有病者の歯科治療

 

最終更新日 2012/05/21 Dental System Center
服薬剤と歯科治療  
       

★ COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の歯科治療

肺気腫や慢性気管支炎などで、咳、痰、呼吸困難などの症状を主体とする。SPO2のチェックは必須。90%が目安。

★ 胃潰瘍、十二指腸潰瘍 

# 鎮痛剤を使用する場合にはアセトアミノフェンか、塩基性の解熱鎮痛剤を使用する。酸性の解熱鎮痛剤は胃に負担をかけるので不適。

★ 花粉症・アレルギー性鼻炎

# 花粉症・アレルギー性鼻炎の患者は、口呼吸することが多く、注水下の歯科治療は苦しい。従って、ケースによっては「ラバーダム」の使用などの配慮が必要である
# 抗ヒスタミン剤により口腔の乾燥、唾液の分泌減少がおきやすく歯周病やう蝕になりやすい。

★ 感染性心内膜炎の予防

# アメリカ心臓学会によると、処置1時間前にアモキシリンを内服。追加投与は不要。
# 110511: 観血治療前における、感染性心内膜炎リスク患者に対する予防的抗菌剤の投与の必要性だが、英国で2008年に出されたNICEガイドライン(予防的抗生物質投与中止の推奨)の前後の比較で、抗菌剤の予防投与は約78.6%減少したが、感染性心内膜炎が大幅に増加したというデータは出ていない。

★ 肝臓病患者への対応

# 肝機能障害の原因: ウィルス性肝炎、アルコール性肝障害、薬物性肝障害、自己免疫性肝障害、肝硬変、肝臓癌。
# 肝機能患者のモニタリング
  肝疾患者の所見
(1) 歯肉炎・口内炎・出血傾向
(2) 歯の着色(ビリルビンの沈着)

# 歯科治療時の注意
(1) 治療時間が長くならない、疼痛、不安を与えない
(2) 創面を清潔に保ち、感染に注意する
(3) 観血処置はコントロール時
(4) 薬剤の投与は肝毒性の少ないもの
  抗菌剤はペニシリン系やセフェム系を必要に応じて予防投与が必要。非ステロイド性消炎鎮痛剤、浸麻は1〜2本程度。

★ 気管支喘息の歯科治療

# 原因要素
@ アレルギー: T型反応が主。
A 自律神経: 気管支の平滑筋は自立神経によって支配されており、副交感神経を刺激すると気管支は収縮し、交感神経を刺激すると気管支は拡張する。
B 物理的刺激: 温度、レジンモノマー、ユージノール等に注意。
C ストレスや運動負荷や薬剤(アスピリン喘息等)

# 歯科治療時の注意
@ 鎮痛剤の選択やテオフィリンとマクロライド系の併用に注意。
A アドレナリン: アドレナリンは気管支の平滑筋を弛緩させるので問題ない。しかし、気管支拡張作用のあるプロカテール(メプチン)などはアドレナリンとの併用禁止なので注意。
B ステロイドを内服中の患者は易感染性なので病院歯科へ。

★ 虚血性心疾患 抜歯と抗血栓剤 ・ 抜歯前の休薬

# 狭心症: 発作時の胸痛は数十秒〜数分で痛みも軽度である。
・ 胸痛発作の持続が長くなった場合や、ニトログリセリンの使用量が増加した場合などは歯科治療は禁忌。
# 心筋梗塞: 数時間も強烈な痛みが続く。顎や歯の痛み。左肩から左手にかけての痛み。心窩部の疼痛。
# 労作性狭心症: 心電図 ST低下
# 心筋梗塞: 心電図 ST上昇 T波増高
# 麻酔薬の選択: キシロカイン(オーラ)、健康な人の使用上限は、1.8ml7〜8本(文献によって異なる)。虚血性心疾患の患者は1〜2本が目安。
# キシロカイン(オーラ)の特徴: 麻酔効果が高く、心筋酸素消費量が増加する。
# ワルファリンによる抗凝固療法のモニターとして利用されるINR(International normalized ratio)が2.0以下であれば、一般的な歯科治療は可能。広範囲の観血処置をする場合は1.5以下が目安。
# ワルファリン服用患者はボルタレンやアセトアミノフェンによって出血傾向が強くなる。
# ワルファリン内服患者は伝達麻酔禁忌
# ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬、アスピリン、メフェナム酸、インドメタシンなどの非ステロイド系抗炎症薬はワルファリンの抗凝固作用を増強する。

