本の紹介
私の友人たちが書いたり、関わったりした本の紹介です。
ここでは最近のものだけを紹介します。
これまでの一覧表の書名などをクリックすると紹介情報や著者からのメッセージが読めます。
<これまでの紹介分野別一覧>
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(最新の紹介書籍です) |
■「のこされた あなたへ」(一条真也 佼成出版社 1500円)
一条真也さんの著書はこのコーナーでも毎回紹介させてもらっていますが、
今回は一条真也さんのライフワークにつながるグリーフケアをテーマにした本です。
一条さんは「日本にグリーフケアの文化が完全に根づくための一粒の麦になりたい」と前から書いていますが、本
書は2冊目のグリーフケアの本です。
一冊目は『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)です。
一条さんに本書を書かかせたのは、3月11日の東日本大震災だったようです。
本書の副題は「3・11 その悲しみを乗り越えるために」となっています。
被災地に立った時の思いも本書に書かれていますが、冠婚葬祭業の会社の社長として、さまざまな葬儀に立ち会っている一条さんは、そこにたくさんの思いを見たことでしょう。
そして本書ができあがったのです。
一条さんはご自身のブログにこう書いています。
もちろん、どのような言葉をおかけしたとしても、亡くなった方が生き返ることはありませんし、その悲しみが完全に癒えることもありません。しかし、少しでもその悲しみが軽くなるお手伝いができないかと、わたしは一生懸命に心を込めて本書を書きました。時には、涙を流しながら書きました。
本書を読んでいて、時々、被災地の風景が垣間見える気がするのは、そのせいかもしれません。
しかし本書はそれにとどまりません。
本書の帯には「グリーフケアの入門書にして決定版」と書かれていますが、これまでの一条さんの活動を踏まえた該博な知識と体験から、グリーフケアを支える仕組みや思想が体系的にしっかり書き込まれていますので、「すべての“愛する人を亡くした人”」へのメッセージにもなっています。
それは私たちの生き方そのものへのメッセージでもあります。
目次は次の通りです。
第1章:葬儀ができなかったあなたへ
第2章:遺体が見つからないあなたへ
第3章:お墓がないあなたへ
第4章:遺品がないあなたへ
第5章:それでも気持ちのやり場がないあなたへ
そして、「あとがき」に代えてとして、「別れの言葉は再会の約束」で本書を貫く、そして一条さんのグリーフケア理念でまとめられています。
おそらく本書を読まれるとみなさんは新しい発見がいろいろあるはずです。
そしていろいろな「弔い方」があることにも気づかれるでしょう。
コピーライターの名手でもある一条さんは、刺激的なメッセージも投げかけてくれています。
たとえば、こんなメッセージを受けたら、あなたはどう思いますか。
「残されたあなたこそ遺体です」と。
お薦めの1冊です。
コモンズ書店から購入
■横浜・野毛の商いと文化 (野毛地区街づくり会
横浜商科大学 1500円)
自在株式会社の根本さん編集の地域学シリーズの第2作です。
今回は横浜の野毛地域がテーマです。
野毛は、居酒屋やジャズバーなど、500軒以上のお店がひしめく横浜の一大商店街で、野毛大道芸でも有名ですが、演芸場や劇場なども多く、多彩な庶民文化を発信しているまちです。
中華街や元町に比べるとあまり知られていませんが、横浜の開港をきっかけにして自然発生的に形成された街で、横浜のアイデンティティを理解するうえで重要な街のひとつとも言われています。
そこで2007年から行われている「野毛まちなかキャンパス」での、2010年度の講演をまとめたのが本書です。
地元の商店主、郷土史家、「野毛大道芸」の関係者などが語る野毛の話は、部外者が読んでも実に魅力的で面白いです。
本文は、「歴史と街の成り立ち」「大衆文化と芸能」「商いと街の活性化」の3部構成ですが、そのそれぞれが単に野毛という地域の話だけではなく、そこから日本の歴史や文化が垣間見えてきます。
横浜という地域の特性によるのかもしれませんが、横浜に住んでいない者にとっても面白く読めます。
根本夫妻の編集の腕によるのかもしれませんが、私も興味深く全編を読ませてもらいました。
いろんな意味で面白い本です。
最近、各地で「まちなかキャンパス」や「まちなかカレッジ」が広がりだしていますが、野毛まちなかキャンパスはそうした動きのはしりのひとつでしょうか。
かつて地域学が広がった頃に、効した本作りもかなり行われましたが、まちなかキャンパスの記録をこうした形でしっかりとまとめているところはそう多くはないでしょう。
ですから、本書はそうした「まちなかキャンパス」活動を企画する上でも参考になります。
その意味で、まちづくりに取り組んでいる人にもお薦めの1冊です。
野毛地区街づくり会に関してはホームページをご覧ください。
■「ホスピタリティ・カンパニー」(佐久間庸和 三五館 2100円)
このコーナーでもたくさんの著書を紹介させてもらっている一条真也さんの本名は佐久間庸和さんです。
そして佐久間さんは北九州市に本社がある株式会社サンレーの社長でもあります。
本書は、佐久間さんが本名で出版する2冊目の本です。
サンレーは、冠婚葬祭サービスを中心に事業展開をしている会社ですが、最近注目されてきている「隣人祭り」を日本で一番多く開催している会社でもあります。
佐久間さんは、「無縁社会」などという言葉が広がっている現在の社会状況を変えていこうと、事業を通して、また執筆・講演活動を通して、奮闘されているのです。
本書は、その佐久間さんが最近5年にわたって、社長として社員の前で話したメッセージを本にしたものです。
ちなみに、その前の5年のスピーチは、以前紹介した「ハートフル・カンパニー」にまとめられています。
佐久間さんのホームページでも公開されていますが、佐久間さんが、社内に向けても社会に向けても変わることなく、メッセージを出していることがよくわかります。
まさに「知行合一」。その姿勢に共感を持ちます。
社員向けの話だからどうせ内輪の内容だろうなどと思う人がいるかもしれません。
そういう人にこそ、本書を読んでほしいです。
そこで語られている内容の深さや広さに驚くはずです。
しかも全体が大きなビジョンで包まれています。
まさに「ビジョナリー・スピーチ」なのです。
佐久間さんは、「ホスピタリティ」は今後の会社のみならず、社会全体の最大のキーワードだと言います。
人類が21世紀において平和で幸福な社会をつくるための最大のキーワードだとさえ言い切っています。
その意味は、ぜひ本書で読み取ってもらえればと思います。
スピーチを本にしていますので、とても読みやすいです。
通読してもよし、座右において気の向くままに読んでもよし、です。
短い一話一話から得る示唆は決して少なくありません。
企業経営にまつわる本のように思われるでしょうが、決してそうではありません。
生き方を考えさせられる本でもありますから、すべての人たちにお薦めしたい本です。
ちなみに私が佐久間さんと知り合ったのも「ホスピタリティ」という言葉のおかげです。
もう10数年前になりますが、北九州市で「にこにこホスピタリティ運動」が展開されましたが、そのキックオフの集まりで、ホスピタリティの話をさせてもらったのです。
私自身も自らの生き方の基本に「ホスピタリティ」を置いています。
ホスピタリティを基本に置いて生きていると、いつも快適にいられます。
みなさんにもぜひお薦めしたい生き方です。
本書を読んで、その一歩を始めてもらえるとうれしいです。
■「市民社会政策論」(田中弥生
明石書店 2415円)
田中弥生さんが、これまでの調査研究活動を踏まえて、まとめたのが本書です。
田中さんは、大学評価・学位授与機構 評価研究部の准教授ですが、
日本のNPOに関しては「思い」も「知見」もとても深いものをお持ちで、
その分野で長年、積極的な活動を重ねてきていいます。
私が最初に出会ったのは1990年ごろですが、
その時に田中さんが取り組んでいたのが、欧米やアジアの「コーポレート・シチズンシップ」の調査です。
私が共感したのは、事例にしっかりと向き合う姿勢でした。
以来、時には巻き込まれながら、さまざまな取り組みを横から見させてもらっています。
本書は、そうした20年にわたる田中さんの思いが、いささか「怒り」を込めてまとめられています。
その「怒り」のおかげで明快なメッセージが伝わってきまので、私のような「専門家」嫌いな者の心にも響いてきます。
「はじめに」のタイトルが「政府はなぜボランタリズムを萎縮させたのか」です。
このタイトルに、本書の基本姿勢が感じられます。
副題として、「3.11後の政府、NPO、ボランティアを考えるために」とありますが、
多くの人は今回の日本大震災で活動しているボランティアの報道にたくさん触れていることでしょう。
にもかかわらず、田中さんは「政府はなぜボランタリズムを萎縮させたのか」と問題提起します。
そうした表層的な動きに流されない、しっかりした視点に立った問題提起が本書の根底に流れています。
それは本書の目次を見ただけでわかります。
私の理解では、その核心にあるのは「市民性」です。
市民性を高めていくことこそが、政府の市民社会政策の基本でなければいけません。
私がこの30年感じているのは、その方向と反対の政策の動きですので、本書のメッセージにはとても共感できます。
田中さんは本書を出したという案内文にこう書いてきました。
日本の復興を支えるためには強い市民社会が不可欠です。
そのために、私たちは何を目指さねばならないのか、政府に何を求め、求めるべきではないのか、
皆様とともに考えてゆきたいのです。
本著がその一助になれば幸いです。
その意図は見事に果たされていると思います。
問題は、本書を読む人の感度かもしれません。
本書は、田中さんがこれまで長年にわたり地道に取り組んできた調査結果も踏まえていますので、説得力があります。
それに何よりも、田中さん自身の個性が素直に出ていて、楽しく読ませてもらいました。
田中さんは仲間と一緒に「エクセレントNPOをめざそう市民会議」を立ち上げ、「エクセレントNPO」の評価基準を活用して、「強い市民社会」への良循環を作り出すことを目指しています。
本書は、そうした活動の基本的なテキストにもなっています。
NPO関係者をはじめ、これからの日本社会のあり方に関心のある人にはぜひ読んでほしい本です。
そして、自らの生き方を見直す契機にしていただければと思います。
コモンズ書店から購入
■句集「五弦琵琶」(塚谷誠 角川書店 2667円)
会社時代の先輩である塚谷誠さんの第一句集です。
塚谷さんは会社を引退後、塩川雄三さんに師事して俳句を始めました。
その最初の句集です。
私と塚谷さんの関係はこれまでも何回か週間活動で書き込みましたが、塚谷さんが会社の変革に取り組んだ時に、少しだけ仕事をご一緒させてもらいました。
そのご縁で、今もお付き合いが続いています。
私は俳句にはまったく関心がありませんでした。
ですからこの句集を送っていただいても、普通はぱらぱらとめくっただけだったでしょう。
しかし今回は、書名の「五弦琵琶」の響きに魅せられてしまい、ついつい読み出してしまいました。
そして、一気に最期まで、すべての句を読ませてもらうことになりました。
句集を、こうやって一気に読むのがいいのかどうかはわかりませんが、塚谷さんの人柄を知っているからかもしれませんが、一つの世界が生き生きと実感できました。
はじめて俳句の世界が、少し垣間見た気がします。
詠まれた句には、私の世界と重なる世界がいくつかありました。
余呉や海士で詠まれた句には、ある繋がりを感じました。
一心不乱に企業戦士を勤め上げてきた人の平安も感じました。
奇妙な話ですが、読み上げた後、私自身、心の平安さえ感じます。
友人が時々、句集などを送ってくれますが、正直、あまり興味を感じませんでしたが、今回はちょっと違いました。
時に、句集も良いものだと思いました。
3つだけ紹介します。
私の心に響いた句です。
ひさびさに 娘残せし 雛飾る
看取りせず 別れし母の 墓洗ふ
曝涼の 館に聴けり 五弦琵琶
■自然保護分野の市民活動の研究(藤澤浩子 芙蓉書房出版 2800円)
コムケア仲間の藤原浩子さんは様々な活動に取り組みながら、大学院などでの研究活動も長年熱心に続けています。
そのエネルギーには頭が下がりますが、今回、出版したのが「自然保護分野の市民活動の研究」です。
この本を受け取った時、なぜ「自然保護」なんだろうと思ったのですが、本書を読んで、その理由がわかりました。
三浦半島自然保護の会(50年を超える歴史のある会)の活動に長年触れていたのです。
実践活動への共感に立った問題意識が藤澤さんの支えになっているのです。
本書は実際の市民活動の記録を克明に分析し、そこから市民活動への実践的なヒントをたくさん抽出していますが、観察者的ではなく、当事者的な視点を感じるのはそのせいかもしれません。
藤澤さんは、本書を書いた目的として次の2つを挙げています。
まず「市民活動の現場に蓄積されている知見の可視化」です。
それも構造化していきたいというのが藤澤さんの思いのようです。
もう一つは「現在および将来世代の研究者との研究素材の共有」です。
たしかに市民活動の実践記録は散逸しがちですが、それらを集約していくことで、市民活動の位置づけや役割が見えてくるだろうと藤澤さんは考えています。
この主張にはとても共感できます。
昨今、「新しい公共」論もでていますが、これまでの公共概念との違いが私には見えません。
私自身は「公」と「共」とは視座も理念も全く違うと思っていますが、まさに実践の現場からの脱構築作業が不可欠ではないかと思います。
その意味でも、本書から学ぶことは少なくありません。
前半は日本の市民活動の概念整理と歴史的な概括、後半は実証的な実態調査を踏まえた問題提起になっています。
5つのケーススタディはそれぞれにかなり踏み込んだものですので、それ自体からも学べますが、それらを通じた藤澤さんの構造化をめざした試み(たとえば長期継続的な市民活動の展開の6段階モデルなど)に、私は興味を感じました。
自然保護分野に限らず、市民活動を考えていく上での実践的なヒントがたくさんありますので、実践者の方のよいテキストになりそうです。
私がこの本を読んで思い出したのは、イヴァン・イリイチが提唱した、コンヴィヴィアリティとサブシステンスです。
市民活動の継続要因に関しては「楽しみ」や「喜び」という要素が最も重要だろうと私は思っています。
本書では、自然保護分野の市民活動の長期継続要因として、「現場感覚」「共通の目的や関心」「平等な立場での臨機応変な役割分担」「独創的な取り組み手法」「広報活動」の5つがあげられています。
「共通の目的や関心」のなかに「楽しみ」の要素も含意しているようですが、私自身はそれこそが出発点だと思っています。
その意味でイリイチのコンヴィヴィアリティは示唆に富んでいます。
もうひとつのサブシステンスは、脱市場経済の切り口として最近少しずつ議論され始めていますが、市民活動を支える基本概念ではないかと思います。
それとのつながり、あるいは経済パラダイムの転換と市民活動の関係は大きな課題です。
私は昨今の日本のNPOもまた市場経済のサブシステムになっているようで、違和感が大きいのですが、住民活動とは違うとしても、その立脚点はサブシシテンス経済におかれるべきだと思っています。
サブシステムからサブシステンスへ、です。
もしそうした姿勢を強くもてば、社会のリフレーミングの尖兵になれるはずです。
藤澤さんには、ぜひそうした方向での問題提起を次はお願いしたいと思います。
博士論文がもとになっているので、難しそうな気配はありますが、読んでみるととてもわかりやすいです。
市民活動に取り組まれている方はぜひどうぞ。
コモンズ書店での購入
■「なぜ、社員10人でも分かりあえないのか?」(日経トップリーダー編 日経BP社 1400円)
「気配りミラー」の専業メーカー、コミー株式会社の小宮山社長は、
このホームページではもっぱら「箸ぴーゲーム」で登場しますが、私が敬愛する経営者のお一人です。
私も会社に何回か伺わせてもらっていますが、行くたびに新しい発見があります。
昨年くらいからテレビでも盛んに取りあげられているので、小宮山さんやコミーのことをご存知の方も多いと思いますが、
コミーの「気配りミラー」は私たちの周りにたくさんあります。
一番身近なのは、ATMの画面の上あたりにもついている、小さなミラーです。
飛行機に乗ると頭上の荷物入れにもコミーのミラーが付いています。
コミーは小さいながら、世界中を飛び回るミラーをつくっている世界企業なのです。
そのコミーが大切にしているのが、「コミュニケーション」です。
本書の帯にも書かれていますが、「小さな会社だから一心同体、というのはまったくの誤解」というのが小宮山さんの経営哲学です。
その哲学の上に、コミーでは実にさまざまなことが行なわれています。
本書には、その取り組みとそこから得た実践知がたくさん紹介されています。
小宮山さんは「言葉」にこだわる人です。
流行語には安直にながされません。
たとえば、CS(顧客満足)という言葉がありますが、小宮山さんは「CSを追及していたらコミーは潰れていた」といいます。
では何を追及していたのか。
コミーが追求していたのはUS、ユーザーの満足でした。
そこには「現場」での第一次情報を最優先する小宮山さんの情報観があります。
小宮山さんはまた「物語」を重視しています。
詳しくは本書を読んでほしいのですが、最近流行りだした「ナラティブマネジメント」を早くから実践しています。
もちろん小宮山さんは「ナラティブ」などという言葉を意識していたわけではなく、
コミュニケーションを重視した経営実践の中から生まれてきたのが、コミーの物語重視経営なのです。
本書にも出てきますが、松下幸之助はよく「うちは人を作っている会社です」と言っていたそうですが、
小宮山さんは「コミーは物語を作っている会社です」と言っています。
そうしたコミーの物語はすで10を越えています。
コミーのホームページにも掲載されていますので、ぜひお読み下さい。
ちなみに、コミーの物語の主人公は社員一人ひとりです。
そこに小宮山さんの人間観が象徴されています。
本書は、そうした小宮山さんの経営哲学の実践の場であるコミーの経営の実際を具体的に紹介していますが、
小宮山さんの経営訓もコラムで紹介されています。
大企業の人にもとても学ぶことの多い本です。
いや企業関係者だけではなく、NPOや行政の人にもぜひ読んでほしい本です。
小宮山さん自身が書いている6頁の「あとがき」を読むだけでも考えさせられることがたくさんあります。
お勧めの1冊です。
コモンズ書店で購入
■「隣人の時代−有縁社会のつくり方」(一条真也 三五館 1500円)
「隣人祭り」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
10年ほど前、パリで始まった、近隣に住む人たちが気楽に食事をしながら、交流する集まりです。
同じアパートに住む老人の孤独死が1か月も放置されていたことに疑問を持った若者が住人に呼びかけて集まりをもったのが最初と言われています。
その後、フランス全土に、そしてヨーロッパ、さらに世界中へと大きな広がりをみせています。
その隣人祭りを、日本国中に広げてきているお一人が、本書の著者の一条さんです。
一条さんは、このコーナーでもよく紹介させていただいている作家ですが、
同時にサンレーという冠婚葬祭互助会の会社の社長でもあります。
一条さんは、昨今の「無縁社会」という言葉に異論を唱えています。
私も何回か書いていますが、社会は「無縁」であろうはずがありません。
しかし、「無縁化」する動きが広がっているのは否定できません。
互助会という一条さんの仕事は、まさにそうした「無縁化」の動きに抗う活動であり、冠婚葬祭は「縁」をつむぐ仕事でもあるのです。
一条さんは、互助会という仕組みを使って、この近隣の集まりを広げると共に、ご自身でも毎年たくさんの隣人祭りを開催しています。
そうした活動を通して、一条さんはこの社会を本来の「有縁社会」にしていこうとしているのです。
一条さんはまた言葉づくりの名手です。
本書のタイトルの「隣人の時代」は、まさにこれからの時代を指し示す名キャッチコピーです。
ここで「隣人」と書いていますが、本書では一条さんは「となりびと」とも表現しています。
流行語にまでなった「無縁社会」は死んだ言葉でしかありませんが、「隣人の時代」は生きて動きを創出する言葉です。
さらにそれを「となりびと」と表現すると、ほのぼのしたあたたかさを感じます。
一条さんは、これから始まるのは「有縁社会」であり、「隣人の時代」だといいます。
そして本書で、となりびとの見つけ方、付き合い方をわかりやすく書いています。
もちろん、隣人祭りの開催のためのヒントもたくさん出てきます。
一条さんも書いているように、本書は「となりびと」と仲良く暮らし、幸せに生きるための本なのです。
そこに流れているのは「助け合いは、人類の本能である」という考え方です。
たまたま本書の出版の直前に東北関東大震災が発生しましたが、一条さんはこう手紙で書いてきました。
本当に日本史上最悪ともいえる悲惨な災害でした。
でも、わたしは、この大地震によって日本に「隣人の時代」が呼び込まれるかもしれないと考えています。
私もそう思います。
そうしていくためにも、多くの人たちにお読みいただきたいと思います。
コモンズ書店での購入
■「日本生まれの「正義論」」(川本兼 明石書店 2310円)
平和の問題に取り組んでいる川本兼さんが久しぶりに新著を出版されました。
書名には「正義論」とありますが、昨今流行のサンデルの「正義論」とは、一味違って、平和への強い思いがあります。
川本さんの、これまでの数多い平和論・憲法論の集大成でもあります。
川本さんは、今度こそ最後の著作になるかもしれないと書いてきました。
副題は「サンデル「正義論」に欠けているもの」となっています。
そこに示されているように、川本さんは最近のサンデルブームに危惧の念を持っています。
本書のはしがきには、こう書かれています。
サンデル・ブームに関して私が先ず思ったことは、現在の日本の若者もまた他国からの思想を「権威」として受け入れ、その「いいところ取り」を行ってしまうのかということです。
ブログでも書きましたが、川本さんはコミュニティを意識し過ぎるサンデルの主張には賛成していません。
集団に対する連帯の責務を強調することが、戦争や平和の問題に関しては、愛国心と結びつき、さらには徴兵制とも結びつくというのです。
つまり、サンデルの正義論は、若者の反動化を通じて日本全体の反動化をさらに促進するのではないか、と危惧しています。
私は、コミュニティを基盤に発想しているのですが、たしかにサンデルの議論にはその危険性を感じていました。
いささか短絡的に感ずるのです。
しかし、川本さんは、批判だけしているわけではありません。
川本さんは、「日本国民はその日本国民の戦争体験を通じて、戦争と平和の問題をも含む新しい正義論を提起しなくてはならない」と考えているのです。
この姿勢は10冊を超える、川本さんの精力的な執筆活動の基調を成すものです。
本書は2部構成です。
前半は「人間の尊厳および人権概念の普遍化」です。
そこでは、日本国民の戦後の「感覚」が求めた正義論と平和論が書かれています。
本書の議論の出発点は、この日本国民の戦後の「感覚」です。
後半は「「革新」勢力の消滅と日本人」で、日本人が再び自ら戦争を行うようになってしまうかもしれないという危惧が語られています。
いずれも、独自の川本理論に基づいていますが、決して独善的ではありません。
ところで、川本さんが重視する「日本国民の戦後の感覚」とはなんでしょうか。
彼はその感覚に「ロゴス」としての「言葉」を与えなければいけないと言うのです。
彼のこの数年の著作活動は、まさにそのためにあったように思います。
本書はこれまでの川本さんの著作のエッセンスが込められていることもあって、そう簡単に読める本ではありません。
しかし、ぜひ多くの、とりわけ若い世代に読んでほしい本です。
一人で読むと挫折しそうなので、川本さんを読んで読書会をしようと思っていましたが、東北関東大震災が起こってしまったため、しばらくは実現できそうにもありません。
しかし、夏以降に、ぜひとも本書を題材にした話し合いの場を開催したいと思っています。
川本さんと相談してまたご案内します。
しかし、その前に、ぜひ多くの人に本書を読んでもらいたいと思います。
川本さんがいうように、「日本国民の戦後の感覚」は未来を開く力を持っているのかもしれません。
しかし残念ながら、その感覚がロゴスにならないままに、このままだと散在してしまいそうです。
とりわけまさにいま、その感覚は歴史の岐路にあるように思います。
本書を読まれて関心をお持ちになった方は、ぜひ私にご連絡ください。
お願いします。
コモンズ書店での購入
■「社会的共通資本としての川」(宇沢弘文・大熊孝編 東京大学出版会 4800円)
私が顧問をさせてもらっているNPO法人新潟水辺の会の代表の大熊さんは、
大学教授にしてはめずらしい、知を愛する実践の人です。
その生き方において、魅力を感じます。
その大熊さんと宇沢さんが中心になって、まとめたのが本書です。
14人の専門家が、川をテーマに、コモンズの大切さと可能性、
そしてこれからの私たちの目指すべき生き方(社会のあり方)の方向性を語っています。
それぞれの論がとても面白く示唆に富んでいます。
厚い本なので、読み出すまでちょっと抵抗があったのですが、読み出したら、とても面白いし、読みやすいことがわかりました。
それに小気味良さもあります。
私が拍手したくなったのは、関良基さんの「脱ダムから緑のダムへ」です。
この数十年の日本の政治経済のばっさりした評価がとても小気味良いのです。
こういう学者もいるのかとうれしくなりました。
まあ私の思いと全く同じなので、うれしくなっただけかもしれませんが。
社会的共通資本とは、コモンズのことです。
宇沢さんは、社会的共通資本を、
「一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような自然環境や社会的装置」
と定義しています。
そして、社会的共通資本は、それに重要な関わりをもつ生活者の集まりやそれぞれの分野における職業的専門家集団によって、管理、運営されることが必要だと言うのです。
まさにこれが私のこの20年のテーマ、「コモンズの共創」、つまり「みんなのものをみんなで育てる」でした。
議論は多岐にわたっていますが、各論考に共通しているのは現実の出来事を踏まえて語るという姿勢です。
だから読みやすく、説得力があるのです。
宇沢さんの序章につづき、次の3部構成です。
第1部 持続可能な治水と利水の実践
第2部 リベラリズムとしての脱ダム思想
第3部 コモンズによる川の共有
大熊さんは「技術にも自治がある」と題して、治水技術の伝統と近代につい書いていますが、
そこに昔の治水技術として、筑紫平野の塩原川の「野越」という越流堤の話を紹介しています。
水を越えさせない堤防ではなく、越えさせる堤です。
近代の管理思想では出てこない、見事な発想です。
「見試し」という人間の知恵も登場します。
技術だけのことではなく、私たちの生き方や組織のあり方を考える上で、
私たちが忘れてしまってきたことをいろいろと思い出させてくれます。
論者の中に岡田幹治さんのお名前も見つけました。
東レ時代に一度接点があっただけですが、記憶に残っている方です。
「週刊金曜日」の編集長時代にもメールをいただきました。
岡田さんは「なぜダム建設が止まらないのか」をとても具体的に、関係者の実名まで出して書いています。
河川工学者と国交省官僚と報道関係者の共同謀議だと私は思っていましたが、そのことが見事に描かれています。
ちなみに、大熊さんは河川工学者ですが、そういう人もいます。
また岡田さんの文章にも出てきますが、違和感を持ってやめた河川行政官僚もいます。
その一人である宮本博司さんの「淀川における河川行政の転換と独善」は、それだけでも本書を読む価値がある気がします。
厚くて高価なので、だれにでも薦められる本ではないのですが、これからの社会のビジョンを示す本ですので、多くの人に読んでほしいと思います。
厚くて高価なので、だれにでも薦められる本ではないのですが、
これからの社会のビジョンを示す本ですので、多くの人に読んでほしいと思います。
ちなみに、大熊さんが代表をしている新潟水辺の会では3月19〜20日、信濃川と千曲川で鮭の稚魚を放流するイベントを開催します。
案内をお知らせのコーナーに載せていますので、よかったら参加してください。
私も参加します。
■100番目のメッセージ(メッセージプロジェクト かんき出版 1300円)
このホームページでも紹介したことのある学生たちによる「メッセージプロジェクト」の本が完成しました。
この本づくりには私も友人を数名紹介しましたが、そのほかにも私の知り合いが何人か登場しています。
このサイトにも登場する一条さんや神崎さんも協力してくれました。
登場するのは、アスリート、音楽家、美術家、写真家、落語家、社会活動家、職人、起業家など、さまざまなジャンルの99人です。
本書を企画したのは、今春卒業予定の学生たちです。所属大学も就職先もバラバラな5人が、大学最後の「学び」を本というカタチにすることを目指して実現したのです。
そして、99人の人たちに、若い世代に元気を送ってもらったのです。
このプロジェクトを通じて、彼らが何に気づき何が変わったのかを知りたい気がしますが、それはともかく、多彩な人が登場していますので、通読すると時代の気分を感じられるかもしれません。
今週の2月11日と12日に渋谷の明治神宮前近くのCampus Plus で99日が書いたメッセージの展示と交流会も予定されています。
学生たちはもちろん、本書に登場した人たちの一部も参加するそうですので、よかったらご参加ください。
■「満月交感 ムーンサルトレター」(一条真也
vs 鎌田東二 水曜社 上下各1600円)
不思議な本が出版されました。
といっても、本の体裁や出版のされ方が不思議だというわけではありません。
本書は、2人の異才の往復書簡集です。
2人とは、このサイトにもよく登場する一条真也さんと「バク転神道ソングライター」を自称する宗教哲学者の鎌田東二さんです。
どこが不思議かといえば、そこで語られている世界の奇妙さです。
語られているテーマは実に幅広いのです。
だからと言って、その内容が特殊かといえば、必ずしもそうではありません。
霊性思想や宗教儀礼などの話には、いささかの特殊性はあるかもしれませんが、奇をてらっているような内容ではなく、とてもわかりやすく、かつ、示唆に富む共感できる内容が多いのです。
なによりもお2人の日常の生活に立った話をされていますので、すんなり理解できます。
話題は奔放に飛び交うのですが、常にお2人のそれぞれの実際の生活がそれをつないでいるため、読者も自然と世界を飛び交うことができるのです。
ですから決して特別の世界が語られているわけではありません。
しかし、それを通して読むとなにやらとても不思議な世界が垣間見える気がするのです。
もしかしたら、この往復書簡が満月の夜ごとに交わされたということに関係しているのかもしれません。
霊気の強い2人が満月に誘われて、世界を語りながら発しているメッセージの強さが、読者の霊気を刺激するのかもしれません。
そもそもこの往復書簡は、お2人のホームページにも毎月掲載されていました。
ですから私はそのいくつかを読んでいたのですが、改めて本書を通読してみると、不思議な魅力に引き込まれて、上下巻の、そして文字が小さいので文字数がとても多い本なのに、なぜか一気に読んでしまいました。
そして、本書からの奇妙なエネルギーを感じたのです。
まあこんな紹介をしてしまうと、腰が引けてしまうかもしれませんね。
すみません。
本書をしっかりと紹介するには、私のパワーが不足しているようです。
しかしまともな紹介をすれば、宗教哲学者と会社経営者の語り合う現代社会論なのです。
出版社の解説によると、「日本人の精神世界、長寿社会「日本」の未来、若者たちの意識、現代社会の問題点など」が鋭く切り込まれているのです。
読んでみて私もそう思います。
さまざまなテーマがしっかりとつながる形で語られていますので、退屈に切り刻まれた最近の多くの議論とは違った世界を感ずることができるでしょう。
話題は多岐にわたっていますので、退屈する暇もありません。
何しろ不思議な本で、うまく紹介できなかったのですが、私にはとても面白かったです。
気楽に読めますので、一気になどと思わずに(私はつい引き込まれてしまったのですが)ゆっくり読めば、たくさんの示唆が得られることは間違いありません。
ちなみに、お2人の満月交感は今も続いています。
一条さんのサイトもぜひご覧ください。
もっと不思議な世界が見えるかもしれません。
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■「エクセレントNPO」の評価基準(「エクセレントNPO」をめざそう市民会議 言論NPO 800円)
「エクセレントNPO」をめざそう市民会議は昨年11月に発足しました。
非営利セクターに競争をもたらし、強く豊かな市民社会づくりへの良環境をつくることが理念だそうです。
コアメンバーの一人である田中弥生さんからもお話をお聞きしていましたが、私は参加していません。
基本的に私の発想とはまったく違っているからです。
この本も、私の考えとは大きく違う発想に立っています。
第一、「エクセレントNPO」という表現は、私の発想にはありません。
30年前に流行した「エクセレントカンパニー」騒ぎを知っている者としては、違和感もあります。
内容に関しては、いろいろと書きたいことがあります。
にもかかわらず、この本は、現在NPO活動している人には実践的なガイドになることは間違いありません。
いまのNPOがぶつかっている壁を超えるためにはとても有益なテキストといってもいいでしょう。
この市民会議の前身は、3年前に発足した非営利組織評価研究会ですが、3年間にわたりNPOの実態調査やさまざまな視点からの議論を踏まえてつくられた評価基準を基軸にして、これからの非営利セクターのあり方が示されています。
ですから単に頭で考えただけのものではなく、体験知も含めての評価基準なのです。
評価基準は「市民性」「社会変革性」「組織安定性」を柱にして、それぞれに具体的な評価リストが明示されています。
自己診断リストは33項目あげられています。
いずれも長年「評価」に取り組んでいた田中さんの知見を感ずるものです。
副題に「「エクセレントNPO」をめざすための自己診断リスト」とあるように、実際にNPO活動に取り組んでいる人の自己確認作業の提唱でもあります。
「エクセレントNPO」宣言団体の呼びかけも行われています。
ちなみに、本書は以前ここで紹介した「エクセレントNPOとは何か」の続編です。
そうした評価基準の作成に関わった3人の人が、3つの評価軸に関して、それぞれの思いも語っています。
また最後には自らの組織を自己診断するリストがていねいに解説されていますので、実際にNPO組織に関わっている人は自己評価されるといいと思います。
それを通してこれからの課題が整理できるはずです。
壁にぶつかっているNPO関係者の皆さんやNPOを発展させていきたいという皆さんはお読みになるといいと思います。
と書きながら、以下は蛇足です。
本書の紹介とはちょっと違うので、よほど暇な人だけ読んでください。
本書はどこが私の発想と違うかを少しだけ書いておきます。
書き出すときりがないのですが、本書で語られている「市民社会」のイメージがまずは曖昧なことです。
昔、田中さんの呼びかけで「市民社会研究会」というのがあったのですが、そこでの「市民社会」は社会のサブシステムとしての「市民社会」でした。
メンバーがほとんど大学教授だったから仕方がなかったかもしれません。
当時はそれが主流でしたが、私は社会そのものの変化に興味がありました。
NPOや市民活動は、社会そのものをリフレームしていくというのが私の発想です。
フレームの組み替えだけではなく、当然、社会構造原理が変わります。
このサイトの基調である、組織起点から個人起点への転換や脱貨幣志向が起こるのだろうと思っています。
そういう視点では、「価値観」が基軸になります。
つまりいま必要なのは、企業の世界をもじれば、「エクセレントNPO」ではなく「ビジョナリーNPO」なのではないかと思います。
ビジョンがなければ評価はできませんし、変革もできません。
つまり市民社会のビジョンがとても重要だということです。
「組織安定性」という組織論への違和感もあります。
これも社会のあり方と深く関わっています。
というように、まあいろいろと私の世界観とはちがうところがあるわけです。
なにやら薦めているのか、くさしているのか、ややこしいですが、薦めてはいるのです。
ただ、ぜひともそうした視点も持って読んでもらえると嬉しいというだけの話です。
この先の話に興味のある方は、ぜひ本書を読んだと後で湯島に遊びに来てください。
■社員みんながやさしくなった(渡邉幸義 かんき出版 1400円)
今年最初の本の紹介は企業関係の本です。
しかも私の友人の著者ではなく、友人が企画編集した本です。
「社員みんながやさしくなった」。編集を担当した友人は藤原雅夫さんです。
書名の下に副題があります。
「障がい者が入社してくれて変わったこと」。
「入社して」ではなく「入社してくれて」というところに、本書のメッセージを感じます。
著者はアイエスエフネットグループ代表の渡邉幸義さんです。
残念ながら私は面識がありません。
この本は藤原さんがもしよかったらと持ってきてくれました。
副題に惹かれて読ませてもらいました。
とても共感できます。
いささか我田引水的に言えば、私が取り組んでいるコムケアの理念にもつながっていますし、私の企業経営観にも一致します。
著者は、「会社というのは単に働く場所ではなく、働くすべての人の生きがい、やりがいを育む場所だ」と考えています。そして、「自分がつくった会社が、社員たちの夢の実現に役立ってくれることは、何よりの喜びです」と明言します。
私の友人にも、さまざまなかたちで障がい者の働く場づくりに取り組んでいる人が少なくありません。
しかし多くの人は苦戦しています。
その最大の理由は、今の経済や社会のあり方に起因しているように思います。
著者の渡邉さんは、こう書いています。
成熟化した社会の特徴は多様化が進むことですが、その社会で人々が幸福を感じられるようにするためには、異質なものに対する偏見をなくし、ともに社会をつくるメンバーとして認め合うことが不可欠です。
それは結局、日本の昔のスタイルなのだろうと思います。長屋住まいの人々が、何か困ったことがあればおたがいに助け合って、日常的に醤油や味噌を融通しあう。子どもの面倒は長屋の大人たちみんなで見るような、そういうことではないでしょうか。
私の目指している生き方であり、コムケアの理念です。
さらにこういいます。
いまの日本は、一億総無関心化が進んでいます。無関心になった瞬間に、人とのコミュニケーションがなくなります。無関心になることは、あえて自分から人とのつながりを拒否することです。それは、人間が本来持っている隣人への愛を拒否することです。人間が社会で生きるためのベースは隣人愛だと私は思うのですが、それを拒否するのですから、やがては心が病んでしまいます。
無縁社会だとか、孤族とか、無責任な言葉を語っている人たちに読ませたいです。
こう書いてくると、これは企業経営の書ではなく、生き方論や社会論のような誤解を与えかねませんが、本書は経営書なのです。
こうした信条に基づいて企業経営に取り組んできた渡邉さんの企業は、この不況期にも元気で成長しているのです。
これからの企業経営の真髄が、そこに示唆されているように思います。
とても読みやすい本ですので、企業の人たちにもぜひ読んでほしいと思います。
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■巨大企業に勝つ5つの法則(古庄宏臣+玉田俊平太 日本経済新聞出版社 893円)
KAEの経営道フォーラム47期の古庄さんの本が出版されました。
古庄さんに関しては、何度かこのサイトの週間報告でも紹介しています。
大企業を跳び出して、自らの志を実現すべく、知財務株式会社を設立し、新たなるイノベーションに取り組んでいる人です。
本書のテーマは、より規模の小さな会社がより規模の大きな会社を超えて、事業を発展させていくための考え方です。
実例も紹介されているので、とても説得力があります。
5つの法則はつぎの通りです。
(1)誰もが「無理だ」と言うことを実行せよ
(2)身の丈を超える目標を掲げよ
(3)劣勢を強みに変えよ
