ハッブル望遠鏡が見た宇宙 野本陽代, R.ウィリアムズ 岩波書店

1997年第1刷

 最近アサヒグラフでも特集された、ハッブル望遠鏡による天体写真を中心に構成されている。ハッブル望遠鏡はご存知の人も多いと思うが、1990年に打ち上げられたが、球面収差が大きすぎて打ち上げ直後はほとんど使い物にならなかった宇宙望遠鏡である。

 1993年に補修され、そのデーターがようやく昨年頃から巷に出回るようになった背景には、データーの所有権も関係していた。つまり、契約した科学者の手にNASAからデーターが渡って1年間は、その科学者にデーターの占有権が認められているのである。回りからすればじれったい1年間であるが、もともとハッブルが見つけなければ知られなかった事実なのだから、研究のためにはしょうがないことだ。(もっとも、研究者の立場からすればたった1年間しかデーターを占有できないと言うのはちょっと酷かもしれない。)まあどうでも良いことだが、本当はもっとスゴイ写真があるのではないかという、ちょっとうがった気持ちにもなる。

 20年前にボイジャーが木星と衛星の写真を送って来たとき、私は非常に感動してこの時代にうまれたことに喜びを感じた。いや、これは誇張でなく、本当にそう思った。今回もそれに似た気持ちを持った。こんなへんてこりんで美しいものが、誰も知らなかったところに広がっているということに、一種の畏れに似たような感動を覚えている。

 また不幸中の幸いか、故障中のハッブル望遠鏡のピンボケ画像を処理するために開発されたソフトが、いま乳がんの検査に使われるようになったということだ。宇宙開発の技術の一端に日常生活の中で触れられることは多い。医療業界でもゴアテックスや、下痢止め、画像処理技術など平和利用された技術も多いが、もともと宇宙開発が軍需産業主導でされてきたことから考えると、ちょっとブラックユーモアである。

 まあいろいろ考えなくても、十分楽しめる本です。

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