と水をつなげて、火水(かみ)というのです。
コンセプトメーカーにしてコピーライターの一条真也さんの面目躍如ですが、
そこに込められた佐久間さんの願いには共感できます。
さらに佐久間さんは、友人の鎌田東二さんの「聖徳太子は集合的無意識」論に共感して、
「聖徳太子は人類の集合的無意識の原型(元型)だ」と言い切ります。
そしてこういいます。
「聖徳太子という存在自体が巨大な意味を秘めた人類への暗号のような気がしてならない」
興味を持たれたら、ぜひ本書をお読みください。
私自身は、「不寛容で閉じられた存在」から「寛容な開かれた存在」へと宗教が進化する段階に来ていると思っていますが(一神教のような初期宗教の役割は終わったように思います)、まさかその鍵が「聖徳太子」にあるとは思ってもいませんでした。
一条さんの「聖徳太子の謎」をぜひ読んでみたいと思っています。
聖徳太子に込められた人類の謎をぜひ解き明かしてほしいです。
■実践社会調査入門
玉野和志 世界思想社 2008 2000円
今回はちょっとテキスト風の本の紹介です。
社会調査とは、人々の意識や行動などの実態をとらえるための調査のことです。
統計学と同じく、社会調査もまた近代の申し子のような気もしますが、
そもそも社会調査は労働者の生活実態を可視化することから始まったとされており、
その点では統計学とは違って、人間の視点を大事にしています。
そして、人々の主体的な動きを支援する源泉にもなったとされています。
まちづくりや市民活動においても、社会調査は効果的な材料を与えてくれますが、
最近ではしっかりした社会調査に代えて、安直な統計的情報ですませてしまう場合もあります。
それでは、管理のための実態把握はできても実践のための実態把握はできないように思います。
話が脱線してしまいましたが、社会調査はいま改めて必要になってきているように思います。
本書はそうした社会調査の入門テキストです。
著者の玉野さんとは一昨年、青森県の三沢市のまちづくりプロジェクトでご一緒しました。
実はその前に、玉野さんの著書「東京のローカル・コミュニティ」を読んで、
ぜひとも玉野さんとご一緒したいと思っていたのが幸いに実現したのです。
そこで玉野さんのたしかな住民視点と社会調査重視の姿勢を感じました。
「東京のローカル・コミュニティ」が面白かった理由がわかった感じがしました。
しっかりした社会調査を踏まえていたからなのです。しかも住民視点で。
本書は、社会調査の基本的な手引書ですが、
単に手法を書き連ねただけではなく、社会調査を実際に重ねてきた実践者の思いが感じられるとともに、
社会調査に取り組む基本的な姿勢に関しても、さまざまなメッセージがちりばめられています。
たとえば、最後の方にこんな記載があります。
社会調査はつねに人々の自発的な協力を得られるように、
きちんとした説明責任を果たし、かつそれが人々に何らかのメリットをもたらすものであることを示さなければならない。
社会調査の倫理とは、一言でいえば、そのような信頼を失わないように誠実に努めることに他ならない。
そしてそうしたことの一つとして、
スポンサー向けの報告書や研究のための報告書にとどめずに、対象者向けの報告書を作成することを提案しています。
とても共感できます。
最後のメッセージも共感します。
労働者大衆が歴史の表舞台に躍り出た近代という時代に成立した社会調査の方法が、
日本においても、われわれが自分自身を知り、自らを社会全体の中に位置づける道具として定着していくことを、切に願うものである。
ちょっとテキスト風なので誰にでもというわけではありませんが、
まちづくりや社会問題の解決に取り組んでいる人たちにはお勧めです。
■中小企業にしかできない持続可能型社会の企業経営
森建司 サンライズ出版 2008
滋賀県に本社のある叶V江州の森会長は、会社の経営者でありながら、
昨今の経済至上主義の企業のあり方に大きな異論をもっています。
異論を持っているだけではなく、実際に現状を変えようと積極的に活動しています。
このコーナーでも前に「循環型社会入門」をご紹介しましたが、最近、また本を出版されました。
それが本書ですが、書名では伝わりにくいですが、持続可能な社会に向けての企業のあり方を提案している本です。
とてもわかりやすく、明確です。
たとえばこう書いています。
経済至上主義社会は「企業」という法人の利益を目指すものであり、
そこに関わる人々の利益を目指すものではない。
コストダウンによってもたらされるモノの豊かさは、人間関係を希薄にし、人のモノに対する愛着を失わせ、結果として古いもの、歴史的なものへの軽視を生んだ。新しいモノに囲まれている人間、それが常識になってしまっている。
共有していた従前の仲間が、そろって生き残ることを前提として考えるのは、いまでは、経営学で論じるものでなく、単なる倫理の問題として片付けられているのだろう。
法治国家として、法律遵守は当然のこととして受け入れても、法律に書かれていない社会基準、倫理、道徳をはじめ、世にいう良識によって戒められてきた戒律のようなものには、ほとんど関心を寄せていない。少しあれば便利で役にも立つが、大量にあることによって人間に害を与えるものや、市場の要請があるからといって、社会悪と成っているにもかかわらず、これらをいまだに大量生産を続けてやまない大企業はいかに多いことか。
引用が多すぎましたが、とても共感できます。
日本経団連の会長とは大違いです。
新江州は包装資材を扱う会社であるにもかかわらず、包装はできるだけないほうがいいと主張しているのです。
そして実際にそうした取り組みもしてきたのですが、なかなか成功しなかったようです。
消費者に関してもこう書いています。
供給側がいかに改革を目指して努力しても、生活者である消費者の意識や行動が変わらないと大勢は変わらない。その消費者の意識は、供給側の長期にわたる洗脳とも言える激しい宣伝活動の結果によるものでもあろうが、「より廉価なもの、品質の保証されたもの、いつでもほしい時ほしい場所で供給されるもの」。この3条件を消費者が求め続けている限り、包装はますます過剰になり、削減されることはまずない。
こうした状況を打破するのは、まさに中小企業だと森さんは主張します。
全く同感です。
大企業が主導する産業体制の中では、持続可能な社会など夢のまた夢かもしれません。
中小企業の人ではなく、大企業の人、とりわけ経営者や一般の生活者に読んでほしい本です。
森さんは滋賀県で、MOH運動というのを展開しています。
ぜひともそのサイトも見てください。
手軽に読めるサイズの本ですので、ぜひとも読んでみてください。
お薦めします。
■「神さまがいっぱい」
武原敢 清流出版 2004
2004年に出版された本ですが、先日のコムケアフォーラムで出会った著者の武原さんからいただき、読ませてもらいました。
とても面白く、いろいろな人にも読んでほしいという気がして、紹介させてもらうことにしました。
この本は、武原さんが10年ほど前に体験したカナダのカソリック系の知的障害者施設で、障害者と一緒に過ごした半年間の生活記録です。
帯にこう書かれています。
「素直に生きてごらん!
知的障害者と呼ばれる彼ら。
みんな個性的。そして自分勝手。
でも、みんな優しくて、みんな自分の世界を生きている」
そうした優しく個性的な人たちとの交流が、実に生き生きとえがかれています。
そして、著者の武原さんもまた、彼らに負けずに、素直に生きていることが、素直に表現されているのです。
私も10年ほど前に、知的障害者施設で宿泊させてもらい、彼らの優しさに感動したことがあります。
彼らを見ていると、私たちが失っていることに気付かされます。
武原さんは、6ヶ月のアシスタント試用期間の後、結局は「解雇」されるのですが、その顛末もとても生き生きと書かれています。
あまり書いてしまうとこの本を読む魅力がそがれかねませんが、
日本における福祉のあり方やNPOのあり方に対して、とても大きな問題提起をしているように思います。
私にはすごく面白い本でした。
その施設に本採用になるかどうかの評価の際に、武原さんはこんなコメントをもらいます。
「仕事はよくこなしているが、残念ながら今回もあなたからのギフトがなんなのかということが、はっきりしなかったわ」
自分でしかできない何か、ここではそれが「ギフト」と呼ばれ最も重視されている、と武原さんは書いています。
ギフトの思想。
私たちの生き方や組織のあり方を考える上での本質的なものを含意しているような気がします。
共感したり、示唆をもらったりしたことはたくさんありますが、もう一つだけ書きます。
施設の利用者である、「知的障害者」たちについての記述です。
「彼らが、暴力を感じさせないのは、追い出されるのが怖いからではなく、そんなものは人間として生きていく上で必要ない、と本能的にとらえているからではないかと思う。たとえ力でねじ伏せることができたにしても、相手の心までは決して変えられるものではなく、そんな他人を蹴落としてまでして手に入れた安らぎに本物の喜びはない。いつか自分も誰かにやられるのでは、と常に不安がつきまとっていくことになる」
私たちの生き方が問題なのです。
ぜひ多くの人に読んでほしいと思い、紹介させてもらいました。
なお、著者の主宰しているネットワーク「つなぐ」も共感できます。
良かったら見てください。
■食育のススメ
黒岩比佐子 文春新書 850円
最近の食育ブームのあり方にいささかの違和感を持っているものとして、
「食育」という言葉には食傷しているのですが、この本はその種の本ではまったくありません。
むしろ「食育」とは何なのかを問題提起している本なのです。
抽象的な問題提起ではありません。
極めて具体的に、実践的にメッセージしています。
著者は、数年前に『「食道楽」の人
村井弦斎』を書いた黒岩さんです。
書名は、食育のススメですが、何を食べたらいいとかというような話ではありません。
明治のベストセラー小説「食道楽」のあらすじの紹介を軸にして、当時の風潮が生き生きと描かれています。
読んでいると、果たして日本の社会は明治以来、進歩したのだろうかと言う疑問を持ってしまうほどです。
「いのち」と「くらし」を直接的に支えている食はすべての文化の基本だと私は思っています。