(4)変人を重視せよ
(5)サムライをリーダーにせよ
そこに通底するのは、「弱みは強みになる」という発想です。
そうした思いきった逆転の発想ができるところに、あるいはせざるをえないところにこそ、「スモールメリット」があるというのです。
スモールメリットという言葉を著者は何回か使っていますが、普通使われているスモールメリットの発想に留まらず、そこにも逆転の発想があるように感じます。
たとえば、第3の法則のなかに、「未経験者有利の法則」が出てきます。
「経験者は経験から学ぶ、未経験者は歴史から学ぶ」。だからこそ、実は未経験者ほど多くの経験(他者の経験も含めてです)から学べるはずだというのです。
企業の経営資源は内部にあるだけではないということです。
顧客も経営資源にするというのも同じ発想です。
つまり規模の大きい企業の経営資源や知的資源を超えるためには、社会全体を視野において、あるいは時間軸を長く取って発想すればいいというわけです。
とても納得できます。
本書は経営論であると同時に、個人にとっての仕事への取り組み方として読んでも示唆に富んでいます。
たとえば、こんなくだりがあります。
多くの人は学校を卒業すると社会人になるが、その多くは「社会人になる」のではなく、特定の企業の従業員になるケースが多い。(中略)学校を卒業した時点における頭の中は真っ白なキャンパスであり、色々なものを描けたはずである。しかし、企業に入社すると描くものには制約がかかる。
全く同感です。
そういう「企業人」が集まっている組織は、これからの変化の時代には残れないかもしれません。
古庄さんの人柄を示す話も144頁に出てきます。
その内容はぜひ本書を読んでください。
とても読みやすく、示唆に富んでいる実践的な本ですので、面白い仕事をしたいと思っている人にお薦めします。
■140字でつぶやく哲学(一条真也 中経出版 505円)
世界一やさしい哲学の本が出版されました。
著者は一条真也さんです。
一条さんは「140字とはもちろんツイッターを意識していますが、じつは哲学を知るのに最適な字数だ」と言います。
本書は、その140字を基本にした、つぶやき的な対話形式をとっていますので、とてもはいりやすく、すらすらと読んでいけます。
しかも文庫本という限られた誌面にもかかわらず、古今東西の哲学者が37人、さらに世界の宗教、日本の近代思想化などが19人も登場します。
そうした人たちが、いろいろとつぶやいてくれるのです。
一条さんはもう一つの工夫を埋め込んでいます。
従来の哲学入門書とは違い、現代の実存主義からはじめるのです。
最初に登場するのはキルケゴールです。
つまり現代の哲学者から始まって古代の哲学者へと遡って行くスタイルなのです。
「現代の身近な問題から哲学に触れて、そのうち自然に根源的なテーマについて学ぶことができる」ようにしたのです。
いかにも一条さんらしいスタイルです。
つぶやいているのは、哲(テツ)さんと学(マナブ)くんです。
2人のリズミカルなつぶやきにつきあっていると、自然に哲学がまなべてしまうというわけです。
もちろん人によっては物足りないかもしれません。
しかし、哲学の大きな流れを鳥瞰することには大きな意味があります。
大きな流れの中で、さまざまな考えを相対的に捉えていくことは、世界を広げてくれるはずです。
哲(テツ)さんは、「哲学を知ることで、より人生は生きやすくなります」と本書の冒頭でつぶやいていますが、私も同感です。
気楽な本ですので、気楽にお読みください。
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■「パンとペンー堺利彦と「売文社」の闘い」(黒岩比佐子 講談社 2400円)
今年は堺利彦生誕140年に当たります。
堺利彦といっても、最近は知らない人が多いかもしれません。
明治大正期に日本の良心とも言うべき存在だった人たちは、いま、急速に忘れられつつあります。
かくいう私も、堺利彦に関しては、幸徳秋水とともに「平民新聞」を創刊した社会運動家とか、日本共産党の初代委員長だとかいうことくらいしか知りませんでした。
黒岩比佐子さんが、その堺利彦を、見事に蘇らせてくれた、それが本書です。
堺利彦だけではありません。
日本がどちらを向くか、まだ必ずしも定まっていなかった明治後半から大正を生きた、さまざまな人たちが、新しい表情を持って、本書には登場します。
たとえば、夏目漱石です。
堺利彦と漱石は直接会う機会はなかったようですが、堺の飼い猫の名前は「ナツメ」で、それが思わぬ事件を起こすのですが、それに対する漱石の対応は実に面白く、私の漱石観は一変しました。
黒岩さんの作品には、そうしたエピソードがいつも豊富で、それが大きな魅力の一つなのですが、本書はそうした話が潤沢にあるのです。
そのおかげで、当時の時代がイキイキと感じられます。
堺利彦と尾行刑事の話も時代を感じさせます。
私には、いまよりもずっといい時代のように感じます。 人間がいました。
黒岩さんから堺利彦を書くと聞いたときには、なぜ堺利彦なのかと思いましたが、本書を読むとそう思ったのが不思議なほど、これはもう黒岩さんの世界そのものなのです。
黒岩さんは、本書の動機として、あとがきにこう書いています。
堺利彦が幸徳秋水と共に日露戦争に反対して設立した平民社のことは、これまでに多くの歴史書が取り上げている。一方、堺が社会主義運動の「冬の時代」を耐え抜くために設立した売文社は、ほとんど無視されているに等しい。だが、私は「売文社」という語の強烈なインパクトに惹きつけられた。
本書は堺利彦の評伝として、これまでなかった側面を描き出した魅力的な、そして意義ある作品ですが、それ以上に、私には日本の歴史の岐路を描き出した、優れた歴史書であり、今の日本を生きる私たちへのメッセージの書のように感じました。
黒岩さんが興味を持った「売文社」の話が本書の中心と言ってもいいかもしれません。
木下尚江。内村鑑三、新渡戸稲造など、登場人物も豪華で面白いですが、そこを通底しているのは「売文社の闘い」です。
闘いの相手は当然、時代の流れです。
尾崎士郎は、ある作品で、堺利彦は大石内蔵助で、「売文社」という看板を掲げて討ち入りの時を待っていた、と書いたそうです。
内容を紹介しだしたらきりがありませんが、本書はこれからさまざまなところで話題になり、紹介記事がたくさん出てくるでしょう。
ともかく、見事な作品です。
ともかくみなさんにもぜひ本書を読んでもらいたいです。
厚いですが、実に面白く読みやすく、あっという間に読めてしまうはずです。
黒岩さんは、辛い闘病をしながら本書を書き上げました。
どうしても書いておかなければという強い思いが、本書から伝わってくるもう一つのメッセージです。
身勝手な読者としては、黒岩さんにはもっともっと書いてほしいと思っています。
最後に、堺が獄中から妻に当てた書簡に書かれていた言葉を紹介しておきたいです。
「人を信ずれば友を得、人を疑えば敵をつくる」
黒岩さんは、これは堺利彦の生涯の信条だったのではないかと書いています。
なお、お知らせのコーナーでも案内していますが、本書の出版記念も兼ねて、黒岩さんの講演会が東京と福岡で行われます。
お時間があればぜひご参加ください。
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■「戦略人事論」(須田敏子 日本経済新聞出版社 2010)
青山学院大学大学院教授の須田さんとはもう20年くらいのお付き合いです。
最初に出会った時は、日本能率協会の「人材教育」の編集長でした。
ところがある日、やってきて、イギリスに留学することにしたと言うのです。
男性と違って、女性の思い切りの良さは、しばしば体験していますが、その時には「なぜイギリスなのか」、私にはピンと来ていませんでした。
予想以上に長くイギリスで研究活動を続けた後、大学の先生になりました。
帰国後、続けて2冊の本(「日本型賃金制度の行方」「HRMマスターコース 人事スペシャリスト養成講座」)を出版しましたが、その後、本を書いていないなと少し気になっていました。
というのは、前著で問題提起されていた「体系的な発想」の続きがぜひ読みたかったからです。
昨今の人事管理論は、これまでの企業の枠組みの中で語られているだけで、大きな社会変化の流れのなかでは、ほとんど意味のない話ばかりだと私は思っているからです。
そんな時に、本書が送られて来ました。
私が期待していた内容の本でした。
実に多くの示唆に富んだ本です。
なによりも共感したのは、狭い経営学の世界ではなく、経済学や社会学などの成果も取り込みながら、さまざまな制度とのつながりのなかで、人事マネジメントの流れを整理し、展望している点です。
須田さんはメールで、こう書いてきました。
日本の人事の議論はあまりに狭い範囲で議論がなされているというのが、イギリスで学んできた私の意見です。
人事を考える実務家の方には、組織内外の幅広い環境、さらに意識しない領域も含めて人事をつくりだすメカニズムを考えてほしいのです。
私自身は、幅広い視野から人事をとらえるほうがずっと楽しいことですし、今後の方向性も見えてくる気がします。
私がこれまでずっと望んでいたことです。
そうした視点で考えると、いわゆる日本的経営論の意味もみえてきます。
そして、これからの展望と課題、さらには企業における人材マネジメントを通して、社会にどう関わっていけるかも見えてくるはずです。
企業の社会責任論(CSR)が話題ですが、私にとっては、人材マネジメントをどう取り組むかこそが、企業の最大のCSRなのです。
その視点が、いまの経営学には完全に抜けています。
本書の問題意識はこうです。
人材マネジメントは経営戦略の一部であると同時に、社員の生活に直結するため、企業の論理だけでは決定できない面が大きく、経営戦略面からみれば変化が必要なのになかなか実行できない。これが現在、日本企業が直面している問題だろう。
この間題を解決するための第一歩は、企業の人材マネジメントの形成・実践に影響を与える要因・圧力を包括的に知ることだと筆者は考える。
そして、戦略人事の包括的フレームワークを提案し、それに基づいて、日本における人材マネジメントの流れと現状、さらには展望を整理してくれています。
その基本軸は「同質性」と「異質性」です。
「戦略人事の包括フレームワークは、同質性・異質性(あるいは収欽化・差異化)という二つの相反する圧力が企業の人材マネジメントには作用しており、両者に配慮し、バランスをとりながら自社の人材マネジメントを形成・実践していくことが重要」だというのが、須田さんの主張です。
そして、具体的な個別人事施策を材料にして、最近の人材マネジメントの動きを動態的に評価しています。
そうしたところを丁寧に読んでいくと、自らの組織に即した「競争優位をもたらす人材マネジメントの方向性」が見えてくるはずです。
須田さんは、「人材マネジメントの変化を予測するのは難しい」と認めながら、「人材流動化が進んでいる社会ほど、各企業が独自の人材マネジメント施策をとりやすくなる」と指摘しています。
まさに、「戦略人事」が必要になってきています。
グローバリゼーションの動きには敏感でなければいけませんが、ただ適合させていくのではなく、体系的な発想のなかで、自らの組織の置かれている状況をしっかり認識しながら、独自の戦略人事マネジメントのシステムを、社外も巻き込みながら抗争していくことが、企業の競争優位につながっていくのだろうと思います。
内容がとても豊富なので、その紹介は簡単にはできませんが、これからの企業のあり方を考える上でも大きな示唆が得られます。
ただ、またこの続きを読みたくなりました。
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■「ご先祖さまとのつきあい方」(一条真也 双葉新書 840円)
冠婚葬祭の世界で、新しい風を起こしている企業(サンレー)の経営者でもある一条真也さんが、とてもわかりやすい、しかし含蓄のある本を出版されました。
タイトルがややノウハウ本的なイメージを与えるかもしれませんが、本書は私たちの生き方の本質を語っている書です。
気楽に読めますので、ぜひ皆さんも読んでみてください。
ここで書かれていることのすべてに、私は共感し、それなりに自分でも実践しています。
「無縁社会」が叫ばれ、血縁が崩壊しつつある今こそ、日本社会のモラルをつくってきた「先祖を敬う」という意識が復権しなければいけません」と、一条さんは本書を送ってくれた手紙に書いていますが、それが本書を書かせた動機かもしれません。
ちなみに、本書は前に紹介した「葬式は必要!」の続編ですが、本書を読むと、「無縁社会」を変えていくために、これからもこのシリーズは続くようです。
本書はコンパクトですが、これまで一条さんがさまざまな視点から書いてきたことが、立体的に編集されてまとめられていますので、これまで一条さんの本を読んできた人には、一条ワールド(ハートフル・ソサエティ)を鳥瞰するガイドになるかもしれません。
さて本書の内容です。
「わたしたちは、先祖、そして子孫という連続性の中で生きている存在」というのが、一条さんの出発点です。
そして、「遠い過去の先祖、遠い未来の子孫、その大きな河の流れの「あいだ」を漂っている」という考えが、日本人の生き方を支えてきたというのです。
それがいま大きく壊れようとしているところに、一条さんは危機感を持っています。
この認識は私も共有しています。
余計な一言をいえば、この認識がない限り、持続可能性などという言葉は使って欲しくありません。
内容を具体的に紹介しだすときりがありませんが、たとえば「死なないための方法」などという章もあります。
不老不死の薬を求めたという、秦の始皇帝に読ませたいところです。
翁と童、つまり老人と子どもをつなぐ、沖縄の「ファーカンダ」という言葉(概念)も紹介されていますが、この当たりも今の日本の社会の仕組みを変えていくヒントがふんだんに含まれています。
宗教学者のヤン・スィンゲドーの「和」と「分」の文化の話も出てきます。
このように、本書の前半は、私たちの生き方、社会のあり方に関する深い議論が、とてもやさしい日常語で語られています。
そして後半は、それを踏まえて。先祖とくらす生活のすすめが、具体的に提案されているのです。
余計な紹介を加えれば、日本の沖縄復帰の提案もあります。
私たちは沖縄を考える時に、観光や基地などでしか考えないですが、一条さんはこれからの日本、さらには世界、人類の未来を創りだすヒントが沖縄にあると考えているようです。
まったく同感です。
最後の部分を引用しておきます。
ある意味では、本当の祖先とは過去にではなく、未来にいるのかもしれません。
先祖は子孫となり、子孫は先祖となる。これぞ、魂のエコロジーです。
大いなる生命の輪は、ぐるぐると永遠に廻ってゆくのです。
本書を読まれるあなたが、 先祖とともにくらし、本当の意味で幸せになられることを心より願っています。
ぜひお読みください。
私たちの未来のために。
なお、一条さんが書かれているコラムもぜひ読んでください。
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■「賃金と社会保障」特集号:『共済の灯を消してはならない!パート3』(2100円)
今回は雑誌の特集号の紹介です。
発行されたのは2010年7月なのですが、できれば多くの人たちにも読んでほしいという思いで、紹介させてもらうことにしました。
このサイトの週間記録にも書きましたが、今年の3月20日に共済研究会の公開シンポジウムがありました。
共済研究会の公開シンポジウムとしては3回目ですが、毎回、雑誌「賃金と社会保障」がその記録を特集として掲載してくれています。
今回のシンポジウムの特集を組んでくれたのが、「賃金と社会保障No.1518(7月下旬号)」です。
シンポジウムのテーマは、「現段階の法規制問題と問われる共済のあり方―保険業法・協同組合法・保険法と共済の課題」でしたが、昨年は賀川豊彦が神戸のスラムに身を投じてから100年目だったことから、基調講演では共済研究会の代表でもある本間照光さんが「賀川豊彦がいま問いかけるもの―共済はどうあったらよいのか」をお話されました。
本間さんの思いが強く感じられる示唆に富む講演でした。
これを読んでいただくだけでも、ぜひこの特集号の存在を多くの人に知ってほしいと思います。
ちなみに、賀川豊彦は、シュヴァイツァーやガンジーと並ぶ20世紀の三聖人の一人といわれ、ノーベル賞候補にもなった人ですが、最近ではその名前さえ知らない人が多くなってしまいました。
平和運動、貧困問題、生活共同組合運動など、さまざまな社会運動の先駆者です。
基調講演後のパネルディスカッションは賀川豊彦から離れてしまった議論になっているのが残念ですが、それでも、この分野への思いの強い相馬健次さんが「保険と共済の本質的な違い」をわかりやすく話していますし、青森の医師の森明彦さん(全国保険医団体連合)が自主共済活動に関して心に響く話をされています。
もちろん法制度の話もきちんと紹介されています。
共済というとちょっと距離を感ずるかもしれませんが、要するに「支え合いの文化」に根ざした仕組みであり、生活者の世界にはずっとあり続けた仕組みです。。
その仕組みがいま危機に瀕しているわけですが、それは私たちの社会の崩れにつながっていくのではないかと私は危惧しています。
そのことはブログなどで何回か書いたことがありますので、よかったら読んでください。
なお、このシンポジウムの1回目、2回目もそれぞれ特集号に全文収載されています。
第1回シンポジウム特集・賃金と社会保障1461号
第2回シンポジウム特集・賃金と社会保障1484号
雑誌の入手方法は、出版元の旬報社に注文してくださっても結構ですが。共済研究会の本間さんが多くの人に読んでほしいということで何部か購入していますので、もし読みたいという方がいたらご連絡ください。
本間さんから送ってもらうようにします。
価格などは相談させてください。
ぜひ周りの人にもお薦めください。
■「クラウドで会社をよくした13社」(中村輝雄 リックテレコム 1050円)
週間記録で書きましたが、テレビでご一緒したことのある中村さんが豊富な体験をもとに最近話題のクラウド・コンピューティングについて、その効用を中心にまとめた本です。
私にはいささか難解でしたが、実際に導入した中堅・中小企業の導入事例が中心ですので、関心のある人にはわかりやすい実践の書になっているものと思われます。
本書の解説を紹介しておきます。
ITに求められているのはビジネスにおける利活用であって、その所有が目的ではありません。この当たり前のことが、これまでは満足にできていませんでした。そこに登場したのが、“クラウド”です。ITに頭を悩ませる経営者に朗報となった“クラウド”ですが、これは大企業に限定された話ではありません。むしろ、中堅・中小企業にこそ効果を発揮します。本書では、クラウドを先行活用した中堅・中小企業13社を取り上げ、その狙いと効果を明らかにします。
ITの世界の展開は私にはなかなかついていけないほどの速さですが、社会を大きく変えつつあることは間違いありません。
「クラウド」も言葉だけはかなり早い時期から知っていましたが、概念的にはともかく、ビジョンとしてなかなかまだ理解できていません。
著者の中村さんは、ご自分の体験から、クラウドを活用すると現場に活気が出てくるといっています。
ビジョンよりも具体的な実践例を学んだほうがはやいかもしれません。
そう考えている方にはとてもいいテキストになるかもしれません。
惜しむらくは、私がまだ消化不能で、適切な推薦ができないのが残念です。
関心のある方はお読みになって、また私にもフィードバックしてください。
■「もしもし、生きてていいですか?」(篠原鋭一 ワニブックス 1300円)
自殺のない社会づくりネットワークにも参加してくださっている自殺防止ネットワーク風の理事長の篠原さんが本を出版されました。
篠原さんは、千葉県成田市にある長寿院のご住職ですが、長年、地道な活動に取り組まれてきました
昨年秋に開催した自殺のない社会づくりネットワークの立ち上げのフォーラムでは、とても示唆に富むお話をしてくださいました。
その篠原さんが、相談電話で出会った人たちの話を紹介しながら、これからの社会に向けての処方箋をまとめたのが本書です。
篠原さんのお人柄を反映してか、文章がやさしく明るいので、とても読みやすく、しかも元気をもらえます。
タイトルも、とても好感が持てます。
それになによりも、篠原さんの覚悟が感じられます。
ここまで自らを開いてコミットできる人は、そうはいないでしょう。
私は最近、「自殺」を話題にすることへの違和感を持ち出しています。
自殺防止に関する本は、私もかなり読みましたが、読むのにかなりの勇気が必要です。
私も少し書かせてもらった「自殺をくい止めろ!東尋坊の茂さん宣言」も、友人から読み出したが気分が重くなりすぎて読み進めなかったといわれました。
その点、本書は読むにつれて元気が出てきます。
だれが読んでも、きっと何かヒントを得られるでしょう。
多くの人に読んでほしい本です。
本書の紹介文に「生きることに迷い、疲れた人の心へ届けたい、救いのメッセージ」とか書かれていますが、まさにその通りの本です。
私たちの生き方を考えるヒントがたくさんあります。
ちょっと長くなりますが、「はじめに」のなかの文章を少し要約して紹介させてもらいます。
ここに、篠原さんの取り組みの原点を感ずるからです。
私の生き方にもつながっています。
人間は、ひとりで生きているわけではありません。
「自分」と「自分以外の人」とともに生きている。
そして、生きていればさまざまな苦悩と直面する時がいずれやってくるのですが、その苦悩を乗り越えたり回避したりすることは、自分ひとりのカでは難しい。
そう、自分と関わりのある人のカを借りなければ、乗り越えたり回避したりすることはできないんだ。
つまり、自分と自分以外の人がどう関わり合うか、お互いがお互いの人生をまっとうするためにどう関わるのか、それこそが人間が生まれてきた意味であり、価値になるのです。
私は禅僧として、20年近く「死」を見つめている人たちとの対話を重ねてきました。その20年を通して実感するのは、関わりというものがとても希薄な社会になってしまった、ということ。
ではどうすればいいのか。
私はよく「もっとお節介をやけばいいんじゃないですか」と言います。
現代社会では「他人のことに口を出すな」といった風潮が強く、お節介やきというのは嫌われる存在に思われがちですが、実は人と人との関わりというのは、お節介なしに成り立たないのです。
そして、篠原さんは、しばらく前までの日本はそういう社会だったというのです。
過去には苦しみも哀しみも喜びも幸福も、お互いに包み込んで共有しながら生きてきた社会というものがあったじゃないですか。
日本はまさにそんな国だった。
同感です。そしてつづけます。
本来人間が持っているはずのこういう社会性が失われてしまうと、人は孤独を通り越して孤立してしまうのです。
そしていつしか 「死」を身近に引き寄せてしまう。
問題は「自殺」ではありません。
孤立が広がってしまった社会そのものなのです。
それを変えていくのは難しい話ではありません。
まずは自らの生き方を変えていくことです。
誰かを変えるのではなく、まず自らが変わる。
そこからすべては始まります
お薦めの1冊です。
コモンズ書店から購入
■「社史で読む長崎原爆」(同編集委員会 630円)
週間記録に書きましたが、長崎市民たちが昨年編集委員会をつくり、長崎で原爆被害を受けた会社のうち社史を刊行している17社の社史から、原爆の記事を中心に太平洋戦争のはじめから、敗戦直後までの記事を編集し、コメントをつけた本です。
社史にはその会社の姿勢が現れてきますが、同時にその時代の空気も感じられます。
社史に掲載された社員たちの体験記も、とても生き生きしています。
当時の人たちが、どのような価値観を持っていたかも伝わってきます。
また、あれほどの惨事でありながら、被爆日も含めて、それ以後も社会の秩序がしっかりと維持されていることにも驚かされます。
わずか100ページ程度の本ですが、たくさんの示唆と元気をもらえます。
報告書的なスタイルですので、最初は入りにくいかもしれませんが、体験者の手記もあり、生々しい情景に、ついつい引きずり込まれてしまいます。
忘れられがちな長崎原爆の体験を。ぜひ多くの人たちにもう一度、思い起こしてほしいと思います。
週間記録にも書きましたが、
私が一番か考えさせられたのは、あれほどの惨事でありながら、被爆日も含めて、それ以後も社会の秩序がしっかりと維持されていることです。
言い悪いはともかくとして、しっかりした社会があったのです。
しかも、そこでは各人がしっかりと「自立」し、「主体的」に動いているのです。
今の日本では果たしてどうでしょうか。
最近、社会が壊れだしていると思っている私としては、いささか複雑な気持ちです。
編集委員会代表の森草一郎さんは、長崎路上観察学会・アルキメデスの会長でもあります。
そのブログやサイトもありますので、よかったら訪ねてみてください。
「社史で読む長崎原爆」編集委員会に連絡すると購入できます。
送料を含めて1000円程度だと思います。
詳しくは次のサイトをご覧ください。
http://arukime.blog118.fc2.com/blog-entry-139.html
編集員会のアドレスは
smoori@aqr.bbiq.jp
■古書の森 逍遥(黒岩比佐子 工作舎 3200円)
古書を古読せず、雑書を雑読せず。
これは、明治・大正の実業家で社会事業・公共事業に取り組んだ金原明善の言葉だそうです。
黒岩比佐子さんの古書コレクションの展示会で知りました。
黒岩さんの世界が、急に見えてきたような気がしました。
本書は、黒岩さんのブログ「古書の森日記」をベースに、編集しなおした本です。
手にとってみると、本好きの黒岩さんならではの本だと実感できます。
取り上げられた本は220冊。時代順に並べられていますが、小見出しを読んでいるだけでも時代の流れが見えてくるような気がします。
学者とは違ったところに視点を当てたいと黒岩さんは常々語っていますが、まさにその黒岩さんの視点が感じられます。
同時に、黒岩さんの世界がどう広がってきたかも読み取れます。
いいかえれば、本を読むことが世界をどう広げていくかという、「楽しい読書の勧め」のようなメッセージも伝わってきます。
ともかく血の通った、思いのこもった本です。
章ごとに、「古書展めぐり」というコラム(これもブログからのライブな記事です)がついていますが、これを通読するだけでも実に面白いです。
ちょっとマニアックな古書ファンの世界を身近に感じられます。
そこを先ず読んでから、本文はゆっくりした時間の流れに任せて読むと、多分とても豊かな時間を過ごせるでしょう。
選ばれた本のほとんどは、私には聞いたこともなかったものです。
にもかかわらず、いずれも面白く読めるのは、黒岩さんの世界が通底しているからです。
取り上げている本は実にさまざまで、雑誌もあれば、辞書もあります。
そうしたものを通して黒岩さんが見ている当時の社会への目がまた実に面白いのです。
黒岩さんが、どれほど本を愛し、明治大正を愛しているかが伝わってきます。
巻頭には取り上げられた本のカラフルなグラフィティがあります。
私にとっても、とても懐かしさを感じます。
昨今の雑誌などのカラフルさとはまったくといっていいほど異質です。
本書の帯にこう書いてあります。
サントリー学芸賞受賞のノンフィクション作家が、古書展通いで出会った魅力的な雑書たち。
その雑書を「雑読せず」に、心底「愛読」した黒岩さんの幸せを、少し共有できる、素敵な本です。
読まなくても、そばに置いておくだけでも幸せが伝わってくるような本です。
本が好きな人には絶対にお薦めです。
本の文化は、やはり守らなくてはいけません。
たぶん古書展にいったら、私も人生を変えてしまうような気がします。
ですから、私は行きませんが。
コモンズ書店からも購入できます。
■「エクセレントNPO」とは何か(非営利組織評価基準検討会 言論NPO)
とても良い本です。
本書は、非営利組織評価基準検討会の2年間にわたるNPO評価基準の検討の活動から生まれたものであり、参加したみなさんそれぞれの思いが感じられます。
中心は、現場としっかりとつながった活動をしている5つのNPOの代表や事務局長による座談会です。
そこで、「なぜいま市民社会なのか」「新しい公共」「エクセレントNPO」が熱く語られています。
さまざまな視座と視点で語られていますので、たくさんの示唆がもらえます。
なによりもいいのは、全体がしっかりした問題意識で貫かれていることです。
冒頭の「はじめに」で言論NPO代表の工藤さんが全体の展望を、また続く最初の章で検討会主査の田中弥生さんが「エクセレントNPO」についての考えを明確に書いています。
いずれにも時代の現場を見据えてのしっかりした問題意識が感じられます。
これからの社会のあり方に関心のある人にはお薦めの本です。
と言ってから、かなり批判的なことを書きます。
繰り返しますが、とてもいい本だからこそ、多くの人に問題意識を持って読んでほしいからです。
田中さんからは、この活動を始める前にその思いをお聞きしています。
その思いには共感するところがとてもありました。
ただ私とはかなり違う世界の活動なのだと何となく感じていました。
どこが違うか、本書のタイトルを見て、それに気づきました。
たかがタイトルではありますが、もしかしたらそこに大きな意味があるのかもしれません。
本書の書名は「「エクセレントNPO」とは何か」、副題が「強い市民社会への「良循環」をつくりだす」です。
特に最初に抵抗を感じたのは「強い市民社会」という言葉です。
私なら「やさしい」とか「生きやすい」という言葉を選びます。
私が会社を辞める契機になったのは、CI活動です。
その目標が「やさしい働きやすい会社」でした。
ところが社長が代わって、「強い会社」を求められました。
これが、私が会社を辞めたたくさんの理由のなかの一つです。
「強い」という言葉は、私の世界の言葉ではありません。
CIプロジェクトでは私の編集で活動ニュースを毎月発行していましたが、最終号のタイトルはたしか「やさしい東レから強い東レへ」でした。
これは私の東レへの決別のメッセージでもあったのです。
「エクセレント」もまた私の世界の言葉ではありません。
その言葉に否定的になったのは会社を辞めてさまざまな現場に関わりだしてからです。
第三者が目線高く評価する姿勢を感じてしまったのです。
まあこういう言い方をすると田中さんに怒られそうです。
田中さんは本書で「エクセレントNPO」について丁寧に定義しています。
それに異論があるわけではありません。
工藤さんの「はじめに」を読むと、NPOの評価基準として「社会変革」「市民性」「経営の安定性」を重視しているようです。
それにも異論はありません。
ただ問題は、それぞれの意味合いです。
言葉には異論は挟めませんが、大切なのは言葉の含意する方向性です。
強い市民社会についても工藤さんは「有権者が自ら当事者意識を持ってこの国の未来のために政治を選び、政策を判断する。そういう政治と有権者との間に緊張感のある社会」と定義しています。
ここでも「政治と有権者との間に緊張感」という捉え方に違和感を拭えません。
政治や社会の捉え方が違うのかもしれません。
それが違和感の原因だったような気がします。
しつこく繰り返せば本書はいい本です。
ですからもしできれば、私の違和感も少しだけ頭においていただいて読んでもらえるとうれしいです。
600円ですので、珈琲1杯分で購入できます。
読み応えはかなりありますが、座談会が中心なので読みやすいです。
企業の人にもぜひ読んでほしい本です。
コモンズ書店
■「世界でいちばん会社が嫌いな日本人」(斎藤智文 日本経済新聞出版部 1600円)
衝撃的なタイトルです。
私が企業に勤め出した頃(昭和39年)には「世界でいちばん会社が好きな日本人」と言われていたのに、
今ではこの書名が奇妙に納得できる状況になっているのです。
斎藤さんは長年日本能率協会で活躍してきた人事問題の専門家ですので、
その変遷をしっかりと現場を通して体験してきています。
それに斎藤さんは、まえにこのコーナーでも紹介した「働きがいのある会社」の著者でもあり、
Grate Place to Work プロジェクトを日本に紹介したのも斎藤さんです。
斎藤さんには、「従業員の視点」で、企業の実態がよく見えているのです。
斎藤さんとの最初の出会いは、私がまだ東レにいた頃ですが、
数年前にある委員会で偶然に隣り合わせになり、またお付き合いが始まりました。
お会いしていなかった20年の間、私は企業からどんどん外れてしまいましたが、
斎藤さんは国内外のたくさんの企業と接点を持ちながら、専門家としての知見を磨いてきています。
その豊富な知見とGrate Place to Work プロジェクトでのしっかりした視座で書かれたのが本書なのですが、
そのタイトルが「世界でいちばん会社が嫌いな日本人」だったことに私は大きなショックを感じました。
私も、企業の外縁から何となく感じていたことだったからです。
しかし本書は、そうした事実を批判的に書き上げたものではありません。
それとは逆に、だからこそみんなが好きになる会社にしようと斎藤さんは思っています。
そもそも斎藤さんが長年勤めていた組織を離れて、組織と働きがい研究所を設立したのは、
「働きがいのある会社」を増やしていきたい思いからなのです。
どうしたら「働きがいのある会社」になるかの処方箋を斎藤さんはもっています。
だから最近の企業の状況は、斎藤さんには残念でならないのでしょう。
その思いが、本書のタイトルに感じられます。
豊富な取材調査結果を踏まえて、本書の第2部では、世界の「働きがいのある会社」に共通する文化が挙げられています。
これは「働く人が幸せを感じる職場をつくる12の特効薬」と言ってもいいでしょう。
とても実践的で人間が感じられる特効薬です。
私が一番印象的だったのは、斎藤さんがSASを訪問した時の話です。
ちょっと長くなりますが、引用させてもらいます。
このエピソードを本書のはじめに紹介しているところに、斎藤さんの企業観を見る思いがするのです。
人事部の担当役員が、我々に珍しい質問をした。
それは、「皆さんがお酒を飲みにいく時、何を基準に店を選びますか?」というものだった。
突飛な質問に思ったが、一緒に訪問したメンバーの中に「会いたい人がいる店かなあ」と答えた人がいる。
人事部の担当役員は「その通りです。やはり、会いたい人がいる場所が一番でしょう。会社も同じです。たとえば営業の担当者が頻繁に代わってしまうと、顧客は嬉しくありません。親しい人がいないと会いにいこうはと思ってくれません。信頼できる営業の担当者がいてこそ、良好な関係が維持できるのです」と言った。
いうまでもないですが、同僚や上司に会いたい人がいれば幸せです。
反対な場合は、会社が嫌いになるかもしれません。
12の特効薬を参考までに書いておきますが、それぞれに具体的な実例をあげながら、実践的なアドバイスが書かれています。
みなさんの会社(職場)はいかがでしょうか。いくつ当てはまりますか。
1 価値観を共有できる人を採用する
2 ワークライフバランスを徹底している
3 ダイレクトな対話がある
4 FUNを追求している
5 ユニークさと元気がある
6 認め、感謝し、称える
7 家族のような温かさがある
8 明快な哲学が浸透している
9 つねに他者に学んでいる
10 強い愛着心がある
11 多様さを歓迎する
12 たゆまない向上心がある
楽しく働きたいと思っている方はぜひお読みください。
とても読みやすいです。
コモンズ書店
■「葬式は必要!」(一条真也 双葉新書 740円)
■「最期のセレモニー」(一条真也 PHP研究所 1200円)
4月のオープンサロンでも「葬式は必要か」と言うような議論がありましたが、最近、あまり「葬式」をしない人が増えてきたという発言がありました。
しかしよく聞いてみると、葬式のスタイルの問題であって、葬式そのものを否定しているのではないようです。
一条さんはこの本の中で、
「人間とはホモ・フューネラル、即ち、葬式をするヒトなのです」
と書いていますが、私もそう思います。
葬式をしないことなど私には考えられません。
ただ最近の葬儀には違和感がないわけではありません。
一条さんは冠婚葬祭の会社の社長ですが、社長になる前から「葬儀」のテーマに取り組んでいました。
1992年に「魂をデザインする 葬儀とは何か」という対談集を出しています。
その対談のなかで、とても示唆に富むメッセージをたくさん出しています。
私が葬儀に関心を持った契機になった1冊です。
ご関心のある方はぜひお読みください。
葬儀は不要などというバカな発言はしなくなるでしょう。
とても共感できる言葉を引用させてもらいます。
葬儀とは、人間の死に「かたち」を与えて、あの世への旅立ちをスムーズに行うこと。
そして、愛する者を失い、不安に揺れ動く遺族の心に「かたち」を与えて、
動揺を押さえ、悲しみを癒すこと。
妻を見送った者として、後半の2行にとても共感します。
しかし残念ながら私の場合は、葬儀に関する準備が少し不足していたため、いささかの悔いが残っています。
そうならないように、本書をしっかりよまれることをお薦めします。
一条さんが書いているように、死を「不幸」と考えることもやめたほうがいいでしょう。
誰も迎える「死」が不幸であるなら、生には本当の喜びは生まれません。
明るく読める本ですので、ぜひ若い人も含めて読んで欲しい本です。
一条さんには「最期のセレモニー」と言う本もあります。
昨年出版されましたが。私が読めずにいた本です。
「葬式は必要!」と言う本を読んだおかげで、今回、ようやく読むことができました。
「メモリアルスタッフが見た感動の実話集」という副題がついているように、「おくりびと」たちからの「愛」の報告です。
本書の帯には「人生の最期は、こんなにも愛であふれている」と書かれていますが、愛と死は切り離せないのかもしれません。
本書は読むのはそれなりに勇気がいりますが、元気ももらえます。
なお一条さんはこの分野の本を何冊も書いています。
「また会えるから」というフォトブックも現代書林から出していますし、DVDも出しています。
一条さんのホームページにいろいろと紹介されていますので、ご関心のある方はアクセスしてください。
コモンズ書店
■「自殺をくい止めろ!東尋坊の茂さん宣言」(茂幸雄 三省堂 1600円)
福井の東尋坊で自殺防止活動に取り組んでいる茂さんの3冊目の本です。
茂さんのことは、このサイトにもよく出てきますが、もうお付き合いが始まってから6年ほどでしょうか。
いくつかの偶然が重なって、その活動をささやかに応援するようになりました。
昨年は茂さんと一緒に「自殺のない社会づくりネットワーク・ささえあい」も立ち上げましたが、
本書ではそうした活動にも言及しています。
私も、コムケア活動の視点から一文を寄稿させてもらいましたし、
また昨年10月24日に開催した集まりの記録も掲載させてもらいました。
茂さんの活動は、最近いささか過剰すぎるほどにテレビで報道されていますが、
テレビなどの報道はワンパターンで、茂さんの本当の思いはなかなか伝わっていないのではないかという気がします。
本書には、そうした茂さんの本音の思いや活動の実態が書かれています。
また自殺を考えたことのある人や自死遺族の人のメッセージから、
私たちが見失っていることや取り組まなければいけないことにも気づかされます。
「自殺」と言うと、何か特別の問題と考えがちですが、そんなことはありません。
そこには私たちの生き方を問い正す強いメッセージが含まれているのです。
よかったらお読みください。
そしてもし共感していただけるところがあれば、
「自殺のない社会づくりネットワーク」や「コムケア・ネットワーク」にご参加ください。
いずれも、会費などは一切ない、メーリングリストだけのゆるやかな支え合いのつながりです。
ご希望の方は私にメールいただければと思います。
本書の目次は次の通りですが、第8章に茂さんの「怒り」を込めた思いが出ています。
茂さんの怒りを、一つだけ紹介しておきます。
(自殺が多発しているにもかかわらず)何の対策も講じず、
何の保護の手も差し伸べずに放置しておく行為は殺人罪にも匹敵する重要な犯罪行為となり、
法律違反になる虞があると思います。(152頁)
私は、そうした茂さんの怒りにほだされてしまっているのです。
第1章 東尋坊の水際の現場から
第2章 東尋坊で巡りあった人たち
[1]多重債務からの脱出
[2]パワー・ハラスメントからの脱出
[3]生活苦からの脱出
[4]家庭崩壊からの脱出
第3章 自殺ってなに?
第4章 どうしたら良いの?
第5章 自殺を考えた体験者との「語る会」の開催報告
第6章 自殺多発場所での活動者サミット報告記
第7章 シェルター・ネットワークの構築
第8章 自殺防止活動が、いまだに理解されないのは何故?
