滅びの風 栗本薫 早川書房

1988年単行本初版

1993年文庫本第1刷

 

自動調理器、ディスポーザブルの衣服、トレーにのせたフレーク状の食事、動く歩道、ユニットの住居。はっきり言って1985年に書き下ろされたにしても、陳腐な未来である。

しかし、この短編集が静かに語りかけてくる声が読む人にきちんと聞こえるのは、生き様(というか死に様だが)や心のつながりが丁寧に描かれているからであろう。SFの殻をかぶっているが、これはほんとはSFではないのだ。描写に手抜きは無いし、メッセージは心に響く。

同時に読んだ同女史の「さらしなにっき」も、SFとしてのアイデアはなんとなく既視感を持ってしまう、ようするに ”これどっかで読んだことあるぞ” と思わせるようで、私にとってはいまいちだった。

しかし、かの女史の本の読みごたえは、深い森の中をお気に入りの木を探すために彷徨するのに似たような楽しさにある。 ”これはあそこで見たことがある” ”やっぱり栗本女史もあれが好きだったのか” 等とつぶやきながら、ふと後ろを振り返り自分の迷い込んだ森の深淵に驚くのだ。

 

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