|
*6月からマークを変えてみました。
7月16日 三鷹・井心亭「寄席井心亭 数えて百五十八夜」
柳亭市丸「転失気」
林家たい平「たがや」○
三遊亭愛楽「厩火事」
林家たい平「薮入り」
主催:三鷹市芸術文化振興財団 座布団自由席1800円
何故こんなにたい平を観るのが久しぶりなのか、三鷹駅の南口、この二、三年ですっかり新しくなったロータリー(下田書店もなくなってしまった)から玉川上水に沿って歩きながらつらつらと考えた。
ここ数年で落語会の数は、たぶん飛躍的に増えている。落語好き落語好きといって、月に三度四度と喜んで落語会に通ってはいるが、正直、いつも元気いっぱいで会場までダッシュしているわけでもない。みんな忙しいのだ。少しずつ友だちづきあいに不義理をしたり、ちょっとだけ仕事をサボったり、家族と別に夕御飯を食べたりしながら、月に何度か夕方、こっそりと客席に身を潜ませて、笑う。落語を観るってそういうことなのである。そのなかで、さて、何を観るか、である。もちろんお目当てお楽しみを追いかければいいのだが、それでもまだまだ観たい落語家も落語会も多すぎる。
落語は本質的に繰り返し、反復を基礎とする笑いの芸だから、本来ならば、いつも同じ、いつも面白い、それでいいはずだ。その反復を重ねた者だけが、時として「いつも」とは違う高座を観たり、珍しいネタに出会ったりするが、しかし、ほとんどは毎度お馴染みの笑いを享受しに行く、それが「落語を観る」ことであった(と思う。私はその時代のことは本当には知らないけれど)。
落語ブームという飽和状態のなかで、客はいつも選択を迫られている。反復を愛するのもいい、しかし、この演者この演目と特別な何かを共有したい、という志向は、これまでになく強いのではないだろうか。その観客の欲望にこの数年、もっとも忠実に応えてきたのが、志の輔、昇太であり、談春、喬太郎なのだろう。
そこで、たい平である。実際の高座を観ればわかることだが、たい平の現代性はいま挙げた噺家たちにけっしてひけを取るものではない。問題は、「じゃあ、たい平を年四回観るとして、どこで何を観る?」という話なのである。そこんとこのイメージが、どうもはっきりしない。たい平がいま、どんな噺、どんな語りで勝負しようと思っているのかが、いま、私にはうまく受け取れないでいるのだ。
もちろん、そんな寝言を言う前に、とにかく観りゃあいい、まず観た上で客(すなわち私)がてめえで考えればいいことではある。そうなんだけれど、そこで最初の愚痴に戻る。観客もまた時間ビンボーなのだ。
枕などで当代の時事をネタにさせたら、たい平の達者さは昇太と並ぶ。そのセンスが、もう少し落語会の企画にあらわれたら、もっとたい平を観る機会が増えるのではないか。そんなことを考えているうちに、住宅街のただなかに、井心亭の黄色い灯りが見えてきた。
開口一番は市丸。市馬の弟子だというが、とにかく舌が回らない。回らないだけでなく、途中で諦めてしまったりもする。出来ないのは仕方ないけど、投げやりになっちゃいけません。好感が持てませんでした。
つづいて出てきたたい平、市丸を連れて旅(地方への営業)に出た時の失敗譚から、寄席で起こった前座のしくじり話を幾つか。たい平一流のフォローでもあろう、客席も大いにほぐれる。
で、「たがや」に。なんといっても今日のたい平の「たがや」で一番印象に残ったのは、誰も死なないこと。おそらくたい平は、この噺で横暴な武士とはいえ、次々と人が斬り殺されていくのに強い抵抗を感じたのだと思う。真面目なひとだ。そこで、たが屋が武士を峯打ちで倒したりする新工夫の一席となったのだろう。そのことでかえって秋葉原の連続殺人事件などが重なり合う。噺にプラスの影響を与えているかどうかはともかく、たい平の現代性の鋭さのあらわれだと感じた。
もうひとつ、いかにもたい平、と思ったのは、最前列のお兄ちゃんが体を大きく揺らして、一目でわかる爆睡状態だったのだが、それについ気をとられたのか、橋の欄干のくだりが一瞬飛んでしまったのである。そこからが流石たい平で、橋の話から、落語家の住まい、時節柄お中元をもって行ったりしますが、と振って、円蔵、談志、そして根岸の三平宅にそれぞれ中元を届けたときのエピソードを語ったのだが、これが抜群に面白い。大いに盛り上げて、再び噺に。あれは、最前列の兄ちゃんの眠気を払う意図もあったのでは、と睨んでいるのですが、どうでしょうか。
休憩を挟んで、愛楽。おお、あんた、「ヨタロー」に出てた人だよね。「円楽ヤングバンブーズ」、面白くなかったなあ、凄く痩せたんじゃない? などと懐かしい気持ちで見るが、二十年前の午後のワイドショーってこんな感じだったなあ、というようなギャグの連発。地方のおばちゃん客を前にした小朝をもっと泥臭くした感じ、といえばおわかりでしょうか。それでもキャリアというものは馬鹿に出来ず、ここ井心亭でも妙齢のおばさまたちには大受けでした。
そして、トリは「薮入り」。七月は薮入りの季節だとかで、父親でもあるたい平の思いの籠もる一席。なのですが、ここでも、枕で大真面目に教育問題を語ってしまうほどの熱さが若干裏目に出たか、もうひとつ弾けず。私、この「薮入り」の父親って、人はいいけれど頑固なくせに調子にのりやすいという、ちょっと両極端に触れやすい、つまりは変な人だと思うんですね。その激しいブレを、おかみさんが冷静に突っ込む、というのが基本構造で、私が聴いた中では、先代金馬や円楽のように理屈っぽいところもある演者がこの噺を得意としていたのは、理屈(のチグハグさ)と情をメリハリ豊かに往復することに成功していたからだと思うのです。
ただ、亀ちゃんの好物をずらりと並べ、「そんなにいっぺんに食べられるわけないだろ」とおかみさんにたしなめられた父親が、「食えるわけねえけどよ、子供ってのはな、『ああ、自分の好物を覚えていてくれたんだ、忘れてなかったんだ』と思うもんなんだよ」と反論するところ、ちょっとグッと来ました。そして、いよいよ帰って来た亀ちゃん、自分のお小遣いから、親の好物である金つばを買ってくる。こういう捉まえ方、たい平はうまいね。
テレビ出演で認知を高めるのも大事なことだと思いますが、「いまのたい平はこれだ!」と打って出るようなスペシャルな会がやっぱり観たい。いまはそういう時期なのではないか、と思います。
7月11日 大井町・きゅりあん大ホール「きゅりあん寄席 夏・特選落語会」
春風亭正太郎「たらちね」○+