コモンズ書店
■韓国の経済発展と在日韓国企業人の役割(永野慎一郎編 岩波書店 3400円)
共済研究会の佐々木さんが、日韓の橋渡しに関わる活動をされていることはそれとなくお聞きしていました。
今年のはじめにも大東文化大学でのシンポジウムのご案内もいただいていましたが、気になりながら参加できませんでした。
その佐々木さんからいただいたのが本書です。
佐々木さんも執筆に参加されていますが、実践的研究者の立場で、本書の原稿段階で通読されていろいろとご意見を出されたということが、編者のあとがきに書かれていました。
佐々木さんのあたたかな、しかし厳しい企業を見る目が全編に行き渡っているという関心から私も読ませてもらいました。
本書の表紙扉の解説文も、私の読む気を起こさせた理由です。
異郷で差別・偏見と闘いながら、人一倍努力し、チャンスをつかんで成功した一群の在日韓国企業人たちがいる。彼らは、やがて、当時貧困の中にあった祖国・韓国の経済発展に、様々な形で寄与していく。アイディア、技術、資金の提供、金融再生など。それは今日の韓国経済の礎ともなったが、実態はほとんど知られていない。本書は、この知られざる日韓戦後関係史を、日本・韓国・在日の研究者が共同研究したものである。
どうですか、ちょっと興味をそそられるでしょう。
終章では、在日コリアン社会の課題と展望まで語られています。
私が一番面白かったのは、神韓銀行の話です。
神韓銀行は、1982年に在日企業家たちによって設立された、韓国初の純粋民間銀行です。
その設立には、在日韓国企業人たちの深い思いが込められていました。
そしてその銀行が、24年後の2006年に、銀行韓国の金融を主導してきた歴史ある名門の朝興銀行を吸収統合したのです。
読み出す前には、かなりハードルが高く、佐々木さんが関わっていなければ読まないだろうなと思っていたのですが、読み出したらとても面白く、感動的なのです。
専門書ではありますが、経済を通した生々しい日韓関係史であり、また国家とは何か、経済とは何かを考えさせられる刺激的な本です。
多くの在日韓国企業人の紹介もあります。
そうしたそれぞれの紹介記事からも、その苦労と情熱と志を知ることができます。
軽い気持ちで読める本ではありませんが、読書をしなくなった日本の企業人たちにも読んでほしい本です。
コモンズ書店
■環境コミュニケーション(清水正道 同友館 2400円)
先週の週間報告で紹介した清水正道さんの最新作です。
清水さんの思いが込められた意欲作ですが、
同時にこれは清水さんのこれからのコミュニケーション論研究の出発点になるのではないかと、私は勝手に期待しています。
副題は「2050年に向けた企業のサステナコム戦略」。
新しい視点があります。
清水さんは、環境経営から始まった環境コミュニケーション活動が、従来の企業コミュニケーション論を大きく広げていくだろうと展望しています。
本書の解説の文章がそのことを上手く説明しています。
持続可能な社会形成に向けた企業の取組が「待ったなし」の状況を迎える中で、
情報開示を含む統合的コミュニケーション活動へと発展しつつある環境コミュニケーション活動を時間軸と空間軸とでとらえ直し、
その活動の枠組みを検討し、メディア活用やマネジメント手法を提示する。
さらに今後に向けて、企業を主体とするサステナビリティ・コミュニケーション(サステナコム)の戦略的意義を説く。
ブログにも書いたように、私が共感を持ったのは、本書が単なる広報論ではなく企業論を展開していることです。
あるいは企業と社会との関係論をテーマにしていることです。
まだその入り口の議論にとどまっているという気もしますが、新しい議論の地平に向けての問題提起はさまざまなところに感じられます。
惜しむらくは、終章の「環境サステナコムとしてのコミュニケーション戦略」をもう少し掘り下げてほしかったことです。
「螺旋収束モデルからシステム間コミュニケーションへ」、そして「システム間コミュニケーションの相互作用」と、ちょっと期待させる節があるのですが、中途半端には書けないと思ったのか、あるいは書き疲れたのか、清水さんは軽く書き上げてしまっています。
しかし欲張ってはいけません。
ここは、清水さんの次作を待ちましょう。
目次は次の通りですが、第5章は今回はちょっと詳しい予告編と受け止めました。
きっと清水さんもそう考えているでしょう。
本書の議論がこれからどう「進化」していくか、とても楽しみです。
その期待も含めて、企業の情報参謀や経営参謀をはじめ、企業のあり方に関心を持っている人たちにお勧めします。
一度、清水さんを囲んでの気楽な環境コミュニケーション談義をする場を湯島で企画したいと思いますので、関心のある方はご連絡ください。
序章 変容する社会経済と環境コミュニケーション
第1章 環境コミュニケーションの構図
第2章 企業の社会的コミュニケーションの現状と課題
第3章 環境報告の現状と課題
第4章 環境コミュニケーションの枠組み
第5章 環境サステナコムとしてのコミュニケーション戦略
コモンズ書店で購入
■古代ローマのヒューマニズム(小林雅夫 原書房 2010)
早稲田大学の小林教授が、これまで書いてきたヒューマニズムの論文をまとめあげました。
本の帯に「ライフワークを集大成した名著」とありますが、まさに期待にたがわぬ内容の本です。
これまでも小林さんから贈っていただいた書籍や論文で、その一部は読ませてもらっていますが、
集大成とあるだけにさまざまな話題が取り上げられています。
小林さんと出会ったのは、私が事務局長をしていたパウサニアス・ジャパンの活動のときです。
小林さんの教え子を会のパトロネージでギリシアに行ってもらったのが縁だったと思います。
その会でやっていたサロンにも来ていただきお話をお聞きしましたが、
私と同い年だったこともあり、またそのお人柄が実に人間的で魅力的だったこともあり、お付き合いが始まりました。
しかし数年前にご病気をされ、その後遺症が残ってしまったのですが、その後も小林さんらしいリズムで活動を展開されています。
本書の紹介文には、次のようにあります。
「人間らしい人間」の追求――多くの碑文資料の分析と、ローマの教師や医師の実態を労働観・死生観・人生観の検討から、古代ローマ世界に成立したヒューマニズムの起源を明らかにする。
人間らしい人間といえば、まさに小林さんです。
その小林さんから以前、ローマのヒューマニズムのお話を聴き、もう少し詳しく知りたいといっていたら、送ってきてくださったのが「古代ローマの人々」でした。
小林さんが広義のテキストとしてつくったものですが、興味ある内容でした。
生々しいヒューマニズム論と合わせてリベラルアーツ論も語られていますが、当然ながらそれらは深くつながっています。
小林さんの本の面白さは、ご自分の人間性に立脚した人間の生活が基本にあるので、とてもライブなのです。
その本の紹介の時に、「残念ながら授業のテキストという制約は免れません。これを踏まえて、分量を気にせずに、小林さんの主観を思い切りいれた本をぜひまとめてもらいたい」と書いたのですが、本書がまさにその本です。
本書のもう一つの特徴は、紹介文に「多くの碑文資料の分析」とあるように、膨大な碑文資料から当時の生活に浸っていることからくるリアリティです。
第1部ではヒューマニズムの歴史とリベラルアーツが語られ、つづいて第2部でローマの医師と教師について詳しく語られます。
なぜ「医師と教師」なのかということに、実は古代ローマ社会の実相が見えてきます。
小林さんによれば、古代ローマでは医師と教師はしばしばひとくくりでされて言及されていたそうです。
その共通点は、ほとんどがギリシア人であり、しかも低い社会階層の出身者だったそうです。
社会にとって、医師と教師は重要な役割を示す職業にもかかわらず、なぜそうだったのか。そこに面白さがあります。
第2部の中にギリシア人医師アスクレピアデスの話が出てきます。
ローマで成功した医師ですが、彼はなぜ成功したか、それはヘレニズムではなくローマを生きたからです。
これではわけがわからないでしょうが、そんな具体的な話から、古代ローマのヒューマニズムが、そしてヘレニズムではなくローマングレコが歴史を主導していくことになる理由までもが垣間見える気がします。
たまには、非日常的な、こういう本を読むのもまた楽しいものです。
コモンズ書店
■ケアプランを自分でたてるということ(島村八重子+橋本典之 CLC 1500円)
コムケア仲間の全国マイケアプラン・ネットワークの島村さんと橋本さんが本を書きました。
全国マイケアプラン・ネットワークは、
介護保険を利用するためのケアプランを自分で立てている人たちのやわらかなネットワーク組織です。
といっても、ただ単にケアプランをつくるだけではありません。
同時に、介護とは何か、ケアプランとは何か、をやわらかく考えている人たちの輪なのです。
本書には6人の体験が出てきますが、みんな全国マイケアプラン・ネットワークの仲間です。
その6人の話を聴いて歩く役割を果たしたのが、そのグループで最も若い橋本さんです。
若いって何歳くらいだと思いますか?
30歳の、しかも男性なのです。
介護の現実は、次の次の社会を担う若者にどう映るのか。
全国マイケアプラン・ネットワークの代表でもある島村さんが、本書の最後の「おわりに」に書いている文章に感激しました。
少し長いですが、引用します。
介護をしている人が、世間体を気にすることがよくあります。(中略)
私はそうした世間の目はまったく気になりませんでしたが、ただ一つだけ、常に気にしていた“目”がありました。
それは、子どもたちの目です。
親の生き方を後ろから見ている子どもの目。
もっと広くいうと、次の世代の目がとても気になったのです。
介護という壁をよじ登ろうとしたり、跳ね返されたり、大人は必死にもがいていますが、その姿を次の世代が確実に見ていて、そこから何かを感じ取っているはずです。
どうですか、
私は涙が出そうになるほど、感激しました。
こういう思いが大人たちにもう少しあれば、社会は今のようにはならなかったはずです。
この文章にもし共感してくださったら、ぜひ本書を読んでください。
必ず自らの生き方を考えるヒントが得られるはずです。
節回し役の橋本さんは本書の冒頭でこう書いています。
今現在、介護に直面している人、自分自身の老後をどう生きていこうかと不安な人、いずれ訪れる両親の介護をどうしようかと心配な人、介護なんてまだ関係ないと思っている若い人などなど、多くの人に手にとっていただければと思います。
私も、ぜひ多くの人に、とりわけ世間体を気にして生きている男性たちに、読んでほしいと思います。
これは「ケアプラン」の本ではなく「ライフプラン」の本なのです。
■奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅(大月敏雄ほか 王国社 2000円)
大月さんとは彼が大学院生の時からの長い付き合いです。
最初は友人の紹介で、新しい保育システム構想づくりの仲間になってもらいました。
その縁で、その後、いろいろと楽しいプロジェクトをご一緒させてもらいました。
元気工場型住まい研究会でも話をしてもらいましたが、とても好評でした。
仕事でも美野里町の都市計画マスタープランづくりでご一緒しました。
私が一番好きなのは、大月さんの目線と時間感覚です。
大月さんはいま東大大学院の准教授ですが、さまざまな現場に関わっています。
特に彼がこだわっていたのが、同潤会アパートでした。
そこでの住まい方に関心を持っていたのです。
日本の建築家は、建物に興味を持ちますが、そこで営まれる人の住まい方にはあまり目を向けていないように思います。
空間設計ではなく、枠組み設計が多いような気がします。
私が有名人の建築設計が好きになれないのはそのためです。
しかし大月さんは違います。
その大月さんが仲間と一緒にまとめたのが本書です。
阿佐ヶ谷住宅は、杉並区にある昭和33年竣工の日本住宅公団の分譲型集合住宅です。
その特徴は、中層住宅に並んでつくられた2階建てテラスハウスタイプのほうが多い構成になっていたことです。
テラスハウスは和製英語ですが、当時は私のような子どもでさえ、憧れを感じたスタイルでした。
さらに、緑が重視された空間設計で、ある本によれば、その緑の空間は「個人のものでもない、かといってパブリックな場所でもない、コモン」と位置づけられています。
そこには当時注目されていた田園都市のイメージが重ねられていたわけです。
その阿佐ヶ谷住宅も、住居は消費財と考える日本の住宅観には抗しがたく、昨年、建て替え計画が決定したのだそうです。
そうやって私たちは都市を壊してきているわけですが、大月さんたちはそうした動きへの鋭い視点を据えながら、愛情を込めて阿佐ヶ谷住宅の意味と変遷の物語を語ってくれています。
ともかく面白いです。
日本の住宅史というよりも、都会での暮らしの歴史を通して、日本社会がどう変遷してきたかを実感できます。
だが面白いだけではありません。
そこから著者たちが発しているのは、未来に向けての、あるいは今を生きる私たちの生き方へのメッセージです。
時間のない人は、ぜひ本書の大月さんのあとがきだけでも読んでください。
その時間もない人のために、そこで語られているメッセージを一つだけ紹介しておきます。ちょっと長いですが。
そもそも、近代的都市計画は「場違いなまち」をつくってしまわないための技術であったはずだ。
(中略)
昭和30年代前半の団地設計で、彼ら(設計者)の筆を引っ張っていたのは、「経済原理」ではなく「素直な都市計画」という原理だったに違いない。その事態とは打って変わって、今では設計者が持つ筆に、経済至上主義の世界からの一本の強力な糸が結びついていて、知らず知らず計画上の線がそっちの世界に引きずられてしまっているような気がする。
(中略)
(日本の今の建築設計の現状は)「場違いなまち」をつくらないように、との思いで線を引いてきた頃とは隔世の感がある。
(中略)「経済至上主義の世界からの一本の強力な糸」が今や、公共の政策になっている現実を嘆いているのであり、そこにしか、居住空間の再編を頼るすべがない日本国民の危うさを嘆いているのである。
ともかく多くの人に読んでほしい本です。
自らの生き方、住まい方と重ねながら。
■香を楽しむ(一条真也 現代書林 1300円)
一条真也さんの「日本人の癒し」シリーズ第4弾です。
相変わらずの健筆にただただ驚くばかりですが、このシリーズを私はとても楽しみにしています。
一条さんの生活から出てくる文化論、生活論が感じられるからです。
今回は香りですが、香りへの関心の高まりの背景には、合理主義一辺倒の近代主義への反省や「見えない世界」への志向がある、などと書かれると、ますます読みたくなってしまいます。
今回もまた「香り」を切り口に一条さんの文化論が縦横に語られるのですが、今回は2つのことを私は特に教えてもらいました。
まず「香道」です。
「茶席」に相当する「香席」というのがあって、そこでは「組香」という遊びがあるのだそうです。
その最高傑作は「源氏香」と言われるもので、5つの香の組み合わせを当てるものだそうです。
その組み合わせ数は52.それが源氏物語54帖の内の52に対応していると言います。
香の種類は、辛、甘、酸、しおからい、苦の5つだそうですが、そもそもこれすら私にはよく分かりません。
これが創られたのは江戸時代だそうですが、江戸文化の深さを改めて思い知らされます。
日本人の香りの文化のすごさを感じました。
ところで、「香道」の「香り」のもとになる香木は全て日本産ではなく、アジア各地のもので、日本には香木がないそうですが、これも実に興味深い話です。
日本は、おそらく香りという面ではおとなしい風土なのでしょうが、そこでなぜ香道が広がったのか、興味が尽きません。
「プルースト現象」というのも教えてもらいました。
臭覚によって過去の記憶が呼び覚まされる心理現象をいうらしいですが、これはマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」の書き出しに由来するのだそうです。
たしかに香りが昔の記憶を思い出させることはよくあります。
子どもの頃の世界の匂いがすると何やらとても懐かしく幸せな気分になることは、私のような歳になってもあることです。
ほかにも興味ある話が出てきます。
「香木は龍の肌」という信仰があったのではないかという仮説は、いかにも一条さんらしいですし、西洋の香水と東洋の香を重ねた「香水香」と言うのがあることも知りました。
後半には、香産業の経営者との対談も掲載されています。
小冊子ではありますが、このシリーズはいつもわくわくしながら読ませてもらえます。
正月のゆったりした気分の中で、お読みなると、最近の私たちの生き方のおかしさに気づくかもしれません。
■介護認定(小竹雅子・水下明美 岩波ブックレット 500円)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ代表の小竹さんの精力的な活動にはいつも感心しています。
コムケアで知り合ったのですが、そのシャープな視点と行動力は会ったとたんに伝わってきました。
私自身あまり接点はないのですが、なにかわからないことはあればお聞きすると応えてくれるという、私にとってはとてもありがたい存在になっています。
その小竹さんが、5月に発行した『介護情報Q&A第2版』の追加情報として、まとめたのがこの岩波フックレットN0.770『介護認定』です。
小竹さんのお手紙から引用させてもらいます。
介護認定は3年ことに厚生労働省令で見直しが行われていますが、(中略)10月から再び見直された介護認定がはじまっています。
市民福祉情報オフィス・ハスカッフでは、多<の人たらに十分な情報が提供されないまま実施されようとしている見直しに危機感を抱さ、国会集会などを開催してきました。
そのなかで、複雑な介護認定のしくみにはわからないことが多いと考え、新たにフックレットをまとめました。
(中略)
本書か多くの人が介護認定のし<みを理解する一助になり、次期見直しの課題を考えるさっかけになることを願っています。
なお、小竹さん経由で注文すると、著者割引(2割引、消費税別。30冊以上は送料無料)で購入できます。
こ希望の方は小竹さんにご連絡ください。
市民福祉情報オフィス・ハスカッフ 小竹雅子
FAX.03−3303−4739 Mail:toffice@haskap.net
■足利まちおこし事件簿(中島粂雄 下野新聞社 1300円)
地域振興アドバイザーで一度ご一緒したことのある中島粂雄さんから本が送られてきました。
中島さんは地域振興アドバイザーとして全国を飛び回りながら、地元の足利市の商工会議所の専務理事として、足利市のまちおこしに取り組み、見事な成果を次々に上げてこられた方です。
私も一度、お誘いを受けたのですが、時間がなくて参加できずお役に立たないまま、もう10年以上のご無沙汰をしてしまっています。
中島さんは、実は小学生の頃からのシャーロキアンです。
私はシャーロキアンではありませんが、やはり小学生の頃からシャーロック・ホームズの大ファンでした。
中島さんとのホームズ論議も楽しい思い出の一つです。
本書は、中島さんがど真ん中にいて体験してきた足利のまちおこしの話の集大成版です。
中島さんはすでに足利のまちづくりに関しては2冊の本を出していますが、いずれも中島さんらしい面白さがありました。
久しぶりに出した本書は、副題が「シャーロック・ホームズ先生に捧ぐ」となっています。
それにもひかれるところがあります。
本書には足利銀行の話が出てきます。
ホームズの冒険談の中でも有名なのが、『赤毛組合』ですが、この事件の舞台は1890 年のロンドンの銀行です。
その頃、足利銀行も生まれたのだそうです。
そんなことにつなげながら、中島さんはこういいます。
昨今は、金融資本がギャンブルのように世界を席巻して益々巧妙な犯罪が横行している。
こんな時代にホームズ先生ならどんな解決をしてくれるのだろう。
ちなみに、足利銀行の母体は、1892年にできた「足利友愛義団」だそうです。
金融資本主義と友愛。
なにやら今の時代状況の役者がそろっています。
ほかにも、「ココ・ファーム」や「まちおこし探偵団」「花火でのまちおこし」など、中島さんが関わったまちおこし物語が語られています。
住民主役のまちおこしのヒントがたくさん含まれています。
各地でまちおこしに取り組んでいる方にはぜひお勧めしたい本です。
■横浜中華街の世界(横浜商科大学編 1500円)
自在研究所の根本英明さんから本が送られてきました。
それがこの本です。
根本さんが、横浜商科大学の学生たちのキャリア開発支援に取り組んでいることは少し聴いていましたが、なんでそれがまた横浜中華街の本なのかと思ったのですが、根本さんの手紙を読んで理由がわかりました、
今年は横浜港開講150周年にあたるのだそうです。
それで横浜商科大学では、「中華街まちなかキャンパス」という公開講座を企画したのだそうです。
そして、中華街が生まれ故郷だった根本さんが、そのコーディネーターを引き受けたのです。
公開講座への受講希望者は定員を大きく上回り、参加できなかった人が少なくないようです。
それもあって、その成果をきちんと本にしようということになったのでしょう。
この種の公開講座の記録は、失礼ながらあんまり面白くないことが多いので、私も最初はあまり興味を感じなかったのですが、ぱらぱらと本をめくってみると、印象が一変しました。
本の説明にこんな文章が出ています。
「中華街の道はなんで斜め?」
「中国人はいつからこの街に来たの?」
「中華料理の店って何件あるの?」
「中華街のお客さんは年にどのくらい来ている?」
……中華街通の識者総勢12人がまちの魅力や歴史、文化を語り尽くす。
横浜中華街を愛し、この地で活躍する人たちがまちの秘密を全部教えます!
中華街通の識者総勢12人がまちの魅力や歴史、文化を語り尽くす。
たしかに講座での話し手の人選が光っています。
それでついつい一気に読む羽目になってしまいました。
各講座とも実に面白いです。
その面白い内容をここで中途半端に紹介するのはやめますが、終章に書かれていたことが印象的でしたので、それだけを紹介しておきます。
中華街は世界各国で生まれていますが、中国政府は「中華街から出よ、そして主流社会に融け込め」と呼びかけているそうです。中華街は新たにやってきた中国人の一時滞在の場ですから、そこから出られないというのは経済的に成功できていないということです。しかし日本では、逆に中華街に店を出したら成功とされているのだそうです。
日本以外の国の中華街では9割の人が中国人であるのに対して、横浜中華街は9割以上のお客さんが日本人だそうです。
この話からいろいろなことを気づかされます。
まあこんな話が、この本にはいろいろとちりばめられています。
いろんな大学で公開講座や冠講座が開かれていますが、おそらくこんな面白い講座はそうないでしょう。
根本さんのコーディネーター力に感心しました。
興味のある方はお読みください。
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■おもわずありがとうといいたくなった大津のちょっとええ話(CHOIはなくらぶ編 筒井書房 1000円)
長いタイトルの本です。
CHOIはなくらぶは、この本を制作するために結成したグループです。
その事務局長が福井美知子さん。
大津を拠点にさまざまな活動に取り組んでいる元気な方です。
私が取り組んでいるコムケアの活動で出会いました。
軽やかにさまざまな活動をされています。
そもそもこの本ができる契機になったのが、地元大津を走っている京阪電車の駅や電車を舞台にしたギャラリー活動です。
私が知りあった時に取り組んでいた「町のオアシス」活動もすばらしい活動で、商店街の空き店舗を活用したギャラリー&サロンの活動でした。
そうした活動からさまざまな本が生まれていますが、今年は2冊の本が生まれました。
「電車と青春+初恋」(サンライズ出版)と本書です。
本書は書名は長いですが、本文はとても短い文章と写真の組み合わせです。
文章は「ありがとう話」の公募に応じてくれた作品の中から選ばれたものです。
みんな心温まる話ばかりです。
たとえば、
月に1〜2回、近所の高齢者のお宅を訪問しています。
心待ちにしてくださる方も多く、ときには部屋に上がりこみ、小一時間ほど思い出話を聴かせていただくことも。
「いつもありがとう」に私が元気をもらっています。
こんなのもあります。
子ども達には挨拶の大切さを説いてきました。
それを忠実に実行した小3の娘には、友だちがたくさん!近所のおじさん、おばさんとも仲良くなったおかげで、助けてもらえる安心感からか、薄暗くなった道を歩くのも怖くなくなりました。
この本の冒頭の作品もいろいろと考えさせられます。
4月に石坂線で運行していた「おもいでお花見号」、終始半眼で向かい側の車窓を見つめていた参加の老婦人。
「いつも目を開けていてもほんとは見えてないの。でも今日は最初から最後まで桜が見えました。ありがとう」
私もこういう本をつくりたいとずっと思っていました。
福井さん、ありがとう。
小さな本ですが、とても元気がもらえます。
ご注文はここからもできます。
■涙は世界で一番小さな海(一条真也 三五館 1300円)
涙は「世界で一番小さな海」とは、アンデルセンの言葉だそうです。
その海は、もしかしたら「世界で一番深い海」かもしれません。
私は、2年程前に伴侶を見送りましたが、その体験から、実感としてそう思います。
その深さは、彼岸に届くほどのものです。
それはともかく、本書は、一条さんの「ハートフル」シリーズ、ハートフル・ファンタジー論です。
副題は、「『幸福』と『死』を考える、大人の童話の読み方」とされています。
取り上げられているのは、アンデルセン(「人魚姫」「マッチ売りの少女」)、メーテルリンク(「青い鳥」)、宮沢賢治(「銀河鉄道の夜」)、サン=テグジュペリ(「星の王子さま」)です。
一条さんは、この4人が深くつながっていることを示しながら、彼らが伝えてきているメッセージを読み解いていきます。
かなり明確に自分の主張も表明していますが、いささか過激に思われるところもあります。
そうした主張は、4人からのメッセージを読み解いた後のエピローグで語られているのですが、その口調はかなり強いです。
昨今の「ファンタジー」映画の俗悪さに辟易している私としては、一条さんの次のような指摘にはとても共感できます。
たしかに「指輪物語」を忠実に映画化した「ロード・オブ・ザ・リング」三部作などはアカデミー賞を独占しただけあってすばらしいクオリティの作品でした。しかし、延々とつづくスペクタクルな戦闘の場面にどうにも違和感を覚えてしまったのは、わたし一人だけでしょうか。わたしは、「なぜ、癒しと平和のイメージを与えてくれるのではなく、ファンタジー映画に戦争の場面ばかり出てくるのか?」と素朴に思ってしまうのです。
この文章に、一条さんのハートフル・ファンタジー論が要約されているようにも思います。
ハートフル・ファンタジーは、「死」の真実や「幸福」の秘密を語るもの、と一条さんは考えているのです。
幸福はわかるとして、なぜ「死」なのか。
これに関しては、次の一条さんの言葉がすべてを語っています。
私がどうしても気になったことがありました。
それは、日本では、人が亡くなったときに「不幸があった」と人々が言うことでした。
わたしたちは、みな、必ず死にます。死なない人間はいません。
いわば、わたしたちは「死」を未来として生きているわけです。
その未来が「不幸」であるということは、必ず敗北が待っている負け戦に出ていくようなものです。
(中略)
わたしは、「死」を「不幸」とは絶対に呼びたくありません。
なぜなら、そう呼んだ瞬間に将来必ず不幸になるからです。
死はけっして不幸な出来事ではありません。
そう捉えれば、死は幸福につながっていくはずです。
そして、死が愛と深くつながっていることに気づくでしょう。
本論とは違うことを紹介してしまいましたが、本書では5つのファンタジーを読み解きながら、一条さんの世界観や人生論が語られています。
それはおそらく一条さんが子どもの頃から慣れ親しんできたファンタジーの作品の影響が大きいでしょう。
自分のこととして語っていることに共感がもてます。
一条さんは、ファンタジー作品を単なる読み物とは捉えていません。
そこには、人智の真髄、宗教や哲学の真髄などの人類の普遍思想が、誰にもわかるように書かれており、社会にまだ影響されない前の子供たちが、そうした作品にさりげない触れることによって、実は人類の方向性が導き出されていると、一条さんは考えているようです。
世界中の人たちが、心を通わせ合えるのは、もしかしたらそのおかげかもしれません。
そうかんがえれば、ファンタジーこそが平和を育てているのかもしれません。
大人が、ファンタジーから学ぶことも少なくありません。
本書はそのことにも気づかせてくれます。
気楽に読めますので親子で読んで話し合ってもいいかもしれません。
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■「むすびびと」(一条真也編 三五館 952円)
一条真也さんの本の紹介が続いていますが、今週も一条真也さんが編集した本です。
書名は「むすびびと」。
といえば、いうまでもなく思い出すのは「おくりびと」。
もちろんそれを意識しての一条さんらしい造語が「むすびびと」です。
一条さん的にいえば、魂と魂を結ぶ仕事をしている、いわゆるウェディングプランナーと呼ばれる人たち、それが「むすびびと」です。
以前も書きましたが、一条真也さんは冠婚葬祭関係の会社の社長でもあります。
ですから、一条さんの周りには「むすびびと」も「おくりびと」も多く、たくさんのエピソードに取り囲まれて仕事をされているわけです。
そして、おそらく一条さんご自身も、「むすびびと」「おくりびと」を自認されているのだろうと思います。
一条さんが「むすびびと」をどう捉えているかは、次の文章でわかります。
元来は一つのものだった「魂」の片割れ同士が、ふたたび一つに結びつく瞬間を高らかに謳いあげること、すなわち「結魂」のお手伝いをするのが、本書の主人公“むすびびと”の仕事なのです。
「結魂」も一条さんの造語です。
「結魂論」という著作もあります。
本書には、そうした「結魂」にまつわる19の物語が紹介されています。
すべて事実に基づくものです。
そして、そこには「むすびびと」たちの悩み、不安、喜び、感動がありますが、いずれも読み終えた時に、何かとてもあったかな幸せを感じます。
19のエピソードと書きましたが、実はもうひとつエピソードが紹介されています。
「あとがき」で一条さん自身が体験した「心の仕事」が紹介されているのです。
そこでのテーマは「家族」です。
「結魂」から始まるのは「家族」です。
実は、そのことを一条さんは一番言いたかったのかもしれません。
まあ普通はそこで終わるのでしょうが、一条さんはさらにこう書き加えています。
「こころ」を扱う仕事の中でも“むすびびと”たちは、とても大切なものを売っています。
わたしたちの本当の商品は、「平和」という名の商品なのです。
一条さんの会社のスローガンは「結婚は最高の平和である」。
異論もあるでしょうが、私はその通りだと思います。
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■あらゆる本が面白く読める方法(一条真也 三五館 1400円)
本とは心を太らせる「こころの食べ物」。
こう考えている一条さんは、実に大食漢です。
なにしろ毎年700冊を超える本を読んでいるのだそうです。
肥満になるのではないかと心配ですが、一条さんのもう一つの顔である佐久間さんとしては、激しい競争社会の中で会社を経営し、さまざまな社会活動もこなしていますし、ご自身でも次々と本を出版していますので、決して肥満にはなりません。
その消化力は驚嘆するものがあります。
本書は、その一条さんの読書論です。
単なる読書術の本ではありません。
技術篇と思想篇にわかれていますが、技術篇でさえも無味乾燥な読書術ではありません。
全編に流れているのは、一条さんの本への愛情です。
本書でも「読書は恋愛」と書いていますが、私が感ずるのは一条さんは「読書」というよりも本を心底愛しているのです。
本を愛していればこそ、恋愛行為である読書は面白いもの、楽しいものになってきます。
そうした一条さんへの本へのラブレターが、本書です。
博愛家の一条さんは、本を愛することの意味や楽しさを多くの人に知ってもらいたいという思いで、ラブレターを公開したのでしょう。
もちろんとても実践的な読書法も紹介されています。
たとえば、一条さんは目次を5分以上かけて読むのだそうです。
私はこうしたことをしたことがなかったのですが、その意味を本書で知りましたので、これからは心がけるつもりです。
難解な本の読み方もとても共感できます。
本書が単なる個人的なラブレターで終わっていないのは、一条さんの実績が背景にあるからです。
本書でも紹介されていますが、一条さんは読書によって得た「ことわり」に支えられて会社を建て直しました。
読書を通して「死」への不安も克服しました。
そして今では「読書」する一方で、自らの志を育てながら、自らの著作や講演などを通して、世に発信しているのです。
書斎にこもっている読書人ではないのです。
ですから、そこで書かれていることは、とても親しみを持て、また実践的でもあるのです。
一条さんはこういいます。
あなたの「志」を生むものは読書です。
あなたの「志」を育てるのも読書です。
そして、あなたの「志」を実現するのは、あなた自身です。
一条さんの読書論は、人生論でもあるのです。
本書の内容の紹介は、出版社の案内を読んでください。
いろいろなことを気づかせてくれる読書論です。
■最短で一流のビジネスマンになるドラッカー思考(一条真也 フォレスト出版 1500円)
経営の世界に多大な影響を与えたドラッカーに関する書籍は多いです。
しかし、人間的な思いを込めてドラッカーの思想を語っている書籍は、そう多くはありません。
一条真也さんは、自らがドラッカー経営学の実践者です。
自らが経営する会社を、ドラッカーの教えに従い見事に立て直しました。
しかし、それはそうめずらしい話ではありません。
私が、一条さんに感心するのは、単に企業経営の世界だけではなく、自らの生き方においてもドラッカーに共感し、実践していることです。
まさに知行合一の見事なモデルです。
一条さんは、ドラッカーの思想を見事に消化し、実践し、さらにそこに自らの知と生を重ねてきています。
本書は、そうした一条さんのドラッカー経営学の現時点での実践的な集大成です。
この書名には、嘘はないと私は思います。
本書を読めば、ドラッカーの経営思想の本質に触れることができるでしょうし、その知恵に多くのことを気づかされるでしょう。
実践テクニックの書は、私は好きではないのですが、これは「思考が身につく実践テクニック」なのです。
むしろテクニックの書ではなく、思考の書としてお薦めします。
一条さんは自らを「ドラッカー・チェルドレン」というほど、ドラッカーのファンです。
ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」という著作を受けて、「ハートフル・ソサエティ」というアンサーブックまで書いているほどです。
私は正直、ドラッカーのファンとは程遠い存在ですが、それでもこの本を読むとドラッカーファンになりそうなくらい、一条さんはドラッカーを自らのものにしています。
一条さんとドラッカーの、とてもあったかいコラボレーションを感じます。
本書は6つの章からなりたっています。
「自己実現」「マネジメント」「マーケティング」「イノベーション」「リーダーシップ」「未来創造」。
いずれもドラッカーの思想のキーコンセプトです。
最初に「自己実現」が置かれているところに、一条さんの本書への基本的な姿勢がうかがえます。
まずは、新しい自分への気づきを呼びかけているわけです。
本書は、まず企業の人たちにお薦めします。
とても読みやすいですので、仮に本が好きでない人であっても、最後まで読めるはずです。
次にNPOの人にお薦めしたいです。
悪しき企業経営の本を読んで懲りた経験のある人でも、きっと読んでよかったと思うでしょう。
やる気のある行政の人や公益法人の人にもお薦めします。
そして、自らの生き方にちょっと迷っている方にもお薦めしたいです。
装丁がいささか派手すぎて抵抗がありますが、中身はとてもしっかりしています。
お薦めの1冊です。
■半農生活をはじめよう(増山博康 かんき出版 1400円)
週間記録で紹介していた菜園クラブの増山さんの本が完成しました。
増山さんが実際に実践している「半農生活」のすすめです。
似たような本はたくさん出ていますが、
この本は増山さんの生活がしっかりと反映していますので、嘘偽りのない実践者の本になっています。
なによりも土と野菜のにおいがするのがいいです、
それに昨今の社会状況をしっかりと意識していますので、読者の読む気も誘うでしょう。
本の内容は紹介文に的確にまとめられています。
平日は都会で会社勤めをして、週末は郊外の菜園で楽しみながら野菜をつくる。そして食べて、売る。それが半農サラリーマン生活です。半農生活はカンタン。しかも、菜園での適度な運動と育てた野菜を食べることで健康になり、売り方しだいで年収100万円アップも可。本書を手に、いますぐ半農生活をはじめよう。
100万円などと書いているところは私の趣味には反しますが、これは決して単なるキャッチコピーでないことは、本書を読むとよくわかります。
目次をご覧ください。
とても実践的で、読みやすい本です。
そして、ついつい「半農生活しようか」という気になってしまう本です。
1 半農生活はカンタンにはじめられる
2 自宅から通える範囲で農地を探そう
3 菜園でどんな野菜をつくるか考えよう
4 菜園の広さに応じて道具をそろえよう
5 野菜別カンタン栽培の方法とポイント
6 半農生活で育てた野菜は意外とよく売れる
7 こうすれば半農生活で月10万円稼げる
増山さんは実際の農園を確保して、農業クラブの活動を提案しています。
その上、半農生活サポートセンターも立ち上げました。
そして、この本の出版に合わせて、半農生活サポートセンター主催で、「みんなで半農ライフを楽しむ時代目指して」をテーマに9月29日にフォーラムも開催します。
お知らせのコーナーに案内を載せました。
増山さんはこう呼びかけています。
私たちはやはり自然≠フ一員。
農作物を育てれば、その実感と喜びがわいてきます。
農業を取り巻く環境も変わりつつあり、都会の生活や仕事をしながら「アマチュア農業」をする「半農ライフ」のやり方もいろいろ生まれてきました。
そのひとつは、私たちが提案する「農業クラブ」。
初心者でも、忙しくて毎回畑まで通えそうにないという人でも、気軽に参加して栽培を楽しめます。
趣味のクラブのように「農業クラブ」が広がって、文字通り実も花もとれて楽しい日々が送れる人が増えればと思います。「農業クラブ」について知りたい方、とにかく野菜を育ててみたいという方、お気軽にご参加ください。
この本からいろいろな物語が始まりそうです。
増山さんは、こう呼びかけています。
増山さんが主宰する菜園クラブのホームページもぜひご覧ください。
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■「灯(あかり)をたのしむ」(一条真也 現代書林 1300円)
一条さんの「日本人の癒し」シリーズ第3弾です。
今回のテーマは「灯(あかり)」。まさに一条さんの世界です。
「天の光、地の灯」という序章に続き、本編は「灯のある暮らし」と題して、いつものように一条さんの世界が縦横無尽に語られていますが、今回の主役は「ロウソク」です。
むしろ「炎をたのしむ」でもよかったくらい、一条さんも炎に魅了されているような気がしました。
以前、ブログでロウソクの炎のことを書いたことがありますが、その時、すかさずに一条さんからメールが来ました。
ロウソクの炎に人間の魂が宿るのは本当ですよ。
日々の葬儀の中で、何度も経験しております。
その時からきっといつか「炎の世界」のことを書いてくれるだろうなと期待していました。
本書は、いわばその予告編のような感じで私は読ませてもらいました。
気楽に読める手軽な本ですが、いつものようにさまざまな示唆が込められています。
もちろんキャンドルライフやキャンドルを活かした平和運動のこともたくさん出てきますが、
特に印象深かったのは、ファラデーの「ロウソクの科学」のなかにある記事です。
ファラデーは、その本に子どもたちに話したことを収録しているそうですが、
そこで「一本のロウソクにたとえられるのにふさわしい人になってほしい、
そして、ロウソクのようにまわりの人びとに対して光となって輝いてほしい」というような話をされているそうです。
すぐに思い出すのは「一隅を照らす」という言葉でしょう。
一条さんも、それにつなげながら、こう書いています。
太陽は光を放ちます。
月や星は、その太陽光を反射します。
しかし、地上の人間にできることは灯をともすことだけなのです。
それは、ささやかな灯かもしれません。
周囲を少ししか照らすことができないかもしれません。
風が吹けば、すぐに消えてしまうかもしれません。
それでも、人間には灯をともさなければならないのです。
さらにこう付け加えます。
ロウソクは自らの身を細らせて燃えるもの。
自己を犠牲にして周囲を照らすものです。
ただひたすら他者に与える存在であり、それは「利他」の実践に他なりません。
他にも紹介したいことがたくさんなりますが、もう長すぎるほど書いてしまいました。
もう一つだけ紹介して、あとは本書を読んでもらうことにしましょう。
戦争と環境問題という人類にとっての最大の難問を解決する糸口がロウソクの炎の中から見つけられるような気がする。
名前だけは知っていた「ロウソクの科学」も読んでみようと思います。
みなさんもよかったら読んでください。
これまでの「日本人の癒し」シリーズ
■「茶をたのしむ」 監修一条真也 現代書林
■「花をたのしむ」
一条真也 現代書林
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■「ガンと一緒に山登り」(庵幸雄 白山書房 2009 1500円)
著者の弟は私の大学の同窓です。
先日、湯島に来た時に、この本の話が出ました。
がんになった兄が山登りで、がんを克服したという話です。
著者が山登りに挑戦しだしたきっかけは、「山がくれたガンに負けない勇気」(小嶋修一)という1冊の本との出会いだったそうです。
小嶋さんは、ガン患者には無理なとも思われる富士登山、モンブラン登山への挑戦で人間が備え持っている自然治癒力を高めてガンを克服したのだそうです。
その本に刺激された、著者も登山を開始、良い仲間に出会えたこともあって、昨年、ついに日本百名山を制覇したのです。
胃の全摘出という手術をしてから7年目の壮挙です。
本書は、その山日記が中心ですが、その前後に書かれている著者の思いを知って読んでいくと、いろいろと灌漑深いものがあります。
一味違った登山記としてお読みいただければと思います。
体験を通して、著者が語っていることがとても示唆に富んでいますが、その中からちょっと長いですが、一説を引用させてもらいます。
世の中には、当人が病魔と闘っているのを、周囲の人達が心ならずも結果として、つぶしていることがけっこう多いのではないだろうか。もちろん、その人としては、何とかしてあげたい、黙ってはいられないという気持ちなのだろうが、病魔と闘っている当人の立場に立っての助言というよりも、周囲の人間の立場に立っての助言に陥っていないだろうか。病人なのだから無理をさせずに、静かにさせておいた方がよい、周囲で見守ってあげなければと、当事者を離れた周囲の常識を基準にした助言に陥っていないだろうか。
本来、当事者が自分の状況はいちばんよく分かっている。人間は思ったよりも強靭にできているようだ。
当事者であればこそ、説得力があります。
がんと対峙している人たちに力強いエールの書ではないかと思います。
私ももう少し早くこの本に出会っていればと悔やまれます。
コモンズ書店で購入できます。
■「語り部とともに歩く熊野古道」(かんき出版 1600円)
かんき出版の藤原さんからお話をお聞きしていた自信作の本が出版されました。
この本の魅力は、3人のプロフェッションが時空間を超えたバーチャルな熊野古道の世界を
創りあげているところです。
「観光カリスマ百選」の1人にも選定されている、熊野古道語り部の坂本勲生さん。
ヨーロッパの「人と文化」に焦点を当てて活動しているフォトグラフィック・ライター、南川三治郎さん。
そして、朗読は、「平家物語」の朗読をライフワークとして、舞台出演の傍ら、朗読会や講演活動を全国的に展開している、前進座の嵐圭史さん。
この3人が、写真と文章と朗読でコラボレーションしているのです。
「語り部とともに歩く」とあるように、古道に沿った編集になっているので、写真を見ながら読み進めていくと、巡礼路を歩いているような気分にもひたれます。
その歩きの中で体感できるような、自然の音が時にCDから聞えてくると最高なのですが、そこまで望むのは欲が深すぎるでしょう。
しかし、写真はみんな撮り下ろしなので、南川さんの息づかいとともに、その風景の音まで少し聞えてくるような来もします。
そして、写真の世界に同化している自分に気づくような体験もできます。
坂本さんが語り続けている話の中から24話を、嵐さんが朗読したものがCDとして付いていますので、背景に流しながら写真を見ていると、今度は時間を超えた、もうひとつの熊野古道の世界を体感できます。
この本を片手に熊野古道を歩いたら、きっとさらに多くの気づきがあるでしょう。
熊野古道を歩いたことのある方が読んだら、その時にタイムスリップしたような気分になるでしょう。
歩きたくても歩けない人には、歩いたような喜びを与えてくれるでしょう。
熊野古道を歩いた人も、歩きたいと思っている人も、そしてなによりも、熊野古道を歩けない人も、それぞれに堪能できる魅力的な本です。
疲れた時に、ゆっくりと味わう本として、お薦めします。
■「職場うつの正体」
(広野穣 かんき出版 1575円)
著者とは面識がないのですが、私の友人が出版に関わっているのと、このところこの話題での相談が多いので、紹介させてもらうことにしました。
著者の広野さんは、「言葉の心理カウンセラー」だそうです。
最近、広がっている「職場うつ」の正体は人間関係病、その病原菌は「言葉」である、というのが広野さんの考えです。
本書はその考えに基づき、職場からうつ病をなくしていくための具体的な処方箋が語られています。
但し、うつ病対策だけの本ではありません。
そうではなく、うつ病患者を生み出してしまうような職場にならないように、職場そのものを元気にし、明るくするための社風変革の処方箋と言ってもいいかもしれません。
私は、会社そのものが「うつ」になっている現状を変えないといけないと考えていますので、広野さんの発想に賛成です。
目次を見てもらえばわかりますが、いわゆる「うつ病対策」の本ではありません。
むしろ職場を元気にする実践的ガイドといった方がいいかもしれません。
自らを元気にしてくれるためのガイドブックと言ってもいいでしょう。
目次は次の通りです。
Part1 言葉が与えるストレスと<うつ>対策
1.<うつ>病が急増している背景を見てみる
2.<うつ>対策の現実と解決のためのヒント
3.日常の観察で<うつ>信号は発見できる
4.<うつ>に追い込む言葉の意外な「正体」
Part2 人を<うつ>に追い込む言葉と話し方
1.「断定」すれば相手も自分も追いつめる
2.「威圧」すれば精神が壊れていく
3.他人を「否定」すると自分も否定される
4.「命令」が飛び交う会社に明日はない
5.「質問」が下手だと相手を追いつめていく
Part3 人を<うつ>から救う言葉と話し方
1.前向きな気持ちと行動を呼び起こす
2.リーダーシップを育てる話法
3.ほめ言葉が人を落ち込ませることもある
4.ほめ言葉は人も職場も明るくする
会社内にうつ病予備軍が急増しているといわれますが、そうしたところに最近の企業の最大の問題が現れているといってもいいかもしれません。
うつ病の温床になっている企業の現状を変えなければ、企業そのものが立ち行かなくなりかねません。
うつ症状の増加は、実は企業の制度や文化の問題です。
本書はとても読みやすく、実践的な本ですが、会社のあり方や私達の生き方にも、さまざまな示唆を与えてくれます。
よかったら読んでみてください。
コモンズ書店で購入
■認知症予防ゲーム〈高林実結樹 NPO法人認知症予防ネット 1000円〉
今回は一般書店では購入できない本のご紹介です。
このサイトにはちょっと相応しくないかもしれませんが、こうした種類の本もこれから少し紹介していきたいと思いだしました。
この本は、週間報告に書いたように、先日京都でお会いした著者の高林さんからいただいたのです。
そして、このテキストが生まれた経緯とこのテキストから生まれた物語をいろいろとお聞きしました。
認知症に関しては、さまざまなテキストや書籍が出ています。
本書と同じく「認知症予防ゲーム」を扱った本もあります。
にもかかわらず、私がこの本をここで紹介しようと思ったのは、著者の高林さんの熱い思いを感じたからです。
高林さんは私よりも10歳年上ですから、間もなく80歳です。
認知症に関心を持ち出したのは、今から30年以上前にご自分のお母さんが認知症を発症し、それが契機になったようです。
15年ほど前に、静岡の高齢者リフレッシュセンターの増田未知子さんという方が開発された、スリーA方式の認知症予防の考え方に出会い、その考えの有効性をご自分で確かめられてから、それを全国に広げていきたいという思いから、仲間と一緒にNPOを立ち上げて活動を開始したのです。
