長く暑い夏の一日 渡辺淳一 講談社
1988年第1刷
1993年第11刷
これはサスペンスではないが、最高のサスペンスだ。医学小説ではなく、医学以外のものに振り回される医学の話だ。
と、いきなりもってまわった言い回しになってしまった。これではなんのことかわからないだろう。一言でいってしまえば、事故死したドナーから患者へ腎移植を行う話である。しかし、ドナーは実は不倫に行く途中であった、というあたりから次第に雲行きが怪しくなる。そして腎臓を輸送中に高速道路の事故渋滞には巻き込まれるは、レシピエントの家族の秘密があらわになるは、それぞれの登場人物のドラマがはじまる。つるんとして何も言わない2個の腎臓の周りを、人間の様々な思惑がぐるぐるまわる。
これは渡辺氏の傑作だと思う。失楽園なんて目じゃないぜ。