食から社会を見ると様々なことが見えてくる、まさにそのことが見事に証明されている本です。
狭義の「食育」ではなく、広義の「食育」、つまり、文化論、社会論、人生論なのです。
いまの管理志向の食育発想とは全く違う食育文化が展望できます。
読み物としても面白いので、ぜひみなさんにも気楽に読んでほしいと思います。
もちろん中心に置かれているのは「食」です。
今の社会とつなげながら読むと、面白さは倍化します。
たとえば、食品の見分け方と保存法の話を読むと、食文化がいかに後退しているかがわかります。
そして、昨今の食品偽装事件の意味することも見えてくるような気がします。
さらにいえば、「食育」という言葉が取り違えられているのではないかとさえ思ってしまいます。
一編の小説が、国民病だった脚気の克服に大きな影響を与えた話も示唆に富みます。
小説とは何かを考えさせられます。
「食医」の話も出てきます。
しばらく前に話題になった韓国ドラマ「チャングム」で「食医」が話題になりましたが、
中国では医師が、食医、疾医、瘍医、獣医の4つに別れていて、
食医の地位が最も高かったそうですが、そんな話も出てきます。
弦斎は、この本で、家庭にも食医が必要だと書いているそうですが、驚きました。
最近、統合医療が話題ですが、どうも西洋医学の体系で考えられているような気がしているのですが、
そうした違和感の理由が何となく納得できました。
統合医療の取り組み方も見直す必要があるような気がしました。
まあ、それは余計な話ですが。
このように、書き出したら切がないほど、たくさんの話題がつめられている本なのです。
他にも、教育の話、結婚や夫婦の話、美人になる方法、健康や医療の話、住宅の造り方、まあ、話題は広いです。
食事のメニューやレシピもあります。
アイスクリームやパンの作り方まであるのです。
村井弦斎はこの小説を「教訓小説」と意識していたそうです。
黒岩さんは「食育小説」だといいます。
私は生活事典の面もあるなと思いました。
出版社の紹介記事に、役立つ「食」のヒントが満載とありますが、その通りです。
長い紹介になりましたが、珈琲2杯分で購入できますので、ぜひ購読してください。
きっとこれから話題になっていく本だと思います。
ちなみに、3月2日まで横浜にある県立神奈川近代文学館で、
『「食道楽」の人 村井弦斎』の収蔵コレクション展が開催されています。
2月2日には、著者の黒岩さんの記念講演会もあります。
テーマは「食道楽と日露戦争」。
いずれも黒岩さんの新著のテーマです。
お知らせは案内サイトをご覧下さい。
ご関心のある方は、ぜひどうぞ。
■「書」から戴いた宝物
市川明徳 新風舎 2008
とても不思議な本です。
著者の市川さんが不思議な人ですので、
それと符合するのですが、感想をどう書いていいか迷います。
著者の市川さんは大企業のエンジニアです。
幼少の頃から書に親しみ、ついに本を出してしまったのです。
それで贈ってくれたのですが、実に不思議な本なのです。
市川さんと知り合ってかなりたちます。
企業変革の提案を目指すエンジニアの研究会で、彼が選んだテーマが水琴窟です。
日本庭園にある、水滴により琴のような音が発生する仕掛けです。
実に澄んだ音が響きます。それを社内に着けたらどうかというのです。
とてもいい提案だったと思いますが、実現はしなかったようです。
湯島のオープンサロンにも何回か来ました。
生き方において個性的なのです。一度会ったら忘れられません。
さて本の話です。
構成そのものが、そして編集そのもの、文章そのものが、あまり読者を意識していないのです。
最初は「大学合格体験記」ですが、その文章を書いたのが18歳、まさに受験の体験をしたその時なのです。
そしてそれに続いて、「今振り返る大学受験生時代」という文章が続きます。
よくあるパターンではないかと思うでしょうが、内容が不思議なのです。
自分用のメモをそのまま集めたような内容なのです。
ところが、それが奇妙に面白いのです。
それに続けて、23歳の時に書いた「科学者の倣(おご)り」なる小論が出てきます。
そこになんと、こんな文章が出てきます。
「有と無は同じことである」。
そしてそれがきちんと証明されているのです。
そして次第に、東洋学の話に移ります。
そのあたりから書が出てきます。
書家 手島右郷の「崩壊」の写真が登場し、文字が実体を表現できることが語られます。
こんなふうにまさに著者の人生録なのですが、一貫した読み物にはなっておらずに、
ひとりごとのようにさまざまなことが語られています。
いや語るというよりも、いろいろな場面で書かれた手紙や小論、あるいは書が展示されていると言っていいかもしれません。
最後に雑記と題して3つの章があります。
京都見聞録と旅行記と人生のテーマです。
その題につられて読むと肩透かしを食らった気がします。
まあ、こういう風に書いてくると、わけの分からない本のように思うでしょうが、実際にわけのわからない本なのです。
自分の備忘録ではないかという気がして途中で読むのを止めようとしたのですが、
何となく引き込まれて結局、最後まで読んでしまいました。
そして読んでしまうと実に不思議なのですが、市川さんのメッセージが伝わってきたのです。
はじめに、で彼はこう書いています。
私は学歴からすれば(途中省略)京都大学大学院機械工学研究科修士課程卒、
その後、エンジニアになる。と言えば、世間ではエリート的な存在かもしれない。
が、私がこれだけの世界しか知らなかったら、おそらく何か怪しい団体に入っていたか、
挫折して、どこかで「のたれ死」にしていたかどちらかだったと思う。
私の人生を2倍以上面白く豊かにしてくれたのが書道およびそれを取り巻く世界との出会いだった。
この本を読んで市川さんのことがようやくわかりだしました。
念のためにいえば、書に関してはいろいろと面白い話が出てきますし、教えられることも少なくありません。
市川さんが「書」を通じて得た、たくさんの「宝物」からも学ぶことは少なくありません。
不思議な本です。
みなさんにお勧めすべきかどうか迷いますが、
まぁ、こういう本のつくりかたもあるということで紹介しておきます。
みなさんも、ご自分の本をつくってみませんか。
市川さんは1月の16日から豊田市の美術館松欅堂で個展を開催しますが、
そこにいくと市川さんに会えるかもしれません。
不思議な人です。
会ったらよろしくお伝えください。
■「茶をたのしむ」
監修一条真也 現代書林 2007
一条さんの監修で始まった「日本人の癒し」シリーズの1冊目です。
副題に「ハートフルティーのすすめ」とあるように、
一条さんが目指す「ハートフル・ソサエティ」に向けてのガイドブックと言ってもいいでしょう。
序文に一条さんが「茶の大いなる慈悲」を書かれていますが、
一条さんらしいパースペクティブをもった示唆に富む文章です。
一条さんはコーヒーも大好きなのですが、こう書いています。
コーヒーが意識を「外」に向かわせる飲み物なら、緑茶は「内」へと向かわせます。
こうも言います。
(理性の飲み物であるコーヒーとは違い)緑茶は「理性」の飲み物ではありません。
むしろ、「理性」を解体して「瞑想」へと向かわせる力を持っています。
茶室には「平和」と「平等」が凝縮されていると一条さんはいいます。
そこまではそうだよなと読み進められますが、一条さんはそこでは止まりません
さらに、茶室とはあらゆる宗教が共生する場所だと続けます。
手水鉢は神道、掛軸は仏教、作法は儒教、方角方位は道教、袱紗はキリスト教を象徴しているというのです。
宗教への造詣に深い一条さんらしい話です。
一期一会という究極の人間関係を生み出すのもお茶だといいます。
また日本では、
「寿司屋でも蕎麦屋でも日本料理店でも、店に入ると一杯のお茶が出される。もちろん無料で、いくらおかわりしてもタダ」
ということに大きな意味を読み取っています。
私自身も、そうした中にこそ、日本人の生き方や日本社会の文化の本質があるように思っています。
まさに一条さんがライフワークにしているホスピタリティの本質が含意されています。
とても短い文章の中に、たくさんの示唆が込められています。
茶の歴史や効用、入れ方や種類などの紹介もあります。
長年お茶の製造販売に取り組んでいる丸島園の若い経営者や日本茶インストラクターとの対談もあります。
ふだん何気なく飲んでいるお茶が秘めている大きなメッセージを改めて考えさせられる好著です。
このシリーズはこれから「花」や「旅館」が計画されているようです。
一条さんが創りだす、ハートフルライフの世界が育っていくのが楽しみです。
■「編集者
国木田独歩の時代」
黒岩比佐子 角川選書 1700円(税別)
黒岩さんが2年がかりで取り組んでいた本が完成しました。
今回は国木田独歩です。
但し、黒岩さんの関心は、作家としての独歩ではなく、ジャーナリスト・編集者としての独歩です。
実にたくさんの新しい発見があります。
黒岩さんからの手紙の一部を引用させてもらいます。
明治の日露戦争期の前後に、編集長として数多くの雑誌を創刊し、
その後は自ら「独歩杜」 を興して、特色のあるグラフィックな雑誌を発行し続けた独歩。
調べるにつれて思いがけない事実が次々にわかってきて、
独歩とその周囲の人たちに惹きつけられることになりました。
しかし、「独歩社」は破産という鈷末を竣えることになり、
その一年余りのちに独歩は36歳で亡くなっています。
彼の起伏に富んだ人生の大半は、情熱あふれる編集者として費やされたのでした。
現在、ほとんど忘れられている独歩が手がけた雑誌や「独歩杜」について、
本書をきっかけに知っていただければ、これほど光栄なことはありません。
ちょうど来年は国木田独歩没後百年の紀念の年です。
その直前に本書を刊行できたことを、心からうれく思っています。
独歩の実に魅力的な生き方が、生き生きと描かれています。
私は途中2回ほど涙が出るほどでした。
しかし、それ以上に興味を持ったのは、黒岩さんらしい徹底的な調査によるさまざまな発見です。
それも今の時代にも通ずるメッセージ性を持ったものが少なくありません。
時代が捨ててきた社会の文化や人間的な生き方も思い出させてくれます。
国木田独歩に関しては、私には自然主義作家ということと「武蔵野」しか知らなかったのですが、