柳家喬太郎「竹の水仙」◎
柳家三三「五目講釈」○+
立川談春「らくだ」◎
主催:品川文化振興事業団 全席指定・3500円
何事につけ、衆目というものはおおよそ一致してしまうもので、去年から今年にかけて最も待たれていた番組のひとつが談春・喬太郎の顔合わせであることは、おおくの落語ファンがうなずくところだろう。今日の客席を見ても、大井町駅からといわず、家から職場からダッシュで来たような人ばかりでしたぜ。
というより、誰もが観たいだろう、切符も売れるに決まってるだろうこの直接対決(?)がなかなか(都内の、目立った会では)実現しないできたこと自体がフシギなのであって、このフシギの源がどこにあったのかはよくわからない。よくはわからないけれど、じゃあ、「誰もが待ち望む顔合わせ」がしょっちゅう実現すればそれでいいか、という問題があって、それがそういうもんでもないんですね。
皆が期待している会というものは、単に前にこの人が演って後にこの師匠が出てハイおしまい、というわけにはいかない。第一、客の方が拍子抜けだ。やっぱり場内になんとなくいつもと違う空気が漂い、演者もそれを受け止めながら、どこかいつもとは違う高座が始まる、とこう来なくては、ね。
そうしてみると、談春・喬太郎の顔合わせがナンカカンカで引き延ばされてきて、その間、結果としてファンの期待をあおり続けたのも、ここ一年半年に関していえば、「落語ブーム」の延命にそれなりの影響があったのではないのか。などとうがったことを思わず書いてしまったのは、要は、それだけこの会が楽しみだったと、それだけのことであります。
開口一番は正太郎。私は初めて。これがねえ、なかなかでした。高座に座り、いっぱいの客席に正対する、それだけで「こいつ、いい度胸だな」と思わせる顔つきであり、座り方なのだ。声も大きく、カツゼツもいい。オチケン出身というより、アナウンサー研究会か何かにいたのではないか、と思ったほどだ。「春風亭正朝の一番弟子です。もっとも私しかいませんが」などと言いつつ、「たらちね」に。
先にも述べたように、あとに控えているのが三三、喬太郎、談春だ。客は三〇〇%お後を楽しみに来ている。それでも正太郎は慌てず騒がず、堂々と噺を進める。むしろたっぷり、と言ってもいいくらいだ。それでも客から苦情はない。噺がちゃんとしているのである。
たとえば、嫁さんを貰うことになった八公が自分の長屋に戻ってきて、「これまでいつも『八公はひとりぼっちだ、ひとりぼっちだ』と言われてきたけど、これからは違うよ。俺とかかあとふたりぼっちだ」と呟き、「どんな人が来るのかな、顔が丸いのが来るか細長いのが来るか、すらっとしたのが来るか、体が横にだぁーっと広がったのが来るか。たのしみだねえ」とひとりごつ。ここで、私はちょっと感動した。「体がだぁーっと横に広がった」というのは、少なくともセールスポイントではないだろう。それでも、ずっとひとりぼっちだった八公にはたのしみなのだ。食事をして、違う音を立てる人が側にいる。それが、嬉しいのだ。さんざん「たらちね」を聴いて、「これからはふたりぼっち」というセリフも何度も耳にはしてきたけれど、恥ずかしながら、そんなふうに八五郎のことを思ったことは一度もなかった。
「たかさごや」を一節唱えて、「ではごめん」と去る大家さんもいい味を出している。やっと「ふたりぼっち」になれた八五郎に強めに感情移入してしまった私としては、翌朝の八五郎がかなりお嫁さんにきついのがちょっと残念に思えた。おおいに戸惑いつつも、もう少し柔らかく接する手もあるんじゃないか。
平成18年入門というから、まだ二年目のバリバリの前座なんですが、今日の出来が当たり前なら(たぶん、そうだと思うんですが)、尋常なことではないと思う。とにかく私はビックリしました。
さて、続いてが喬太郎。すなわち仲トリである。「入りすぎだよ」と口を開き、「談春独演会プラスアルファへようこそ」でワッと沸かせる。間抜けな痴漢のニュース、山本モナなどトホホ系三面記事ネタであたためたあと、宿屋のおかみさんが亭主に文句を並べる、喬太郎「竹の水仙」の幕が開く。
今日、強く感じたのは声の多様な使い分けだった。竹の水仙を持ってこいと伝えに来る侍、(ご存知!)宿役人、そして大松屋と宿役人を迎える侍といった、枠を外したトーンで勝負に来るキャラクターはもちろんだが、甚五郎、大松屋の声のトーンやスピードもカラフルに変化していく。ひとつの落語としては相当に異例なほどバラエティに富んだ声が交錯しつつ、ひとつの物語を為していくのだ。興味深いのは、大松屋がしばしば声を失くすキャラクターとして登場することで、女房や甚五郎に抗議したいことがあってもそれがはっきり言えず、口だけを動かして文句を言う。それに対して、女房も甚五郎も同じ言葉を大松屋に投げつける。それが「声を出せ」なのだ。この「声」の洪水ともいえる噺のなかで、ひとり言葉を奪われる=自制してしまっていた大松屋が自分の「声」を取り戻す、そんな噺なのか、とも思った。まあ、大松屋はけっこう自覚なしに言いたいこと、言いにくいことをぱあぱあ口にしてしまう人でもあるんですけどね。
休憩後の三三も、「談春独演会プラスアルファその2です」とかなんとか言い置いて、「五目講釈」。生薬屋の若旦那、ご多分に漏れず道楽の果てに追い出され、二階に厄介あわせてジュッカイの身の上となっている。この若旦那、講釈が好きで、講釈師として身を立てたいと言い出す。そこで近所の皆を集めて、まずは一席披露するという運びに……。
発端、居候されているうちのおかみさんが「二階の……」と顔をしかめて見せると、主が「泊り客?」。それに対して、「違うよ! あんなの目指してどうする」なんてやりとりも飛び出し、得意噺で快調につなぎ役を果たした三三師匠でありました。
さあ、そして談春。万座の拍手が収まると、「好き勝手やりゃあがって」と一言。「なんで落語協会の後始末を立川流がつけなきゃならないのか」などと言いつつ、「らくだ」に入ると客席から静かなどよめきが起きる。と、高座から「お前ら、一斉に書くな(ネタの題ね)!」。爆笑である。
今日の「らくだ」はギアチェンジが見事だった。丁の目の半次がくず屋を呼び込んでから長屋を回らせる。ついで大家のところに送り込み、交渉が決裂すると(交渉なんてもんじゃないけど)、いよいよかんかんのうだ。ここで、半次はぐっとテンションが上がり、くず屋はへとへとになる。このあと八百屋に桶を借りて来いと言われるくず屋が、かんかんのうで脅すのを面白がっているような演り方をしばしば観るけれど、今日の談春「らくだ」はそれは採らない。桶を借りてくる、酒を固辞する、くず屋の背中には死んだらくだの冷たい重さが残っているようだ。