私は、この10年、各地でのさまざまな福祉関係の活動にささやかに関わらせてもらっていますが、そのおかげで「ホンモノ」と「そうでないもの」とを見分けることが少しだけできるようになってきました。
高林方式は、学問的には検証されているわけではありません。
私自身、その成果を直接知っているわけでもありません。
でも、高林さんと話していると、ゲームの成果、あるいは研修の成果が目に見えてくるのです。
それで高林さんたちの活動をできる範囲で応援しようと思ったのです。
本書の内容は、書名の通り、ゲームの進め方のテキストです。
しかしその前と後ろに、基本的な考え方が簡潔に述べられています。
また、このテキストの利用法も丁寧に書かれています。
できれば、皆さんのお住まいの地域にある、地域包括支援センターやデイサービス施設などに、この本をご紹介いただければうれしいです。
高林さんたちを講師に招いて、講演会やミニ研修会などを企画してもらえればもっとうれしいです。
高林さんに連絡したい場合は、次の電話番号にお電話ください。
高林さんは、とても気さくに電話応対してくださるはずです。
0774−45−2835
本書の購入は、NPO法人認知症予防ネットのホームページからお願いします。
そのホームページには、スリーAの考え方や高林さんたちの活動も載っています。
併せてご覧いただければと思います。
■『介護情報Q&A』第2版
(小竹雅子 岩波ブックレット 800円)
コムケア仲間の小竹雅子さん(市民福祉情報オフィス・ハスカップ代表)がまとめた、介護情報のわかりやすいブックレット『介護情報Q&A』が内容を新しくした第2版ができました。
介護保険の基本的なしくみや改正の具体的内容、困ったときの解決方法、関連情報などを、65の用語にわけて、利用する市民の立場から説明しています。
実践活動の中から生まれてきている本ですので、複雑になって、ますますわかりにくくなってきている介護制度を理解するために必ず役立つと思います。
市民福祉情報オフィス・ハスカップでは、メルマガも発行しています。
この分野に関わっている方は、メルマガも申し込まれるといいと思います。
ホームページから申し込めます。
この本はテキストなどにも向いています。
5冊以上だと著者割引も利用できるそうです。
ご注文は市民福祉情報オフィス・ハスカップまでお申し込みください。
■「技術とコンプライアンス」(杉本泰治 丸善 1500円)
日本では「コンプライアンス」という言葉が極めてご都合主義的に使われています。
一般的に「法令遵守」と訳されますが、果たしてそれでいいのかとずっと思っていましたが、それに関してきわめて明確に、それが誤訳だと教えてくれたのが杉本さんです。
これに関しては以前CWSプライベートでも紹介したことがありますが、それがとてもわかりやすい本になりました。
先週紹介した「技術者倫理‐法と倫理のガイドライン」と同じくテキスト風のスタイルの本です。
今回の副題は、「寄生法令と倫理のガイドライン」です。
書名も、いかにもテキスト風なので少し引いてしまうかもしれませんが、内容はとても読みやすく、示唆に富んでいます。
杉本さんが本書を書いた意図は2つあります。
コンプライアンスがこれだけ話題になっているのに、規制行政法に関する入門書がなかったのだそうです。
そのため、日本のコンプライアンス実務に関する混乱があるのではないか。杉本さんは、その間隙を埋めたかったのです。
技術と経営と法律を、それぞれしっかりと学び体験してきた杉本さんならではの入門書になっているように思います。
もう一つは、社会的信頼を失ってきている企業への信頼回復のために
、実のあるコンプライアンス活動を広げていきたいという、杉本さんの深い思いです。
これは杉本さんのライフワークといっていいでしょう。
この話をしているときの杉本さんからは、時々、鬼気迫るほどの熱意を感ずることもあります。
企業の技術者のみなさんには、ぜひ読んでほしい本です。
目次を紹介しますが、各項目とも深い内容をきわめて簡潔に要点をまとめていますので、忙しい技術者にも短時間でマスターできます、
しかし、できれば、先週紹介した本とあわせて、ぜひ企業内での読書会や勉強会を始めてほしいです。
みんなで話し合うと、きっとそこにこめられた深い意味を学べるはずです。
言葉だけのMOTなどよりも、よほど価値があると思いますので。
目次は以下の通りです。
これを見ても、杉本さんの発想法がわかると思います。
1 コンプライアンスの意味
2 コンプライアンス問題の始まり
3 不合理な法制は不正の温床
4 行政手続法は語る
5 民主国の規制行政
6 行政者と事業者の関係
7 規制法令とは何か
8 コンプライアンスの経営判断
■「技術者倫理‐法と倫理のガイドライン」(杉本泰司 田中秀和 橋本義平 丸善
1500円)
技術者倫理の文化を日本の企業に定着させたいという深い思いから、
著作や講演、研究会などで活躍されている杉本さんたちの著作が続けて2冊出ました。
今回はそのうちの1冊をご紹介します。
今週は時間がなくて、1冊しか読めなかったからです。
杉本さんたちは、大学生向けのテキストはすでに完成させており、このコーナーでも紹介させてもらいました。
定期的にその内容を見直しているスタイルで、すでに現在第4版になっています。
そのテキストを使って、いくつかの大学ですでに講座を展開していますが、企業の技術者にもしっかりと技術者倫理の文化を定着させたいと最近は企業での研修などにも取り組んできました。
そして杉本さんらしいメソドロジーも開発し、成果をあげているとお聞きしていましたが、そのテキストが完成したのです。
その1冊が本書です。
ですから本書は、企業などの実務に取り組む人を対象とした本ですが、企業での活動にまつわる「法と倫理」について、とてもわかりやすく概観していますので、多くの企業人に読んでもらいたい本です。
具体的な事例も、道微視自動車のハブ破損死傷事件、西宮冷蔵の内部告発事件、耐震偽装事件など、6つの事件が取り上げられています。
変わった事例としては、武蔵野市のまちづくり条例検討委員会の「利益相反」事件も取り上げられています。
「利益相反」問題は、私も最近関心を持っているのですが、これからのコミュニティやアソシエーションを考えるときのキーワードのひとつになっていくのではないかと思っています。
まあそれはともかく、本書はともかく読みやすく、親しめます。
それは杉本さんらしく、用語をしっかりと構造的に定義しながら、簡潔に記述しているからです。
技術者倫理というと難しそうですが、前編が平易な日常語で書かれていますし、話題もコミュニティとは何かとかいう話まで包含して、大きな枠組みで語られているのがとてもいいです。
内容的な紹介になっていませんが、良かったら読んでください。
もし企業の技術者の方であれば、ぜひ周辺の技術者と勉強会などもやってもらえればうれしいです。
もし杉本さんを講師で呼びたいということであれば、時間さえあえば、杉本さんはきっと引き受けてくれると思います。
まあ、これ以上、杉本さんを忙しい目に合わせたくないのですが。
来週は、もう1冊の「技術とコンプライアンス」を紹介します。
今度は内容も含めて。
■「花をたのしむ」(一条真也 現代書林 1300円)
前にご紹介した「茶をたのしむ」につづく、「日本人の癒し」シリーズ第2弾です。
一条さんが前作よりも乗っているなと感じたのは、序章が全体の1/3を占めているからです。
序章は「魂のごちそう、心の万能薬」と題されていますが、そこに一条さんの花への思いが一気に書かれています。
一条さんは、きっと楽しんで書いたのでしょう。
花はあまりに広いテーマなので、どう切り込むか関心を持っていましたが、一条さんらしく、冠婚葬祭を切り口にして書き出しています。
まさに一条さんのホームグラウンドです。
そうはいっても、一条さんらしく、話題は古今東西、じつに軽やかに広がっていますから、あきることがありません。
「花はこの世のものとしては美しすぎる」と一条さんは書いています。
ハッとするような言葉です。
しかし、その美しさにどのくらいの人が気づいているか。
私が、花の美しさに気づいたのは最近です。
それまではバラとかカサブランカとか、「名前のある花」に目が行きがちでしたが、そのせいか、変な言い方ですが、花は単に花でした。
野山に咲く小さな花も好きでしたが、ゆっくりと眺めたことがありませんでした。
その魅力を教えてくれたのは妻でした。
花は、見る対象ではなく、共にある存在なのだと、妻がいなくなってからやっと気づかされました。
花の美しさは、心を通わせてはじめて見えてくる、そこに潜む「やさしさ」と「けなげさ」なのかもしれません。
一条さんは、花はいのちのシンボルだといいます。
いのちの美しさを教えてくれているのかもしれません。
花はまた人をつなぐものでもあります。
一条さんは、花は平和のシンボルだともいいます。
3年前に青森の三沢市で住民たちの花いっぱい活動にささやかに関わらせてもらうことがありました。
「花を育てよう」という思いが、住民たちをつなぎだし、今では「まちを育てる」動きになってきているように思います。
まさに花は平和につながっています。
いのちと平和。
本書はそれを基調にして、花のたのしみ方をさまざまな視点から紹介しています。
テーマが広すぎることもあって、一条さんのメッセージが少し弱いのが気になりますが、その分、すんなりと読めるかもしれません。
■人間関係を良くする17の魔法(一条真也 致知出版社 1400円(税別))
一条さんの今年最初の本は「人間関係」でした。
といっても、表層的なテクニック論ではありません。
一条さんならではの人間関係論です。
一条さんは、「良い人間関係づくり」のためには、まずはマナーとしての礼儀作法が必要だといいます。
ですから本書は、礼儀作法の本でもあります。
いまさら礼儀作法? などといわずに、ぜひお読みください。
あまりにも基本がおろそかにされているのが、今の日本ですから。
本書を読むといろいろなことに気づかされるはずです。
私も反省すべきことがいろいろとありました。
一条さんは日本の礼法の基本である小笠原流の免許皆伝を26歳で許されています。
そして、それを実際の生活や企業経営の面でしっかりと実践されているのです。
小笠原流礼法の基本は、「思いやりの心」「うやまいの心」「つつしみの心」という3つの心を大切にすることだと一条さんは言います。
それをしっかりと守っていれば、人間関係で煩わされることはなく、むしろ人間関係に支えられていくというのです。
私のささやかな経験からもとても説得力があり、うなずけることが多いです。
2つだけ引用させてもらいます。
ここに一条さんの、人間関係観が出ています。
本当に大切なものとは、人間の「こころ」に他なりません。
その目に見えない「こころ」を目に見える「かたち」にしてくれるものこそが、
立ち居振る舞いであり、挨拶であり、お辞儀であり、笑いであり、愛語などではないでしょうか。
それらを総称する礼法とは、つまるところ「人間関係を良くする魔法」なのです。
結局、人間関係を良くすることはもちろん、
心ゆたかな社会をつくるための最大のカギこそ、私たちの礼能力ではないでしょうか。
他者への「思いやり」の心くらい大切なものはありません。
スタイリストの書き手である一条さんは、本書でもスタイルにこだわっています。
本書の構成は「17の魔法」とタイトルされています。
そして、17のそれぞれの章の最後に、内容を要約する一条さんの短歌(道歌)が掲載されています。
一条さんが楽しみながら執筆したことが伝わってきます。
人間関係を単なる個人の処世術と位置づけていないのも共感できます。
最後に、世界を良くする究極の魔法が説かれています。
人間は一人だけでは生きていけません。
社会と関わる必要があります。
社会の中において、あなたが良い人間関係を築き、かつ、すべての人が幸福になれる道とは何でしょうか。
その問いかけに一条さんは、こう答えています。
それは「志」です。
志とは、心が目指す方向、つまり心のベクトル。
つまり本書は生き方の指南書なのです。
楽しく読めますので、ぜひお読みください。
コモンズ書店
■日本の未来と市民社会の可能性(非営利組織評価研究会編 2008 900円)
先日紹介した「NPO新時代」の著者の田中さんが主宰している非営利組織評価研究会での議論を中心に、NPO法人の言論NPOがブックレットにまとめたものです。
「NPO新時代」での論点の背景や意味合いが、議論を通して伝わってきますので、並行して読まれると面白いです。
研究会のメンバーに加えて、ゲストとして、武田晴人さん、加藤紘一さん、野中郁次郎さん、上野真城子さん、辻中豊さん、ウォルフガング・パーぺさんが参加していますが、それぞれの思考がよく見えてきます。
「NPO新時代」の紹介でも書きましたが、わが国でNPO法が施行されてから10年がたちます。
その功罪がかなり見えてきましたが、それを踏まえて住民活動や市民活動はこれから変わっていくように思います。
しかし、NPOだけを見ていてはたぶん先は見えてこないでしょう。
その意味で、本書のような幅広い議論は示唆に富んでいます。
日本では、NPOの意味をあいまいなままにして、住民発想の現場視点のものも、市民社会志向のものも、一緒に語られていますが、両者は全く違ったものだという気がします。
サブシステムとしてのNPOや市民社会論ではなく、イノベーションとしての住民活動や市民活動、あるいは社会そのものの概念としての市民社会に、私は関心があるのですが、そうした視点から本書を読むと、それぞれのゲストの問題提起は示唆に富んでいます。
私が特に面白かったのは、辻中さんの「自治会、町内会の存在意味の大きさ」に関する指摘です。
辻中さんはこういっています。
自治会をはじめ、さまざまな団体をすべて含めると、日本ではものすごい地域ネットワークが張りめぐらされています。
報酬は年間2万円とか、それから少し出る、そういう微妙なお金で、民生委員や国勢調査の調査員などを含めて、皆が動いているのが日本の一つの現実です。
そうしたリゾーミックな市民社会をNPO法が壊してしまったような懸念を私は持っています。
上野さんの市民社会論も面白いです。
NPOがやるべきことは、市民社会で政策をちゃんと知り、社会をちゃんと知り、そこに声を上げていける市民をつくらなくてはいけないということ。それがノンプ・ロフィットセクターの責任であろうと思うのです。
私の関心事とは少し違いますが、今のNPO発想を基軸にするのであれば共感できます。
本書だけで読んでも面白いです。
コモンズ書店からも注文できます。
■ホルクハイマーの社会研究と初期ドイツ社会学(楠秀樹 社会評論社 3200円)
久しぶりに学術的な専門書を読みました。
著者の楠さんは、娘の友人のパートナーです。
一度、わが家にも来てくれたことがありますが、
楠さんがこうした分野の研究者であることは全く知りませんでした。
その楠さんが、昨年末に本書を贈ってくれました。
この分野は大いに関心のあるところなのですが、久しぶりの専門書であり、正直、苦戦しました。
しかし、知り合いの書いた本はしっかりと読んでこのコーナーで紹介するのが私のルールですので、読まないわけにはいきません。
年末から読み出し、暇さえあれば(幸いにもかなりあったのですが)本書を開いていましたが、速読の私も一向に進みません。
ところが、第4章になって突然視界が開けたように面白くなったのです。
読み終えた後は、この続きが読みたいと思ったほどです。
現代の社会を読み解くヒントがたくさん含まれています。
ある程度の覚悟は必要ですが、現代社会の先行きに関心のある方にお薦めします。
ところで、ホルクハイマーは恥ずかしながら、私はフランクフルト大学の社会研究所の所長だったことしか知りませんでした。
その主張や業績などは全く知らなかったのです。
ですから本書は私にとっては、すべて知らないことばかりでした。
しかし読んでいるうちに、なぜかとても親しみを感じ出しました。
その主張や方法論にも、とても共感できました。
ホルクハイマーはユダヤ系のドイツの社会学者です。
生まれは1895年。1930年にフランクフルト大学の社会研研究所の所長になり、
労働者の現状とファシズム的な心理を問う実証調査などに取り組んだドイツを代表する知識人の一人です。
母国を襲ったファッシズム(ナチズム)に対して、そしてさらにスターリン主義に対して自由のために闘った、信念の人でもあります。
いわゆるフランクフルト学派を代表する一人です。
ホルクハイマーの研究生活の出発点は現象学でしたが、そこから唯物論、社会学へと広がり、社会哲学へと向かっていきます。
本書はそうしたホルクハイマーの思想形成の過程を丁寧に追いかけていきます。
本書の帯に、「社会を批判する社会思想の原型が浮かび上がる」と書いてありますが、まさにその通りです。
内容はかなり専門的で難しいのですが、学生の頃学んだ懐かしい名前が次々と出てきますので、興味深く読み進められます。
それに、多様な思想が広がりだしていたワイマール時代のドイツの知的環境のなかで、ホルクハイマーが抱いた疑問や問題意識は、見事に現在の社会に繋がっているように感じます。
たとえば、近代の要素還元主義を超えたホロニックな発想や統治者の哲学とは対照的な現場からの哲学の芽を強く感じました。
もっとも、これは現代を生きている著者の楠さんの意識が影響しているのかもしれません。
あるいは、当時の社会学との差異化を目指していた、ホルクハイマーの社会研究の到達点の映像が重なっているのかもしれません。
しかし、いずれにしろ、そこで語られていることはこれからの時代を考える上でのヒントがたくさん含意されていることは間違いありません。
後半では、ドイツ社会学の成り立ちの経緯も垣間見られますが、これはとても興味深かったです。
私の貧弱な知識が、いろいろな意味で刺激を与えられ、頭の中で少しよみがえってくるような気にもなりました。
ホルクハイマーが、その後書いた『啓蒙の弁証法』も読んでみたくなりました。
専門的な学術書ですので、そう簡単にお勧めはできませんが、
社会を見る目を養うためにはとても頭が整理されます。
よかったらお読みください。
いつか楠さんに話を聴きたいと思っていますので、読まれた方でご希望の方がいたら連絡してください。
一緒に話をお聞きしましょう。
コモンズ書店からも注文できます。
■技術者の倫理入門第4版(杉本泰治・高城重厚 丸善 2008)
今年最初のご紹介は科学技術倫理フォーラム代表の杉本さんの心を込めた技術者倫理のテキストです。
以前、第3版を紹介したときにも書きましたが、この本には杉本さんの熱い思いがこもっているのです。
もちろん高城さんの思いもそうですが、杉本さんは同志だった高城さんを2006年に見送っています。
私も短期間ではありますが、高城さんと交流させてもらいましたが、
そのお人柄は実に魅力的で、もう少しいろいろとお話をお聞きしたかったと残念でなりません。
その高城さんの業績でもある曽木発電所遺稿の発見のエピソードが追加されています。
短い紹介ですが、そこに込められた著者たちの思いは胸に応えます。
本の内容に関しては、第3版の紹介文を読んでください。
多くの人に読んでほしい本の1冊です。
■世界の「聖人」「魔人」がよくわかる本(一条真也監修 PHP文庫 648円(税別))
「神社へ行こう」に続く、一条さんの最新監修本です。
一条さんは例によって、しっかりと「まえがき」を書いています。
本書は人間のカタログなのだ。だから、面白い。
「聖人」にしろ「魔人」にしろ、過剰な人間について知ることほど刺激的でワクワクすることはない。
なぜなら、わたしたちは人間だからだ。
人間にとって一番面白いものは人間に決まっているではないか。
わたしは、「面白いぞ人間!」と叫びたい気分である。
いかにも一条さんらしいです。
それにしてもいろんな人が登場してきます。
その数、聖人66人、魔人47人です。
聖人の数が多いのが不満ですが、
一条さんも書いているように、聖人と魔人は表裏一体の存在ですから、
そんなことは気にするのが間違いでしょう。
私には名前も知らなかった人も少なくありませんが、
まあ時間のある時にぱらぱらと読むと面白いです。
私にとっては、どちらかといえば、魔人編のほうに取り上げられた人のほうが魅力的でした。
気分転換に、たまにはこんな本もいかがでしょうか。
113人の聖人魔人のエピソードをまとめて読むのは、意外と刺激的です。
知っていたようで知らない、面白いエピソードにも出会います。
退屈している人にはお薦めします。
世界がちょっと広くなるかもしれません。
コモンズ書店
■NPO新時代(田中弥生 明石書店 2008)
久しぶりに共感できるNPO関係の本を読みました。
NPO業界本ではなく、市民社会に視点を置いたNPO論ですので、
NPO関係者だけではなく多くの人にぜひ読んで欲しい本です。
田中さんのNPO関係の本は何回かここでも紹介しました。
特に前回の「NPOが自立する日」は、NPO業界に新しい問題提起をするものでしたが、
本書は、その問題を解く基本的な視点と展望を与えてくれるものです。
NPO論というよりも、市民社会論として読むのがいいかもしれません。
副題は「市民性創造のために」とありますが、田中さんはそこにNPOの役割を期待しています。
田中さんは、こう書いています。
多くのNPOで経営技術や資金調達方法あるいは顧客開拓方法など、技術的な側面から様々な取り組みがなされ、実に頼もしく感じています。
しかし同時に、それだけでは問題の確信に届いていないと私は感じていました。
そして行き着いたのが
「NPOとは本来何をめざしていたのか。ほんものとして、めざすべきモデルはどこにあるのか」
という問いかけでした。
この問いの先にあったのは、日本の市民社会をどう再編するのかという課題でもあったのです。
田中さんがは、寄付やボランティアに対する再認識を呼びかけています。
NPOは市民性創造という役割を通して日本の市民社会再編に貢献するという、大きな可能性を秘めています。
そうした役割を果たすためには、まずNPOが参加者としての市民とのつながりをより太くしゆくことが重要であり、
そのためには、何よりも寄付やボランティアとのつながり方を再認識することが必要です。
NPO法人は急増しましたが、ボランティア人口はむしろ減少しているという統計もあります。
介護保険制度の導入に伴い、近隣の支え合いが消えてしまったという声もありましたが、
日本型のボランティア活動はNPOの広がりの中で変化してきているのかもしれません。
寄付文化に関しても、日本型の寄付文化が見落とされているように思います。
私自身は、田中さんとちょっと見方の違うところもありますが、
田中さんの主張は説得力もあり、実践的で、示唆に富んでいます。
PST(パブリック・サポート・テスト)を重視しているのは、田中さんの視点の所在を象徴しています。
PSTを中心においた市民社会の方向性もわかりやすく提案されています。
書きたいことはいろいろありますが、
何よりも、ぜひ本書を読んでほしいと思いますので、中途半端な紹介は差し控えます。
NPO関係者はもちろんですが、NPOに違和感をお持ちの方にも、あるいは企業関係者にも、お薦めしたい本です。
現場で地道に活動している人たちには、元気を与えてくれるはずです。
コモンズ書店経由でアマゾンからも購入できます。
目次などはそこで見てください。
■明治のお嬢さま(黒岩比佐子 角川選書
2008)
歴史は、その視座と視野によって、全く別の世界を見せてくれます。
黒岩さんの語る明治大正には、いつも新鮮な発見がありますが、
今回のテーマ「明治のお嬢さま」は、そのタイトルからして、新しい発想を予感させられます。
しかし、本書を開くまでにはいささかの時間が必要でした。
この本の内容などは、黒岩さんのブログを見てください。
書き出した動機やこの本への黒岩さんの思いが、実に素直に書かれています。
黒岩さんも書いていますが、本書は、
「女性史研究というようなことではなく、
あの当時の新聞や雑誌に実際に書かれていた記事から読み取れることを、
自分なりに整理して書いた」
ものです。
ですから実に生き生きとしていますし、いつものように、小さなエピソードや横道の話がふんだんに登場します。
黒岩さんの本の面白さの一つは、そこにあると私はいつも思っています。
それは、黒岩さんが膨大な資料の中に埋もれながら、その世界を楽しんでいることの証左でもあります。
黒岩さんは、前に取り組んだ村井弦斎(「食道楽の人 村井弦斎」)や国木田独歩(「編集者 国木田独歩の時代」)が編集に関わった、当時の『婦人世界』や『婦人画報』をかなり読んでいるようです。
つまり、その時代を生きながら、この本を書いたのだろうと思います。
黒岩さんは、
百年前に生きていなくてよかった
と言っています。
そこにも、決して観察者としてだけではない黒岩さんの姿勢を感じます。
先に書いたように、黒岩さんの本はともかくディテールが面白いのです。
ですから内容紹介は難しいのですが、今回は「面白さ」において、黒岩さんは自信を持っています。
ブログにこう書いています。
でき上がってみると、予想以上に面白い本になったので、自分でもびっくりしています。
黒岩さんの自信作です。
どこが面白いかは、ぜひ本書を手に取ってください。
「明治のお嬢さま」を通して、新しい明治、あるいは今の日本の底流が見えてきます。
この本がたくさん売れると、黒岩さんの次の本の資料収集活動が一段と高密度になるでしょう。
つまり次の作品の面白さが増していくということです。
その意味でもぜひ皆さん、購読してください。
コモンズ書店でも購入できます。
黒岩さんも、ブログで書いています。
ぜひ、皆さん買ってください!
■学校を辞めます(湯本雅典 合同出版 1200円(税別)
2008)
この本は私の友人の著書ではなく、たまたま出合った本ですが、紹介させてもらいたくなりました。
これまでの、そして現在の教育改革の本質が読み取れるからです。
CWSプライベートの教育時評でも紹介させてもらいましたが、
著者の湯本雅典さんは、1昨年まで、東京都の公立小学校の教員でした。
いまは、自主退職し、私塾「じゃがいもじゅく」を開いています。
この本は、そうした湯本さんの記録です。
現在の小中学校の実態や子どもたちの状況が生々しく伝わってきます。
この本の簡単な紹介は前述のブログをお読みいただくとして、ここでは本書の「はじめに」を引用させてもらいます。
やはり著者本人の言葉にこそ迫力があります。
僕が東京都の公立小学校の教員を自主退職した2006年、おなじ東京都で新人教員が2人、自ら命を絶った。
僕の退職は本意ではなかった。僕は学校という職場が好きだった。「通信教育」で教員免許をとった後、教員採用試験に合格した時の喜びは、今でも忘れることができない。
自死した2人の若い教員も、大きな希望を胸に抱いていたのだろうと思う。2人の悔しさは、僕の何倍、否、何十倍だったろう。
「うつ病」などの精神疾患で休職をした教員は、2006年度に4,765人にのぼり、過去最高を記録した(文部科学省発表)。
今、学校現場はどうなっているのか?
「教育改革」の大きな流れの中で、学校で働く教職員は生き生きと働けているのだろうか。そうならば、僕は退職を選択しなかったし、この二人の新人教員も自死をしなかっただろうと思う。
僕は、僕自身の経験を通して、今の学校現場がどうなっているのかを報告しようと思う。これは、僕個人の記録ではあるが、多くの現場教員の「叫び」でもある。
本文からも一つだけ引用させてもらいます。
今の学校は、教員が子どものことで悩むことが充分にできない状態にある。マスコミなどが、子どもや保護者が変わったという論調をしきりに流しているが、子どもや保護者が変わったのではない。国の教育行政が大きく変わったのである。
一言で言えば学校に「競争原理」を導入したことだ。子どもには学力向上と教員には職階制(教員の格差付け制度)である。
みなさんの周りでも起こっていることではないですか。
こうしたことは、学校のみならず、社会のいたるところで起こっていることなのかもしれません。
そう思って読むと、いろいろなことが見えてきます。
現在の教育改革の本質に、私たちは気づかなければいけないと思います。
それは決して子どもたちだけの問題ではないのです。
簡単に読める本です。
ぜひお薦めします。
コモンズ書店からもどうぞ。
■毎朝15分間の音読(百瀬昭次 エイチアンドアイ 1429円)
先日、日本経営道協会のフォーラムでお会いした百瀬さんが最近出版された本です。
百瀬さんは、教育の荒廃に危機感をもって、勤めていた会社を辞めて百瀬創造教育研究所を設立しました。
もう30年以上前の1976年です。
これまでの活動振りは、百瀬創造教育研究所のホームページをご覧ください。
本著は、百瀬さんの長年の実績を踏まえて、家庭の持ち味を生かした真の人材育成法について述べたものです。
それも極めて実践的に書かれていますので、だれでも今日から実現できます。
百瀬さんの出発点は、「子育ては偉業だ」と言うところから出発します。
そして同時に、「子どもたちは偉大だ」と考えています。
私が共感するのは、まさにその点です。
その2点さえしっかりしていれば、子育てはうまくいくでしょう。
その2点がしっかりしていなければ、今の日本のように少子化も家庭崩壊も学校荒廃も直らないでしょう。
教育の要諦は「人間学」の基本の修得にある、と百瀬さんは言います。
そして「子どもたちはずつと以前から「人間学」の基本を心底求めていた」のに、
世の親たちのみならず教育関係者たちまでもが、そのことに気づいていなかったというのです。
この点も同感です。
子どもたちは、大人以上に物事の本質を見極めます。
その時期にこそ、本質を見る目を応援することは大切です。
たぶん理解力も、大人たちより優れているでしょう。
では、具体的にはどうすればよいのか。
百瀬さんの提案する方法はいたって簡単です。
「人間学」の基本をうたった適切な手本となる本を一冊選び、それを毎日「15分間」音読すること、
これを継続し、中身がすっかり頭に入るまで(マスターできるまで)貫徹することです。
この考えに共感して実践している学校がいくつかあります。
音読する本には、百瀬さんの書いた『君たちは偉大だ』が使われています。
百瀬さんの提案のポイントは、『君たちは偉大だ』の音読の勧めにあるのです。
こう書くと、自分の著書の勧めではないかと受け取る人もいるかもしれません。
しかし、そうではありません。
子どもに向けた人間学の本も含めて、それが百瀬さんの提案する子育て法なのです。
実践した子どもたちの反応はとても感動的です。
その結果、この活動は広がりだしているようです。
百瀬さんの提案する方法は、子育てに限った話ではないように思います。
企業における人材育成にも参考になるはずです。
音読の効用は大きいはずです。
子どもをお持ちの方や教育関係者にはお薦めします。
コモンズ書店からも購入できます。
■「開運!パワースポット「神社」へ行こう」
一条真也監修 PHP文庫 533円
今回はちょっと軽い本の紹介です。
最近、若い人の中で神社への関心が高まっているのだそうです。
そんな動きに合わせて出版されたのが、この本です。
ですから若い人向けの軽いつくりになっています。
いつもとちょっと場違いの本ではあるのですが、監修が一条真也さんであり、
しかも私も好きな神社の関係の本ですので、紹介させてもらうことにしました。
一条さんの「神社論」があれば、おもしろいと思うのですが、
今回は監修者のため、いつものような示唆に富む神社論はありません。
しかし、内容は結構おもしろく、いわば「神社入門書」になっています。
全体は、「神社のそぼくな疑問20」「儀式と行事」「歴史と種類」「全国神社めぐり」の4部構成です。
それぞれが項目別に、簡潔に読みやすく書かれていますので、気楽に読めます。
興味を持った項目をぱらぱらと読むのもいいです。
たとえば「おみくじの吉と凶の割合はどれくらい
の頁を開くと、浅草寺の凶の割合は30%、日枝神社は0%などと言う図が出てきます。
参拝の作法や祝詞の解説もあります。
この本を読んでおくと、神社の風景が少し良く見えてくるかもしれません。
いつか一条さんには、本格的な神社論を期待しています。
■『なぜ、今「子育ち支援」なのか−子どもと大人が育ちあうしくみと空間づくり』
子育ち学ネットワーク 学文社 1900円
次々と友人が本を出版するので、自分が関わった本を紹介するのが遅れてしまいました。
出版されてから2か月も経ちましたが、紹介させてもらいます。
子育ち学ネットワークが関わって出版した4冊目の本になります。
今回も、深作拓郎さんが代表をつとめる子育ち学ネットワークのコアメンバーが分担執筆しています。
私もコラムに寄稿させてもらいました。
深作さんの紹介文を引用させてもらいます。
「子育ち」視点に立ち、さまざまな視野から子ども自身が育つ力を尊重した地域での豊かな実践と先端の研究を積極的に取り入れて結合させていこうと若手の研究者と実践者が集い、2年以上の交流研究を続けてきました。
その想いと研究活動の一端をまとめたものです。
3部構成となっていて、第1部の総論編では、「子育ち」の概念を教育・発達心理・政策動向から探っています。
第2部は、全国各地で取り組まれている子育ち支援の実践から5本を選び紹介しています。
これらの実践には、いくつかの共通項があります。
それは、子どもの育ちを支えるための視点であり、それに取り組む大人の姿勢でもあります。
第3部は、編集委員によるそれぞれの視点から探る「子育ち」の論考です。
子どもの育ちは、教育学や心理学だけは網羅できない学際的要素があります。そこへのチャレンジの意味も兼ねています。
まだ途中経過ですので、理論も稚拙な域を拭いきれませんが、意気込みを汲み取っていただき、忌憚の無いご意見をいただければと思います。
事務局長の星野一人さんによる「子育ち・子育てをめぐる政策の15年史」も掲載されていますが、国としての子育て哲学が垣間見えてきます。
国の少子化対策には大きな違和感を感じざるを得ません。
星野さんは、こう書いています(文章は一部変更)。
日本は子どもの権利条約を批准しているのですが、その後現在に至るまで、同条約の理念をふまえて行われた政策はきわめて少ないのが特徴です。国連子どもの権利委員会でも、二度にわたり日本政府に対して、多くの懸念事項を表明し、勧告も行われています。
すっかり定着してしまった「心の教育」「奉仕活動」といったキーワードのなかで、少子化への対策と新しい「公共」の創出という「社会的要請」のなかで、地域社会を舞台とした子育ち・子育て関連の施策群が展開されていますが、それらの施策は依然として「大人の都合」で行われていたに過ぎないといえるのではないでしょうか。
子育ち・子育て施策を検討するにあたっては「地方自治」の視点を忘れてはならないことを付言しておきたいと思います。基礎自治体がどのような子育ち・子育てのプランを描いていくのか、子どもや親、地域住民との共同という視点もふまえながら、今後の取り組みに期待したいところです。
星野さんは、具体的な施策はいわゆる有識者ばかりでなく、子どもの現場に寄り添ってきた職員や地域住民を交えて、子どもの育ちを第一義的に考慮した内容のものが打ち出される必要だと書いています。
全く同感です。
長年、現場に寄り添って活動してきた星野さんの言葉には、とても共感できるものがあります。
だからこそ、子育て視点ではなく、子育ち哲学が必要になってきているように思います。
子育ち学ネットワークでは、この本をテキストのしたワークショップの展開を応援したいそうです。
もし開催を企画してくれるところがあれば、ご連絡ください。
ちなみに過去に出版された本は次の3冊です。
●「子育ち支援の創造」
小木美代子、立柳聡、深作拓郎、星野一人編著 学文社
●「子どもの豊かな育ちと地域支援」
深作拓郎ほか 学文社
●「子育ち学へのアプローチ」小木美代子
立柳聡 深作拓郎 エイデル研究所
コモンズ書籍経由でアマゾンから購入できます。
■会社員のためのCSR経営
清水正道ほか 第一法規 1714円
先週、紹介したCC戦略の本の著者の一人でもある、清水さんも参加した 琉球大学での連続講座をもとにして編集された本です。
私は昨今のCSR議論には大きな違和感をもっていますが、この本は共感できるところが多々ありました。
広義の記録をベースにしているので、とても読みやすいですし、編集の視点に好感が持てました。
たとえば、本書の「おわりに」に、著者の一人、公認会計士の大久保和孝さんはこう書いています。
今の経済社会を一言で言い表すと、「無知にして形式主義に走り、社会全体が思考停止状態に
陥っている」と表現せざるをえないのかもしれません。
形式論理と制度重視でCSRを語っている人が多いのに辟易している私としては、あれっと思いました。
大久保さんは本分で、CSRをこう定義しています。
企業が社会からの期待や要請を正しく理解したうえで、
事業活動を通じた対応を図ることで、結果として当該組織の持続的成長を実現すること。
続いて13人の人がCSR経営に関して論じていますが、いずれにもしっかりしたメッセージを感じます。
CSR論議のきらいな私は、清水さんのところだけ読もうと思っていたのですが、大久保さんの最初の「経営の本質としてのCSR」のメッセージに魅かれて。ついつい全部を一気に読んでしまいました。
危機管理とコンプライアンスについても郷原信郎さんが明確に切り込んでいます。
そこで紹介されている不二家事件の実態は私にはいささかの驚きでした。
まあ、そんな面白いメッセージがいろいろとあります。
退屈なCSR論が多い中で、本書はライブで具体的、しかもホリスティックな視野が感じられます。
CSRに関心のある方にはぜひお薦めしたいです。
清水さんは、CSRとコミュニケーション戦略を書いていますが、
清水さんが目指すCSRや企業コミュニケーション戦略の方向性が明確に示されています。
ダイナミックなCSR、ダイナミックな関係性を清水さんはメッセージしています。
週間報告にも書きましたが、この分野で清水さんが新しい取り組みを始めるような気配を感じます。
清水さんの次の本が待ち遠しいです。
企業関係者にぜひお薦めしたい1冊です。
コモンズ書店からも購入できます。
■「CC戦略の理論と実践−環境・CSR・共生」
清水正道ほか 同友館 2600円
日本広報学会時代の友人たちが共著で書いた、コーポレート・コミュニケーション(CC)に関する最新の書籍です。
企業にとってのCC戦略の重要性はますます高まっています。
競争戦略や成長戦略を支えていくのは、まさにCC活動です。
ただ重要なのは、CCを「企業からの情報発信」と捉えるのではなく、「組織と人との関係性」と捉える視点をもつことです。
著者たちは、長年、企業の広報活動の現場にも関わってきた人たちですので、
本書では単なる机上論ではなく、そうした現実の流れを踏まえた、ライブなCC論が語られています。
これからの企業のあり方を考える上での示唆がたくさん読み取れます。
本書は企業広報だけに焦点をあてたものではありません。
目次を見ればわかりますが、行政やNPOのコミュニケーション戦略にも言及しています。
第1章 企業社会の変容と広報戦略への視点
第2章 コーポレート・コミュニケーション
第3章 企業の社会活動とコミュニケーション
第4章 新しい時代の広報・コミュニケーション
第5章 行政・NPOのコミュニケーション
第6章 広報・コミュニケーションマネジメント
第7章 広報・コミュニケーションの理論と歴史
議論は広範囲にわたっていますが、それぞれに新鮮味もあります。
書名に「環境・CSR・共生」とついているように、新しい話題もしっかりと取り上げられています。
現代の広報活動の戦略化を目指した体系整理や実践的な戦略論ですので、
企業の経営者や経営参謀は多くの実践的なヒントが得られるでしょう。
しかし、それだけではありません。
広報・コミュニケーションマネジメントでは、ハーバーマスの「コミュニケーション的権力」やハンナ・アレントまで紹介されていますし、
終章の「広報・コミュニケーションの理論と歴史」には、プラトンやアウグスチヌスまで登場します。
もちろん東洋思想におけるコミュニケーションも語られています。
本書が単に平板な実務書になっていないのは、著者たちの持っている視野の広がりやビジョンの豊かさの表われではないかと思います。
「組織と人との関係性」としてのコミュニケーション戦略論は、これからの企業の大きなテーマになるでしょう。
私自身は、コミュニケーションとは信頼性の向上を通して社会コストを削減することだと考えていますが、
もしそうであれば、社会との関係、人間との関係において、語られる必要があります。
そうした視点からも、いろいろと示唆が得られるCC論です。
コモンズ書店からも購入できます。
■歴史のかげにグルメあり
黒岩比佐子 文春新書 800円
黒岩さんの最新作です。
元祖食育の村井弦斎の評伝を著して以来、黒岩さんは食に関心を深めているようで、「食育のススメ」に続く食シリーズ第3弾です。
食は、文化や生活の基本ですから、そこを通してあらゆるものが見えてきます。
それもたぶん「本音」で見えてくるのが面白いところでしょう。
本書では、幕末のペリー来航から、明治維新、大津事件、日清・日露戦争、明治末期の大逆事件まで、明治の著名な人物とさまざまな事件を取り上げながら、食と歴史を絡ませた興味深い12の物語が語られています。
黒岩さんは、「午餐合や晩餐合のメニューからは、主催者がその料理や酒にこめた思いが伝わってきます。明治人のグルメ度の高さにも驚かずにはいられません。その一方で、捕虜収容所の食事や監欺の食事も、さまざまなことを物語っています。調べていくにつれて、これまで知っているつもりだった事件の別の意味に気づくことになり、たくさんの発見がありました。胸を躍らせながら、楽しく書くことができました」と書いてきました。
読んでみて、そのことがよくわかります。
こういうエピソードも一緒に歴史が学べたら、歴史好きの人は増えるでしょうし、きっと忘れないでしょう。
今まで全く私には存在感のなかったニコライ皇太子の表情が伝わってきましたし、本書に登場する人たちへの好感度も増しました。
明治天皇の人間的な側面も語られていて、とても好感をもてました。
私に一番面白かった話を一つだけ紹介させてもらいます。
幸徳秋水に関して書かれた「アナーキストの菜食論」の中に出てくる話です。
犬や猫が好きな堺利彦は、動物虐待防止会の会員になったことで、動物を殺してその肉を食べることへの感情が鋭敏になった。だが、次第に社会主義の思想から、肉食そのものに対する疑問が生じてきたのだった。堺によれば、世の競争論者は生物界の生存競争を見て、人間界の階級制度や貧富の格差を是認しているが、社会主義者は弱い者を踏み倒さず、自由競争の代わりに相互扶助で、安楽で競争のない世界をつくろうと望んでいるのだという。
そのため、社会主義研究会では、毎回のように肉食問題が持ち上がり、「人間と動物との境界線は何処に引く乎」「肉食を廃した所で、植物も矢張り生物では無い乎、(中略)然らば人間は結局何を食物とすべきである乎」などの質問が相次いだ。
なんだかほのぼのしてきます。
このまま進めば、日本の社会主義も新しい時代を開く役割を果たせたでしょうね。
私はかなり本気でそう考えました。
あまり賛成はしてもらえないかもしれませんね。
楽しい本ですので、グルメに興味のない人にもお薦めします。
コモンズ書店からアマゾンでの購入もできます。
■「働きがいのある会社‐日本におけるベスト25」
斎藤智文 労務行政 2500円(税込)
Great Place to Work(GPTW)はというのをご存知でしょうか。
従業員の働きがいの視点から、会社を評価し、会社をもっともっと魅力的にしていこうという活動です。
本部はアメリカにありますが、この数年世界中に広がりだしている活動です。
この活動を日本に紹介し、日本での活動を推進してきたのが、斎藤さんです。
斎藤さんはこれまで日本能率協会コンサルティングで、この活動に取り組んできましたが、
今度、同社からスピンアウトし、働きがいのある会社研究所を設立しました。
Great Place to Workの思想をさらに広げていきたいというのが斎藤さんの思いです。
その斎藤さんが、最近出版したのが本書です。
神戸大学大学院の金井教授は、「Great Place to Workの日本デビューに寄せて」という文章を本書に寄せています。
斎藤さんと出会ったのはもう20年近く前になるでしょうか。
当時、私はまだ企業に関わる仕事に大きな魅力を感じており、日本能率協会ともいろいろと接点がありました。
その後、私自身は企業の動きに失望し、まちづくりやNPOの世界にのめりこんでいましたが、
斎藤さんの名前は雑誌などで時々は意見していました。
一昨年でしょうか、次世代育成研究会で斎藤さんに久しぶりに会いました。
そしてGreat Place to Workに取り組んでいることを知りました。
25年前に東レで実現したかったことの一つです。
斎藤さんからは時々情報をもらっていましたが、斎藤さんも独立されたので、
一度お会いしたいと思っていたら、本書を持ってオフィスに来てくれました。
いろいろと話してみて、斉藤さんの経営観は私のそれと極めて近いことがわかりました。
本書を読んで、ますますそう思いました。
本書は、経営に発想の転換を求めています。
ぜひ多くの企業人、あるいは組織人(行政やNPO)に読んでほしい本です。
Great Place to Work調査(働きがいのある会社)調査は、1998年以来、毎年アメリカで行われ、
その結果は「フォーチュン」に掲載され、話題を呼んでいます。
以前、従業員のモチベーションの高さでサウスウエスト航空が話題になりましたが、
それはこの調査の第1回目で、同社がベスト1になったからだそうです。
日本でも斎藤さんたちが中心になって3年前から始まり、結果は毎年、日経ビジネスで発表されています。
本書は日米の調査結果を踏まえながら、Great Place to Workの考え方とその実現策を理論的かつ具体的にまとめたものです。
事例も豊富ですし、なによりもこれまでの調査実績を踏まえての、
斎藤さんの経営論(Great Place to Workの理論的背景と言ってもいいですが)が示唆に富んでいます。
長くなるので、そのいくつかを箇条書きで紹介します。
・「働きがい」には会社全体を覆う「信頼」の文化が不可欠である。
・Work Harder時代から、Work Smarter時代を経て、今はWork Togetherの時代。
・従業員以外の何も新しい価値を生み出すことはできない。
・「組織における働きがい」と「仕事のやりがい」は別のもの。
どうですか、読みたくなりませんか。
日本企業の強みと弱みに関しても、たくさんの示唆を得ることができます。
私には共感するところが実にたくさんありました。
おそらくそれは、この調査が「従業員の生の声」をベースに組み立てられているからだろうと思います。
現場にこそ真実はある。
これは私の信条の一つです。
Great Place to Work活動は、来年からきっと本格的に拡がっていくでしょう。
いえ、そうしなければ、日本の企業は疲弊していくばかりです。
Great Place to Work活動が、日本の企業を変えていくことに期待したいです。
斎藤さんにがんばってもらわなければいけません。
私もまた久しぶりに、企業に関わろうかという気が出てきたような気がします。
コモンズ書店からアマゾンでの購入もできます。
企業を変えたいと思っている方はぜひお読みください。
動き方がきっとわかってきます。
■「新」平和主義の論理
(川本兼 明石書店 2008)
平和をライフワークにされてきた川本さんが、いよいよ実践に向けて動き出す段階に入りました。
本書は、その決意宣言書でもあります。
川本さんの著書に関しては、毎回、このコーナーで紹介してきました。
これまでに著書は次をご覧ください。
川本さんは、これまでは主に若者に向けて語りかけてきましたが、私のような世代のものが読んでも示唆に富むものでした。
残念ながら読者が多いとはいえない状況です。
今回は、読者のターゲットを変えました。
これまでの著作活動の、いわば集大成です。
川本さんは、高校の教師ですが、それとこの活動とは峻別して考えています。
ですからこれまでは執筆活動が中心でした。
しかし、その川本さんも間もなく定年です。
たぶん実践に向かうでしょう。
今の時代状況は、それを求めています。
いま動かなければ、また繰り返しです。
川本さんの新平和主義の特徴は次の3点です。
@「戦争そのもの」「戦争ができる国家」の否定
A「希望する平和」ではなく「獲得する平和」という平和観
B基本的人権としての平和権
これらは、このサイトや私のブログの根底にある、組織起点の発想から個人起点の発想へという世界像のパラダイムシフトと符号しています。
本書の内容の紹介は今回はやめます。
ぜひ読んでほしいからです。
それに代えて、はじめにで川本さんが書かれていることを少し長いですが、一部を省略させてもらいながら、引用させてもらいます。
ここ数年の間私は、主に若い読者を対象に本を書いてきました。
これからの日本や世界を担っていく若い読者に私と一緒に考えていって欲しいと考えたからです。
しかし、この本は、「戦争を知らない『元』子供たち」であるわが世代を対象に書きました。
その理由は、現在の日本の状況を見て、私たちの世代が本当にこのような国を作ろうと思ったかを問いたいからです。
「戦争を知らない『元』子供たち」たちは、戦争体験を通じて獲得した日本国民の戦後の「感覚」の真っ只中で育っています。
そして、「戦争を知らない『元』子供たち」は、学生運動などを通じてかつては戦後の日本を作ろうと考えました。
その私たちの世代が、本当にこのような国を作ろうと思っていたのか?
