「ロケット ボーイズ」 ホーマー・ヒッカム・ジュニア 草思社
原題 ROCKET BOYS
1998年原著
2000年2月邦語訳初版
2000年4月第8刷
元NASA職員の高校時代を描いた自叙伝である。
1950年代の地方の炭鉱街でつましく育つ高校生たちの物語だ。父親は炭坑で監督を勤める、たたき上げの仕事一徹男。家でちゃぶ台でもひっくり返していそうなティピカルな頑固親父である。(アメリカだからちゃぶ台はないが...。)母親は優しくかつ強い炭坑の母。しかし、いつかボタ山を離れ海岸で暮らすことを夢見ている。兄はアメリカンフットボールの優秀なプレイヤーで、スポーツで大学進学を目指している。娯楽のないこの町ではスポーツができることがヒーローの必須条件であり、また、裕福でない少年たちが町から脱け出るためのほとんど唯一の方法でもある。主人公は学業ができるわけでもなく、これという取り柄も無いSF好きなごく普通の学生。卒業後は他のほとんどの高校生たちと同様に、そのまま地元の炭鉱会社に勤める平凡なレールが敷かれている。昭和30年代に日本の地方都市でもよく見られたような設定だ。
ある日この町の上をソ連の人工衛星スプートニクが飛ぶ。"自分の力でロケットを飛ばす。"突然思い立った主人公の周りに友人たちが集まり...。
単なる思い付きをそれだけで終わりにせず、一つ一つの問題を地道にクリアしていった少年たちにも感心するが、それより、子供たちのすることを見守った周囲の大人達の態度に感心する。日本では考えがたいことだ。
心に残った言葉 (本文中より)
「この町のこどもは、みんなのこどもなんだ。それがこの町の不文律だ。」
「たとえ60メートルしか飛ばなくてもね。それがもし60メートル飛ぶように設計されていて、きっかり60メートル飛んだとすれば、それは理想のロケットだ。」
「そしてきみのためにタダで働くという、この貴重なチャンスを失わないようにしろって言うんだろ?」そう言ってケイトンが大笑いした。
この本は1999年に映画化された。映画の方の題は"October
Sky"、"遠い空の向こうに"。日本では少ない映画館でしか公開されなかったが、非常に好評なため地方都市で引き続きロードショーとなっているようだ。
私ははじめ気づかず、なぜ"October"なんだろうと思っていたのだが、実は"R・O・C・K・E・T B・O・Y・S"と"O・c・t・o・b・e・r S・k・y"はアナグラムであり、ちょっと洒落たつくりになっている。この本のエピローグは映画「アメリカン・グラフィティ」のようにやるせなく少し悲しく美しい。10月の空のような色をしている。