そこから、酒に強くない半次、という新発明を軸にして、後半を駆動させていくのだが、今日は半次が一気に酒をあおって胸をバタつかせるという、酒に弱い人ならば誰もが思い当たるあの感じが見事にあらわされていた。一方、くず屋のほうは、若旦那だった自分が人に裏切られてきた体験を思い起こして、ますます酔いを深めていく。
考えてみれば、「らくだ」って、生と死、不祝儀と祝い(あるいは安堵)、動と静、加害者と被害者、強気と弱気といった様々なギアが次々に切り替わっていく噺なんだな。長講一番、見事な手さばきでぐいと持っていかれました。
三人ともがっちり得意噺で攻めたこの会、千人くらいは入りそうな大ホールを埋めたお客さんも、さすがに満足だったのではないでしょうか。歌舞伎座ほどではなかったかもしれませんが、久々に始まる前の客席に集中度の高い不穏なざわめきが満ちている会を観た、という感じです。今度はいよいよ二人会か? 奇襲、正面突破、なんでもありのガチンコバトルに期待が集まっているのは百も承知でしょうから、どんな仕掛けで実現するのか、それも楽しみでなりません。
************************************************************************
*6月からマークを変えてみました。
8月15日 お江戸日本橋亭「三遊亭遊雀勉強会 葉月会」
三遊亭遊雀 ご挨拶
春風亭鯉枝「実践自動車教習所」
三遊亭遊雀「代脈」
三遊亭遊雀「薮入り」○−
主催:ショーキャンプ 予約自由席2200円
**********
8月6日 三鷹市・みたか井心亭「寄席井心亭 百五十九夜」
柳家小んぶ「道灌」
柳家さん若「棒鱈」
柳家喬太郎「牡丹燈籠 発端」○+
古今亭志ん八「黄金の大黒」
柳家喬太郎「鬼背参り」◎
主催:三鷹市芸術文化振興財団 前売自由1800円
**********
8月2日 三鷹市芸術文化センター星のホール「立川談春独演会 夏談春 昼の部」
立川こはる「浮世根問い」
立川談春「鰻の幇間」○
立川談春「厩火事」○
主催:三鷹市芸術文化振興財団 前売指定3150円
**********
8月1日 紀尾井ホール小「月例三三独演 夏の強化合宿・長講だけの三ヶ月」
三遊亭王楽「しびん」
柳家三三「帯久」○+
柳家三三「唐茄子屋政談」○++
主催:ショーキャンプ 全席指定2500円
**********
7月21日 銀座・時事通信ホール「大銀座落語祭2008 桂雀三郎の『らくだ』を聴く会」
桂ちょうば「平林」
桂雀三郎「手水廻し」
笑福亭鶴瓶「青木先生」○+
桂雀三郎「らくだ」
主催:大銀座落語祭実行委員会 全席指定1500円
7月21日 銀座・博品館劇場「大銀座落語祭2008 柳家喬太郎と上方落語その2」
三遊亭かっ好「日和違い」
桂都丸「読書の時間」
柳家喬太郎「擬宝珠」○
桂雀々「さくらんぼ」○
柳家喬太郎「宮戸川」○
主催:大銀座落語祭実行委員会 全席指定1500円
**********
7月20日 銀座・JUJIYAホール「大銀座落語祭2008 米朝イズムの会」
桂吉坊「まめだ」○+
桂米二「けんげしゃ茶屋」○+
桂小米「口合小町」
桂宗助「足あがり」○+
桂千朝「はてなの茶碗」
主催:大銀座落語祭実行委員会 全席指定1200円
7月20日 銀座・博品館劇場「大銀座落語祭2008 柳家喬太郎と上方落語その1」
立川こはる「真田小僧」○+
笑福亭たま「胎児」○+
柳家喬太郎「ほんとのこと言うと」
笑福亭福笑「絶体絶命」○+
柳家喬太郎「純情日記横浜篇」○+
主催:大銀座落語祭実行委員会 全席指定1500円
**********
7月19日 銀座みゆき館劇場「大銀座落語祭2008 志らく・白鳥二人会/つく枝・三三二人会」
立川志らく「たまや」ラストだけ観ました
柳家ろべえ「旅行日記」
柳家三三「青菜」
桂つく枝「悋気の独楽」○+
主催:大銀座落語祭実行委員会 全席指定1500円
7月19日 銀座・JUJIYAホール「大銀座落語祭2008 東京で聴けない噺」
林家市楼「軽業」
桂吉坊「祝いの壺」○+
桂雀喜「軽石屁」○
月亭八天「鬼の面」○++
桂雀松「茶漬えんま」○++
主催:大銀座落語祭実行委員会 全席指定1200円
**********
7月18日 銀座・博品館劇場「大銀座落語祭2008 立川談春と上方落語 その2」
立川こはる「小町」
笑福亭三喬「まんじゅうこわい」
立川談春「三軒長屋 上」○
笑福亭松喬「首提灯」○
立川談春「三軒長屋 下」
主催:大銀座落語祭実行委員会 全席指定1500円
**********
7月17日 銀座・教文館ウェンライトホール「大銀座落語祭2008 柳家三三の世界」
三遊亭歌ぶと「転失気」
柳家三三「加賀の千代」○
宝井琴柳「大瀬半五郎」○+
宝井琴調「寛永三馬術より曲垣平九郎」○+
柳家三三「魚屋本多」○++
主催:大銀座落語祭実行委員会 全席指定1200円
************************************************************************
7月10日 紀尾井ホール 小ホール「月例三三独演」
柳家三之助「粗忽長屋」
柳家三三「真景累ヶ淵 宗悦殺し」
柳家三三「死神」
主催:ショーキャンプ 全席指定2500円
別に生涯、三三以外落語を観ないと決めたわけでもないのに、この頻度。それだけ三三が意欲的な独演会を多く開いている、ともいえるし、主催者の側からすると、客が呼べて意欲があって若いから声をかけやすいという好条件を最も揃えているのが今はこの三三、ということになるのかも知れん。いずれにしても演り盛りの伸び盛りであることは間違いなくて、これだけ会が重なっても演目も演りようもひとつひとつ粒だっているのはやっぱり相当なことなのである。だからこそ飽きっぽいことでは人後に落ちない当方も飽きずにせっせと通い続けることが出来るのであって、三三の涼しい顔に騙されてはいけない。
で、本日は三之助がお先の高座。押し出しがいいなあ、と思っている間に、つい引き込んだ夏風邪のせいか、うとうとっと来るうちに、「粗忽長屋」もはや終盤。すまんことでした。