★ 090511: 抗うつ薬服用患者の歯科治療

厚生労働省は「抗うつ薬の使用上の注意を改訂」を決定。抗うつ薬を服用した患者に、「他人に突然、暴力をふるうなど攻撃性が増す症状」があらわれることが有るそうで、対象5製品中4製品はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)だそうだ。
ところで、高齢者の患者さんに「抗うつ薬」を服用している例をよく見受けられます。
ものの本によると、老年期の人格変化の型には以下の3つの型があるそうです。
@ 拡大型: 既存の性格の強調
A 円熟型: 角がとれて調和
B 反動型: 若いときと正反対
このように、人格変化の型は人により様々で、それに薬剤が加算されるといろいろな現象の発生が考えられます。歯科臨床現場でも注意を払った対応が必要でしょう。
# 精神科系統の薬を服用している患者

★ 高血圧患者

# エピネフリンのα作用: 抹消血管の収縮 
# エピネフリンのβ作用: 心拍数や心拍出量を増加して血圧上昇。しかし、内科的にコントロールされていれば浸麻3.2mlまで使用可能。

# 局所麻酔薬の選択: 最高血圧180mmHg以上、最低血圧110mmHg以上の場合にはアドレナリン含有の侵麻を避けるか少量にとどめる。特にβ遮断薬を使用している患者は、相互作用で血圧上昇をきたすことがある。治療時の疼痛も血圧上昇の原因となる。アドレナリン含有麻酔薬でもカートリッジ2本までは心血管系にほとんど影響を及ぼさない。

★ 甲状腺疾患患者

# 甲状腺機能亢進症
バセドウ病が約4割を占める。20〜40才代の特に女性に多い(男女比、1:3.4)
手指や舌に震え(振戦)。汗が多く不眠やいらいらしやすい。筋力が低下して疲れやすい。
口腔内症状としては、舌の灼熱感、顎骨粗鬆症、歯槽骨吸収など。

# 甲状腺機能低下症
筋力低下、血圧低下、発汗減少、無気力で疲れやすい。発症頻度は亢進症に比べて少ない。血小板減少を伴うことが多いので注意。
代表的な病気に「クレチン症」があり、歯の発育の遅れ、齲触の多発、歯列不正、歯肉炎がある。

# 甲状腺疾患患者の歯科治療
(1) 局所麻酔時には、血圧と脈拍のチェックを行う。血管収縮剤含有の浸麻剤は通常使用量は特に問題は無いが、場合によっては血管収縮剤を含まないものを使用する。
(2) 甲状腺機能のコントロールがなされていない患者は応急処置に留め、麻酔は血管収縮剤を含まないものを使用する。
(3) 短時間の治療を心がける。
(4) FT3、FT4、TSHが正常値の患者は一般開業医での診療も可能であるが、異常値の患者は病院歯科へ。
・ FT3(サイロキシン): 正常値2.5〜5.5pg/ml(亢進症では上昇)
・ FT4(トリヨードサイロキシン): 正常値0.8〜1.9ng/ml(亢進症では上昇)
・ TSH(甲状腺刺激ホルモン): 正常値0.4〜5.3μU/ml(亢進症では低下)