本書を読んで、独歩の生き方にこそ大きなメッセージがあることに気づきました。
社会を見る目も共感できます。
まさに黒岩さんが言うように、編集者にしてジャーナリストなのです。
ちょっと一般の人には敬遠されそうな書名ですが、
もし働き方に悩んでいる人は231頁にある独歩の手紙を読んでみてください。
元気がもらえます。
その前にある「独歩社は自由の国」のあたりも示唆に富んでいます。
格差社会に憤慨している人は、212頁の底辺社会ルポルタージュへの独歩の指摘を読んでください。
アイデアに枯渇している人は、独歩のアイデアと実践力に刺激を受けてください。
さまざまな挑戦をしてきた独歩の事業戦力には刺激を受けるはずです。
明治という時代、あるいは日本の社会に育てられてきたもの、などを知る上でも興味ある材料がたくさん書かれています。
いろいろとご紹介したいところはあるのですが、中途半端な紹介よりも読んでもらうのが一番です。
文章はとても読みやすいので気楽に読めますし、なかには「謎解き」もあります。
「謎の女写真師」の正体を見事に解明してくれるのです。
前半は黒岩さんらしくややディテールが豊か過ぎるので、慣れていない人はちょっと疲れるかもしれませんが、
それが後半の面白さにつながっていきますので我慢してください。
後半はきっと引き込まれていきます。
これが黒岩スタイルなのです。
私も、前半を読んだ後、少し休んで読もうと思っていたにもかかわらず、
後半に入った途端に止められなくなり、最後まで読んでしまいました。
最後に、なぜか黒岩さんはこう書いています。
ジャーナリズムと戦争の関係は、現代に生きる私たちにとっても重要なテーマになっている。
未来を見つめるだけではなく、忘却されている過去をふり返ることも必要ではないか。
改めていま、そう思わずにはいられない。
私も本書を読んで、改めてそう思いました。
仕事にはすぐには役立たないかもしれませんが、お薦めします。
■「わが人生の「八美道」」
佐久間進 現代書林 1000円(税別)
佐久間進さんは、このコーナーによく登場する佐久間庸和(一条真也)さんの父上です。
この度、旭日小綬章を受賞された記念に、ご自身の生き方を振り返り、それを「八美道」としてまとめたのが本書です。
とてもコンパクト(ソフトカバーの新書版)で、気持ちの落ち着く本です。
というのも、内容は「こころにしみこむ温かい言葉と、こころを癒す珠玉の写真」で構成されているからです。
写真は著者の友人の、沖縄の写真家、安田淳夫さんの沖縄の写真です。
その写真に添えるような形で、著者独自の「八美道」が書かれ、その合間にホッとするメッセージが書かれています。
読む、というよりも、眺めながら考える、というような本です。
たとえば、こんな文章が出てきます。
年をとったら、
ひとつ、ひとつ、捨てていくこと。
それしかない。
それがいい、
またこんなのもあります。
ありがとう、が一番
どこにでも
だれにでも
ありがとう
ありがとうの数だけ
あなたは幸せになれるのだから
著者は、日本にホスピタリティ産業の草分けの一人です。
10年以上前に北九州市で始まったホスピタリティ運動のシンポジウムに参加させてもらった時にお会いしましたが、その時は北九州市観光協会の会長でした。
実に壮大な構想力をお持ちで刺激をもらいましたが、その縁で私と一条真也さんとの付き合いも始まりました。
最近は一条さんの本ばかり読ませてもらっていましたが、今回は久しぶりに佐久間進さんの本です。
本の最後に、「ホスピタリティ産業の確立を目指して」という小論が載っています。
短いものですが、とても示唆に富んでいます。
たとえば、「ホスピタリティとは美しさ」と書いています。
単なる「おもてなし」ではなく、もう一歩踏み込んで「心が入る」=「美しさが出る」、これが真のホスピタリティだというのです。
美しさといえば、佐久間さんは、小笠原流礼法にも通じており、現在は日本儀礼文化協会の会長でもあります。
佐久間さんのホスピタリティ論をいつか本にしてほしいと思っていますが、
この本の行間にはそうしたホスピタリティの本質が込められているようにも思います。
いつも携行して、ちょっとした時間ができた時に好きなページを開いてみると、きっと元気と知恵をもらえるでしょう。
そんな本です。
本書の最後に、こんな文章が書かれています。
求道とは、自分をどこまで高められるか。
その挑戦が、私の人生目標です。
疲れた企業人の皆さんに、特にお薦めします。
■「CSRイニシアチブ」
日本経営倫理学会CSRイニシアチブ委員会 日本規格協会 2600円
CSR(企業の社会的責任)は古くて新しい問題ですが、いまや企業にとっては存続をかけた戦略的な課題になってきています。
しかし、言葉の広がりのわりには実体はかなり曖昧のまま、形式的な取り組みに終始しているケースが少なくないように思います。
私にとっては、この問題は「経営論」というよりも「企業論」だと考えていますので、昨今の取り組みにはむしろ大きな不信感を持っていますが、経営論としてのCSRももっと真剣に取り組まれるべきだと思います。
CSRは大企業の道楽やイメージ戦力ではなく、まさに業績に直結する問題だからです。
日本経営倫理学会では、すでに2年前に、企業がCSRを進めていく上での羅針盤となる、経営理念、行動憲章、行動基準を「CSRイニシアチブ」としてまとめ、発表しています。
本書は、その実践的なガイドブックです。
その具体的な展開を、各社の事例もふんだんに紹介しながら、ら実践的に解説してくれています。
体系的な項目立てを、各項目見開き2ページというスタイルでまとめていますので、関心に応じてどこからでも気楽の読めるというCSR事典でもあります。
編者の一人でもある清水正道さんは、「おわりに」でこう書いています。
効果的なCSRコミュニケーションとは、相手のステークホルダーの方々と我が社の人々とが、大所高所から肩書き付きで一方的に伝えるようなものではない。
できるだけ同じ目線で、何度でも繰り返しメッセージを伝え、反応を開き考え、改善のための行動を行い、その成果をまた伝えていく。
いわば、人と人との循環的な相互作用なのである。
同感です。
CSRとは、企業の存立基盤としての社会とのコラボレーション活動なのだと思います。
本書を読むと、そのコラボレーションの切り口が見つかるかもしれません。
一条さんの最新作です。
副題に「人生の糧になる101冊の本」とありますが、
30年にわたって、人の生き方、あり方を追及してきた到知出版社の書籍の中から、
101冊の本を簡潔に紹介したブックガイドです。
人間学というとなにやら難しく聞こえますが、一条さんは人間学について、こう書いています。
人間学とは、人間がいかに心ゆたかに生き生きと生きていくかを考えることである。
だから、人間学は楽しいし、面白い。
なぜなら、わたしたちは人間だからだ。
人間にとって一番面白いものは人間に決まっているではないか。
全く同感です。
もっともこの本が主に想定しているのは企業の経営者や経営幹部です。
章立ても、「帝王学入門」「先人に学ぶ」「経営の王道」「心ゆたかに生きる」「人間らしく生きる」「言葉の宝石箱」となっています。
1冊2ページで構成されていますので、気楽に読めます。
一条さんらしいガイドになっていますので、わかりやすく読みやすいです。
企業の経営幹部の皆さんには、人間学を考えるためのガイドブックになるでしょう。
■「仏教への旅
日本・アメリカ編」
五木寛之 講談社 1700円
「仏教への旅」は何回か取りあげたので、シリーズ最終巻の「日本・アメリカ編」も紹介させてもらいます。
本書のあとがきで書かれているように、私の友人の黒岩さんが関わっていますので。
本書では、親鸞と他力と9.11を通して、新しい仏教の可能性がメッセージされています。
最近、あまり本を読む気力がなくなっていたのですが、文章に勢いがあり、今回も一気に読めました。
いつもながら安心して受け入れられる示唆もたくさん受け取りましたが、
それに加えて、現代社会に向けての強い憤りを行間に感じてしまったのは、私の現在の心境のせいかもしれません。
9.11事件の捉え方も、とても共感できました。
ニューヨークにホームレスがいなくなっていたことに、
「権力を握った為政者が本気で何かをやろうとすれば、どんなことでも可能にしてしまのだなと、つくづく痛感したものである」
というところを読んで、9,11事件の現場で五木さんが何を見てきたか、何を感じたかを勝手に想像してしまいました。
また息子を事件で亡くした母親(アデールさん)が、
その後のアメリカの動きのなかで、「私たちアメリカ人も同じことをしているのではないか」と思い、
アフガンの現地に行き、平和の活動に取り組んでいくという話は、
まさにマルチチュードの世界の広がりを示唆する話です。
他力や悪人正機の話も面白いですが、
そうしたことが現実の生活と政治と絡み合いながら語られている本書から、
時代を見る目や時代を生きる知恵がたくさんもらえます。
いつもながら、とても読みやすいです。
読んだ後、このシリーズは日本の仏教界への問題提起の本ではないかという気がしてきました。
仏教の新しい可能性もたくさん取り上げられていますが、
日本の仏教界がこうした問題提起を受けて、自らのビジョンとミッションを広く社会に発信し、動き出してほしいと思います。
できれば、五木さんにも、問題提起だけで終わるのではなく、
仏教界の人たちと一緒に、実践に向けての新しい動きを起こしてほしいと思います。
次をクリックするとコモンズ書店を通してアマゾンから本書を購入できます。
「無所有」はなんと3冊も売れてしまいました。
■「無所有」
法頂 東方出版 2001年 1600円
今回は私の知人ではない人の本の紹介です。
妻が1か月前に亡くなりました。
以来、本を読む気力を失っていましたが、
以前、五木寛之さんの「仏教への旅」を読んで、気になっていた本がありました。
亡くなった妻と、毎朝、心を通わせあうなかで、なぜかこの本が思い出されました。
そこで読んでみました。
20年前(会社を辞めた前後)から妻と話していた、
私が目指している生き方がそこにとても具体的に示唆されていました。
驚きました。
私は、目指すだけで実行にはたどりついていませんが、
本書に書かれているほとんどすべてが、私の思いに重なります。