さて三三。円朝ものを演るというので、千駄木の円朝の墓に参ってきた、といい、住まいの近くでもある谷中のにぎわいを語って、「宗悦殺し」に。
金貸しを兼ねていた按摩、宗悦を、旗本・深見新左衛門が殺し、下男に死体の始末を命じる。つづらに入れて棄てられたその死体をめぐって、ヒチコックの映画『ハリーの災難』を思わせるドタバタを挟んで、新左衛門が乱心。妻を斬り殺し、自らも切腹して、残りの家族も離散。新たなる因果を思わせるところで、本日はおしまい。残念ながら、こちらのほうも、やや集中力が持続せず。再戦を期す。
休憩を挟んで、今度は「死神」。サミット、竹製の浴衣などの話題に触れつつ、噺に入る。
死神によって、にわか医者に仕立てられた男が、薬のかわりに大根の葉を刻んでごまかすくだりがなぜか印象に残る。あと、病気の主人を「一月生かしていただければ三百両」といい、次いで「半月で五百両」、ついには「三日で千両」と競り上げていく大店の「お家の事情」とはいったい何なのか? 脇からお内儀が吊り上げていく、という展開にも、単に旦那の死というに留まらない、ただならぬものを想像させるじゃあありませんか。
というわけで、やっぱり落語見物も健康が一番大事ですね。三平師匠の言葉にウソはありませんでした。
7月7日 中野・なかのZERO小ホール「柳家三三独演会 夏」
柳家右太楼「四段目」
柳家三三「青菜」○
柳家三三「たちきり」◎
主催:夢空間 全席指定3000円
曇り空の七夕。開口一番は右太楼。「落語ブームと申しますが、よく見ていますと、まだまだ付け焼刃という感じもいたします。先だって落語のCDコーナーに行きましたところ」という前振りで、有名な噺の名を誤読したフリップが立っていた、という枕を披露した。噺の誤読、という着眼は悪くないと思う。ただ、「付け焼刃」はないだろう。落語のことなんかまったく知らないお客を一人でも呼び込み、笑わせてナンボの商売ではないのか。高踏的な落語マニア路線か、好感度低すぎて笑ってしまう、というのを目指すならいいけど、そんな芸風でもないだろうに。噺の方は、するすると。
続いてお目当て。「ただいま右太楼さんが歌舞伎の噺をされましたが、私はほとんど不案内で」と口を切り、なぜか圓生の話へ。五歳から義太夫語りで高座にのぼった圓生、「子供の頃の写真を拝見しましたが、やっぱりちょっと普通じゃないなという険しい(笑)綺麗な顔立ちの子でしたね」と語る。それから談春と深夜のファミレスでパフェを食べた話をして、「青菜」に。
おお、と思ったのは、お屋敷の旦那が奥様との間に交わす「隠し言葉」を、今日の三三は「いや、とっさに出た言葉だ」と旦那に語らせていたところ。「そのまま、菜はない、と言ったのでは主にも恥をかかせ、また客人にも失礼だ」という旦那の説明を聞いて、植木屋さんに「あっしのことを客扱いしていただけるんで」と呟かせるのも、なかなか興味深い。植木屋さんが感に堪えたように「お屋敷だねえ」と洩らす口調が、師匠小三治を思わせました。
丁寧な、たっぷりの「青菜」。それでいて、植木屋さんとおかみさんのやりとりはテンポ快調、大工の半公も間のいい奴で、気持ちのいい一席でした。
休憩を挟んで、なんと「たちきり」。今日の三三「たちきり」の聞かせどころ、いや勝負どころは、若旦那が蔵に押し込まれてから、若旦那と小ひさの馴れ初めを語ったくだりだった。
もともと堅い若旦那、父の代わりに宴席にお供したものの、酔って騒ぐ大人たちを見て、何が面白いのかと呆れていた。ふとみると、同じようにつまらなそうにしている芸者がいる。声をかけると、久野屋の小ひさといい、お座敷に出るようになってまだ間がないという。下を向いて小さい声でぼそぼそとではあるが、自分の聞いたことに一生懸命返事をしてくれる小ひさに若旦那は惹かれる。また、不器用な自分の話を身を乗り出して聞いてくれる若旦那に、小ひさも他の客とは違った人だと思う。あとは夢中で、小ひさに会いたい一心で通う若旦那。その度が過ぎて、旦那、親類、番頭膝詰め相談の結果、お灸を据えるつもりの蔵住まい、となるのだが、その馴れ初めで描かれた若旦那と小ひさは、それまで誰の「たちきり」でも聴いたことのないほどの清新さだった。そして、もうひとつ私がつよく感じたのは、小ひさのはかなさである。芸者に合わない、というだけではなく、なんとなくこの世に生きていきにくい、誰かがこの人のことをわかってやり、そばで支えてあげないと、その存在を保つことも難いようなものを、今日の三三が語る小ひさから、強く感じたのだ。小ひさにとって、若旦那とは、そうしたじぶんのたましいを初めて見つけ、手を差し伸べてくれた人だったのではないだろうか。
百日の蔵住まいが終わり、番頭は「若旦那がいなければ店は闇でございます」という。そして、番頭から小ひさの手紙を受け取った若旦那は、身支度を整え、まず親に挨拶してから外に出て行く。このあたりの折り目も、他の演者では観た記憶がないから、三三の演出であろう、なるほど、三三らしいなと思った。
あと、これは些細な点ですが、小ひさからの手紙を持った若い衆が店の前にずらりと列を作った、というくすぐりがありますね。楽しいといえば楽しい、落語的誇張ではありますが、前からちょっと気になっていた。そこを、今日の三三は、「……店の前にずらりと並ぶ、なんてことはありませんが」と収めていて、ああ、やっぱり気になるんだなあ、と思いました。
すべての事情を知った若旦那が、小ひさの母(ひさの屋のおかみ)に「もう妻というものはもらいません」と涙ながらに言うと、「その一言で小ひさはうかばれます」といい、「でも、小ひさのことは今日限りで忘れてください。そうでないと、あの子は行くところに行けません」とも言う。どちらも、娘小ひさに寄り添った言葉だと思った。娘、小ひさのはかなさ、生きていくことへの不器用さを、この母親は最もよく知っていたのかもしれない。素晴しい「たちきり」でした。
7月3日 浅草演芸ホール「七月上席夜の部」
入船亭扇橋「茄子娘」○−
古今亭志ん五「浮世床」○
笑組 漫才
柳家小満ん「出来心」
桂ひな太郎「湯屋番前半」
鏡味仙三郎社中 曲芸
林家種平「ぼやき居酒屋」○−
柳家小燕枝「不精床」○−
自由席2500円
我ながら驚いたことに、ここのところ寄席にまったく足を向けていない。手帳を繰ってみると最後は去年の八月、しかも余一会で、通常の席は(芝居は、というんでしょうか。まあ、使いつけない言葉はやめておいて)というと、去年一月からご無沙汰のしっぱなしである。