★ 高齢者の基本生理

# 老年期の人格変化の型
@ 拡大型: 既存の性格の強調
A 円熟型: 角がとれて調和
B 反動型: 若いときと正反対

高齢者の生体機能は経年的に低下する。しかし身体機能に比べて精神機能の低下は緩やかである。
# 主な生理的特徴
@ 薬剤の血中濃度の上昇と排出遅延。
A 薬剤の副作用が出やすい。
B ロキソニンなどのプロドラックは胃腸障害が少ないとされており高齢者に使いやすい。

★ 骨粗鬆症患者

# ビスホスホネート製剤使用の患者

★ 重症筋無力症

進行の度合い、服薬状況を主治医に照会する。
局所麻酔は通常使用量は可能。術前にSPO2をチェックする。
午後は体調が悪化するので、歯科治療は午前中に行う。

★ 上顎洞炎(副鼻腔炎)

参考: DENTAL DIAMOND 2011/01
# 上顎洞に露出する歯根の出現率(岡島の文献より)
・ 犬歯: 4.0%
・ 第1小臼歯: 4.0%
・ 第2小臼歯: 8.0%
・ 第1大臼歯: 近心根8.0%、遠心根8.0%、口蓋根24.0%
・ 第2大臼歯: 近心根8.0%、遠心根8.0%、口蓋根12.0%
# 歯性上顎洞炎は鼻性を含めた全上顎洞炎の4〜13%
# 根尖孔のほとんどは根先端にはなく多く(約80%)は頬舌側、近遠心方向に開いている。
# 歯性上顎洞炎は「後部篩骨洞」には波及せず、「前部篩骨洞」と上顎洞に限局するが、鼻性上顎洞炎は「後部篩骨洞」や「蝶形骨洞」に波及することが多い。

★ 心筋梗塞患者の歯科治療

・ 発作後3ヶ月経過すれば則副血行路が形成され再梗塞のリスクは減少する。
・ 心筋梗塞発症後3ヶ月以内は歯科治療禁忌。
・ RPP(収縮期血圧×心拍数)が12,000以下を目安に歯科治療を行う。
・ パルスオキシメーターでSPO2をチェックし、必要に応じて酸素吸入を行う。
・ 意識喪失したら、救急車を呼ぶ。心室細動に対してはAEDを使用。

★ 腎不全・透析患者の歯科治療

ドライマウスや味覚障害が見られる。透析患者の唾液分泌量は健康な人の1/4に減少する。従ってう触や歯周病の発生が増える。
X線画像では、骨のスリガラス状の変化が見られ、抜歯後の治癒不全や、難抜歯による骨折のリスクが高まる。
歯科治療時の注意
@ 易感染性: 外科処置に際しては抗生物質の予防(術前)投与が必要。
A 循環器疾患の合併症がよく見られ、歯科治療の際には血圧や心電図のモニタリングが必要。
透析患者の血圧測定はシャントを形成している腕の反対側を使う。
B 出血に対して: 抗凝固作用、抗血小板作用の薬剤の使用中の患者に注意。

★ 睡眠時無呼吸症候群

# 睡眠時無呼吸症候群患者の注意: 無歯顎の人の睡眠時における義歯は舌の沈下を予防するため入れて寝た方がよいという指摘もあるが、誤飲には充分に注意が必要である。総義歯を飲み込むことがあるのかという意見もありますが、誤飲例があるようです。
# 肥満の人の水平位治療に注意。上気道を閉鎖しやすいのでバイタルサインのチェックが必要。
# スリープスプリント: 下顎を数mm前方移動(反対咬合)にさせる。舌が前方に移動するため舌房が広くなり舌沈下が防止される。咽頭後壁と軟口蓋下縁の間隔も広がり、いびきや無呼吸もほとんど無くなる、ただし鼻呼吸できない人には注意。顎関節症患者にも注意。

★ 精神科系統の薬を服用している患者
# 浸麻(リドカイン)の使用: 三環系抗うつ薬、イミプラミン等、MAO阻害薬(血圧上昇を起こすことがある。)、抗精神病薬(過度の血圧低下を起こすことがある) 三環系抗うつ薬、イミプラミン等、MAO阻害薬(血圧上昇を起こすことがある。)、抗精神病薬(過度の血圧低下を起こすことがある)

