本の紹介
私の友人たちが書いたり、関わったりした本の紹介です。
ここでは最近のものだけを紹介します。
これまでの一覧表の書名などをクリックすると紹介情報や著者からのメッセージが読めます。
<これまでの紹介分野別一覧>
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(最新の紹介書籍です) |
■涙は世界で一番小さな海(一条真也 三五館 1300円)
涙は「世界で一番小さな海」とは、アンデルセンの言葉だそうです。
その海は、もしかしたら「世界で一番深い海」かもしれません。
私は、2年程前に伴侶を見送りましたが、その体験から、実感としてそう思います。
その深さは、彼岸に届くほどのものです。
それはともかく、本書は、一条さんの「ハートフル」シリーズ、ハートフル・ファンタジー論です。
副題は、「『幸福』と『死』を考える、大人の童話の読み方」とされています。
取り上げられているのは、アンデルセン(「人魚姫」「マッチ売りの少女」)、メーテルリンク(「青い鳥」)、宮沢賢治(「銀河鉄道の夜」)、サン=テグジュペリ(「星の王子さま」)です。
一条さんは、この4人が深くつながっていることを示しながら、彼らが伝えてきているメッセージを読み解いていきます。
かなり明確に自分の主張も表明していますが、いささか過激に思われるところもあります。
そうした主張は、4人からのメッセージを読み解いた後のエピローグで語られているのですが、その口調はかなり強いです。
昨今の「ファンタジー」映画の俗悪さに辟易している私としては、一条さんの次のような指摘にはとても共感できます。
たしかに「指輪物語」を忠実に映画化した「ロード・オブ・ザ・リング」三部作などはアカデミー賞を独占しただけあってすばらしいクオリティの作品でした。しかし、延々とつづくスペクタクルな戦闘の場面にどうにも違和感を覚えてしまったのは、わたし一人だけでしょうか。わたしは、「なぜ、癒しと平和のイメージを与えてくれるのではなく、ファンタジー映画に戦争の場面ばかり出てくるのか?」と素朴に思ってしまうのです。
この文章に、一条さんのハートフル・ファンタジー論が要約されているようにも思います。
ハートフル・ファンタジーは、「死」の真実や「幸福」の秘密を語るもの、と一条さんは考えているのです。
幸福はわかるとして、なぜ「死」なのか。
これに関しては、次の一条さんの言葉がすべてを語っています。
私がどうしても気になったことがありました。
それは、日本では、人が亡くなったときに「不幸があった」と人々が言うことでした。
わたしたちは、みな、必ず死にます。死なない人間はいません。
いわば、わたしたちは「死」を未来として生きているわけです。
その未来が「不幸」であるということは、必ず敗北が待っている負け戦に出ていくようなものです。
(中略)
わたしは、「死」を「不幸」とは絶対に呼びたくありません。
なぜなら、そう呼んだ瞬間に将来必ず不幸になるからです。
死はけっして不幸な出来事ではありません。
そう捉えれば、死は幸福につながっていくはずです。
そして、死が愛と深くつながっていることに気づくでしょう。
本論とは違うことを紹介してしまいましたが、本書では5つのファンタジーを読み解きながら、一条さんの世界観や人生論が語られています。
それはおそらく一条さんが子どもの頃から慣れ親しんできたファンタジーの作品の影響が大きいでしょう。
自分のこととして語っていることに共感がもてます。
一条さんは、ファンタジー作品を単なる読み物とは捉えていません。
そこには、人智の真髄、宗教や哲学の真髄などの人類の普遍思想が、誰にもわかるように書かれており、社会にまだ影響されない前の子供たちが、そうした作品にさりげない触れることによって、実は人類の方向性が導き出されていると、一条さんは考えているようです。
世界中の人たちが、心を通わせ合えるのは、もしかしたらそのおかげかもしれません。
そうかんがえれば、ファンタジーこそが平和を育てているのかもしれません。
大人が、ファンタジーから学ぶことも少なくありません。
本書はそのことにも気づかせてくれます。
気楽に読めますので親子で読んで話し合ってもいいかもしれません。
コモンズ書店からの購入
■「むすびびと」(一条真也編 三五館 952円)
一条真也さんの本の紹介が続いていますが、今週も一条真也さんが編集した本です。
書名は「むすびびと」。
といえば、いうまでもなく思い出すのは「おくりびと」。
もちろんそれを意識しての一条さんらしい造語が「むすびびと」です。
一条さん的にいえば、魂と魂を結ぶ仕事をしている、いわゆるウェディングプランナーと呼ばれる人たち、それが「むすびびと」です。
以前も書きましたが、一条真也さんは冠婚葬祭関係の会社の社長でもあります。
ですから、一条さんの周りには「むすびびと」も「おくりびと」も多く、たくさんのエピソードに取り囲まれて仕事をされているわけです。
そして、おそらく一条さんご自身も、「むすびびと」「おくりびと」を自認されているのだろうと思います。
一条さんが「むすびびと」をどう捉えているかは、次の文章でわかります。
元来は一つのものだった「魂」の片割れ同士が、ふたたび一つに結びつく瞬間を高らかに謳いあげること、すなわち「結魂」のお手伝いをするのが、本書の主人公“むすびびと”の仕事なのです。
「結魂」も一条さんの造語です。
「結魂論」という著作もあります。
本書には、そうした「結魂」にまつわる19の物語が紹介されています。
すべて事実に基づくものです。
そして、そこには「むすびびと」たちの悩み、不安、喜び、感動がありますが、いずれも読み終えた時に、何かとてもあったかな幸せを感じます。
19のエピソードと書きましたが、実はもうひとつエピソードが紹介されています。
「あとがき」で一条さん自身が体験した「心の仕事」が紹介されているのです。
そこでのテーマは「家族」です。
「結魂」から始まるのは「家族」です。
実は、そのことを一条さんは一番言いたかったのかもしれません。
まあ普通はそこで終わるのでしょうが、一条さんはさらにこう書き加えています。
「こころ」を扱う仕事の中でも“むすびびと”たちは、とても大切なものを売っています。
わたしたちの本当の商品は、「平和」という名の商品なのです。
一条さんの会社のスローガンは「結婚は最高の平和である」。
異論もあるでしょうが、私はその通りだと思います。
コモンズ書店からの購入
■あらゆる本が面白く読める方法(一条真也 三五館 1400円)
本とは心を太らせる「こころの食べ物」。
こう考えている一条さんは、実に大食漢です。
なにしろ毎年700冊を超える本を読んでいるのだそうです。
肥満になるのではないかと心配ですが、一条さんのもう一つの顔である佐久間さんとしては、激しい競争社会の中で会社を経営し、さまざまな社会活動もこなしていますし、ご自身でも次々と本を出版していますので、決して肥満にはなりません。
その消化力は驚嘆するものがあります。
本書は、その一条さんの読書論です。
単なる読書術の本ではありません。
技術篇と思想篇にわかれていますが、技術篇でさえも無味乾燥な読書術ではありません。
全編に流れているのは、一条さんの本への愛情です。
本書でも「読書は恋愛」と書いていますが、私が感ずるのは一条さんは「読書」というよりも本を心底愛しているのです。
本を愛していればこそ、恋愛行為である読書は面白いもの、楽しいものになってきます。
そうした一条さんへの本へのラブレターが、本書です。
博愛家の一条さんは、本を愛することの意味や楽しさを多くの人に知ってもらいたいという思いで、ラブレターを公開したのでしょう。
もちろんとても実践的な読書法も紹介されています。
たとえば、一条さんは目次を5分以上かけて読むのだそうです。
私はこうしたことをしたことがなかったのですが、その意味を本書で知りましたので、これからは心がけるつもりです。
難解な本の読み方もとても共感できます。
本書が単なる個人的なラブレターで終わっていないのは、一条さんの実績が背景にあるからです。
本書でも紹介されていますが、一条さんは読書によって得た「ことわり」に支えられて会社を建て直しました。
読書を通して「死」への不安も克服しました。
そして今では「読書」する一方で、自らの志を育てながら、自らの著作や講演などを通して、世に発信しているのです。
書斎にこもっている読書人ではないのです。
ですから、そこで書かれていることは、とても親しみを持て、また実践的でもあるのです。
一条さんはこういいます。
あなたの「志」を生むものは読書です。
あなたの「志」を育てるのも読書です。
そして、あなたの「志」を実現するのは、あなた自身です。
一条さんの読書論は、人生論でもあるのです。
本書の内容の紹介は、出版社の案内を読んでください。
いろいろなことを気づかせてくれる読書論です。
■最短で一流のビジネスマンになるドラッカー思考(一条真也 フォレスト出版 1500円)
経営の世界に多大な影響を与えたドラッカーに関する書籍は多いです。
しかし、人間的な思いを込めてドラッカーの思想を語っている書籍は、そう多くはありません。
一条真也さんは、自らがドラッカー経営学の実践者です。
自らが経営する会社を、ドラッカーの教えに従い見事に立て直しました。
しかし、それはそうめずらしい話ではありません。
私が、一条さんに感心するのは、単に企業経営の世界だけではなく、自らの生き方においてもドラッカーに共感し、実践していることです。
まさに知行合一の見事なモデルです。
一条さんは、ドラッカーの思想を見事に消化し、実践し、さらにそこに自らの知と生を重ねてきています。
本書は、そうした一条さんのドラッカー経営学の現時点での実践的な集大成です。
この書名には、嘘はないと私は思います。
本書を読めば、ドラッカーの経営思想の本質に触れることができるでしょうし、その知恵に多くのことを気づかされるでしょう。
実践テクニックの書は、私は好きではないのですが、これは「思考が身につく実践テクニック」なのです。
むしろテクニックの書ではなく、思考の書としてお薦めします。
一条さんは自らを「ドラッカー・チェルドレン」というほど、ドラッカーのファンです。
ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」という著作を受けて、「ハートフル・ソサエティ」というアンサーブックまで書いているほどです。
私は正直、ドラッカーのファンとは程遠い存在ですが、それでもこの本を読むとドラッカーファンになりそうなくらい、一条さんはドラッカーを自らのものにしています。
一条さんとドラッカーの、とてもあったかいコラボレーションを感じます。
本書は6つの章からなりたっています。
「自己実現」「マネジメント」「マーケティング」「イノベーション」「リーダーシップ」「未来創造」。
いずれもドラッカーの思想のキーコンセプトです。
最初に「自己実現」が置かれているところに、一条さんの本書への基本的な姿勢がうかがえます。
まずは、新しい自分への気づきを呼びかけているわけです。
本書は、まず企業の人たちにお薦めします。
とても読みやすいですので、仮に本が好きでない人であっても、最後まで読めるはずです。
次にNPOの人にお薦めしたいです。
悪しき企業経営の本を読んで懲りた経験のある人でも、きっと読んでよかったと思うでしょう。
やる気のある行政の人や公益法人の人にもお薦めします。
そして、自らの生き方にちょっと迷っている方にもお薦めしたいです。
装丁がいささか派手すぎて抵抗がありますが、中身はとてもしっかりしています。
お薦めの1冊です。
■半農生活をはじめよう(増山博康 かんき出版 1400円)
週間記録で紹介していた菜園クラブの増山さんの本が完成しました。
増山さんが実際に実践している「半農生活」のすすめです。
似たような本はたくさん出ていますが、
この本は増山さんの生活がしっかりと反映していますので、嘘偽りのない実践者の本になっています。
なによりも土と野菜のにおいがするのがいいです、
それに昨今の社会状況をしっかりと意識していますので、読者の読む気も誘うでしょう。
本の内容は紹介文に的確にまとめられています。
平日は都会で会社勤めをして、週末は郊外の菜園で楽しみながら野菜をつくる。そして食べて、売る。それが半農サラリーマン生活です。半農生活はカンタン。しかも、菜園での適度な運動と育てた野菜を食べることで健康になり、売り方しだいで年収100万円アップも可。本書を手に、いますぐ半農生活をはじめよう。
100万円などと書いているところは私の趣味には反しますが、これは決して単なるキャッチコピーでないことは、本書を読むとよくわかります。
目次をご覧ください。
とても実践的で、読みやすい本です。
そして、ついつい「半農生活しようか」という気になってしまう本です。
1 半農生活はカンタンにはじめられる
2 自宅から通える範囲で農地を探そう
3 菜園でどんな野菜をつくるか考えよう
4 菜園の広さに応じて道具をそろえよう
5 野菜別カンタン栽培の方法とポイント
6 半農生活で育てた野菜は意外とよく売れる
7 こうすれば半農生活で月10万円稼げる
増山さんは実際の農園を確保して、農業クラブの活動を提案しています。
その上、半農生活サポートセンターも立ち上げました。
そして、この本の出版に合わせて、半農生活サポートセンター主催で、「みんなで半農ライフを楽しむ時代目指して」をテーマに9月29日にフォーラムも開催します。
お知らせのコーナーに案内を載せました。
増山さんはこう呼びかけています。
私たちはやはり自然≠フ一員。
農作物を育てれば、その実感と喜びがわいてきます。
農業を取り巻く環境も変わりつつあり、都会の生活や仕事をしながら「アマチュア農業」をする「半農ライフ」のやり方もいろいろ生まれてきました。
そのひとつは、私たちが提案する「農業クラブ」。
初心者でも、忙しくて毎回畑まで通えそうにないという人でも、気軽に参加して栽培を楽しめます。
趣味のクラブのように「農業クラブ」が広がって、文字通り実も花もとれて楽しい日々が送れる人が増えればと思います。「農業クラブ」について知りたい方、とにかく野菜を育ててみたいという方、お気軽にご参加ください。
この本からいろいろな物語が始まりそうです。
増山さんは、こう呼びかけています。
増山さんが主宰する菜園クラブのホームページもぜひご覧ください。
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■「灯(あかり)をたのしむ」(一条真也 現代書林 1300円)
一条さんの「日本人の癒し」シリーズ第3弾です。
今回のテーマは「灯(あかり)」。まさに一条さんの世界です。
「天の光、地の灯」という序章に続き、本編は「灯のある暮らし」と題して、いつものように一条さんの世界が縦横無尽に語られていますが、今回の主役は「ロウソク」です。
むしろ「炎をたのしむ」でもよかったくらい、一条さんも炎に魅了されているような気がしました。
以前、ブログでロウソクの炎のことを書いたことがありますが、その時、すかさずに一条さんからメールが来ました。
ロウソクの炎に人間の魂が宿るのは本当ですよ。
日々の葬儀の中で、何度も経験しております。
その時からきっといつか「炎の世界」のことを書いてくれるだろうなと期待していました。
本書は、いわばその予告編のような感じで私は読ませてもらいました。
気楽に読める手軽な本ですが、いつものようにさまざまな示唆が込められています。
もちろんキャンドルライフやキャンドルを活かした平和運動のこともたくさん出てきますが、
特に印象深かったのは、ファラデーの「ロウソクの科学」のなかにある記事です。
ファラデーは、その本に子どもたちに話したことを収録しているそうですが、
そこで「一本のロウソクにたとえられるのにふさわしい人になってほしい、
そして、ロウソクのようにまわりの人びとに対して光となって輝いてほしい」というような話をされているそうです。
すぐに思い出すのは「一隅を照らす」という言葉でしょう。
一条さんも、それにつなげながら、こう書いています。
太陽は光を放ちます。
月や星は、その太陽光を反射します。
しかし、地上の人間にできることは灯をともすことだけなのです。
それは、ささやかな灯かもしれません。
周囲を少ししか照らすことができないかもしれません。
風が吹けば、すぐに消えてしまうかもしれません。
それでも、人間には灯をともさなければならないのです。
さらにこう付け加えます。
ロウソクは自らの身を細らせて燃えるもの。
自己を犠牲にして周囲を照らすものです。
ただひたすら他者に与える存在であり、それは「利他」の実践に他なりません。
他にも紹介したいことがたくさんなりますが、もう長すぎるほど書いてしまいました。
もう一つだけ紹介して、あとは本書を読んでもらうことにしましょう。
戦争と環境問題という人類にとっての最大の難問を解決する糸口がロウソクの炎の中から見つけられるような気がする。
名前だけは知っていた「ロウソクの科学」も読んでみようと思います。
みなさんもよかったら読んでください。
これまでの「日本人の癒し」シリーズ
■「茶をたのしむ」 監修一条真也 現代書林
■「花をたのしむ」
一条真也 現代書林
コモンズ書店から購入
■「ガンと一緒に山登り」(庵幸雄 白山書房 2009 1500円)
著者の弟は私の大学の同窓です。
先日、湯島に来た時に、この本の話が出ました。
がんになった兄が山登りで、がんを克服したという話です。
著者が山登りに挑戦しだしたきっかけは、「山がくれたガンに負けない勇気」(小嶋修一)という1冊の本との出会いだったそうです。
小嶋さんは、ガン患者には無理なとも思われる富士登山、モンブラン登山への挑戦で人間が備え持っている自然治癒力を高めてガンを克服したのだそうです。
その本に刺激された、著者も登山を開始、良い仲間に出会えたこともあって、昨年、ついに日本百名山を制覇したのです。
胃の全摘出という手術をしてから7年目の壮挙です。
本書は、その山日記が中心ですが、その前後に書かれている著者の思いを知って読んでいくと、いろいろと灌漑深いものがあります。
一味違った登山記としてお読みいただければと思います。
体験を通して、著者が語っていることがとても示唆に富んでいますが、その中からちょっと長いですが、一説を引用させてもらいます。
世の中には、当人が病魔と闘っているのを、周囲の人達が心ならずも結果として、つぶしていることがけっこう多いのではないだろうか。もちろん、その人としては、何とかしてあげたい、黙ってはいられないという気持ちなのだろうが、病魔と闘っている当人の立場に立っての助言というよりも、周囲の人間の立場に立っての助言に陥っていないだろうか。病人なのだから無理をさせずに、静かにさせておいた方がよい、周囲で見守ってあげなければと、当事者を離れた周囲の常識を基準にした助言に陥っていないだろうか。
本来、当事者が自分の状況はいちばんよく分かっている。人間は思ったよりも強靭にできているようだ。
当事者であればこそ、説得力があります。
がんと対峙している人たちに力強いエールの書ではないかと思います。
私ももう少し早くこの本に出会っていればと悔やまれます。
コモンズ書店で購入できます。
■「語り部とともに歩く熊野古道」(かんき出版 1600円)
かんき出版の藤原さんからお話をお聞きしていた自信作の本が出版されました。
この本の魅力は、3人のプロフェッションが時空間を超えたバーチャルな熊野古道の世界を
創りあげているところです。
「観光カリスマ百選」の1人にも選定されている、熊野古道語り部の坂本勲生さん。
ヨーロッパの「人と文化」に焦点を当てて活動しているフォトグラフィック・ライター、南川三治郎さん。
そして、朗読は、「平家物語」の朗読をライフワークとして、舞台出演の傍ら、朗読会や講演活動を全国的に展開している、前進座の嵐圭史さん。
この3人が、写真と文章と朗読でコラボレーションしているのです。
「語り部とともに歩く」とあるように、古道に沿った編集になっているので、写真を見ながら読み進めていくと、巡礼路を歩いているような気分にもひたれます。
その歩きの中で体感できるような、自然の音が時にCDから聞えてくると最高なのですが、そこまで望むのは欲が深すぎるでしょう。
しかし、写真はみんな撮り下ろしなので、南川さんの息づかいとともに、その風景の音まで少し聞えてくるような来もします。
そして、写真の世界に同化している自分に気づくような体験もできます。
坂本さんが語り続けている話の中から24話を、嵐さんが朗読したものがCDとして付いていますので、背景に流しながら写真を見ていると、今度は時間を超えた、もうひとつの熊野古道の世界を体感できます。
この本を片手に熊野古道を歩いたら、きっとさらに多くの気づきがあるでしょう。
熊野古道を歩いたことのある方が読んだら、その時にタイムスリップしたような気分になるでしょう。
歩きたくても歩けない人には、歩いたような喜びを与えてくれるでしょう。
熊野古道を歩いた人も、歩きたいと思っている人も、そしてなによりも、熊野古道を歩けない人も、それぞれに堪能できる魅力的な本です。
疲れた時に、ゆっくりと味わう本として、お薦めします。
■「職場うつの正体」
(広野穣 かんき出版 1575円)
著者とは面識がないのですが、私の友人が出版に関わっているのと、このところこの話題での相談が多いので、紹介させてもらうことにしました。
著者の広野さんは、「言葉の心理カウンセラー」だそうです。
最近、広がっている「職場うつ」の正体は人間関係病、その病原菌は「言葉」である、というのが広野さんの考えです。
本書はその考えに基づき、職場からうつ病をなくしていくための具体的な処方箋が語られています。
但し、うつ病対策だけの本ではありません。
そうではなく、うつ病患者を生み出してしまうような職場にならないように、職場そのものを元気にし、明るくするための社風変革の処方箋と言ってもいいかもしれません。
私は、会社そのものが「うつ」になっている現状を変えないといけないと考えていますので、広野さんの発想に賛成です。
目次を見てもらえばわかりますが、いわゆる「うつ病対策」の本ではありません。
むしろ職場を元気にする実践的ガイドといった方がいいかもしれません。
自らを元気にしてくれるためのガイドブックと言ってもいいでしょう。
目次は次の通りです。
Part1 言葉が与えるストレスと<うつ>対策
1.<うつ>病が急増している背景を見てみる
2.<うつ>対策の現実と解決のためのヒント
3.日常の観察で<うつ>信号は発見できる
4.<うつ>に追い込む言葉の意外な「正体」
Part2 人を<うつ>に追い込む言葉と話し方
1.「断定」すれば相手も自分も追いつめる
2.「威圧」すれば精神が壊れていく
3.他人を「否定」すると自分も否定される
4.「命令」が飛び交う会社に明日はない
5.「質問」が下手だと相手を追いつめていく
Part3 人を<うつ>から救う言葉と話し方
1.前向きな気持ちと行動を呼び起こす
2.リーダーシップを育てる話法
3.ほめ言葉が人を落ち込ませることもある
4.ほめ言葉は人も職場も明るくする
会社内にうつ病予備軍が急増しているといわれますが、そうしたところに最近の企業の最大の問題が現れているといってもいいかもしれません。
うつ病の温床になっている企業の現状を変えなければ、企業そのものが立ち行かなくなりかねません。
うつ症状の増加は、実は企業の制度や文化の問題です。
本書はとても読みやすく、実践的な本ですが、会社のあり方や私達の生き方にも、さまざまな示唆を与えてくれます。
よかったら読んでみてください。
コモンズ書店で購入
■認知症予防ゲーム〈高林実結樹 NPO法人認知症予防ネット 1000円〉
今回は一般書店では購入できない本のご紹介です。
このサイトにはちょっと相応しくないかもしれませんが、こうした種類の本もこれから少し紹介していきたいと思いだしました。
この本は、週間報告に書いたように、先日京都でお会いした著者の高林さんからいただいたのです。
そして、このテキストが生まれた経緯とこのテキストから生まれた物語をいろいろとお聞きしました。
認知症に関しては、さまざまなテキストや書籍が出ています。
本書と同じく「認知症予防ゲーム」を扱った本もあります。
にもかかわらず、私がこの本をここで紹介しようと思ったのは、著者の高林さんの熱い思いを感じたからです。
高林さんは私よりも10歳年上ですから、間もなく80歳です。
認知症に関心を持ち出したのは、今から30年以上前にご自分のお母さんが認知症を発症し、それが契機になったようです。
15年ほど前に、静岡の高齢者リフレッシュセンターの増田未知子さんという方が開発された、スリーA方式の認知症予防の考え方に出会い、その考えの有効性をご自分で確かめられてから、それを全国に広げていきたいという思いから、仲間と一緒にNPOを立ち上げて活動を開始したのです。
私は、この10年、各地でのさまざまな福祉関係の活動にささやかに関わらせてもらっていますが、そのおかげで「ホンモノ」と「そうでないもの」とを見分けることが少しだけできるようになってきました。
高林方式は、学問的には検証されているわけではありません。
私自身、その成果を直接知っているわけでもありません。
でも、高林さんと話していると、ゲームの成果、あるいは研修の成果が目に見えてくるのです。
それで高林さんたちの活動をできる範囲で応援しようと思ったのです。
本書の内容は、書名の通り、ゲームの進め方のテキストです。
しかしその前と後ろに、基本的な考え方が簡潔に述べられています。
また、このテキストの利用法も丁寧に書かれています。
できれば、皆さんのお住まいの地域にある、地域包括支援センターやデイサービス施設などに、この本をご紹介いただければうれしいです。
高林さんたちを講師に招いて、講演会やミニ研修会などを企画してもらえればもっとうれしいです。
高林さんに連絡したい場合は、次の電話番号にお電話ください。