この本の原著が書かれたのは1970年代はじめです。
今から30年以上前ですが、その頃に本書に出会っていたら、私の人生は大きく変わっていたように思います。
著者の法頂は、韓国の僧で、「華厳経」と「星の王子さま」が愛読書だそうです。
生活の基本信条は「本来無一物」。
法頂は、何かを持つということは、一方では何かに囚われるということだといいます。
そして、そのことに気づいた。法頂は、こう心に決めたそうです。
「その時から、私は1日に一つずつ自分をしばりつけている物を捨てていかなければならないと心に誓った」。
そして、実践されます。
本書は、その法頂が日々の生活の中で見聞し感じたことを書き集めた随筆集です。
とても読みやすいです。
感動的な挿話も少なくありません。
泥棒の被害を受けた話がいくつか出てきますが、実に共感します。
一人でも多くの人に読んでもらいたくて、紹介させてもらいました。
きっと生き方に、新しい視点を加えてくれると思います。
書店では見つかりませんが、アマゾンで購入できます。
コモンズ書店を通して購入してもらえるとうれしいです。
ここをクリックするとそれができます。
■『「日本国民発」の平和学』
川本兼 明石書店 2600円(税別)
平和をライフワークにしている川本兼さんの最新作です。
本書は、川本平和理論の集大成ともいえますが、同時にいまの日本の状況を踏まえた「警告の書」でもあります。
しかも昨今の平和への取り組みに対しても、なぜそれが奏功していないのか、川本さん独自の視点で理論化しています。
若者を意識して書かれていますが、論旨明快で、とても説得力があります。
若者をだめにしてしまった、私たち世代も読みたい本です。
川本さんは「平和」を「民衆の戦争の苦しみからの解放が基本的人権として保障されている状態」と定義しています。
この定義には、実にさまざまなことが含意されています。
そうした平和を実現するためにどうしたらいいか。
それは本書を読んでください。
これまでの多くの「平和関係の書」とは違います。
目線が常に生活者個人にあるのです。
川本さんはいくつかの具体的な概念を提起します。
たとえば基本的人権としての「平和権」、そして「民衆の非武装権」。
これまでの平和学からは出てこない発想です。
「民衆の非武装権」とは、民衆が国家の兵員になることを拒否する権利です。
民衆による暴力を禁止し、暴力を独占することによって、近代国家は権力の基盤を確立しましたが、
それは同時に「国民を暴力に狩り出す権利」の獲得でもありました。
そのため、これまでの平和理論の中では「民衆の武装権」が問題になりました。
民衆が圧制からの自由を求めて、立ち上がる権利です。
その典型的なものが市民革命ですが、川本さんはそうした「民衆の武装権」はもはや必要なくなったといいます。
むしろそうした武装権は国家に組み込まれてしまい、実質的には国家に対する兵役義務に転化してしまったというのです。
国家による暴力行使の主体は国民です。
国家が戦争を遂行できるのは、兵員としての国民を自由に暴力遂行パワーとして使えるからです。
ブッシュや小泉が戦争をするわけではなく、現地で戦いを担うのは兵隊や自衛隊員です。
しかも彼らは原則として戦場で人を殺すことも含めた暴力の行使を拒否することは出来ないのです。
そこでは「平和のために人を殺傷する」というおかしなことが起こります。
そこで、国家による暴力行使のために強制されることを拒否する権利として、非武装権が重要になってくるというわけです。
これはガンジーの非暴力主義とも違います。
この非武装権は川本平和論のキーワードの一つですが、
こうしたいくつかの重要な概念が私たちの生活の視点で語られているのです。
そして、日本人の貴重な戦争体験を踏まえて、平和への革命をスタートさせようと呼びかけています。
その第一歩は、「戦争ができる国家」に制約を加えることだといいます。
具体的には、新しい平和憲法の制定です。
この点に関しては、今の日本の状況は全く反対の方向を向いており、
戦争をしやすくしようと多くの政治家や経済人は考えていますし、多くの国民もまたそれを支持しています。
川本さんは、そうした状況を知っていればこそ、あえて新しい平和学を提唱しているわけです。
ちなみに、川本さんは新しい平和憲法も起案しています。
これに関してはすでに別著「自分で書こう!日本国憲法改正案」を書いていますが、本書にも川本平和憲法案が掲載されています。
在野の研究者の新しい平和論。ぜひ多くの人に読んでほしいと思います。
川本さんがこれまで出版された本も、併せてお読みください。
もし著者と話し合いたいという方がいたらお知らせください。
川本さんをご紹介します。
5人以上集まれば、川本さんをお呼びして話し合いの場をつくるようにします。
いま「平和」の問題をしっかりと考えておかなければ、
この先100年、私たちはたぶん平和を手に入れることはないのではないかと私は思っています。
そうならないようにするのが、日本人のミッションではないかと思っています。
本書を読んで、平和についてぜひ考えてみてください。
■「仏教への旅 ブータン編」
(五木寛之 講談社 1700円)
同じシリーズの朝鮮半島編を紹介した関係もあって、ブータン編も紹介します。
この本づくりには、黒岩比佐子さんが深く関わっているからです。
もちろんブータンも五木さんと一緒に歩かれてきました。
黒岩さんはフリーのノンフィクションライターですが、
本書の「あとがきにかえて」で五木さんご自身がお書きになっているように、五木さんの著作にこの数年関わってきました。
これまで一度も紹介することはありませんでしたが、今回は紹介させてもらいます。
というのも、実は本書を贈ってもらってからしばらく読む時間がなかったのですが、
昨夜、真夜中に目が覚めしまったので眠気を呼び起こそうと読み出したら、引き込まれてしまって、ついに読み明かしてしまったのです。
私が目指す社会のビジョンをそこに感じたからです。
そこでちょっと寝不足で頭が整理されていないのですが、
感動が薄れないうちに、特に刺激を受けた2つのことを書いておくことにしました。
最初は輪廻転生とつながりの話です。
ブータン仏教の基本には輪廻転生思想がありますから、死者を閉じ込める墓もなく、先祖供養も行わないようです。
その延長に「つながり」が出てきます。
業と縁起によって、すべての生きるものはつながっていきます。
輪廻転生という時間を超えた縦のつながりが、いま現在の生命のつながりを意識させることになります。
すべての人、すべての生き物が、時空を超えてつながっていくわけです。
そこから出てくるのは、「みんなが幸せでなければ本当に自分の幸せはない」という発想です。
まさに私が目指す、だれもが住みやすい社会です。
チベットやブータンにある化身の考えは、こうしたことから考えると納得できますし、
家族のあり方、家族と社会のあり方にも私たちの発想とは全く違った捉え方があることを教えてくれます。
そして、そのことはブータンが取り組んでいる「国民総幸福量(GNH:Gross
National Happiness)」のテーマにつながっていきます。
これに関しては、本書をぜひ読んでください。
国民一人ひとりまでがGNP基準で考えるようになってしまった日本と、
国王までもが一人ひとりの生活のGNH基準で考えるブータン。
この違いには、歴史の岐路が含意されています。
ブータンにも近代化の波が押し寄せてきています。
今年の新春のテレビで、五木さんと塩野七生さんの対談がありました。
そこでもブータンの国民総幸福量が話題になり、
塩野さんが、一度、物質的生活を知ってしまえば、もはや戻れないと不安を表明されましたが、
五木さんは新しい生き方だと主張されていました。
私は五木さんに共感します。
ブータンの国民総幸福量の実験が、歴史を変えていくことを期待します。
その可能性を最初から諦めることはしたくはありません。
現地で体験されてきた黒岩さんも五木さんも、日本の仏教とブータン仏教は違うといいますが、
本書を読んで、私は考え方においてほとんど同じではないかと思いました。
むしろ私たちが忘れたり、気づかなくなってきた日本社会の古層が、そこに感じられます。
私の思い違いかもしれませんが。
いずれにしろ、キリスト教とイスラム教の対立に振り回される状況を変えるためにも、
仏教は大きな役割を果たせるのではないかと思います。
あんまり本書の紹介にはなりませんでしたが、ともかく示唆に富んでいます。
自分の生き方へのたくさんのヒントも得られます。
読みやすい本ですので、ぜひお薦めします。
■「共済事業と日本社会」
押尾直志監修 共済研究会編 保険毎日新聞社 1800円
いま、人々の助け合いである共済や互助会が存続の危機に立たされている。
改定された保険業法の中身が知られるにつれ、各種団体の内外から対策を求める運動が起こってきた。
共済を守ることで自らの生活と仕事、地域社会を守ろうとする人々が、組織をこえて手をつなごうとしている。
本書の出版は、共済事業が全国の職域、地域に広く根づいて国民の生活を支えている役割を伝え、
保険業法改定による共済規制が何をもたらすかといぅ問題に対して、
正確な認識を広く社会に訴えようとするものである。
本書の「あとがき」の書き出しの文章です。
悪徳保険業者を規制するはずの保険業法改定が、日本の古来の文化でもあり、いま再び見直されだしている共済文化を壊そうとしていることに関しては、これまでも何回か書いてきました。
本書は、そうしたことに危機感を強めて活動を開始した共済研究会のメンバーが緊急出版したものです。
さまざまな実績を重ねてきている現場からの報告も含めて、共済文化の現実と意義が語られています。
しかも、ただ語られているだけではなく、そこに日本社会の未来に向けての著者たちの深い思いがにじみでています。
単なる「共済事業」の本ではなく、経済主義一本やりの昨今の風潮への異議申し立てとそれに変わる新しい社会のあり方につながる提言などが込められた、社会変革の書です。
そして、私たちの社会が暮らしの中で育ててきた、支え合いの知恵を、改めて思い出させてくれる書でもあります。
ぜひとも多くの人に読んでほしい本です。
本の内容は目次から読み取ってください。