★ 喘息患者の歯科治療

# 麻酔: 麻酔薬中のエピレナミンは気管支拡張吸入剤使用患者への使用は禁忌。併用により、不整脈、心停止の可能性がある。
# 鎮痛剤: バファリンなどのサリチル酸誘導体の薬剤はアスピリン喘息を誘発。アスピリン喘息患者にはロキソニンは禁止。
# 抗菌剤: 喘息の治療薬テオドールとマクロライド系抗菌薬の併用はテオドールの血中濃度を上昇させるので注意。抗菌薬はペニシリンかセフェム系を選択。

★ 大動脈瘤患者の歯科治療

大動脈瘤患者には、DIC(播種性血管内凝固症候群)を合併し、抜歯後の異常出血をきたすことがある。 → 全身的な対応が必要。

★ 糖尿病

# 糖尿病患者の歯科治療は、食後が望ましく、昼前か夕方の治療は避ける。治療前に糖分を補給すること。感染し易いので注意。
# 糖尿病患者はインスリンの分泌が少なく細胞にうまく糖分を取り込ません。従って低血糖の発作をおこしやすく時には50mg/dl以下の低血糖が続くと意識を失う場合があります。従って歯科治療は食後1時間くらいに行い、発作が起きた場合には甘い物をとる。
# 高血糖の方は感染しやすく治りにくい。従って、抜歯後は縫合などの方法でしっかり抜歯窩を閉鎖して止血を行う。また、抗生物質を通常より長めの期間投与するなどの配慮が必要です。また、インスリン注射などにより血糖値を下げている人は、空腹時の治療はさけるのはもとより、術前に血糖値(80〜120mg/dl)や糖化ヘモグロビン(基準値4.3〜5.8%)などにより状態を確認する必要があります。
 うちでは血糖値はチェックしますが糖化ヘモグロビンまではチェックしてはいません。ものの本によると、血糖値は変動が激しくあまりあてにはならないが、糖化ヘモグロビンは去1〜2ヶ月間の血糖レベルと相関し、重要な判断基準になるようである。
# 空腹時血糖値が140mg/dl以下で、高血圧や狭心症などがよくコントロールされ、糖尿病のコントロールがなされているケースでは、通常の歯科治療は問題ない。しかし、症例によっては、処置に先立って抗生物質の投与が必要。
# 糖尿病患者は白血球の働きが弱く感染などに弱い。高血糖だと血管の機能異常により血行不良となり、その結果歯肉の血行不良で歯周病が悪化しやすい。
# 糖尿病患者は抜歯後の出血や感染のリスクが高いので血糖値のコントロールが大事で、必要によっては主治医に情報提供を求める必要がある。
# 糖尿病患者の意識障害は低血糖によっておきる。主な症状は、頻脈、発汗、振戦、顔面蒼白、血圧上昇、けいれん、頭痛、意識障害。
# 低血糖時の対応: 飴を舐めさせる。意識が無いときは50%ブドウ糖液20mL以上の静注。
# 糖尿病の血糖値コントロール
優: 空腹時血糖値:〜100 食後2時間血糖値〜120 HbA1c: 〜5.8%
良: 〜120 、 〜170 、 〜6.4%
可: 〜139 、 〜199 、 〜7.9%
不可: 140 、 200 、 8.0%以上
# 歯周病と糖尿病
お互いに病状を悪化させる作用を示す。