高林さんは、とても気さくに電話応対してくださるはずです。
0774−45−2835
本書の購入は、NPO法人認知症予防ネットのホームページからお願いします。
そのホームページには、スリーAの考え方や高林さんたちの活動も載っています。
併せてご覧いただければと思います。
■『介護情報Q&A』第2版
(小竹雅子 岩波ブックレット 800円)
コムケア仲間の小竹雅子さん(市民福祉情報オフィス・ハスカップ代表)がまとめた、介護情報のわかりやすいブックレット『介護情報Q&A』が内容を新しくした第2版ができました。
介護保険の基本的なしくみや改正の具体的内容、困ったときの解決方法、関連情報などを、65の用語にわけて、利用する市民の立場から説明しています。
実践活動の中から生まれてきている本ですので、複雑になって、ますますわかりにくくなってきている介護制度を理解するために必ず役立つと思います。
市民福祉情報オフィス・ハスカップでは、メルマガも発行しています。
この分野に関わっている方は、メルマガも申し込まれるといいと思います。
ホームページから申し込めます。
この本はテキストなどにも向いています。
5冊以上だと著者割引も利用できるそうです。
ご注文は市民福祉情報オフィス・ハスカップまでお申し込みください。
■「技術とコンプライアンス」(杉本泰治 丸善 1500円)
日本では「コンプライアンス」という言葉が極めてご都合主義的に使われています。
一般的に「法令遵守」と訳されますが、果たしてそれでいいのかとずっと思っていましたが、それに関してきわめて明確に、それが誤訳だと教えてくれたのが杉本さんです。
これに関しては以前CWSプライベートでも紹介したことがありますが、それがとてもわかりやすい本になりました。
先週紹介した「技術者倫理‐法と倫理のガイドライン」と同じくテキスト風のスタイルの本です。
今回の副題は、「寄生法令と倫理のガイドライン」です。
書名も、いかにもテキスト風なので少し引いてしまうかもしれませんが、内容はとても読みやすく、示唆に富んでいます。
杉本さんが本書を書いた意図は2つあります。
コンプライアンスがこれだけ話題になっているのに、規制行政法に関する入門書がなかったのだそうです。
そのため、日本のコンプライアンス実務に関する混乱があるのではないか。杉本さんは、その間隙を埋めたかったのです。
技術と経営と法律を、それぞれしっかりと学び体験してきた杉本さんならではの入門書になっているように思います。
もう一つは、社会的信頼を失ってきている企業への信頼回復のために
、実のあるコンプライアンス活動を広げていきたいという、杉本さんの深い思いです。
これは杉本さんのライフワークといっていいでしょう。
この話をしているときの杉本さんからは、時々、鬼気迫るほどの熱意を感ずることもあります。
企業の技術者のみなさんには、ぜひ読んでほしい本です。
目次を紹介しますが、各項目とも深い内容をきわめて簡潔に要点をまとめていますので、忙しい技術者にも短時間でマスターできます、
しかし、できれば、先週紹介した本とあわせて、ぜひ企業内での読書会や勉強会を始めてほしいです。
みんなで話し合うと、きっとそこにこめられた深い意味を学べるはずです。
言葉だけのMOTなどよりも、よほど価値があると思いますので。
目次は以下の通りです。
これを見ても、杉本さんの発想法がわかると思います。
1 コンプライアンスの意味
2 コンプライアンス問題の始まり
3 不合理な法制は不正の温床
4 行政手続法は語る
5 民主国の規制行政
6 行政者と事業者の関係
7 規制法令とは何か
8 コンプライアンスの経営判断
■「技術者倫理‐法と倫理のガイドライン」(杉本泰司 田中秀和 橋本義平 丸善
1500円)
技術者倫理の文化を日本の企業に定着させたいという深い思いから、
著作や講演、研究会などで活躍されている杉本さんたちの著作が続けて2冊出ました。
今回はそのうちの1冊をご紹介します。
今週は時間がなくて、1冊しか読めなかったからです。
杉本さんたちは、大学生向けのテキストはすでに完成させており、このコーナーでも紹介させてもらいました。
定期的にその内容を見直しているスタイルで、すでに現在第4版になっています。
そのテキストを使って、いくつかの大学ですでに講座を展開していますが、企業の技術者にもしっかりと技術者倫理の文化を定着させたいと最近は企業での研修などにも取り組んできました。
そして杉本さんらしいメソドロジーも開発し、成果をあげているとお聞きしていましたが、そのテキストが完成したのです。
その1冊が本書です。
ですから本書は、企業などの実務に取り組む人を対象とした本ですが、企業での活動にまつわる「法と倫理」について、とてもわかりやすく概観していますので、多くの企業人に読んでもらいたい本です。
具体的な事例も、道微視自動車のハブ破損死傷事件、西宮冷蔵の内部告発事件、耐震偽装事件など、6つの事件が取り上げられています。
変わった事例としては、武蔵野市のまちづくり条例検討委員会の「利益相反」事件も取り上げられています。
「利益相反」問題は、私も最近関心を持っているのですが、これからのコミュニティやアソシエーションを考えるときのキーワードのひとつになっていくのではないかと思っています。
まあそれはともかく、本書はともかく読みやすく、親しめます。
それは杉本さんらしく、用語をしっかりと構造的に定義しながら、簡潔に記述しているからです。
技術者倫理というと難しそうですが、前編が平易な日常語で書かれていますし、話題もコミュニティとは何かとかいう話まで包含して、大きな枠組みで語られているのがとてもいいです。
内容的な紹介になっていませんが、良かったら読んでください。
もし企業の技術者の方であれば、ぜひ周辺の技術者と勉強会などもやってもらえればうれしいです。
もし杉本さんを講師で呼びたいということであれば、時間さえあえば、杉本さんはきっと引き受けてくれると思います。
まあ、これ以上、杉本さんを忙しい目に合わせたくないのですが。
来週は、もう1冊の「技術とコンプライアンス」を紹介します。
今度は内容も含めて。
■「花をたのしむ」(一条真也 現代書林 1300円)
前にご紹介した「茶をたのしむ」につづく、「日本人の癒し」シリーズ第2弾です。
一条さんが前作よりも乗っているなと感じたのは、序章が全体の1/3を占めているからです。
序章は「魂のごちそう、心の万能薬」と題されていますが、そこに一条さんの花への思いが一気に書かれています。
一条さんは、きっと楽しんで書いたのでしょう。
花はあまりに広いテーマなので、どう切り込むか関心を持っていましたが、一条さんらしく、冠婚葬祭を切り口にして書き出しています。
まさに一条さんのホームグラウンドです。
そうはいっても、一条さんらしく、話題は古今東西、じつに軽やかに広がっていますから、あきることがありません。
「花はこの世のものとしては美しすぎる」と一条さんは書いています。
ハッとするような言葉です。
しかし、その美しさにどのくらいの人が気づいているか。
私が、花の美しさに気づいたのは最近です。
それまではバラとかカサブランカとか、「名前のある花」に目が行きがちでしたが、そのせいか、変な言い方ですが、花は単に花でした。
野山に咲く小さな花も好きでしたが、ゆっくりと眺めたことがありませんでした。
その魅力を教えてくれたのは妻でした。
花は、見る対象ではなく、共にある存在なのだと、妻がいなくなってからやっと気づかされました。
花の美しさは、心を通わせてはじめて見えてくる、そこに潜む「やさしさ」と「けなげさ」なのかもしれません。
一条さんは、花はいのちのシンボルだといいます。
いのちの美しさを教えてくれているのかもしれません。
花はまた人をつなぐものでもあります。
一条さんは、花は平和のシンボルだともいいます。
3年前に青森の三沢市で住民たちの花いっぱい活動にささやかに関わらせてもらうことがありました。
「花を育てよう」という思いが、住民たちをつなぎだし、今では「まちを育てる」動きになってきているように思います。
まさに花は平和につながっています。
いのちと平和。
本書はそれを基調にして、花のたのしみ方をさまざまな視点から紹介しています。
テーマが広すぎることもあって、一条さんのメッセージが少し弱いのが気になりますが、その分、すんなりと読めるかもしれません。
■人間関係を良くする17の魔法(一条真也 致知出版社 1400円(税別))
一条さんの今年最初の本は「人間関係」でした。
といっても、表層的なテクニック論ではありません。
一条さんならではの人間関係論です。
一条さんは、「良い人間関係づくり」のためには、まずはマナーとしての礼儀作法が必要だといいます。
ですから本書は、礼儀作法の本でもあります。
いまさら礼儀作法? などといわずに、ぜひお読みください。
あまりにも基本がおろそかにされているのが、今の日本ですから。
本書を読むといろいろなことに気づかされるはずです。
私も反省すべきことがいろいろとありました。
一条さんは日本の礼法の基本である小笠原流の免許皆伝を26歳で許されています。
そして、それを実際の生活や企業経営の面でしっかりと実践されているのです。
小笠原流礼法の基本は、「思いやりの心」「うやまいの心」「つつしみの心」という3つの心を大切にすることだと一条さんは言います。
それをしっかりと守っていれば、人間関係で煩わされることはなく、むしろ人間関係に支えられていくというのです。
私のささやかな経験からもとても説得力があり、うなずけることが多いです。
2つだけ引用させてもらいます。
ここに一条さんの、人間関係観が出ています。
本当に大切なものとは、人間の「こころ」に他なりません。
その目に見えない「こころ」を目に見える「かたち」にしてくれるものこそが、
立ち居振る舞いであり、挨拶であり、お辞儀であり、笑いであり、愛語などではないでしょうか。
それらを総称する礼法とは、つまるところ「人間関係を良くする魔法」なのです。
結局、人間関係を良くすることはもちろん、
心ゆたかな社会をつくるための最大のカギこそ、私たちの礼能力ではないでしょうか。
他者への「思いやり」の心くらい大切なものはありません。
スタイリストの書き手である一条さんは、本書でもスタイルにこだわっています。
本書の構成は「17の魔法」とタイトルされています。
そして、17のそれぞれの章の最後に、内容を要約する一条さんの短歌(道歌)が掲載されています。
一条さんが楽しみながら執筆したことが伝わってきます。
人間関係を単なる個人の処世術と位置づけていないのも共感できます。
最後に、世界を良くする究極の魔法が説かれています。
人間は一人だけでは生きていけません。
社会と関わる必要があります。
社会の中において、あなたが良い人間関係を築き、かつ、すべての人が幸福になれる道とは何でしょうか。
その問いかけに一条さんは、こう答えています。
それは「志」です。
志とは、心が目指す方向、つまり心のベクトル。
つまり本書は生き方の指南書なのです。
楽しく読めますので、ぜひお読みください。
コモンズ書店
■日本の未来と市民社会の可能性(非営利組織評価研究会編 2008 900円)
先日紹介した「NPO新時代」の著者の田中さんが主宰している非営利組織評価研究会での議論を中心に、NPO法人の言論NPOがブックレットにまとめたものです。
「NPO新時代」での論点の背景や意味合いが、議論を通して伝わってきますので、並行して読まれると面白いです。
研究会のメンバーに加えて、ゲストとして、武田晴人さん、加藤紘一さん、野中郁次郎さん、上野真城子さん、辻中豊さん、ウォルフガング・パーぺさんが参加していますが、それぞれの思考がよく見えてきます。
「NPO新時代」の紹介でも書きましたが、わが国でNPO法が施行されてから10年がたちます。
その功罪がかなり見えてきましたが、それを踏まえて住民活動や市民活動はこれから変わっていくように思います。
しかし、NPOだけを見ていてはたぶん先は見えてこないでしょう。
その意味で、本書のような幅広い議論は示唆に富んでいます。
日本では、NPOの意味をあいまいなままにして、住民発想の現場視点のものも、市民社会志向のものも、一緒に語られていますが、両者は全く違ったものだという気がします。
サブシステムとしてのNPOや市民社会論ではなく、イノベーションとしての住民活動や市民活動、あるいは社会そのものの概念としての市民社会に、私は関心があるのですが、そうした視点から本書を読むと、それぞれのゲストの問題提起は示唆に富んでいます。
私が特に面白かったのは、辻中さんの「自治会、町内会の存在意味の大きさ」に関する指摘です。
辻中さんはこういっています。
自治会をはじめ、さまざまな団体をすべて含めると、日本ではものすごい地域ネットワークが張りめぐらされています。
報酬は年間2万円とか、それから少し出る、そういう微妙なお金で、民生委員や国勢調査の調査員などを含めて、皆が動いているのが日本の一つの現実です。
そうしたリゾーミックな市民社会をNPO法が壊してしまったような懸念を私は持っています。
上野さんの市民社会論も面白いです。
NPOがやるべきことは、市民社会で政策をちゃんと知り、社会をちゃんと知り、そこに声を上げていける市民をつくらなくてはいけないということ。それがノンプ・ロフィットセクターの責任であろうと思うのです。
私の関心事とは少し違いますが、今のNPO発想を基軸にするのであれば共感できます。
本書だけで読んでも面白いです。
コモンズ書店からも注文できます。
■ホルクハイマーの社会研究と初期ドイツ社会学(楠秀樹 社会評論社 3200円)
久しぶりに学術的な専門書を読みました。
著者の楠さんは、娘の友人のパートナーです。
一度、わが家にも来てくれたことがありますが、
楠さんがこうした分野の研究者であることは全く知りませんでした。
その楠さんが、昨年末に本書を贈ってくれました。
この分野は大いに関心のあるところなのですが、久しぶりの専門書であり、正直、苦戦しました。
しかし、知り合いの書いた本はしっかりと読んでこのコーナーで紹介するのが私のルールですので、読まないわけにはいきません。
年末から読み出し、暇さえあれば(幸いにもかなりあったのですが)本書を開いていましたが、速読の私も一向に進みません。
ところが、第4章になって突然視界が開けたように面白くなったのです。
読み終えた後は、この続きが読みたいと思ったほどです。
現代の社会を読み解くヒントがたくさん含まれています。
ある程度の覚悟は必要ですが、現代社会の先行きに関心のある方にお薦めします。
ところで、ホルクハイマーは恥ずかしながら、私はフランクフルト大学の社会研究所の所長だったことしか知りませんでした。
その主張や業績などは全く知らなかったのです。
ですから本書は私にとっては、すべて知らないことばかりでした。
しかし読んでいるうちに、なぜかとても親しみを感じ出しました。
その主張や方法論にも、とても共感できました。
ホルクハイマーはユダヤ系のドイツの社会学者です。
生まれは1895年。1930年にフランクフルト大学の社会研研究所の所長になり、
労働者の現状とファシズム的な心理を問う実証調査などに取り組んだドイツを代表する知識人の一人です。
母国を襲ったファッシズム(ナチズム)に対して、そしてさらにスターリン主義に対して自由のために闘った、信念の人でもあります。
いわゆるフランクフルト学派を代表する一人です。
ホルクハイマーの研究生活の出発点は現象学でしたが、そこから唯物論、社会学へと広がり、社会哲学へと向かっていきます。
本書はそうしたホルクハイマーの思想形成の過程を丁寧に追いかけていきます。
本書の帯に、「社会を批判する社会思想の原型が浮かび上がる」と書いてありますが、まさにその通りです。
内容はかなり専門的で難しいのですが、学生の頃学んだ懐かしい名前が次々と出てきますので、興味深く読み進められます。
それに、多様な思想が広がりだしていたワイマール時代のドイツの知的環境のなかで、ホルクハイマーが抱いた疑問や問題意識は、見事に現在の社会に繋がっているように感じます。
たとえば、近代の要素還元主義を超えたホロニックな発想や統治者の哲学とは対照的な現場からの哲学の芽を強く感じました。
もっとも、これは現代を生きている著者の楠さんの意識が影響しているのかもしれません。
あるいは、当時の社会学との差異化を目指していた、ホルクハイマーの社会研究の到達点の映像が重なっているのかもしれません。
しかし、いずれにしろ、そこで語られていることはこれからの時代を考える上でのヒントがたくさん含意されていることは間違いありません。
後半では、ドイツ社会学の成り立ちの経緯も垣間見られますが、これはとても興味深かったです。
私の貧弱な知識が、いろいろな意味で刺激を与えられ、頭の中で少しよみがえってくるような気にもなりました。
ホルクハイマーが、その後書いた『啓蒙の弁証法』も読んでみたくなりました。
専門的な学術書ですので、そう簡単にお勧めはできませんが、
社会を見る目を養うためにはとても頭が整理されます。
よかったらお読みください。
いつか楠さんに話を聴きたいと思っていますので、読まれた方でご希望の方がいたら連絡してください。
一緒に話をお聞きしましょう。
コモンズ書店からも注文できます。
■技術者の倫理入門第4版(杉本泰治・高城重厚 丸善 2008)
今年最初のご紹介は科学技術倫理フォーラム代表の杉本さんの心を込めた技術者倫理のテキストです。
以前、第3版を紹介したときにも書きましたが、この本には杉本さんの熱い思いがこもっているのです。
もちろん高城さんの思いもそうですが、杉本さんは同志だった高城さんを2006年に見送っています。
私も短期間ではありますが、高城さんと交流させてもらいましたが、
そのお人柄は実に魅力的で、もう少しいろいろとお話をお聞きしたかったと残念でなりません。
その高城さんの業績でもある曽木発電所遺稿の発見のエピソードが追加されています。
短い紹介ですが、そこに込められた著者たちの思いは胸に応えます。
本の内容に関しては、第3版の紹介文を読んでください。
多くの人に読んでほしい本の1冊です。
■世界の「聖人」「魔人」がよくわかる本(一条真也監修 PHP文庫 648円(税別))
「神社へ行こう」に続く、一条さんの最新監修本です。
一条さんは例によって、しっかりと「まえがき」を書いています。
本書は人間のカタログなのだ。だから、面白い。
「聖人」にしろ「魔人」にしろ、過剰な人間について知ることほど刺激的でワクワクすることはない。
なぜなら、わたしたちは人間だからだ。
人間にとって一番面白いものは人間に決まっているではないか。
わたしは、「面白いぞ人間!」と叫びたい気分である。
いかにも一条さんらしいです。
それにしてもいろんな人が登場してきます。
その数、聖人66人、魔人47人です。
聖人の数が多いのが不満ですが、
一条さんも書いているように、聖人と魔人は表裏一体の存在ですから、
そんなことは気にするのが間違いでしょう。
私には名前も知らなかった人も少なくありませんが、
まあ時間のある時にぱらぱらと読むと面白いです。
私にとっては、どちらかといえば、魔人編のほうに取り上げられた人のほうが魅力的でした。
気分転換に、たまにはこんな本もいかがでしょうか。
113人の聖人魔人のエピソードをまとめて読むのは、意外と刺激的です。
知っていたようで知らない、面白いエピソードにも出会います。
退屈している人にはお薦めします。
世界がちょっと広くなるかもしれません。
コモンズ書店
■NPO新時代(田中弥生 明石書店 2008)
久しぶりに共感できるNPO関係の本を読みました。
NPO業界本ではなく、市民社会に視点を置いたNPO論ですので、
NPO関係者だけではなく多くの人にぜひ読んで欲しい本です。
田中さんのNPO関係の本は何回かここでも紹介しました。
特に前回の「NPOが自立する日」は、NPO業界に新しい問題提起をするものでしたが、
本書は、その問題を解く基本的な視点と展望を与えてくれるものです。
NPO論というよりも、市民社会論として読むのがいいかもしれません。
副題は「市民性創造のために」とありますが、田中さんはそこにNPOの役割を期待しています。
田中さんは、こう書いています。
多くのNPOで経営技術や資金調達方法あるいは顧客開拓方法など、技術的な側面から様々な取り組みがなされ、実に頼もしく感じています。
しかし同時に、それだけでは問題の確信に届いていないと私は感じていました。
そして行き着いたのが
「NPOとは本来何をめざしていたのか。ほんものとして、めざすべきモデルはどこにあるのか」
という問いかけでした。
この問いの先にあったのは、日本の市民社会をどう再編するのかという課題でもあったのです。
田中さんがは、寄付やボランティアに対する再認識を呼びかけています。
NPOは市民性創造という役割を通して日本の市民社会再編に貢献するという、大きな可能性を秘めています。
そうした役割を果たすためには、まずNPOが参加者としての市民とのつながりをより太くしゆくことが重要であり、
そのためには、何よりも寄付やボランティアとのつながり方を再認識することが必要です。
NPO法人は急増しましたが、ボランティア人口はむしろ減少しているという統計もあります。
介護保険制度の導入に伴い、近隣の支え合いが消えてしまったという声もありましたが、
日本型のボランティア活動はNPOの広がりの中で変化してきているのかもしれません。
寄付文化に関しても、日本型の寄付文化が見落とされているように思います。
私自身は、田中さんとちょっと見方の違うところもありますが、
田中さんの主張は説得力もあり、実践的で、示唆に富んでいます。
PST(パブリック・サポート・テスト)を重視しているのは、田中さんの視点の所在を象徴しています。
PSTを中心においた市民社会の方向性もわかりやすく提案されています。
書きたいことはいろいろありますが、
何よりも、ぜひ本書を読んでほしいと思いますので、中途半端な紹介は差し控えます。
NPO関係者はもちろんですが、NPOに違和感をお持ちの方にも、あるいは企業関係者にも、お薦めしたい本です。
現場で地道に活動している人たちには、元気を与えてくれるはずです。
コモンズ書店経由でアマゾンからも購入できます。
目次などはそこで見てください。
■明治のお嬢さま(黒岩比佐子 角川選書
2008)
歴史は、その視座と視野によって、全く別の世界を見せてくれます。
黒岩さんの語る明治大正には、いつも新鮮な発見がありますが、
今回のテーマ「明治のお嬢さま」は、そのタイトルからして、新しい発想を予感させられます。
しかし、本書を開くまでにはいささかの時間が必要でした。
この本の内容などは、黒岩さんのブログを見てください。
書き出した動機やこの本への黒岩さんの思いが、実に素直に書かれています。
黒岩さんも書いていますが、本書は、
「女性史研究というようなことではなく、
あの当時の新聞や雑誌に実際に書かれていた記事から読み取れることを、
自分なりに整理して書いた」
ものです。
ですから実に生き生きとしていますし、いつものように、小さなエピソードや横道の話がふんだんに登場します。
黒岩さんの本の面白さの一つは、そこにあると私はいつも思っています。
それは、黒岩さんが膨大な資料の中に埋もれながら、その世界を楽しんでいることの証左でもあります。
黒岩さんは、前に取り組んだ村井弦斎(「食道楽の人 村井弦斎」)や国木田独歩(「編集者 国木田独歩の時代」)が編集に関わった、当時の『婦人世界』や『婦人画報』をかなり読んでいるようです。
つまり、その時代を生きながら、この本を書いたのだろうと思います。
黒岩さんは、
百年前に生きていなくてよかった
と言っています。
そこにも、決して観察者としてだけではない黒岩さんの姿勢を感じます。
先に書いたように、黒岩さんの本はともかくディテールが面白いのです。
ですから内容紹介は難しいのですが、今回は「面白さ」において、黒岩さんは自信を持っています。
ブログにこう書いています。
でき上がってみると、予想以上に面白い本になったので、自分でもびっくりしています。
黒岩さんの自信作です。
どこが面白いかは、ぜひ本書を手に取ってください。
「明治のお嬢さま」を通して、新しい明治、あるいは今の日本の底流が見えてきます。
この本がたくさん売れると、黒岩さんの次の本の資料収集活動が一段と高密度になるでしょう。
つまり次の作品の面白さが増していくということです。
その意味でもぜひ皆さん、購読してください。
コモンズ書店でも購入できます。
黒岩さんも、ブログで書いています。
ぜひ、皆さん買ってください!
■学校を辞めます(湯本雅典 合同出版 1200円(税別)
2008)
この本は私の友人の著書ではなく、たまたま出合った本ですが、紹介させてもらいたくなりました。
これまでの、そして現在の教育改革の本質が読み取れるからです。
CWSプライベートの教育時評でも紹介させてもらいましたが、
著者の湯本雅典さんは、1昨年まで、東京都の公立小学校の教員でした。
いまは、自主退職し、私塾「じゃがいもじゅく」を開いています。
この本は、そうした湯本さんの記録です。
現在の小中学校の実態や子どもたちの状況が生々しく伝わってきます。
この本の簡単な紹介は前述のブログをお読みいただくとして、ここでは本書の「はじめに」を引用させてもらいます。
やはり著者本人の言葉にこそ迫力があります。
僕が東京都の公立小学校の教員を自主退職した2006年、おなじ東京都で新人教員が2人、自ら命を絶った。
僕の退職は本意ではなかった。僕は学校という職場が好きだった。「通信教育」で教員免許をとった後、教員採用試験に合格した時の喜びは、今でも忘れることができない。
自死した2人の若い教員も、大きな希望を胸に抱いていたのだろうと思う。2人の悔しさは、僕の何倍、否、何十倍だったろう。
「うつ病」などの精神疾患で休職をした教員は、2006年度に4,765人にのぼり、過去最高を記録した(文部科学省発表)。
今、学校現場はどうなっているのか?