論考も事例も多岐にわたっていますが、何よりも、それぞれの現場に立脚している人たちのコラボレーションの成果であることがすばらしいです。
あとがきでも書かれていますが、この本の出版そのものが、新しい共済文化の予兆を感じさせます。
もうひとつだけ、あとがきから引用させてください。
共済は、人間の生き死に、事故、災害、人生のドラマに根ざしている。
いのちとくらし、仕事と生活、自然そして人間どうしの結びつき、つまりは、社会とリスクの現実に根ざしているのである。
その意味で、日本社会の基本形と歴史的地層・現状を反映し、支えている。
とても共感できます。
私自身も、日本の共済文化の回復を願っている者の一人ですが、
今回の保険業法改定が、共済文化の光を当てたことを、大きなチャンスとして捉えていくことが大切だと思います。
まさに禍転じて福となす、です。
そのためにも、ちょっと硬い本ではありますが、できるだけ多くの人たちに読んでほしい本です。
また関心のある方は、ぜひ共済研究会にもご参加ください。
T.共済規制の経過と内容
1.共済事業の今日的意義と法規制問題
2.日米の保険マーケット拡大と共済規制
3.共済事業の歴史と共済規制の歴史
4.共済法の現状と課題
U.共済事業の果たしている役割と課題
1.共済事業の全体像
2.協同組合共済の果たしている役割と課題
3.共済の経営問題と法規制
4.自主共済の果たしている役割と課題
5.労働組合共済の果たしている役割と課題
6.無認可共済の論議と連合の取り組み
7.PTAの「安全互助会」の果たしている役割と課題
8.知的障害者の「互助会」の果たしている役割と課題
9.労協連のCC共済の果たしている役割と課題
10.ヨーロッパにおける共済組織の位置づけと現状
資料および解説
保険業法改正問題の経過と背景資料
ちなみに、「資料および解説:保険業法改正問題の経過と背景資料」は岩川さんの力作ですが、これを読むだけでも、いろいろなことが見えてくるはずです。
■「龍馬とカエサル」
(一条真也 三五館 1400円)
一条さんの今度の新著は「ハートフル・リーダーシップ」論です。
龍馬とカエサルという、魅力的な人物に生き方を題材にして、人間的魅力とは何かを縦横に語っています。
実は私はまだ完読していません。
このコーナーでは必ず読み終えた上で紹介させてもらっていますが、今回は初めての例外です。
安直に通読する本ではないと考えたのです。
いま毎日10頁ずつ読んでいます。
2頁単位でまとめられているので、とても読みやすいのですが、その2ページに実にたくさんの示唆が込められています。
ですから、むしろゆっくりと読みながら、立ち止まって自分の生き方を考えるのがよいと考えたのです。
いろいろと考えさせられることが多いです。
読みながら考える本なのです。
全体は4つに分けられています。
「リーダーの理想」「リーダーの資質」「リーダーの使命」「リーダーの条件」です。
全体を流れるのは、龍馬とカエサルへの著者の想いです。
一条さんの著作の基本コンセプトのひとつは「ハートフル」ですが、
この2人はまさにそのコンセプトを体現している「ハートフル・リーダー」なのです。
本書の冒頭で、著者はこう書いています。
リーダーとはまず、人を導く存在であり、それゆえ人を動かす存在であると言える。
では、どうやって人を動かすのか。それは、その人の心を動かすしかない。
ならば、どうやって人の心を動かすのか。
「人の心はお金で買える」と言った人物がいたけれども、もちろん、人の心はお金では買えない。
人の心を動かすことができるのは、人の心だけである。
本書では、徹底的に「心」に焦点を当てて、リーダーシップについて考えてみた。
本書は、一条さんの平成心学三部作のひとつ、「孔子とドラッカー 〜 ハートフル・マネジメント」の続編として書かれています。
孔子やドラッカーが平成心学における「知」の部分の具現者なら、龍馬やカエサルは「行」の部分の具現者だというわけです。
昨今の企業はさまざまな病理をかかえていますが、それは「心」を失ってしまったからだと思います。
企業が「心」を取り戻すには、企業のリーダーたち(経営者に限りません)が、自らの心を呼び戻さなくてはいけません。
一条さんの平成心学シリーズに私が共感している理由の一つです。
具体的な事例もふんだんに出てきて、
88項目の小見出しも示唆に富んでいて、目次を見るだけでも読みたくなってきます。
企業の経営者や管理者にはぜひともお薦めしたい1冊ですが、
自分の生き方をちょっと振り返ってみたいと思う人であれば、だれにでもお薦めしたいと思います。
そして、ぜひとも、読みながら考えてみてください。
一条さんの関連著作もぜひどうぞ。
http://www.ichijyo-shinya.com/books.html
■「こころの通う対話法」
浅野良雄 鰍ワぐまぐ 700円(送料込み)
対話法研究所の浅野良雄さんが、自らが開発された「対話法」のテキストをオンデマンド出版されました。
このコーナーでも以前、ご紹介した『輝いて生きる』(文芸社)の第2部を土台にしていますが、その後の実践を踏まえて、内容はさらにわかりやすく、かつ実践的になっています。持ち運びにも便利な小冊子スタイルなのもうれしいです。
詳しくは浅野さんの対話法研究所のホームページをご覧ください。
オンデマンド出版なので書店などでは購入できませんが、ホームページには申し込み方法なども書かれています。
本書の「はじめに」で、浅野さんは対話法の概略をこう書いています。
対話法は、「自分の考えや気持ちを言う前に、相手が言いたいことの要点を、相手に言葉で確かめる」ことを原則にしています。日常の会話のなかで、必要なときに、この原則を守ることにより、傾聴と同様、誤解を防いだり、信頼関係をはぐくむはたらきがあります。
「対話法」の原則の後半の部分が、従来の傾聴に相当するのですが、「対話法」では、この概念と技法を、新たに「確認型応答」と名づけました。傾聴という呼び方では、「耳を傾けて聞いた」あとの「応答」の重要性がぼやけてしまうからです。このように、(対話法)では、対話の原則を明確にしたり、新しい用語を取り入れたことにより、傾聴とくらべて技法の理解と習得が容易になりました。
浅野さんは各地で「対話法」の研修会やワークショップを展開していますが、本書では、一般の参加者を対象として行なった研修会の様子を再現する形で、「対話法」が実践的に説明されていますので、研修会に参加したような気分で、すいすいと読んでいけます。
基本さえマスターすれば、誰でもが自分のものにできるのが、「対話法」の特徴です。
浅野さんは、この本を読んだ人たちによって「対話法」が全国各地に広がり、快適な人間関係に裏打ちされた、安全で住みやすい社会が実現することを願っています。
コーヒー2杯分で購入できますので、ぜひみなさんもお読みください。
それによって、きっと皆さんの周辺は気持ちの良い社会になっていくはずです。
■「故郷の親が老いたとき 46の遠距離介護ストーリー」
(太田差惠子 中央法規出版
1680円)
最近、「遠距離介護」という言葉をよく聞くようになりました。
核家族社会のなかで高齢化が進むと、親の介護問題は「非日常的な事件」になりますが、
その親との生活場所が遠く離れていると、さらに問題は複雑化します。
故郷に住む親の介護のために、会社を辞めて郷里に戻った友人が、私にも何人かいますし、
働きながら週末は故郷の実家に帰る生活をしている知人もいます。
企業や行政にとっても、「遠距離介護」は真剣に考えなければならないテーマになってきています。
この「遠距離介護」という言葉を生み出したのが、本書の著者の太田さんです。
1998年、「「遠距離介護」の上手なやり方」(かんき出版)を出版し、
離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ(NPO法人パオッコの前身)を結成、
以来、太田さんは遠距離介護に取り組むたくさんの人たちと会い続けてきています。
本書は、いわばその集大成で、
46の遠距離介護の事例を紹介しながら、遠距離介護の実像を具体的に鳥瞰させてくれます。
本書の帯に書かれてあるように、
遠距離介護をしている人、離れて暮らす親の老後が気になる人にはとても参考になる内容ですが、
それ以外の人たちにもぜひ読んでほしい本です。
故郷の親が老いる前に、です。
本書の事例からは、遠距離介護という問題を超えて、
私たちの生き方やいまの社会のあり方に対するさまざまなメッセージが伝わってきます。
私たちのように、すでに親を見送った夫婦にとっても、考えさせられることがたくさんあります。
この本を読んだら、生き方が変わるかもしれません。
これからの社会に向けての大きなヒントも読み取れます。
親の介護には、その人の生き方や価値観が現出します。
あるいは、それを通して、自らの人生を考える契機になるといってもいいでしょう。
そこで問われるのは、親の介護というよりも、自らの生き方なのです。
しかも、それはいつか立場を変えて、自分にまた戻ってくる問題でもあります。
46の物語は、自らの生き方と重ねて読むと、そのことが実感できるはずです。
「親子介護」の先にある「夫婦介護」の問題を考えるヒントもありそうです。
太田さんは、本書のプロローグで、
「介護」に「遠距離」をくっつけただけのように思われがちだが、私は、それ以上の思いをこめている。
それまでは、介護といえば、食事介助やトイレ介助などの身体的介護が中心にとらえられていたが、
遠距離介護はそれ以外の意味も含めている。
家族がそばにいられないから、いわゆる「介護」が必要となる以前から困ることが生じはじめる。
と書いています。
読み流してしまいそうな、この文章に私は今の社会の本質的な問題を感じます。
そして、遠距離ではなく同居であろうと、実は同じ問題が起こってきているようにも思います。
「介護とはつながりのこと」だと考えている私にとっても、とても考えさせられるメッセージです。
いずれにしろ、「介護」問題はすべての人にとって、必ず何回か体験する問題です。
ぜひとも多くの人に読んでほしい本です。
若い世代にもぜひ読んでほしいと思います。
自らの生き方を考えるヒントがたくさん見つかるはずですから。
■「社協ノ宝もの」へぇ〜、社協ってそういう仕事なんだ!