本日はたまたま仕事が浅草で、しかも日の高いうちに終わったために、ちょいと顔つけだけでも確認しようと演芸場の前を通ってみたら、いま、扇橋が上がったばかりで、次が志ん五となっているではありませんか。ふらふらと吸い込まれるように、木戸をくぐりました。
身をかがめて、席に納まると、扇橋師の枕の途中、とうぜん何を話しているのかわからない。いつ聴いても不思議なバイブレーションのついた声だ。舌そのものが細かく震えているようなカツゼツで、さらに口の中で何度か反響して声が外に洩れてくる。内容もまさに随談、いつ話柄が転じたとも判然としないうちに師匠の連想の赴くがまま、たらたらと油のごとく梅雨時のなめくじのごとく進んでいく。この声を聴くんだったらやっぱり寄席がいいなあ、と思っていると、「茄子娘」。これまた恰好の脱力ネタだ。
修行と野菜作りに精を出す和尚が、途中、蚊帳に入るくだりがある。ここで、「昔はよく蚊帳というものを吊りましたな……」と扇橋師がちょいと顔をのぞかせて、「部屋の中になにか別の世界が出来たような……。子供時分には虫を放ったりして遊んだものです。蝉を放つ、バッタを放つ……。蛍なんかよろしかったですな。ぽぉーっと光があちらこちらを飛んで、天井にほっと止まったりして……」
かと思うと、ご存知のとおり、茄子の精だという女があらわれ、雷のどさくさにどうにかなってしまう。ここで、扇橋、ひときわ声を高め、「声が大きくなりましたが、私はここが一番好きなもんで」。お決まりの文句ではあるが、扇橋師が言うとさもありなんという説得力がありますね。
続いて志ん五。きれいに黒光りするオールバック、白い歯。高座に出てきたとたん、空気がわっと活性化する。その明るい風を受けての「浮世床」。
「姉川の合戦」をたどたどしく読み上げる男、「一尺八寸の大刀」に物言いが入ると、「時代考証にうるさいね」と言うのが可笑しい。そのあと、この「幅広の大刀」に「三角四角の窓を開け」とくるのは、初めて聴いて大いに笑った。しかも、そこに「色のついたガラスを張る」のである。ここから噺は、隠し芸大会に発展して、「宇治の蛍」「戦争ごっこ」が出たあたりでお開きに。たっぷり聴き応えのある「浮世床」でした。
笑組、久しぶり。
小満ん師匠は泥棒のお話。「出来心」とか「花色木綿」とかいう噺なんですが、サゲまでいかず。このあたり、やや集中力を欠いていました。
「病み上がりの舟木一夫」を自称するひな太郎も、演目がよくわからないんですね。二階に若旦那がいて、昼間近くまでゴロゴロしていたのが、下から主が「うちのかかあが言ってるんですがね」と呼ばうと、「え、お前のかみさんがまた何か言い出したのかい」と慌てて下りてくる。で、食事の愚痴をこぼしているところで、いきなりサゲ。「お馴染みの居候でございました」というわけ。こういうのも寄席らしいですけどね。
続いては、こちらもしばらくの鏡味仙三郎社中。傘の裏で玉を回すのをはじめて見ました。
種平、私ははじめて。「えー、代わりです。半蔵さんから『すみません、病気です』って電話をもらいましてね、明日は元気に出ると思います」。種子島出身というけれど、なるほど、相当なベテランなのにアクセントがところどころおかしい。しかも、話し振りは散らかし放題で、いかにも三平門下だなあ、と先入観を強化していたところ、居酒屋でえんえんダジャレを並べながらクダを巻く、というネタに入った。
ところが、これがなかなか柄に合っていて、馬鹿馬鹿しいながらも、お客を引っ張っていくんですな。私が一番おっと思ったのは、「猫の整体というのがあって、猫を連れて行ったら、背筋がピーンと伸びてしまった」という奴で、半拍置いて、「ワニじゃないんだから」。これには笑いました。平井堅をサカナにして、「ヒトラーが生きてたら生かしておけない」というのも、私には意味不明ながら、意表を突かれた。
あとで聞いたところ、この「ぼやき居酒屋」、桂三枝の新作で、それを小朝が種平に勧めて高座にかけるようになったものだという。驚きましたね。大げさにいうと、ひとつ、噺に出会うのと出会わないのとでは人生変わるかもしれないわけで、小朝恐るべし、って感じです。また、こういうエピソードが流通するあたりも、小朝の腕を感じますな。
小燕枝も、やはり初めて。小さん門下の腕達者として評判を聞いていたので、聴いてみたい噺家の一人だった。楷書のような語り口で、始まったのは床屋の枕。おやおや、と思う間に、志ん五師匠と同じ蒸しタオルの小噺に入ってしまい、場内に変な空気が流れる。で、そのまま「不精床」へ。寄席では似た種の噺は避けると聞きますが、こういうこともあるんですねえ。
この「不精床」、意表を突かれたのは(今日は良く意表を突かれるね)、床屋の大将が大変に弟子に親切なこと。「いつも俺の向うずねの毛を剃ってるだけじゃあしょうがねえから、このお客をやってみろ」と言い出し、久しぶりの客で実地訓練に及ぶ。で、客が痛がって悲鳴を上げると、頭をのぞきこんで「ははあ、こりゃお前には無理だ。気の毒したよ。これは陥没頭ってやつで、難しいんだ」と笑ったかと思うと、「いいか、お前のやり方、やってみようか。お前は剃刀をこう立てて、横に引く」と客の頭でやってみせるのだ。ここのところ、観てきて、思わず「イテテ」と思えてくる迫真の芸で、さらに剃刀を目の前でぶんぶん振り回すに至っては、かなり涼しくなりました。
時間の都合でここで退出しましたが、聴きたいけれどホール中心で聴いているとなかなか出会えない、という演者を見るには、やっぱり寄席はいいなあ、と月並みな感想に落ち着いた夏の夜ではございました。
6月30日 浜松町・文化放送メディアプラスホール「浜松町かもめ亭 日向ひまわり真打昇進披露会」
日向ひまわり「三方が原戦記」
瀧川鯉昇「ちりとてちん」
春風亭小柳枝「船徳」○
日向ひまわり「清水次郎長伝 政吉の出会い」○−
仕事が峠を過ぎてちょっとぼーっとしていると、家人が「私、今日、かもめ亭行くけど」と声をかけてきた。日向ひまわりの真打昇進披露だという。今回の芸協の新真打は、達者な遊馬(痩せる前の方が押し出しが良かったなあ)、奇妙な味の新・今輔と、芸協的には近年稀な注目株が揃ったのだが、講談のひまわりはまだ聴いたこともなく、正直、関心もそれほどではない。ふーん、と思って出演者を眺めると、なんだよ、小柳枝、鯉昇揃い踏みじゃんか!