「教育改革」の大きな流れの中で、学校で働く教職員は生き生きと働けているのだろうか。そうならば、僕は退職を選択しなかったし、この二人の新人教員も自死をしなかっただろうと思う。
僕は、僕自身の経験を通して、今の学校現場がどうなっているのかを報告しようと思う。これは、僕個人の記録ではあるが、多くの現場教員の「叫び」でもある。
本文からも一つだけ引用させてもらいます。
今の学校は、教員が子どものことで悩むことが充分にできない状態にある。マスコミなどが、子どもや保護者が変わったという論調をしきりに流しているが、子どもや保護者が変わったのではない。国の教育行政が大きく変わったのである。
一言で言えば学校に「競争原理」を導入したことだ。子どもには学力向上と教員には職階制(教員の格差付け制度)である。
みなさんの周りでも起こっていることではないですか。
こうしたことは、学校のみならず、社会のいたるところで起こっていることなのかもしれません。
そう思って読むと、いろいろなことが見えてきます。
現在の教育改革の本質に、私たちは気づかなければいけないと思います。
それは決して子どもたちだけの問題ではないのです。
簡単に読める本です。
ぜひお薦めします。
コモンズ書店からもどうぞ。
■毎朝15分間の音読(百瀬昭次 エイチアンドアイ 1429円)
先日、日本経営道協会のフォーラムでお会いした百瀬さんが最近出版された本です。
百瀬さんは、教育の荒廃に危機感をもって、勤めていた会社を辞めて百瀬創造教育研究所を設立しました。
もう30年以上前の1976年です。
これまでの活動振りは、百瀬創造教育研究所のホームページをご覧ください。
本著は、百瀬さんの長年の実績を踏まえて、家庭の持ち味を生かした真の人材育成法について述べたものです。
それも極めて実践的に書かれていますので、だれでも今日から実現できます。
百瀬さんの出発点は、「子育ては偉業だ」と言うところから出発します。
そして同時に、「子どもたちは偉大だ」と考えています。
私が共感するのは、まさにその点です。
その2点さえしっかりしていれば、子育てはうまくいくでしょう。
その2点がしっかりしていなければ、今の日本のように少子化も家庭崩壊も学校荒廃も直らないでしょう。
教育の要諦は「人間学」の基本の修得にある、と百瀬さんは言います。
そして「子どもたちはずつと以前から「人間学」の基本を心底求めていた」のに、
世の親たちのみならず教育関係者たちまでもが、そのことに気づいていなかったというのです。
この点も同感です。
子どもたちは、大人以上に物事の本質を見極めます。
その時期にこそ、本質を見る目を応援することは大切です。
たぶん理解力も、大人たちより優れているでしょう。
では、具体的にはどうすればよいのか。
百瀬さんの提案する方法はいたって簡単です。
「人間学」の基本をうたった適切な手本となる本を一冊選び、それを毎日「15分間」音読すること、
これを継続し、中身がすっかり頭に入るまで(マスターできるまで)貫徹することです。
この考えに共感して実践している学校がいくつかあります。
音読する本には、百瀬さんの書いた『君たちは偉大だ』が使われています。
百瀬さんの提案のポイントは、『君たちは偉大だ』の音読の勧めにあるのです。
こう書くと、自分の著書の勧めではないかと受け取る人もいるかもしれません。
しかし、そうではありません。
子どもに向けた人間学の本も含めて、それが百瀬さんの提案する子育て法なのです。
実践した子どもたちの反応はとても感動的です。
その結果、この活動は広がりだしているようです。
百瀬さんの提案する方法は、子育てに限った話ではないように思います。
企業における人材育成にも参考になるはずです。
音読の効用は大きいはずです。
子どもをお持ちの方や教育関係者にはお薦めします。
コモンズ書店からも購入できます。
■「開運!パワースポット「神社」へ行こう」
一条真也監修 PHP文庫 533円
今回はちょっと軽い本の紹介です。
最近、若い人の中で神社への関心が高まっているのだそうです。
そんな動きに合わせて出版されたのが、この本です。
ですから若い人向けの軽いつくりになっています。
いつもとちょっと場違いの本ではあるのですが、監修が一条真也さんであり、
しかも私も好きな神社の関係の本ですので、紹介させてもらうことにしました。
一条さんの「神社論」があれば、おもしろいと思うのですが、
今回は監修者のため、いつものような示唆に富む神社論はありません。
しかし、内容は結構おもしろく、いわば「神社入門書」になっています。
全体は、「神社のそぼくな疑問20」「儀式と行事」「歴史と種類」「全国神社めぐり」の4部構成です。
それぞれが項目別に、簡潔に読みやすく書かれていますので、気楽に読めます。
興味を持った項目をぱらぱらと読むのもいいです。
たとえば「おみくじの吉と凶の割合はどれくらい
の頁を開くと、浅草寺の凶の割合は30%、日枝神社は0%などと言う図が出てきます。
参拝の作法や祝詞の解説もあります。
この本を読んでおくと、神社の風景が少し良く見えてくるかもしれません。
いつか一条さんには、本格的な神社論を期待しています。
■『なぜ、今「子育ち支援」なのか−子どもと大人が育ちあうしくみと空間づくり』
子育ち学ネットワーク 学文社 1900円
次々と友人が本を出版するので、自分が関わった本を紹介するのが遅れてしまいました。
出版されてから2か月も経ちましたが、紹介させてもらいます。
子育ち学ネットワークが関わって出版した4冊目の本になります。
今回も、深作拓郎さんが代表をつとめる子育ち学ネットワークのコアメンバーが分担執筆しています。
私もコラムに寄稿させてもらいました。
深作さんの紹介文を引用させてもらいます。
「子育ち」視点に立ち、さまざまな視野から子ども自身が育つ力を尊重した地域での豊かな実践と先端の研究を積極的に取り入れて結合させていこうと若手の研究者と実践者が集い、2年以上の交流研究を続けてきました。
その想いと研究活動の一端をまとめたものです。
3部構成となっていて、第1部の総論編では、「子育ち」の概念を教育・発達心理・政策動向から探っています。
第2部は、全国各地で取り組まれている子育ち支援の実践から5本を選び紹介しています。
これらの実践には、いくつかの共通項があります。
それは、子どもの育ちを支えるための視点であり、それに取り組む大人の姿勢でもあります。
第3部は、編集委員によるそれぞれの視点から探る「子育ち」の論考です。
子どもの育ちは、教育学や心理学だけは網羅できない学際的要素があります。そこへのチャレンジの意味も兼ねています。
まだ途中経過ですので、理論も稚拙な域を拭いきれませんが、意気込みを汲み取っていただき、忌憚の無いご意見をいただければと思います。
事務局長の星野一人さんによる「子育ち・子育てをめぐる政策の15年史」も掲載されていますが、国としての子育て哲学が垣間見えてきます。
国の少子化対策には大きな違和感を感じざるを得ません。
星野さんは、こう書いています(文章は一部変更)。
日本は子どもの権利条約を批准しているのですが、その後現在に至るまで、同条約の理念をふまえて行われた政策はきわめて少ないのが特徴です。国連子どもの権利委員会でも、二度にわたり日本政府に対して、多くの懸念事項を表明し、勧告も行われています。
すっかり定着してしまった「心の教育」「奉仕活動」といったキーワードのなかで、少子化への対策と新しい「公共」の創出という「社会的要請」のなかで、地域社会を舞台とした子育ち・子育て関連の施策群が展開されていますが、それらの施策は依然として「大人の都合」で行われていたに過ぎないといえるのではないでしょうか。
子育ち・子育て施策を検討するにあたっては「地方自治」の視点を忘れてはならないことを付言しておきたいと思います。基礎自治体がどのような子育ち・子育てのプランを描いていくのか、子どもや親、地域住民との共同という視点もふまえながら、今後の取り組みに期待したいところです。
星野さんは、具体的な施策はいわゆる有識者ばかりでなく、子どもの現場に寄り添ってきた職員や地域住民を交えて、子どもの育ちを第一義的に考慮した内容のものが打ち出される必要だと書いています。
全く同感です。
長年、現場に寄り添って活動してきた星野さんの言葉には、とても共感できるものがあります。
だからこそ、子育て視点ではなく、子育ち哲学が必要になってきているように思います。
子育ち学ネットワークでは、この本をテキストのしたワークショップの展開を応援したいそうです。
もし開催を企画してくれるところがあれば、ご連絡ください。
ちなみに過去に出版された本は次の3冊です。
●「子育ち支援の創造」
小木美代子、立柳聡、深作拓郎、星野一人編著 学文社
●「子どもの豊かな育ちと地域支援」
深作拓郎ほか 学文社
●「子育ち学へのアプローチ」小木美代子
立柳聡 深作拓郎 エイデル研究所
コモンズ書籍経由でアマゾンから購入できます。
■会社員のためのCSR経営
清水正道ほか 第一法規 1714円
先週、紹介したCC戦略の本の著者の一人でもある、清水さんも参加した 琉球大学での連続講座をもとにして編集された本です。
私は昨今のCSR議論には大きな違和感をもっていますが、この本は共感できるところが多々ありました。
広義の記録をベースにしているので、とても読みやすいですし、編集の視点に好感が持てました。
たとえば、本書の「おわりに」に、著者の一人、公認会計士の大久保和孝さんはこう書いています。
今の経済社会を一言で言い表すと、「無知にして形式主義に走り、社会全体が思考停止状態に
陥っている」と表現せざるをえないのかもしれません。
形式論理と制度重視でCSRを語っている人が多いのに辟易している私としては、あれっと思いました。
大久保さんは本分で、CSRをこう定義しています。
企業が社会からの期待や要請を正しく理解したうえで、
事業活動を通じた対応を図ることで、結果として当該組織の持続的成長を実現すること。
続いて13人の人がCSR経営に関して論じていますが、いずれにもしっかりしたメッセージを感じます。
CSR論議のきらいな私は、清水さんのところだけ読もうと思っていたのですが、大久保さんの最初の「経営の本質としてのCSR」のメッセージに魅かれて。ついつい全部を一気に読んでしまいました。
危機管理とコンプライアンスについても郷原信郎さんが明確に切り込んでいます。
そこで紹介されている不二家事件の実態は私にはいささかの驚きでした。
まあ、そんな面白いメッセージがいろいろとあります。
退屈なCSR論が多い中で、本書はライブで具体的、しかもホリスティックな視野が感じられます。
CSRに関心のある方にはぜひお薦めしたいです。
清水さんは、CSRとコミュニケーション戦略を書いていますが、
清水さんが目指すCSRや企業コミュニケーション戦略の方向性が明確に示されています。
ダイナミックなCSR、ダイナミックな関係性を清水さんはメッセージしています。
週間報告にも書きましたが、この分野で清水さんが新しい取り組みを始めるような気配を感じます。
清水さんの次の本が待ち遠しいです。
企業関係者にぜひお薦めしたい1冊です。
コモンズ書店からも購入できます。
■「CC戦略の理論と実践−環境・CSR・共生」
清水正道ほか 同友館 2600円
日本広報学会時代の友人たちが共著で書いた、コーポレート・コミュニケーション(CC)に関する最新の書籍です。
企業にとってのCC戦略の重要性はますます高まっています。
競争戦略や成長戦略を支えていくのは、まさにCC活動です。
ただ重要なのは、CCを「企業からの情報発信」と捉えるのではなく、「組織と人との関係性」と捉える視点をもつことです。
著者たちは、長年、企業の広報活動の現場にも関わってきた人たちですので、
本書では単なる机上論ではなく、そうした現実の流れを踏まえた、ライブなCC論が語られています。
これからの企業のあり方を考える上での示唆がたくさん読み取れます。
本書は企業広報だけに焦点をあてたものではありません。
目次を見ればわかりますが、行政やNPOのコミュニケーション戦略にも言及しています。
第1章 企業社会の変容と広報戦略への視点
第2章 コーポレート・コミュニケーション
第3章 企業の社会活動とコミュニケーション
第4章 新しい時代の広報・コミュニケーション
第5章 行政・NPOのコミュニケーション
第6章 広報・コミュニケーションマネジメント
第7章 広報・コミュニケーションの理論と歴史
議論は広範囲にわたっていますが、それぞれに新鮮味もあります。
書名に「環境・CSR・共生」とついているように、新しい話題もしっかりと取り上げられています。
現代の広報活動の戦略化を目指した体系整理や実践的な戦略論ですので、
企業の経営者や経営参謀は多くの実践的なヒントが得られるでしょう。
しかし、それだけではありません。
広報・コミュニケーションマネジメントでは、ハーバーマスの「コミュニケーション的権力」やハンナ・アレントまで紹介されていますし、
終章の「広報・コミュニケーションの理論と歴史」には、プラトンやアウグスチヌスまで登場します。
もちろん東洋思想におけるコミュニケーションも語られています。
本書が単に平板な実務書になっていないのは、著者たちの持っている視野の広がりやビジョンの豊かさの表われではないかと思います。
「組織と人との関係性」としてのコミュニケーション戦略論は、これからの企業の大きなテーマになるでしょう。
私自身は、コミュニケーションとは信頼性の向上を通して社会コストを削減することだと考えていますが、
もしそうであれば、社会との関係、人間との関係において、語られる必要があります。
そうした視点からも、いろいろと示唆が得られるCC論です。
コモンズ書店からも購入できます。
■歴史のかげにグルメあり
黒岩比佐子 文春新書 800円
黒岩さんの最新作です。
元祖食育の村井弦斎の評伝を著して以来、黒岩さんは食に関心を深めているようで、「食育のススメ」に続く食シリーズ第3弾です。
食は、文化や生活の基本ですから、そこを通してあらゆるものが見えてきます。
それもたぶん「本音」で見えてくるのが面白いところでしょう。
本書では、幕末のペリー来航から、明治維新、大津事件、日清・日露戦争、明治末期の大逆事件まで、明治の著名な人物とさまざまな事件を取り上げながら、食と歴史を絡ませた興味深い12の物語が語られています。
黒岩さんは、「午餐合や晩餐合のメニューからは、主催者がその料理や酒にこめた思いが伝わってきます。明治人のグルメ度の高さにも驚かずにはいられません。その一方で、捕虜収容所の食事や監欺の食事も、さまざまなことを物語っています。調べていくにつれて、これまで知っているつもりだった事件の別の意味に気づくことになり、たくさんの発見がありました。胸を躍らせながら、楽しく書くことができました」と書いてきました。
読んでみて、そのことがよくわかります。
こういうエピソードも一緒に歴史が学べたら、歴史好きの人は増えるでしょうし、きっと忘れないでしょう。
今まで全く私には存在感のなかったニコライ皇太子の表情が伝わってきましたし、本書に登場する人たちへの好感度も増しました。
明治天皇の人間的な側面も語られていて、とても好感をもてました。
私に一番面白かった話を一つだけ紹介させてもらいます。
幸徳秋水に関して書かれた「アナーキストの菜食論」の中に出てくる話です。
犬や猫が好きな堺利彦は、動物虐待防止会の会員になったことで、動物を殺してその肉を食べることへの感情が鋭敏になった。だが、次第に社会主義の思想から、肉食そのものに対する疑問が生じてきたのだった。堺によれば、世の競争論者は生物界の生存競争を見て、人間界の階級制度や貧富の格差を是認しているが、社会主義者は弱い者を踏み倒さず、自由競争の代わりに相互扶助で、安楽で競争のない世界をつくろうと望んでいるのだという。
そのため、社会主義研究会では、毎回のように肉食問題が持ち上がり、「人間と動物との境界線は何処に引く乎」「肉食を廃した所で、植物も矢張り生物では無い乎、(中略)然らば人間は結局何を食物とすべきである乎」などの質問が相次いだ。
なんだかほのぼのしてきます。
このまま進めば、日本の社会主義も新しい時代を開く役割を果たせたでしょうね。
私はかなり本気でそう考えました。
あまり賛成はしてもらえないかもしれませんね。
楽しい本ですので、グルメに興味のない人にもお薦めします。
コモンズ書店からアマゾンでの購入もできます。
■「働きがいのある会社‐日本におけるベスト25」
斎藤智文 労務行政 2500円(税込)
Great Place to Work(GPTW)はというのをご存知でしょうか。
従業員の働きがいの視点から、会社を評価し、会社をもっともっと魅力的にしていこうという活動です。
本部はアメリカにありますが、この数年世界中に広がりだしている活動です。
この活動を日本に紹介し、日本での活動を推進してきたのが、斎藤さんです。
斎藤さんはこれまで日本能率協会コンサルティングで、この活動に取り組んできましたが、
今度、同社からスピンアウトし、働きがいのある会社研究所を設立しました。
Great Place to Workの思想をさらに広げていきたいというのが斎藤さんの思いです。
その斎藤さんが、最近出版したのが本書です。
神戸大学大学院の金井教授は、「Great Place to Workの日本デビューに寄せて」という文章を本書に寄せています。
斎藤さんと出会ったのはもう20年近く前になるでしょうか。
当時、私はまだ企業に関わる仕事に大きな魅力を感じており、日本能率協会ともいろいろと接点がありました。
その後、私自身は企業の動きに失望し、まちづくりやNPOの世界にのめりこんでいましたが、
斎藤さんの名前は雑誌などで時々は意見していました。
一昨年でしょうか、次世代育成研究会で斎藤さんに久しぶりに会いました。
そしてGreat Place to Workに取り組んでいることを知りました。
25年前に東レで実現したかったことの一つです。
斎藤さんからは時々情報をもらっていましたが、斎藤さんも独立されたので、
一度お会いしたいと思っていたら、本書を持ってオフィスに来てくれました。
いろいろと話してみて、斉藤さんの経営観は私のそれと極めて近いことがわかりました。
本書を読んで、ますますそう思いました。
本書は、経営に発想の転換を求めています。
ぜひ多くの企業人、あるいは組織人(行政やNPO)に読んでほしい本です。
Great Place to Work調査(働きがいのある会社)調査は、1998年以来、毎年アメリカで行われ、
その結果は「フォーチュン」に掲載され、話題を呼んでいます。
以前、従業員のモチベーションの高さでサウスウエスト航空が話題になりましたが、
それはこの調査の第1回目で、同社がベスト1になったからだそうです。
日本でも斎藤さんたちが中心になって3年前から始まり、結果は毎年、日経ビジネスで発表されています。
本書は日米の調査結果を踏まえながら、Great Place to Workの考え方とその実現策を理論的かつ具体的にまとめたものです。
事例も豊富ですし、なによりもこれまでの調査実績を踏まえての、
斎藤さんの経営論(Great Place to Workの理論的背景と言ってもいいですが)が示唆に富んでいます。
長くなるので、そのいくつかを箇条書きで紹介します。
・「働きがい」には会社全体を覆う「信頼」の文化が不可欠である。
・Work Harder時代から、Work Smarter時代を経て、今はWork Togetherの時代。
・従業員以外の何も新しい価値を生み出すことはできない。
・「組織における働きがい」と「仕事のやりがい」は別のもの。
どうですか、読みたくなりませんか。
日本企業の強みと弱みに関しても、たくさんの示唆を得ることができます。
私には共感するところが実にたくさんありました。
おそらくそれは、この調査が「従業員の生の声」をベースに組み立てられているからだろうと思います。
現場にこそ真実はある。
これは私の信条の一つです。
Great Place to Work活動は、来年からきっと本格的に拡がっていくでしょう。
いえ、そうしなければ、日本の企業は疲弊していくばかりです。
Great Place to Work活動が、日本の企業を変えていくことに期待したいです。
斎藤さんにがんばってもらわなければいけません。
私もまた久しぶりに、企業に関わろうかという気が出てきたような気がします。
コモンズ書店からアマゾンでの購入もできます。
企業を変えたいと思っている方はぜひお読みください。
動き方がきっとわかってきます。
■「新」平和主義の論理
(川本兼 明石書店 2008)
平和をライフワークにされてきた川本さんが、いよいよ実践に向けて動き出す段階に入りました。
本書は、その決意宣言書でもあります。
川本さんの著書に関しては、毎回、このコーナーで紹介してきました。
これまでに著書は次をご覧ください。
川本さんは、これまでは主に若者に向けて語りかけてきましたが、私のような世代のものが読んでも示唆に富むものでした。
残念ながら読者が多いとはいえない状況です。
今回は、読者のターゲットを変えました。
これまでの著作活動の、いわば集大成です。
川本さんは、高校の教師ですが、それとこの活動とは峻別して考えています。
ですからこれまでは執筆活動が中心でした。
しかし、その川本さんも間もなく定年です。
たぶん実践に向かうでしょう。
今の時代状況は、それを求めています。
いま動かなければ、また繰り返しです。
川本さんの新平和主義の特徴は次の3点です。
@「戦争そのもの」「戦争ができる国家」の否定
A「希望する平和」ではなく「獲得する平和」という平和観
B基本的人権としての平和権
これらは、このサイトや私のブログの根底にある、組織起点の発想から個人起点の発想へという世界像のパラダイムシフトと符号しています。
本書の内容の紹介は今回はやめます。
ぜひ読んでほしいからです。
それに代えて、はじめにで川本さんが書かれていることを少し長いですが、一部を省略させてもらいながら、引用させてもらいます。
ここ数年の間私は、主に若い読者を対象に本を書いてきました。
これからの日本や世界を担っていく若い読者に私と一緒に考えていって欲しいと考えたからです。
しかし、この本は、「戦争を知らない『元』子供たち」であるわが世代を対象に書きました。
その理由は、現在の日本の状況を見て、私たちの世代が本当にこのような国を作ろうと思ったかを問いたいからです。
「戦争を知らない『元』子供たち」たちは、戦争体験を通じて獲得した日本国民の戦後の「感覚」の真っ只中で育っています。
そして、「戦争を知らない『元』子供たち」は、学生運動などを通じてかつては戦後の日本を作ろうと考えました。
その私たちの世代が、本当にこのような国を作ろうと思っていたのか?
防衛庁が防衛省になり、海外派遣が自衛隊の本来任務になってしまった国。
すべての学校で「君が代」を歌うことが強制されていても何ら問題にされない国。
「勝ち組」「負け組」という言葉が情け容赦なく使われるようになってしまった国。
貧富の差がこれほどに拡大してしまっているのに労働組合がただ傍観しているしかできない国。
「革新」という言葉が姿を消し、二大政党が大連立を組むための試みまでもが行われる国。
そして、何よりも、学生や若者が何事に対しても自らの意思を表明しなくなってしまっている国……。
戦争体験を通じて獲得した日本国民の戦後の「感覚」は、多くの点ですでに西欧型民主主義やソ連型社会主義(=社会主義型民主主義)の考え方を超えていた。
しかし、わが国民はそれを表す言葉(ロゴス)や論理(ロゴス)や普遍原理(ロゴス)を持ってはおらず、そこでわが国は、その日本国民の「感覚」とは異なる方向へと歩むことになってしまった。
したがって、「戦争を知らない『元』子供たち」は日本国民の戦後の「感覚」に「言葉(ロゴス)」を与えなければならず、そしてもしそのことが可能であれば、日本国民は本当の意味での国際貢献を行えるようになり、世界をリードすることになる。
「戦争を知らない『元』子供たち」は、子供の頃、「戦争を知っている大人たち」に「どうして反対しなかったのか」「どうして抵抗しなかったのか」と問いかけました。
そのことが大人たちをいらつかせ、そのいらつきから発せられる「戦争も知らないくせに…」という言葉に対して、「戦争を知らない子供たち」の歌が生まれたのですが、しかし、これからは私たちの世代が「どうして反対しなかったのか」「どうして抵抗しなかったのか」と問われかねません。
そこで私は、この本でわが世代に本当にこのような国を作ろうと思ったかを問い、そして「戦後日本の再構築」を呼びかけたいのです。
読まなければという気になったら、ぜひお読みください。
感想なども聞かせてもらえるとうれしいです。
川本さんにお願いして、一度、話を聴く会を開催したいと思っています。
関心のある方はご連絡ください。
5人集まったら開催する予定です。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「つくってみよう
まちの安全・安心マップ」
傘木宏夫 自治体研究社 1333円(税別)
傘木さんは、長野県の大町市に拠点を置く、NPO地域づくり工房の代表ですが、
地元でまちづくり活動に取り組みながら、全国的にもさまざまな活動をされています。
私が知り合ったのは、コムケア活動のおかげですが、
そこで傘木さんが企画したプロジェクトに関心を持ったのが最初です。
そのプロジェクトは残念ながら予想外の「事件」によって傘木さんの思うようには展開できなかったのですが、
その時の傘木さんの対応の姿勢がとても心に残ったのです。
プロジェクトは成功するに越したことはありませんが、
それ以上に大切なのはプロセスであり考え方だと思っている私には、とても印象に残りました。
その後、傘木さんが主催する会にゲストとして呼ばれたことがあります。
地域に立脚して、住民主役の姿勢で地域づくりに取り組んでいる傘木さんの誠実さを感じました。
しかも傘木さんはそうした活動と並行して、地域づくり関係の研究所などにも参加しながら、
現場に埋没することなく、その世界を広げ深めているのです。
いわゆる「土の人」でもあり「風の人」でもあるのです。
その傘木さんから、新著が送られてきました。
それが、この本です。
「安全・安心マップ」。まさにいま各地で求められているものです。
傘木さんの実際の体験を基本においた実践書ですから、とても読みやすく説得力があります。
協働が新しい段階に入ってきたのだと、私はこの本を読んで実感しました。
この本で紹介されているのは、子どもやお年寄りがむしろ主役になって地域づくりの取り組む事例ですが、そこでは行政主導の形式的な協働のまちづくりではなく、住民同士の協働の実践への展望が見えてきます。
地道な活動を重ねてきた傘木さんならではの、思想を背景にした実践書です。
「安全・安心マップ」は、完成したマップが重要なのではありません。
マップづくりのプロセスがとても大きな意味を持っています。
私も数年前、自治会長を引き受けた時に、「安全・安心マップ」の取り組もうと思いました。
残念ながら、その時は実現できませんでしたが、この本があれば少し違った展開ができたかもしれません。
自治会や学校、あるいは老人会などで、
この本を参考に、各地の「安全・安心マップ」づくりが広がるといいなと思います。
子育て関係のNPOやグループでも、ぜひ取り組むといいのではないかと思います。
あんまり本の内容紹介にはなっていませんが、とても良い本です。
まちづくりや暮らしに関心のある人にお薦めします。
■「新・挑戦する独創企業」
浜銀総合研究所経営コンサルティング部編著 プレジデント社 1800円(税別)
昨年、この欄でもご紹介した、「挑戦する独創企業」の続編です。
浜銀総合研究所経営コンサルティング部は、「先見性と創造性と専門性を発揮し、幅広い情報の提供を通じて地域の将来の発展に貢献する」ことをミッションに、主に中小企業を対象に、現場に足を踏み入れての問題解決支援のコンサルティング活動に取り組んでいます。
そこで出会った元気な企業を、その独創性に主に着目して紹介してくれているのが本書です。
この本の編集の中心になっている浜銀総合研究所の寺本明輝さんのメッセージが、ますます冴えてきています。
寺本さんは、これまでの豊富な事例体験から、こういいます。
独創企業に見られる特徴的な企業文化を抽出していくと、改めて植物の生き方に似ていることに気づく。
厳しい環境変化の中にあって、風向き(外部環境)はなかなか変えられない。
しかし、根の張り方(組織能力)を変えることは十分可能なはずだ。
植物の生き方にも通じる、 独創企業の環境対応のマネジメントには、中小企業が存続・発展し続けるためのヒントが隠されている。
こう書かれている第1章「植物の生き方に学ぶ中小企業経営」は、とても示唆に富んでいます。
中小企業経営とありますが、大企業にとっても学ぶことは多いです。
つづいて、キラリと輝く独創企業19社の事例が、「経営理念とビジョン」「事業の仕組み」「組織とマネジメント」「技術と技能」「製品(商品)開発力」という5つの切り口で紹介されています。
いずれの事例も面白いですが、それぞれに、前著と同じように、寺本さんの解題的なコメントがついています。
たくさんの企業経営現場に触れ、多くの企業経営者に会っている寺本さんの心身から発せられているメッセージだけに、説得力もありますし、含蓄もあります。
どれだけ消化できるかは、むしろ読者の問題かもしれません。
寺本さんは、こうも書いています。
成熟化した社会において、質的向上はさまざまな局面で問われている。
しかしながら、企業経営の現場では、まだまだ売上高、生産高、シェアなど量の追求に躍起になっているのが現実だ。
その結果、価格競争による利益不足が差別化投資の不足を招くという悪循環に陥っている企業が少なくない。
量の追求に血眼になっている限り、価格競争という体力消耗戦から抜け出すことはできない。
経営資源の量で大企業に劣る中小企業が、体力消耗戦に挑んでも勝ち目がないのは明らかだ。
成熟経済の時代においては、独創化に成功した企業だけが存続・発展を許されるのである。
共感できます。
そしてこれは、単に大企業に対する中小企業の戦略ではなく、企業そのもののあり方へのメッセージだと思います。
企業経営に関わる皆さんに、ぜひ読んでいただきたい1冊です。
現場の知がふんだんに感じ取れるはずです。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「UD革命―思いやりの復権」
ばばこういち+安藤千賀 リベルタ出版 1800円
CSテレビの「よみがえれニッポン」の番組で、
6年以上にわたって、UD.ユニバーサルデザインに取り組んでいるのが、ばばさんと安藤さんです。
私もその番組には何回か出演しましたが、
お2人の関心は、デザインではなくて、思想としてのユニバーサルデザインなのです。
したがって当初はいささかの違和感がありましたが、そのうちに、私もその情熱に取り込まれてしまいました。
それに6年も継続して取り組んでいる姿勢は、それだけでも感心します。
この6年間の活動を踏まえた、いわば中間報告が本書です。
お2人のユニバーサルデザイン論がとても具体的に語られています。
思想としてのユニバーサルデザインですから、
プロダクトデザインの話よりももっと幅広い世界が語られています。
法テラス病院や診療所の話、行政やまちづくりの話などが、とてもわかりやすく紹介されています。
ねじれ国会はUD的などというメッセージもあります。
私が関わった美野里町(現小美玉市)の文化センターの話も出てきます。
社会派ジャーナリストのばばさんのシャープな目とフットワーク抜群の若い安藤さんの素直な目が、
とてもいいバランスで組み合わさっているように思います。
この番組に関わった人たちの、それぞれのユニバーサルデザイン論もありますが、
それぞれが勝手に書いているのが愉快です。
ユニバーサルデザインの本質の一つは「寛容さ」であり、
昨今のユニバーサルデザインの動きには多様性が欠落しているような気がしている私としては、
この部分にこそ、ばばさんのユニバーサルデザイン論の本質が見えるような気もしました。
しかし、ばばさんがメッセージしたいことは明確です。
最終章でばばさんはこう書いています。
経済力や軍事力が力の本質として存在する中で、
国際的なリーダーシップをとるために、私はユニバーサルデザインを国是にして掲げることを提唱したい。
「相手の立場で考え」「対話と参加」を大切にするユニバーサルデザインの思想は、
地球人にとって何よりも大事な地球益第一の運動につながる。
国是としてのユニバーサルデザインとは、
日本が環境保全を積極的に推進し、世界平和のために戦争を起こさぬ断固たる姿勢を貫くことである。
その意味で日本国憲法は、ユニバーサルデザインの思想そのものだと言えるだろう。