NPO法人市民活動情報センター・ハンズオン!埼玉 600円
コムケア仲間のハンズオン!埼玉の出版第2弾です。
前作の「私のだいじな場所―公共施設の市民運営を考える」はとても好評でしたが、
本書も建設的な問題提起がたくさん含まれている興味ある内容です。
社協、つまり社会福祉協議会は、地域福祉の主役としてがんばってきましたが、
最近は新たな主役であるNPOとの関係が必ずしもよくなく、場合によっては対立関係さえ起こしているところもあります。
私も最初は、社会福祉協議会の役割はもう終わったなと考えていましたが、
コムケア活動を通して、そこで働く若い職員の情熱に触れているうちに考えが変わってきました。
少なくともこれまで社会福祉協議会が育ててきたネットワークやノウハウは大きな社会資源です。
本書は埼玉県内の社会福祉協議会の職員有志とNPOの関係者が一緒につくった本です。
そのいずれにも私の知人が少なくないのですが、
4年前からじっくりと取り組んできた活動の成果ですので、内容はとても示唆に富んでいます。
なによりもカジュアルに本音で語り合った内容が、読みやすくまとめられているのがうれしいです。
地域福祉はまちづくりそのものですし、私たちの生き方に深くつながっています。
しかし、たとえば社会福祉協議会という名前すら知らない人が少なくありません。
そういう人も含めて、
社会福祉協議会の関係者のみなさん、
さらには社会福祉協議会の現場軽視の風潮に反発している人、
逆にNPOの独善的な姿勢に反発を持っている人、
あるいは気持ちよく暮らせる社会を願っている人、
そんな人たちにぜひ読んでいただきたい小冊子です。
内容は次の通りです。
キラン★その1 うっかり本音座談会──社協ノ仕事って何だ?
キラン★その2 どっぷり旅日記──宝モノを探しに西へ
キラン★その3 ゆっくり昔話──地域福祉ノ原点にもどる
資料編:埼玉県内の社協とNPOの協働に関する調査報告
社協キャラクターコレクション2007という、楽しい特別付録までついています。
書店では購入できませんが、ハンズオン!埼玉に連絡してもらえれば購入できます。
〒330-0063埼玉県さいたま市浦和区高砂2-10-6
メールoffice@hands-on-s.org TEL/FAX
048-834-2052(担当:若尾)
この本がさらに新しい風を起こしていくことを期待しています。
■「自分なりのお別れ」
(一条真也監修 扶桑社 1400円(税別)
一条さんが監修された本です。
詳しい書名は、
『「あの人らしかったね」といわれる 自分なりのお別れ お葬式』
です。
本の帯に書かれているように、いまは、「送られかた」は自分が決められる時代なのです。
監修者の一条さんは、本名、佐久間庸和さんで、このコーナーでも著書を時々紹介させてもらっていますが、
このテーマはまさに一条さんの独断場です。
本書を送ってくれた手紙にこう書かれています。
本書は、葬儀を人間にとっての究極の自己表現としてとらえています。
現代の葬儀におけるあらゆる問題点や疑問点にも広く目を配り、
これから高齢者となってゆく団塊の世代の新しい葬儀スタイルも多数紹介しております。
(略)この本によって、多くの日本人が「死」や「葬」をタブー視せず、
日常的に考えてくれるきっかけになればと願っています。
お葬式を、それも自分のお葬式のスタイルを考えることは、若いときほど、自由に発想できるでしょう。
そして、それは生き方の問題にもつながっていきます。
そういう意味で、私はこの本をぜひ若い世代の人たちに読んでほしいと思いました。
しかし、身近な問題として考えられるのは、私のような世代かもしれません。
最初はちょっと壁があるかもしれませんが、読み出すと、おかしな言い方ですが、楽しくなってきます。
これからの生き方を考える刺激をたくさんもらえるはずです。
一条さんの監修意図は見事に成功しています。
自らの生き方を考えるために、お薦めしたい本です。
■『介護情報Q&A』
(小竹雅子 岩波ブックレット 700円)
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/
コムケア仲間の小竹雅子さんがまとめた、介護情報のわかりやすいブックレットです。
介護保険の基本的なしくみや改正の具体的内容、困ったときの解決方法、関連情報などを、
65の用語にわけて、利用する市民の立場から説明しています。
小竹さんは、市民福祉情報オフィス・ハスカップを主宰され、実に精力的に活躍されています。
そこで集まった情報を、多くのみなさんの「介護のある暮らし」に活用してもらえることを願って、この本をまとめたのです。
とても読みやすく、便利です。
それに小竹さんらしく、極めて実践的です。
本書を20冊以上、まとめて購入されたい方は小竹さんに頼むと便宜を図ってくれます。
私にご連絡ください。
■ギリシア・ローマ文化誌百科(上下)
小林雅夫・松原俊文監訳 原書房 各4300円
小林教授がまた魅力的な本を翻訳され、贈ってきてくれました。
古代世界のパノラマのヴィジュアル版で、実に楽しい本です。
600近い写真が、ていねいな解説と共に載せられていますので、それだけ見ていってもギリシア・ローマ世界を充分に堪能できます。
また単なる通史ではなく、テーマ別にかなり詳しく言及されていますので、新しい発見もたくさんあります。
厚い上下2冊セットなので、実は私も完読していませんが、とてもうれしいのは、写真の解説やコラム、それに関連文献の抄訳がいたるところにあることです。しかも、それらがばらばらにではなくつながりあう形で編集されています。
たとえば、医神アスクレピオスの聖域に立地しているエピタウロスの野外劇場の写真の説明文には、「悲劇によって観客の心にある悩みは「治癒」する」というアリストテレスのカタルシス理論が紹介されていますが、それに関連して、すぐそばにアリストテレスの詩学の抄訳が載っているのです。
ですから、野外劇場と医療とのつながりがしっかりと見えてきます。
私も以前、トルコのベルガモンのアスクレピオン(医療施設)と、その上のアクロポリスにある見事な野外劇場を訪ねてことがありますが、その二つを「メンタルケア」の視点でつなげて考えたことはありませんでした。
アスクレピオンから小高い丘に立つ大劇場は見えるのですが、さらにその後ろにはトラヤヌス神殿が見えたような気もします。
そう考えていくと、アテネのアクロポリスにも、新しい意味を感じとることが出来ます。
そこから、ギリシアの医療とはなんだったのかも想像が広がります。
別のところに書かれている医学の項目の本文に戻って読み出すと、そこにアリストファネスの喜劇「神の福」が抄訳されています。
さらに菜食主義のことまで書かれています。
ベルガモンのアスクレピオンでは、温泉療法や音楽療法の話を聴きましたが、それだけではなく、古代ギリシアの医療は東洋医学につながるホリスティックなものだったことに気づきます。
生活そのものを治療につなげていく中国での体験を、先日、福岡の西川さんからお聞きしたところですが、ギリシアのアスクレピオンでは、そうしたことが行われていたのかもしれません。
そういうふうに、古代世界のパノラマがどんどんと広がっていくのです。
好奇心を膨らませ、その好奇心をかなり満足させてくれるヒントがふんだんに込められている、これが本書の魅力です。
哲学と教育の章も、最近の日本の教育論議に重ねて読んでいくと実に面白いです。
そんなわけで、本書は、読む百科辞書でもあります。
ですから、むしろ通読するのではなく、パッと開いたところから読み出して、索引も活用しながら、前編を自由に飛びながら読むのが、本書には向いているかもしれません。
読書サーフィングが楽しめるわけです。
監訳者の小林教授は、いろいろと身体的な障害をかかえているにもかかわらず、ともかく前向きにいろいろな活動に取り組まれています。
そして奥様が、その小林教授を実にあたたかく支えているように思います。
小林教授はまた、とても人間的なあたたかさをお持ちです。
そうした人柄が、きっと本書にも影響しているはずです。
ちょっと値段が高いですが、存在感のある本書の内容を考えると、それだけの価値のある本です。
パウサニアスジャパンの皆さんや古代世界に関心のある人たち、
そしてちょっと時間が出来始めた団塊シニアの人たちには、ぜひお薦めします。
図書館で借りて読む本ではなく、購入して隣に置いておく本です。
■「知ってビックリ!日本三大宗教のご利益」
一条真也 大和書房だいわ文庫 762円(税別)
一条真也さんの最新作です。
「ユダヤ教 vs キリスト教 vs イスラム教」(だいわ文庫)に続くものですが、今回はvs
ではなく、& でつながれています。
「神道&仏教&儒教」です。
一条さんからの手紙の文章を一部引用させてもらいます。
一神教同士の衝突が人類社会の存続を脅かす現在、わたしたちが目を向けるべきなのは、宗教の持っている寛容性だと思います。
本書で取り上げた神道、仏教、儒教の三宗教はいずれも「情」や「慈悲」や「仁」の精神を重んじた、
つまりは思いやりの心を大切にした宗教であり、
この三宗教が奇跡的に合体を果たした国こそ、わたしたちの日本です。
三宗教はまた、武士道、心学、冠婚葬祭といった子どもたちを生み出し、日本人の心の「かたち」をつくってきました。
そして、一条さんは、こう続けています。
人類の危機を救う秘密は、まさに日本人の宗教生活のなかに潜んでいるという確信の元に本書を書きました。
世界中の人々の心が「&」で満ちたアンドフル・ワールドになることを願って書きました。
書名に違和感がありますが(一条さんも反対したそうですが)、中身はしっかりした本です。
日本の三大宗教は、いうまでもなく「神道・仏教・儒教」ですが、
それらがアンドフルに生み育ててきた世界がわかりやすく描かれていますので、
前著と同じく鳥瞰的な整理をすることができますが、新しい発見もたくさんあるはずです。
なによりも、いつもながらのメッセージ性があるのがいいです。
最後のほうで、石田梅岩の心学が語られていますが、
そこで語られている「心」こそが、神道、仏教、儒教を実践的につなげる要であり、