防衛庁が防衛省になり、海外派遣が自衛隊の本来任務になってしまった国。
すべての学校で「君が代」を歌うことが強制されていても何ら問題にされない国。
「勝ち組」「負け組」という言葉が情け容赦なく使われるようになってしまった国。
貧富の差がこれほどに拡大してしまっているのに労働組合がただ傍観しているしかできない国。
「革新」という言葉が姿を消し、二大政党が大連立を組むための試みまでもが行われる国。
そして、何よりも、学生や若者が何事に対しても自らの意思を表明しなくなってしまっている国……。
戦争体験を通じて獲得した日本国民の戦後の「感覚」は、多くの点ですでに西欧型民主主義やソ連型社会主義(=社会主義型民主主義)の考え方を超えていた。
しかし、わが国民はそれを表す言葉(ロゴス)や論理(ロゴス)や普遍原理(ロゴス)を持ってはおらず、そこでわが国は、その日本国民の「感覚」とは異なる方向へと歩むことになってしまった。
したがって、「戦争を知らない『元』子供たち」は日本国民の戦後の「感覚」に「言葉(ロゴス)」を与えなければならず、そしてもしそのことが可能であれば、日本国民は本当の意味での国際貢献を行えるようになり、世界をリードすることになる。
「戦争を知らない『元』子供たち」は、子供の頃、「戦争を知っている大人たち」に「どうして反対しなかったのか」「どうして抵抗しなかったのか」と問いかけました。
そのことが大人たちをいらつかせ、そのいらつきから発せられる「戦争も知らないくせに…」という言葉に対して、「戦争を知らない子供たち」の歌が生まれたのですが、しかし、これからは私たちの世代が「どうして反対しなかったのか」「どうして抵抗しなかったのか」と問われかねません。
そこで私は、この本でわが世代に本当にこのような国を作ろうと思ったかを問い、そして「戦後日本の再構築」を呼びかけたいのです。
読まなければという気になったら、ぜひお読みください。
感想なども聞かせてもらえるとうれしいです。
川本さんにお願いして、一度、話を聴く会を開催したいと思っています。
関心のある方はご連絡ください。
5人集まったら開催する予定です。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「つくってみよう まちの安全・安心マップ」
傘木宏夫 自治体研究社 1333円(税別)
傘木さんは、長野県の大町市に拠点を置く、NPO地域づくり工房の代表ですが、
地元でまちづくり活動に取り組みながら、全国的にもさまざまな活動をされています。
私が知り合ったのは、コムケア活動のおかげですが、
そこで傘木さんが企画したプロジェクトに関心を持ったのが最初です。
そのプロジェクトは残念ながら予想外の「事件」によって傘木さんの思うようには展開できなかったのですが、
その時の傘木さんの対応の姿勢がとても心に残ったのです。
プロジェクトは成功するに越したことはありませんが、
それ以上に大切なのはプロセスであり考え方だと思っている私には、とても印象に残りました。
その後、傘木さんが主催する会にゲストとして呼ばれたことがあります。
地域に立脚して、住民主役の姿勢で地域づくりに取り組んでいる傘木さんの誠実さを感じました。
しかも傘木さんはそうした活動と並行して、地域づくり関係の研究所などにも参加しながら、
現場に埋没することなく、その世界を広げ深めているのです。
いわゆる「土の人」でもあり「風の人」でもあるのです。
その傘木さんから、新著が送られてきました。
それが、この本です。
「安全・安心マップ」。まさにいま各地で求められているものです。
傘木さんの実際の体験を基本においた実践書ですから、とても読みやすく説得力があります。
協働が新しい段階に入ってきたのだと、私はこの本を読んで実感しました。
この本で紹介されているのは、子どもやお年寄りがむしろ主役になって地域づくりの取り組む事例ですが、そこでは行政主導の形式的な協働のまちづくりではなく、住民同士の協働の実践への展望が見えてきます。
地道な活動を重ねてきた傘木さんならではの、思想を背景にした実践書です。
「安全・安心マップ」は、完成したマップが重要なのではありません。
マップづくりのプロセスがとても大きな意味を持っています。
私も数年前、自治会長を引き受けた時に、「安全・安心マップ」の取り組もうと思いました。
残念ながら、その時は実現できませんでしたが、この本があれば少し違った展開ができたかもしれません。
自治会や学校、あるいは老人会などで、
この本を参考に、各地の「安全・安心マップ」づくりが広がるといいなと思います。
子育て関係のNPOやグループでも、ぜひ取り組むといいのではないかと思います。
あんまり本の内容紹介にはなっていませんが、とても良い本です。
まちづくりや暮らしに関心のある人にお薦めします。
■「新・挑戦する独創企業」
浜銀総合研究所経営コンサルティング部編著 プレジデント社 1800円(税別)
昨年、この欄でもご紹介した、「挑戦する独創企業」の続編です。
浜銀総合研究所経営コンサルティング部は、「先見性と創造性と専門性を発揮し、幅広い情報の提供を通じて地域の将来の発展に貢献する」ことをミッションに、主に中小企業を対象に、現場に足を踏み入れての問題解決支援のコンサルティング活動に取り組んでいます。
そこで出会った元気な企業を、その独創性に主に着目して紹介してくれているのが本書です。
この本の編集の中心になっている浜銀総合研究所の寺本明輝さんのメッセージが、ますます冴えてきています。
寺本さんは、これまでの豊富な事例体験から、こういいます。
独創企業に見られる特徴的な企業文化を抽出していくと、改めて植物の生き方に似ていることに気づく。
厳しい環境変化の中にあって、風向き(外部環境)はなかなか変えられない。
しかし、根の張り方(組織能力)を変えることは十分可能なはずだ。
植物の生き方にも通じる、 独創企業の環境対応のマネジメントには、中小企業が存続・発展し続けるためのヒントが隠されている。
こう書かれている第1章「植物の生き方に学ぶ中小企業経営」は、とても示唆に富んでいます。
中小企業経営とありますが、大企業にとっても学ぶことは多いです。
つづいて、キラリと輝く独創企業19社の事例が、「経営理念とビジョン」「事業の仕組み」「組織とマネジメント」「技術と技能」「製品(商品)開発力」という5つの切り口で紹介されています。
いずれの事例も面白いですが、それぞれに、前著と同じように、寺本さんの解題的なコメントがついています。
たくさんの企業経営現場に触れ、多くの企業経営者に会っている寺本さんの心身から発せられているメッセージだけに、説得力もありますし、含蓄もあります。
どれだけ消化できるかは、むしろ読者の問題かもしれません。
寺本さんは、こうも書いています。
成熟化した社会において、質的向上はさまざまな局面で問われている。
しかしながら、企業経営の現場では、まだまだ売上高、生産高、シェアなど量の追求に躍起になっているのが現実だ。
その結果、価格競争による利益不足が差別化投資の不足を招くという悪循環に陥っている企業が少なくない。
量の追求に血眼になっている限り、価格競争という体力消耗戦から抜け出すことはできない。
経営資源の量で大企業に劣る中小企業が、体力消耗戦に挑んでも勝ち目がないのは明らかだ。
成熟経済の時代においては、独創化に成功した企業だけが存続・発展を許されるのである。
共感できます。
そしてこれは、単に大企業に対する中小企業の戦略ではなく、企業そのもののあり方へのメッセージだと思います。
企業経営に関わる皆さんに、ぜひ読んでいただきたい1冊です。
現場の知がふんだんに感じ取れるはずです。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「UD革命―思いやりの復権」
ばばこういち+安藤千賀 リベルタ出版 1800円
CSテレビの「よみがえれニッポン」の番組で、
6年以上にわたって、UD.ユニバーサルデザインに取り組んでいるのが、ばばさんと安藤さんです。
私もその番組には何回か出演しましたが、
お2人の関心は、デザインではなくて、思想としてのユニバーサルデザインなのです。
したがって当初はいささかの違和感がありましたが、そのうちに、私もその情熱に取り込まれてしまいました。
それに6年も継続して取り組んでいる姿勢は、それだけでも感心します。
この6年間の活動を踏まえた、いわば中間報告が本書です。
お2人のユニバーサルデザイン論がとても具体的に語られています。
思想としてのユニバーサルデザインですから、
プロダクトデザインの話よりももっと幅広い世界が語られています。
法テラス病院や診療所の話、行政やまちづくりの話などが、とてもわかりやすく紹介されています。
ねじれ国会はUD的などというメッセージもあります。
私が関わった美野里町(現小美玉市)の文化センターの話も出てきます。
社会派ジャーナリストのばばさんのシャープな目とフットワーク抜群の若い安藤さんの素直な目が、
とてもいいバランスで組み合わさっているように思います。
この番組に関わった人たちの、それぞれのユニバーサルデザイン論もありますが、
それぞれが勝手に書いているのが愉快です。
ユニバーサルデザインの本質の一つは「寛容さ」であり、
昨今のユニバーサルデザインの動きには多様性が欠落しているような気がしている私としては、
この部分にこそ、ばばさんのユニバーサルデザイン論の本質が見えるような気もしました。
しかし、ばばさんがメッセージしたいことは明確です。
最終章でばばさんはこう書いています。
経済力や軍事力が力の本質として存在する中で、
国際的なリーダーシップをとるために、私はユニバーサルデザインを国是にして掲げることを提唱したい。
「相手の立場で考え」「対話と参加」を大切にするユニバーサルデザインの思想は、
地球人にとって何よりも大事な地球益第一の運動につながる。
国是としてのユニバーサルデザインとは、
日本が環境保全を積極的に推進し、世界平和のために戦争を起こさぬ断固たる姿勢を貫くことである。
その意味で日本国憲法は、ユニバーサルデザインの思想そのものだと言えるだろう。
実例も多くて、読みやすい本ですので、夏休みの合間にでもぜひお読みください。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「戦争絶滅へ、人間復活へ」
むのたけじ 聞き手黒岩比佐子 岩波新書 2008
「食育のススメ」の黒岩比佐子さんの尽力で実現した、たぶん後世に残る1冊です。
黒岩さんからはむのたけじさんのお話を何回か聞いていました。
いつかきっと本になるだろうなと思っていたら、黒岩さんが聞き手になっての本になりました。
最高の聞き手とめぐり合えたむのさんの幸せと社会の幸運をとてもうれしく思います。
少し褒めすぎのように思えるかもしれませんが、本書を読んでもらえれば、きっと納得してもらえるでしょう。
93歳のむのさんの体験に裏付けられたメッセージはいずれも心に響きます。
そして確信を持った理想への姿勢が伝わってきて、元気づけられます。
私の目指す生き方とこれほどに重なっていたのかと、改めて驚きました。
もちろん私はまだ、その目指す生き方には程遠い生き方でしかありませんが、最近いささかめげていたので、大きな元気をもらった気分です。
日本は新憲法で完全に交戦権を奪われた。憲法9条は、軍国日本に対する死刑判決だとむのさんは言います。
国家への死刑判決。
アメリカにとっては、実に皮肉な話ですが、国家を否定された日本のその後の歩みは、まさにそれに符合しています。
そして、むのさんはこういいます。
「戦争を永久に放棄する」という文字通りに、憲法9条を実現するためには、私たち一人ひとりがどんな生き方をしなければいけないのか。それを考えるところから、人類の平和への道しるべが見えてくるのはないか。
私なりに解釈すれば、国家から自由になる生き方です。
さらにこうもいいます。
もう一度、一人、一つ、一個というところから始めよう、ということです。
結局、大事なのは、私を救えるのは私以外にないということです。私は私であり、私自身を大事にして自分に誇りを感じ、志をもって生きるということ。そうすると、他の人のこともよく考えることができる。自分を大事に思う人間でなければ、他人を大事にすることもできません。結局、人を変えるものはやはり自分で、他力によって人は変わりません。
元気づけられます。
すべての出発点は、自分の生き方なのです。
現代の社会に対しても、むのさんは述べています。
私はこれまで93年も生きてきたけれども、日本の社会がこんなにもそわそわして落ち着きがなくなったのは、見たことがない。なにもかもが細切れに切れてしまって、バラバラになっている。だから、いまの若い世代の人、20代や30代の人たちがわが身を落ち着けることができず、非常にそわそわしているというのは、彼らが悪いのではなくて、社会の状況がそうさせているのだろうと思う。
この視点に立たない限り、昨今のさまざまな事件の本質は見えてこないと私も思います。
きりがないですね。
ここで引用させてもらったのは、ほんの一部です。
こういうメッセージがふんだんにちりばめられている本です。
聞き手の黒岩さんの発言にもたくさんの示唆を感じます。
単なる聞き手ではなく、引出し手であり、むのさんに異を唱えることも含めて、むのさんの発言と共振しているのが読んでいて気持ちがいいです。
現場に立脚している黒岩さんの現代への憤りも時に感じられますが、まあ、それは読んでのお楽しみです。
ぜひ多くの人に読んでほしいです。
近くの書店で購入して読んでください。
新書ですからすぐ読めますし、コーヒー2杯分で購入できます。
近くに書店がない場合は、アマゾンで申し込んでください。
次のところから簡単に申し込めます。
戦争絶滅へ、人間復活へ―93歳・ジャーナリストの発言
(岩波新書 新赤版 1140)
ぜひ読んでほしい1冊です。
そして生き方を少しでも変えてもらえるとうれしいです。
自分を大切にする生き方に、です。
私たちにできることは、ほんとうにたくさんあるのですから。
*黒岩さんが、日本近代文学館主催・夏の文学教室で、.「1905年、戒厳令下の東京」の講演をします。
会場は有楽町駅すぐのビックカメラ7階「よみうりホール」。詳しくは日本近代文学館のホームページをご覧ください。
コモンズ書店経由でアマゾンから購入できます。
■「法則の法則―成功は「引き寄せ」られるか」
一条真也 三五館 2008年 1500円
一条さんから本書が贈られてきた時、「やっぱり」と思いました。
一条さんからは、この本の構想は聞いたことはなかったのですが、
何となく一条さんがいつか書くだろうなと思っていた書名の本だったからです。
しかし読んでみたら、私が予想していた内容を超えていました。
一条さんがこれまでずっとメッセージしてきたことが結論として書かれていたのです。
それは一条さんの「究極の成功法則」です。
ハートフル・ソサエティの基本原則と言ってもいいかもしれません。
一条さんは、メールでこう書いてきてくれました。
お送りした『法則の法則』ですが、自然科学・社会科学・人文科学の境界、
あるいは文系・理系の境界を超えた「リベラル・アーツ」の書を意識して書きました。
結論はおそらく意外に思われることでしょうが、わたしの本心そのままです。
『般若心経』『論語』『聖書』に、『国富論』『人口論』『資本論』・・・と、
古今東西の名著を「法則」というキーワードで読み解いた、
小生なりのグレートブック・ガイドともなっています。
佐藤さんのお好きなアダム・スミスの『道徳感情論』も出てきますよ。
本書は、「法則ってなんだろう?」という問いかけから始まります。
そして、「これから、私と一緒に「法則」をめぐる不思議な旅に出かけませんか」と誘います。
そして、旅の終わりには「あなたはすべての「法則」を貫く「法則の法則」について知ることでしょう」と約束してくれるのです。
その約束は少なくとも私には満足できるものでした。
もっともあまりにも素直すぎて、不満な人もいるかもしれません。
それを見越して、一条さんは自分で「結論はおそらく意外と思われるでしょう」と言っているのかもしれませんが、
私には極めて納得できる結論でした。
もう一条さんの世界にはまってしまっているからかもしれません。
しかし、それが本書の結論に、これほど「あっけらかん」と置かれるとは、思ってもいませんでした。
それが、私の「予想」を超えていたところです。
その「究極の成功法則」は2つありますが、ここで紹介するのは差し控えます。
本書を読んでいって、そこにたどり着くのが一番いいと思いますので。
そこに至るまでの「法則の旅」は面白いですし、いろんなヒントに出会えるはずです。
いくつかのキーワードを書いておきます。
「万有引力の法則」から「引き寄せの法則」へ
「求めよ、さらば与えられん」と「足るを知る、感謝のこころ」
黒魔術と白魔術
仏教と現代物理学
なんだか読みたくなりませんか。
最後に一条さんはこう書いています(一部省略)。
わたしにはいくつかの自分なりの「法則」のようなものがあります。
そうした「プチ法則」は、わたしが生きていく上で大切な支えとなっています。
結局、「法則」は人間が生きていくために役に立つものでなければならないと、私は考えます。
人間を幸せにするもの、人間を元気にするもの、人間を励ますもの、
そんな「プチ法則」たちをこれからも見つけていきたいと思います。
そして、みなさんにも、きっとそんな「プチ法則」があるはずです。
法則は「縛られるもの」ではなく、「創るもの」と考えると、なんだかわくわくしてきますね。 疲れている方は、ぜひ本書をお読みになって、元気になってください。
ここからも購入できます。
■「間違いだらけのメンタルヘルス」
久保田浩也 法研 1500円
最近、メンタルヘルスが大きな話題になっています。
この言葉に私が最初に出会ったのは30年前です。
当時、日本生産本部でこの問題に取り組んでいた久保田さんからお聞きしたのです。
久保田さんは、メンタルヘルス研究委員会を発足させ、企業に「メンタルヘルス診断」を広げようとしていました。
なぜ「身体」的な健康診断は企業や学校でやるのに、精神的な健康診断はしないのか。
久保田さんの主張は説得力がありました。
しかしなぜか広がりませんでした。
そして、メンタルヘルスの捉え方は全く違う方向に行ってしまいました。
久保田浩也さんは、メンタルヘルスをライフワークにされています。
いまはご自身のメンタルヘルス総合研究所をを拠点にして活動されています。
最近のメンタルヘルスは、本書で久保田さんが指摘しているように、「心の病気」をイメージさせるものになってしまっています。
私自身、いささかの違和感を持ちながらも、そういう意味で使うようになってしまっています。
反省しなければいけません。
しかし、元祖メンタルヘルスの久保田さんは違います。
本書の副題は「心が病気になる前に、打つ手はないのか」です。
久保田さんのメッセージは明確です。
病気にならないようにすることこそが、メンタルヘルス問題だろうということです。
全くその通りです。
問題の定義を間違えれば、問題を解くことはできません。
まさにいま、私たちはそうした間違いに陥っているように思います。
本書は、そうした状況を変えていくための啓発の書であり、実践提案の書です。
ぜひ多くの人に読んでほしいと思います。
久保田さんの長年の蓄積と世間の流れへの苛立ち?もあって、
本書はいささか欲張りすぎて、しかも「密度」が高いため、軽く読むのは難しいかもしれませんが、
さまざまな示唆と実践的なヒントが満載されています。
それに著者自身が自称しているように、久保田さんはかなりの「へそ曲がり」ですので、言葉だけで語る人たちを信用していません。
ですから、時に辛らつな言葉で「常識」を切り捨てることもありますので、
ムッとする人もいるかもしれませんが、 その主張はとても理に適っています。
前フリを長々と書いてしまい、肝心の内容の紹介ができませんでしたが、
企業や学校で、久保田さんが提案するようなスタイルでのメンタルヘルスが一般化し、心の体操が広がることを期待したいです。
いまの社会を変えていくためのヒントが、そこにあるように思います。
内容紹介の代わりに、本書から2つの文章を紹介させてもらいます。
心の問題を、心の病の問題と多くの人は勘違いしています。
心の問題は、健康な人を含めたすべての人の問題であり、
すべての企業・組織・集団の問題であり、
すべての学校、すべての家庭の問題です。
心の健康管理のモデルは身体の健康管理にあります。
私たちが必要としているのは、身体の健康でもありませんし、心の健康でもありません。
普通の人に必要なのは心と身体が一体となった、私たち一人ひとりの「人間の管理」です。
ちなみに、本書には誰でも簡単に習得できる、久保田さんが開発した「心の柔軟体操」の方法も掲載されています。
ここからも購入できます。
■愛する人を亡くした人へ
一条真也 現代書林 2007年 1100円
長いこと、机の上に置かれていた一条真也さんの「愛する人を亡くした人へ」を読みました。
昨年発売された本ですが、まさに愛する人を亡くした私には開くに開けずにいたため、紹介ができずにいました。
ブログの節子への挽歌でも書きましたが、「愛する人を亡くした人へ」と一括して語られることへの違和感もありました。
この種の本は、むしろその状況になってからではなく、その状況から一番遠い状況の時によんでおくのがいいように思います。
一度読んでおけば、万一そうなった時にもきっと読めるでしょう。
本書は、そういう本のようにも思います。
つまり愛する人がいる人は、あらかじめ読んでおいたほうがいいということです。
それに本書を読むと、人に対するやさしさが高まるのではないかと思います。
本書の帯に「現代人のための心の書」とありますが、理屈っぽい生き方の本よりも私にははいりやすいように思います。
本書の私の読後感は一部、ブログに書きましたが、ここでは私の心にすっと入ってきたことを一つだけ書いておきます。
第4章は「いのちー永遠につながっています」というタイトルです。
そこで「孝」の思想が語られています。
いのちは時間を超えてつながっている、
一条さんはこう書いています。
現在生きているわたしたちは、自らの生命の糸をたぐっていくと、
はるかな過去にも、はるかな未来にも、祖先も子孫も含め、みなと一緒に共に生きている。
わたしたちは個体としての生物ではなくひとつの生命として、過去も現在も未来も一緒に生きるわけです。
そして、こう考えれば、「死」へのまなざしは「生」へのまなざしへと一気に逆転する、というのです。
私にはとてもよくわかります。
表題のメッセージが強いですが、むしろ多くの人に気楽に読んでほしいと思います。
一条さんは、グリーフケアの文化を広げたいと思っています。
本書がそうした活動を加速させることを期待しています。
一条さんのホームページもぜひご覧ください。
■世界をつくった八大聖人−人類の教師たちのメッセージ
一条真也 PHP新書 700円
最近はあまり聞きませんが、私が子どもの頃は世界の四大聖人という言葉がよく使われていました。
その言葉を久しぶりに聞いたのは、たしか2年前、佐久間庸和さんからでした。
「四大聖人って誰が言い出したのでしょうね」という話でした。
そういえば、この捉え方は考えてみると実に奇妙な発想です。
まさに人類的視点がなければ、このように文化や宗教を超えた発想は出てこないはずです。
それまで全く思ってもいなかったのですが、
こうした発想の根底には、西欧近代とは全く別の視点がありますから、
だれが言い出したのかは興味ある話です。
そう思いましたが、いかにも古い言葉ですので、それ以来すっかり忘れてしまっていました。
しかし佐久間さんはそうではありませんでした。
一条真也は佐久間さんのペンネームですが、その疑問を発展させて本を書きました。
それがこの本です。
佐久間さんが取り上げた八大聖人は ブッダ、ムハンマド、イエス、モーセ、ソクラテス、孔子、老子、そして聖徳太子です。
その人たちを「人類の教師」と位置づけ、そのメッセージを読み解こうというのが本書です。
そのメッセージから、人類の未来の希望につながるヒントが読み取れると佐久間さんはいいます。
そしてそのヒントを具体的に語ってくれます。
その根底にあるのは、佐久間さん(一条さん)の一連の著作を通じて語られている、平成心学の理念です。
私にとって興味深かったのは、聖徳太子の話でした。
佐久間さんの太子論は初めて読むような気がしますが、佐久間さんは聖徳太子を龍だというのです。
龍となれば、当然、水が出てきますが、
人類の現状を水と火から読み解きながら、火と水をつなげて、火水(かみ)というのです。
コンセプトメーカーにしてコピーライターの一条真也さんの面目躍如ですが、
そこに込められた佐久間さんの願いには共感できます。
さらに佐久間さんは、友人の鎌田東二さんの「聖徳太子は集合的無意識」論に共感して、
「聖徳太子は人類の集合的無意識の原型(元型)だ」と言い切ります。
そしてこういいます。
「聖徳太子という存在自体が巨大な意味を秘めた人類への暗号のような気がしてならない」
興味を持たれたら、ぜひ本書をお読みください。
私自身は、「不寛容で閉じられた存在」から「寛容な開かれた存在」へと宗教が進化する段階に来ていると思っていますが(一神教のような初期宗教の役割は終わったように思います)、まさかその鍵が「聖徳太子」にあるとは思ってもいませんでした。
一条さんの「聖徳太子の謎」をぜひ読んでみたいと思っています。
聖徳太子に込められた人類の謎をぜひ解き明かしてほしいです。
■実践社会調査入門
玉野和志 世界思想社 2008 2000円
今回はちょっとテキスト風の本の紹介です。
社会調査とは、人々の意識や行動などの実態をとらえるための調査のことです。
統計学と同じく、社会調査もまた近代の申し子のような気もしますが、
そもそも社会調査は労働者の生活実態を可視化することから始まったとされており、
その点では統計学とは違って、人間の視点を大事にしています。
そして、人々の主体的な動きを支援する源泉にもなったとされています。
まちづくりや市民活動においても、社会調査は効果的な材料を与えてくれますが、
最近ではしっかりした社会調査に代えて、安直な統計的情報ですませてしまう場合もあります。
それでは、管理のための実態把握はできても実践のための実態把握はできないように思います。
話が脱線してしまいましたが、社会調査はいま改めて必要になってきているように思います。
本書はそうした社会調査の入門テキストです。
著者の玉野さんとは一昨年、青森県の三沢市のまちづくりプロジェクトでご一緒しました。
実はその前に、玉野さんの著書「東京のローカル・コミュニティ」を読んで、
ぜひとも玉野さんとご一緒したいと思っていたのが幸いに実現したのです。
そこで玉野さんのたしかな住民視点と社会調査重視の姿勢を感じました。
「東京のローカル・コミュニティ」が面白かった理由がわかった感じがしました。
しっかりした社会調査を踏まえていたからなのです。しかも住民視点で。
本書は、社会調査の基本的な手引書ですが、
単に手法を書き連ねただけではなく、社会調査を実際に重ねてきた実践者の思いが感じられるとともに、
社会調査に取り組む基本的な姿勢に関しても、さまざまなメッセージがちりばめられています。
たとえば、最後の方にこんな記載があります。
社会調査はつねに人々の自発的な協力を得られるように、
きちんとした説明責任を果たし、かつそれが人々に何らかのメリットをもたらすものであることを示さなければならない。
社会調査の倫理とは、一言でいえば、そのような信頼を失わないように誠実に努めることに他ならない。
そしてそうしたことの一つとして、
スポンサー向けの報告書や研究のための報告書にとどめずに、対象者向けの報告書を作成することを提案しています。
とても共感できます。
最後のメッセージも共感します。
労働者大衆が歴史の表舞台に躍り出た近代という時代に成立した社会調査の方法が、
日本においても、われわれが自分自身を知り、自らを社会全体の中に位置づける道具として定着していくことを、切に願うものである。
ちょっとテキスト風なので誰にでもというわけではありませんが、
まちづくりや社会問題の解決に取り組んでいる人たちにはお勧めです。
ここからも購入できます。
■中小企業にしかできない持続可能型社会の企業経営
森建司 サンライズ出版 2008
滋賀県に本社のある叶V江州の森会長は、会社の経営者でありながら、
昨今の経済至上主義の企業のあり方に大きな異論をもっています。
異論を持っているだけではなく、実際に現状を変えようと積極的に活動しています。
このコーナーでも前に「循環型社会入門」をご紹介しましたが、最近、また本を出版されました。
それが本書ですが、書名では伝わりにくいですが、持続可能な社会に向けての企業のあり方を提案している本です。
とてもわかりやすく、明確です。
たとえばこう書いています。
経済至上主義社会は「企業」という法人の利益を目指すものであり、
そこに関わる人々の利益を目指すものではない。
コストダウンによってもたらされるモノの豊かさは、人間関係を希薄にし、人のモノに対する愛着を失わせ、結果として古いもの、歴史的なものへの軽視を生んだ。新しいモノに囲まれている人間、それが常識になってしまっている。
共有していた従前の仲間が、そろって生き残ることを前提として考えるのは、いまでは、経営学で論じるものでなく、単なる倫理の問題として片付けられているのだろう。
法治国家として、法律遵守は当然のこととして受け入れても、法律に書かれていない社会基準、倫理、道徳をはじめ、世にいう良識によって戒められてきた戒律のようなものには、ほとんど関心を寄せていない。少しあれば便利で役にも立つが、大量にあることによって人間に害を与えるものや、市場の要請があるからといって、社会悪と成っているにもかかわらず、これらをいまだに大量生産を続けてやまない大企業はいかに多いことか。
引用が多すぎましたが、とても共感できます。
日本経団連の会長とは大違いです。
新江州は包装資材を扱う会社であるにもかかわらず、包装はできるだけないほうがいいと主張しているのです。
そして実際にそうした取り組みもしてきたのですが、なかなか成功しなかったようです。
消費者に関してもこう書いています。
供給側がいかに改革を目指して努力しても、生活者である消費者の意識や行動が変わらないと大勢は変わらない。その消費者の意識は、供給側の長期にわたる洗脳とも言える激しい宣伝活動の結果によるものでもあろうが、「より廉価なもの、品質の保証されたもの、いつでもほしい時ほしい場所で供給されるもの」。この3条件を消費者が求め続けている限り、包装はますます過剰になり、削減されることはまずない。
こうした状況を打破するのは、まさに中小企業だと森さんは主張します。
全く同感です。
大企業が主導する産業体制の中では、持続可能な社会など夢のまた夢かもしれません。
中小企業の人ではなく、大企業の人、とりわけ経営者や一般の生活者に読んでほしい本です。
森さんは滋賀県で、MOH運動というのを展開しています。
ぜひともそのサイトも見てください。
手軽に読めるサイズの本ですので、ぜひとも読んでみてください。
お薦めします。
購入はコモンズ書店からどうぞ。
■「神さまがいっぱい」
武原敢 清流出版 2004
2004年に出版された本ですが、先日のコムケアフォーラムで出会った著者の武原さんからいただき、読ませてもらいました。
とても面白く、いろいろな人にも読んでほしいという気がして、紹介させてもらうことにしました。
この本は、武原さんが10年ほど前に体験したカナダのカソリック系の知的障害者施設で、障害者と一緒に過ごした半年間の生活記録です。
帯にこう書かれています。
「素直に生きてごらん!