実例も多くて、読みやすい本ですので、夏休みの合間にでもぜひお読みください。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「戦争絶滅へ、人間復活へ」
むのたけじ 聞き手黒岩比佐子 岩波新書 2008
「食育のススメ」の黒岩比佐子さんの尽力で実現した、たぶん後世に残る1冊です。
黒岩さんからはむのたけじさんのお話を何回か聞いていました。
いつかきっと本になるだろうなと思っていたら、黒岩さんが聞き手になっての本になりました。
最高の聞き手とめぐり合えたむのさんの幸せと社会の幸運をとてもうれしく思います。
少し褒めすぎのように思えるかもしれませんが、本書を読んでもらえれば、きっと納得してもらえるでしょう。
93歳のむのさんの体験に裏付けられたメッセージはいずれも心に響きます。
そして確信を持った理想への姿勢が伝わってきて、元気づけられます。
私の目指す生き方とこれほどに重なっていたのかと、改めて驚きました。
もちろん私はまだ、その目指す生き方には程遠い生き方でしかありませんが、最近いささかめげていたので、大きな元気をもらった気分です。
日本は新憲法で完全に交戦権を奪われた。憲法9条は、軍国日本に対する死刑判決だとむのさんは言います。
国家への死刑判決。
アメリカにとっては、実に皮肉な話ですが、国家を否定された日本のその後の歩みは、まさにそれに符合しています。
そして、むのさんはこういいます。
「戦争を永久に放棄する」という文字通りに、憲法9条を実現するためには、私たち一人ひとりがどんな生き方をしなければいけないのか。それを考えるところから、人類の平和への道しるべが見えてくるのはないか。
私なりに解釈すれば、国家から自由になる生き方です。
さらにこうもいいます。
もう一度、一人、一つ、一個というところから始めよう、ということです。
結局、大事なのは、私を救えるのは私以外にないということです。私は私であり、私自身を大事にして自分に誇りを感じ、志をもって生きるということ。そうすると、他の人のこともよく考えることができる。自分を大事に思う人間でなければ、他人を大事にすることもできません。結局、人を変えるものはやはり自分で、他力によって人は変わりません。
元気づけられます。
すべての出発点は、自分の生き方なのです。
現代の社会に対しても、むのさんは述べています。
私はこれまで93年も生きてきたけれども、日本の社会がこんなにもそわそわして落ち着きがなくなったのは、見たことがない。なにもかもが細切れに切れてしまって、バラバラになっている。だから、いまの若い世代の人、20代や30代の人たちがわが身を落ち着けることができず、非常にそわそわしているというのは、彼らが悪いのではなくて、社会の状況がそうさせているのだろうと思う。
この視点に立たない限り、昨今のさまざまな事件の本質は見えてこないと私も思います。
きりがないですね。
ここで引用させてもらったのは、ほんの一部です。
こういうメッセージがふんだんにちりばめられている本です。
聞き手の黒岩さんの発言にもたくさんの示唆を感じます。
単なる聞き手ではなく、引出し手であり、むのさんに異を唱えることも含めて、むのさんの発言と共振しているのが読んでいて気持ちがいいです。
現場に立脚している黒岩さんの現代への憤りも時に感じられますが、まあ、それは読んでのお楽しみです。
ぜひ多くの人に読んでほしいです。
近くの書店で購入して読んでください。
新書ですからすぐ読めますし、コーヒー2杯分で購入できます。
近くに書店がない場合は、アマゾンで申し込んでください。
次のところから簡単に申し込めます。
戦争絶滅へ、人間復活へ―93歳・ジャーナリストの発言
(岩波新書 新赤版 1140)
ぜひ読んでほしい1冊です。
そして生き方を少しでも変えてもらえるとうれしいです。
自分を大切にする生き方に、です。
私たちにできることは、ほんとうにたくさんあるのですから。
*黒岩さんが、日本近代文学館主催・夏の文学教室で、.「1905年、戒厳令下の東京」の講演をします。
会場は有楽町駅すぐのビックカメラ7階「よみうりホール」。詳しくは日本近代文学館のホームページをご覧ください。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「法則の法則―成功は「引き寄せ」られるか」
一条真也 三五館 2008年 1500円
一条さんから本書が贈られてきた時、「やっぱり」と思いました。
一条さんからは、この本の構想は聞いたことはなかったのですが、
何となく一条さんがいつか書くだろうなと思っていた書名の本だったからです。
しかし読んでみたら、私が予想していた内容を超えていました。
一条さんがこれまでずっとメッセージしてきたことが結論として書かれていたのです。
それは一条さんの「究極の成功法則」です。
ハートフル・ソサエティの基本原則と言ってもいいかもしれません。
一条さんは、メールでこう書いてきてくれました。
お送りした『法則の法則』ですが、自然科学・社会科学・人文科学の境界、
あるいは文系・理系の境界を超えた「リベラル・アーツ」の書を意識して書きました。
結論はおそらく意外に思われることでしょうが、わたしの本心そのままです。
『般若心経』『論語』『聖書』に、『国富論』『人口論』『資本論』・・・と、
古今東西の名著を「法則」というキーワードで読み解いた、
小生なりのグレートブック・ガイドともなっています。
佐藤さんのお好きなアダム・スミスの『道徳感情論』も出てきますよ。
本書は、「法則ってなんだろう?」という問いかけから始まります。
そして、「これから、私と一緒に「法則」をめぐる不思議な旅に出かけませんか」と誘います。
そして、旅の終わりには「あなたはすべての「法則」を貫く「法則の法則」について知ることでしょう」と約束してくれるのです。
その約束は少なくとも私には満足できるものでした。
もっともあまりにも素直すぎて、不満な人もいるかもしれません。
それを見越して、一条さんは自分で「結論はおそらく意外と思われるでしょう」と言っているのかもしれませんが、
私には極めて納得できる結論でした。
もう一条さんの世界にはまってしまっているからかもしれません。
しかし、それが本書の結論に、これほど「あっけらかん」と置かれるとは、思ってもいませんでした。
それが、私の「予想」を超えていたところです。
その「究極の成功法則」は2つありますが、ここで紹介するのは差し控えます。
本書を読んでいって、そこにたどり着くのが一番いいと思いますので。
そこに至るまでの「法則の旅」は面白いですし、いろんなヒントに出会えるはずです。
いくつかのキーワードを書いておきます。
「万有引力の法則」から「引き寄せの法則」へ
「求めよ、さらば与えられん」と「足るを知る、感謝のこころ」
黒魔術と白魔術
仏教と現代物理学
なんだか読みたくなりませんか。
最後に一条さんはこう書いています(一部省略)。
わたしにはいくつかの自分なりの「法則」のようなものがあります。
そうした「プチ法則」は、わたしが生きていく上で大切な支えとなっています。
結局、「法則」は人間が生きていくために役に立つものでなければならないと、私は考えます。
人間を幸せにするもの、人間を元気にするもの、人間を励ますもの、
そんな「プチ法則」たちをこれからも見つけていきたいと思います。
そして、みなさんにも、きっとそんな「プチ法則」があるはずです。
法則は「縛られるもの」ではなく、「創るもの」と考えると、なんだかわくわくしてきますね。 疲れている方は、ぜひ本書をお読みになって、元気になってください。
ここからも購入できます。
■「間違いだらけのメンタルヘルス」
久保田浩也 法研 1500円
最近、メンタルヘルスが大きな話題になっています。
この言葉に私が最初に出会ったのは30年前です。
当時、日本生産本部でこの問題に取り組んでいた久保田さんからお聞きしたのです。
久保田さんは、メンタルヘルス研究委員会を発足させ、企業に「メンタルヘルス診断」を広げようとしていました。
なぜ「身体」的な健康診断は企業や学校でやるのに、精神的な健康診断はしないのか。
久保田さんの主張は説得力がありました。
しかしなぜか広がりませんでした。
そして、メンタルヘルスの捉え方は全く違う方向に行ってしまいました。
久保田浩也さんは、メンタルヘルスをライフワークにされています。
いまはご自身のメンタルヘルス総合研究所をを拠点にして活動されています。
最近のメンタルヘルスは、本書で久保田さんが指摘しているように、「心の病気」をイメージさせるものになってしまっています。
私自身、いささかの違和感を持ちながらも、そういう意味で使うようになってしまっています。
反省しなければいけません。
しかし、元祖メンタルヘルスの久保田さんは違います。
本書の副題は「心が病気になる前に、打つ手はないのか」です。
久保田さんのメッセージは明確です。
病気にならないようにすることこそが、メンタルヘルス問題だろうということです。
全くその通りです。
問題の定義を間違えれば、問題を解くことはできません。
まさにいま、私たちはそうした間違いに陥っているように思います。
本書は、そうした状況を変えていくための啓発の書であり、実践提案の書です。
ぜひ多くの人に読んでほしいと思います。
久保田さんの長年の蓄積と世間の流れへの苛立ち?もあって、
本書はいささか欲張りすぎて、しかも「密度」が高いため、軽く読むのは難しいかもしれませんが、
さまざまな示唆と実践的なヒントが満載されています。
それに著者自身が自称しているように、久保田さんはかなりの「へそ曲がり」ですので、言葉だけで語る人たちを信用していません。
ですから、時に辛らつな言葉で「常識」を切り捨てることもありますので、
ムッとする人もいるかもしれませんが、 その主張はとても理に適っています。
前フリを長々と書いてしまい、肝心の内容の紹介ができませんでしたが、
企業や学校で、久保田さんが提案するようなスタイルでのメンタルヘルスが一般化し、心の体操が広がることを期待したいです。
いまの社会を変えていくためのヒントが、そこにあるように思います。
内容紹介の代わりに、本書から2つの文章を紹介させてもらいます。
心の問題を、心の病の問題と多くの人は勘違いしています。
心の問題は、健康な人を含めたすべての人の問題であり、
すべての企業・組織・集団の問題であり、
すべての学校、すべての家庭の問題です。
心の健康管理のモデルは身体の健康管理にあります。
私たちが必要としているのは、身体の健康でもありませんし、心の健康でもありません。
普通の人に必要なのは心と身体が一体となった、私たち一人ひとりの「人間の管理」です。
ちなみに、本書には誰でも簡単に習得できる、久保田さんが開発した「心の柔軟体操」の方法も掲載されています。
ここからも購入できます。
■愛する人を亡くした人へ
一条真也 現代書林 2007年 1100円
長いこと、机の上に置かれていた一条真也さんの「愛する人を亡くした人へ」を読みました。
昨年発売された本ですが、まさに愛する人を亡くした私には開くに開けずにいたため、紹介ができずにいました。
ブログの節子への挽歌でも書きましたが、「愛する人を亡くした人へ」と一括して語られることへの違和感もありました。
この種の本は、むしろその状況になってからではなく、その状況から一番遠い状況の時によんでおくのがいいように思います。
一度読んでおけば、万一そうなった時にもきっと読めるでしょう。
本書は、そういう本のようにも思います。
つまり愛する人がいる人は、あらかじめ読んでおいたほうがいいということです。
それに本書を読むと、人に対するやさしさが高まるのではないかと思います。
本書の帯に「現代人のための心の書」とありますが、理屈っぽい生き方の本よりも私にははいりやすいように思います。
本書の私の読後感は一部、ブログに書きましたが、ここでは私の心にすっと入ってきたことを一つだけ書いておきます。
第4章は「いのちー永遠につながっています」というタイトルです。
そこで「孝」の思想が語られています。
いのちは時間を超えてつながっている、
一条さんはこう書いています。
現在生きているわたしたちは、自らの生命の糸をたぐっていくと、
はるかな過去にも、はるかな未来にも、祖先も子孫も含め、みなと一緒に共に生きている。
わたしたちは個体としての生物ではなくひとつの生命として、過去も現在も未来も一緒に生きるわけです。
そして、こう考えれば、「死」へのまなざしは「生」へのまなざしへと一気に逆転する、というのです。
私にはとてもよくわかります。
表題のメッセージが強いですが、むしろ多くの人に気楽に読んでほしいと思います。
一条さんは、グリーフケアの文化を広げたいと思っています。
本書がそうした活動を加速させることを期待しています。
一条さんのホームページもぜひご覧ください。
■世界をつくった八大聖人−人類の教師たちのメッセージ
一条真也 PHP新書 700円
最近はあまり聞きませんが、私が子どもの頃は世界の四大聖人という言葉がよく使われていました。
その言葉を久しぶりに聞いたのは、たしか2年前、佐久間庸和さんからでした。
「四大聖人って誰が言い出したのでしょうね」という話でした。
そういえば、この捉え方は考えてみると実に奇妙な発想です。
まさに人類的視点がなければ、このように文化や宗教を超えた発想は出てこないはずです。
それまで全く思ってもいなかったのですが、
こうした発想の根底には、西欧近代とは全く別の視点がありますから、
だれが言い出したのかは興味ある話です。
そう思いましたが、いかにも古い言葉ですので、それ以来すっかり忘れてしまっていました。
しかし佐久間さんはそうではありませんでした。
一条真也は佐久間さんのペンネームですが、その疑問を発展させて本を書きました。
それがこの本です。
佐久間さんが取り上げた八大聖人は ブッダ、ムハンマド、イエス、モーセ、ソクラテス、孔子、老子、そして聖徳太子です。
その人たちを「人類の教師」と位置づけ、そのメッセージを読み解こうというのが本書です。
そのメッセージから、人類の未来の希望につながるヒントが読み取れると佐久間さんはいいます。
そしてそのヒントを具体的に語ってくれます。
その根底にあるのは、佐久間さん(一条さん)の一連の著作を通じて語られている、平成心学の理念です。
私にとって興味深かったのは、聖徳太子の話でした。
佐久間さんの太子論は初めて読むような気がしますが、佐久間さんは聖徳太子を龍だというのです。
龍となれば、当然、水が出てきますが、
人類の現状を水と火から読み解きながら、火と水をつなげて、火水(かみ)というのです。
コンセプトメーカーにしてコピーライターの一条真也さんの面目躍如ですが、
そこに込められた佐久間さんの願いには共感できます。
さらに佐久間さんは、友人の鎌田東二さんの「聖徳太子は集合的無意識」論に共感して、
「聖徳太子は人類の集合的無意識の原型(元型)だ」と言い切ります。
そしてこういいます。
「聖徳太子という存在自体が巨大な意味を秘めた人類への暗号のような気がしてならない」
興味を持たれたら、ぜひ本書をお読みください。
私自身は、「不寛容で閉じられた存在」から「寛容な開かれた存在」へと宗教が進化する段階に来ていると思っていますが(一神教のような初期宗教の役割は終わったように思います)、まさかその鍵が「聖徳太子」にあるとは思ってもいませんでした。
一条さんの「聖徳太子の謎」をぜひ読んでみたいと思っています。
聖徳太子に込められた人類の謎をぜひ解き明かしてほしいです。
■実践社会調査入門
玉野和志 世界思想社 2008 2000円
今回はちょっとテキスト風の本の紹介です。
社会調査とは、人々の意識や行動などの実態をとらえるための調査のことです。
統計学と同じく、社会調査もまた近代の申し子のような気もしますが、
そもそも社会調査は労働者の生活実態を可視化することから始まったとされており、
その点では統計学とは違って、人間の視点を大事にしています。
そして、人々の主体的な動きを支援する源泉にもなったとされています。
まちづくりや市民活動においても、社会調査は効果的な材料を与えてくれますが、
最近ではしっかりした社会調査に代えて、安直な統計的情報ですませてしまう場合もあります。
それでは、管理のための実態把握はできても実践のための実態把握はできないように思います。
話が脱線してしまいましたが、社会調査はいま改めて必要になってきているように思います。
本書はそうした社会調査の入門テキストです。
著者の玉野さんとは一昨年、青森県の三沢市のまちづくりプロジェクトでご一緒しました。
実はその前に、玉野さんの著書「東京のローカル・コミュニティ」を読んで、
ぜひとも玉野さんとご一緒したいと思っていたのが幸いに実現したのです。
そこで玉野さんのたしかな住民視点と社会調査重視の姿勢を感じました。
「東京のローカル・コミュニティ」が面白かった理由がわかった感じがしました。
しっかりした社会調査を踏まえていたからなのです。しかも住民視点で。
本書は、社会調査の基本的な手引書ですが、
単に手法を書き連ねただけではなく、社会調査を実際に重ねてきた実践者の思いが感じられるとともに、
社会調査に取り組む基本的な姿勢に関しても、さまざまなメッセージがちりばめられています。
たとえば、最後の方にこんな記載があります。
社会調査はつねに人々の自発的な協力を得られるように、
きちんとした説明責任を果たし、かつそれが人々に何らかのメリットをもたらすものであることを示さなければならない。
社会調査の倫理とは、一言でいえば、そのような信頼を失わないように誠実に努めることに他ならない。
そしてそうしたことの一つとして、
スポンサー向けの報告書や研究のための報告書にとどめずに、対象者向けの報告書を作成することを提案しています。
とても共感できます。
最後のメッセージも共感します。
労働者大衆が歴史の表舞台に躍り出た近代という時代に成立した社会調査の方法が、
日本においても、われわれが自分自身を知り、自らを社会全体の中に位置づける道具として定着していくことを、切に願うものである。
ちょっとテキスト風なので誰にでもというわけではありませんが、
まちづくりや社会問題の解決に取り組んでいる人たちにはお勧めです。
ここからも購入できます。
■中小企業にしかできない持続可能型社会の企業経営
森建司 サンライズ出版 2008
滋賀県に本社のある叶V江州の森会長は、会社の経営者でありながら、
昨今の経済至上主義の企業のあり方に大きな異論をもっています。
異論を持っているだけではなく、実際に現状を変えようと積極的に活動しています。
このコーナーでも前に「循環型社会入門」をご紹介しましたが、最近、また本を出版されました。
それが本書ですが、書名では伝わりにくいですが、持続可能な社会に向けての企業のあり方を提案している本です。
とてもわかりやすく、明確です。
たとえばこう書いています。
経済至上主義社会は「企業」という法人の利益を目指すものであり、
そこに関わる人々の利益を目指すものではない。
コストダウンによってもたらされるモノの豊かさは、人間関係を希薄にし、人のモノに対する愛着を失わせ、結果として古いもの、歴史的なものへの軽視を生んだ。新しいモノに囲まれている人間、それが常識になってしまっている。
共有していた従前の仲間が、そろって生き残ることを前提として考えるのは、いまでは、経営学で論じるものでなく、単なる倫理の問題として片付けられているのだろう。
法治国家として、法律遵守は当然のこととして受け入れても、法律に書かれていない社会基準、倫理、道徳をはじめ、世にいう良識によって戒められてきた戒律のようなものには、ほとんど関心を寄せていない。少しあれば便利で役にも立つが、大量にあることによって人間に害を与えるものや、市場の要請があるからといって、社会悪と成っているにもかかわらず、これらをいまだに大量生産を続けてやまない大企業はいかに多いことか。
引用が多すぎましたが、とても共感できます。
日本経団連の会長とは大違いです。
新江州は包装資材を扱う会社であるにもかかわらず、包装はできるだけないほうがいいと主張しているのです。
そして実際にそうした取り組みもしてきたのですが、なかなか成功しなかったようです。
消費者に関してもこう書いています。
供給側がいかに改革を目指して努力しても、生活者である消費者の意識や行動が変わらないと大勢は変わらない。その消費者の意識は、供給側の長期にわたる洗脳とも言える激しい宣伝活動の結果によるものでもあろうが、「より廉価なもの、品質の保証されたもの、いつでもほしい時ほしい場所で供給されるもの」。この3条件を消費者が求め続けている限り、包装はますます過剰になり、削減されることはまずない。
こうした状況を打破するのは、まさに中小企業だと森さんは主張します。
全く同感です。
大企業が主導する産業体制の中では、持続可能な社会など夢のまた夢かもしれません。
中小企業の人ではなく、大企業の人、とりわけ経営者や一般の生活者に読んでほしい本です。
森さんは滋賀県で、MOH運動というのを展開しています。
ぜひともそのサイトも見てください。
手軽に読めるサイズの本ですので、ぜひとも読んでみてください。
お薦めします。
購入はコモンズ書店からどうぞ。
■「神さまがいっぱい」
武原敢 清流出版 2004
2004年に出版された本ですが、先日のコムケアフォーラムで出会った著者の武原さんからいただき、読ませてもらいました。
とても面白く、いろいろな人にも読んでほしいという気がして、紹介させてもらうことにしました。
この本は、武原さんが10年ほど前に体験したカナダのカソリック系の知的障害者施設で、障害者と一緒に過ごした半年間の生活記録です。
帯にこう書かれています。
「素直に生きてごらん!
知的障害者と呼ばれる彼ら。
みんな個性的。そして自分勝手。
でも、みんな優しくて、みんな自分の世界を生きている」
そうした優しく個性的な人たちとの交流が、実に生き生きとえがかれています。
そして、著者の武原さんもまた、彼らに負けずに、素直に生きていることが、素直に表現されているのです。
私も10年ほど前に、知的障害者施設で宿泊させてもらい、彼らの優しさに感動したことがあります。
彼らを見ていると、私たちが失っていることに気付かされます。
武原さんは、6ヶ月のアシスタント試用期間の後、結局は「解雇」されるのですが、その顛末もとても生き生きと書かれています。
あまり書いてしまうとこの本を読む魅力がそがれかねませんが、
日本における福祉のあり方やNPOのあり方に対して、とても大きな問題提起をしているように思います。
私にはすごく面白い本でした。
その施設に本採用になるかどうかの評価の際に、武原さんはこんなコメントをもらいます。
「仕事はよくこなしているが、残念ながら今回もあなたからのギフトがなんなのかということが、はっきりしなかったわ」
自分でしかできない何か、ここではそれが「ギフト」と呼ばれ最も重視されている、と武原さんは書いています。
ギフトの思想。
私たちの生き方や組織のあり方を考える上での本質的なものを含意しているような気がします。
共感したり、示唆をもらったりしたことはたくさんありますが、もう一つだけ書きます。
施設の利用者である、「知的障害者」たちについての記述です。
「彼らが、暴力を感じさせないのは、追い出されるのが怖いからではなく、そんなものは人間として生きていく上で必要ない、と本能的にとらえているからではないかと思う。たとえ力でねじ伏せることができたにしても、相手の心までは決して変えられるものではなく、そんな他人を蹴落としてまでして手に入れた安らぎに本物の喜びはない。いつか自分も誰かにやられるのでは、と常に不安がつきまとっていくことになる」
私たちの生き方が問題なのです。
ぜひ多くの人に読んでほしいと思い、紹介させてもらいました。
なお、著者の主宰しているネットワーク「つなぐ」も共感できます。
良かったら見てください。
■食育のススメ
黒岩比佐子 文春新書 850円
最近の食育ブームのあり方にいささかの違和感を持っているものとして、
「食育」という言葉には食傷しているのですが、この本はその種の本ではまったくありません。
むしろ「食育」とは何なのかを問題提起している本なのです。
抽象的な問題提起ではありません。
極めて具体的に、実践的にメッセージしています。
著者は、数年前に『「食道楽」の人
村井弦斎』を書いた黒岩さんです。
書名は、食育のススメですが、何を食べたらいいとかというような話ではありません。
明治のベストセラー小説「食道楽」のあらすじの紹介を軸にして、当時の風潮が生き生きと描かれています。
読んでいると、果たして日本の社会は明治以来、進歩したのだろうかと言う疑問を持ってしまうほどです。
「いのち」と「くらし」を直接的に支えている食はすべての文化の基本だと私は思っています。
食から社会を見ると様々なことが見えてくる、まさにそのことが見事に証明されている本です。
狭義の「食育」ではなく、広義の「食育」、つまり、文化論、社会論、人生論なのです。
いまの管理志向の食育発想とは全く違う食育文化が展望できます。
読み物としても面白いので、ぜひみなさんにも気楽に読んでほしいと思います。
もちろん中心に置かれているのは「食」です。
今の社会とつなげながら読むと、面白さは倍化します。
たとえば、食品の見分け方と保存法の話を読むと、食文化がいかに後退しているかがわかります。
そして、昨今の食品偽装事件の意味することも見えてくるような気がします。
さらにいえば、「食育」という言葉が取り違えられているのではないかとさえ思ってしまいます。
一編の小説が、国民病だった脚気の克服に大きな影響を与えた話も示唆に富みます。
小説とは何かを考えさせられます。
「食医」の話も出てきます。
しばらく前に話題になった韓国ドラマ「チャングム」で「食医」が話題になりましたが、
中国では医師が、食医、疾医、瘍医、獣医の4つに別れていて、
食医の地位が最も高かったそうですが、そんな話も出てきます。
弦斎は、この本で、家庭にも食医が必要だと書いているそうですが、驚きました。
最近、統合医療が話題ですが、どうも西洋医学の体系で考えられているような気がしているのですが、
そうした違和感の理由が何となく納得できました。
統合医療の取り組み方も見直す必要があるような気がしました。
まあ、それは余計な話ですが。
このように、書き出したら切がないほど、たくさんの話題がつめられている本なのです。
他にも、教育の話、結婚や夫婦の話、美人になる方法、健康や医療の話、住宅の造り方、まあ、話題は広いです。
食事のメニューやレシピもあります。
アイスクリームやパンの作り方まであるのです。
村井弦斎はこの小説を「教訓小説」と意識していたそうです。
黒岩さんは「食育小説」だといいます。
私は生活事典の面もあるなと思いました。
出版社の紹介記事に、役立つ「食」のヒントが満載とありますが、その通りです。
長い紹介になりましたが、珈琲2杯分で購入できますので、ぜひ購読してください。
きっとこれから話題になっていく本だと思います。
ちなみに、3月2日まで横浜にある県立神奈川近代文学館で、
『「食道楽」の人 村井弦斎』の収蔵コレクション展が開催されています。
2月2日には、著者の黒岩さんの記念講演会もあります。
テーマは「食道楽と日露戦争」。
いずれも黒岩さんの新著のテーマです。
お知らせは案内サイトをご覧下さい。
ご関心のある方は、ぜひどうぞ。
■「書」から戴いた宝物
市川明徳 新風舎 2008
とても不思議な本です。
著者の市川さんが不思議な人ですので、
それと符合するのですが、感想をどう書いていいか迷います。
著者の市川さんは大企業のエンジニアです。
幼少の頃から書に親しみ、ついに本を出してしまったのです。
それで贈ってくれたのですが、実に不思議な本なのです。
市川さんと知り合ってかなりたちます。
企業変革の提案を目指すエンジニアの研究会で、彼が選んだテーマが水琴窟です。
日本庭園にある、水滴により琴のような音が発生する仕掛けです。
実に澄んだ音が響きます。それを社内に着けたらどうかというのです。
とてもいい提案だったと思いますが、実現はしなかったようです。
湯島のオープンサロンにも何回か来ました。
生き方において個性的なのです。一度会ったら忘れられません。
さて本の話です。
構成そのものが、そして編集そのもの、文章そのものが、あまり読者を意識していないのです。
最初は「大学合格体験記」ですが、その文章を書いたのが18歳、まさに受験の体験をしたその時なのです。
そしてそれに続いて、「今振り返る大学受験生時代」という文章が続きます。
よくあるパターンではないかと思うでしょうが、内容が不思議なのです。
自分用のメモをそのまま集めたような内容なのです。
ところが、それが奇妙に面白いのです。
それに続けて、23歳の時に書いた「科学者の倣(おご)り」なる小論が出てきます。
そこになんと、こんな文章が出てきます。
「有と無は同じことである」。
そしてそれがきちんと証明されているのです。
そして次第に、東洋学の話に移ります。
そのあたりから書が出てきます。
書家 手島右郷の「崩壊」の写真が登場し、文字が実体を表現できることが語られます。
こんなふうにまさに著者の人生録なのですが、一貫した読み物にはなっておらずに、
ひとりごとのようにさまざまなことが語られています。
いや語るというよりも、いろいろな場面で書かれた手紙や小論、あるいは書が展示されていると言っていいかもしれません。
最後に雑記と題して3つの章があります。
京都見聞録と旅行記と人生のテーマです。
その題につられて読むと肩透かしを食らった気がします。
まあ、こういう風に書いてくると、わけの分からない本のように思うでしょうが、実際にわけのわからない本なのです。
自分の備忘録ではないかという気がして途中で読むのを止めようとしたのですが、
何となく引き込まれて結局、最後まで読んでしまいました。
そして読んでしまうと実に不思議なのですが、市川さんのメッセージが伝わってきたのです。
はじめに、で彼はこう書いています。
私は学歴からすれば(途中省略)京都大学大学院機械工学研究科修士課程卒、
その後、エンジニアになる。と言えば、世間ではエリート的な存在かもしれない。
が、私がこれだけの世界しか知らなかったら、おそらく何か怪しい団体に入っていたか、
挫折して、どこかで「のたれ死」にしていたかどちらかだったと思う。
私の人生を2倍以上面白く豊かにしてくれたのが書道およびそれを取り巻く世界との出会いだった。
この本を読んで市川さんのことがようやくわかりだしました。
念のためにいえば、書に関してはいろいろと面白い話が出てきますし、教えられることも少なくありません。
市川さんが「書」を通じて得た、たくさんの「宝物」からも学ぶことは少なくありません。
不思議な本です。
みなさんにお勧めすべきかどうか迷いますが、
まぁ、こういう本のつくりかたもあるということで紹介しておきます。
みなさんも、ご自分の本をつくってみませんか。
市川さんは1月の16日から豊田市の美術館松欅堂で個展を開催しますが、
そこにいくと市川さんに会えるかもしれません。
不思議な人です。
会ったらよろしくお伝えください。
■「茶をたのしむ」
監修一条真也 現代書林 2007
一条さんの監修で始まった「日本人の癒し」シリーズの1冊目です。
副題に「ハートフルティーのすすめ」とあるように、
一条さんが目指す「ハートフル・ソサエティ」に向けてのガイドブックと言ってもいいでしょう。
序文に一条さんが「茶の大いなる慈悲」を書かれていますが、
一条さんらしいパースペクティブをもった示唆に富む文章です。
一条さんはコーヒーも大好きなのですが、こう書いています。
コーヒーが意識を「外」に向かわせる飲み物なら、緑茶は「内」へと向かわせます。
こうも言います。
(理性の飲み物であるコーヒーとは違い)緑茶は「理性」の飲み物ではありません。
むしろ、「理性」を解体して「瞑想」へと向かわせる力を持っています。
茶室には「平和」と「平等」が凝縮されていると一条さんはいいます。
そこまではそうだよなと読み進められますが、一条さんはそこでは止まりません
さらに、茶室とはあらゆる宗教が共生する場所だと続けます。
手水鉢は神道、掛軸は仏教、作法は儒教、方角方位は道教、袱紗はキリスト教を象徴しているというのです。
宗教への造詣に深い一条さんらしい話です。
一期一会という究極の人間関係を生み出すのもお茶だといいます。
また日本では、
「寿司屋でも蕎麦屋でも日本料理店でも、店に入ると一杯のお茶が出される。もちろん無料で、いくらおかわりしてもタダ」
ということに大きな意味を読み取っています。
私自身も、そうした中にこそ、日本人の生き方や日本社会の文化の本質があるように思っています。
まさに一条さんがライフワークにしているホスピタリティの本質が含意されています。