それが一条さんの主唱しているハートフル・ソサエティにつながることが示唆されています。
先日、一条さんにお会いした時に、心学の話が出ましたが、
きっとそう遠くない時期に石田心学に関する本をまた書くのではないかという予感をもちました。楽しみです。
こうした発展が期待されるメッセージが、本書にはいろいろと込められています。
もう一つ紹介します。
こういう記述があります。
日本において共生した神道・仏教・儒教の三宗教は、冠婚葬祭において合体を果たした。
冠婚葬祭とは何か。
それは、結婚式や葬儀といった人生の二大通過儀礼を中心として、人々の心に共感を生み出す文化装置である。
つまり冠婚葬祭は日本の三大宗教の凝縮した文化であり、
それこそが日本最大の宗教ではないかという意見もあると紹介されています。
一条さん自身は、冠婚葬祭は「宗教」そのものというよりも、「宗遊」とでも呼ぶべきものだと書いていますが、
冠婚葬祭は佐久間さんの独壇場ですので、 この議論の発展は実に楽しみです。
宗遊という概念は、実に示唆に富んでいます。さて、この先が楽しみです。
他にも刺激的なメッセージや発想のヒントがいろいろ込められている本です。
文庫本という手軽な本ですので、気楽に読んでみてください。
■「仏教への旅 朝鮮半島編」
五木寛之 講談社 2007年
このコーナーでは原則として、私の友人知人の著作や友人が関わった書籍を紹介させてもらっていますが、今回は番外編です。
五木寛之さんの「仏教への旅」は全6巻ですが、今回、取り上げるのは3冊目の「朝鮮半島編」です。
この前に出た「インド編」(上下)は、友人の黒岩比佐子さんがインド取材に同行し、構成も担当されたのですが、
今回は黒岩さんの担当ではありません。
以前、黒岩さんが「インド編」を贈ってくださった時に、朝鮮半島編に興味があるとお伝えしたのですが、
そのことを知った編集の方が、私たち夫婦にプレゼントしてくださったのです。
そのお礼を兼ねて、このコーナーで紹介しようと思ったのですが、この間、いろいろあって、読むのが遅れてしまっていたのです。
今朝、早く起きて読ませてもらいました。
読んで、なぜ黒岩さんが私たち夫婦に贈ってくれたのか意味がわかりました。
いまの私たち夫婦の心境にそのままズバッと入ってきました。
黒岩さんに、そして編集者の方に感謝しなければいけません。
本書の紹介をしだすと際限がなさそうです。
五木さんの個人的な話と韓国の仏教事情が、重なるように語られているので、
とても読みやすく、しかも大きな示唆を与えてくれます。
実は韓国の仏教事情や寺院のことを知りたいというのが私の「興味」の内容だったので、もう少し寺院の情景を知りたかったのですが、
読み終えてみると、心象風景的に韓国の寺院が体感できたような気になりました。
本書は、五木さんが育った論山の町にある般若山灌燭寺(アンチョクサ)を訪れるところから始まります。
そこの石造の弥勒仏の写真が本書の後表紙に載っていますが、異形な仏です。
写真を見ているだけでも、涙が出てくるほどにメッセージを送ってくる仏です。
ぜひ書店で、この写真だけでも見てください。
私は、これまでこんなに話しかけてくる仏にお会いしたことがありません。
奈良の勝林院の阿弥陀仏以上です。
韓国の仏教の根底には、華厳の思想「一即多・多即一」と「和諍」の思想があるそうです。
「和諍」とは、さまざまな思想や教えを融合させていこうという姿勢のようです。
おそらく「一即多・多即一」の思想から出てくる姿勢だと思います。
そして、本書の終章は「すべてはつながっている」なのです。
そこで見事に「人を殺してなぜ悪いのか」という、一時話題になった議論への明確な回答も書かれています。
とても共感できますし、納得できます。
華厳には「インドラの網」という寓話が出てきますが、それを思い出しました。
本書にはこれからの生き方を考える上でのたくさんの示唆が込められています。
生き方だけではありません。
インド編と本書との共通点は、インドでも韓国でも仏教が広がり、社会に影響を与えているという動きです。
これは未来を考える上で、大きな示唆を与えてくれます。
しかし、五木さんご自身も書かれているように、インドはヒンズーの国、韓国は儒教の国というイメージが強いです。
その根底で仏教が元気に広がっていることを知ることで、未来への展望は全く変わってくるように思います。
日本の未来を考える上でも、大きな影響があると思います。
しかし、私が本書で大きな元気をもらったのは、五木さんの造語である「只管人生」という言葉です。
いうまでもなく道元の「只管打坐」から創った言葉です。
こんな文章があります。
<ただ生きる>こと、それがいま、私が考えているいちばん大切なことだ。(197頁)
いま、とても深く心に入ってくる言葉です。
おそらく1年前までであれば、頭でしか受け止められない言葉だったでしょうが。
最近、ようやく「生きること」の意味が自分なりに整理できて来ました。
仕事も遊びも、社会活動も、すべては余技でしかないことに気づきました。
19年前に会社を辞めた時に、
「これからは働くでもなく遊ぶでもなく、学ぶでもなく休むでもなく、ただ生きていこう」
と宣言したことの意味が、漸くいま自分の腹に落ちてきました。
女房ともども、いまは生きることを純粋に目的にすることが出来るようになりました。
生きることの哀しさが、最近、心にしみてくるようにもなりました。
その分、歓びもまた実感できるようになりました。
本の紹介のつもりが、なにやら個人的な感想になってしまいましたが、
とても面白かったです。
それにしても、 灌燭寺の弥勒は魅惑的です。
■「団塊世代のミッションビジネス」定年後の社会事業型NPOのすすめ
大川新人編著 日本地域社会研究所 1700円(税別)
コムケア仲間の大川新人さんがまた新著を出しました。
社会に戻ってくる団塊シニアに、これまで蓄積してきた知識や経験を生かして、
地域や社会に役立つ新しい事業を起こしてほしいというエールの書です。
大川さんに関しては、これまでも何回かこのホームページにも登場していますが、
学習院大学卒業後、証券会社に10年間勤務。
その後、多摩大学大学院で、経営情報学修士を取得。
さらに、米国オハイオ州のケース・ウェスタン・リザーブ大学大学院に留学し、非営利組織修士を取得。
帰国後、日本の草の根的なNPOのマネジメントサポートなどに取り組んでいます。
コムケアセンターのサポーターでもあり、
現在はシニアコンサルタントとして、団塊シニアプロジェクトに実際に取り組んでいます。
本書は、昨年、大川さんが中心になって行った事業型NPO起業講座の講演録をベースに、
一緒に講座を受け持ったNPO法人イーエルダーのメンバーの協力を得て、完成した実践の書です。
私も座談会で登場していますが、大川さんの思いを知るものとして、
最初に「序に変えて/団塊世代の新しい舞台が広がりだしています」という小文も寄稿させてもらいました。
このサイトにも掲載しましたので、お読みください。
そして、もし興味を持っていただけたら、本書もお読みください。
本書の目次は次の通りです。
第1章 なぜ、定年退職後にミッションビジネスか
第2章 事業型NPOのすすめ
第3章 NPO法人をつくろう
第4章 NPO法人の事務局運営
第5章 情報通信技術が経営を効率化する
第6章 サービスと顧客満足度を向上させるには
第7章 団塊NPOの成功事例
第8章 団塊世代よ、大志を抱け!(鼎談)
本書の「おわりに」にも告知していますが、
本書の出版を契機にして、出前講座や団塊シニアNPOインターンシップなどのプログラムが始まる予定です。
コムケアセンターとしても全面的に応援していきます。
ご関心のある方は、「団塊世代よ、大志を抱け!事務局」にご連絡ください。
また、講演や研修プログラムもお引き受けできると思います。
なお、団塊シニアプロジェクトを起こすための資金源にするために、
「団塊世代よ、大志を抱け!事務局」でも本書の販売を行います。
少し面倒ですが、上記事務局にご注文いただけるとうれしいです。
「団塊世代よ、大志を抱け!事務局」へのメール
■「挑戦する独創企業−なぜ、この会社はキラリと光るのか!」
浜銀総合研究所経営コンサルティング部編著 プレジデント社 1400円(税別)
私は15年ほど前に書いた「脱構築する企業経営」という雑誌連載記事を、大企業解体の予兆という書き出しで始めました。
産業の主役は、大企業から中小企業へと移るだろうと感じていたのです。
残念ながら、そうはならずに、大企業はますます合併などを通して大規模化しています。
しかし、いま元気な企業は中小企業のような気がします。
大企業組織は人間が思い切り働く場としては制約がありすぎます。
特に時代の変わり目には、主体的に働く社員が働きやすい場でないと、企業は元気にならないのではないかと思います。
実際に最近私が出会う元気な会社は、いずれも大企業とはいえない中小中堅企業が多いのです。
そうした元気企業を20社も集めて、その元気の実態と理由を明らかにしてくれるのが本書です。
単なる事例を集めただけの本ではなく、
長年、中小企業にしっかりと関わってきたプロフェッショナルの目からの評価と解説がついているので、
企業経営に関わる人には絶好の「生きたテキスト」になる本です。
「中小企業の経営者・幹部必読!」と本書の帯に書かれていますが、
私はむしろ大企業の経営幹部の皆さんにこそ読んでもらいたいと思います。
経営の基本は規模によって変わるわけではありません。
本書をまとめた経営コンサルティング部部長の寺本明輝さんとは、長いお付き合いですが、
寺本さんは豊富な知識と情報を踏まえて、実践的な視点でこれまで多くの企業の経営相談に取り組んできた人です。
しかも寺本さんは好奇心が強く、研究熱心な人でもあります。
寺本さんからはこれまでも、日本の中小企業の創意工夫や挑戦意欲のすごさについて、いろいろと刺激的な話を聞かせてもらっていました。
日本の経済を発展させ、支えてきたのは、決して大企業ではなく、中小企業であると確信している私としては、
いつかそれをまとめてほしいと思っていました。
それが漸く実現したのです。