じわじわと客席をあたためる話術と瞬発力に富んだギャグセンスを併せ持つ鯉昇と、いまや東都随一と呼びたくなるほど上手い小柳枝は、ともに柳昇一門。本来ならば芸協の大看板となっていて何の不思議もない二人だと私は思う。小柳枝独演会なんてのがもっとしばしば開かれたら(しかも欲を言えば都内で)足繁く通うのになあ、とほぼいつも考えながら暮らしているほどだ。それが揃って観られるというんだから、私も行きますよかもめ亭、というわけで浜松町へ。
まず口開けはひまわり。お、前座働きしてるのはこはるちゃんじゃないの。
さすがに真打昇進披露だけあって、客席から「まってました」「たっぷり」と声がかかる。袴に黒紋付きのひまわり、「主催者の方からまず修羅場を演ってほしい、と言われましたので、三方が原の合戦を」という。「修羅場ははじめに習うのですが、口慣らしやリズム良く語る練習でもあります。皆さん、『寝床』状態になるかも」と笑ったが、たしかに心地良いリズムに乗せられて、つい大船漕いでしまいました。すまぬ。
つづいて鯉昇は「ちりとてちん」。豆腐にすっかりカビが生えて、毛が生えたようになっているのを見て、頭ツルツルの鯉昇が、「一日で毛が生えるのか。……うらやましいものがある」と嘆息したところ、つい笑ってしまった。
改めて聴くとなんですね、難しいね「ちりとてちん」。前半のお世辞のいい人は竹さん、後半の文句言いが寅さんだが、お世辞のいい竹さんを面白く演じるのがなかなか難しい。持ちネタが、やたらに大げさに褒める、の一点張り、しかも、あまりにもわざとらしいと何だか馬鹿にしているみたいになって、お世辞が良くて好感が持てる、という域を超えてしまう。
もっと難しいのは後半だ。ちりとてちんと称して腐った豆腐を食べさせるのだが、追い詰め方を間違えると、寅さんにはいくつか逃げ道があるはずである。食通だからとおだてて、「ちりとてちん、もちろん知ってるよ」と言わせるところまでは無理なく進むとしても、いざ食べろと言われたときに、「こんなの、贋物だ。ひどいのをつかまされたね」とくさせばいいのだ。酒を飲んでも、鰻を食べても、偽者だ、まずくて食えない、と言い募る寅さんなのだから、得体の知れないちりとてちんを出されて、やっぱりいちゃもんをつけても不思議はない。
そこを塞ぐには、どうするか。ひとつ考えられるのは、旦那が先回りして、ちりとてちんに疑問を呈することだ。「何でも食通が食べるっていうけど、本当かねえ。こんなもん食べられるのかい、って聞いたら、『本当の食通にしかわからない』って言うんだけど……」くらいに言っておけば、旦那をやりこめたい寅さんが、「だから困るんだよ、素人は」とちりとてちんの良さを滔々と説き始める、という展開に持っていけるかもしれん。
今日の鯉昇では、鰻を見て「羽織の紐が焦げてんの? 面もまぬけでやんの」と言いながら、養殖はまずいね、と鰻をくちゃくちゃ噛む寅さんの口元が憎々しくて良かった。一方、ご馳走を勧める旦那に、寅さんが「板さん呼んだ、板さん呼んだって自慢げに」と嫌味を言うくだりも印象的。お呼ばれして、食べないならばともかくさんざん食べて、憎まれ口を叩く寅さんも寅さんだが、そう言われてみると、旦那の勧めようも結構押し付けがましい。褒め方がどうも単調で実(じつ)の少なめな竹さんともども、三者それぞれに好感度やや低めの「ちりとてちん」でした。
さて、本日のお目当て、小柳枝。後ろの席のご老人が「この人は俺たちより年上だよ」と囁いていたが、今年で七十二歳。なんと談志、歌丸と同い年なのだ。
梅雨の枕から、雷様、夕立売りの小噺に続いて、窓の下を流れる川を眺め、舟を数える居候が登場すると、「船徳」のはじまりはじまり。小柳枝の得意噺で、時期的にも相応しい大ネタだ。
徳さんのへっぽこ船頭ぶり、乗り込んだ客が大揺れに揺れながら煙草に火をつけるところなど、仕草鮮やか、テンポ快調。今日の小柳枝演じる徳さんは、舟を漕ぎながらのセリフもいい気なもの、挙句に途中で「もういやっ!」と言って舵を投げ出してしまう。若旦那のわがままがちっとも抜けていないのだ。
小柳枝「船徳」はCDも出ているし、前にも一度聴いたことがある。私の贔屓は船宿のおかみさん。船頭が皆出払っていると断られたお客が、昼寝している徳さんを見つけ、「いるじゃないか、若い衆が」とおかみに言うと、団扇で客を煽ぎながら「ホホホ、若い衆だなんて……馬鹿馬鹿しい」。この「馬鹿馬鹿しい」がとても良かった。
トリはもちろんひまわり。清水の次郎長、森の石松主従が酒を飲んでいると、物売りに来た男の子。この男の子が、からんでくる男を逆に倒して去ってしまう。この政吉少年こそ、のちに次郎長一家にその人ありと呼ばれる小政だった……。
噺自体はなかなか面白かったが、次郎長と石松がどっちがどっちか、ちょっと、マゴマゴしてしまいました。
くたびれない会だったけど、やっぱり行ってみたいね、小柳枝独演会。鯉昇師匠との二人会も是非希望します。
2008年1月5日◆今年の落語初めは三三の会◇内幸町ホール「月例三三独演 新春特別公演・夜席」
1月7日◆だらしない遊び人のバラッド◇横浜にぎわい座「立川談春独演会」
2月1日◆定着した喜多八膝栗毛◇銀座・博品館劇場「喜多八膝栗毛 冬之巻」
2月4日◆寒風のなか三三を聴きに◇内幸町ホール「月例三三独演」
2月11日◆談春・昇太の白熱トーク・バトル◇下北沢・本多劇場「下北沢演芸祭 立川談春独演会」
2月14日◆久しぶりにねこマジ◇中野・なかのZERO小ホール「柳家喬太郎独演会 〜柳家喬太郎たっぷり愛しナイト〜」
2月17日◆ふんどし一丁で彦いち喋り倒し◇下北沢・本多劇場「下北沢演芸祭 林家彦いち 喋り倒し」
2月17日◆マグナム小林って初めて見たよ◇内幸町ホール「悠々遊雀」
2月19日◆札所の霊験、男の無念の物語◇新宿・紀伊国屋ホール「黒談春 第4回」
2月23日◆天どんの落語道、中野へ◇なかの芸能小劇場「ぼくの落語道 第三回」