とても短い文章の中に、たくさんの示唆が込められています。
茶の歴史や効用、入れ方や種類などの紹介もあります。
長年お茶の製造販売に取り組んでいる丸島園の若い経営者や日本茶インストラクターとの対談もあります。
ふだん何気なく飲んでいるお茶が秘めている大きなメッセージを改めて考えさせられる好著です。
このシリーズはこれから「花」や「旅館」が計画されているようです。
一条さんが創りだす、ハートフルライフの世界が育っていくのが楽しみです。
■「編集者
国木田独歩の時代」
黒岩比佐子 角川選書 1700円(税別)
黒岩さんが2年がかりで取り組んでいた本が完成しました。
今回は国木田独歩です。
但し、黒岩さんの関心は、作家としての独歩ではなく、ジャーナリスト・編集者としての独歩です。
実にたくさんの新しい発見があります。
黒岩さんからの手紙の一部を引用させてもらいます。
明治の日露戦争期の前後に、編集長として数多くの雑誌を創刊し、
その後は自ら「独歩杜」 を興して、特色のあるグラフィックな雑誌を発行し続けた独歩。
調べるにつれて思いがけない事実が次々にわかってきて、
独歩とその周囲の人たちに惹きつけられることになりました。
しかし、「独歩社」は破産という鈷末を竣えることになり、
その一年余りのちに独歩は36歳で亡くなっています。
彼の起伏に富んだ人生の大半は、情熱あふれる編集者として費やされたのでした。
現在、ほとんど忘れられている独歩が手がけた雑誌や「独歩杜」について、
本書をきっかけに知っていただければ、これほど光栄なことはありません。
ちょうど来年は国木田独歩没後百年の紀念の年です。
その直前に本書を刊行できたことを、心からうれく思っています。
独歩の実に魅力的な生き方が、生き生きと描かれています。
私は途中2回ほど涙が出るほどでした。
しかし、それ以上に興味を持ったのは、黒岩さんらしい徹底的な調査によるさまざまな発見です。
それも今の時代にも通ずるメッセージ性を持ったものが少なくありません。
時代が捨ててきた社会の文化や人間的な生き方も思い出させてくれます。
国木田独歩に関しては、私には自然主義作家ということと「武蔵野」しか知らなかったのですが、
本書を読んで、独歩の生き方にこそ大きなメッセージがあることに気づきました。
社会を見る目も共感できます。
まさに黒岩さんが言うように、編集者にしてジャーナリストなのです。
ちょっと一般の人には敬遠されそうな書名ですが、
もし働き方に悩んでいる人は231頁にある独歩の手紙を読んでみてください。
元気がもらえます。
その前にある「独歩社は自由の国」のあたりも示唆に富んでいます。
格差社会に憤慨している人は、212頁の底辺社会ルポルタージュへの独歩の指摘を読んでください。
アイデアに枯渇している人は、独歩のアイデアと実践力に刺激を受けてください。
さまざまな挑戦をしてきた独歩の事業戦力には刺激を受けるはずです。
明治という時代、あるいは日本の社会に育てられてきたもの、などを知る上でも興味ある材料がたくさん書かれています。
いろいろとご紹介したいところはあるのですが、中途半端な紹介よりも読んでもらうのが一番です。
文章はとても読みやすいので気楽に読めますし、なかには「謎解き」もあります。
「謎の女写真師」の正体を見事に解明してくれるのです。
前半は黒岩さんらしくややディテールが豊か過ぎるので、慣れていない人はちょっと疲れるかもしれませんが、
それが後半の面白さにつながっていきますので我慢してください。
後半はきっと引き込まれていきます。
これが黒岩スタイルなのです。
私も、前半を読んだ後、少し休んで読もうと思っていたにもかかわらず、
後半に入った途端に止められなくなり、最後まで読んでしまいました。
最後に、なぜか黒岩さんはこう書いています。
ジャーナリズムと戦争の関係は、現代に生きる私たちにとっても重要なテーマになっている。
未来を見つめるだけではなく、忘却されている過去をふり返ることも必要ではないか。
改めていま、そう思わずにはいられない。
私も本書を読んで、改めてそう思いました。
仕事にはすぐには役立たないかもしれませんが、お薦めします。
ここから購入できます。
■「わが人生の「八美道」」
佐久間進 現代書林 1000円(税別)
佐久間進さんは、このコーナーによく登場する佐久間庸和(一条真也)さんの父上です。
この度、旭日小綬章を受賞された記念に、ご自身の生き方を振り返り、それを「八美道」としてまとめたのが本書です。
とてもコンパクト(ソフトカバーの新書版)で、気持ちの落ち着く本です。
というのも、内容は「こころにしみこむ温かい言葉と、こころを癒す珠玉の写真」で構成されているからです。
写真は著者の友人の、沖縄の写真家、安田淳夫さんの沖縄の写真です。
その写真に添えるような形で、著者独自の「八美道」が書かれ、その合間にホッとするメッセージが書かれています。
読む、というよりも、眺めながら考える、というような本です。
たとえば、こんな文章が出てきます。
年をとったら、
ひとつ、ひとつ、捨てていくこと。
それしかない。
それがいい、
またこんなのもあります。
ありがとう、が一番
どこにでも
だれにでも
ありがとう
ありがとうの数だけ
あなたは幸せになれるのだから
著者は、日本にホスピタリティ産業の草分けの一人です。
10年以上前に北九州市で始まったホスピタリティ運動のシンポジウムに参加させてもらった時にお会いしましたが、その時は北九州市観光協会の会長でした。
実に壮大な構想力をお持ちで刺激をもらいましたが、その縁で私と一条真也さんとの付き合いも始まりました。
最近は一条さんの本ばかり読ませてもらっていましたが、今回は久しぶりに佐久間進さんの本です。
本の最後に、「ホスピタリティ産業の確立を目指して」という小論が載っています。
短いものですが、とても示唆に富んでいます。
たとえば、「ホスピタリティとは美しさ」と書いています。
単なる「おもてなし」ではなく、もう一歩踏み込んで「心が入る」=「美しさが出る」、これが真のホスピタリティだというのです。
美しさといえば、佐久間さんは、小笠原流礼法にも通じており、現在は日本儀礼文化協会の会長でもあります。
佐久間さんのホスピタリティ論をいつか本にしてほしいと思っていますが、
この本の行間にはそうしたホスピタリティの本質が込められているようにも思います。
いつも携行して、ちょっとした時間ができた時に好きなページを開いてみると、きっと元気と知恵をもらえるでしょう。
そんな本です。
本書の最後に、こんな文章が書かれています。
求道とは、自分をどこまで高められるか。
その挑戦が、私の人生目標です。
疲れた企業人の皆さんに、特にお薦めします。
■「CSRイニシアチブ」
日本経営倫理学会CSRイニシアチブ委員会 日本規格協会 2600円
CSR(企業の社会的責任)は古くて新しい問題ですが、いまや企業にとっては存続をかけた戦略的な課題になってきています。
しかし、言葉の広がりのわりには実体はかなり曖昧のまま、形式的な取り組みに終始しているケースが少なくないように思います。
私にとっては、この問題は「経営論」というよりも「企業論」だと考えていますので、昨今の取り組みにはむしろ大きな不信感を持っていますが、経営論としてのCSRももっと真剣に取り組まれるべきだと思います。
CSRは大企業の道楽やイメージ戦力ではなく、まさに業績に直結する問題だからです。
日本経営倫理学会では、すでに2年前に、企業がCSRを進めていく上での羅針盤となる、経営理念、行動憲章、行動基準を「CSRイニシアチブ」としてまとめ、発表しています。
本書は、その実践的なガイドブックです。
その具体的な展開を、各社の事例もふんだんに紹介しながら、ら実践的に解説してくれています。
体系的な項目立てを、各項目見開き2ページというスタイルでまとめていますので、関心に応じてどこからでも気楽の読めるというCSR事典でもあります。
編者の一人でもある清水正道さんは、「おわりに」でこう書いています。
効果的なCSRコミュニケーションとは、相手のステークホルダーの方々と我が社の人々とが、大所高所から肩書き付きで一方的に伝えるようなものではない。
できるだけ同じ目線で、何度でも繰り返しメッセージを伝え、反応を開き考え、改善のための行動を行い、その成果をまた伝えていく。
いわば、人と人との循環的な相互作用なのである。
同感です。
CSRとは、企業の存立基盤としての社会とのコラボレーション活動なのだと思います。
本書を読むと、そのコラボレーションの切り口が見つかるかもしれません。
ここから購入できます。
一条さんの最新作です。
副題に「人生の糧になる101冊の本」とありますが、
30年にわたって、人の生き方、あり方を追及してきた到知出版社の書籍の中から、
101冊の本を簡潔に紹介したブックガイドです。
人間学というとなにやら難しく聞こえますが、一条さんは人間学について、こう書いています。
人間学とは、人間がいかに心ゆたかに生き生きと生きていくかを考えることである。
だから、人間学は楽しいし、面白い。
なぜなら、わたしたちは人間だからだ。
人間にとって一番面白いものは人間に決まっているではないか。
全く同感です。
もっともこの本が主に想定しているのは企業の経営者や経営幹部です。
章立ても、「帝王学入門」「先人に学ぶ」「経営の王道」「心ゆたかに生きる」「人間らしく生きる」「言葉の宝石箱」となっています。
1冊2ページで構成されていますので、気楽に読めます。
一条さんらしいガイドになっていますので、わかりやすく読みやすいです。
企業の経営幹部の皆さんには、人間学を考えるためのガイドブックになるでしょう。
■「仏教への旅
日本・アメリカ編」
五木寛之 講談社 1700円
「仏教への旅」は何回か取りあげたので、シリーズ最終巻の「日本・アメリカ編」も紹介させてもらいます。
本書のあとがきで書かれているように、私の友人の黒岩さんが関わっていますので。
本書では、親鸞と他力と9.11を通して、新しい仏教の可能性がメッセージされています。
最近、あまり本を読む気力がなくなっていたのですが、文章に勢いがあり、今回も一気に読めました。
いつもながら安心して受け入れられる示唆もたくさん受け取りましたが、
それに加えて、現代社会に向けての強い憤りを行間に感じてしまったのは、私の現在の心境のせいかもしれません。
9.11事件の捉え方も、とても共感できました。
ニューヨークにホームレスがいなくなっていたことに、
「権力を握った為政者が本気で何かをやろうとすれば、どんなことでも可能にしてしまのだなと、つくづく痛感したものである」
というところを読んで、9,11事件の現場で五木さんが何を見てきたか、何を感じたかを勝手に想像してしまいました。
また息子を事件で亡くした母親(アデールさん)が、
その後のアメリカの動きのなかで、「私たちアメリカ人も同じことをしているのではないか」と思い、
アフガンの現地に行き、平和の活動に取り組んでいくという話は、
まさにマルチチュードの世界の広がりを示唆する話です。
他力や悪人正機の話も面白いですが、
そうしたことが現実の生活と政治と絡み合いながら語られている本書から、
時代を見る目や時代を生きる知恵がたくさんもらえます。
いつもながら、とても読みやすいです。
読んだ後、このシリーズは日本の仏教界への問題提起の本ではないかという気がしてきました。
仏教の新しい可能性もたくさん取り上げられていますが、
日本の仏教界がこうした問題提起を受けて、自らのビジョンとミッションを広く社会に発信し、動き出してほしいと思います。
できれば、五木さんにも、問題提起だけで終わるのではなく、
仏教界の人たちと一緒に、実践に向けての新しい動きを起こしてほしいと思います。
次をクリックするとコモンズ書店を通してアマゾンから本書を購入できます。
「無所有」はなんと3冊も売れてしまいました。
■「無所有」
法頂 東方出版 2001年 1600円
今回は私の知人ではない人の本の紹介です。
妻が1か月前に亡くなりました。
以来、本を読む気力を失っていましたが、
以前、五木寛之さんの「仏教への旅」を読んで、気になっていた本がありました。
亡くなった妻と、毎朝、心を通わせあうなかで、なぜかこの本が思い出されました。
そこで読んでみました。
20年前(会社を辞めた前後)から妻と話していた、
私が目指している生き方がそこにとても具体的に示唆されていました。
驚きました。
私は、目指すだけで実行にはたどりついていませんが、
本書に書かれているほとんどすべてが、私の思いに重なります。
この本の原著が書かれたのは1970年代はじめです。
今から30年以上前ですが、その頃に本書に出会っていたら、私の人生は大きく変わっていたように思います。
著者の法頂は、韓国の僧で、「華厳経」と「星の王子さま」が愛読書だそうです。
生活の基本信条は「本来無一物」。
法頂は、何かを持つということは、一方では何かに囚われるということだといいます。
そして、そのことに気づいた。法頂は、こう心に決めたそうです。
「その時から、私は1日に一つずつ自分をしばりつけている物を捨てていかなければならないと心に誓った」。
そして、実践されます。
本書は、その法頂が日々の生活の中で見聞し感じたことを書き集めた随筆集です。
とても読みやすいです。
感動的な挿話も少なくありません。
泥棒の被害を受けた話がいくつか出てきますが、実に共感します。
一人でも多くの人に読んでもらいたくて、紹介させてもらいました。
きっと生き方に、新しい視点を加えてくれると思います。
書店では見つかりませんが、アマゾンで購入できます。
ここをクリックするとそれができます。
■『「日本国民発」の平和学』
川本兼 明石書店 2600円(税別)
平和をライフワークにしている川本兼さんの最新作です。
本書は、川本平和理論の集大成ともいえますが、同時にいまの日本の状況を踏まえた「警告の書」でもあります。
しかも昨今の平和への取り組みに対しても、なぜそれが奏功していないのか、川本さん独自の視点で理論化しています。
若者を意識して書かれていますが、論旨明快で、とても説得力があります。
若者をだめにしてしまった、私たち世代も読みたい本です。
川本さんは「平和」を「民衆の戦争の苦しみからの解放が基本的人権として保障されている状態」と定義しています。
この定義には、実にさまざまなことが含意されています。
そうした平和を実現するためにどうしたらいいか。
それは本書を読んでください。
これまでの多くの「平和関係の書」とは違います。
目線が常に生活者個人にあるのです。
川本さんはいくつかの具体的な概念を提起します。
たとえば基本的人権としての「平和権」、そして「民衆の非武装権」。
これまでの平和学からは出てこない発想です。
「民衆の非武装権」とは、民衆が国家の兵員になることを拒否する権利です。
民衆による暴力を禁止し、暴力を独占することによって、近代国家は権力の基盤を確立しましたが、
それは同時に「国民を暴力に狩り出す権利」の獲得でもありました。
そのため、これまでの平和理論の中では「民衆の武装権」が問題になりました。
民衆が圧制からの自由を求めて、立ち上がる権利です。
その典型的なものが市民革命ですが、川本さんはそうした「民衆の武装権」はもはや必要なくなったといいます。
むしろそうした武装権は国家に組み込まれてしまい、実質的には国家に対する兵役義務に転化してしまったというのです。
国家による暴力行使の主体は国民です。
国家が戦争を遂行できるのは、兵員としての国民を自由に暴力遂行パワーとして使えるからです。
ブッシュや小泉が戦争をするわけではなく、現地で戦いを担うのは兵隊や自衛隊員です。
しかも彼らは原則として戦場で人を殺すことも含めた暴力の行使を拒否することは出来ないのです。
そこでは「平和のために人を殺傷する」というおかしなことが起こります。
そこで、国家による暴力行使のために強制されることを拒否する権利として、非武装権が重要になってくるというわけです。
これはガンジーの非暴力主義とも違います。
この非武装権は川本平和論のキーワードの一つですが、
こうしたいくつかの重要な概念が私たちの生活の視点で語られているのです。
そして、日本人の貴重な戦争体験を踏まえて、平和への革命をスタートさせようと呼びかけています。
その第一歩は、「戦争ができる国家」に制約を加えることだといいます。
具体的には、新しい平和憲法の制定です。
この点に関しては、今の日本の状況は全く反対の方向を向いており、
戦争をしやすくしようと多くの政治家や経済人は考えていますし、多くの国民もまたそれを支持しています。
川本さんは、そうした状況を知っていればこそ、あえて新しい平和学を提唱しているわけです。
ちなみに、川本さんは新しい平和憲法も起案しています。
これに関してはすでに別著「自分で書こう!日本国憲法改正案」を書いていますが、本書にも川本平和憲法案が掲載されています。
在野の研究者の新しい平和論。ぜひ多くの人に読んでほしいと思います。
川本さんがこれまで出版された本も、併せてお読みください。
もし著者と話し合いたいという方がいたらお知らせください。
川本さんをご紹介します。
5人以上集まれば、川本さんをお呼びして話し合いの場をつくるようにします。
いま「平和」の問題をしっかりと考えておかなければ、
この先100年、私たちはたぶん平和を手に入れることはないのではないかと私は思っています。
そうならないようにするのが、日本人のミッションではないかと思っています。
本書を読んで、平和についてぜひ考えてみてください。
■「仏教への旅 ブータン編」
(五木寛之 講談社 1700円)
同じシリーズの朝鮮半島編を紹介した関係もあって、ブータン編も紹介します。
この本づくりには、黒岩比佐子さんが深く関わっているからです。
もちろんブータンも五木さんと一緒に歩かれてきました。
黒岩さんはフリーのノンフィクションライターですが、
本書の「あとがきにかえて」で五木さんご自身がお書きになっているように、五木さんの著作にこの数年関わってきました。
これまで一度も紹介することはありませんでしたが、今回は紹介させてもらいます。
というのも、実は本書を贈ってもらってからしばらく読む時間がなかったのですが、
昨夜、真夜中に目が覚めしまったので眠気を呼び起こそうと読み出したら、引き込まれてしまって、ついに読み明かしてしまったのです。
私が目指す社会のビジョンをそこに感じたからです。
そこでちょっと寝不足で頭が整理されていないのですが、
感動が薄れないうちに、特に刺激を受けた2つのことを書いておくことにしました。
最初は輪廻転生とつながりの話です。
ブータン仏教の基本には輪廻転生思想がありますから、死者を閉じ込める墓もなく、先祖供養も行わないようです。
その延長に「つながり」が出てきます。
業と縁起によって、すべての生きるものはつながっていきます。
輪廻転生という時間を超えた縦のつながりが、いま現在の生命のつながりを意識させることになります。
すべての人、すべての生き物が、時空を超えてつながっていくわけです。
そこから出てくるのは、「みんなが幸せでなければ本当に自分の幸せはない」という発想です。
まさに私が目指す、だれもが住みやすい社会です。
チベットやブータンにある化身の考えは、こうしたことから考えると納得できますし、
家族のあり方、家族と社会のあり方にも私たちの発想とは全く違った捉え方があることを教えてくれます。
そして、そのことはブータンが取り組んでいる「国民総幸福量(GNH:Gross
National Happiness)」のテーマにつながっていきます。
これに関しては、本書をぜひ読んでください。
国民一人ひとりまでがGNP基準で考えるようになってしまった日本と、
国王までもが一人ひとりの生活のGNH基準で考えるブータン。
この違いには、歴史の岐路が含意されています。
ブータンにも近代化の波が押し寄せてきています。
今年の新春のテレビで、五木さんと塩野七生さんの対談がありました。
そこでもブータンの国民総幸福量が話題になり、
塩野さんが、一度、物質的生活を知ってしまえば、もはや戻れないと不安を表明されましたが、
五木さんは新しい生き方だと主張されていました。
私は五木さんに共感します。
ブータンの国民総幸福量の実験が、歴史を変えていくことを期待します。
その可能性を最初から諦めることはしたくはありません。
現地で体験されてきた黒岩さんも五木さんも、日本の仏教とブータン仏教は違うといいますが、
本書を読んで、私は考え方においてほとんど同じではないかと思いました。
むしろ私たちが忘れたり、気づかなくなってきた日本社会の古層が、そこに感じられます。
私の思い違いかもしれませんが。
いずれにしろ、キリスト教とイスラム教の対立に振り回される状況を変えるためにも、
仏教は大きな役割を果たせるのではないかと思います。
あんまり本書の紹介にはなりませんでしたが、ともかく示唆に富んでいます。
自分の生き方へのたくさんのヒントも得られます。
読みやすい本ですので、ぜひお薦めします。
■「共済事業と日本社会」
押尾直志監修 共済研究会編 保険毎日新聞社 1800円
いま、人々の助け合いである共済や互助会が存続の危機に立たされている。
改定された保険業法の中身が知られるにつれ、各種団体の内外から対策を求める運動が起こってきた。
共済を守ることで自らの生活と仕事、地域社会を守ろうとする人々が、組織をこえて手をつなごうとしている。
本書の出版は、共済事業が全国の職域、地域に広く根づいて国民の生活を支えている役割を伝え、
保険業法改定による共済規制が何をもたらすかといぅ問題に対して、
正確な認識を広く社会に訴えようとするものである。
本書の「あとがき」の書き出しの文章です。
悪徳保険業者を規制するはずの保険業法改定が、日本の古来の文化でもあり、いま再び見直されだしている共済文化を壊そうとしていることに関しては、これまでも何回か書いてきました。
本書は、そうしたことに危機感を強めて活動を開始した共済研究会のメンバーが緊急出版したものです。
さまざまな実績を重ねてきている現場からの報告も含めて、共済文化の現実と意義が語られています。
しかも、ただ語られているだけではなく、そこに日本社会の未来に向けての著者たちの深い思いがにじみでています。
単なる「共済事業」の本ではなく、経済主義一本やりの昨今の風潮への異議申し立てとそれに変わる新しい社会のあり方につながる提言などが込められた、社会変革の書です。
そして、私たちの社会が暮らしの中で育ててきた、支え合いの知恵を、改めて思い出させてくれる書でもあります。
ぜひとも多くの人に読んでほしい本です。
本の内容は目次から読み取ってください。
論考も事例も多岐にわたっていますが、何よりも、それぞれの現場に立脚している人たちのコラボレーションの成果であることがすばらしいです。
あとがきでも書かれていますが、この本の出版そのものが、新しい共済文化の予兆を感じさせます。
もうひとつだけ、あとがきから引用させてください。
共済は、人間の生き死に、事故、災害、人生のドラマに根ざしている。
いのちとくらし、仕事と生活、自然そして人間どうしの結びつき、つまりは、社会とリスクの現実に根ざしているのである。
その意味で、日本社会の基本形と歴史的地層・現状を反映し、支えている。
とても共感できます。
私自身も、日本の共済文化の回復を願っている者の一人ですが、
今回の保険業法改定が、共済文化の光を当てたことを、大きなチャンスとして捉えていくことが大切だと思います。
まさに禍転じて福となす、です。
そのためにも、ちょっと硬い本ではありますが、できるだけ多くの人たちに読んでほしい本です。
また関心のある方は、ぜひ共済研究会にもご参加ください。
T.共済規制の経過と内容
1.共済事業の今日的意義と法規制問題
2.日米の保険マーケット拡大と共済規制
3.共済事業の歴史と共済規制の歴史
4.共済法の現状と課題
U.共済事業の果たしている役割と課題
1.共済事業の全体像
2.協同組合共済の果たしている役割と課題
3.共済の経営問題と法規制
4.自主共済の果たしている役割と課題
5.労働組合共済の果たしている役割と課題
6.無認可共済の論議と連合の取り組み
7.PTAの「安全互助会」の果たしている役割と課題
8.知的障害者の「互助会」の果たしている役割と課題
9.労協連のCC共済の果たしている役割と課題
10.ヨーロッパにおける共済組織の位置づけと現状
資料および解説
保険業法改正問題の経過と背景資料
ちなみに、「資料および解説:保険業法改正問題の経過と背景資料」は岩川さんの力作ですが、これを読むだけでも、いろいろなことが見えてくるはずです。
コモンズ書籍経由でアマゾンから購入できます。
■「龍馬とカエサル」
(一条真也 三五館 1400円)
一条さんの今度の新著は「ハートフル・リーダーシップ」論です。
龍馬とカエサルという、魅力的な人物に生き方を題材にして、人間的魅力とは何かを縦横に語っています。
実は私はまだ完読していません。
このコーナーでは必ず読み終えた上で紹介させてもらっていますが、今回は初めての例外です。
安直に通読する本ではないと考えたのです。
いま毎日10頁ずつ読んでいます。
2頁単位でまとめられているので、とても読みやすいのですが、その2ページに実にたくさんの示唆が込められています。
ですから、むしろゆっくりと読みながら、立ち止まって自分の生き方を考えるのがよいと考えたのです。
いろいろと考えさせられることが多いです。
読みながら考える本なのです。
全体は4つに分けられています。
「リーダーの理想」「リーダーの資質」「リーダーの使命」「リーダーの条件」です。
全体を流れるのは、龍馬とカエサルへの著者の想いです。
一条さんの著作の基本コンセプトのひとつは「ハートフル」ですが、
この2人はまさにそのコンセプトを体現している「ハートフル・リーダー」なのです。
本書の冒頭で、著者はこう書いています。
リーダーとはまず、人を導く存在であり、それゆえ人を動かす存在であると言える。
では、どうやって人を動かすのか。それは、その人の心を動かすしかない。
ならば、どうやって人の心を動かすのか。
「人の心はお金で買える」と言った人物がいたけれども、もちろん、人の心はお金では買えない。
人の心を動かすことができるのは、人の心だけである。
本書では、徹底的に「心」に焦点を当てて、リーダーシップについて考えてみた。
本書は、一条さんの平成心学三部作のひとつ、「孔子とドラッカー 〜 ハートフル・マネジメント」の続編として書かれています。
孔子やドラッカーが平成心学における「知」の部分の具現者なら、龍馬やカエサルは「行」の部分の具現者だというわけです。
昨今の企業はさまざまな病理をかかえていますが、それは「心」を失ってしまったからだと思います。
企業が「心」を取り戻すには、企業のリーダーたち(経営者に限りません)が、自らの心を呼び戻さなくてはいけません。
一条さんの平成心学シリーズに私が共感している理由の一つです。
具体的な事例もふんだんに出てきて、
88項目の小見出しも示唆に富んでいて、目次を見るだけでも読みたくなってきます。
企業の経営者や管理者にはぜひともお薦めしたい1冊ですが、
自分の生き方をちょっと振り返ってみたいと思う人であれば、だれにでもお薦めしたいと思います。
そして、ぜひとも、読みながら考えてみてください。
一条さんの関連著作もぜひどうぞ。
http://www.ichijyo-shinya.com/books.html
■「こころの通う対話法」
浅野良雄 鰍ワぐまぐ 700円(送料込み)
対話法研究所の浅野良雄さんが、自らが開発された「対話法」のテキストをオンデマンド出版されました。
このコーナーでも以前、ご紹介した『輝いて生きる』(文芸社)の第2部を土台にしていますが、その後の実践を踏まえて、内容はさらにわかりやすく、かつ実践的になっています。持ち運びにも便利な小冊子スタイルなのもうれしいです。
詳しくは浅野さんの対話法研究所のホームページをご覧ください。
オンデマンド出版なので書店などでは購入できませんが、ホームページには申し込み方法なども書かれています。
本書の「はじめに」で、浅野さんは対話法の概略をこう書いています。
対話法は、「自分の考えや気持ちを言う前に、相手が言いたいことの要点を、相手に言葉で確かめる」ことを原則にしています。日常の会話のなかで、必要なときに、この原則を守ることにより、傾聴と同様、誤解を防いだり、信頼関係をはぐくむはたらきがあります。
「対話法」の原則の後半の部分が、従来の傾聴に相当するのですが、「対話法」では、この概念と技法を、新たに「確認型応答」と名づけました。傾聴という呼び方では、「耳を傾けて聞いた」あとの「応答」の重要性がぼやけてしまうからです。このように、(対話法)では、対話の原則を明確にしたり、新しい用語を取り入れたことにより、傾聴とくらべて技法の理解と習得が容易になりました。
浅野さんは各地で「対話法」の研修会やワークショップを展開していますが、本書では、一般の参加者を対象として行なった研修会の様子を再現する形で、「対話法」が実践的に説明されていますので、研修会に参加したような気分で、すいすいと読んでいけます。
基本さえマスターすれば、誰でもが自分のものにできるのが、「対話法」の特徴です。
浅野さんは、この本を読んだ人たちによって「対話法」が全国各地に広がり、快適な人間関係に裏打ちされた、安全で住みやすい社会が実現することを願っています。
コーヒー2杯分で購入できますので、ぜひみなさんもお読みください。
それによって、きっと皆さんの周辺は気持ちの良い社会になっていくはずです。
■「故郷の親が老いたとき 46の遠距離介護ストーリー」
(太田差惠子 中央法規出版
1680円)
最近、「遠距離介護」という言葉をよく聞くようになりました。
核家族社会のなかで高齢化が進むと、親の介護問題は「非日常的な事件」になりますが、
その親との生活場所が遠く離れていると、さらに問題は複雑化します。
故郷に住む親の介護のために、会社を辞めて郷里に戻った友人が、私にも何人かいますし、
働きながら週末は故郷の実家に帰る生活をしている知人もいます。
企業や行政にとっても、「遠距離介護」は真剣に考えなければならないテーマになってきています。
この「遠距離介護」という言葉を生み出したのが、本書の著者の太田さんです。
1998年、「「遠距離介護」の上手なやり方」(かんき出版)を出版し、
離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ(NPO法人パオッコの前身)を結成、
以来、太田さんは遠距離介護に取り組むたくさんの人たちと会い続けてきています。
本書は、いわばその集大成で、
46の遠距離介護の事例を紹介しながら、遠距離介護の実像を具体的に鳥瞰させてくれます。
本書の帯に書かれてあるように、
遠距離介護をしている人、離れて暮らす親の老後が気になる人にはとても参考になる内容ですが、
それ以外の人たちにもぜひ読んでほしい本です。
故郷の親が老いる前に、です。
本書の事例からは、遠距離介護という問題を超えて、
私たちの生き方やいまの社会のあり方に対するさまざまなメッセージが伝わってきます。
私たちのように、すでに親を見送った夫婦にとっても、考えさせられることがたくさんあります。
この本を読んだら、生き方が変わるかもしれません。
これからの社会に向けての大きなヒントも読み取れます。
親の介護には、その人の生き方や価値観が現出します。
あるいは、それを通して、自らの人生を考える契機になるといってもいいでしょう。
そこで問われるのは、親の介護というよりも、自らの生き方なのです。
しかも、それはいつか立場を変えて、自分にまた戻ってくる問題でもあります。
46の物語は、自らの生き方と重ねて読むと、そのことが実感できるはずです。
「親子介護」の先にある「夫婦介護」の問題を考えるヒントもありそうです。
太田さんは、本書のプロローグで、
「介護」に「遠距離」をくっつけただけのように思われがちだが、私は、それ以上の思いをこめている。
それまでは、介護といえば、食事介助やトイレ介助などの身体的介護が中心にとらえられていたが、
遠距離介護はそれ以外の意味も含めている。
家族がそばにいられないから、いわゆる「介護」が必要となる以前から困ることが生じはじめる。
と書いています。
読み流してしまいそうな、この文章に私は今の社会の本質的な問題を感じます。
そして、遠距離ではなく同居であろうと、実は同じ問題が起こってきているようにも思います。
「介護とはつながりのこと」だと考えている私にとっても、とても考えさせられるメッセージです。
いずれにしろ、「介護」問題はすべての人にとって、必ず何回か体験する問題です。
ぜひとも多くの人に読んでほしい本です。
若い世代にもぜひ読んでほしいと思います。
自らの生き方を考えるヒントがたくさん見つかるはずですから。
■「社協ノ宝もの」へぇ〜、社協ってそういう仕事なんだ!