★ 妊婦の抜歯

抜歯をすると、妊婦においては約60%の確率で菌血症がおきる。健康な妊婦の場合には問題ないが、「僧帽弁閉鎖不全」などを代表とする心臓病がある場合には、「感染性心内膜炎」により血栓を作り、多臓器疾患(脳梗塞、心筋梗塞)などの原因になりやすいので注意が必要だ。
ちなみに無症状性の僧帽弁閉鎖不全に罹患している女性の割合は6%にも上るとのことである。特に、妊娠初期には「抗生物質」の使用は避けたいと思うのが人情だが、何を優先にするかということであろう。米国心臓学会のガイドラインでは、心疾患を有する妊婦の抜歯においては、術と術後にペニシリン系抗生物質を服用する必要があるということのようだ。
# 妊産婦への投薬時の注意

★ 脳出血・くも膜下出血患者の歯科治療

歯科治療の基準: 脈拍120以下、最高血圧180mmHg以下、最低血圧110mmHg以下。

★ 肺炎患者の歯科治療

・ 高齢者の誤嚥性肺炎に注意。
* 誤嚥の原因: 咳反射と嚥下反射能力が低下するのが原因。
咳反射 → 気管にはいった異物を咳をすることによって体外に排泄する防御反射。
嚥下反射 → 軟口蓋部、舌根部、咽頭後壁部などへの刺激により、呼吸を停止し、唾液や食べ物を咽頭から食道に送り込む反射運動。
脳梗塞患者は、神経伝達物質のドーパミンの放出が阻害され、神経ペプチドのサブスタンスPの生産が低下して咳反射と嚥下反射が阻害され、誤嚥性肺炎が起こりやすい。
強力な睡眠薬はドーパミンを抑制し、結果誤嚥をおこしやすい。
唾液分泌の低下も誤嚥に影響する。
総義歯患者では、義歯を装着しないと唾液の分泌が低下するのでなるべく装着するようにする。

★ 肺癌患者の歯科治療

喫煙者の肺癌発症リスクは非喫煙者の10〜20倍。受動喫煙でもリスクは20%上昇する。
肺癌患者は抗ガン剤により全身的免疫力の低下などに注意。

★ パーキンソン病

神経変性疾患で神経伝達物質のドーパミンが減少し@安静時の振戦A筋の固縮B無動C姿勢反射障害の4大運動機能障害が特徴。
歯科的には歯周疾患が進行しやすい、入れ歯の着脱管理困難、治療薬の副作用で口腔乾燥症、嚥下障害がみられる。
歯科治療時には、転倒や椅子の落下に注意、体が動くので鋭利な器具の使用に注意。
誤嚥防止のため治療姿勢に注意。寝かせない。
起立性低血圧をおこしやすいので、急に背板を起こさない。
歩行可能な患者でも転倒しやすいので注意。
ウェアリング・オフ現象: パーキンソン病治療薬の効果持続時間が短くなるために、内服後しばらくは動ける状態がありますが、すぐに効果が無くなってしまう現象。
症状が進むと、発音、咀嚼、嚥下障害がおきる。パーキンソン病患者の死亡の原因は誤嚥性肺炎が多い。
薬物による口腔乾燥、ジスケネジア、舌痛がある場合には主治医に照会。

★ ビスホスホネート系の薬剤使用患者   ビスホスホネート系の代表的薬剤
・ 追記資料集

監修 (社)日本口腔外科学会 関係製薬会社作成資料より

# ビスホスホネート(BP)とは、石灰化抑制作用を有する生体内物質であるピロリン酸のP−O−P構造を、安定なP−C−P構造に変えたものの総称です。

# 歯科医、歯科口腔外科医の先生方へ
(1) 注射用製剤投与患者に対して
@ BP系製剤(注射)投与予定の患者に対しては
・ 外科的な歯科医療は、BP系製剤治療の開始前に行うこと。
・ 歯周組織を健康にしておくこと。
A BP系製剤注射中に抜歯などの外科処置が必要になった場合には
・ 処方の変更や中止の可否を処方医に相談する。
・ 直接骨損傷を伴うような抜歯などの外科処置は避ける。
・ 糖尿病やコルチコステロイド剤の使用といった危険因子がある場合には、充分に注意して抗生剤や口内洗浄剤の使用を考慮すること。

