「宇宙消失」 グレッグ・イーガン 創元SF文庫

原題:Quarantine

1992年 原著
1999年 邦語訳 初版

"シュレディンガーの猫"をご存知であろうか?
量子論上の喩え話である。

"放射性元素が崩壊すると毒ガスが出て、中の猫が死ぬような仕掛けの箱があるとする。
放射性物質の崩壊というのも量子力学的現象で、崩壊がいつ起こるのかは確率的にしか予言できない。
だから放射性物質の状態は(観測する前は)「まだ崩壊していない」と「すでに崩壊した」の二つの状態の重ね合わせになっている。
しかし、「まだ崩壊していない」は猫の生と、「崩壊した」は猫の死と結びついている。
だから、観測する前は「まだ崩壊していない」と「崩壊している」のどちらにあるかわからない-つまり二つの状態の重ね合わせになっている-という状態を認めるのであれば、同様に、観測する前は猫が「生」と「死」の二つの状態のどちらにあるのかわからない-つまり二つの状態の重ね合わせになっている-という状態の存在も認めなくてはならない。
しかし我々は「生」と「死」の二つの混ざり合った状態の猫なんて、見たこともない......。
ということは、この過程のどこかに、波動関数の収縮という現象を起こしたものがいるはずだ。"

数学的に波動関数を理解しない私には、こういうアナロジカルな理解の方法しかないが、上記は巻末の解説の引用である。波動関数の収縮を起こすのが人類の脳の特殊能力であり、人間が観測を行うたびに多元的宇宙が破壊されつづける、というのがイーガンの新発想。
このSFは、ナノマシンで神経回路を自由に再構成する2067年の元警官の物語である。その世界はなぜか事象の地平線で囲まれ、人類は太陽系外へ到達することはできない。先天的な知的障害がある女性の捜索願を出された彼は、次第に大きな出来事に飲み込まれていく...。

 

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