NPO法人市民活動情報センター・ハンズオン!埼玉 600円
コムケア仲間のハンズオン!埼玉の出版第2弾です。
前作の「私のだいじな場所―公共施設の市民運営を考える」はとても好評でしたが、
本書も建設的な問題提起がたくさん含まれている興味ある内容です。
社協、つまり社会福祉協議会は、地域福祉の主役としてがんばってきましたが、
最近は新たな主役であるNPOとの関係が必ずしもよくなく、場合によっては対立関係さえ起こしているところもあります。
私も最初は、社会福祉協議会の役割はもう終わったなと考えていましたが、
コムケア活動を通して、そこで働く若い職員の情熱に触れているうちに考えが変わってきました。
少なくともこれまで社会福祉協議会が育ててきたネットワークやノウハウは大きな社会資源です。
本書は埼玉県内の社会福祉協議会の職員有志とNPOの関係者が一緒につくった本です。
そのいずれにも私の知人が少なくないのですが、
4年前からじっくりと取り組んできた活動の成果ですので、内容はとても示唆に富んでいます。
なによりもカジュアルに本音で語り合った内容が、読みやすくまとめられているのがうれしいです。
地域福祉はまちづくりそのものですし、私たちの生き方に深くつながっています。
しかし、たとえば社会福祉協議会という名前すら知らない人が少なくありません。
そういう人も含めて、
社会福祉協議会の関係者のみなさん、
さらには社会福祉協議会の現場軽視の風潮に反発している人、
逆にNPOの独善的な姿勢に反発を持っている人、
あるいは気持ちよく暮らせる社会を願っている人、
そんな人たちにぜひ読んでいただきたい小冊子です。
内容は次の通りです。
キラン★その1 うっかり本音座談会──社協ノ仕事って何だ?
キラン★その2 どっぷり旅日記──宝モノを探しに西へ
キラン★その3 ゆっくり昔話──地域福祉ノ原点にもどる
資料編:埼玉県内の社協とNPOの協働に関する調査報告
社協キャラクターコレクション2007という、楽しい特別付録までついています。
書店では購入できませんが、ハンズオン!埼玉に連絡してもらえれば購入できます。
〒330-0063埼玉県さいたま市浦和区高砂2-10-6
メールoffice@hands-on-s.org TEL/FAX
048-834-2052(担当:若尾)
この本がさらに新しい風を起こしていくことを期待しています。
■「自分なりのお別れ」
(一条真也監修 扶桑社 1400円(税別)
一条さんが監修された本です。
詳しい書名は、
『「あの人らしかったね」といわれる 自分なりのお別れ お葬式』
です。
本の帯に書かれているように、いまは、「送られかた」は自分が決められる時代なのです。
監修者の一条さんは、本名、佐久間庸和さんで、このコーナーでも著書を時々紹介させてもらっていますが、
このテーマはまさに一条さんの独断場です。
本書を送ってくれた手紙にこう書かれています。
本書は、葬儀を人間にとっての究極の自己表現としてとらえています。
現代の葬儀におけるあらゆる問題点や疑問点にも広く目を配り、
これから高齢者となってゆく団塊の世代の新しい葬儀スタイルも多数紹介しております。
(略)この本によって、多くの日本人が「死」や「葬」をタブー視せず、
日常的に考えてくれるきっかけになればと願っています。
お葬式を、それも自分のお葬式のスタイルを考えることは、若いときほど、自由に発想できるでしょう。
そして、それは生き方の問題にもつながっていきます。
そういう意味で、私はこの本をぜひ若い世代の人たちに読んでほしいと思いました。
しかし、身近な問題として考えられるのは、私のような世代かもしれません。
最初はちょっと壁があるかもしれませんが、読み出すと、おかしな言い方ですが、楽しくなってきます。
これからの生き方を考える刺激をたくさんもらえるはずです。
一条さんの監修意図は見事に成功しています。
自らの生き方を考えるために、お薦めしたい本です。
■『介護情報Q&A』
(小竹雅子 岩波ブックレット 700円)
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/
コムケア仲間の小竹雅子さんがまとめた、介護情報のわかりやすいブックレットです。
介護保険の基本的なしくみや改正の具体的内容、困ったときの解決方法、関連情報などを、
65の用語にわけて、利用する市民の立場から説明しています。
小竹さんは、市民福祉情報オフィス・ハスカップを主宰され、実に精力的に活躍されています。
そこで集まった情報を、多くのみなさんの「介護のある暮らし」に活用してもらえることを願って、この本をまとめたのです。
とても読みやすく、便利です。
それに小竹さんらしく、極めて実践的です。
本書を20冊以上、まとめて購入されたい方は小竹さんに頼むと便宜を図ってくれます。
私にご連絡ください。
■ギリシア・ローマ文化誌百科(上下)
小林雅夫・松原俊文監訳 原書房 各4300円
小林教授がまた魅力的な本を翻訳され、贈ってきてくれました。
古代世界のパノラマのヴィジュアル版で、実に楽しい本です。
600近い写真が、ていねいな解説と共に載せられていますので、それだけ見ていってもギリシア・ローマ世界を充分に堪能できます。
また単なる通史ではなく、テーマ別にかなり詳しく言及されていますので、新しい発見もたくさんあります。
厚い上下2冊セットなので、実は私も完読していませんが、とてもうれしいのは、写真の解説やコラム、それに関連文献の抄訳がいたるところにあることです。しかも、それらがばらばらにではなくつながりあう形で編集されています。
たとえば、医神アスクレピオスの聖域に立地しているエピタウロスの野外劇場の写真の説明文には、「悲劇によって観客の心にある悩みは「治癒」する」というアリストテレスのカタルシス理論が紹介されていますが、それに関連して、すぐそばにアリストテレスの詩学の抄訳が載っているのです。
ですから、野外劇場と医療とのつながりがしっかりと見えてきます。
私も以前、トルコのベルガモンのアスクレピオン(医療施設)と、その上のアクロポリスにある見事な野外劇場を訪ねてことがありますが、その二つを「メンタルケア」の視点でつなげて考えたことはありませんでした。
アスクレピオンから小高い丘に立つ大劇場は見えるのですが、さらにその後ろにはトラヤヌス神殿が見えたような気もします。
そう考えていくと、アテネのアクロポリスにも、新しい意味を感じとることが出来ます。
そこから、ギリシアの医療とはなんだったのかも想像が広がります。
別のところに書かれている医学の項目の本文に戻って読み出すと、そこにアリストファネスの喜劇「神の福」が抄訳されています。
さらに菜食主義のことまで書かれています。
ベルガモンのアスクレピオンでは、温泉療法や音楽療法の話を聴きましたが、それだけではなく、古代ギリシアの医療は東洋医学につながるホリスティックなものだったことに気づきます。
生活そのものを治療につなげていく中国での体験を、先日、福岡の西川さんからお聞きしたところですが、ギリシアのアスクレピオンでは、そうしたことが行われていたのかもしれません。
そういうふうに、古代世界のパノラマがどんどんと広がっていくのです。
好奇心を膨らませ、その好奇心をかなり満足させてくれるヒントがふんだんに込められている、これが本書の魅力です。
哲学と教育の章も、最近の日本の教育論議に重ねて読んでいくと実に面白いです。
そんなわけで、本書は、読む百科辞書でもあります。
ですから、むしろ通読するのではなく、パッと開いたところから読み出して、索引も活用しながら、前編を自由に飛びながら読むのが、本書には向いているかもしれません。
読書サーフィングが楽しめるわけです。
監訳者の小林教授は、いろいろと身体的な障害をかかえているにもかかわらず、ともかく前向きにいろいろな活動に取り組まれています。
そして奥様が、その小林教授を実にあたたかく支えているように思います。
小林教授はまた、とても人間的なあたたかさをお持ちです。
そうした人柄が、きっと本書にも影響しているはずです。
ちょっと値段が高いですが、存在感のある本書の内容を考えると、それだけの価値のある本です。
パウサニアスジャパンの皆さんや古代世界に関心のある人たち、
そしてちょっと時間が出来始めた団塊シニアの人たちには、ぜひお薦めします。
図書館で借りて読む本ではなく、購入して隣に置いておく本です。
ここから購入できます。
■「知ってビックリ!日本三大宗教のご利益」
一条真也 大和書房だいわ文庫 762円(税別)
一条真也さんの最新作です。
「ユダヤ教 vs キリスト教 vs イスラム教」(だいわ文庫)に続くものですが、今回はvs
ではなく、& でつながれています。
「神道&仏教&儒教」です。
一条さんからの手紙の文章を一部引用させてもらいます。
一神教同士の衝突が人類社会の存続を脅かす現在、わたしたちが目を向けるべきなのは、宗教の持っている寛容性だと思います。
本書で取り上げた神道、仏教、儒教の三宗教はいずれも「情」や「慈悲」や「仁」の精神を重んじた、
つまりは思いやりの心を大切にした宗教であり、
この三宗教が奇跡的に合体を果たした国こそ、わたしたちの日本です。
三宗教はまた、武士道、心学、冠婚葬祭といった子どもたちを生み出し、日本人の心の「かたち」をつくってきました。
そして、一条さんは、こう続けています。
人類の危機を救う秘密は、まさに日本人の宗教生活のなかに潜んでいるという確信の元に本書を書きました。
世界中の人々の心が「&」で満ちたアンドフル・ワールドになることを願って書きました。
書名に違和感がありますが(一条さんも反対したそうですが)、中身はしっかりした本です。
日本の三大宗教は、いうまでもなく「神道・仏教・儒教」ですが、
それらがアンドフルに生み育ててきた世界がわかりやすく描かれていますので、
前著と同じく鳥瞰的な整理をすることができますが、新しい発見もたくさんあるはずです。
なによりも、いつもながらのメッセージ性があるのがいいです。
最後のほうで、石田梅岩の心学が語られていますが、
そこで語られている「心」こそが、神道、仏教、儒教を実践的につなげる要であり、
それが一条さんの主唱しているハートフル・ソサエティにつながることが示唆されています。
先日、一条さんにお会いした時に、心学の話が出ましたが、
きっとそう遠くない時期に石田心学に関する本をまた書くのではないかという予感をもちました。楽しみです。
こうした発展が期待されるメッセージが、本書にはいろいろと込められています。
もう一つ紹介します。
こういう記述があります。
日本において共生した神道・仏教・儒教の三宗教は、冠婚葬祭において合体を果たした。
冠婚葬祭とは何か。
それは、結婚式や葬儀といった人生の二大通過儀礼を中心として、人々の心に共感を生み出す文化装置である。
つまり冠婚葬祭は日本の三大宗教の凝縮した文化であり、
それこそが日本最大の宗教ではないかという意見もあると紹介されています。
一条さん自身は、冠婚葬祭は「宗教」そのものというよりも、「宗遊」とでも呼ぶべきものだと書いていますが、
冠婚葬祭は佐久間さんの独壇場ですので、 この議論の発展は実に楽しみです。
宗遊という概念は、実に示唆に富んでいます。さて、この先が楽しみです。
他にも刺激的なメッセージや発想のヒントがいろいろ込められている本です。
文庫本という手軽な本ですので、気楽に読んでみてください。
■「仏教への旅 朝鮮半島編」
五木寛之 講談社 2007年
このコーナーでは原則として、私の友人知人の著作や友人が関わった書籍を紹介させてもらっていますが、今回は番外編です。
五木寛之さんの「仏教への旅」は全6巻ですが、今回、取り上げるのは3冊目の「朝鮮半島編」です。
この前に出た「インド編」(上下)は、友人の黒岩比佐子さんがインド取材に同行し、構成も担当されたのですが、
今回は黒岩さんの担当ではありません。
以前、黒岩さんが「インド編」を贈ってくださった時に、朝鮮半島編に興味があるとお伝えしたのですが、
そのことを知った編集の方が、私たち夫婦にプレゼントしてくださったのです。
そのお礼を兼ねて、このコーナーで紹介しようと思ったのですが、この間、いろいろあって、読むのが遅れてしまっていたのです。
今朝、早く起きて読ませてもらいました。
読んで、なぜ黒岩さんが私たち夫婦に贈ってくれたのか意味がわかりました。
いまの私たち夫婦の心境にそのままズバッと入ってきました。
黒岩さんに、そして編集者の方に感謝しなければいけません。
本書の紹介をしだすと際限がなさそうです。
五木さんの個人的な話と韓国の仏教事情が、重なるように語られているので、
とても読みやすく、しかも大きな示唆を与えてくれます。
実は韓国の仏教事情や寺院のことを知りたいというのが私の「興味」の内容だったので、もう少し寺院の情景を知りたかったのですが、
読み終えてみると、心象風景的に韓国の寺院が体感できたような気になりました。
本書は、五木さんが育った論山の町にある般若山灌燭寺(アンチョクサ)を訪れるところから始まります。
そこの石造の弥勒仏の写真が本書の後表紙に載っていますが、異形な仏です。
写真を見ているだけでも、涙が出てくるほどにメッセージを送ってくる仏です。
ぜひ書店で、この写真だけでも見てください。
私は、これまでこんなに話しかけてくる仏にお会いしたことがありません。
奈良の勝林院の阿弥陀仏以上です。
韓国の仏教の根底には、華厳の思想「一即多・多即一」と「和諍」の思想があるそうです。
「和諍」とは、さまざまな思想や教えを融合させていこうという姿勢のようです。
おそらく「一即多・多即一」の思想から出てくる姿勢だと思います。
そして、本書の終章は「すべてはつながっている」なのです。
そこで見事に「人を殺してなぜ悪いのか」という、一時話題になった議論への明確な回答も書かれています。
とても共感できますし、納得できます。
華厳には「インドラの網」という寓話が出てきますが、それを思い出しました。
本書にはこれからの生き方を考える上でのたくさんの示唆が込められています。
生き方だけではありません。
インド編と本書との共通点は、インドでも韓国でも仏教が広がり、社会に影響を与えているという動きです。
これは未来を考える上で、大きな示唆を与えてくれます。
しかし、五木さんご自身も書かれているように、インドはヒンズーの国、韓国は儒教の国というイメージが強いです。
その根底で仏教が元気に広がっていることを知ることで、未来への展望は全く変わってくるように思います。
日本の未来を考える上でも、大きな影響があると思います。
しかし、私が本書で大きな元気をもらったのは、五木さんの造語である「只管人生」という言葉です。
いうまでもなく道元の「只管打坐」から創った言葉です。
こんな文章があります。
<ただ生きる>こと、それがいま、私が考えているいちばん大切なことだ。(197頁)
いま、とても深く心に入ってくる言葉です。
おそらく1年前までであれば、頭でしか受け止められない言葉だったでしょうが。
最近、ようやく「生きること」の意味が自分なりに整理できて来ました。
仕事も遊びも、社会活動も、すべては余技でしかないことに気づきました。
19年前に会社を辞めた時に、
「これからは働くでもなく遊ぶでもなく、学ぶでもなく休むでもなく、ただ生きていこう」
と宣言したことの意味が、漸くいま自分の腹に落ちてきました。
女房ともども、いまは生きることを純粋に目的にすることが出来るようになりました。
生きることの哀しさが、最近、心にしみてくるようにもなりました。
その分、歓びもまた実感できるようになりました。
本の紹介のつもりが、なにやら個人的な感想になってしまいましたが、
とても面白かったです。
それにしても、 灌燭寺の弥勒は魅惑的です。
■「団塊世代のミッションビジネス」定年後の社会事業型NPOのすすめ
大川新人編著 日本地域社会研究所 1700円(税別)
コムケア仲間の大川新人さんがまた新著を出しました。
社会に戻ってくる団塊シニアに、これまで蓄積してきた知識や経験を生かして、
地域や社会に役立つ新しい事業を起こしてほしいというエールの書です。
大川さんに関しては、これまでも何回かこのホームページにも登場していますが、
学習院大学卒業後、証券会社に10年間勤務。
その後、多摩大学大学院で、経営情報学修士を取得。
さらに、米国オハイオ州のケース・ウェスタン・リザーブ大学大学院に留学し、非営利組織修士を取得。
帰国後、日本の草の根的なNPOのマネジメントサポートなどに取り組んでいます。
コムケアセンターのサポーターでもあり、
現在はシニアコンサルタントとして、団塊シニアプロジェクトに実際に取り組んでいます。
本書は、昨年、大川さんが中心になって行った事業型NPO起業講座の講演録をベースに、
一緒に講座を受け持ったNPO法人イーエルダーのメンバーの協力を得て、完成した実践の書です。
私も座談会で登場していますが、大川さんの思いを知るものとして、
最初に「序に変えて/団塊世代の新しい舞台が広がりだしています」という小文も寄稿させてもらいました。
このサイトにも掲載しましたので、お読みください。
そして、もし興味を持っていただけたら、本書もお読みください。
本書の目次は次の通りです。
第1章 なぜ、定年退職後にミッションビジネスか
第2章 事業型NPOのすすめ
第3章 NPO法人をつくろう
第4章 NPO法人の事務局運営
第5章 情報通信技術が経営を効率化する
第6章 サービスと顧客満足度を向上させるには
第7章 団塊NPOの成功事例
第8章 団塊世代よ、大志を抱け!(鼎談)
本書の「おわりに」にも告知していますが、
本書の出版を契機にして、出前講座や団塊シニアNPOインターンシップなどのプログラムが始まる予定です。
コムケアセンターとしても全面的に応援していきます。
ご関心のある方は、「団塊世代よ、大志を抱け!事務局」にご連絡ください。
また、講演や研修プログラムもお引き受けできると思います。
なお、団塊シニアプロジェクトを起こすための資金源にするために、
「団塊世代よ、大志を抱け!事務局」でも本書の販売を行います。
少し面倒ですが、上記事務局にご注文いただけるとうれしいです。
「団塊世代よ、大志を抱け!事務局」へのメール
■「挑戦する独創企業−なぜ、この会社はキラリと光るのか!」
浜銀総合研究所経営コンサルティング部編著 プレジデント社 1400円(税別)
私は15年ほど前に書いた「脱構築する企業経営」という雑誌連載記事を、大企業解体の予兆という書き出しで始めました。
産業の主役は、大企業から中小企業へと移るだろうと感じていたのです。
残念ながら、そうはならずに、大企業はますます合併などを通して大規模化しています。
しかし、いま元気な企業は中小企業のような気がします。
大企業組織は人間が思い切り働く場としては制約がありすぎます。
特に時代の変わり目には、主体的に働く社員が働きやすい場でないと、企業は元気にならないのではないかと思います。
実際に最近私が出会う元気な会社は、いずれも大企業とはいえない中小中堅企業が多いのです。
そうした元気企業を20社も集めて、その元気の実態と理由を明らかにしてくれるのが本書です。
単なる事例を集めただけの本ではなく、
長年、中小企業にしっかりと関わってきたプロフェッショナルの目からの評価と解説がついているので、
企業経営に関わる人には絶好の「生きたテキスト」になる本です。
「中小企業の経営者・幹部必読!」と本書の帯に書かれていますが、
私はむしろ大企業の経営幹部の皆さんにこそ読んでもらいたいと思います。
経営の基本は規模によって変わるわけではありません。
本書をまとめた経営コンサルティング部部長の寺本明輝さんとは、長いお付き合いですが、
寺本さんは豊富な知識と情報を踏まえて、実践的な視点でこれまで多くの企業の経営相談に取り組んできた人です。
しかも寺本さんは好奇心が強く、研究熱心な人でもあります。
寺本さんからはこれまでも、日本の中小企業の創意工夫や挑戦意欲のすごさについて、いろいろと刺激的な話を聞かせてもらっていました。
日本の経済を発展させ、支えてきたのは、決して大企業ではなく、中小企業であると確信している私としては、
いつかそれをまとめてほしいと思っていました。
それが漸く実現したのです。
寺本さんは「はしがき」で、「企業経営には必ずドラマがある」と書いています。
本書では独創的な20の優良中小企業に取材し、
それぞれのドラマを紹介するとともに、企業の元気の要因を具体的に解説してくれています。
事例も面白く、示唆に富んでいますが、
それぞれの解説も具体的でわかりやすく、しかも体系的なので、
それを読むうちに経営にとっての大切な視点が自然と学べるようになっています。
このあたりは、豊富な体験と情報をお持ちの寺本さんの独壇場といってもいいでしょう。
ちなみに、独創の源泉として、次の5つの要件が上げられ、それにそった事例が集められているのです。
・ 経営理念とビジョン:大志を抱いて理念を伝え、実行する。
・ 事業の仕組み:事業の仕組みで差別化を実現する。
・ 組織とマネジメント:基本を大切にして経営革新に挑む。
・ 技術と技能:ものづくりの原点に愚直にこだわる。
・ 伝統と革新:変革を恐れず、老舗ブランドを守る。
いずれにも実践例が具体的についていますので、とても納得できます。
浜銀総研が活動の主舞台としている神奈川県だけでも22万を超す中小企業があるそうです。
本書に登場するのは、その1000分の1でしかありません。
すべての中小企業が独創的で元気だというわけではありませんが、
この厳しい経済状況の中で、自らの知恵と努力で経営を持続させていくには、それぞれに独自の実践をしている企業は多いはずです。
大企業と違い、ちょっと失敗したりするとすぐさま倒産してしまうほど、毎日が緊張の連続なのが中小企業です。
そうした実践知からのメッセージは説得力があります。
それに事例に出てくる経営者には、いずれも豊かな表情があるのです。
ですから読んでいて、元気がもらえます。
経営者には人間的な表情がなければいけません。
少しほめすぎてしまったでしょうか。
しかし、企業関係者にはお薦めの書です。
本書よりも詳しく学びたい方は、ぜひ寺本さんのところのコンサルティングを受けてください。
寺本さんの誠実なお人柄は、私が保証します。
寺本さんのブログもこのサイトにリンクしています。
ぜひお読みください。
■「司法改革」
大川真郎 朝日新聞社 2400円(税別)
いま日本の司法制度が大きく変わろうとしています。
一言でいえば、「官の司法」から「民の司法」への転換だそうです。
この活動を熱心に推進してきたのが、日本弁護士連合会(日弁連)です。
CWSプライベートに書きましたが、
その司法改革の山場だった2002年から2004年まで、
日弁連の事務総長を務めたのが、本書の著者の大川さんです。
大川さんと私との関係は、CWSプライベートをお読みください。
日弁連の司法改革への取り組みに関しても、そこに少し書きました。
この本が送られてきた日は、実はまさに私が司法への怒りを強く感じていた日でした。
あまりのタイミングの良さに、早速読ませてもらいました。
ブログにも書きましたが、本書の副題にあるように、
司法改革は「日弁連の長く困難なたたかい」だったようですが、
そこにこそ日本の法曹界の実態が象徴されています。
出版社の表現をかりれば、本書は、
裁判員制度の導入、法科大学院開校と新司法試験、司法支援センターの創設、裁判官・弁護士制度の改善等々、24もの関連法が成立することになった戦後初の司法大改革。
「市民のための司法」を提唱し、先鞭を切って乗り出した日本弁護士連合会(日弁連)が、政府や最高裁・検察と時に対峙し、時に妥協して改革を実現していった過程を、客観的かつ具体的にたどる「昭和・平成司法改革」編年史。
です。
これはとても正確な紹介で、当時の資料や発言などをていねいに引用して、
「司法改革」の経過が客観的かつ具体的に解説されています。
著者の思い込みや押し付けは全くありません。
著者の大川さんの人柄を感じさせます。実に誠実でフェアです。
資料を駆使したドキュメントなので、司法界以外の人にはやや難解で退屈ですが、
内容が極めて誠実ですので、司法に関心のある人はちょっと努力して読む価値があると思います。
内容のあるしっかりした本です。
「司法改革」と言っても、政府や裁判官、あるいは財界の姿勢と日弁連の姿勢とはかなり違うことが、本書を読むとよくわかります。
前者は、「現状の不備なところを直す」。
後者、つまり日弁連は、「すべて国民は、個人として尊重される」(憲法13条)社会をつくるためというのが基本姿勢のようです。
この違いが本書での改革の経過を読むとよく伝わってきます。
司法改革というと、裁判員制度が話題になりがちですが、
法テラスという法律相談の仕組みの充実やロースクールの拡充なども重要です。
「小さな司法」「大きな司法」という言葉も出てきます。
これからの司法を考えていくためのたくさんの材料が、この本には詰まっています。
もちろん、日本ではすでに「司法改革」は議論の段階を終えて、制度的には実践に入っているわけですが、
制度を活かすのは関係者(最大の関係者はもちろん国民です)の意識と行動です。
私たちはもっと司法に関心を持ち、その実態を知る努力をすることが大切です。
その意味で、かなり重い本ではありますが、司法関係者以外の方にもお薦めの本です。
この本をテキストにした学習会も広がると効果的ですね。
ちなみに、本書にはもう一人私の知人が出てきます。
テレビで何回かご一緒した小林完治弁護士です。
テレビに出るタレントのような弁護士は好きにはなれませんが、
小林さんは大川さんと同じように誠実さを感じさせる人です。
おそらくテレビで現を抜かしながら社会をだめにしている弁護士とは全く違う種類の弁護士が、
司法の現実を変えようとがんばっているのでしょう。
そんなことも考えさせられました。
そんなわけで本書はお薦めの本ですが(読もうという覚悟のある人にだけですが)、
私の司法への評価は残念ながら変わりませんでした。
ブログの「司法時評」で書いてきたことは撤回する気にはなれませんでした。
「官の司法から民の司法へ」「市民のための司法」。
それがどういうものか、私にはまだわかりませんが、方向は歓迎できます。
問題は、その中身です。
法は、社会のあり方によって全く変わってきます。
どんな社会を目指すのかによって、法の役割は変わるのではないかと私は思います。
その「どんな社会を目指すのか」という議論が見えてこないのが一番の不満です。
これを法曹界に求めるのは過大期待だといわれそうですが、
法を考えるということはそういうことなのではないかと思います。
よかったら「司法時評」も読んでください。
かなりの暴論集なのですが。
ここから購入できます。
■「ハートフル・カンパニー」
佐久間庸和 三五館 2800円(税別)
今年最初の紹介は、佐久間庸和さんの「ハートフル・カンパニー」です。
著者の佐久間庸和さんのペンネームは、一条真也さんです。
このコーナーにたびたび登場している人です。
その一条さんの「平成心学三部作」の完結編が本書です。
かなり前にいただいていたのですが、いろいろ事情があって、途中で読むのが止まっていたのです。
それに実に読み応えのある本なのです。
前の2冊とは趣がかなり違います。
本書は副題に「サンレーグループの志と挑戦」とあり、著者名もペンネームではなく、本名で出版しています。
サンレーは北九州市に本社を置く、冠婚葬祭を事業ドメインとする会社です。
前にも書きましたが、冠婚葬祭への思いの深さにおいては、サンレー以上の会社はないでしょう。
佐久間さんが構想している冠婚葬祭の意味は、実に広く深いのです。
佐久間さん、つまり一条さんの世界は、
このサイトにリンクしている佐久間さんのホームページを読むと少し理解できるかもしれません。