知的障害者と呼ばれる彼ら。
みんな個性的。そして自分勝手。
でも、みんな優しくて、みんな自分の世界を生きている」
そうした優しく個性的な人たちとの交流が、実に生き生きとえがかれています。
そして、著者の武原さんもまた、彼らに負けずに、素直に生きていることが、素直に表現されているのです。
私も10年ほど前に、知的障害者施設で宿泊させてもらい、彼らの優しさに感動したことがあります。
彼らを見ていると、私たちが失っていることに気付かされます。
武原さんは、6ヶ月のアシスタント試用期間の後、結局は「解雇」されるのですが、その顛末もとても生き生きと書かれています。
あまり書いてしまうとこの本を読む魅力がそがれかねませんが、
日本における福祉のあり方やNPOのあり方に対して、とても大きな問題提起をしているように思います。
私にはすごく面白い本でした。
その施設に本採用になるかどうかの評価の際に、武原さんはこんなコメントをもらいます。
「仕事はよくこなしているが、残念ながら今回もあなたからのギフトがなんなのかということが、はっきりしなかったわ」
自分でしかできない何か、ここではそれが「ギフト」と呼ばれ最も重視されている、と武原さんは書いています。
ギフトの思想。
私たちの生き方や組織のあり方を考える上での本質的なものを含意しているような気がします。
共感したり、示唆をもらったりしたことはたくさんありますが、もう一つだけ書きます。
施設の利用者である、「知的障害者」たちについての記述です。
「彼らが、暴力を感じさせないのは、追い出されるのが怖いからではなく、そんなものは人間として生きていく上で必要ない、と本能的にとらえているからではないかと思う。たとえ力でねじ伏せることができたにしても、相手の心までは決して変えられるものではなく、そんな他人を蹴落としてまでして手に入れた安らぎに本物の喜びはない。いつか自分も誰かにやられるのでは、と常に不安がつきまとっていくことになる」
私たちの生き方が問題なのです。
ぜひ多くの人に読んでほしいと思い、紹介させてもらいました。
なお、著者の主宰しているネットワーク「つなぐ」も共感できます。
良かったら見てください。
■食育のススメ
黒岩比佐子 文春新書 850円
最近の食育ブームのあり方にいささかの違和感を持っているものとして、
「食育」という言葉には食傷しているのですが、この本はその種の本ではまったくありません。
むしろ「食育」とは何なのかを問題提起している本なのです。
抽象的な問題提起ではありません。
極めて具体的に、実践的にメッセージしています。
著者は、数年前に『「食道楽」の人
村井弦斎』を書いた黒岩さんです。
書名は、食育のススメですが、何を食べたらいいとかというような話ではありません。
明治のベストセラー小説「食道楽」のあらすじの紹介を軸にして、当時の風潮が生き生きと描かれています。
読んでいると、果たして日本の社会は明治以来、進歩したのだろうかと言う疑問を持ってしまうほどです。
「いのち」と「くらし」を直接的に支えている食はすべての文化の基本だと私は思っています。
食から社会を見ると様々なことが見えてくる、まさにそのことが見事に証明されている本です。
狭義の「食育」ではなく、広義の「食育」、つまり、文化論、社会論、人生論なのです。
いまの管理志向の食育発想とは全く違う食育文化が展望できます。
読み物としても面白いので、ぜひみなさんにも気楽に読んでほしいと思います。
もちろん中心に置かれているのは「食」です。
今の社会とつなげながら読むと、面白さは倍化します。
たとえば、食品の見分け方と保存法の話を読むと、食文化がいかに後退しているかがわかります。
そして、昨今の食品偽装事件の意味することも見えてくるような気がします。
さらにいえば、「食育」という言葉が取り違えられているのではないかとさえ思ってしまいます。
一編の小説が、国民病だった脚気の克服に大きな影響を与えた話も示唆に富みます。
小説とは何かを考えさせられます。
「食医」の話も出てきます。
しばらく前に話題になった韓国ドラマ「チャングム」で「食医」が話題になりましたが、
中国では医師が、食医、疾医、瘍医、獣医の4つに別れていて、
食医の地位が最も高かったそうですが、そんな話も出てきます。
弦斎は、この本で、家庭にも食医が必要だと書いているそうですが、驚きました。
最近、統合医療が話題ですが、どうも西洋医学の体系で考えられているような気がしているのですが、
そうした違和感の理由が何となく納得できました。
統合医療の取り組み方も見直す必要があるような気がしました。
まあ、それは余計な話ですが。
このように、書き出したら切がないほど、たくさんの話題がつめられている本なのです。
他にも、教育の話、結婚や夫婦の話、美人になる方法、健康や医療の話、住宅の造り方、まあ、話題は広いです。
食事のメニューやレシピもあります。
アイスクリームやパンの作り方まであるのです。
村井弦斎はこの小説を「教訓小説」と意識していたそうです。
黒岩さんは「食育小説」だといいます。
私は生活事典の面もあるなと思いました。
出版社の紹介記事に、役立つ「食」のヒントが満載とありますが、その通りです。
長い紹介になりましたが、珈琲2杯分で購入できますので、ぜひ購読してください。
きっとこれから話題になっていく本だと思います。
ちなみに、3月2日まで横浜にある県立神奈川近代文学館で、
『「食道楽」の人 村井弦斎』の収蔵コレクション展が開催されています。
2月2日には、著者の黒岩さんの記念講演会もあります。
テーマは「食道楽と日露戦争」。
いずれも黒岩さんの新著のテーマです。
お知らせは案内サイトをご覧下さい。
ご関心のある方は、ぜひどうぞ。
■「書」から戴いた宝物
市川明徳 新風舎 2008
とても不思議な本です。
著者の市川さんが不思議な人ですので、
それと符合するのですが、感想をどう書いていいか迷います。
著者の市川さんは大企業のエンジニアです。
幼少の頃から書に親しみ、ついに本を出してしまったのです。
それで贈ってくれたのですが、実に不思議な本なのです。
市川さんと知り合ってかなりたちます。
企業変革の提案を目指すエンジニアの研究会で、彼が選んだテーマが水琴窟です。
日本庭園にある、水滴により琴のような音が発生する仕掛けです。
実に澄んだ音が響きます。それを社内に着けたらどうかというのです。
とてもいい提案だったと思いますが、実現はしなかったようです。
湯島のオープンサロンにも何回か来ました。
生き方において個性的なのです。一度会ったら忘れられません。
さて本の話です。
構成そのものが、そして編集そのもの、文章そのものが、あまり読者を意識していないのです。
最初は「大学合格体験記」ですが、その文章を書いたのが18歳、まさに受験の体験をしたその時なのです。
そしてそれに続いて、「今振り返る大学受験生時代」という文章が続きます。
よくあるパターンではないかと思うでしょうが、内容が不思議なのです。
自分用のメモをそのまま集めたような内容なのです。
ところが、それが奇妙に面白いのです。
それに続けて、23歳の時に書いた「科学者の倣(おご)り」なる小論が出てきます。
そこになんと、こんな文章が出てきます。
「有と無は同じことである」。
そしてそれがきちんと証明されているのです。
そして次第に、東洋学の話に移ります。
そのあたりから書が出てきます。
書家 手島右郷の「崩壊」の写真が登場し、文字が実体を表現できることが語られます。
こんなふうにまさに著者の人生録なのですが、一貫した読み物にはなっておらずに、
ひとりごとのようにさまざまなことが語られています。
いや語るというよりも、いろいろな場面で書かれた手紙や小論、あるいは書が展示されていると言っていいかもしれません。
最後に雑記と題して3つの章があります。
京都見聞録と旅行記と人生のテーマです。
その題につられて読むと肩透かしを食らった気がします。
まあ、こういう風に書いてくると、わけの分からない本のように思うでしょうが、実際にわけのわからない本なのです。
自分の備忘録ではないかという気がして途中で読むのを止めようとしたのですが、
何となく引き込まれて結局、最後まで読んでしまいました。
そして読んでしまうと実に不思議なのですが、市川さんのメッセージが伝わってきたのです。
はじめに、で彼はこう書いています。
私は学歴からすれば(途中省略)京都大学大学院機械工学研究科修士課程卒、
その後、エンジニアになる。と言えば、世間ではエリート的な存在かもしれない。
が、私がこれだけの世界しか知らなかったら、おそらく何か怪しい団体に入っていたか、
挫折して、どこかで「のたれ死」にしていたかどちらかだったと思う。
私の人生を2倍以上面白く豊かにしてくれたのが書道およびそれを取り巻く世界との出会いだった。
この本を読んで市川さんのことがようやくわかりだしました。
念のためにいえば、書に関してはいろいろと面白い話が出てきますし、教えられることも少なくありません。
市川さんが「書」を通じて得た、たくさんの「宝物」からも学ぶことは少なくありません。
不思議な本です。
みなさんにお勧めすべきかどうか迷いますが、
まぁ、こういう本のつくりかたもあるということで紹介しておきます。
みなさんも、ご自分の本をつくってみませんか。
市川さんは1月の16日から豊田市の美術館松欅堂で個展を開催しますが、
そこにいくと市川さんに会えるかもしれません。
不思議な人です。
会ったらよろしくお伝えください。
■「茶をたのしむ」
監修一条真也 現代書林 2007
一条さんの監修で始まった「日本人の癒し」シリーズの1冊目です。
副題に「ハートフルティーのすすめ」とあるように、
一条さんが目指す「ハートフル・ソサエティ」に向けてのガイドブックと言ってもいいでしょう。
序文に一条さんが「茶の大いなる慈悲」を書かれていますが、
一条さんらしいパースペクティブをもった示唆に富む文章です。
一条さんはコーヒーも大好きなのですが、こう書いています。
コーヒーが意識を「外」に向かわせる飲み物なら、緑茶は「内」へと向かわせます。
こうも言います。
(理性の飲み物であるコーヒーとは違い)緑茶は「理性」の飲み物ではありません。
むしろ、「理性」を解体して「瞑想」へと向かわせる力を持っています。
茶室には「平和」と「平等」が凝縮されていると一条さんはいいます。
そこまではそうだよなと読み進められますが、一条さんはそこでは止まりません
さらに、茶室とはあらゆる宗教が共生する場所だと続けます。
手水鉢は神道、掛軸は仏教、作法は儒教、方角方位は道教、袱紗はキリスト教を象徴しているというのです。
宗教への造詣に深い一条さんらしい話です。
一期一会という究極の人間関係を生み出すのもお茶だといいます。
また日本では、
「寿司屋でも蕎麦屋でも日本料理店でも、店に入ると一杯のお茶が出される。もちろん無料で、いくらおかわりしてもタダ」
ということに大きな意味を読み取っています。
私自身も、そうした中にこそ、日本人の生き方や日本社会の文化の本質があるように思っています。
まさに一条さんがライフワークにしているホスピタリティの本質が含意されています。
とても短い文章の中に、たくさんの示唆が込められています。
茶の歴史や効用、入れ方や種類などの紹介もあります。
長年お茶の製造販売に取り組んでいる丸島園の若い経営者や日本茶インストラクターとの対談もあります。
ふだん何気なく飲んでいるお茶が秘めている大きなメッセージを改めて考えさせられる好著です。
このシリーズはこれから「花」や「旅館」が計画されているようです。
一条さんが創りだす、ハートフルライフの世界が育っていくのが楽しみです。
■「編集者
国木田独歩の時代」
黒岩比佐子 角川選書 1700円(税別)
黒岩さんが2年がかりで取り組んでいた本が完成しました。
今回は国木田独歩です。
但し、黒岩さんの関心は、作家としての独歩ではなく、ジャーナリスト・編集者としての独歩です。
実にたくさんの新しい発見があります。
黒岩さんからの手紙の一部を引用させてもらいます。
明治の日露戦争期の前後に、編集長として数多くの雑誌を創刊し、
その後は自ら「独歩杜」 を興して、特色のあるグラフィックな雑誌を発行し続けた独歩。
調べるにつれて思いがけない事実が次々にわかってきて、
独歩とその周囲の人たちに惹きつけられることになりました。
しかし、「独歩社」は破産という鈷末を竣えることになり、
その一年余りのちに独歩は36歳で亡くなっています。
彼の起伏に富んだ人生の大半は、情熱あふれる編集者として費やされたのでした。
現在、ほとんど忘れられている独歩が手がけた雑誌や「独歩杜」について、
本書をきっかけに知っていただければ、これほど光栄なことはありません。
ちょうど来年は国木田独歩没後百年の紀念の年です。
その直前に本書を刊行できたことを、心からうれく思っています。
独歩の実に魅力的な生き方が、生き生きと描かれています。
私は途中2回ほど涙が出るほどでした。
しかし、それ以上に興味を持ったのは、黒岩さんらしい徹底的な調査によるさまざまな発見です。
それも今の時代にも通ずるメッセージ性を持ったものが少なくありません。
時代が捨ててきた社会の文化や人間的な生き方も思い出させてくれます。
国木田独歩に関しては、私には自然主義作家ということと「武蔵野」しか知らなかったのですが、
本書を読んで、独歩の生き方にこそ大きなメッセージがあることに気づきました。
社会を見る目も共感できます。
まさに黒岩さんが言うように、編集者にしてジャーナリストなのです。
ちょっと一般の人には敬遠されそうな書名ですが、
もし働き方に悩んでいる人は231頁にある独歩の手紙を読んでみてください。
元気がもらえます。
その前にある「独歩社は自由の国」のあたりも示唆に富んでいます。
格差社会に憤慨している人は、212頁の底辺社会ルポルタージュへの独歩の指摘を読んでください。
アイデアに枯渇している人は、独歩のアイデアと実践力に刺激を受けてください。
さまざまな挑戦をしてきた独歩の事業戦力には刺激を受けるはずです。
明治という時代、あるいは日本の社会に育てられてきたもの、などを知る上でも興味ある材料がたくさん書かれています。
いろいろとご紹介したいところはあるのですが、中途半端な紹介よりも読んでもらうのが一番です。
文章はとても読みやすいので気楽に読めますし、なかには「謎解き」もあります。
「謎の女写真師」の正体を見事に解明してくれるのです。
前半は黒岩さんらしくややディテールが豊か過ぎるので、慣れていない人はちょっと疲れるかもしれませんが、
それが後半の面白さにつながっていきますので我慢してください。
後半はきっと引き込まれていきます。
これが黒岩スタイルなのです。
私も、前半を読んだ後、少し休んで読もうと思っていたにもかかわらず、
後半に入った途端に止められなくなり、最後まで読んでしまいました。
最後に、なぜか黒岩さんはこう書いています。
ジャーナリズムと戦争の関係は、現代に生きる私たちにとっても重要なテーマになっている。
未来を見つめるだけではなく、忘却されている過去をふり返ることも必要ではないか。
改めていま、そう思わずにはいられない。
私も本書を読んで、改めてそう思いました。
仕事にはすぐには役立たないかもしれませんが、お薦めします。
ここから購入できます。
■「わが人生の「八美道」」
佐久間進 現代書林 1000円(税別)
佐久間進さんは、このコーナーによく登場する佐久間庸和(一条真也)さんの父上です。
この度、旭日小綬章を受賞された記念に、ご自身の生き方を振り返り、それを「八美道」としてまとめたのが本書です。
とてもコンパクト(ソフトカバーの新書版)で、気持ちの落ち着く本です。
というのも、内容は「こころにしみこむ温かい言葉と、こころを癒す珠玉の写真」で構成されているからです。
写真は著者の友人の、沖縄の写真家、安田淳夫さんの沖縄の写真です。
その写真に添えるような形で、著者独自の「八美道」が書かれ、その合間にホッとするメッセージが書かれています。
読む、というよりも、眺めながら考える、というような本です。
たとえば、こんな文章が出てきます。
年をとったら、
ひとつ、ひとつ、捨てていくこと。
それしかない。
それがいい、
またこんなのもあります。
ありがとう、が一番
どこにでも
だれにでも
ありがとう
ありがとうの数だけ
あなたは幸せになれるのだから
著者は、日本にホスピタリティ産業の草分けの一人です。
10年以上前に北九州市で始まったホスピタリティ運動のシンポジウムに参加させてもらった時にお会いしましたが、その時は北九州市観光協会の会長でした。
実に壮大な構想力をお持ちで刺激をもらいましたが、その縁で私と一条真也さんとの付き合いも始まりました。
最近は一条さんの本ばかり読ませてもらっていましたが、今回は久しぶりに佐久間進さんの本です。
本の最後に、「ホスピタリティ産業の確立を目指して」という小論が載っています。
短いものですが、とても示唆に富んでいます。
たとえば、「ホスピタリティとは美しさ」と書いています。
単なる「おもてなし」ではなく、もう一歩踏み込んで「心が入る」=「美しさが出る」、これが真のホスピタリティだというのです。
美しさといえば、佐久間さんは、小笠原流礼法にも通じており、現在は日本儀礼文化協会の会長でもあります。
佐久間さんのホスピタリティ論をいつか本にしてほしいと思っていますが、
この本の行間にはそうしたホスピタリティの本質が込められているようにも思います。
いつも携行して、ちょっとした時間ができた時に好きなページを開いてみると、きっと元気と知恵をもらえるでしょう。
そんな本です。
本書の最後に、こんな文章が書かれています。
求道とは、自分をどこまで高められるか。
その挑戦が、私の人生目標です。
疲れた企業人の皆さんに、特にお薦めします。
■「CSRイニシアチブ」
日本経営倫理学会CSRイニシアチブ委員会 日本規格協会 2600円
CSR(企業の社会的責任)は古くて新しい問題ですが、いまや企業にとっては存続をかけた戦略的な課題になってきています。
しかし、言葉の広がりのわりには実体はかなり曖昧のまま、形式的な取り組みに終始しているケースが少なくないように思います。
私にとっては、この問題は「経営論」というよりも「企業論」だと考えていますので、昨今の取り組みにはむしろ大きな不信感を持っていますが、経営論としてのCSRももっと真剣に取り組まれるべきだと思います。
CSRは大企業の道楽やイメージ戦力ではなく、まさに業績に直結する問題だからです。
日本経営倫理学会では、すでに2年前に、企業がCSRを進めていく上での羅針盤となる、経営理念、行動憲章、行動基準を「CSRイニシアチブ」としてまとめ、発表しています。
本書は、その実践的なガイドブックです。
その具体的な展開を、各社の事例もふんだんに紹介しながら、ら実践的に解説してくれています。
体系的な項目立てを、各項目見開き2ページというスタイルでまとめていますので、関心に応じてどこからでも気楽の読めるというCSR事典でもあります。
編者の一人でもある清水正道さんは、「おわりに」でこう書いています。
効果的なCSRコミュニケーションとは、相手のステークホルダーの方々と我が社の人々とが、大所高所から肩書き付きで一方的に伝えるようなものではない。
できるだけ同じ目線で、何度でも繰り返しメッセージを伝え、反応を開き考え、改善のための行動を行い、その成果をまた伝えていく。
いわば、人と人との循環的な相互作用なのである。
同感です。
CSRとは、企業の存立基盤としての社会とのコラボレーション活動なのだと思います。
本書を読むと、そのコラボレーションの切り口が見つかるかもしれません。
ここから購入できます。
一条さんの最新作です。
副題に「人生の糧になる101冊の本」とありますが、
30年にわたって、人の生き方、あり方を追及してきた到知出版社の書籍の中から、
101冊の本を簡潔に紹介したブックガイドです。
人間学というとなにやら難しく聞こえますが、一条さんは人間学について、こう書いています。
人間学とは、人間がいかに心ゆたかに生き生きと生きていくかを考えることである。
だから、人間学は楽しいし、面白い。
なぜなら、わたしたちは人間だからだ。
人間にとって一番面白いものは人間に決まっているではないか。
全く同感です。
もっともこの本が主に想定しているのは企業の経営者や経営幹部です。
章立ても、「帝王学入門」「先人に学ぶ」「経営の王道」「心ゆたかに生きる」「人間らしく生きる」「言葉の宝石箱」となっています。
1冊2ページで構成されていますので、気楽に読めます。
一条さんらしいガイドになっていますので、わかりやすく読みやすいです。
企業の経営幹部の皆さんには、人間学を考えるためのガイドブックになるでしょう。
■「仏教への旅
日本・アメリカ編」
五木寛之 講談社 1700円
「仏教への旅」は何回か取りあげたので、シリーズ最終巻の「日本・アメリカ編」も紹介させてもらいます。
本書のあとがきで書かれているように、私の友人の黒岩さんが関わっていますので。
本書では、親鸞と他力と9.11を通して、新しい仏教の可能性がメッセージされています。
最近、あまり本を読む気力がなくなっていたのですが、文章に勢いがあり、今回も一気に読めました。
いつもながら安心して受け入れられる示唆もたくさん受け取りましたが、
それに加えて、現代社会に向けての強い憤りを行間に感じてしまったのは、私の現在の心境のせいかもしれません。
9.11事件の捉え方も、とても共感できました。
ニューヨークにホームレスがいなくなっていたことに、
「権力を握った為政者が本気で何かをやろうとすれば、どんなことでも可能にしてしまのだなと、つくづく痛感したものである」
というところを読んで、9,11事件の現場で五木さんが何を見てきたか、何を感じたかを勝手に想像してしまいました。
また息子を事件で亡くした母親(アデールさん)が、
その後のアメリカの動きのなかで、「私たちアメリカ人も同じことをしているのではないか」と思い、
アフガンの現地に行き、平和の活動に取り組んでいくという話は、
まさにマルチチュードの世界の広がりを示唆する話です。
他力や悪人正機の話も面白いですが、
そうしたことが現実の生活と政治と絡み合いながら語られている本書から、
時代を見る目や時代を生きる知恵がたくさんもらえます。
いつもながら、とても読みやすいです。
読んだ後、このシリーズは日本の仏教界への問題提起の本ではないかという気がしてきました。
仏教の新しい可能性もたくさん取り上げられていますが、
日本の仏教界がこうした問題提起を受けて、自らのビジョンとミッションを広く社会に発信し、動き出してほしいと思います。
できれば、五木さんにも、問題提起だけで終わるのではなく、
仏教界の人たちと一緒に、実践に向けての新しい動きを起こしてほしいと思います。
次をクリックするとコモンズ書店を通してアマゾンから本書を購入できます。
「無所有」はなんと3冊も売れてしまいました。
■「無所有」
法頂 東方出版 2001年 1600円
今回は私の知人ではない人の本の紹介です。
妻が1か月前に亡くなりました。
以来、本を読む気力を失っていましたが、
以前、五木寛之さんの「仏教への旅」を読んで、気になっていた本がありました。
亡くなった妻と、毎朝、心を通わせあうなかで、なぜかこの本が思い出されました。
そこで読んでみました。
20年前(会社を辞めた前後)から妻と話していた、
私が目指している生き方がそこにとても具体的に示唆されていました。
驚きました。
私は、目指すだけで実行にはたどりついていませんが、
本書に書かれているほとんどすべてが、私の思いに重なります。
この本の原著が書かれたのは1970年代はじめです。
今から30年以上前ですが、その頃に本書に出会っていたら、私の人生は大きく変わっていたように思います。
著者の法頂は、韓国の僧で、「華厳経」と「星の王子さま」が愛読書だそうです。
生活の基本信条は「本来無一物」。
法頂は、何かを持つということは、一方では何かに囚われるということだといいます。
そして、そのことに気づいた。法頂は、こう心に決めたそうです。
「その時から、私は1日に一つずつ自分をしばりつけている物を捨てていかなければならないと心に誓った」。
そして、実践されます。
本書は、その法頂が日々の生活の中で見聞し感じたことを書き集めた随筆集です。
とても読みやすいです。
感動的な挿話も少なくありません。
泥棒の被害を受けた話がいくつか出てきますが、実に共感します。
一人でも多くの人に読んでもらいたくて、紹介させてもらいました。
きっと生き方に、新しい視点を加えてくれると思います。
書店では見つかりませんが、アマゾンで購入できます。
ここをクリックするとそれができます。
■『「日本国民発」の平和学』
川本兼 明石書店 2600円(税別)
平和をライフワークにしている川本兼さんの最新作です。
本書は、川本平和理論の集大成ともいえますが、同時にいまの日本の状況を踏まえた「警告の書」でもあります。
しかも昨今の平和への取り組みに対しても、なぜそれが奏功していないのか、川本さん独自の視点で理論化しています。
若者を意識して書かれていますが、論旨明快で、とても説得力があります。
若者をだめにしてしまった、私たち世代も読みたい本です。
川本さんは「平和」を「民衆の戦争の苦しみからの解放が基本的人権として保障されている状態」と定義しています。
この定義には、実にさまざまなことが含意されています。
そうした平和を実現するためにどうしたらいいか。
それは本書を読んでください。
これまでの多くの「平和関係の書」とは違います。
目線が常に生活者個人にあるのです。
川本さんはいくつかの具体的な概念を提起します。
たとえば基本的人権としての「平和権」、そして「民衆の非武装権」。
これまでの平和学からは出てこない発想です。
「民衆の非武装権」とは、民衆が国家の兵員になることを拒否する権利です。
民衆による暴力を禁止し、暴力を独占することによって、近代国家は権力の基盤を確立しましたが、
それは同時に「国民を暴力に狩り出す権利」の獲得でもありました。
そのため、これまでの平和理論の中では「民衆の武装権」が問題になりました。
民衆が圧制からの自由を求めて、立ち上がる権利です。
その典型的なものが市民革命ですが、川本さんはそうした「民衆の武装権」はもはや必要なくなったといいます。
むしろそうした武装権は国家に組み込まれてしまい、実質的には国家に対する兵役義務に転化してしまったというのです。
国家による暴力行使の主体は国民です。
国家が戦争を遂行できるのは、兵員としての国民を自由に暴力遂行パワーとして使えるからです。
ブッシュや小泉が戦争をするわけではなく、現地で戦いを担うのは兵隊や自衛隊員です。
しかも彼らは原則として戦場で人を殺すことも含めた暴力の行使を拒否することは出来ないのです。
そこでは「平和のために人を殺傷する」というおかしなことが起こります。
そこで、国家による暴力行使のために強制されることを拒否する権利として、非武装権が重要になってくるというわけです。
これはガンジーの非暴力主義とも違います。
この非武装権は川本平和論のキーワードの一つですが、
こうしたいくつかの重要な概念が私たちの生活の視点で語られているのです。
そして、日本人の貴重な戦争体験を踏まえて、平和への革命をスタートさせようと呼びかけています。
その第一歩は、「戦争ができる国家」に制約を加えることだといいます。
具体的には、新しい平和憲法の制定です。
この点に関しては、今の日本の状況は全く反対の方向を向いており、
戦争をしやすくしようと多くの政治家や経済人は考えていますし、多くの国民もまたそれを支持しています。
川本さんは、そうした状況を知っていればこそ、あえて新しい平和学を提唱しているわけです。
ちなみに、川本さんは新しい平和憲法も起案しています。
これに関してはすでに別著「自分で書こう!日本国憲法改正案」を書いていますが、本書にも川本平和憲法案が掲載されています。
在野の研究者の新しい平和論。ぜひ多くの人に読んでほしいと思います。
川本さんがこれまで出版された本も、併せてお読みください。
もし著者と話し合いたいという方がいたらお知らせください。
川本さんをご紹介します。
5人以上集まれば、川本さんをお呼びして話し合いの場をつくるようにします。
いま「平和」の問題をしっかりと考えておかなければ、
この先100年、私たちはたぶん平和を手に入れることはないのではないかと私は思っています。
そうならないようにするのが、日本人のミッションではないかと思っています。
本書を読んで、平和についてぜひ考えてみてください。
■「仏教への旅 ブータン編」
(五木寛之 講談社 1700円)
同じシリーズの朝鮮半島編を紹介した関係もあって、ブータン編も紹介します。
この本づくりには、黒岩比佐子さんが深く関わっているからです。
もちろんブータンも五木さんと一緒に歩かれてきました。
黒岩さんはフリーのノンフィクションライターですが、
本書の「あとがきにかえて」で五木さんご自身がお書きになっているように、五木さんの著作にこの数年関わってきました。
これまで一度も紹介することはありませんでしたが、今回は紹介させてもらいます。
というのも、実は本書を贈ってもらってからしばらく読む時間がなかったのですが、
昨夜、真夜中に目が覚めしまったので眠気を呼び起こそうと読み出したら、引き込まれてしまって、ついに読み明かしてしまったのです。
私が目指す社会のビジョンをそこに感じたからです。
そこでちょっと寝不足で頭が整理されていないのですが、
感動が薄れないうちに、特に刺激を受けた2つのことを書いておくことにしました。
最初は輪廻転生とつながりの話です。
ブータン仏教の基本には輪廻転生思想がありますから、死者を閉じ込める墓もなく、先祖供養も行わないようです。
その延長に「つながり」が出てきます。
業と縁起によって、すべての生きるものはつながっていきます。
輪廻転生という時間を超えた縦のつながりが、いま現在の生命のつながりを意識させることになります。
すべての人、すべての生き物が、時空を超えてつながっていくわけです。
そこから出てくるのは、「みんなが幸せでなければ本当に自分の幸せはない」という発想です。
まさに私が目指す、だれもが住みやすい社会です。
チベットやブータンにある化身の考えは、こうしたことから考えると納得できますし、
家族のあり方、家族と社会のあり方にも私たちの発想とは全く違った捉え方があることを教えてくれます。
そして、そのことはブータンが取り組んでいる「国民総幸福量(GNH:Gross
National Happiness)」のテーマにつながっていきます。
これに関しては、本書をぜひ読んでください。
国民一人ひとりまでがGNP基準で考えるようになってしまった日本と、
国王までもが一人ひとりの生活のGNH基準で考えるブータン。
この違いには、歴史の岐路が含意されています。
ブータンにも近代化の波が押し寄せてきています。
今年の新春のテレビで、五木さんと塩野七生さんの対談がありました。
そこでもブータンの国民総幸福量が話題になり、
塩野さんが、一度、物質的生活を知ってしまえば、もはや戻れないと不安を表明されましたが、
五木さんは新しい生き方だと主張されていました。
私は五木さんに共感します。
ブータンの国民総幸福量の実験が、歴史を変えていくことを期待します。
その可能性を最初から諦めることはしたくはありません。
現地で体験されてきた黒岩さんも五木さんも、日本の仏教とブータン仏教は違うといいますが、
本書を読んで、私は考え方においてほとんど同じではないかと思いました。
むしろ私たちが忘れたり、気づかなくなってきた日本社会の古層が、そこに感じられます。
私の思い違いかもしれませんが。
いずれにしろ、キリスト教とイスラム教の対立に振り回される状況を変えるためにも、
仏教は大きな役割を果たせるのではないかと思います。
あんまり本書の紹介にはなりませんでしたが、ともかく示唆に富んでいます。
自分の生き方へのたくさんのヒントも得られます。
読みやすい本ですので、ぜひお薦めします。
■「共済事業と日本社会」
押尾直志監修 共済研究会編 保険毎日新聞社 1800円
いま、人々の助け合いである共済や互助会が存続の危機に立たされている。
改定された保険業法の中身が知られるにつれ、各種団体の内外から対策を求める運動が起こってきた。
共済を守ることで自らの生活と仕事、地域社会を守ろうとする人々が、組織をこえて手をつなごうとしている。
本書の出版は、共済事業が全国の職域、地域に広く根づいて国民の生活を支えている役割を伝え、
保険業法改定による共済規制が何をもたらすかといぅ問題に対して、
正確な認識を広く社会に訴えようとするものである。
本書の「あとがき」の書き出しの文章です。
悪徳保険業者を規制するはずの保険業法改定が、日本の古来の文化でもあり、いま再び見直されだしている共済文化を壊そうとしていることに関しては、これまでも何回か書いてきました。
本書は、そうしたことに危機感を強めて活動を開始した共済研究会のメンバーが緊急出版したものです。
さまざまな実績を重ねてきている現場からの報告も含めて、共済文化の現実と意義が語られています。
しかも、ただ語られているだけではなく、そこに日本社会の未来に向けての著者たちの深い思いがにじみでています。
単なる「共済事業」の本ではなく、経済主義一本やりの昨今の風潮への異議申し立てとそれに変わる新しい社会のあり方につながる提言などが込められた、社会変革の書です。
そして、私たちの社会が暮らしの中で育ててきた、支え合いの知恵を、改めて思い出させてくれる書でもあります。
ぜひとも多くの人に読んでほしい本です。
本の内容は目次から読み取ってください。
論考も事例も多岐にわたっていますが、何よりも、それぞれの現場に立脚している人たちのコラボレーションの成果であることがすばらしいです。
あとがきでも書かれていますが、この本の出版そのものが、新しい共済文化の予兆を感じさせます。
もうひとつだけ、あとがきから引用させてください。
共済は、人間の生き死に、事故、災害、人生のドラマに根ざしている。
いのちとくらし、仕事と生活、自然そして人間どうしの結びつき、つまりは、社会とリスクの現実に根ざしているのである。
その意味で、日本社会の基本形と歴史的地層・現状を反映し、支えている。
とても共感できます。
私自身も、日本の共済文化の回復を願っている者の一人ですが、
今回の保険業法改定が、共済文化の光を当てたことを、大きなチャンスとして捉えていくことが大切だと思います。
まさに禍転じて福となす、です。
そのためにも、ちょっと硬い本ではありますが、できるだけ多くの人たちに読んでほしい本です。
また関心のある方は、ぜひ共済研究会にもご参加ください。
T.共済規制の経過と内容
1.共済事業の今日的意義と法規制問題
2.日米の保険マーケット拡大と共済規制
3.共済事業の歴史と共済規制の歴史
4.共済法の現状と課題
U.共済事業の果たしている役割と課題
1.共済事業の全体像
2.協同組合共済の果たしている役割と課題
3.共済の経営問題と法規制
4.自主共済の果たしている役割と課題
5.労働組合共済の果たしている役割と課題
6.無認可共済の論議と連合の取り組み
7.PTAの「安全互助会」の果たしている役割と課題
8.知的障害者の「互助会」の果たしている役割と課題
9.労協連のCC共済の果たしている役割と課題
10.ヨーロッパにおける共済組織の位置づけと現状
資料および解説
保険業法改正問題の経過と背景資料
ちなみに、「資料および解説:保険業法改正問題の経過と背景資料」は岩川さんの力作ですが、これを読むだけでも、いろいろなことが見えてくるはずです。
コモンズ書籍経由でアマゾンから購入できます。
■「龍馬とカエサル」
(一条真也 三五館 1400円)
一条さんの今度の新著は「ハートフル・リーダーシップ」論です。
龍馬とカエサルという、魅力的な人物に生き方を題材にして、人間的魅力とは何かを縦横に語っています。
実は私はまだ完読していません。
このコーナーでは必ず読み終えた上で紹介させてもらっていますが、今回は初めての例外です。
安直に通読する本ではないと考えたのです。
いま毎日10頁ずつ読んでいます。
2頁単位でまとめられているので、とても読みやすいのですが、その2ページに実にたくさんの示唆が込められています。
ですから、むしろゆっくりと読みながら、立ち止まって自分の生き方を考えるのがよいと考えたのです。
いろいろと考えさせられることが多いです。
読みながら考える本なのです。
全体は4つに分けられています。
「リーダーの理想」「リーダーの資質」「リーダーの使命」「リーダーの条件」です。
全体を流れるのは、龍馬とカエサルへの著者の想いです。
一条さんの著作の基本コンセプトのひとつは「ハートフル」ですが、
この2人はまさにそのコンセプトを体現している「ハートフル・リーダー」なのです。
本書の冒頭で、著者はこう書いています。
リーダーとはまず、人を導く存在であり、それゆえ人を動かす存在であると言える。
では、どうやって人を動かすのか。それは、その人の心を動かすしかない。
ならば、どうやって人の心を動かすのか。
「人の心はお金で買える」と言った人物がいたけれども、もちろん、人の心はお金では買えない。
人の心を動かすことができるのは、人の心だけである。
本書では、徹底的に「心」に焦点を当てて、リーダーシップについて考えてみた。
本書は、一条さんの平成心学三部作のひとつ、「孔子とドラッカー 〜 ハートフル・マネジメント」の続編として書かれています。
孔子やドラッカーが平成心学における「知」の部分の具現者なら、龍馬やカエサルは「行」の部分の具現者だというわけです。
昨今の企業はさまざまな病理をかかえていますが、それは「心」を失ってしまったからだと思います。
企業が「心」を取り戻すには、企業のリーダーたち(経営者に限りません)が、自らの心を呼び戻さなくてはいけません。
一条さんの平成心学シリーズに私が共感している理由の一つです。
具体的な事例もふんだんに出てきて、
88項目の小見出しも示唆に富んでいて、目次を見るだけでも読みたくなってきます。
企業の経営者や管理者にはぜひともお薦めしたい1冊ですが、
自分の生き方をちょっと振り返ってみたいと思う人であれば、だれにでもお薦めしたいと思います。
そして、ぜひとも、読みながら考えてみてください。
一条さんの関連著作もぜひどうぞ。
http://www.ichijyo-shinya.com/books.html
■「こころの通う対話法」
浅野良雄 鰍ワぐまぐ 700円(送料込み)
対話法研究所の浅野良雄さんが、自らが開発された「対話法」のテキストをオンデマンド出版されました。
このコーナーでも以前、ご紹介した『輝いて生きる』(文芸社)の第2部を土台にしていますが、その後の実践を踏まえて、内容はさらにわかりやすく、かつ実践的になっています。持ち運びにも便利な小冊子スタイルなのもうれしいです。
詳しくは浅野さんの対話法研究所のホームページをご覧ください。
オンデマンド出版なので書店などでは購入できませんが、ホームページには申し込み方法なども書かれています。
本書の「はじめに」で、浅野さんは対話法の概略をこう書いています。
対話法は、「自分の考えや気持ちを言う前に、相手が言いたいことの要点を、相手に言葉で確かめる」ことを原則にしています。日常の会話のなかで、必要なときに、この原則を守ることにより、傾聴と同様、誤解を防いだり、信頼関係をはぐくむはたらきがあります。
「対話法」の原則の後半の部分が、従来の傾聴に相当するのですが、「対話法」では、この概念と技法を、新たに「確認型応答」と名づけました。傾聴という呼び方では、「耳を傾けて聞いた」あとの「応答」の重要性がぼやけてしまうからです。このように、(対話法)では、対話の原則を明確にしたり、新しい用語を取り入れたことにより、傾聴とくらべて技法の理解と習得が容易になりました。
浅野さんは各地で「対話法」の研修会やワークショップを展開していますが、本書では、一般の参加者を対象として行なった研修会の様子を再現する形で、「対話法」が実践的に説明されていますので、研修会に参加したような気分で、すいすいと読んでいけます。
基本さえマスターすれば、誰でもが自分のものにできるのが、「対話法」の特徴です。
浅野さんは、この本を読んだ人たちによって「対話法」が全国各地に広がり、快適な人間関係に裏打ちされた、安全で住みやすい社会が実現することを願っています。
コーヒー2杯分で購入できますので、ぜひみなさんもお読みください。
それによって、きっと皆さんの周辺は気持ちの良い社会になっていくはずです。
■「故郷の親が老いたとき 46の遠距離介護ストーリー」
(太田差惠子 中央法規出版 1680円)
最近、「遠距離介護」という言葉をよく聞くようになりました。
核家族社会のなかで高齢化が進むと、親の介護問題は「非日常的な事件」になりますが、
その親との生活場所が遠く離れていると、さらに問題は複雑化します。
故郷に住む親の介護のために、会社を辞めて郷里に戻った友人が、私にも何人かいますし、
働きながら週末は故郷の実家に帰る生活をしている知人もいます。
企業や行政にとっても、「遠距離介護」は真剣に考えなければならないテーマになってきています。
この「遠距離介護」という言葉を生み出したのが、本書の著者の太田さんです。
1998年、「「遠距離介護」の上手なやり方」(かんき出版)を出版し、
離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ(NPO法人パオッコの前身)を結成、
以来、太田さんは遠距離介護に取り組むたくさんの人たちと会い続けてきています。
本書は、いわばその集大成で、
46の遠距離介護の事例を紹介しながら、遠距離介護の実像を具体的に鳥瞰させてくれます。
本書の帯に書かれてあるように、
遠距離介護をしている人、離れて暮らす親の老後が気になる人にはとても参考になる内容ですが、
それ以外の人たちにもぜひ読んでほしい本です。
故郷の親が老いる前に、です。
本書の事例からは、遠距離介護という問題を超えて、
私たちの生き方やいまの社会のあり方に対するさまざまなメッセージが伝わってきます。
私たちのように、すでに親を見送った夫婦にとっても、考えさせられることがたくさんあります。
この本を読んだら、生き方が変わるかもしれません。
これからの社会に向けての大きなヒントも読み取れます。
親の介護には、その人の生き方や価値観が現出します。
あるいは、それを通して、自らの人生を考える契機になるといってもいいでしょう。
そこで問われるのは、親の介護というよりも、自らの生き方なのです。
しかも、それはいつか立場を変えて、自分にまた戻ってくる問題でもあります。
46の物語は、自らの生き方と重ねて読むと、そのことが実感できるはずです。
「親子介護」の先にある「夫婦介護」の問題を考えるヒントもありそうです。
太田さんは、本書のプロローグで、
「介護」に「遠距離」をくっつけただけのように思われがちだが、私は、それ以上の思いをこめている。
それまでは、介護といえば、食事介助やトイレ介助などの身体的介護が中心にとらえられていたが、
遠距離介護はそれ以外の意味も含めている。
家族がそばにいられないから、いわゆる「介護」が必要となる以前から困ることが生じはじめる。
と書いています。
読み流してしまいそうな、この文章に私は今の社会の本質的な問題を感じます。
そして、遠距離ではなく同居であろうと、実は同じ問題が起こってきているようにも思います。
「介護とはつながりのこと」だと考えている私にとっても、とても考えさせられるメッセージです。
いずれにしろ、「介護」問題はすべての人にとって、必ず何回か体験する問題です。
ぜひとも多くの人に読んでほしい本です。
若い世代にもぜひ読んでほしいと思います。
自らの生き方を考えるヒントがたくさん見つかるはずですから。
■「社協ノ宝もの」へぇ〜、社協ってそういう仕事なんだ!