(2) 経口製剤投与患者に対して
@ BP系製剤(経口)投与予定の患者に対しては
・ BRONJ(BP系製剤関連顎骨壊死)発生を防ぐ最前の方法は、口腔衛生状態を良好に保つことと、定期的な歯科検診を含めた口腔ケア。
A BP系製剤(経口)投与中に抜歯などの外科処置が必要になった場合には
・ 処方の変更や中止の可否を処方医に相談する。
・ 糖尿病やコルチコステロイド剤の使用といった危険因子がある場合には、充分に注意して抗生剤や口内洗浄剤の使用を考慮すること。
・ (米)歯科医師会の専門委員会は、口腔BP製剤服用患者においてはBRONJ発生リスクは低いが、抜歯の場合には以下の提言をしている。
a 抜歯等の浸襲的歯科処置を行う前に、再度患者に経口BP製剤投与とBRONJのリスクについて説明すること。
b 骨への外科手技の直前と直後に、クロルヘキシジン含有洗口液による洗浄を行う。一般に、クロルヘキシジン含有洗口液は、術後2ヶ月間、1日2回使用する。使用期間は、患者の治癒状態に応じて延長する。
c 広範囲に及ぶ骨への浸襲を伴う手技(抜歯、歯周外科処置、上顎洞底挙上術など)では、創の治癒期間に予防的抗菌薬を投与してもよいが、必ずしも強制ではなく、推奨もされていない。
d 予防的抗菌薬の使用は、個々の患者の病態と危険因子(経口BP製剤の長期使用、高齢、エストロゲンまたはステロイドの併用)の有無によって判断する。手技の1日または2日前に、予防的抗菌薬投与を開始することもある。
* クロルヘキシジン含有洗口液について
国内では口腔内への使用は禁忌で、販売されておりません。国内で一般的に口腔内の洗浄に使用されるものはポピドンヨード(イソジン)です。
なお、国内でも医薬部外品など一般向け洗口剤では、0.05%程度の低濃度のグルコン酸クロルヘキシジンを含有する製品がありますが、米国の学会で推奨されているクロルヘキシジン濃度は0.12%のようです。

# 医薬品・医療機器等安全情報 No270(100630)
ビスホスホネート系薬剤: 患者に対し適切な歯科検査を受け,必要に応じて抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置を投与前に済ませるよう指示するとともに,本剤投与中は,歯科において口腔内管理を定期的に受けるとともに,抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置はできる限り避けるよう指示すること。また,口腔内を清潔に保つことや歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知するなど,患者に十分な説明を行い,異常が認められた場合には,直ちに歯科・口腔外科に受診するよう注意すること。

# 医薬品・医療機器等安全情報 No272(100929)

ビスホスホネート系薬剤による顎骨壊死・顎骨骨髄炎に係る安全対策に至る検討状況と対
策について
医薬品・医療機器等安全性情報 No.272 2010年9月
 
# 患者における顎骨壊死・顎骨骨髄炎の発症に関連するリスク因子を踏まえ、必要に
応じて、抜歯等の侵襲的な歯科処置はBP製剤の投与前に済ませ、BP製剤投与中には、歯科において口腔内管理を定期的に受けるとともに、抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置はできる限り避けるよう医師から患者に説明するよう、注意喚起を行うこととした。
 
# 顎骨壊死・顎骨骨髄炎の副作用報告状況等について
豪州における報告では、経口のBP製剤を使用した症例の0.01 〜 0.04%で顎骨壊死・顎骨骨髄炎を発現し、抜歯された症例での発生頻度は0.09 〜 0.34%であったとされている。
また、この報告では、注射剤を使用した悪性腫瘍症例の0.88 〜 1.15%で顎骨壊死・顎骨骨髄炎を発現し、抜歯された症例での発生頻度は6.67 〜 9.1%であったとされている。
 