2月29日◆談志を待ちつづけて◇銀座ブロッサム「立川談志独演会」
3月1日◆文ちゃん、三三、一之輔がっぷり◇四谷・コア石響「ラジオデイズ落語会 第十一回」
3月13日◆喬太郎“発掘”の『綿医者』◇池袋・東京芸術劇場小ホール「瀧川鯉昇・柳家喬太郎二人会 古典こもり」
3月14日◆枕もたっぷり月例三三◇内幸町ホール「月例三三独演」
4月4日◆いよいよ『いつかは』にあの人が◇浜離宮朝日ホール「朝日いつかは名人会 第9回」
4月5日◆とりあえず珍味、わさびの枕◇四谷・コア石響「ラジオデイズ落語会 第十二回」
4月10日◆ライトな味わい談春与三郎◇横浜にぎわい座「立川談春独演会」
4月12日◆気がつくと三三ばっかり観てるな◇内幸町ホール「月例三三独演」
5月2日◆はずみにはずむ不動坊◇横浜にぎわい座「立川談春独演会」
5月12日◆三三『化け物使い』であの人を◇内幸町ホール「月例三三独演」
5月17日◆東京の千朝はサービス多め?◇お江戸日本橋亭「第六回 東京で千朝を聴く会」
5月17日◆三鷹の談春はフラで勝負◇三鷹市芸術文化センター星のホール「立川談春独演会 春談春」
5月19日◆喬太郎勉強会、リベンジなるか◇横浜にぎわい座「第二回 柳家喬太郎横浜勉強会」
6月1日◆鈴木慶一に“昭和の名人”の風格◇六本木SUPER DELUXE「寒空はだかカラフルロスタイムショーVOL.10」
6月2日◆久しぶりに落語教育委員会◇なかのZERO小ホール「落語教育委員会」
6月3日◆三三三夜三軒長屋は二夜二席目◇半蔵門・国立演芸場「三三 三十三歳 三夜 三席 三宅坂」
6月4日◆どよめきのシークレット・ゲスト◇半蔵門・国立演芸場「三三 三十三歳 三夜三席 三宅坂 第三夜」
6月6日◆『稲荷堀』未完のクライマックス◇横浜にぎわい座「立川談春独演会」
6月7日◆『弟子に助けてもらっています』と談志は言った◇三鷹市公会堂「立川談志 立川志らく親子会」
6月14日◆何故だか円丈トリビュート◇なかの芸能小劇場「ぼくの落語道 第四回」
*******************************************************
2007年1月5日◆落語始めは談春にぎわい座◇横浜にぎわい座「談春七夜アンコール2007 第一夜 雪」
1月12日◆いつかは名人会立川流◇浜離宮朝日ホール「第四回朝日いつかは名人会」
1月17日◆黒談春の始まり始まり◇新宿・紀伊国屋ホール「第一回 黒談春」
1月26日◆本年初の寄席は鈴本三三◇上野鈴本演芸場「一月下席夜の部」
1月27日◆小朝の「たちきり」に震える◇三鷹市公会堂「新春初笑い寄席 春風亭小朝独演会」
1月27日◆はしごして観る国宝の弟子◇池袋・東京芸術劇場小ホール2「噺小屋in池袋 桂小米朝×桂吉弥×桂吉坊」
1月30日◆わか馬は歌うよどこまでも◇中野・なかの芸能小劇場「わか馬し放題」
2月2日◆未知へと進む談春「たちきり」◇銀座・中央会館「有楽町噺小屋 立川談春独演会」
2月17日◆文左衛門さん気をつけて◇大塚・そてつ「大塚そてつ寄席」
2月18日◆談春が昇太落語に挑戦!◇下北沢・「劇」小劇場「立川談春独演会 春風亭昇太トリビュート」
2月22日◆行方は遙か道中双六◇下北沢・「劇」小劇場「一本柳道中双六 四日目」
2月22日◆ついでにSWAでも、という贅沢◇下北沢・「劇」小劇場 「SWAリニューアル 四日目」
2月23日◆前と後ではまるで別次元◇与野本町・彩の国さいたま芸術劇場小ホール「彩の国落語大賞受賞者の会」
2月24日◆三三真打からもう一年か◇四谷・紀尾井ホール(小)「三三時代 第十回」
2月25日◆別キャラ亭目撃譚◇下北沢・「劇」小劇場 「別キャラ亭 十四時の回」
2月27日◆小三治粗忽噺のゆうべ◇赤坂区民センター「みなと毎月落語会 赤坂名人会 柳家小三治独演会」
3月1日◆談春落語・二人の刺客◇横浜・にぎわい座「談春七夜アンコール2007 第二夜『山吹』」
3月3日◆新作落語と社会性?◇三田春日神社「第10回 三遊亭天どん勉強会」
3月6日◆教育委員会 東北ツアーの真実◇中野ZERO小ホール「落語教育委員会」
3月16日◆限りなく営業に近いブルー◇浜松町・文化放送メディアプラスホール「浜松町かもめ亭」
3月24日◆さようならありがとう、そてつ寄席◇大塚・そてつ「大塚そてつ寄席・最終回」
3月29日◆イケメン大会?のため本日も満員◇三鷹・みたか井心亭「寄席井心亭 百四十二夜」
4月3日◆白い羽根座布団に乗って◇池袋・東京芸術劇場小ホール2「白鳥大全集 二日目」
4月7日◆禍々しいまでの佐平次◇横浜にぎわい座「談春七夜アンコール 第三夜『海』」
4月9日◆狸の子が消えたわけ◇内幸町ホール「三三独演 第十八回」
4月10日◆咲いて良かった遊雀「花見の仇討ち」◇お江戸日本橋亭「三遊亭遊雀勉強会 卯月会」
4月25日◆次世代新作派といえば◇浜離宮朝日ホール「第五回 朝日いつかは名人会」
5月2日◆文ちゃん一座、今年は文七◇なかの芸能小劇場「ボク達の鹿芝居 文七元結」
5月11日◆三拍子揃った「今戸の狐」◇内幸町ホール「月例三三独演 第十九回」
5月12日◆大繁昌の深夜寄席で一之輔◇新宿末広亭「深夜寄席」
5月13日◆近所で談春の日曜日◇三鷹市芸術文化センター星のホール「立川談春独演会」
5月16日◆悩め。悩むな。わか馬の会◇赤坂・Akasaka NOTE「あかさか落語のーと」
5月20日◆白談春「初心者」ってどんな人?◇新宿・紀伊国屋サザンシアター「第一回 白談春」
5月30日◆上方勢を向こうに小朝の「浜野」◇有楽町・よみうりホール「第二十三回 東西落語研鑽会」
6月5日◆好二郎がいるじゃないか◇お江戸日本橋亭「30の手習い 好二郎落語勉強会vol.27」
6月11日◆談春の周到な暴走◇霞ヶ関・イイノホール「立川談春独演会」
6月12日◆遊雀、気合の「船徳」◇お江戸日本橋亭「三遊亭遊雀勉強会 水無月会」
