第一夜  2000年1月16日

  現在カノンプレイ中。
  周囲の知人、兄などがこぞって「あれはいい」と言っているので「ひとつ、やってみるか」と思ったのが発端だった。
  名雪が登場。頭の天辺から爪先指先に至るまで媚びと甘えに満ちた人物造形に、退く。
  月宮の登場、描写に「どこか幼さを残したような、小柄な女の子」。全員そうじゃねーか。
  天然ボケを突破して、「てめー年齢いくつだ」と突っ込みたくなるしぐさ。俺は問いたい。許可を乞いたい。「オレにこいつを殴らせろ。うぐぅ、じゃねーん だ、ばかったれ」。 たいやき食い逃げの経緯発覚。もう一度許可を求める。「こいつを殴らせろおおおお」

  二日目、登校初日。朝食風景。名雪の知能指数は犬や猫と同レベルではないかと本気で感じる。
  妙にのどかに登校風景。遅刻かも、という状況であれば個人的にはこういうのんきなBGMではなく、俺としては思わず「太陽にほえろ」のOPがなってしまう のだが、それはまあ個人差であろう。でも「ふぁいと、だよ」と言っている間があったらさっさと走った方がいいのではないかというのが個人的なツッコミ。 「明日はもうちょっと余裕を持って云々」「努力はするよー」の会話の部分に、(こいつ無視してひとりで登校させて欲しいなあ)と本気で思う。
  学校に到着。なんか変な女がまた登場。が、名雪や月宮よりはまともそうなので少し安心した。
  教室風景。お約束通りに女子の制服のスカートの丈は短い。まあ、時代の流れということか。
  放課後の会話風景。よかった。美坂はまともな人間だ。名雪の、こちら側の一挙手一投足に対する大袈裟な反応がカンに障る。まあ、じゃれ付いている犬とか猫 とかと思えば気にならんのかもしれん。
  昇降口まで送ってもらうことにする。その後、「走ることしか取り柄がないから」という名雪へのリアクション選択で、「そんな事はない」「その通り」の二択 を迫られる。逡巡。普通の自分であれば、社交辞令で「そんなことはない。他にも取り柄がお前にはあるだろう」と言っているところだが、そこまで気を使うに 足る人間なのかどうか、本気で判断に迷う。結局、社交辞令を使うことに。途中、主人公の居候がすでに知られている、ということが発覚。「普通、隠すだろ。 少し人からずれているとは思ったが……」というモノローグに、「ちげーよ。こいつはずれてるんじゃなくて人じゃないんだよ」と思わず洩らしてしまう。
(インターバル。
  プレイ中、自分の拒絶反応に耐え切れなくなり、何度か友達に電話をして、精神の平衡を保つ。電話をしながら、自分にとって異質な、あまりに異質なものと向 き合い、「これこれのものを異質と感じるのは何故なのか。異質と感じる自分は何者なのか」という問いかけを己に課して、自己分析を進めるのは決して無意味 なことではあるまい、と判断し、ふたたびゲームに戻ることにする。)
  月宮ふたたび登場。相変わらずの反応に何かムカつきながらも「いやいや、実は小学生とかいう設定なのかもしれないな」とも思う。そうであれば、ここまでア レな行動は取るまい、と。そう割り切ったら、思ったよりもあっさりとストレスが引いていく。そうそう。こいつは幼児なんだ、と。そして、またたいやきの食 い逃げをしたのか、エプロンしたオヤジが追っかけてきた。
「金払えよ、ちゃんと。お前のやっていることは泥棒だ、食い逃げだ、立派な犯罪だ。可愛くて馬鹿装っていればなんでも許されるなんて思ってんじゃないだろ うな。無邪気さと知恵とは決して相反するものではないんだ。」
  プレイヤーがそう思ってるそばから、話の中じゃ月宮につきあわされている主人公。
「てめーも振り回されてんじゃねええええええ。ついでに何事もなかったように袋からタイヤキ取り出してるんじゃねええええ」
  タイヤキが月宮から分けられる。当然断る。月宮がさびしそうな顔をするが、ほとんど同情できない。自分とこいつがワル仲間で、万引きしたブツの分け合いと かをしているんだったら話は別だが。
  そうこうしているうちに、何か実は因縁のある相手らしいことが発覚。だが、「何か変な男の子だし」と言われたのには「お前に変だとは言われたかない」と感 じた。
  そうこうしているうちにまた新キャラ。頭から雪かぶって路上にへたり込み、呆然としている。
「お願いだから、もうボケ系のキャラクターじゃありませんように」と願う。
「頼む、頼むからボケた反応するなよ」
  突然雪かぶって、何が起きたのかわからない、というのなら分かる。多少のボケは、もうこの際割り引いて考える。だから、お願いだからボケじゃありませんよ うに。
  月宮と主人公が漫才をやっているのを、ぽかんと見つめている新キャラ。ボケでなければ、ここで吹き出し、笑い出すだろう。頼む、そう反応してくれ。描写 で、「おびえている、というよりはどう反応していいのか戸惑っている、という風だった」という文章。期待できる。立てるか、という台詞に「え、あ、はい」 という反応。安心。「うん、大丈夫」なんていう甘えと媚びなのはもうたくさん。
  「ボクはいい子だもん」とほざきやがる月宮に「てめーは悪人だ。絶対悪人だ」と確信する。さらに言うなら、こんなやつと運命なんか分かち合いたくない。新 キャラに年齢をきく月宮。「1年です」「ということはボクのひとつ下だね」というやり取りに、心中で「小学校の」という補足を施す。が、ある意味予想通り というか、実は月宮と主人公が同じ学年だった、ということが発覚。
「そうか、実はこの話って、主人公が中学生の設定だったのか」と認識をあらためる。新キャラと分かれてから、勝手に7年ぶりの再会とやらに盛り上がる月宮 と指切りをすることに。断っても良かったのだが、無理に断る必要性もなかったので、指切りすることに。
  月宮と主人公とは、何か約束というのをしていたようだ。
  が、こちとら別に7年前の約束とやらを果たしに戻ってきたわけでもないし(第一主人公も知らなければプレイヤーであるおれ自身にだってどうでもいいこと だ)、そんなドラマチックなことが起きるほど、世の中というのは甘くはない。「夢見たいなら見ていろよ。いつかは覚めるもんだぜ」と、そう思う。月宮がそ のことを知った時、勝手に打ちひしがれて、傷ついたとしても、正直俺には関係ない。知ったことではないのだ。別れ際、「二度ある事は三度あるんだよ」と月 宮。また逢うことがあるにしても、「今度はちゃんと金払えよ」と願う。
  帰宅。「腹が減ってるから皿だって食えるぞ」という台詞にファイナルファイトを思い出す。ああ、5面の便所傍のゴミバケツにあった肉。あれ食って体力回復 させると、「便所の肉便所の肉」とよくギャラリーからいわれたもんだ。
(インターバル。
  不意に、思う。どうやら、幼い日の思い出、というのが物語の重要なファクターとなるようだが、10代というのも、幼い日の記憶というのがそんなに気になっ たりするものなのだろうか。そんなことを感じる自分自身、もうとっくにオヤジになっているということなのか。ならば、「まだまだまだまだ若いのに、そんな 昔のことにこだわってもしゃあないじゃん」というツッコミは、意味を持たない。)
  夢の回想が始まった。名雪とのかけあいのなかで、「これは脅迫という犯罪云々」というメッセージが出たが、食い逃げよりはマシだろうと思った。二人で買い 物に行くシチュエーション。初日にあった展開だ。
  名雪に待たされている間、月宮が出てきたりしたらなんだかなぁ、という感じだが、その時もまた食い逃げしたりしていたらその時はモニターを殴ってやると決 意。決意したそばから背後に何かがぶつかった。見ると、「うぐぅ」と何やらイヤな間投詞をもらす女の子の姿。かなりイヤな予感を感じながら「どうか食い逃 げだけはしてませんように」と思った。予想は当たった。が、先方はそのまま一気に感情がヒートアップしていっているらしい、そのままバーストモード、火の 点いたように泣き出す、という状態に突入。食い逃げではないので、モニターを殴る必要はなさそうだ。が、女の子が泣き出している場面でこんなことを考えて いる自分にさすがに不安を感じ始める。
  うーん。
  ここはやはり、泣き出している女の子を目の前にして困らなければ駄目なのだろうか。そして、ここまできて、「ああ、この夢の場面は月宮と主人公とのファー ストコンタクト、じゃねえ、最初の出会いの場面だったんだな」とようやく認識。
  やべぇ、おいらの外道度急上昇。
  でも、初っ端からいきなり退いちまったしなあ。おいらがこのゲームの中で外道のクズ野郎になったとしたって、そりゃそいつで仕方ないや、あははははは、 とあっさり自分の中で問題解決。
  幼児月宮のリアクションを見て思う事、それは「なんか7年後と全然変わってないなあ」ということだった。