21世紀に入った2001年、佐久間さんはこの会社の社長に就任しました。
そして社員たちに呼びかけながら、佐久間さんらしい会社づくりに取り組んできました。
その理念や方法は、佐久間さんがこれまで著した様々な書籍に書かれていることです。
つまり佐久間さんは、学んだこと、考えたことを、自らの会社で実践してきたのです。
まさに佐久間さんが目指す知行合一です。
そして見事にサンレーの業績は向上し続けているのです。
本書は、そうしたサンレーの経営実践を、社長として社員に呼びかけていた文章や話の記録を中心にまとめた本です。
時系列で読めることも興味を高めます。ライブ感があります。
なんだ、社長の訓示集かなどと思わないでください。
その種の本で面白い本は皆無に近いのも知っています。
しかし本書に出てくる話は、そのテーマ、語られる話題や情報、語り口のスタイルなど、実に多彩で問題提起的です。
具体的にして、普遍的といってもいいでしょうか。
ボリュームも多いので、なかには飛ばしたくなるような部分もないわけではないのですが、
ところどころに光る言葉や心動かされるメッセージもちりばめられています。
いささか褒めすぎの感もありますが、
これまでの佐久間さんの著書を読んできたものとしてはとても面白く読ませてもらいました。
こういう経営者がもっと増えてきたら、日本の産業界は大きく変わるでしょうね。
会社経営者の方にお勧めの1冊です。
■ 「恋に導かれた観光再生」
中村元 長崎出版 1400円(税別)
「車イスの青年に恋した少女が、
青年に気に入られようと動くたびに奇跡が起きた。
人を動かし、町を動かし、行政を動かし、
とうとう国まで動き出す。」
本書の帯にはこう書かれています。
これは伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの誕生の物語です。
著者は同センターの理事長の中村元さんです。
中村さんとは朝日ニュースターの番組で何回かご一緒しましたが、実に楽しい人なのです。
中村さんのブログもこのホームページにリンクされていますので、ぜひお立ち寄りください。
ちなみに中村さんは水族館にも新しい風を起こした人なのです。
その分野のほうで有名なのですが、今回は違った分野での著作です。
本書の内容は帯の紹介文でおわかりいただけると思いますが、
「バリアフリー」「観光」「まちづくり」「社会変革」「NPO」などのテーマに関心のある方はぜひお読みください。
とても気楽に読める楽しい本ですが、
たくさんのメッセージと提案、あるいはこれからの社会を考える上での重要な問題提起がちりばめられている密度の高い本なのです。
まずは書き出しの言葉が刺激的です。
日本の多くの観光地では、まちづくりというものが行われていない。
全く同感です。
こうも書いています。
町の住民が誇りに思わない観光地に、観光客が集まるわけがない。
本当に住民不在の観光行政がまだ少なくありません。
さて、本文ですが、これがまた実に面白く、示唆に富んでいるのですが、
とても衝撃的だったところを一つだけ紹介しておきます。
車いすで伊勢神宮に入れなかった人の話です。
詳しくは回転ちょこラムのサイトを開き、
右上の「アルバムをみる」で、2003年4月24日と26日を探して読んでみてください。
衝撃的です。少なくとも私にとっては、衝撃的でした。
バリアフリーの本質が示唆されている事件です。
なにやら持って回った言い方ですが、興味のある方はぜひ本書をお読みください。
この本の真骨頂は11章です。
こんな文章があります。
かつては江戸よりも文化の集積と発信の中心地だった伊勢。その勢いをバリアフリー観光で再現したい。
中村さんたちは、本気でそう考えているのです。
だからこそ、先の伊勢神宮事件は大きな意味を持ち資源になりえるのです。
ちょっと脈絡が見えない紹介ですみません。
ともかく 、11章に中村さんたちの大きな構想が読み取れるのです。
中村さんたちは、いまこのプロジェクトでつくりあげてきた、
パーソナルバリアフリー基準を全国に広げていこうと、日本バリアフリー協会の設立に取り組んでいますが、
その奥には日本社会のパラダイム転換への挑戦があるのです。
「あとがきにかえて」と題して、「補完性の原則」への中村さんの思いが書かれています。
それを踏まえて、もう一度、本書を読むと、きっとこれまでのまちづくりの限界や今の地方分権のおかしさに気づくはずです。
この1年、中村さんとはお会いしていませんが、中村さんらしい、実践の書です。
書名が良くないですが、内容はとてもよい本ですので、まちづくりやNPO活動に取り組んでいる人にお勧めしたいです。
中村さんのブログも面白いですよ。
■「M&A資本主義 敵対的M&A・三角合併防衛法」
小倉正男 東洋経済新報社 1700円(税別)
週間報告にいろいろと書きましたが、日本のIRの草分けの鶴野史朗さんから送られてきた本です。
鶴野さんの友人の小倉正男さんの最新著作で、鶴野さんの活動も紹介されています。
株価資本主義が、株式という「世界共通通貨」でM&Aを一般化、活性化させ、
ニッポン資本主義を新しい局面に導いていくという時代の流れの中で、
日本企業はどうしたらいいかをわかりやすく実践的に解説しています。
著者は必ずしも株価資本主義に賛成しているわけではありません。
しかし、2007年にいわゆる三角合併(外国企業が日本の子会社を通じて日本企業を買収すること)が可能になれば、
日本型経営の歯止めのあったニッポン資本主義は「株価資本主義」にはっきりと移行する、
つまり旧来のニッポン株式会社は完全に解体され、グローバルな資本主義に組み込まれるという展望のなかで、
しっかりしたコーポレート・ガバナンスの仕組みを整え、
企業価値(必ずしも株式価値ではありません)を高めておかなければ、
海外のハゲタカファンドにやられてしまうというわけです。
とても説得力のある話です。
ジャーナリストとしての著者の見識も伝わってきます。
企業の経営幹部の方にはしっかりと読んでほしい本です。
目次をご紹介します。
第1章 M&Aの活発化と日常化
第2章 三角合併解禁の脅威
第3章 株式持ち合い解消がM&A活発化をもたらした
第4章 「時価総額」をどう考えたらよいのか
第5章 企業価値極大化は自らの経営努力で実現せよ
第6章 コーポレート・ガバナンスこそニッポン資本主義の課題
第7章 株主判明調査、プロキシー・ソリシテーションの進化
第8章 “株主に顔を向けた経営”こそM&A防衛策
第9章 敵対的なM&Aで狙われるのは「低PBR会社」
第10章 “ハゲタカ・ファンド”が次に狙う巨大な獲物
ちなみに、私は株価資本主義への流れではなく、
広義のステークホルダーの長期的な視点に立った企業価値に立脚したコーポレート・ガバナンスの仕組みが育っていくのではないかと期待しています。
そのためには、企業の組織原理や規模が大きく変わる必要があるように思います。
久しぶりに企業論を読んで刺激を受けました。
みなさんにもお勧めです。
■「集合住宅の時間」
大月敏雄 王国社 1900円(税別)
私は安藤忠雄の建築が好きではありません。
というか理解できないのです。
その意識が明確になったのは、瀬戸内海の直島の家プロジェクトの空間を体験させてもらってからです。
いずれもとても素晴らしい作品でしたが、どうも違和感が残ったのです。
空間への愛情を感じられないのです。
私が好きな建築はホッとする空間のようです。
空間に静かな記憶が残っていくような建築です。
本書は、保育プロジェクトや美野里町プロジェクトなどでご一緒した大月敏雄さんの最初の単行本です。
書名がとても大月さんらしくて、うれしくなりました。
帯にこんなメッセージが書かれています。
濃密な「生活の記憶」を語り継ぎたい
古びた集合住宅の建物の言いぶんに耳を傾けてみよう。
目に見えない時間の蓄積を味わう魅力に浸ってみよう。
昨今の子育てのように良い所を見つけてほめてみよう。
本書には生活の記憶を存分に感じさせる24の「集合住宅と呼ぶことのできる」建物が登場します。
そして、大月さんという思いを持った語り手によって、
それぞれの生い立ちやそこでの物語がとても人間的に語られています。
一つひとつの物語から、これまでの自らの生き方を考え直したくなるメッセージが伝わってくるのは、私の世代のせいでしょうか。
時に懐かしく、時に痛みを感じながら。
それぞれの物語と、そこに託した大月さんのメッセージは本書を読んでもらうとして、
ここではそこに通じている大月さんの大きな思いについて紹介しておきたいと思います。
それは私がずっと感じていた思いでもあるからです。
大月さんが問題にするのは、建物における減価償却の発想です。
大月さんはこういいます。
日本の建築物においては、「時間が経つことは、価値が無くなっていくことである」という悲しい現実があるのである。
そのせいもあって、日本の都市は常に記憶喪失の危機に瀕しているのである。
「このまま行けば日本人は「国民総記憶喪失」になるのではないか」と大月さんは心配しています。
心配はすでに現実になっているというのが、私の認識ですが、
それを助長しているのが、減価償却パラダイムの建築概念ではないかと大月さんはいうわけです。
そして、
「時間が経てば価値が減る」ことが常に正しいというのは、なんだか変なのではないか、
と大月さんは疑問を呈します。
「時の経過とともに価値は減っていく」。
もしこれが人間に適応されるとしたらどうだろうか。
「あなたの価値は年を経ていくごとに減っていき、60歳になると、価値がゼロになります」
(後略)。
恐ろしい話だと思いませんか。
大月さんは、同潤会アパートを中心とした、古い集合住宅の実測調査や
そこに住んできた人々への聴き取り調査などを20年近く取り組んできています。
それに関する報告書や論文もたくさんあります。
そうした長年の現場体験が、こうした問題提起の背後にあるのです。
建造物でも、時間の経過が価値を高める世界があります。
遺跡や歴史的建造物です。
私の好きな世界です。
その世界とは全く正反対に、時間経過をマイナス価値にしてしまったのが、
現在の産業社会であり、資本主義経済システムです。
そこでは「破壊」や「浪費」が「発展」と「生産」に置き換えられてしまったのです。
時間の概念も全く変わってしまったのです。
そんな大きな問題提起を感じながら本書を読むと、
改めて昨今の私たちの暮らしぶりや生き方の貧しさを感じてしまいます。
とても示唆に富んでいる本です。
建築家ではない人たちにも、ぜひ読んでもらいたい本です。
■「東尋坊 命の灯台」
茂有幹夫 太陽出版 1300円(税別)
コムケア仲間の茂さんは、福井県の東尋坊で自殺防止活動に取り組んでいます。
東尋坊は、絶景の観光地として有名ですが、同時に、別名「自殺の名所」とも言われています。
日本海に突き出した断崖の上に立つと吸い込まれてしまうような気持ちになってしまいます。
茂さんのことはこのサイトにも書きましたが、
NPO法人「心に響く文集・編集局」を立ち上げ、地道な活動を展開されています。
茂さんたちの活動で、自殺を思いとどまった人は少なくありません。
今年、「毎日社会福祉顕彰」を受賞されましたが、その時のインタビュー記事をお読みください。
茂さんのあたたかさが伝わってきます。
私は9月に東尋坊でお会いしましたが、その時に今度本を出版するとお話になっていました。
その本が本書です。
この本を読むと今の社会のおかしさが見えてきます。
茂さんは東尋坊のある三国警察署に勤務したのが契機になって、この活動を始めるのですが、その経緯もこの本に書かれています。
とても共感できます。
その事件は平成15年に起こりました。
茂さんは当時、三国警察署の副署長でした。
薄暗くなった東尋坊の松林で黙ってベンチで横たわっている年配の2人ずれに出会ったのです。
訊いてみると経営していたお店がうまくいかずに、東尋坊で自殺しようと決めてやってきたのだそうです。
話をしているうちに、2人の手首にカミソリで切ったまだ新しい傷があることに気づいた茂さんは、
すぐに地元の病院に入院させ、役場の福祉課に「現在地保護」の手続きを頼みました。
ここで事件は終わるはずでした。
5日後、その2人から手紙が届きました。
茂さんへのお礼の手紙でした。
しかし、2人はその手紙を出した後、首吊り自殺をしてしまったのです。
相談に行ったところすべてから見捨てられたのです。
茂さんはこう書いています。
当時私は現職の警察官でした。
42年間の警察官生活の中で私は、
日本という国は、「助けてほしい」と叫んでいる人がいたら、
どこかでだれかが助けてくれる、すばらしい法治国家であると信じてきました。
しかし現実は違っていました。
因っている人を保護する法律は、ちゃんとあるはずなのに・・・。
少し長いですが、続けて引用させてもらいます。
警察は保護すべき者を発見した際は速やかに福祉機関に引継ぐ義務があり、
引継ぎを受けた行政機関は、保護を決定して保護を開始すべき義務があり、
それを怠った者には罰則が課せられるのです。
私はそれを信じて、2人に「国に保護を求めなさい」と助言しました。
2人は私の言葉を信じて旅を続けたのです。
しかし北陸道の沿線にある役所では、支援をしてくれる場所が1箇所もなかったのです。
あの2人にとって私の存在は何だったのでしょうか。
死までの苦しみをさらに長引かせただけの存在だったのではないでしょうか。
私はあの2人に、二重の苦しみを与えるだけの存在になってしまったのでしょうか…。
もっと引用したのですが、きりがないので、それはこの本を読んでもらいたいと思います。
2人からの手紙も本には紹介されています。
この事件が茂さんの人生を変えました。
茂さんはこう書いています。
どんな思いであの2人は、私に手紙を託したのでしょう。
口をつぐむのは簡単です。
しかしこれからも第二、第三の犠牲者が生まれるのを見続けて、私は心穏やかでいられるでしょうか。
自分には関係ない、自分の責任ではないと、平然としていられるでしょうか。
なぜ、定年も間近になって、こんな出来事が起こったのか。こんな現実を知ったのか。
知ってしまった以上、私がやるしかないという決意が、ゆっくりと固まっていきました。
10年間に253人もの人が苦しみながら死んでいる。
だれかが253人の代弁者となり世間に訴えなければ、世間の人は気づいてくれない。
「あなたならできる、あなたがやるしかない」と白羽の矢が立てられたような気がしました。
茂さんの思いが痛いほど伝わってきます。
人はこうして自分の人生を変えていくのです。
この本には、茂さんが体験した何人かのケースが紹介されていますが、
茂さんはそうした事例を闇の中に放ってはいけないと考えました。
もっとみんなで考えなければいけない問題です。
私もコムケア活動を通じて、さまざまな人生にささやかに触れるようになってから、
茂さんと同じように問題をもっとオープンの場でみんなで考えていかなければいけないと思うようになりました。
それに自分に無縁な問題などはこの世にはないのです。
すべてがつながっています。
この本にはもうひとつ考えさせられる文章が載っています。
茂さんと一緒に活動している川越さんの体験談です。
茂さんと川越さん。
お2人の実体験に基づく活動に心から敬意を表したいと思います。
いま、私は「いのち」という問題に改めて直面していますが、
この本を読んで、その問題の深さに畏れを感じています。
みなさんにもぜひ読んでほしい本の1冊ですので、あえて詳しく紹介させてもらいました。
ここからも購入できます。
■「商いの原点」
荒田弘司 すばる舎 1600円(税別)
日本の商人道や経営哲学をライフワークにされている荒田弘司さんの新著です。
荒田さんは日産自動車で活躍された後、
いくつかの企業の役員として企業経営に取り組まれていましたが、
そうした経営の実践を踏まえて、企業経営の現場から引退された後も、
日本の経営のありかたに熱心に取り組まれています。
私がお会いしたのはもう15年ほど前なのですが、
その頃から終始一貫した姿勢を持ち続けられています。
荒田さんは企業の現役時代は経理畑でした。
経理の世界にいると企業の実態がしっかりと見えるのでしょう。
最近の経理の専門家は数字だけを追っているような気もしますが、
荒田さんは数字の背景にある企業経営の実態を見ていたのです。
そして次第に関心が経営哲学や顧客価値などに向いてきたのです。
本書はそうした荒田さんの最新の研究成果です。
本書の副題は「江戸商家の家訓に学ぶ」となっています。
三井家に始まり、近江商人まで、それぞれの家訓をベースにして、
日本企業の経営の基本哲学がとてもわかりやすく紹介されています。
原文もたくさん引用されているので荒田さんのガイドでかみしめるのもいいでしょう。
読めば読むほど示唆が得られます。
荒田さんは「結び」で次のように書いています。
企業が社会に対する本来の役割を果たしていくためには、関係者全員が一致して行動しなければならない。
そこで、企業理念、行動規範が必要となる。
企業は理念を具体的に文字に示すことで一致団結し、行動していけるのである。
現代にあっては、理念を持たないために、企業が向かうべき方向が明確でなかったり、
株式など単なる運営手段にすぎないものを、目的であるかのように錯覚しているケースが、あまりに多い。
今般社会を騒がす事件は、その結果発生しているといってよいだろう。
企業は今こそ、自社の〈家訓)を簡潔かつ明快に示すべきなのである。
江戸商家の家訓を読み解くことで、現代企業のあり方を考える一助としたい。
同感です。
昨今の日本企業には経営哲学が不在どころか、
経営も不在になっているような気がしてなりません。
企業経営に関わる方々にじっくりとかみしめてもらいたい本です。
■「NPOが自立する日」
田中弥生 日本評論社 2200円(税別)
日本のNPO活動に当初から関わってきた田中弥生さんの新著です。
副題が「行政の下請け化に未来はない」と、明確な主張を持っている本です。
この田中さんのメッセージは昨年のNPO実態調査を下敷きにしていますので、単なる論理演算のメッセージではありません。
具体性があるのです。
それに彼女の長年のNPOとの付き合いを通して到達したメッセージなのです。
ですから説得力があります。
私などはむしろ下請け化したNPOが日本のコモンズをだめにするとさえ思っていますが、これはあまり説得力がありません。はい。
NPOとの付き合いの中で、最近、田中さんは「NPOの何かが変質しているのではないか」と感じ始めたのが本書の始まりだったそうです。
彼女とNPOの付き合いは、冒頭の「はじめに」に書かれていますが、これがなかなか面白いです。
田中さんとの付き合いは長いのですが、本書の書き出しは初めて聞く話で、とても興味を持ちました。
NPO前史を田中さんはいろいろと見聞しているのです。
面白いのはもちろん「はじめに」だけではありません。
本文も事例とメッセージと全体像がうまく編集されていて、文章もこなれて読みやすく、しかも示唆に富んでいます。
何よりも好感が持てたのは目線がしっかりしており、指摘が明確なことです。
NPOへの愛着も感じられます。それにこれまで以上に腰が座っているのが伝わってきました。
現実を踏まえると論考に迫力が出てきます。
ともかくこれからのNPOの展開を考えていく上でのたくさんの示唆が得られる、NPO関係の好著です。
NPO関係者はもとより、行政や企業の人たちにもぜひ読んでほしい1冊です。
■「技術倫理 日本の事例から学ぶ」
佐伯昇・杉本泰治編著 丸善 2000円(税別)
科学技術者の倫理問題に精力的に取り組んでいる杉本泰治さんが
北海道大学の佐伯昇教授たちと一緒にまた新しい本を出版されました。
70代も後半に入ったはずの杉本さんの行動力にはいつも頭が下がります。
杉本さんは日本の大学に「技術者倫理」の講座を広げようと
NPO法人科学技術倫理フォーラムのメンバーと一緒に講座を展開してきていますが、
本書はそのメンバーたちの共著です。
分筆されていますが、特に杉本さんの書いた部分には明確な主張を感じます。
私とは少し考えの違うところもないわけではありませんが、
主張が明確ですので、とても気持ちよく読めます。
本書は大学の教科書として書かれています。
杉本さんはすでに教科書として「技術者の倫理入門」を出版していますが、
本書は「実学的に技術倫理の基本的な考え方、意思決定の手法が習得できるように
学習プログラムが組まれている」と書かれているように、
効果的なグループ討議ができるように編集されています。
「グループ討論の新しいモデルを示した」という著者たちの思いが、これまでとは違う魅力を生み出しています。
私が特に共感したのは、取り上げた事例の広がりとその取り上げ方です。
序に「現代、科学技術は人間生活に広く深く関わり、あらゆるところに技術者の職場があり、倫理問題がありえる。
本書が取り上げているのは、現代の技術者の身近にある倫理問題である」と書いていますが、
選ばれた事例を読むだけでも、著者たちのパースペクティブの広がりを感じられます。
技術者に限らず、倫理問題は当事者の世界の広がりだと考えている私にとっては、とても共感できる姿勢です。
技術者倫理は限られた世界で語られると逆効果になりかねません。
技術者の世界を広げることこそが、技術者倫理の最大の課題ではないかと私は思っています。
事例の中に「えちぜん鉄道」が取り上げられています。
えちぜん鉄道は、京福電鉄が福井県下で運営していた越前本線が2度の事故のために廃線になったのを
福井県と沿線自治体が一緒になって継承した第3セクターです。
第3セクターというとあまりイメージは良くないですが、
沿線住民も一緒になって、とても素晴らしい運営をしているようです。
どう素晴らしいかは本書をぜひ読んでほしいと思いますが、一部、そのさわりを次のサイトでお読みください。
http://www12.ocn.ne.jp/~shiokaze/newpage22.html
杉本さんは実際にえちぜん鉄道に乗車し、その体験も踏まえて本書で感想を書かれています。
とても心あたたまる事例報告ですが、こうした事例でもわかるように、
本書が取り上げる事例や本書のメッセージには、人間や生活の視点が感じられます。
技術倫理などというと難しいイメージを持つかもしれませんが、
要は生活視点をしっかり持つことが倫理の基本なのだと思います。
目次の一部を紹介しますと、
「人間生活における注意義務」
「組織のなかの個人」
「コミュニティの人間関係と内部告発」
「人間と動物の関係」など、魅力的な項目が並んでいます。
しかもそのすべてがしっかりした事例を中心にやさしく語られています。
大学生に限らず、技術者や科学技術に関わる人にも読んでほしいと著者たちは書いていますが、
私は技術者に限らず、企業人や生活者すべての人が大きな示唆を得る本だと思います。
特に企業経営幹部の人たちには読んでほしいと思います。
グループ討議のガイダンスを活用しながら、話し合いのテキストとしても最適です。
ちなみに、私も科学技術倫理フォーラムのメンバーです。
こうした杉本さんたちの活動をさらに広げていくために、
2006年11月26日に、技術者倫理の問題を暮らしの視点から考える公開フォーラムを企画しています。
10月になったら詳しい案内をお知らせコーナーで行ないますので、ぜひご参加ください。
関心のある方は私にメールを下されば、別途ご案内します。
■「平和のための政治学」
川本兼 明石書店 2600円(税別)
川本兼さんは積極的に若者向けへの平和の働きかけをしていますが、この4年で6冊の本を出版されました。
しかも、極めて密度の濃い内容を、高校生でも理解し興味を持てるように、十分に咀嚼した本です。
単なる知識を整理した本ではなく、川本さんオリジナルのメッセージもあります。
川本さんへの平和への思いの深さや危機感の強さが伝わってきます。
本書は前著「平和のための経済学」の姉妹編ですが、副題には「近代民主主義を発展させよう」とあります。
高校生や大学生を意識した書き方になっており、言葉の概念整理をしっかりしていますので、
言葉だけの議論ではなく、実体議論がなされていることに好感が持てます。
知識を持っている大人たちには、時に教科書的な印象を与えるかもしれませんが、
今こそこうしたしっかりした本を多くの大人たちにも読んでほしいと思います。
決して、若者向けだけの本ではありません。
政治とは何か、国家とは何か、民主主義とは何か、といった基本的な概念を、
私たちはあいまいにしたまま、政治論義をし、平和論議をしがちですが、それでは議論は出来ても行動にはつながりません。
本書の内容は別のサイトをお読みください。
http://www.hanmoto.com/bd/ISBN4-7503-2404-3.html
私が面白かったのは、「民衆」「公衆」「大衆」「群集」の議論です。
そうした言葉に本質が含まれていることは少なくありません。
「民主主義は平和と結びつくことによって発展する」も面白かったです。
普通は「平和は民主主義に結びつくことによって発展する」という議論が多いのですが。
最終の項目は「近代民主主義はもはや『遅れた民主主義』である」です。
国家権限の再配分の提案もあります。
どうですか。読んでみたくなりましたでしょうか。
もう少し薄くして、安くしてほしいですが、まあじっくり消化すれば格安の本です。
高校生に戻ったつもりになって、読んでみるととても楽しいかもしれません。
そして、読んだら是非行動に移してもらえればと思います。
平和に向けてできることはたくさんあります 。
今の日本は、まさに歴史の帰路にあります。
ちなみに川本さんの本書以外の最近の5冊は次の通りです。
いずれもブックのコーナーで紹介しています。
●「平和のための経済学」
●「自分で書こう!日本国憲法改正案」
■Q&A「新」平和憲法
― 平和を権利として憲法にうたおう
●「どんな世界を構想するか」
●「どんな日本をつくるか」
川本さんを囲んでの平和論議に関心のある方は私にご連絡ください。
3人以上のご希望があれば、企画します。
■「栗原貞子を語る 一度目はゆるされても」
広島に文学館を!市民の会 700円
活動記録でも紹介した「広島に文学館を!市民の会」のブックレット第1号です。
2005年に開催されたシンポジウム「栗原貞子を語る」の記録を中心に、栗原さんの作品なども収められています。
内容に関しては、中国新聞の記事がとてもよく欠けていますので、それに委ねたいと思います。
「栗原貞子さん解説のブックレット」
私は、このホームページにある折口日記の筆者の折口さんから贈ってもらいました。
折口さんは、栗原さんの詩の仲間である原博巳さんからこの本を教えてもらったようです。
私は折口さんにも原さんにも、実はまだ面識がないのですが、不思議なご縁が続いています。
小冊子ですが、内容はとても密度が高く、感動的です。
入手はやや面倒かもしれませんが、市民の会で受け付けています。
周りに人にも勧めてもらえるとうれしいです。
平和はいま、大きな曲がり角に来ているように思います。
諦めたくなりますが、この本を読んで、やはり諦めてはいけないと思いました。
為政者にも読んでもらいたいです。
■碑文から見た古代ローマ生活誌
ローレンス・ケッピー 小林雅夫・梶田知志訳 原書房 2500円(税別)
7月のオープンサロンでご紹介した小林教授の最新の翻訳書です。
実は贈られた書籍は1週間以内に読むのですが、この本は読み応えがあり、
読み流すことができずに紹介が遅れてしまいました。
古代ローマの生活誌に関しては、
たとえば弓削達さんの「素顔のローマ人」(河出書房新社)などありますが、
そうしたものとはちょっと違い、碑文を通した、もう一つのローマ市を感じさせてくれるのです。
碑文というものの魅力も伝わってきます。
それにしても、人間とは「書き残すこと」の好きな生物であることがよくわかります。
落書きも含めて、いたるところに「歴史」を残しているのです。