6月15日◆近頃なぜか落語ブーム総括◇赤坂区民センター「第七回平成特選寄席」
6月16日◆待望のくらぶ歌開店◇なかの芸能小劇場「くらぶ歌 三遊亭歌武蔵の会」
6月16日◆下北沢天どん酸欠ライブ・レポート◇下北沢小劇場楽園「第一回 僕のらくご道」
6月24日◆出版記念会の豪華メンバー◇半蔵門・国立小劇場「橘蓮二写真集『高座』出版記念の会」
6月29日◆意欲的な吉朝チルドレンたち◇神楽坂・いわと寄席「吉朝弟子の会」
6月30日◆さん喬「水屋の富」はやっぱり切なかった◇吉祥寺・前進座「梅雨祓落語競演 さん喬喬太郎親子会」
6月30日◆オレの『子別れ』はリアルだよ◇池袋演芸場「文左衛門大会」
7月5日◆文都ヘヴィーに、さりげなく◇霞ヶ関・イイノホール「立川流同期会 立川文都・談春・志らく」
7月7日◆喬太郎“ミステリ”落語の可能性◇中野ZERO小ホール「柳家喬太郎独演会 みっちりナイト」
7月10日◆喬太郎のなかの“円朝の魂”◇横浜にぎわい座「柳家喬太郎『牡丹燈籠』通し公演・前篇」
7月13日◆仁智台風吹き荒れる!◇銀座・博品館「大銀座落語祭2007 笑福亭仁智・桂小春團治新作二人会」
7月13日◆関東最強刺客登場◇銀座・博品館「大銀座落語祭2007 この人・この噺」
7月14日◆千朝を初めて聴いた日◇銀座・時事通信ホール「大銀座落語祭2007 イョ、待ってました!の会@」
7月14日◆寄席ならば赤丸チェック◇銀座・時事通信ホール「大銀座落語祭2007 遊びの世界」
7月14日◆入船亭、怪談噺にチャレンジ◇浜離宮朝日ホール「大銀座落語祭2007 怪談・人間国宝一龍斎貞水の世界&怪談・牡丹燈籠親子リレー」
7月15日◆松喬、権太楼ガチンコ対決!◇銀座・博品館劇場「銀座落語祭2007 東西特選会 前半」
7月15日◆初めて観ましたナマ可朝◇銀座・博品館劇場「銀座落語祭2007 東西特選会 後半」
7月15日◆圓太郎の貫禄◇浜離宮朝日ホール「銀座落語祭2007 この人この噺」
7月15日◆新作特攻隊? 上方若手の一点突破◇浜離宮朝日ホール「銀座落語祭2007 東西新作落語対決」
7月16日◆四天王一番弟子揃い踏み◇銀座・時事通信ホール「銀座落語祭2007 四天王一番弟子の会」
7月16日◆圧巻! 喬太郎メドレー落語◇銀座・時事通信ホール「銀座落語祭2007 柳家喬太郎におまかせ!の会」
7月16日◆上方ビッグ3の弟子たち◇浜離宮朝日ホール「銀座落語祭2007 三枝・文珍・鶴瓶弟子の会」
7月16日◆いよいよ千秋楽 防衛らくご会◇浜離宮朝日ホール「銀座落語祭2007 防衛らくご会」
7月18日◆扇辰の盲人噺に目を開かされる◇銀座・博品館劇場「入船亭扇辰と柳家喬太郎」
7月21日◆お若の疎外、伊之助の折目◇深川江戸資料館小劇場「さん喬を聴く会 Vol.96」
7月31日◆談春「質屋蔵」はじわじわ来ますよ◇新宿・紀伊国屋ホール「黒談春 第3回」
8月2日◆久しぶりの寄席定席で◇上野鈴本演芸場「八月上席夜の部」
8月7日◆談春の前座噺◇新宿・紀伊国屋サザンシアター「第二回 白談春」
8月10日◆飯島平左衛門という男◇横浜・にぎわい座「柳家喬太郎牡丹燈籠通し公演 後半」
8月17日◆他人の作った新作ばかりを◇お江戸日本橋亭「柳家喬太郎落語・アナザーサイド Vol.1」
8月17日◆志の輔が語らなかった「牡丹燈籠」◇下北沢・本多劇場「志の輔らくご in 下北沢 Vol.14」
8月31日◆若手真打ち四人衆の余一会◇池袋演芸場「余一会 噺坂・其の弐」
9月6日◆鶴瓶「死神」の研鑽◇有楽町・よみうりホール「東西落語研鑽会 第二十四回」
9月7日◆はだかちゃんのいとこいに感嘆◇練馬文化センター小ホール「二人のビックショー 市馬喬太郎」
9月14日◆ラジオデイズ 嬉しい顔ぶれ◇四谷・コア石響「第五回ラジオデイズ落語会」
9月16日◆また居酒屋で文左衛門◇南長崎・ぽんた「第十回ぽんた寄席 橘家文左衛門独演会」
9月21日◆談春、遅刻まで師匠似?◇練馬文化センター小ホール「立川談春独演会」
9月23日◆今年度最強の三人会◇新宿・紀伊国屋ホール「三人集 夜の部」
9月24日◆わか馬・文ちゃんタッグも強いぞ◇中野・なかの芸能小劇場「わか馬 翔る ─鈴々舎わか馬独演会─」
10月3日◆にぎわい座の談春落語トーク◇横浜・にぎわい座「談春七夜アンコール 第五夜『銀』」
10月10日◆白鳥の大狼藉古典の会◇下北沢・「劇」小劇場「スワンダイブ<古典の世界> 白鳥独演会」
10月12日◆勉強会ならではの喬太郎も◇下北沢・「劇」小劇場「一本柳道中双六 喬太郎勉強会 初日」
10月14日◆聴き応え十分のおせつ徳三郎◇下北沢・「劇」小劇場「一本柳道中双六 喬太郎勉強会 千秋楽」
10月15日◆息を呑む小柳枝のうまさ◇内幸町ホール「悠々遊雀」
10月20日◆吉坊のちびっ子大会◇浅草・見番「浅草見番寄席第九回 桂吉坊の会」
11月3日◆神田茜の張り扇◇なかの芸能小劇場「秋の文左衛門大会」
11月8日◆談春「たちきり」ふたたび◇横浜・にぎわい座「談春七夜アンコール2007 第六夜『緋』」
11月17日◆“天どんバブル”のゆくえ◇下北沢・小劇場「楽園」「第二回 僕のらくご道」
11月23日◆立川流若手のダークな噺◇銀座・博品館劇場「平成噺し座 其の十 人生博打だ!」
11月29日◆一之輔まだ先の長い上り坂◇日暮里サニーホール「真一文字の会」
12月1日◆談志『つるつる』ハッピーエンドの理由◇三鷹市公会堂「立川談志独演会」
12月5日◆それぞれの年の瀬、談春『芝浜』◇横浜にぎわい座「談春七夜アンコール2007」
12月9日◆男の涙といえば遊雀◇お江戸日本橋亭「三遊亭遊雀勉強会 師走会」
12月24日◆歌武蔵の独特な『芝浜』◇なかの芸能小劇場「くらぶ歌 第三回」
*******************************************************
落語雑録2006へ
落語雑録2005へ
落語雑録2004へ
|