  そうこうするうちに二日目が終わり、「1月9日土曜日」という表示が画面に出た。プレイヤーは、夜も遅くなってきたので寝ようと思い、これまで書いた自分 の文章を見返す。そして月宮と主人公とが同じ年齢である、ということに改めてショックを受ける。
  とりあえずもう少しプレイ。繰り返し、立ちあらわれる舞い降る雪のイメージ。意図的に美しさ、はかなさを演出しているのが鼻につく。(自分がもはや外道度 ボーダー突破していることを思い知る。このゲームの中において、自分という存在はすでに人の心を捨てている、絶対に感動なんかしてやるものか、口惜し かったらオレを泣かせてみろ、へへーん、と決意。)
  朝食風景。主人公の叔母さんである、秋子さんの顔のアップ。つくづく思うのが「あなた年齢いくつですか」というやってはならないツッコミ。動物みたいな名 雪が出てきて、「くー」とかほざきつつ目をつぶっている顔に一瞬かわいいと思ってしまった自分を打ち消す。所詮は動物、動物だったら寝顔は可愛いもんだ な、などと露骨に言い訳を自分にしながら。寝ぼけ眼で「わたしは好きだよ」と言いながらジャムの瓶を嬉しそうに云々、という場面を具体的に想像。なんか恐 いぞ、名雪。でももっと恐いのが「イチゴジャムがあったらご飯3杯は食べられるよ」という言葉。気持ち悪すぎ、と思ったが、どれくらい気持ち悪いのか試し てみようかな、と思いつく。が、その行為は米という穀物や、米食、炊いたご飯を主食とする日本人の文化に対してあまりにも失礼、冒涜に値するような気がし たのでさすがに打ち消す。
  遅刻したくないので名雪に朝食の速やかな遂行を促す。「パンなんかくわえながら登校しろ。漫画なんかでおなじみだろ」「そんな人現実にはいないよ」お前み たいなのがもっと現実にはおらん。ここまでやったところでプレイ初日は眠くなってきたので切り上げる。

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