#  Sedghizadehらは、南カリフォルニア大学歯学部の電子診療記録データベースから、患者(n=13,730)のアレンドロン酸使用例、抜歯歴、顎骨壊死・顎骨骨髄炎の治療状況を調査した。その結果、アレンドロン酸を使用している患者の208人のうち9人(約4%)が顎骨壊死・顎骨骨髄炎を発現していた。一方、アレンドロン酸使用歴のない患者13,522人においては、顎骨壊死・顎骨骨髄炎を発現した患者はいなかった。
 
# Loらが実施した米国における経口のBP製剤服用者を対象とした調査では、顎骨壊死・顎骨骨髄炎の発生頻度が952 〜 1,537人のうち1人であった。
 また、日本口腔外科学会が国内248施設を対象として、約2年間にわたりBP製剤服用後に顎骨壊死・顎骨骨髄炎を発現した症例を調査したところ、263例(うち、経口剤投与例は111例)が米国口腔外科学会の提唱する顎骨壊死・顎骨骨髄炎の診断基準に合致したとされ、国内における経口のBP製剤投与による顎骨壊死・顎骨骨髄炎の発生頻度は0.01 〜 0.02%程度と見積もられた。
 
# 国内副作用報告の状況
副作用報告例(経口剤): 平成19年度(80例、98件)、平成20年度(101例、113件)、平成21年度(84例、99件)
副作用報告例(注射剤): 平成19年度(106例、122件)、平成20年度(105例、119件)、平成21年度(139例、145件)
 
# BP製剤の推定使用患者数(レセプトデータより)
・ 経口剤: 平成19年(約208万人)、平成20年(約247万人)
・ 注射剤: 平成19年(約31,000人)、平成20年度(約47,000人)
 
# 安全対策の内容と対応について
@ BP製剤では、注射剤でより高率であると考えられるものの、投与経路によらず顎骨壊死・顎骨骨髄炎のリスクがあること
A 医師から患者に対して、「投与にあたって、適切な歯科検査を受け、必要に応じて抜歯等の侵襲的な歯科処置はBP製剤の投与前に済ませ、BP製剤投与中には、歯科において口腔内管理を定期的に受けるとともに、抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置はできる限り避ける。」ことを説明する必要があること。
※  この使用上の注意においては、「投与にあたって、適切な歯科検査を受け」としているが、処方に際し、顎骨壊死・顎骨骨髄炎の局所的なリスク因子(口腔の不衛生、抜歯などの歯科処置の既往、歯周病(いわゆる歯槽膿漏などの炎症疾患の既往)等)を把握するため、例えば、患者が定期的な歯科検査や口腔内管理を受けているか、現在歯科治療を受けているか等の口腔内の管理状態を確認し、必要に応じて歯科検査の受診を勧奨するなどの可能な限りの適切な対応をお願いするものである。また、主治医が治療開始前にこれらの対応を全て済ませる時間的余裕がないと判断した状況においては、投与開始と歯科処
置が並行する場合もありうると考えられる。
 また、必要に応じて事前に抜歯等の歯科処置を済ませること、口腔内管理を定期的に受けること、投与中の抜歯等の歯科処置はできる限り避けることを患者に伝達するよう医療関係者にお願いするものである。事前の歯科処置の必要性については、患者毎に、顎骨壊死・顎骨骨髄炎のリスク因子を考慮した対応をお願いするものであり、日本骨代謝学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科放射線学会、日本歯周病学会及び日本口腔外科学会のビスホスホネート関連顎骨壊死検討委員会によるポジションペーパーを参考とするなどの対応が考えられる。
 以上のように、BP製剤投与による顎骨壊死・顎骨骨髄炎を可能な限り防止していくためにも、医科、歯科・口腔外科の関連する医療従事者の連携した対応がなされるよう協力をお願いしたいと考えている。
併せて、これらの注意点を患者に伝えることや、服用中に歯科・口腔外科を受診した際に、BP製剤の投与を受けていることが伝わることを補助する資材として関係企業から、BP製剤の患者カードを配布することとしたので、臨床において活用されることが期待される。