NPO法人市民活動情報センター・ハンズオン!埼玉 600円
コムケア仲間のハンズオン!埼玉の出版第2弾です。
前作の「私のだいじな場所―公共施設の市民運営を考える」はとても好評でしたが、
本書も建設的な問題提起がたくさん含まれている興味ある内容です。
社協、つまり社会福祉協議会は、地域福祉の主役としてがんばってきましたが、
最近は新たな主役であるNPOとの関係が必ずしもよくなく、場合によっては対立関係さえ起こしているところもあります。
私も最初は、社会福祉協議会の役割はもう終わったなと考えていましたが、
コムケア活動を通して、そこで働く若い職員の情熱に触れているうちに考えが変わってきました。
少なくともこれまで社会福祉協議会が育ててきたネットワークやノウハウは大きな社会資源です。
本書は埼玉県内の社会福祉協議会の職員有志とNPOの関係者が一緒につくった本です。
そのいずれにも私の知人が少なくないのですが、
4年前からじっくりと取り組んできた活動の成果ですので、内容はとても示唆に富んでいます。
なによりもカジュアルに本音で語り合った内容が、読みやすくまとめられているのがうれしいです。
地域福祉はまちづくりそのものですし、私たちの生き方に深くつながっています。
しかし、たとえば社会福祉協議会という名前すら知らない人が少なくありません。
そういう人も含めて、
社会福祉協議会の関係者のみなさん、
さらには社会福祉協議会の現場軽視の風潮に反発している人、
逆にNPOの独善的な姿勢に反発を持っている人、
あるいは気持ちよく暮らせる社会を願っている人、
そんな人たちにぜひ読んでいただきたい小冊子です。
内容は次の通りです。
キラン★その1 うっかり本音座談会──社協ノ仕事って何だ?
キラン★その2 どっぷり旅日記──宝モノを探しに西へ
キラン★その3 ゆっくり昔話──地域福祉ノ原点にもどる
資料編:埼玉県内の社協とNPOの協働に関する調査報告
社協キャラクターコレクション2007という、楽しい特別付録までついています。
書店では購入できませんが、ハンズオン!埼玉に連絡してもらえれば購入できます。
〒330-0063埼玉県さいたま市浦和区高砂2-10-6
メールoffice@hands-on-s.org TEL/FAX
048-834-2052(担当:若尾)
この本がさらに新しい風を起こしていくことを期待しています。
■「自分なりのお別れ」
(一条真也監修 扶桑社 1400円(税別)
一条さんが監修された本です。
詳しい書名は、
『「あの人らしかったね」といわれる 自分なりのお別れ お葬式』
です。
本の帯に書かれているように、いまは、「送られかた」は自分が決められる時代なのです。
監修者の一条さんは、本名、佐久間庸和さんで、このコーナーでも著書を時々紹介させてもらっていますが、
このテーマはまさに一条さんの独断場です。
本書を送ってくれた手紙にこう書かれています。
本書は、葬儀を人間にとっての究極の自己表現としてとらえています。
現代の葬儀におけるあらゆる問題点や疑問点にも広く目を配り、
これから高齢者となってゆく団塊の世代の新しい葬儀スタイルも多数紹介しております。
(略)この本によって、多くの日本人が「死」や「葬」をタブー視せず、
日常的に考えてくれるきっかけになればと願っています。
お葬式を、それも自分のお葬式のスタイルを考えることは、若いときほど、自由に発想できるでしょう。
そして、それは生き方の問題にもつながっていきます。
そういう意味で、私はこの本をぜひ若い世代の人たちに読んでほしいと思いました。
しかし、身近な問題として考えられるのは、私のような世代かもしれません。
最初はちょっと壁があるかもしれませんが、読み出すと、おかしな言い方ですが、楽しくなってきます。
これからの生き方を考える刺激をたくさんもらえるはずです。
一条さんの監修意図は見事に成功しています。
自らの生き方を考えるために、お薦めしたい本です。
■『介護情報Q&A』
(小竹雅子 岩波ブックレット 700円)
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/
コムケア仲間の小竹雅子さんがまとめた、介護情報のわかりやすいブックレットです。
介護保険の基本的なしくみや改正の具体的内容、困ったときの解決方法、関連情報などを、
65の用語にわけて、利用する市民の立場から説明しています。
小竹さんは、市民福祉情報オフィス・ハスカップを主宰され、実に精力的に活躍されています。
そこで集まった情報を、多くのみなさんの「介護のある暮らし」に活用してもらえることを願って、この本をまとめたのです。
とても読みやすく、便利です。
それに小竹さんらしく、極めて実践的です。
本書を20冊以上、まとめて購入されたい方は小竹さんに頼むと便宜を図ってくれます。
私にご連絡ください。
■ギリシア・ローマ文化誌百科(上下)
小林雅夫・松原俊文監訳 原書房 各4300円
小林教授がまた魅力的な本を翻訳され、贈ってきてくれました。
古代世界のパノラマのヴィジュアル版で、実に楽しい本です。
600近い写真が、ていねいな解説と共に載せられていますので、それだけ見ていってもギリシア・ローマ世界を充分に堪能できます。
また単なる通史ではなく、テーマ別にかなり詳しく言及されていますので、新しい発見もたくさんあります。
厚い上下2冊セットなので、実は私も完読していませんが、とてもうれしいのは、写真の解説やコラム、それに関連文献の抄訳がいたるところにあることです。しかも、それらがばらばらにではなくつながりあう形で編集されています。
たとえば、医神アスクレピオスの聖域に立地しているエピタウロスの野外劇場の写真の説明文には、「悲劇によって観客の心にある悩みは「治癒」する」というアリストテレスのカタルシス理論が紹介されていますが、それに関連して、すぐそばにアリストテレスの詩学の抄訳が載っているのです。
ですから、野外劇場と医療とのつながりがしっかりと見えてきます。
私も以前、トルコのベルガモンのアスクレピオン(医療施設)と、その上のアクロポリスにある見事な野外劇場を訪ねてことがありますが、その二つを「メンタルケア」の視点でつなげて考えたことはありませんでした。
アスクレピオンから小高い丘に立つ大劇場は見えるのですが、さらにその後ろにはトラヤヌス神殿が見えたような気もします。
そう考えていくと、アテネのアクロポリスにも、新しい意味を感じとることが出来ます。
そこから、ギリシアの医療とはなんだったのかも想像が広がります。
別のところに書かれている医学の項目の本文に戻って読み出すと、そこにアリストファネスの喜劇「神の福」が抄訳されています。
さらに菜食主義のことまで書かれています。
ベルガモンのアスクレピオンでは、温泉療法や音楽療法の話を聴きましたが、それだけではなく、古代ギリシアの医療は東洋医学につながるホリスティックなものだったことに気づきます。
生活そのものを治療につなげていく中国での体験を、先日、福岡の西川さんからお聞きしたところですが、ギリシアのアスクレピオンでは、そうしたことが行われていたのかもしれません。
そういうふうに、古代世界のパノラマがどんどんと広がっていくのです。
好奇心を膨らませ、その好奇心をかなり満足させてくれるヒントがふんだんに込められている、これが本書の魅力です。
哲学と教育の章も、最近の日本の教育論議に重ねて読んでいくと実に面白いです。
そんなわけで、本書は、読む百科辞書でもあります。
ですから、むしろ通読するのではなく、パッと開いたところから読み出して、索引も活用しながら、前編を自由に飛びながら読むのが、本書には向いているかもしれません。
読書サーフィングが楽しめるわけです。
監訳者の小林教授は、いろいろと身体的な障害をかかえているにもかかわらず、ともかく前向きにいろいろな活動に取り組まれています。
そして奥様が、その小林教授を実にあたたかく支えているように思います。
小林教授はまた、とても人間的なあたたかさをお持ちです。
そうした人柄が、きっと本書にも影響しているはずです。
ちょっと値段が高いですが、存在感のある本書の内容を考えると、それだけの価値のある本です。
パウサニアスジャパンの皆さんや古代世界に関心のある人たち、
そしてちょっと時間が出来始めた団塊シニアの人たちには、ぜひお薦めします。
図書館で借りて読む本ではなく、購入して隣に置いておく本です。
ここから購入できます。
■「知ってビックリ!日本三大宗教のご利益」
一条真也 大和書房だいわ文庫 762円(税別)
一条真也さんの最新作です。
「ユダヤ教 vs キリスト教 vs イスラム教」(だいわ文庫)に続くものですが、今回はvs
ではなく、& でつながれています。
「神道&仏教&儒教」です。
一条さんからの手紙の文章を一部引用させてもらいます。
一神教同士の衝突が人類社会の存続を脅かす現在、わたしたちが目を向けるべきなのは、宗教の持っている寛容性だと思います。
本書で取り上げた神道、仏教、儒教の三宗教はいずれも「情」や「慈悲」や「仁」の精神を重んじた、
つまりは思いやりの心を大切にした宗教であり、
この三宗教が奇跡的に合体を果たした国こそ、わたしたちの日本です。
三宗教はまた、武士道、心学、冠婚葬祭といった子どもたちを生み出し、日本人の心の「かたち」をつくってきました。
そして、一条さんは、こう続けています。
人類の危機を救う秘密は、まさに日本人の宗教生活のなかに潜んでいるという確信の元に本書を書きました。
世界中の人々の心が「&」で満ちたアンドフル・ワールドになることを願って書きました。
書名に違和感がありますが(一条さんも反対したそうですが)、中身はしっかりした本です。
日本の三大宗教は、いうまでもなく「神道・仏教・儒教」ですが、
それらがアンドフルに生み育ててきた世界がわかりやすく描かれていますので、
前著と同じく鳥瞰的な整理をすることができますが、新しい発見もたくさんあるはずです。
なによりも、いつもながらのメッセージ性があるのがいいです。
最後のほうで、石田梅岩の心学が語られていますが、
そこで語られている「心」こそが、神道、仏教、儒教を実践的につなげる要であり、
それが一条さんの主唱しているハートフル・ソサエティにつながることが示唆されています。
先日、一条さんにお会いした時に、心学の話が出ましたが、
きっとそう遠くない時期に石田心学に関する本をまた書くのではないかという予感をもちました。楽しみです。
こうした発展が期待されるメッセージが、本書にはいろいろと込められています。
もう一つ紹介します。
こういう記述があります。
日本において共生した神道・仏教・儒教の三宗教は、冠婚葬祭において合体を果たした。
冠婚葬祭とは何か。
それは、結婚式や葬儀といった人生の二大通過儀礼を中心として、人々の心に共感を生み出す文化装置である。
つまり冠婚葬祭は日本の三大宗教の凝縮した文化であり、
それこそが日本最大の宗教ではないかという意見もあると紹介されています。
一条さん自身は、冠婚葬祭は「宗教」そのものというよりも、「宗遊」とでも呼ぶべきものだと書いていますが、
冠婚葬祭は佐久間さんの独壇場ですので、 この議論の発展は実に楽しみです。
宗遊という概念は、実に示唆に富んでいます。さて、この先が楽しみです。
他にも刺激的なメッセージや発想のヒントがいろいろ込められている本です。
文庫本という手軽な本ですので、気楽に読んでみてください。
■「仏教への旅 朝鮮半島編」
五木寛之 講談社 2007年
このコーナーでは原則として、私の友人知人の著作や友人が関わった書籍を紹介させてもらっていますが、今回は番外編です。
五木寛之さんの「仏教への旅」は全6巻ですが、今回、取り上げるのは3冊目の「朝鮮半島編」です。
この前に出た「インド編」(上下)は、友人の黒岩比佐子さんがインド取材に同行し、構成も担当されたのですが、
今回は黒岩さんの担当ではありません。
以前、黒岩さんが「インド編」を贈ってくださった時に、朝鮮半島編に興味があるとお伝えしたのですが、
そのことを知った編集の方が、私たち夫婦にプレゼントしてくださったのです。
そのお礼を兼ねて、このコーナーで紹介しようと思ったのですが、この間、いろいろあって、読むのが遅れてしまっていたのです。
今朝、早く起きて読ませてもらいました。
読んで、なぜ黒岩さんが私たち夫婦に贈ってくれたのか意味がわかりました。
いまの私たち夫婦の心境にそのままズバッと入ってきました。
黒岩さんに、そして編集者の方に感謝しなければいけません。
本書の紹介をしだすと際限がなさそうです。
五木さんの個人的な話と韓国の仏教事情が、重なるように語られているので、
とても読みやすく、しかも大きな示唆を与えてくれます。
実は韓国の仏教事情や寺院のことを知りたいというのが私の「興味」の内容だったので、もう少し寺院の情景を知りたかったのですが、
読み終えてみると、心象風景的に韓国の寺院が体感できたような気になりました。
本書は、五木さんが育った論山の町にある般若山灌燭寺(アンチョクサ)を訪れるところから始まります。
そこの石造の弥勒仏の写真が本書の後表紙に載っていますが、異形な仏です。
写真を見ているだけでも、涙が出てくるほどにメッセージを送ってくる仏です。
ぜひ書店で、この写真だけでも見てください。
私は、これまでこんなに話しかけてくる仏にお会いしたことがありません。
奈良の勝林院の阿弥陀仏以上です。
韓国の仏教の根底には、華厳の思想「一即多・多即一」と「和諍」の思想があるそうです。
「和諍」とは、さまざまな思想や教えを融合させていこうという姿勢のようです。
おそらく「一即多・多即一」の思想から出てくる姿勢だと思います。
そして、本書の終章は「すべてはつながっている」なのです。
そこで見事に「人を殺してなぜ悪いのか」という、一時話題になった議論への明確な回答も書かれています。
とても共感できますし、納得できます。
華厳には「インドラの網」という寓話が出てきますが、それを思い出しました。
本書にはこれからの生き方を考える上でのたくさんの示唆が込められています。
生き方だけではありません。
インド編と本書との共通点は、インドでも韓国でも仏教が広がり、社会に影響を与えているという動きです。
これは未来を考える上で、大きな示唆を与えてくれます。
しかし、五木さんご自身も書かれているように、インドはヒンズーの国、韓国は儒教の国というイメージが強いです。
その根底で仏教が元気に広がっていることを知ることで、未来への展望は全く変わってくるように思います。
日本の未来を考える上でも、大きな影響があると思います。
しかし、私が本書で大きな元気をもらったのは、五木さんの造語である「只管人生」という言葉です。
いうまでもなく道元の「只管打坐」から創った言葉です。
こんな文章があります。
<ただ生きる>こと、それがいま、私が考えているいちばん大切なことだ。(197頁)
いま、とても深く心に入ってくる言葉です。
おそらく1年前までであれば、頭でしか受け止められない言葉だったでしょうが。
最近、ようやく「生きること」の意味が自分なりに整理できて来ました。
仕事も遊びも、社会活動も、すべては余技でしかないことに気づきました。
19年前に会社を辞めた時に、
「これからは働くでもなく遊ぶでもなく、学ぶでもなく休むでもなく、ただ生きていこう」
と宣言したことの意味が、漸くいま自分の腹に落ちてきました。
女房ともども、いまは生きることを純粋に目的にすることが出来るようになりました。
生きることの哀しさが、最近、心にしみてくるようにもなりました。
その分、歓びもまた実感できるようになりました。
本の紹介のつもりが、なにやら個人的な感想になってしまいましたが、
とても面白かったです。
それにしても、 灌燭寺の弥勒は魅惑的です。
■「団塊世代のミッションビジネス」定年後の社会事業型NPOのすすめ
大川新人編著 日本地域社会研究所 1700円(税別)
コムケア仲間の大川新人さんがまた新著を出しました。
社会に戻ってくる団塊シニアに、これまで蓄積してきた知識や経験を生かして、
地域や社会に役立つ新しい事業を起こしてほしいというエールの書です。
大川さんに関しては、これまでも何回かこのホームページにも登場していますが、
学習院大学卒業後、証券会社に10年間勤務。
その後、多摩大学大学院で、経営情報学修士を取得。
さらに、米国オハイオ州のケース・ウェスタン・リザーブ大学大学院に留学し、非営利組織修士を取得。
帰国後、日本の草の根的なNPOのマネジメントサポートなどに取り組んでいます。
コムケアセンターのサポーターでもあり、
現在はシニアコンサルタントとして、団塊シニアプロジェクトに実際に取り組んでいます。
本書は、昨年、大川さんが中心になって行った事業型NPO起業講座の講演録をベースに、
一緒に講座を受け持ったNPO法人イーエルダーのメンバーの協力を得て、完成した実践の書です。
私も座談会で登場していますが、大川さんの思いを知るものとして、
最初に「序に変えて/団塊世代の新しい舞台が広がりだしています」という小文も寄稿させてもらいました。
このサイトにも掲載しましたので、お読みください。
そして、もし興味を持っていただけたら、本書もお読みください。
本書の目次は次の通りです。
第1章 なぜ、定年退職後にミッションビジネスか
第2章 事業型NPOのすすめ
第3章 NPO法人をつくろう
第4章 NPO法人の事務局運営
第5章 情報通信技術が経営を効率化する
第6章 サービスと顧客満足度を向上させるには
第7章 団塊NPOの成功事例
第8章 団塊世代よ、大志を抱け!(鼎談)
本書の「おわりに」にも告知していますが、
本書の出版を契機にして、出前講座や団塊シニアNPOインターンシップなどのプログラムが始まる予定です。
コムケアセンターとしても全面的に応援していきます。
ご関心のある方は、「団塊世代よ、大志を抱け!事務局」にご連絡ください。
また、講演や研修プログラムもお引き受けできると思います。
なお、団塊シニアプロジェクトを起こすための資金源にするために、
「団塊世代よ、大志を抱け!事務局」でも本書の販売を行います。
少し面倒ですが、上記事務局にご注文いただけるとうれしいです。
「団塊世代よ、大志を抱け!事務局」へのメール
■「挑戦する独創企業−なぜ、この会社はキラリと光るのか!」
浜銀総合研究所経営コンサルティング部編著 プレジデント社 1400円(税別)
私は15年ほど前に書いた「脱構築する企業経営」という雑誌連載記事を、大企業解体の予兆という書き出しで始めました。
産業の主役は、大企業から中小企業へと移るだろうと感じていたのです。
残念ながら、そうはならずに、大企業はますます合併などを通して大規模化しています。
しかし、いま元気な企業は中小企業のような気がします。
大企業組織は人間が思い切り働く場としては制約がありすぎます。
特に時代の変わり目には、主体的に働く社員が働きやすい場でないと、企業は元気にならないのではないかと思います。
実際に最近私が出会う元気な会社は、いずれも大企業とはいえない中小中堅企業が多いのです。
そうした元気企業を20社も集めて、その元気の実態と理由を明らかにしてくれるのが本書です。
単なる事例を集めただけの本ではなく、
長年、中小企業にしっかりと関わってきたプロフェッショナルの目からの評価と解説がついているので、
企業経営に関わる人には絶好の「生きたテキスト」になる本です。
「中小企業の経営者・幹部必読!」と本書の帯に書かれていますが、
私はむしろ大企業の経営幹部の皆さんにこそ読んでもらいたいと思います。
経営の基本は規模によって変わるわけではありません。
本書をまとめた経営コンサルティング部部長の寺本明輝さんとは、長いお付き合いですが、
寺本さんは豊富な知識と情報を踏まえて、実践的な視点でこれまで多くの企業の経営相談に取り組んできた人です。
しかも寺本さんは好奇心が強く、研究熱心な人でもあります。
寺本さんからはこれまでも、日本の中小企業の創意工夫や挑戦意欲のすごさについて、いろいろと刺激的な話を聞かせてもらっていました。
日本の経済を発展させ、支えてきたのは、決して大企業ではなく、中小企業であると確信している私としては、
いつかそれをまとめてほしいと思っていました。
それが漸く実現したのです。
寺本さんは「はしがき」で、「企業経営には必ずドラマがある」と書いています。
本書では独創的な20の優良中小企業に取材し、
それぞれのドラマを紹介するとともに、企業の元気の要因を具体的に解説してくれています。
事例も面白く、示唆に富んでいますが、
それぞれの解説も具体的でわかりやすく、しかも体系的なので、
それを読むうちに経営にとっての大切な視点が自然と学べるようになっています。
このあたりは、豊富な体験と情報をお持ちの寺本さんの独壇場といってもいいでしょう。
ちなみに、独創の源泉として、次の5つの要件が上げられ、それにそった事例が集められているのです。
・ 経営理念とビジョン:大志を抱いて理念を伝え、実行する。
・ 事業の仕組み:事業の仕組みで差別化を実現する。
・ 組織とマネジメント:基本を大切にして経営革新に挑む。
・ 技術と技能:ものづくりの原点に愚直にこだわる。
・ 伝統と革新:変革を恐れず、老舗ブランドを守る。
いずれにも実践例が具体的についていますので、とても納得できます。
浜銀総研が活動の主舞台としている神奈川県だけでも22万を超す中小企業があるそうです。
本書に登場するのは、その1000分の1でしかありません。
すべての中小企業が独創的で元気だというわけではありませんが、
この厳しい経済状況の中で、自らの知恵と努力で経営を持続させていくには、それぞれに独自の実践をしている企業は多いはずです。
大企業と違い、ちょっと失敗したりするとすぐさま倒産してしまうほど、毎日が緊張の連続なのが中小企業です。
そうした実践知からのメッセージは説得力があります。
それに事例に出てくる経営者には、いずれも豊かな表情があるのです。
ですから読んでいて、元気がもらえます。
経営者には人間的な表情がなければいけません。
少しほめすぎてしまったでしょうか。
しかし、企業関係者にはお薦めの書です。
本書よりも詳しく学びたい方は、ぜひ寺本さんのところのコンサルティングを受けてください。
寺本さんの誠実なお人柄は、私が保証します。
寺本さんのブログもこのサイトにリンクしています。
ぜひお読みください。
■「司法改革」
大川真郎 朝日新聞社 2400円(税別)
いま日本の司法制度が大きく変わろうとしています。
一言でいえば、「官の司法」から「民の司法」への転換だそうです。
この活動を熱心に推進してきたのが、日本弁護士連合会(日弁連)です。
CWSプライベートに書きましたが、
その司法改革の山場だった2002年から2004年まで、
日弁連の事務総長を務めたのが、本書の著者の大川さんです。
大川さんと私との関係は、CWSプライベートをお読みください。
日弁連の司法改革への取り組みに関しても、そこに少し書きました。
この本が送られてきた日は、実はまさに私が司法への怒りを強く感じていた日でした。
あまりのタイミングの良さに、早速読ませてもらいました。
ブログにも書きましたが、本書の副題にあるように、
司法改革は「日弁連の長く困難なたたかい」だったようですが、
そこにこそ日本の法曹界の実態が象徴されています。
出版社の表現をかりれば、本書は、
裁判員制度の導入、法科大学院開校と新司法試験、司法支援センターの創設、裁判官・弁護士制度の改善等々、24もの関連法が成立することになった戦後初の司法大改革。
「市民のための司法」を提唱し、先鞭を切って乗り出した日本弁護士連合会(日弁連)が、政府や最高裁・検察と時に対峙し、時に妥協して改革を実現していった過程を、客観的かつ具体的にたどる「昭和・平成司法改革」編年史。
です。
これはとても正確な紹介で、当時の資料や発言などをていねいに引用して、
「司法改革」の経過が客観的かつ具体的に解説されています。
著者の思い込みや押し付けは全くありません。
著者の大川さんの人柄を感じさせます。実に誠実でフェアです。
資料を駆使したドキュメントなので、司法界以外の人にはやや難解で退屈ですが、
内容が極めて誠実ですので、司法に関心のある人はちょっと努力して読む価値があると思います。
内容のあるしっかりした本です。
「司法改革」と言っても、政府や裁判官、あるいは財界の姿勢と日弁連の姿勢とはかなり違うことが、本書を読むとよくわかります。
前者は、「現状の不備なところを直す」。
後者、つまり日弁連は、「すべて国民は、個人として尊重される」(憲法13条)社会をつくるためというのが基本姿勢のようです。
この違いが本書での改革の経過を読むとよく伝わってきます。
司法改革というと、裁判員制度が話題になりがちですが、
法テラスという法律相談の仕組みの充実やロースクールの拡充なども重要です。
「小さな司法」「大きな司法」という言葉も出てきます。
これからの司法を考えていくためのたくさんの材料が、この本には詰まっています。
もちろん、日本ではすでに「司法改革」は議論の段階を終えて、制度的には実践に入っているわけですが、
制度を活かすのは関係者(最大の関係者はもちろん国民です)の意識と行動です。
私たちはもっと司法に関心を持ち、その実態を知る努力をすることが大切です。
その意味で、かなり重い本ではありますが、司法関係者以外の方にもお薦めの本です。
この本をテキストにした学習会も広がると効果的ですね。
ちなみに、本書にはもう一人私の知人が出てきます。
テレビで何回かご一緒した小林完治弁護士です。
テレビに出るタレントのような弁護士は好きにはなれませんが、
小林さんは大川さんと同じように誠実さを感じさせる人です。
おそらくテレビで現を抜かしながら社会をだめにしている弁護士とは全く違う種類の弁護士が、
司法の現実を変えようとがんばっているのでしょう。
そんなことも考えさせられました。
そんなわけで本書はお薦めの本ですが(読もうという覚悟のある人にだけですが)、
私の司法への評価は残念ながら変わりませんでした。
ブログの「司法時評」で書いてきたことは撤回する気にはなれませんでした。
「官の司法から民の司法へ」「市民のための司法」。
それがどういうものか、私にはまだわかりませんが、方向は歓迎できます。
問題は、その中身です。
法は、社会のあり方によって全く変わってきます。
どんな社会を目指すのかによって、法の役割は変わるのではないかと私は思います。
その「どんな社会を目指すのか」という議論が見えてこないのが一番の不満です。
これを法曹界に求めるのは過大期待だといわれそうですが、
法を考えるということはそういうことなのではないかと思います。
よかったら「司法時評」も読んでください。
かなりの暴論集なのですが。
ここから購入できます。
■「ハートフル・カンパニー」
佐久間庸和 三五館 2800円(税別)
今年最初の紹介は、佐久間庸和さんの「ハートフル・カンパニー」です。
著者の佐久間庸和さんのペンネームは、一条真也さんです。
このコーナーにたびたび登場している人です。
その一条さんの「平成心学三部作」の完結編が本書です。
かなり前にいただいていたのですが、いろいろ事情があって、途中で読むのが止まっていたのです。
それに実に読み応えのある本なのです。
前の2冊とは趣がかなり違います。
本書は副題に「サンレーグループの志と挑戦」とあり、著者名もペンネームではなく、本名で出版しています。
サンレーは北九州市に本社を置く、冠婚葬祭を事業ドメインとする会社です。
前にも書きましたが、冠婚葬祭への思いの深さにおいては、サンレー以上の会社はないでしょう。
佐久間さんが構想している冠婚葬祭の意味は、実に広く深いのです。
佐久間さん、つまり一条さんの世界は、
このサイトにリンクしている佐久間さんのホームページを読むと少し理解できるかもしれません。
21世紀に入った2001年、佐久間さんはこの会社の社長に就任しました。
そして社員たちに呼びかけながら、佐久間さんらしい会社づくりに取り組んできました。
その理念や方法は、佐久間さんがこれまで著した様々な書籍に書かれていることです。
つまり佐久間さんは、学んだこと、考えたことを、自らの会社で実践してきたのです。
まさに佐久間さんが目指す知行合一です。
そして見事にサンレーの業績は向上し続けているのです。
本書は、そうしたサンレーの経営実践を、社長として社員に呼びかけていた文章や話の記録を中心にまとめた本です。
時系列で読めることも興味を高めます。ライブ感があります。
なんだ、社長の訓示集かなどと思わないでください。
その種の本で面白い本は皆無に近いのも知っています。
しかし本書に出てくる話は、そのテーマ、語られる話題や情報、語り口のスタイルなど、実に多彩で問題提起的です。
具体的にして、普遍的といってもいいでしょうか。
ボリュームも多いので、なかには飛ばしたくなるような部分もないわけではないのですが、
ところどころに光る言葉や心動かされるメッセージもちりばめられています。
いささか褒めすぎの感もありますが、
これまでの佐久間さんの著書を読んできたものとしてはとても面白く読ませてもらいました。
こういう経営者がもっと増えてきたら、日本の産業界は大きく変わるでしょうね。
会社経営者の方にお勧めの1冊です。
■ 「恋に導かれた観光再生」
中村元 長崎出版 1400円(税別)
「車イスの青年に恋した少女が、
青年に気に入られようと動くたびに奇跡が起きた。
人を動かし、町を動かし、行政を動かし、
とうとう国まで動き出す。」
本書の帯にはこう書かれています。
これは伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの誕生の物語です。
著者は同センターの理事長の中村元さんです。
中村さんとは朝日ニュースターの番組で何回かご一緒しましたが、実に楽しい人なのです。
中村さんのブログもこのホームページにリンクされていますので、ぜひお立ち寄りください。
ちなみに中村さんは水族館にも新しい風を起こした人なのです。
その分野のほうで有名なのですが、今回は違った分野での著作です。
本書の内容は帯の紹介文でおわかりいただけると思いますが、
「バリアフリー」「観光」「まちづくり」「社会変革」「NPO」などのテーマに関心のある方はぜひお読みください。
とても気楽に読める楽しい本ですが、
たくさんのメッセージと提案、あるいはこれからの社会を考える上での重要な問題提起がちりばめられている密度の高い本なのです。
まずは書き出しの言葉が刺激的です。
日本の多くの観光地では、まちづくりというものが行われていない。
全く同感です。
こうも書いています。
町の住民が誇りに思わない観光地に、観光客が集まるわけがない。
本当に住民不在の観光行政がまだ少なくありません。
さて、本文ですが、これがまた実に面白く、示唆に富んでいるのですが、
とても衝撃的だったところを一つだけ紹介しておきます。
車いすで伊勢神宮に入れなかった人の話です。
詳しくは回転ちょこラムのサイトを開き、
右上の「アルバムをみる」で、2003年4月24日と26日を探して読んでみてください。
衝撃的です。少なくとも私にとっては、衝撃的でした。
バリアフリーの本質が示唆されている事件です。
なにやら持って回った言い方ですが、興味のある方はぜひ本書をお読みください。
この本の真骨頂は11章です。
こんな文章があります。
かつては江戸よりも文化の集積と発信の中心地だった伊勢。その勢いをバリアフリー観光で再現したい。
中村さんたちは、本気でそう考えているのです。
だからこそ、先の伊勢神宮事件は大きな意味を持ち資源になりえるのです。
ちょっと脈絡が見えない紹介ですみません。
ともかく 、11章に中村さんたちの大きな構想が読み取れるのです。
中村さんたちは、いまこのプロジェクトでつくりあげてきた、
パーソナルバリアフリー基準を全国に広げていこうと、日本バリアフリー協会の設立に取り組んでいますが、
その奥には日本社会のパラダイム転換への挑戦があるのです。
「あとがきにかえて」と題して、「補完性の原則」への中村さんの思いが書かれています。
それを踏まえて、もう一度、本書を読むと、きっとこれまでのまちづくりの限界や今の地方分権のおかしさに気づくはずです。
この1年、中村さんとはお会いしていませんが、中村さんらしい、実践の書です。
書名が良くないですが、内容はとてもよい本ですので、まちづくりやNPO活動に取り組んでいる人にお勧めしたいです。
中村さんのブログも面白いですよ。
■「M&A資本主義 敵対的M&A・三角合併防衛法」
小倉正男 東洋経済新報社 1700円(税別)
週間報告にいろいろと書きましたが、日本のIRの草分けの鶴野史朗さんから送られてきた本です。
鶴野さんの友人の小倉正男さんの最新著作で、鶴野さんの活動も紹介されています。
株価資本主義が、株式という「世界共通通貨」でM&Aを一般化、活性化させ、
ニッポン資本主義を新しい局面に導いていくという時代の流れの中で、
日本企業はどうしたらいいかをわかりやすく実践的に解説しています。
著者は必ずしも株価資本主義に賛成しているわけではありません。
しかし、2007年にいわゆる三角合併(外国企業が日本の子会社を通じて日本企業を買収すること)が可能になれば、
日本型経営の歯止めのあったニッポン資本主義は「株価資本主義」にはっきりと移行する、
つまり旧来のニッポン株式会社は完全に解体され、グローバルな資本主義に組み込まれるという展望のなかで、
しっかりしたコーポレート・ガバナンスの仕組みを整え、
企業価値(必ずしも株式価値ではありません)を高めておかなければ、
海外のハゲタカファンドにやられてしまうというわけです。
とても説得力のある話です。
ジャーナリストとしての著者の見識も伝わってきます。
企業の経営幹部の方にはしっかりと読んでほしい本です。
目次をご紹介します。
第1章 M&Aの活発化と日常化
第2章 三角合併解禁の脅威
第3章 株式持ち合い解消がM&A活発化をもたらした
第4章 「時価総額」をどう考えたらよいのか
第5章 企業価値極大化は自らの経営努力で実現せよ
第6章 コーポレート・ガバナンスこそニッポン資本主義の課題
第7章 株主判明調査、プロキシー・ソリシテーションの進化
第8章 “株主に顔を向けた経営”こそM&A防衛策
第9章 敵対的なM&Aで狙われるのは「低PBR会社」
第10章 “ハゲタカ・ファンド”が次に狙う巨大な獲物
ちなみに、私は株価資本主義への流れではなく、
広義のステークホルダーの長期的な視点に立った企業価値に立脚したコーポレート・ガバナンスの仕組みが育っていくのではないかと期待しています。
そのためには、企業の組織原理や規模が大きく変わる必要があるように思います。
久しぶりに企業論を読んで刺激を受けました。
みなさんにもお勧めです。
■「集合住宅の時間」
大月敏雄 王国社 1900円(税別)
私は安藤忠雄の建築が好きではありません。
というか理解できないのです。
その意識が明確になったのは、瀬戸内海の直島の家プロジェクトの空間を体験させてもらってからです。
いずれもとても素晴らしい作品でしたが、どうも違和感が残ったのです。
空間への愛情を感じられないのです。
私が好きな建築はホッとする空間のようです。
空間に静かな記憶が残っていくような建築です。
本書は、保育プロジェクトや美野里町プロジェクトなどでご一緒した大月敏雄さんの最初の単行本です。
書名がとても大月さんらしくて、うれしくなりました。
帯にこんなメッセージが書かれています。
濃密な「生活の記憶」を語り継ぎたい
古びた集合住宅の建物の言いぶんに耳を傾けてみよう。
目に見えない時間の蓄積を味わう魅力に浸ってみよう。
昨今の子育てのように良い所を見つけてほめてみよう。
本書には生活の記憶を存分に感じさせる24の「集合住宅と呼ぶことのできる」建物が登場します。
そして、大月さんという思いを持った語り手によって、
それぞれの生い立ちやそこでの物語がとても人間的に語られています。
一つひとつの物語から、これまでの自らの生き方を考え直したくなるメッセージが伝わってくるのは、私の世代のせいでしょうか。
時に懐かしく、時に痛みを感じながら。
それぞれの物語と、そこに託した大月さんのメッセージは本書を読んでもらうとして、
ここではそこに通じている大月さんの大きな思いについて紹介しておきたいと思います。
それは私がずっと感じていた思いでもあるからです。
大月さんが問題にするのは、建物における減価償却の発想です。
大月さんはこういいます。
日本の建築物においては、「時間が経つことは、価値が無くなっていくことである」という悲しい現実があるのである。
そのせいもあって、日本の都市は常に記憶喪失の危機に瀕しているのである。
「このまま行けば日本人は「国民総記憶喪失」になるのではないか」と大月さんは心配しています。
心配はすでに現実になっているというのが、私の認識ですが、
それを助長しているのが、減価償却パラダイムの建築概念ではないかと大月さんはいうわけです。
そして、
「時間が経てば価値が減る」ことが常に正しいというのは、なんだか変なのではないか、
と大月さんは疑問を呈します。
「時の経過とともに価値は減っていく」。
もしこれが人間に適応されるとしたらどうだろうか。
「あなたの価値は年を経ていくごとに減っていき、60歳になると、価値がゼロになります」
(後略)。
恐ろしい話だと思いませんか。
大月さんは、同潤会アパートを中心とした、古い集合住宅の実測調査や
そこに住んできた人々への聴き取り調査などを20年近く取り組んできています。
それに関する報告書や論文もたくさんあります。
そうした長年の現場体験が、こうした問題提起の背後にあるのです。
建造物でも、時間の経過が価値を高める世界があります。
遺跡や歴史的建造物です。
私の好きな世界です。
その世界とは全く正反対に、時間経過をマイナス価値にしてしまったのが、
現在の産業社会であり、資本主義経済システムです。
そこでは「破壊」や「浪費」が「発展」と「生産」に置き換えられてしまったのです。
時間の概念も全く変わってしまったのです。
そんな大きな問題提起を感じながら本書を読むと、
改めて昨今の私たちの暮らしぶりや生き方の貧しさを感じてしまいます。
とても示唆に富んでいる本です。
建築家ではない人たちにも、ぜひ読んでもらいたい本です。
■「東尋坊 命の灯台」
茂有幹夫 太陽出版 1300円(税別)
コムケア仲間の茂さんは、福井県の東尋坊で自殺防止活動に取り組んでいます。
東尋坊は、絶景の観光地として有名ですが、同時に、別名「自殺の名所」とも言われています。
日本海に突き出した断崖の上に立つと吸い込まれてしまうような気持ちになってしまいます。
茂さんのことはこのサイトにも書きましたが、
NPO法人「心に響く文集・編集局」を立ち上げ、地道な活動を展開されています。
茂さんたちの活動で、自殺を思いとどまった人は少なくありません。
今年、「毎日社会福祉顕彰」を受賞されましたが、その時のインタビュー記事をお読みください。
茂さんのあたたかさが伝わってきます。
私は9月に東尋坊でお会いしましたが、その時に今度本を出版するとお話になっていました。
その本が本書です。
この本を読むと今の社会のおかしさが見えてきます。
茂さんは東尋坊のある三国警察署に勤務したのが契機になって、この活動を始めるのですが、その経緯もこの本に書かれています。
とても共感できます。
その事件は平成15年に起こりました。
茂さんは当時、三国警察署の副署長でした。
薄暗くなった東尋坊の松林で黙ってベンチで横たわっている年配の2人ずれに出会ったのです。
訊いてみると経営していたお店がうまくいかずに、東尋坊で自殺しようと決めてやってきたのだそうです。
話をしているうちに、2人の手首にカミソリで切ったまだ新しい傷があることに気づいた茂さんは、
すぐに地元の病院に入院させ、役場の福祉課に「現在地保護」の手続きを頼みました。
ここで事件は終わるはずでした。
5日後、その2人から手紙が届きました。
茂さんへのお礼の手紙でした。
しかし、2人はその手紙を出した後、首吊り自殺をしてしまったのです。
相談に行ったところすべてから見捨てられたのです。
茂さんはこう書いています。
当時私は現職の警察官でした。
42年間の警察官生活の中で私は、
日本という国は、「助けてほしい」と叫んでいる人がいたら、
どこかでだれかが助けてくれる、すばらしい法治国家であると信じてきました。
しかし現実は違っていました。
因っている人を保護する法律は、ちゃんとあるはずなのに・・・。
少し長いですが、続けて引用させてもらいます。
警察は保護すべき者を発見した際は速やかに福祉機関に引継ぐ義務があり、
引継ぎを受けた行政機関は、保護を決定して保護を開始すべき義務があり、
それを怠った者には罰則が課せられるのです。
私はそれを信じて、2人に「国に保護を求めなさい」と助言しました。
2人は私の言葉を信じて旅を続けたのです。
しかし北陸道の沿線にある役所では、支援をしてくれる場所が1箇所もなかったのです。
あの2人にとって私の存在は何だったのでしょうか。
死までの苦しみをさらに長引かせただけの存在だったのではないでしょうか。
私はあの2人に、二重の苦しみを与えるだけの存在になってしまったのでしょうか…。
もっと引用したのですが、きりがないので、それはこの本を読んでもらいたいと思います。
2人からの手紙も本には紹介されています。
この事件が茂さんの人生を変えました。
茂さんはこう書いています。
どんな思いであの2人は、私に手紙を託したのでしょう。
口をつぐむのは簡単です。
しかしこれからも第二、第三の犠牲者が生まれるのを見続けて、私は心穏やかでいられるでしょうか。
自分には関係ない、自分の責任ではないと、平然としていられるでしょうか。
