「頭が明晰になってくるよ うな、夜気と樹木のそよぎと自分の呼吸とが同一レベルで結ばれているようなすがすがしさで肺が満たされていた。これまでにない 安静にいるのを感じた。今夜はぐっすり眠れるかもしれない。いつもほど夜や闇を恐ろしいものと思わなくなり、いずれ出かけなければならない独り旅を素直に 受け入れようという気持ちになっていた。」 「忘れ水の記」より( 志水辰夫『いまひとたびの』新潮社・刊)