# 当院院内における対応
・ 現在使用している予診表(歯管対応)に、骨粗鬆症の治療などの記載欄を追加するとともに、問診でも重ねて対応する。
★ 111107: リカルボン錠 & ボノテオ錠
2006年7月に承認申請をし、2009年1月21日付けで製造販売承認を取得した小野薬品とアステラス製薬の共同開発の「ミノドロン酸水和物(4週1回投与)」が2011年9月12日付けで薬価収載されました。
・ 小野薬品: リカルボン錠
・ アステラス製薬: ボノテオ錠
これらの薬品は基本的にビスホスホネート製剤で、歯科診療時に注意すべき薬の一種と考えられますので御注意下さい。1日1回投与のものは既に2009年4月販売済みですから名前としては御存知の方も多いでしょうが、今回4週に1回投与ということは半減期が長いと考えられます。

★ 副腎皮質機能亢進症
代表疾患: クッシング症候群。ステロイドホルモンの分泌過剰。
・ 歯科治療は応急処置に留めること。

★ 副腎皮質機能低下症
代表疾患: アジソン病。ステロイドホルモンの分泌低下によって生じる。疲れやすく、筋力低下、低血圧症が見られる。
・ 歯科治療時には、処置時間を短くし感染しやすいことに注意。

★ 服薬剤と歯科治療

# アマリール錠(糖尿病薬): 副作用: 歯肉の出血

# グリベンクラミド(代表:オイグルコン錠): 副作用: 歯肉の出血
血糖値を下げる糖尿病の薬。多量のアルコール摂取には注意。

★ 不整脈患者

# 塩酸リドカインは不整脈の治療薬だが、エピネフリンは心筋の活動を亢進させ、不整脈を誘発させやすい。

★ ペースメーカー装着患者の歯科治療

・ 歯科治療用の種々の機器はペースメーカーには影響は無いと言われている。
・ ただし、電気メスのように体内を電流が流れるものは影響があるので注意が必要である。
# 注意すべき機器: 電気メス、根管長測定器、歯髄診断器、超音波スケーラー。

★ 有病者の歯科治療に対して一般医はどのように対処しているか?

各種疾患を有する患者(Compromised host)の歯科治療に関する意識調査−医師に対するアンケート調査− 第8回日本有病者歯科医療学会総会 信州大学医学部歯科口腔外科
# 調査対象: 長野県内の24医療機関の内科・外科医87名の回答
上記発表の抄録によると
(1) 歯科治療後に体調不良、持病の悪化などをきたした患者の診療経験: 29.9%
(2) ワーファリン服用患者の抜歯において薬の中断が望ましいと考える医師: 67.8%
(3) 抗血小板薬服用患者の抜歯において薬の中断が望ましいと考える医師: 67.8%
(4) 心疾患患者の抜歯時の入院管理でNYHAの分類によっては入院が必要と考える医師: 62.1%
(5) 心筋梗塞後の抜歯の時期: 発症後6ヶ月以降(44.8%)、3ヶ月以降(31.3%)
(6) 高血圧症患者の歯科治療時の血圧値の目安: 64.4%の医師が160/95mmHgを目安とする。
(7) 高血圧症患者でのエピネフリン添加局麻薬の使用: 65.5%の医師が、0.00125%エピネフリン含有局麻薬4mlまで使用可能と解答。
(8)  糖尿病患者の血糖値の目安: 54.0%の医師がHbA1cが6以上でも抜歯可能、36.8%の医師がbA1cが6未満が抜歯の目安と回答。
(9) 消化管潰瘍薬内服中の患者に対するNSAIDsの投与: 81.6%の医師が頓用で投与可能と回答。
(10) 観血処置時の骨髄機能について: 63.2%の医師が、好中球1000/μl以上を目安に抜歯が可能と解答。


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