なぜ、定年も間近になって、こんな出来事が起こったのか。こんな現実を知ったのか。
知ってしまった以上、私がやるしかないという決意が、ゆっくりと固まっていきました。
10年間に253人もの人が苦しみながら死んでいる。
だれかが253人の代弁者となり世間に訴えなければ、世間の人は気づいてくれない。
「あなたならできる、あなたがやるしかない」と白羽の矢が立てられたような気がしました。
茂さんの思いが痛いほど伝わってきます。
人はこうして自分の人生を変えていくのです。
この本には、茂さんが体験した何人かのケースが紹介されていますが、
茂さんはそうした事例を闇の中に放ってはいけないと考えました。
もっとみんなで考えなければいけない問題です。
私もコムケア活動を通じて、さまざまな人生にささやかに触れるようになってから、
茂さんと同じように問題をもっとオープンの場でみんなで考えていかなければいけないと思うようになりました。
それに自分に無縁な問題などはこの世にはないのです。
すべてがつながっています。
この本にはもうひとつ考えさせられる文章が載っています。
茂さんと一緒に活動している川越さんの体験談です。
茂さんと川越さん。
お2人の実体験に基づく活動に心から敬意を表したいと思います。
いま、私は「いのち」という問題に改めて直面していますが、
この本を読んで、その問題の深さに畏れを感じています。
みなさんにもぜひ読んでほしい本の1冊ですので、あえて詳しく紹介させてもらいました。
ここからも購入できます。
■「商いの原点」
荒田弘司 すばる舎 1600円(税別)
日本の商人道や経営哲学をライフワークにされている荒田弘司さんの新著です。
荒田さんは日産自動車で活躍された後、
いくつかの企業の役員として企業経営に取り組まれていましたが、
そうした経営の実践を踏まえて、企業経営の現場から引退された後も、
日本の経営のありかたに熱心に取り組まれています。
私がお会いしたのはもう15年ほど前なのですが、
その頃から終始一貫した姿勢を持ち続けられています。
荒田さんは企業の現役時代は経理畑でした。
経理の世界にいると企業の実態がしっかりと見えるのでしょう。
最近の経理の専門家は数字だけを追っているような気もしますが、
荒田さんは数字の背景にある企業経営の実態を見ていたのです。
そして次第に関心が経営哲学や顧客価値などに向いてきたのです。
本書はそうした荒田さんの最新の研究成果です。
本書の副題は「江戸商家の家訓に学ぶ」となっています。
三井家に始まり、近江商人まで、それぞれの家訓をベースにして、
日本企業の経営の基本哲学がとてもわかりやすく紹介されています。
原文もたくさん引用されているので荒田さんのガイドでかみしめるのもいいでしょう。
読めば読むほど示唆が得られます。
荒田さんは「結び」で次のように書いています。
企業が社会に対する本来の役割を果たしていくためには、関係者全員が一致して行動しなければならない。
そこで、企業理念、行動規範が必要となる。
企業は理念を具体的に文字に示すことで一致団結し、行動していけるのである。
現代にあっては、理念を持たないために、企業が向かうべき方向が明確でなかったり、
株式など単なる運営手段にすぎないものを、目的であるかのように錯覚しているケースが、あまりに多い。
今般社会を騒がす事件は、その結果発生しているといってよいだろう。
企業は今こそ、自社の〈家訓)を簡潔かつ明快に示すべきなのである。
江戸商家の家訓を読み解くことで、現代企業のあり方を考える一助としたい。
同感です。
昨今の日本企業には経営哲学が不在どころか、
経営も不在になっているような気がしてなりません。
企業経営に関わる方々にじっくりとかみしめてもらいたい本です。
■「NPOが自立する日」
田中弥生 日本評論社 2200円(税別)
日本のNPO活動に当初から関わってきた田中弥生さんの新著です。
副題が「行政の下請け化に未来はない」と、明確な主張を持っている本です。
この田中さんのメッセージは昨年のNPO実態調査を下敷きにしていますので、単なる論理演算のメッセージではありません。
具体性があるのです。
それに彼女の長年のNPOとの付き合いを通して到達したメッセージなのです。
ですから説得力があります。
私などはむしろ下請け化したNPOが日本のコモンズをだめにするとさえ思っていますが、これはあまり説得力がありません。はい。
NPOとの付き合いの中で、最近、田中さんは「NPOの何かが変質しているのではないか」と感じ始めたのが本書の始まりだったそうです。
彼女とNPOの付き合いは、冒頭の「はじめに」に書かれていますが、これがなかなか面白いです。
田中さんとの付き合いは長いのですが、本書の書き出しは初めて聞く話で、とても興味を持ちました。
NPO前史を田中さんはいろいろと見聞しているのです。
面白いのはもちろん「はじめに」だけではありません。
本文も事例とメッセージと全体像がうまく編集されていて、文章もこなれて読みやすく、しかも示唆に富んでいます。
何よりも好感が持てたのは目線がしっかりしており、指摘が明確なことです。
NPOへの愛着も感じられます。それにこれまで以上に腰が座っているのが伝わってきました。
現実を踏まえると論考に迫力が出てきます。
ともかくこれからのNPOの展開を考えていく上でのたくさんの示唆が得られる、NPO関係の好著です。
NPO関係者はもとより、行政や企業の人たちにもぜひ読んでほしい1冊です。
■「技術倫理 日本の事例から学ぶ」
佐伯昇・杉本泰治編著 丸善 2000円(税別)
科学技術者の倫理問題に精力的に取り組んでいる杉本泰治さんが
北海道大学の佐伯昇教授たちと一緒にまた新しい本を出版されました。
70代も後半に入ったはずの杉本さんの行動力にはいつも頭が下がります。
杉本さんは日本の大学に「技術者倫理」の講座を広げようと
NPO法人科学技術倫理フォーラムのメンバーと一緒に講座を展開してきていますが、
本書はそのメンバーたちの共著です。
分筆されていますが、特に杉本さんの書いた部分には明確な主張を感じます。
私とは少し考えの違うところもないわけではありませんが、
主張が明確ですので、とても気持ちよく読めます。
本書は大学の教科書として書かれています。
杉本さんはすでに教科書として「技術者の倫理入門」を出版していますが、
本書は「実学的に技術倫理の基本的な考え方、意思決定の手法が習得できるように
学習プログラムが組まれている」と書かれているように、
効果的なグループ討議ができるように編集されています。
「グループ討論の新しいモデルを示した」という著者たちの思いが、これまでとは違う魅力を生み出しています。
私が特に共感したのは、取り上げた事例の広がりとその取り上げ方です。
序に「現代、科学技術は人間生活に広く深く関わり、あらゆるところに技術者の職場があり、倫理問題がありえる。
本書が取り上げているのは、現代の技術者の身近にある倫理問題である」と書いていますが、
選ばれた事例を読むだけでも、著者たちのパースペクティブの広がりを感じられます。
技術者に限らず、倫理問題は当事者の世界の広がりだと考えている私にとっては、とても共感できる姿勢です。
技術者倫理は限られた世界で語られると逆効果になりかねません。
技術者の世界を広げることこそが、技術者倫理の最大の課題ではないかと私は思っています。
事例の中に「えちぜん鉄道」が取り上げられています。
えちぜん鉄道は、京福電鉄が福井県下で運営していた越前本線が2度の事故のために廃線になったのを
福井県と沿線自治体が一緒になって継承した第3セクターです。
第3セクターというとあまりイメージは良くないですが、
沿線住民も一緒になって、とても素晴らしい運営をしているようです。
どう素晴らしいかは本書をぜひ読んでほしいと思いますが、一部、そのさわりを次のサイトでお読みください。
http://www12.ocn.ne.jp/~shiokaze/newpage22.html
杉本さんは実際にえちぜん鉄道に乗車し、その体験も踏まえて本書で感想を書かれています。
とても心あたたまる事例報告ですが、こうした事例でもわかるように、
本書が取り上げる事例や本書のメッセージには、人間や生活の視点が感じられます。
技術倫理などというと難しいイメージを持つかもしれませんが、
要は生活視点をしっかり持つことが倫理の基本なのだと思います。
目次の一部を紹介しますと、
「人間生活における注意義務」
「組織のなかの個人」
「コミュニティの人間関係と内部告発」
「人間と動物の関係」など、魅力的な項目が並んでいます。
しかもそのすべてがしっかりした事例を中心にやさしく語られています。
大学生に限らず、技術者や科学技術に関わる人にも読んでほしいと著者たちは書いていますが、
私は技術者に限らず、企業人や生活者すべての人が大きな示唆を得る本だと思います。
特に企業経営幹部の人たちには読んでほしいと思います。
グループ討議のガイダンスを活用しながら、話し合いのテキストとしても最適です。
ちなみに、私も科学技術倫理フォーラムのメンバーです。
こうした杉本さんたちの活動をさらに広げていくために、
2006年11月26日に、技術者倫理の問題を暮らしの視点から考える公開フォーラムを企画しています。
10月になったら詳しい案内をお知らせコーナーで行ないますので、ぜひご参加ください。
関心のある方は私にメールを下されば、別途ご案内します。
■「平和のための政治学」
川本兼 明石書店 2600円(税別)
川本兼さんは積極的に若者向けへの平和の働きかけをしていますが、この4年で6冊の本を出版されました。
しかも、極めて密度の濃い内容を、高校生でも理解し興味を持てるように、十分に咀嚼した本です。
単なる知識を整理した本ではなく、川本さんオリジナルのメッセージもあります。
川本さんへの平和への思いの深さや危機感の強さが伝わってきます。
本書は前著「平和のための経済学」の姉妹編ですが、副題には「近代民主主義を発展させよう」とあります。
高校生や大学生を意識した書き方になっており、言葉の概念整理をしっかりしていますので、
言葉だけの議論ではなく、実体議論がなされていることに好感が持てます。
知識を持っている大人たちには、時に教科書的な印象を与えるかもしれませんが、
今こそこうしたしっかりした本を多くの大人たちにも読んでほしいと思います。
決して、若者向けだけの本ではありません。
政治とは何か、国家とは何か、民主主義とは何か、といった基本的な概念を、
私たちはあいまいにしたまま、政治論義をし、平和論議をしがちですが、それでは議論は出来ても行動にはつながりません。
本書の内容は別のサイトをお読みください。
http://www.hanmoto.com/bd/ISBN4-7503-2404-3.html
私が面白かったのは、「民衆」「公衆」「大衆」「群集」の議論です。
そうした言葉に本質が含まれていることは少なくありません。
「民主主義は平和と結びつくことによって発展する」も面白かったです。
普通は「平和は民主主義に結びつくことによって発展する」という議論が多いのですが。
最終の項目は「近代民主主義はもはや『遅れた民主主義』である」です。
国家権限の再配分の提案もあります。
どうですか。読んでみたくなりましたでしょうか。
もう少し薄くして、安くしてほしいですが、まあじっくり消化すれば格安の本です。
高校生に戻ったつもりになって、読んでみるととても楽しいかもしれません。
そして、読んだら是非行動に移してもらえればと思います。
平和に向けてできることはたくさんあります 。
今の日本は、まさに歴史の帰路にあります。
ちなみに川本さんの本書以外の最近の5冊は次の通りです。
いずれもブックのコーナーで紹介しています。
●「平和のための経済学」
●「自分で書こう!日本国憲法改正案」
■Q&A「新」平和憲法
― 平和を権利として憲法にうたおう
●「どんな世界を構想するか」
●「どんな日本をつくるか」
川本さんを囲んでの平和論議に関心のある方は私にご連絡ください。
3人以上のご希望があれば、企画します。
■「栗原貞子を語る 一度目はゆるされても」
広島に文学館を!市民の会 700円
活動記録でも紹介した「広島に文学館を!市民の会」のブックレット第1号です。
2005年に開催されたシンポジウム「栗原貞子を語る」の記録を中心に、栗原さんの作品なども収められています。
内容に関しては、中国新聞の記事がとてもよく欠けていますので、それに委ねたいと思います。
「栗原貞子さん解説のブックレット」
私は、このホームページにある折口日記の筆者の折口さんから贈ってもらいました。
折口さんは、栗原さんの詩の仲間である原博巳さんからこの本を教えてもらったようです。
私は折口さんにも原さんにも、実はまだ面識がないのですが、不思議なご縁が続いています。
小冊子ですが、内容はとても密度が高く、感動的です。
入手はやや面倒かもしれませんが、市民の会で受け付けています。
周りに人にも勧めてもらえるとうれしいです。
平和はいま、大きな曲がり角に来ているように思います。
諦めたくなりますが、この本を読んで、やはり諦めてはいけないと思いました。
為政者にも読んでもらいたいです。
■碑文から見た古代ローマ生活誌
ローレンス・ケッピー 小林雅夫・梶田知志訳 原書房 2500円(税別)
7月のオープンサロンでご紹介した小林教授の最新の翻訳書です。
実は贈られた書籍は1週間以内に読むのですが、この本は読み応えがあり、
読み流すことができずに紹介が遅れてしまいました。
古代ローマの生活誌に関しては、
たとえば弓削達さんの「素顔のローマ人」(河出書房新社)などありますが、
そうしたものとはちょっと違い、碑文を通した、もう一つのローマ市を感じさせてくれるのです。
碑文というものの魅力も伝わってきます。
それにしても、人間とは「書き残すこと」の好きな生物であることがよくわかります。
落書きも含めて、いたるところに「歴史」を残しているのです。
エジプトのメムノンの巨像は小学校の時に小松崎茂の「砂漠の魔王」で知って以来、憧れだったのですが、
10数年前に感激の出会いを持ちましたが、そこにはたくさんの落書きがありました。
本書によれば、1000を超える落書きがあるそうです。
トルコのエフェソスでもいくつかの落書きの話をガイドから聞きましたが、
この本を読んでいたら、そうした場面がもっと楽しくなったでしょう。
パムッカレの商人の墓の話も出てきますが、古代地中海世界が大好きな私としては、
ちょっとした記述の一つ一つがとても興味深いものでした。
塩野七生さんの「ローマ人の物語」とは、また違った面白さがあります。
私がもっと知りたかったのは、1818年年に発見されたという碑文です。
5字5行の四角形の語方陣ですが、これがミトラス経やユダヤ教徒関連があるとの説もあるそうです。
こういう少し秘密めいたものにはなぜかわくわくします。
ローマ市に詳しい人が読むと実に楽しい本なのでしょう。
メセナの語源になったというマイケナスらしい人も登場しますし、じっくり読むと楽しいです。
古代ローマ市に関心のある方にはお勧めです。
但し、一気に読むのではなく、気が向いたら面白そうなところを読んで、
最後に序文の「歴史を塗りかえる碑文」を読むといいでしょう。
なお本書の内容に関しては、次のサイトが参考になります。
http://www.augustus.to/books/archives/2006/08/post_27.html
■「ユダヤ教
vs キリスト教 vs イスラム教 宗教衝突の深層」
一条真也 だいわ文庫 762円(税別)
また一条さんの新著です。
ちょっとこれまでのものとは分野が違いますが、これまた意欲的な長期構想(世界を "vs"で読み解きたい)の最初の著作です。
まえがきの一部を引用させてもらいます。
この前書きの文章で私はこの本の基本姿勢に共感を持って読ませてもらいました。
本書は、人類の歴史に大きな影響を与えてきた三人の姉妹の物語である。
長女は、ユダヤ教。二女は、キリスト教。そして、三女は、イスラム教である。
同じ親、つまり同じ一神教の神を信仰し、「旧約聖書」という同じ啓典を心のよりどころにしながら、憎しみ合い、殺し合うようになった世にも奇妙な三人の姉妹。
(中略)
姉を慕う三女は二女とは初めからうまく付き合えなかった。好戦的な二女がいつも攻撃を仕掛けてくるので、仕方なく受けて立つようになった。
(中略)
本書は、この3人の娘の生い立ちから、その精神世界まで広く探ってゆく。
三姉妹宗教を知れば、世界が見えてくる。
私は10年ほど前まで、ギリシアとペルシアに関して、民主的で人間的なギリシアと専制的で非人間的なペルシアというイメージを持っていました。
20年ほど前に、ペルシア史の入門書を読んでそのイメージを疑いだしました。
私の世界観や歴史認識は、近代西欧の価値観に浸りきっていたようです。
それはともかく、ペルシアのほうが人間的だったのではないかという思いがぬぐい切れません。
キリスト教へのイメージもまたその頃から大きく変わりました。
いまの世界の構造の見え方も、その疑問に立脚するとマスコミとは全く違ったように見えてなりません。
洗脳教育とは恐ろしいものです。洗脳教育は何も北朝鮮だけの話ではありません。
いや、そもそも教育の本質は洗脳なのかもしれません。
信頼できる友人でも、その考え方においては全く受け入れない場合が少なくありません。
考え方が違うからといって、信頼関係が揺らぐことはありませんが、
時々、やりきれない気持ちになることはあります。
世界観や人生観において埋めがたい断絶を感ずるからです。
世代の違いかもしれませんが、もしかしたら教育環境(学校だけではありません。
最高の教育はマスコミからの情報です)の違いかもしれません。
ところで本書ですが、コンパクトな文庫版ですが、内容は欲張っているといいたいほど網羅的です。
しかしそこに著者のメッセージがこめられていますので、単なる解説書ではありません。ですから面白いです。
時にはこんな本もいかがでしょうか。
無節操で見識のないマスコミの論調への免疫を高めるためにも。
■「孔子とドラッカー ハートフル・マネジメント」
一条真也 三五館 1500円(税別)
一条真也さんに鬼神が乗り移ったとしか思えないのですが、また新著です。
よくもこう、次々と出版されるものだと感心しますが、その一冊一冊がとても消化されており、実践的なメッセージに満ちているのです。
大学に籍を置き、研究や執筆を業としているのであれば不思議はないのですが、
一条さんはれっきとした年商200億円の企業の社長なのです。
しかし、驚くのはまだ早いのです。
本書を受け取って1週間もしないうちに、こんなメールが来ました。
「鬼神が乗り移ったせいか、もう1冊上梓いたしましたので、また送らせていただきます。」
いやはや、勢いのある人の行動力は、計り知れないものがあります。
それはともかく、この本は前に紹介した「ハートフル・ソサエティ」に続く平成心学三部作の第2弾ですが、
同時にまた前作の「知の巨人ドラッカーに学ぶ21世紀型企業経営」ともセットになっています。
とても実践的で、しかも理念的です。
読者は経営の極意を学ぶとともに、その生き方への大きな示唆を得るはずです。
編集のスタイルも工夫されています。
読書嫌いの最近の企業人でも気安く、そして楽しく読めるようになっています。
全体が48の章に分けられているのですが、
その見出しが、たとえば、「仁」「義」「礼」などという漢字一字になっています。
いかにも孔子だなと思われるかもしれませんが、
中には「利」「運」「怒」「泣」「狂」など、一条風もふんだんに取り上げられています。
もちろん文中にはドラッカーも出てきます。
一条さんが信奉している先哲たちの話もたくさん出てきます。
面白いのは、著者の生活ぶりも垣間見えることです。
なぜ著者がこれほど次々と著作を物しているかの秘密も少し示唆されています。
文体も変化に富んでいて、面白いです。
私がとても気に入ったのは、「読」「書」の章です。
たとえば、「読」はこんな書き出しです。
私は、とにかく毎日、読んでいる。
何を読むか。まず、本を読む。
つづく章の「書」は、
私は、とにかく毎日、書いている。
何を書くか。まず、原稿を書く。
実にスタイリッシュです。気に入って、何回も読んでしまいました。
内容の紹介が不足していますね。
すみません。
あとがきから少し引用して内容紹介に代えます。
「本書は、月光の書である」と、あとがきは始まります。
人を動かすときの典型的な二つの方策のアナロジーとして、
太陽と北風のイソップ寓話が使われますが、一条さんはこういいます。
リストラの風を吹きつけ社員を寒がらせる北風経営でもなく、
バブリーに社員を甘やかす太陽経営でもなく、
慈悲と徳をもって社員をやさしく包み込む月光経営。
これこそ、心の経営、つまりハートフル・マネジメントのイメージそのものとなる。
本書は、その月光経営の極意書なのです。
詳しくは是非本書をお読みください。
実践的な経営道が語られています。
そればかりか、生き方を考える上でも、たくさんのヒントがもらえるはずです。
座右の書として、時々、気の向いた章を読むといいのではないかと思います。
企業経営者にはもちろんですが、NPOや行政の人たちにも是非お勧めしたい本です。
前著も一緒に是非お読みください。
ちなみに、一条さんの経営観は、「慈悲と徳をもって社員をやさしく包み込む月光経営」ですが、
私の経営観も「愛と慈しみ」です。蛇足ですが。はい。
■「循環型社会入門」
森建司 新風舎 1200円(税別)
時々思ってもいなかった本に出合うことがあります。
今回紹介させていただく本書は、私の友人が書いた本でありません。
ある人がなぜか送ってきてくださったのです。
本の内容がもしかしたら、私の考えにつながっていると考えてくれたからかもしれません。
その本のあとがきに、次のようなことが書かれています。
循環型社会の運動は革命的転換を意味している。
経済至上主義社会を崩壊させ、「経済によってのみ人は生かされている」という価値観から脱出を図らなければならない。
そして、そのあとの新しい価値観をもった循環型社会の姿が見えてくる。
新しい体制は「破壊と創造」から生まれる。
そのためにも、思い切った勇気ある「破壊」の行動を起こさなければならないわけである。
循環型社会を口にしながらも、経済至上主義から脱却できずにいる、多くの企業経営者たちに読ませたい文章だと思いませんか。
ところがです。
実はこの本は企業の経営者が書いた本なのです。
著者の森建司さんは滋賀県の新江州株式会社の会長なのです。
新江州は包装資材などを中心に事業している、従業員100人強の中堅企業です。
社是は「過去には感謝 現在には信頼 未来には希望」。
滋賀の会社らしく、近江商人の伝統の「三方よし」を大切にしているようで、三方よし実践企業としても紹介されています。
会社の紹介が長くなってしまいましたが、会社としてもちょっと興味を魅かれます。
さて肝心の本の話です。
この本の副題に「もったいない おかげさま ほどほどに」と書かれていますが、
この3つのキーワードに循環型社会の本質が象徴されていると森さんはお考えのようです。
まあ、これだけでは良くある本ではないかと思われるかもしれません。
私もそう思って軽く読み流そうと思っていたのですが、
読んでいるうちに、書かれていることが著者の実際の生活体験や現場実感に立脚しているのに気づきだしました。
そして人間的な眼差しと同時に強い批評眼をお持ちなのが伝わってきたのです。
途中から襟を正して読ませてもらいました。
特に私にとってはとても共感できるメッセージがたくさん出てくるのです。
たとえば、「静脈産業のごまかし」というところでは、
静脈産業には大きな矛盾がある。その発展のためには廃棄物が増えなければならないと指摘しています。
環境ビジネスは過渡的現象であるとも明言されています。
私はこう明確に言い切った経済人を知りません。
しかし森さんが言うように、静脈産業論はまさにごまかしでしかありません。
私も10年以上前からそういっていますが、残念ながら環境産業のパラダイムシフトは起こっていません。
ますます環境を悪化させる環境産業が増えているようにさえ思います。
「個々の対策では対応できない社会問題」という章もあります。
まさに私が取り組んでいる大きな福祉に向けてのコムケアの考え方です。
「人間の絆が人間を創る」ともあります。
まるで自分で書いた本を読んでいるような気がしました。
しかも、私とは違って、メーカーの経営者なのですから、その発言の重みは私とは全く違います。
感服させられた次第です。
他にも示唆に富む指摘がふんだんに出てきます。
しかも、肩に力が入っていない平易な言葉で語られていますから、とても読みやすいです。
それに各章の最後に一言警句が添えられています。
それを並べただけでもたくさんの気づきをもらえるはずです。
森さんは、「もったいない おかげさま ほどほどに」の考えを広げるために、
その頭文字をとった「MOHの会」をつくって活動を展開しています。
つまり高邁な評論にとどまる人ではなく、実践者でもあるのです。
「MOHの会」はこの本でも少し紹介されていますが、機会を見てもう少し調べてみようと思っています。
長い紹介になってしまいましたが、針路を誤っているように見える昨今の企業経営幹部のみなさんに是非読んでほしい本です。
企業に不信感を高めているNPOの人にも読んでほしいです。
いや、すべての人に読んでもらって、自らの生き方をちょっと見直してもらうのがいいでしょう。
ともかく お勧めの1冊です。
「もったいない おかげさま ほどほどに」
とても共感できるキーワードです。
私も生き方を見直さなければいけません。
■「知の巨人ドラッカーに学ぶ21世紀型企業経営」
一条真也 ゴマブックス 1200円(税別)
私はドラッカーがあまり好きではありませんでした。
著書はかなり読んでいるのですが、どこかに違和感があります。
その理由は自分ではわかっています。
会社に入社した頃、ドラッカーの「現代の経営」などを読んだのですが、
そこにでている「事業とは顧客の創造」というメッセージに大きな違和感を持ってしまったのです。
その最初の出会いが、私をドラッカー嫌いにしてしまったのです。
しかし、そうした私の思いとは別に、ドラッカーの著者は多くの経営者やソーシャルアントレプレナーに大きな影響を与えてきました。
そして、私の周りにもたくさんのドラッカー信奉者がいます。
企業の世界にもNPOの世界にも、です。
その一人、一条真也さん(企業経営者でもあります)が、ドラッカーの全著作を見事に消化した上で、とても実践的な本にまとめられました。
もし一条さんが書いた本でなければドラッカーの解説書は読まなかったでしょう。
一条さんからこの本が贈られてきた時にも、一瞬、読みたくないなと思ったほどです。
しかし、前著「ハートフル・ソサエティ」にとても共感したこともあり、
そしてそれがドラッカーの最後の著書「ネクスト・ソサエティ」への回答書であることを知っていたこともあって、読まないわけにいきません。
それに一条さんは単なる評論家ではなく、ドラッカー理論の実践者であることは知っていましたので。
実践者の本は、必ず示唆が含まれています。
改めて読んでみて、もしかしたら私のドラッカー評価は認識不足だったかもしれないと思いました。
もちろんまだ翻意したわけではありません。
なにしろ私は「顧客の消滅が事業の目的」と考えている人間なのです。
まあ、私がどう思うかは瑣末な話です。
この本はドラッカーの理論を極めて簡潔に、かつ実践的にまとめています。
企業の人にはもちろんですが、NPOやソーシャルアントレプレナーにもお勧めの本です。
この1冊を読めば、現在の企業が抱える重要な戦略テーマや基本的な経営理論の構造が理解できます。
それに一条さんの要約は、実に簡潔にして要を得ています。
経営指針書としても完結しているように思います、
この本を読んだおかげで、ドラッカーの所期の著作を改めて読む気になりました。
そういう意味で、ドラッカーになじみのない人にも、馴染みすぎた人にも、お勧めの経営書です。
最近、勘違いした経営理論に振り回されている行政の人にもお勧めします。
詳しくは下記サイトをご参照ください。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4777103404/250-0578551-8678607#product-details
■「技術者資格−プロフェッショナル・エンジニアとは何か」
杉本泰治 地人書館 2400円(税別)
技術者の倫理の問題に取り組んでいる杉本さんが、今度は技術者資格の本をまとめられました。
倫理と資格、この問題は深くつながっていることを杉本さんからは何回もお聞きしていますが、
本書の「はじめに」に杉本さんは次のように書いています。
米国にプロフェッショナル・エンジニアという技術者資格制度があり、この制度がまた、技術者倫理を育ててきた。
技術者の倫理と資格とは、車の両輪の関係にある。
というのは、技術者に倫理を求める社会の事情がまた、技術者資格を必要とするからである。
わが国の現状は、技術者倫理が強調されるようになったばかりで、まだその観点からの技術者資格には目が向いていないが、
早晩、それでは足りないことに気がつくに相違ない。
杉本さんらしく、論理が整然としています。
こうした杉本さんのホリスティックなバランス感覚に教えられることが多いのです。
この本はやや専門的であり、法や制度の解説が中心ですので、必ずしも一般的な読み物とはいえませんが、
それでもさまざまな示唆を得ることができます。
2つだけ紹介します。
科学技術や技術者資格に関する法律は日本にもアメリカにもありますが、
その理念と基本姿勢が違うことを杉本さんは明確にしてくれます。
日本法は、科学技術を利用しようとしているのに対し、米国法は、科学技術を制御しようとしている。
そして、それが技術者資格制度に大きな影響を与えているというのです。
私にとっては、これは驚くべき気づきでした。
これまで何となくモヤモヤとしていたことが一気に氷解されたような気もします。
もうひとつも私には大きな気づきでした。
資格には、私益の側面と公益の側面があるが、
日本では私益の観点で捉えられており公益の視点が埋没していると言うのです。
言われてみるとまったくその通りです。
これは大きな意味を持っています。
いうまでもなく、この2つは深くつながっています。
そして、この2つの指摘から杉本さんの考えや姿勢が読み取れるでしょう。
この2つのことに気づくだけでも本書は読む価値があると思います。
ちょっと堅い本ではありますが、
技術に関心のある方やMOTに取り組まれている方、
あるいは企業倫理に関心のある方には、是非読んでいただきたい本です。
ちなみに、杉本さんが代表をつとめるNPO法人科学技術倫理フォーラムでは、
来年度、技術者倫理をテーマにした公開フォーラムの開催を検討しています。
そのための気楽な研究会を発足させています。
隔月に集まって、情報交換しながら、どんなフォーラムにしようかを気楽に話し合っています。
次回はお知らせのコーナーで案内していますが、4月4日です。
関心のある方はぜひご参加ください。
事務局は私が担当していますので、メールをいただければご案内させてもらいます。
■「平和のための経済学」
川本兼 明石書店 2500円(税別)
先週、週間報告で紹介した川本兼さんの新著です。
これまでも川本さんの著作は数冊紹介してきましたが、
川本さんがこれほど著作活動に力を入れるのは、「平和に関する新しい考え方」を広げていきたいからです。
その考え方を川本さんは次の3点に整理しています。
@平和を民衆の解放の歴史の中に位置づける。
A民衆の解放は基本的人権で表される。
B平和は基本的人権の形にして民衆が獲得していくべきものである。
この3点をベースにして、川本さんはこれまで数々の著作を書いてきました。
しかし、もっと広い見地で、政治や経済に対する考え方を伝えていかないとだめだということに気づいたそうです。
そして、新たに書き下ろしたのが、本書です。今回は経済が扱われています。
川本さんが発想の根底においている独自の考えが2つあります。
「人権革命」と「新社会契約説」です。
その視点から「平和権的基本権獲得のための第3の革命」を問題提起しています。
言葉だけだと伝わりにくいと思いますが、こうした発想の基本にあるのは「すべての人間の個人の尊厳」です。
統治のための基本的人権や民主主義の限界を川本さんは指摘します。
こうしたことはこれまでの川本さんの著作で詳しく述べられてきましたが、
本書でも最終章「資本主義経済に枠組みを与える社会的価値」に簡潔に整理されています。
次の文章を読んでもらえれば、川本さんの視座と視野を理解してもらえるでしょう。
近代民主主義は、人間の尊厳と基本的人権を認められる人々の範囲が余りにも狭すぎる。
資本主義の利潤原理は「他者の『人間の尊厳』に対する配慮」を欠いた経済原理だった!
近代民主主義も「他者の『人間の尊厳』に対する配慮」を欠いた政治原理だった!
その原因を、川本さんはそれらの淵源のカルヴァニズムに求めています。
そうした考えを基本において、本書では経済学の基本がわかりやすく書かれています。
平和を獲得していくためには、
私たち一人ひとりが、自分の考えに基づいて主体的に行動していくことが必要であり、
そのためには経済に対する知識が必要だと川本さんは言います。
これまで学校で教えていた経済学は果たして平和のための経済学だったのかどうか、
というのが川本さんからのもうひとつの問題提起かもしれません。
本書は是非若い人たちに読んでほしい本ですが、
「経済を知って平和や福祉のことを考えよう」(本書の副題)という川本さんからの呼びかけは、若者だけに向いているわけではありません。
読んでいただけるとうれしいです。
そして平和に向けての何か行動を起こしてもれるととてもうれしいです。
■「あなたの子どもを加害者にしないために」
中尾英司 生活情報センター 2005 1500円(税別)
コムケアの公開選考会でお会いしたのが中尾さんです。
そして著書をもらいました。それがこの本です。
副題に「思いやりと共感力を育てる17の法則」とあります。
子育てを通して自分の深淵が見えるということに私も最近漸く気づいてきたのですが、
そんなこともあって表題に惹かれて気楽に読み出しました。
しかし、読み出した途端に、中尾さんのするどいメッセージが心に深く突き刺さり、一気に読み終わってしまいました。
実に多くのことに気づかされる書です。
この本に出合えたことを深く感謝します。
子育てももちろんですが、人との関係性を考える上で、最近うすうす感じていた私自身の問題を正面から指摘された気がします。
自分への嫌悪感と自己変革の可能性への希望と言う、矛盾した二つのメッセージをもらった気がします。
あまりにも個人的な感想を書いてしまいましたが、すべての人に読んでほしい本です。
少なくとも子育てに取り組んでいる人には是非とも読んでほしいです。
この本の題材になっているのは、酒鬼薔薇事件を起こした少年とその両親の話です。
私はこういう事件が生理的にだめで、事件そのものに関する報道や論評をほとんど読んでいませんでした。
そして特殊な事件と考えていました。
私が座り直して一気に引きずり込まれたのは、読み出してすぐの15頁目です。
そこには、事件を起こした少年と母親とが事件後に初めて面会した時の様子が、母親の手記から紹介されています。
(少年は)「ギョロッとした目を剥いた」「すごい形相」で抗議すると同時に、その目からは涙が溢れていました。
同時に溢れた二つの激情。母親は、「心底から私たちを憎んでいるという目」を見てショックを受けます。
そして、少年を「じーっとただ見つめて」観察し、ボロボロと涙をこぼしているのを見て、「これ」とハンカチを渡そうとします。
少年は、そのハンカチを「バーンと激しく払いのけ」ました。
中尾さんはこの情景に、問題の本質を読み取り、そこからさまざまなことを読者に気づかせてくれるのです。
その眼差しはまさに温かな人間の目であり心です。
そして、私たち親への厳しいメッセージを出してくれます。
少なくとも私は、中尾さんのメッセージを心の底まで実感させられました。
消化できるかどうかまだ自信はないのですが。
子育てだけの話ではありません。これは社会のあり方にも大きな示唆を与えています。
いや、私自身の生き方を改めて考えなければいけないと思い知らされました。
まだまだ私には観察者からの脱却できない自分、生理的に拒否するものから逃避してしまう自分がいます。
少年の母親とどれほどの違いがあるか、自信がありません。
大人になることを極力忌避してきたつもりですが、もう十分に大人になってしまっているのかもしれません。
様々なことを考えさせられてしまいました。
そして、ちょっと違った一歩を踏み出す契機をもらいました。
中尾さんに感謝しています。
本書に関する詳しい案内や読者の反響などは中尾さんのホームページにも掲載されています。
ぜひお読みください。
http://www.jiritusien.com/familypsychology/book/index.htm
また、中尾さんは、他にもたくさんのサイトを持っています。
あなたの自律支援COM
http://www.jiritusien.com/index.htm
組織改革ご支援COM
http://www.jiritusien.com/sosikikaikaku/index.htm
などはいずれも示唆に富む内容が満載です。
ともかく今はたくさんの人にこの本を読んでほしいと思っています。
第一章だけでもいいです。ぜひお読みください。
感想をきかせてもらえれば、もっとうれしいです。
ここからも購入できます。
■「ハートフル・ソサエティ」
一条真也 三五館 1500円
一条真也さんが戻ってきました。
執筆を再開されたのは昨年で、昨年も2冊の新著「結魂論」「老福論」を書き下ろしましたが、まだ本来の一条さんらしさを感じませんでした。
今回の新著は一条さんらしい大きな構想に基づく魅力的な新作です。
一条さんからの手紙によれば、「ハートフル・マネジメント」「ハートフル・カンパニー」へと続く「平成心学三部作」の幕開けの書です。
待ち望んでいた著作です。
私が一条さんと出会ったのは、たぶん北九州市でのホスピタリティをテーマにしたフォーラムだったと思います。
もしそうなら10年前です。すでにその時、一条さんは執筆活動をやめて経営者業に専念していました。
彼の何冊かの著作を読ませてもらい、その広がりと深さに驚きを感じていた私は、ぜひ執筆再開を望んでいましたが、
いよいよ本格的な執筆が再開され、とてもうれしいです。
この間、会社経営を体験され、新たな視点が吹かされているはずですから、自作以降への期待も高まります。
3部作の1作目にあたる本書は、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」での問題提起に対する具体的な回答書だと著者は位置づけています。
著者の意気込みが伝わってきますが、読み終えてその思いがとても納得できました。
これほど全面的に共感できた本は、あまりありません。
一条さんのこれまでの本には、時々異論も感じたのですが、本書に関しては全面的に共感します。
この考えを具体的な企業経営に発展させていく次作が実に楽しみです。
私も20年ほど前に「21世紀は真心の時代」という小論を書き、
当時所属していた東レで「真心集約産業」や「デディケイテッド・マーケティング」などを提案したりしていましたが、
この本はそんな上っ調子な論調ではなく、実に生真面目に理論を整理し、心豊かな社会のデザインを描いています。
高齢社会の指針としての実践的な示唆にも富んでいます。
内容の密度が高いので容易には要約できませんが、熟読されることをお勧めする好著です。
視野も広いですが、それらが見事につながっています。
一条さんは、本文で、
21世紀における私たちの課題というのは、共同体の新しい形を構築していくことなのだ(87頁)。
と述べています、そしてそのモデルの一つとして、結いや講をあげています。
全く同感です。
私が取り組んでいるNPO活動やまちづくりは、すべてその視点に立っています。
このシリーズは企業経営へと書き進められていく予定ですが、
新しい共同体社会への展開もぜひ期待したいと思っています。
本書は、そうした新しい大きな物語のプロローグです。
ちょっと褒めすぎの感もありますが、今読み終えて、実に心がワクワクしていますので、仕方がありません。
本の内容は、出版社のサイトで見てください。
ともかくお勧めしたい1冊です。
これを読んで、改めて昨年の2冊を読むとまた違った印象になるかもしれません。
コモンズ書店での購入
■「戦争が終わってもーぼくの出会ったリベリアの子どもたち」
高橋邦典 ポプラ社 1365円
以前、ご紹介したアメリカ在住の写真家、高橋邦典さんの写真絵本の2作目です。
前回の「ぼくの見た戦争」はとても好評で、私のところにも反響がありました。
今回は、高橋さんがリベリアの内戦中に出会った子供達数人のその後の生活を追ったドキュメンタリーです。
私には前作以上に考えさせられるものがありました。
前回もお知らせしましたが、高橋さんのホームページもぜひご覧ください。
とてもライブな動きのある写真からさまざまなメッセージが受け取れます。
写真集は説明を書くよりも見てもらうことですね。
書店にまだ出ているはずです。ぜひお手にとって見てください。
http://www.kuniphoto.com
http://www.jmag.com/kuni.html
(kuni journal)
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