寺本さんは「はしがき」で、「企業経営には必ずドラマがある」と書いています。
本書では独創的な20の優良中小企業に取材し、
それぞれのドラマを紹介するとともに、企業の元気の要因を具体的に解説してくれています。
事例も面白く、示唆に富んでいますが、
それぞれの解説も具体的でわかりやすく、しかも体系的なので、
それを読むうちに経営にとっての大切な視点が自然と学べるようになっています。
このあたりは、豊富な体験と情報をお持ちの寺本さんの独壇場といってもいいでしょう。
ちなみに、独創の源泉として、次の5つの要件が上げられ、それにそった事例が集められているのです。
・ 経営理念とビジョン:大志を抱いて理念を伝え、実行する。
・ 事業の仕組み:事業の仕組みで差別化を実現する。
・ 組織とマネジメント:基本を大切にして経営革新に挑む。
・ 技術と技能:ものづくりの原点に愚直にこだわる。
・ 伝統と革新:変革を恐れず、老舗ブランドを守る。
いずれにも実践例が具体的についていますので、とても納得できます。
浜銀総研が活動の主舞台としている神奈川県だけでも22万を超す中小企業があるそうです。
本書に登場するのは、その1000分の1でしかありません。
すべての中小企業が独創的で元気だというわけではありませんが、
この厳しい経済状況の中で、自らの知恵と努力で経営を持続させていくには、それぞれに独自の実践をしている企業は多いはずです。
大企業と違い、ちょっと失敗したりするとすぐさま倒産してしまうほど、毎日が緊張の連続なのが中小企業です。
そうした実践知からのメッセージは説得力があります。
それに事例に出てくる経営者には、いずれも豊かな表情があるのです。
ですから読んでいて、元気がもらえます。
経営者には人間的な表情がなければいけません。
少しほめすぎてしまったでしょうか。
しかし、企業関係者にはお薦めの書です。
本書よりも詳しく学びたい方は、ぜひ寺本さんのところのコンサルティングを受けてください。
寺本さんの誠実なお人柄は、私が保証します。
寺本さんのブログもこのサイトにリンクしています。
ぜひお読みください。
■「司法改革」
大川真郎 朝日新聞社 2400円(税別)
いま日本の司法制度が大きく変わろうとしています。
一言でいえば、「官の司法」から「民の司法」への転換だそうです。
この活動を熱心に推進してきたのが、日本弁護士連合会(日弁連)です。
CWSプライベートに書きましたが、
その司法改革の山場だった2002年から2004年まで、
日弁連の事務総長を務めたのが、本書の著者の大川さんです。
大川さんと私との関係は、CWSプライベートをお読みください。
日弁連の司法改革への取り組みに関しても、そこに少し書きました。
この本が送られてきた日は、実はまさに私が司法への怒りを強く感じていた日でした。
あまりのタイミングの良さに、早速読ませてもらいました。
ブログにも書きましたが、本書の副題にあるように、
司法改革は「日弁連の長く困難なたたかい」だったようですが、
そこにこそ日本の法曹界の実態が象徴されています。
出版社の表現をかりれば、本書は、
裁判員制度の導入、法科大学院開校と新司法試験、司法支援センターの創設、裁判官・弁護士制度の改善等々、24もの関連法が成立することになった戦後初の司法大改革。
「市民のための司法」を提唱し、先鞭を切って乗り出した日本弁護士連合会(日弁連)が、政府や最高裁・検察と時に対峙し、時に妥協して改革を実現していった過程を、客観的かつ具体的にたどる「昭和・平成司法改革」編年史。
です。
これはとても正確な紹介で、当時の資料や発言などをていねいに引用して、
「司法改革」の経過が客観的かつ具体的に解説されています。
著者の思い込みや押し付けは全くありません。
著者の大川さんの人柄を感じさせます。実に誠実でフェアです。
資料を駆使したドキュメントなので、司法界以外の人にはやや難解で退屈ですが、
内容が極めて誠実ですので、司法に関心のある人はちょっと努力して読む価値があると思います。
内容のあるしっかりした本です。
「司法改革」と言っても、政府や裁判官、あるいは財界の姿勢と日弁連の姿勢とはかなり違うことが、本書を読むとよくわかります。
前者は、「現状の不備なところを直す」。
後者、つまり日弁連は、「すべて国民は、個人として尊重される」(憲法13条)社会をつくるためというのが基本姿勢のようです。
この違いが本書での改革の経過を読むとよく伝わってきます。
司法改革というと、裁判員制度が話題になりがちですが、
法テラスという法律相談の仕組みの充実やロースクールの拡充なども重要です。
「小さな司法」「大きな司法」という言葉も出てきます。
これからの司法を考えていくためのたくさんの材料が、この本には詰まっています。
もちろん、日本ではすでに「司法改革」は議論の段階を終えて、制度的には実践に入っているわけですが、
制度を活かすのは関係者(最大の関係者はもちろん国民です)の意識と行動です。
私たちはもっと司法に関心を持ち、その実態を知る努力をすることが大切です。
その意味で、かなり重い本ではありますが、司法関係者以外の方にもお薦めの本です。
この本をテキストにした学習会も広がると効果的ですね。
ちなみに、本書にはもう一人私の知人が出てきます。
テレビで何回かご一緒した小林完治弁護士です。
テレビに出るタレントのような弁護士は好きにはなれませんが、
小林さんは大川さんと同じように誠実さを感じさせる人です。
おそらくテレビで現を抜かしながら社会をだめにしている弁護士とは全く違う種類の弁護士が、
司法の現実を変えようとがんばっているのでしょう。
そんなことも考えさせられました。
そんなわけで本書はお薦めの本ですが(読もうという覚悟のある人にだけですが)、
私の司法への評価は残念ながら変わりませんでした。
ブログの「司法時評」で書いてきたことは撤回する気にはなれませんでした。
「官の司法から民の司法へ」「市民のための司法」。
それがどういうものか、私にはまだわかりませんが、方向は歓迎できます。
問題は、その中身です。
法は、社会のあり方によって全く変わってきます。
どんな社会を目指すのかによって、法の役割は変わるのではないかと私は思います。
その「どんな社会を目指すのか」という議論が見えてこないのが一番の不満です。
これを法曹界に求めるのは過大期待だといわれそうですが、
法を考えるということはそういうことなのではないかと思います。
よかったら「司法時評」も読んでください。
かなりの暴論集なのですが。
■「ハートフル・カンパニー」
佐久間庸和 三五館 2800円(税別)
今年最初の紹介は、佐久間庸和さんの「ハートフル・カンパニー」です。
著者の佐久間庸和さんのペンネームは、一条真也さんです。
このコーナーにたびたび登場している人です。
その一条さんの「平成心学三部作」の完結編が本書です。
かなり前にいただいていたのですが、いろいろ事情があって、途中で読むのが止まっていたのです。
それに実に読み応えのある本なのです。
前の2冊とは趣がかなり違います。
本書は副題に「サンレーグループの志と挑戦」とあり、著者名もペンネームではなく、本名で出版しています。
サンレーは北九州市に本社を置く、冠婚葬祭を事業ドメインとする会社です。
前にも書きましたが、冠婚葬祭への思いの深さにおいては、サンレー以上の会社はないでしょう。
佐久間さんが構想している冠婚葬祭の意味は、実に広く深いのです。
佐久間さん、つまり一条さんの世界は、
このサイトにリンクしている佐久間さんのホームページを読むと少し理解できるかもしれません。
21世紀に入った2001年、佐久間さんはこの会社の社長に就任しました。
そして社員たちに呼びかけながら、佐久間さんらしい会社づくりに取り組んできました。
その理念や方法は、佐久間さんがこれまで著した様々な書籍に書かれていることです。
つまり佐久間さんは、学んだこと、考えたことを、自らの会社で実践してきたのです。
まさに佐久間さんが目指す知行合一です。
そして見事にサンレーの業績は向上し続けているのです。
本書は、そうしたサンレーの経営実践を、社長として社員に呼びかけていた文章や話の記録を中心にまとめた本です。
時系列で読めることも興味を高めます。ライブ感があります。
なんだ、社長の訓示集かなどと思わないでください。
その種の本で面白い本は皆無に近いのも知っています。
しかし本書に出てくる話は、そのテーマ、語られる話題や情報、語り口のスタイルなど、実に多彩で問題提起的です。
具体的にして、普遍的といってもいいでしょうか。
ボリュームも多いので、なかには飛ばしたくなるような部分もないわけではないのですが、
ところどころに光る言葉や心動かされるメッセージもちりばめられています。
いささか褒めすぎの感もありますが、
これまでの佐久間さんの著書を読んできたものとしてはとても面白く読ませてもらいました。
こういう経営者がもっと増えてきたら、日本の産業界は大きく変わるでしょうね。
会社経営者の方にお勧めの1冊です。
■ 「恋に導かれた観光再生」
中村元 長崎出版 1400円(税別)
「車イスの青年に恋した少女が、
青年に気に入られようと動くたびに奇跡が起きた。
人を動かし、町を動かし、行政を動かし、
とうとう国まで動き出す。」
本書の帯にはこう書かれています。
これは伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの誕生の物語です。
著者は同センターの理事長の中村元さんです。
中村さんとは朝日ニュースターの番組で何回かご一緒しましたが、実に楽しい人なのです。
中村さんのブログもこのホームページにリンクされていますので、ぜひお立ち寄りください。
ちなみに中村さんは水族館にも新しい風を起こした人なのです。
その分野のほうで有名なのですが、今回は違った分野での著作です。
本書の内容は帯の紹介文でおわかりいただけると思いますが、
「バリアフリー」「観光」「まちづくり」「社会変革」「NPO」などのテーマに関心のある方はぜひお読みください。
とても気楽に読める楽しい本ですが、
たくさんのメッセージと提案、あるいはこれから