エジプトのメムノンの巨像は小学校の時に小松崎茂の「砂漠の魔王」で知って以来、憧れだったのですが、
10数年前に感激の出会いを持ちましたが、そこにはたくさんの落書きがありました。
本書によれば、1000を超える落書きがあるそうです。
トルコのエフェソスでもいくつかの落書きの話をガイドから聞きましたが、
この本を読んでいたら、そうした場面がもっと楽しくなったでしょう。
パムッカレの商人の墓の話も出てきますが、古代地中海世界が大好きな私としては、
ちょっとした記述の一つ一つがとても興味深いものでした。
塩野七生さんの「ローマ人の物語」とは、また違った面白さがあります。
私がもっと知りたかったのは、1818年年に発見されたという碑文です。
5字5行の四角形の語方陣ですが、これがミトラス経やユダヤ教徒関連があるとの説もあるそうです。
こういう少し秘密めいたものにはなぜかわくわくします。
ローマ市に詳しい人が読むと実に楽しい本なのでしょう。
メセナの語源になったというマイケナスらしい人も登場しますし、じっくり読むと楽しいです。
古代ローマ市に関心のある方にはお勧めです。
但し、一気に読むのではなく、気が向いたら面白そうなところを読んで、
最後に序文の「歴史を塗りかえる碑文」を読むといいでしょう。
なお本書の内容に関しては、次のサイトが参考になります。
http://www.augustus.to/books/archives/2006/08/post_27.html
■「ユダヤ教
vs キリスト教 vs イスラム教 宗教衝突の深層」
一条真也 だいわ文庫 762円(税別)
また一条さんの新著です。
ちょっとこれまでのものとは分野が違いますが、これまた意欲的な長期構想(世界を "vs"で読み解きたい)の最初の著作です。
まえがきの一部を引用させてもらいます。
この前書きの文章で私はこの本の基本姿勢に共感を持って読ませてもらいました。
本書は、人類の歴史に大きな影響を与えてきた三人の姉妹の物語である。
長女は、ユダヤ教。二女は、キリスト教。そして、三女は、イスラム教である。
同じ親、つまり同じ一神教の神を信仰し、「旧約聖書」という同じ啓典を心のよりどころにしながら、憎しみ合い、殺し合うようになった世にも奇妙な三人の姉妹。
(中略)
姉を慕う三女は二女とは初めからうまく付き合えなかった。好戦的な二女がいつも攻撃を仕掛けてくるので、仕方なく受けて立つようになった。
(中略)
本書は、この3人の娘の生い立ちから、その精神世界まで広く探ってゆく。
三姉妹宗教を知れば、世界が見えてくる。
私は10年ほど前まで、ギリシアとペルシアに関して、民主的で人間的なギリシアと専制的で非人間的なペルシアというイメージを持っていました。
20年ほど前に、ペルシア史の入門書を読んでそのイメージを疑いだしました。
私の世界観や歴史認識は、近代西欧の価値観に浸りきっていたようです。
それはともかく、ペルシアのほうが人間的だったのではないかという思いがぬぐい切れません。
キリスト教へのイメージもまたその頃から大きく変わりました。
いまの世界の構造の見え方も、その疑問に立脚するとマスコミとは全く違ったように見えてなりません。
洗脳教育とは恐ろしいものです。洗脳教育は何も北朝鮮だけの話ではありません。
いや、そもそも教育の本質は洗脳なのかもしれません。
信頼できる友人でも、その考え方においては全く受け入れない場合が少なくありません。
考え方が違うからといって、信頼関係が揺らぐことはありませんが、
時々、やりきれない気持ちになることはあります。
世界観や人生観において埋めがたい断絶を感ずるからです。
世代の違いかもしれませんが、もしかしたら教育環境(学校だけではありません。
最高の教育はマスコミからの情報です)の違いかもしれません。
ところで本書ですが、コンパクトな文庫版ですが、内容は欲張っているといいたいほど網羅的です。
しかしそこに著者のメッセージがこめられていますので、単なる解説書ではありません。ですから面白いです。
時にはこんな本もいかがでしょうか。
無節操で見識のないマスコミの論調への免疫を高めるためにも。
■「孔子とドラッカー ハートフル・マネジメント」
一条真也 三五館 1500円(税別)
一条真也さんに鬼神が乗り移ったとしか思えないのですが、また新著です。
よくもこう、次々と出版されるものだと感心しますが、その一冊一冊がとても消化されており、実践的なメッセージに満ちているのです。
大学に籍を置き、研究や執筆を業としているのであれば不思議はないのですが、
一条さんはれっきとした年商200億円の企業の社長なのです。
しかし、驚くのはまだ早いのです。
本書を受け取って1週間もしないうちに、こんなメールが来ました。
「鬼神が乗り移ったせいか、もう1冊上梓いたしましたので、また送らせていただきます。」
いやはや、勢いのある人の行動力は、計り知れないものがあります。
それはともかく、この本は前に紹介した「ハートフル・ソサエティ」に続く平成心学三部作の第2弾ですが、
同時にまた前作の「知の巨人ドラッカーに学ぶ21世紀型企業経営」ともセットになっています。
とても実践的で、しかも理念的です。
読者は経営の極意を学ぶとともに、その生き方への大きな示唆を得るはずです。
編集のスタイルも工夫されています。
読書嫌いの最近の企業人でも気安く、そして楽しく読めるようになっています。
全体が48の章に分けられているのですが、
その見出しが、たとえば、「仁」「義」「礼」などという漢字一字になっています。
いかにも孔子だなと思われるかもしれませんが、
中には「利」「運」「怒」「泣」「狂」など、一条風もふんだんに取り上げられています。
もちろん文中にはドラッカーも出てきます。
一条さんが信奉している先哲たちの話もたくさん出てきます。
面白いのは、著者の生活ぶりも垣間見えることです。
なぜ著者がこれほど次々と著作を物しているかの秘密も少し示唆されています。
文体も変化に富んでいて、面白いです。
私がとても気に入ったのは、「読」「書」の章です。
たとえば、「読」はこんな書き出しです。
私は、とにかく毎日、読んでいる。
何を読むか。まず、本を読む。
つづく章の「書」は、
私は、とにかく毎日、書いている。
何を書くか。まず、原稿を書く。
実にスタイリッシュです。気に入って、何回も読んでしまいました。
内容の紹介が不足していますね。
すみません。
あとがきから少し引用して内容紹介に代えます。
「本書は、月光の書である」と、あとがきは始まります。
人を動かすときの典型的な二つの方策のアナロジーとして、
太陽と北風のイソップ寓話が使われますが、一条さんはこういいます。
リストラの風を吹きつけ社員を寒がらせる北風経営でもなく、
バブリーに社員を甘やかす太陽経営でもなく、
慈悲と徳をもって社員をやさしく包み込む月光経営。
これこそ、心の経営、つまりハートフル・マネジメントのイメージそのものとなる。
本書は、その月光経営の極意書なのです。
詳しくは是非本書をお読みください。
実践的な経営道が語られています。
そればかりか、生き方を考える上でも、たくさんのヒントがもらえるはずです。
座右の書として、時々、気の向いた章を読むといいのではないかと思います。
企業経営者にはもちろんですが、NPOや行政の人たちにも是非お勧めしたい本です。
前著も一緒に是非お読みください。
ちなみに、一条さんの経営観は、「慈悲と徳をもって社員をやさしく包み込む月光経営」ですが、
私の経営観も「愛と慈しみ」です。蛇足ですが。はい。
■「循環型社会入門」
森建司 新風舎 1200円(税別)
時々思ってもいなかった本に出合うことがあります。
今回紹介させていただく本書は、私の友人が書いた本でありません。
ある人がなぜか送ってきてくださったのです。
本の内容がもしかしたら、私の考えにつながっていると考えてくれたからかもしれません。
その本のあとがきに、次のようなことが書かれています。
循環型社会の運動は革命的転換を意味している。
経済至上主義社会を崩壊させ、「経済によってのみ人は生かされている」という価値観から脱出を図らなければならない。
そして、そのあとの新しい価値観をもった循環型社会の姿が見えてくる。
新しい体制は「破壊と創造」から生まれる。
そのためにも、思い切った勇気ある「破壊」の行動を起こさなければならないわけである。
循環型社会を口にしながらも、経済至上主義から脱却できずにいる、多くの企業経営者たちに読ませたい文章だと思いませんか。
ところがです。
実はこの本は企業の経営者が書いた本なのです。
著者の森建司さんは滋賀県の新江州株式会社の会長なのです。
新江州は包装資材などを中心に事業している、従業員100人強の中堅企業です。
社是は「過去には感謝 現在には信頼 未来には希望」。
滋賀の会社らしく、近江商人の伝統の「三方よし」を大切にしているようで、三方よし実践企業としても紹介されています。
会社の紹介が長くなってしまいましたが、会社としてもちょっと興味を魅かれます。
さて肝心の本の話です。
この本の副題に「もったいない おかげさま ほどほどに」と書かれていますが、
この3つのキーワードに循環型社会の本質が象徴されていると森さんはお考えのようです。
まあ、これだけでは良くある本ではないかと思われるかもしれません。
私もそう思って軽く読み流そうと思っていたのですが、
読んでいるうちに、書かれていることが著者の実際の生活体験や現場実感に立脚しているのに気づきだしました。
そして人間的な眼差しと同時に強い批評眼をお持ちなのが伝わってきたのです。
途中から襟を正して読ませてもらいました。
特に私にとってはとても共感できるメッセージがたくさん出てくるのです。
たとえば、「静脈産業のごまかし」というところでは、
静脈産業には大きな矛盾がある。その発展のためには廃棄物が増えなければならないと指摘しています。
環境ビジネスは過渡的現象であるとも明言されています。
私はこう明確に言い切った経済人を知りません。
しかし森さんが言うように、静脈産業論はまさにごまかしでしかありません。
私も10年以上前からそういっていますが、残念ながら環境産業のパラダイムシフトは起こっていません。
ますます環境を悪化させる環境産業が増えているようにさえ思います。
「個々の対策では対応できない社会問題」という章もあります。
まさに私が取り組んでいる大きな福祉に向けてのコムケアの考え方です。
「人間の絆が人間を創る」ともあります。
まるで自分で書いた本を読んでいるような気がしました。
しかも、私とは違って、メーカーの経営者なのですから、その発言の重みは私とは全く違います。
感服させられた次第です。
他にも示唆に富む指摘がふんだんに出てきます。
しかも、肩に力が入っていない平易な言葉で語られていますから、とても読みやすいです。
それに各章の最後に一言警句が添えられています。
それを並べただけでもたくさんの気づきをもらえるはずです。
森さんは、「もったいない おかげさま ほどほどに」の考えを広げるために、
その頭文字をとった「MOHの会」をつくって活動を展開しています。
つまり高邁な評論にとどまる人ではなく、実践者でもあるのです。
「MOHの会」はこの本でも少し紹介されていますが、機会を見てもう少し調べてみようと思っています。
長い紹介になってしまいましたが、針路を誤っているように見える昨今の企業経営幹部のみなさんに是非読んでほしい本です。
企業に不信感を高めているNPOの人にも読んでほしいです。
いや、すべての人に読んでもらって、自らの生き方をちょっと見直してもらうのがいいでしょう。
ともかく お勧めの1冊です。
「もったいない おかげさま ほどほどに」
とても共感できるキーワードです。
私も生き方を見直さなければいけません。
■「知の巨人ドラッカーに学ぶ21世紀型企業経営」
一条真也 ゴマブックス 1200円(税別)
私はドラッカーがあまり好きではありませんでした。
著書はかなり読んでいるのですが、どこかに違和感があります。
その理由は自分ではわかっています。
会社に入社した頃、ドラッカーの「現代の経営」などを読んだのですが、
そこにでている「事業とは顧客の創造」というメッセージに大きな違和感を持ってしまったのです。
その最初の出会いが、私をドラッカー嫌いにしてしまったのです。
しかし、そうした私の思いとは別に、ドラッカーの著者は多くの経営者やソーシャルアントレプレナーに大きな影響を与えてきました。
そして、私の周りにもたくさんのドラッカー信奉者がいます。
企業の世界にもNPOの世界にも、です。
その一人、一条真也さん(企業経営者でもあります)が、ドラッカーの全著作を見事に消化した上で、とても実践的な本にまとめられました。
もし一条さんが書いた本でなければドラッカーの解説書は読まなかったでしょう。
一条さんからこの本が贈られてきた時にも、一瞬、読みたくないなと思ったほどです。
しかし、前著「ハートフル・ソサエティ」にとても共感したこともあり、
そしてそれがドラッカーの最後の著書「ネクスト・ソサエティ」への回答書であることを知っていたこともあって、読まないわけにいきません。
それに一条さんは単なる評論家ではなく、ドラッカー理論の実践者であることは知っていましたので。
実践者の本は、必ず示唆が含まれています。
改めて読んでみて、もしかしたら私のドラッカー評価は認識不足だったかもしれないと思いました。
もちろんまだ翻意したわけではありません。
なにしろ私は「顧客の消滅が事業の目的」と考えている人間なのです。
まあ、私がどう思うかは瑣末な話です。
この本はドラッカーの理論を極めて簡潔に、かつ実践的にまとめています。
企業の人にはもちろんですが、NPOやソーシャルアントレプレナーにもお勧めの本です。
この1冊を読めば、現在の企業が抱える重要な戦略テーマや基本的な経営理論の構造が理解できます。
それに一条さんの要約は、実に簡潔にして要を得ています。
経営指針書としても完結しているように思います、
この本を読んだおかげで、ドラッカーの所期の著作を改めて読む気になりました。
そういう意味で、ドラッカーになじみのない人にも、馴染みすぎた人にも、お勧めの経営書です。
最近、勘違いした経営理論に振り回されている行政の人にもお勧めします。
詳しくは下記サイトをご参照ください。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4777103404/250-0578551-8678607#product-details
■「技術者資格−プロフェッショナル・エンジニアとは何か」
杉本泰治 地人書館 2400円(税別)
技術者の倫理の問題に取り組んでいる杉本さんが、今度は技術者資格の本をまとめられました。
倫理と資格、この問題は深くつながっていることを杉本さんからは何回もお聞きしていますが、
本書の「はじめに」に杉本さんは次のように書いています。
米国にプロフェッショナル・エンジニアという技術者資格制度があり、この制度がまた、技術者倫理を育ててきた。
技術者の倫理と資格とは、車の両輪の関係にある。
というのは、技術者に倫理を求める社会の事情がまた、技術者資格を必要とするからである。
わが国の現状は、技術者倫理が強調されるようになったばかりで、まだその観点からの技術者資格には目が向いていないが、
早晩、それでは足りないことに気がつくに相違ない。
杉本さんらしく、論理が整然としています。
こうした杉本さんのホリスティックなバランス感覚に教えられることが多いのです。
この本はやや専門的であり、法や制度の解説が中心ですので、必ずしも一般的な読み物とはいえませんが、
それでもさまざまな示唆を得ることができます。
2つだけ紹介します。
科学技術や技術者資格に関する法律は日本にもアメリカにもありますが、
その理念と基本姿勢が違うことを杉本さんは明確にしてくれます。
日本法は、科学技術を利用しようとしているのに対し、米国法は、科学技術を制御しようとしている。
そして、それが技術者資格制度に大きな影響を与えているというのです。
私にとっては、これは驚くべき気づきでした。
これまで何となくモヤモヤとしていたことが一気に氷解されたような気もします。
もうひとつも私には大きな気づきでした。
資格には、私益の側面と公益の側面があるが、
日本では私益の観点で捉えられており公益の視点が埋没していると言うのです。
言われてみるとまったくその通りです。
これは大きな意味を持っています。
いうまでもなく、この2つは深くつながっています。
そして、この2つの指摘から杉本さんの考えや姿勢が読み取れるでしょう。
この2つのことに気づくだけでも本書は読む価値があると思います。
ちょっと堅い本ではありますが、
技術に関心のある方やMOTに取り組まれている方、
あるいは企業倫理に関心のある方には、是非読んでいただきたい本です。
ちなみに、杉本さんが代表をつとめるNPO法人科学技術倫理フォーラムでは、
来年度、技術者倫理をテーマにした公開フォーラムの開催を検討しています。
そのための気楽な研究会を発足させています。
隔月に集まって、情報交換しながら、どんなフォーラムにしようかを気楽に話し合っています。
次回はお知らせのコーナーで案内していますが、4月4日です。
関心のある方はぜひご参加ください。
事務局は私が担当していますので、メールをいただければご案内させてもらいます。
■「平和のための経済学」
川本兼 明石書店 2500円(税別)
先週、週間報告で紹介した川本兼さんの新著です。
これまでも川本さんの著作は数冊紹介してきましたが、
川本さんがこれほど著作活動に力を入れるのは、「平和に関する新しい考え方」を広げていきたいからです。
その考え方を川本さんは次の3点に整理しています。
@平和を民衆の解放の歴史の中に位置づける。
A民衆の解放は基本的人権で表される。
B平和は基本的人権の形にして民衆が獲得していくべきものである。
この3点をベースにして、川本さんはこれまで数々の著作を書いてきました。
しかし、もっと広い見地で、政治や経済に対する考え方を伝えていかないとだめだということに気づいたそうです。
そして、新たに書き下ろしたのが、本書です。今回は経済が扱われています。
川本さんが発想の根底においている独自の考えが2つあります。
「人権革命」と「新社会契約説」です。
その視点から「平和権的基本権獲得のための第3の革命」を問題提起しています。
言葉だけだと伝わりにくいと思いますが、こうした発想の基本にあるのは「すべての人間の個人の尊厳」です。
統治のための基本的人権や民主主義の限界を川本さんは指摘します。
こうしたことはこれまでの川本さんの著作で詳しく述べられてきましたが、
本書でも最終章「資本主義経済に枠組みを与える社会的価値」に簡潔に整理されています。
次の文章を読んでもらえれば、川本さんの視座と視野を理解してもらえるでしょう。
近代民主主義は、人間の尊厳と基本的人権を認められる人々の範囲が余りにも狭すぎる。
資本主義の利潤原理は「他者の『人間の尊厳』に対する配慮」を欠いた経済原理だった!
近代民主主義も「他者の『人間の尊厳』に対する配慮」を欠いた政治原理だった!
その原因を、川本さんはそれらの淵源のカルヴァニズムに求めています。
そうした考えを基本において、本書では経済学の基本がわかりやすく書かれています。
平和を獲得していくためには、
私たち一人ひとりが、自分の考えに基づいて主体的に行動していくことが必要であり、
そのためには経済に対する知識が必要だと川本さんは言います。
これまで学校で教えていた経済学は果たして平和のための経済学だったのかどうか、
というのが川本さんからのもうひとつの問題提起かもしれません。
本書は是非若い人たちに読んでほしい本ですが、
「経済を知って平和や福祉のことを考えよう」(本書の副題)という川本さんからの呼びかけは、若者だけに向いているわけではありません。
読んでいただけるとうれしいです。
そして平和に向けての何か行動を起こしてもれるととてもうれしいです。
■「あなたの子どもを加害者にしないために」
中尾英司 生活情報センター 2005 1500円(税別)
コムケアの公開選考会でお会いしたのが中尾さんです。
そして著書をもらいました。それがこの本です。
副題に「思いやりと共感力を育てる17の法則」とあります。
子育てを通して自分の深淵が見えるということに私も最近漸く気づいてきたのですが、
そんなこともあって表題に惹かれて気楽に読み出しました。
しかし、読み出した途端に、中尾さんのするどいメッセージが心に深く突き刺さり、一気に読み終わってしまいました。
実に多くのことに気づかされる書です。
この本に出合えたことを深く感謝します。
子育てももちろんですが、人との関係性を考える上で、最近うすうす感じていた私自身の問題を正面から指摘された気がします。
自分への嫌悪感と自己変革の可能性への希望と言う、矛盾した二つのメッセージをもらった気がします。
あまりにも個人的な感想を書いてしまいましたが、すべての人に読んでほしい本です。
少なくとも子育てに取り組んでいる人には是非とも読んでほしいです。
この本の題材になっているのは、酒鬼薔薇事件を起こした少年とその両親の話です。
私はこういう事件が生理的にだめで、事件そのものに関する報道や論評をほとんど読んでいませんでした。
そして特殊な事件と考えていました。
私が座り直して一気に引きずり込まれたのは、読み出してすぐの15頁目です。
そこには、事件を起こした少年と母親とが事件後に初めて面会した時の様子が、母親の手記から紹介されています。
(少年は)「ギョロッとした目を剥いた」「すごい形相」で抗議すると同時に、その目からは涙が溢れていました。
同時に溢れた二つの激情。母親は、「心底から私たちを憎んでいるという目」を見てショックを受けます。
そして、少年を「じーっとただ見つめて」観察し、ボロボロと涙をこぼしているのを見て、「これ」とハンカチを渡そうとします。
少年は、そのハンカチを「バーンと激しく払いのけ」ました。
中尾さんはこの情景に、問題の本質を読み取り、そこからさまざまなことを読者に気づかせてくれるのです。
その眼差しはまさに温かな人間の目であり心です。
そして、私たち親への厳しいメッセージを出してくれます。
少なくとも私は、中尾さんのメッセージを心の底まで実感させられました。
消化できるかどうかまだ自信はないのですが。
子育てだけの話ではありません。これは社会のあり方にも大きな示唆を与えています。
いや、私自身の生き方を改めて考えなければいけないと思い知らされました。
まだまだ私には観察者からの脱却できない自分、生理的に拒否するものから逃避してしまう自分がいます。
少年の母親とどれほどの違いがあるか、自信がありません。
大人になることを極力忌避してきたつもりですが、もう十分に大人になってしまっているのかもしれません。
様々なことを考えさせられてしまいました。
そして、ちょっと違った一歩を踏み出す契機をもらいました。
中尾さんに感謝しています。
本書に関する詳しい案内や読者の反響などは中尾さんのホームページにも掲載されています。
ぜひお読みください。
http://www.jiritusien.com/familypsychology/book/index.htm
また、中尾さんは、他にもたくさんのサイトを持っています。
あなたの自律支援COM
http://www.jiritusien.com/index.htm
組織改革ご支援COM
http://www.jiritusien.com/sosikikaikaku/index.htm
などはいずれも示唆に富む内容が満載です。
ともかく今はたくさんの人にこの本を読んでほしいと思っています。
第一章だけでもいいです。ぜひお読みください。
感想をきかせてもらえれば、もっとうれしいです。
ここからも購入できます。
■「ハートフル・ソサエティ」
一条真也 三五館 1500円
一条真也さんが戻ってきました。
執筆を再開されたのは昨年で、昨年も2冊の新著「結魂論」「老福論」を書き下ろしましたが、まだ本来の一条さんらしさを感じませんでした。
今回の新著は一条さんらしい大きな構想に基づく魅力的な新作です。
一条さんからの手紙によれば、「ハートフル・マネジメント」「ハートフル・カンパニー」へと続く「平成心学三部作」の幕開けの書です。
待ち望んでいた著作です。
私が一条さんと出会ったのは、たぶん北九州市でのホスピタリティをテーマにしたフォーラムだったと思います。
もしそうなら10年前です。すでにその時、一条さんは執筆活動をやめて経営者業に専念していました。
彼の何冊かの著作を読ませてもらい、その広がりと深さに驚きを感じていた私は、ぜひ執筆再開を望んでいましたが、
いよいよ本格的な執筆が再開され、とてもうれしいです。
この間、会社経営を体験され、新たな視点が吹かされているはずですから、自作以降への期待も高まります。
3部作の1作目にあたる本書は、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」での問題提起に対する具体的な回答書だと著者は位置づけています。
著者の意気込みが伝わってきますが、読み終えてその思いがとても納得できました。
これほど全面的に共感できた本は、あまりありません。
一条さんのこれまでの本には、時々異論も感じたのですが、本書に関しては全面的に共感します。
この考えを具体的な企業経営に発展させていく次作が実に楽しみです。
私も20年ほど前に「21世紀は真心の時代」という小論を書き、
当時所属していた東レで「真心集約産業」や「デディケイテッド・マーケティング」などを提案したりしていましたが、
この本はそんな上っ調子な論調ではなく、実に生真面目に理論を整理し、心豊かな社会のデザインを描いています。
高齢社会の指針としての実践的な示唆にも富んでいます。
内容の密度が高いので容易には要約できませんが、熟読されることをお勧めする好著です。
視野も広いですが、それらが見事につながっています。
一条さんは、本文で、
21世紀における私たちの課題というのは、共同体の新しい形を構築していくことなのだ(87頁)。
と述べています、そしてそのモデルの一つとして、結いや講をあげています。
全く同感です。
私が取り組んでいるNPO活動やまちづくりは、すべてその視点に立っています。
このシリーズは企業経営へと書き進められていく予定ですが、
新しい共同体社会への展開もぜひ期待したいと思っています。
本書は、そうした新しい大きな物語のプロローグです。
ちょっと褒めすぎの感もありますが、今読み終えて、実に心がワクワクしていますので、仕方がありません。
本の内容は、出版社のサイトで見てください。
ともかくお勧めしたい1冊です。
これを読んで、改めて昨年の2冊を読むとまた違った印象になるかもしれません。
ここから購入できます。
■「戦争が終わってもーぼくの出会ったリベリアの子どもたち」
高橋邦典 ポプラ社 1365円
以前、ご紹介したアメリカ在住の写真家、高橋邦典さんの写真絵本の2作目です。
前回の「ぼくの見た戦争」はとても好評で、私のところにも反響がありました。
今回は、高橋さんがリベリアの内戦中に出会った子供達数人のその後の生活を追ったドキュメンタリーです。
私には前作以上に考えさせられるものがありました。
前回もお知らせしましたが、高橋さんのホームページもぜひご覧ください。
とてもライブな動きのある写真からさまざまなメッセージが受け取れます。
写真集は説明を書くよりも見てもらうことですね。
書店にまだ出ているはずです。ぜひお手にとって見てください。
http://www.kuniphoto.com
http://www.jmag.com/kuni.html
(kuni journal)
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